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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-11
(45)【発行日】2024-01-19
(54)【発明の名称】外用医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/192 20060101AFI20240112BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20240112BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240112BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20240112BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20240112BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20240112BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
A61K31/192
A61K9/06
A61K9/08
A61K47/10
A61K47/14
A61K47/26
A61P29/00
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022193277
(22)【出願日】2022-12-02
(62)【分割の表示】P 2018103076の分割
【原出願日】2018-05-30
(65)【公開番号】P2023014328
(43)【公開日】2023-01-26
【審査請求日】2022-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【弁理士】
【氏名又は名称】迫田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】井上 喬允
【審査官】愛清 哲
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-156499(JP,A)
【文献】特開2009-040685(JP,A)
【文献】特開2002-128701(JP,A)
【文献】特開2018-52992(JP,A)
【文献】特開2016-135806(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/80
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
A61P 29/00-29/02
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ロキソプロフェン及び/又はその塩、(B)グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルからなる群より選択される界面活性剤、(C)水、及び(D)エタノール40~90重量%を含み、前記(B)成分を構成する界面活性剤のHLB値と当該界面活性剤の(B)成分中の重量比率との積の総和として表される総HLB値が10以下であり、液剤又はゲル剤である、外用医薬組成物。
【請求項2】
前記総HLB値が6以下である、請求項1に記載の外用医薬組成物。
【請求項3】
液剤又はゲル剤である外用医薬組成物中で、(A)ロキソプロフェン及び/又はその塩と(C)水と(D)エタノール40~90重量%とともに、(B)グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルからなる群より選択される界面活性剤を、前記(B)成分を構成する界面活性剤のHLB値と当該界面活性剤の(B)成分中の重量比率との積の総和として表される総HLB値が10以下となるように共存させる、外用医薬組成物においてロキソプロフェン及び/又はその薬学的に許容される塩の経皮浸透性を向上する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロキソプロフェン及び/又はその塩の経皮浸透性が向上された外用医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ロキソプロフェンナトリウムに代表されるロキソプロフェン類(ロキソプロフェン及び/又はその塩)は、優れた鎮痛・消炎作用を有する薬剤として知られており、外用医薬組成物としても使用されている。ロキソプロフェン類を水系基剤中に含む外用医薬組成物は、水系基剤からの放出性が低いために経皮浸透性に問題がある。このような問題を解決するための方法として、特許文献1には、基剤成分としてゴム系エラストマーを含ませる技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-149061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術は、実質的に水を含まない構成を必須とするものであり、その製剤形態は、支持体、軟膏層及び剥離ライナーからなる貼付剤に特化しているために、液剤やゲル剤等の塗布用の製剤形態には対応することができない。液剤やゲル剤等の塗布用の製剤形態とするには水系基剤が不可避であり、そうすると、ロキソプロフェン類の放出性は低下することとなる。つまり、ロキソプロフェン類を含む外用医薬組成物において、水系基剤を含むことと、ロキソプロフェン類の経皮浸透性を向上させることとは依然として両立しない課題があった。
【0005】
そこで本発明は、水を含みながらも、ロキソプロフェン及び/又はその塩の経皮浸透性に優れた外用医薬組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は鋭意検討の結果、ロキソプロフェン及び/又はその塩を水中に含む外用医薬組成物において、界面活性剤を、特定の総HLB値となるように共存させることによって、ロキソプロフェン及び/又はその塩の経皮浸透性が向上することを見出した。本発明は、この知見に基づいてさらに検討を重ねることにより完成したものである。
【0007】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. (A)ロキソプロフェン及び/又はその塩、(B)界面活性剤、及び(C)水を含み、前記(B)成分を構成する界面活性剤のHLB値と当該界面活性剤の(B)成分中の重量比率との積の総和として表される総HLB値が10以下である、外用医薬組成物。項2. 前記(B)成分が、非イオン性界面活性剤である、項1に記載の外用医薬組成物。
項3. 前記(B)成分が、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルからなる群より選択される、項1又は2に記載の外用医薬組成物。
項4. (D)一価低級アルコールをさらに含む、項1~3のいずれかに記載の外用医薬組成物。
項5. 前記総HLB値が6以下である、項1~4のいずれかに記載の外用組成物。
項6. 外用医薬組成物中で、(A)ロキソプロフェン及び/又はその塩と(C)水とともに、(B)界面活性剤を、前記(B)成分を構成する界面活性剤のHLB値と当該界面活性剤の(B)成分中の重量比率との積の総和として表される総HLB値が10以下となるように共存させる、外用医薬組成物においてロキソプロフェン及び/又はその薬学的に許容される塩の経皮浸透性を向上する方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、水を含みながらも、ロキソプロフェン及び/又はその塩の経皮浸透性に優れた外用医薬組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
1.外用医薬組成物
本発明の外用医薬組成物は、(A)ロキソプロフェン及び/又はその塩(以下、「(A)成分」と表記することもある)、特定の総HLB値となる(B)界面活性剤(以下、「(B)成分」と表記することもある)、(C)水(以下、「(C)成分」と表記することもある)を含有することを特徴とする。以下、本発明の外用医薬組成物について詳述する。
【0010】
(A)ロキソプロフェン及び/又はその塩
本発明の外用医薬組成物は、(A)成分としてロキソプロフェン及び/又はその塩を含有する。ロキソプロフェン及び/又はその塩は、非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAID)の一種として公知の成分である。ロキソプロフェンは、2-[パラ-(2-オキソシクロペンチルメチル)フェニル]プロピオン酸である。ロキソプロフェンの塩としては、ロキソプロフェンの薬学上許容される塩であれば特に制限されず、例えばナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩等が挙げられる。また、ロキソプロフェンの塩は、水和物であってもよい。
【0011】
本発明の外用医薬組成物において、(A)成分として、ロキソプロフェン及び/又はその塩の中から1種を選択して単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。(A)成分の中でも、好ましくはロキソプロフェンの塩、より好ましくはロキソプロフェンナトリウム、さらに好ましくはロキソプロフェンナトリウム水和物が挙げられる。
【0012】
本発明の外用医薬組成物における(A)成分の含有量は、外用医薬組成物に備えさせるべき薬効等に応じて適宜設定すればよいが、例えば0.1~10重量%、好ましくは0.5~3重量%が挙げられる。また、水系基剤中にロキソプロフェン及び/又はその塩を含む外用医薬組成物は本来ロキソプロフェン及び/又はその塩の経皮浸透性が低いが、本発明の外用医薬組成物ではロキソプロフェン及び/又はその塩の経皮浸透性が向上しているため、外用医薬組成物中のロキソプロフェン及び/又はその塩の含有量が従来と同様の量であっても、また、比較的低含有量であっても、効果的にロキソプロフェン及び/又はその塩を経皮浸透させることができる。
【0013】
(B)界面活性剤
本発明の外用医薬組成物は、(B)成分として界面活性剤を、特定の総HLB値となるように含有する。HLBとは親水親油バランス(hydrophile-lipophile balance)の略称であり、界面活性剤が果たす効果を表す指標の一つとして知られ、HLB値が大きいほど親水性が高いことを示す。本発明においてHLBは、グリフィン法によって算出される値をいう。また、総HLB値は、(B)成分を構成する界面活性剤のHLB値と当該界面活性剤の(B)成分中の重量比率との積の総和として表される値である。すなわち、総HLB値は、(B)成分として一種の界面活性剤を含む場合は当該界面活性剤自体のHLB値となり、(B)成分として二種以上の界面活性剤を含む場合は、それぞれの界面活性剤のHLB値の加重平均値となる。
【0014】
本発明において、(B)成分の総HLB値は10以下である。水系基剤中にロキソプロフェン及び/又はその塩を含む外用医薬組成物は本来ロキソプロフェン及び/又はその塩の経皮浸透性が低いが、本発明の外用医薬組成物では(B)成分を、総HLB値が10以下となるように共存させることによって、ロキソプロフェン及び/又はその塩の経皮浸透性を向上させることができる。ロキソプロフェン及び/又はその塩の経皮浸透性をより良好に向上させる観点から、総HLB値は6以下であることがより好ましい。
【0015】
(B)成分としては特に限定されず、総HLB値が上記範囲となるように、1種又は2種以上の界面活性剤が特に制限なく用いられる。(B)成分としては、経皮浸透性の向上の観点から、非イオン界面活性剤が好ましい。非イオン界面活性剤としては、好ましくは、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルからなる群より選択される。これらの非イオン界面活性剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、ロキソプロフェン及び/又はその塩の経皮浸透性をより良好に向上させる観点から、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルからなる群より選択される非イオン界面活性剤を少なくとも含むことがより好ましい。
【0016】
グリセリン脂肪酸エステルとしては、例えば、脂肪酸の炭素数が10~26のグリセリン脂肪酸エステルが挙げられ、具体的には、ミリスチン酸グリセリル、ステアリン酸グリセリル、イソステアリン酸グリセリル、オレイン酸グリセリル、ジステアリン酸グリセリル等が挙げられ、好ましくはオレイン酸グリセリルが挙げられる。これらのグリセリン脂肪酸エステルは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0017】
ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、具体的には、ステアリン酸ポリグリセリル-2、オレイン酸ポリグリセリル-2、イソステアリン酸ポリグリセリル-2、トリイソステアリン酸ポリグリセリル-2、ステアリン酸ポリグリセリル-4、オレイン酸ポリグリセリル-4、トリステアリン酸ポリグリセリル-6、ペンタステアリン酸ポリグリセリル-10、ペンタヒドロキシステアリン酸ポリグリセリル-10、ペンタイソステアリン酸ポリグリセリル-10、ペンタオレイン酸ポリグリセリル-10、ポリリシノレイン酸ポリグリセリル-6、ポリリシノレイン酸ポリグリセリル-10等が挙げられ、好ましくは、オレイン酸ポリグリセリル-2が挙げられる。これらのポリグリセリン脂肪酸エステルは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
ソルビタン脂肪酸エステルとしては、例えば、脂肪酸の炭素数が10~26のソルビタン脂肪酸エステルが挙げられ、具体的には、ステアリン酸ソルビタン、イソステアリン酸ソルビタン、セスキイソステアリン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、オレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン等が挙げられ、好ましくは、オレイン酸ソルビタンが挙げられる。これらのソルビタン脂肪酸エステルは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
ポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油としては、具体的には、ポリオキシエチレン(5)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(10)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(20)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(30)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(40)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(50)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(80)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(100)硬化ヒマシ油等のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等が挙げられ、好ましくはポリオキシエチレン(5)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(10)硬化ヒマシ油が挙げられる。これらのポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテルとしては、ポリオキシエチレン(10~50モル)フィトステロールエーテル、ポリオキシエチレン(10~50モル)ジヒドロコレステロールエーテル、ポリオキシエチレン(10~50モル)2-オクチルドデシルエーテル、ポリオキシエチレン(10~50モル)デシルテトラデシルエーテル、ポリオキシエチレン(10~50モル)オレイルエーテル、ポリオキシエチレン(10~50モル)セチルエーテル、ポリオキシエチレン(5~30モル)ポリオキシプロピレン(5~30モル)2-デシルテトラデシルエーテル、ポリオキシエチレン(10~50モル)ポリオキシプロピレン(2~30モル、好ましくは6~30、より好ましくは8~30)セチルエーテル等が挙げられる。これらのポリオキシアルキレンアルキルエーテルは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
本発明の外用医薬組成物における(B)成分の含有量については、使用する(A)成分の種類や含有量等に応じて適宜設定すればよいが、総量で例えば0.1~10重量%が挙げられる。ロキソプロフェン及び/又はその塩の経皮浸透性をより良好に向上させる観点から、本発明の外用医薬組成物における(B)成分の含有量としては、好ましくは総量で0.3~8重量%、更に好ましくは2~4重量%が挙げられる。
【0022】
また、本発明の医薬組成物において、(A)成分と(B)成分との比率については、前述する各含有量に応じて定まるが、ロキソプロフェン及び/又はその塩の経皮浸透性をより良好に向上させる観点から、(A)成分1重量部当たり(B)成分の含有量が総量で0.1~10重量部、好ましくは0.3~8重量部、より好ましくは1~6重量部、特に好ましくは2~4重量部が挙げられる。
【0023】
(C)水
本発明の外用医薬組成物は、(C)成分として水を含有する。水としては特に制限されず、精製水、蒸留水、イオン交換水、超純水、滅菌水などが挙げられ、好ましくは精製水が挙げられる。本発明の外用医薬組成物における(C)成分の含有量については、製剤形態に応じて適宜設定すればよいが、例えば5~50重量%が挙げられる。水系基剤中にロキソプロフェン及び/又はその塩を含む外用医薬組成物は本来ロキソプロフェン及び/又はその塩の経皮浸透性が低いが、本発明の外用医薬組成物ではロキソプロフェン及び/又はその塩の経皮浸透性が向上しているため、このように水を比較的多く含む場合であっても、ロキソプロフェン及び/又はその塩の経皮浸透性を効果的に向上させることができる。このような本発明の効果を鑑みれば、本発明の外用医薬組成物における(C)成分の含有量として、好ましくは10~40重量%、より好ましくは15~30重量%が挙げられる。
【0024】
(D)一価低級アルコール
本発明の外用医薬組成物は、ロキソプロフェン及び/又はその塩の経皮浸透性をより向上させるために、(D)成分として一価低級アルコールをさらに含んでよい。
【0025】
一価低級アルコールとしては、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、ペンタノール等の炭素数1~5の一価アルコールが挙げられる。これらの一価低級アルコールは1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの一価低級アルコールの中でも、好ましくはエタノール、イソプロパノールが挙げられ、特に好ましくはエタノールが挙げられる。
【0026】
本発明の外用医薬組成物において、一価低級アルコールを含有させる場合、その含有量については、ロキソプロフェン及び/又はその塩の経皮浸透性を向上させる観点から、好ましくは40~90重量%、より好ましくは60~90重量%が挙げられる。
【0027】
その他の成分
本発明の外用医薬組成物には、本発明の効果を妨げない限り、前述する成分の他に、必要に応じて、他の薬理成分を含んでいてもよい。本発明の外用医薬組成物に配合可能な他の薬理成分については、特に制限されないが、例えば、グリチルレチン酸、グリチルリチン酸二カリウム、グリチルリチン酸アンモニウム、グリチルリチン酸ステアリル等の抗炎症剤;ジフェニルイミダゾール、ジフェンヒドラミン及びその薬学的に許容される塩、マレイン酸クロルフェニラミン等の抗ヒスタミン剤;リドカイン及びその薬学的に許容される塩、ジブカイン及びその薬学的に許容される塩、アミノ安息香酸エチル等の局所麻酔剤;ニコチン酸ベンジルエステル、ノナン酸バニリルアミド、トウガラシチンキ、トコフェロール酢酸エステル等の血行促進剤;アルニカチンキ、オウバクエキス、サンシシエキス、セイヨウトチノキエキス、ロートエキス、ベラドンナエキス、トウキエキス、シコンエキス、サンショウエキス等の生薬等が挙げられる。
【0028】
更に、本発明の外用医薬組成物は、前述する成分の他に、必要に応じて、外用医薬組成物に通常使用される他の添加剤が含まれていてもよい。このような添加剤としては、例えば、pH調節剤、界面活性剤、乳化剤、可溶化剤、防腐剤、保存剤、酸化防止剤、安定化剤、キレート剤、増粘剤、香料、着色料等が挙げられる。本発明の外用医薬組成物に配合可能な増粘剤については、特に制限されないが、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシビニルポリマー、ヒアルロン酸、キサンタンガム等が挙げられる。
【0029】
製剤形態
本発明の外用医薬組成物の製剤形態については、経皮適用可能であることを限度として特に制限されず、例えば、液剤(ローション剤、スプレー剤、エアゾール剤、及び乳液剤を含む)、フォーム剤、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤、貼付剤等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは液剤又はゲル剤が挙げられる。これらの製剤形態への調製は、第十七改正日本薬局方 製剤総則等に記載の公知の方法に従って、製剤形態に応じた添加剤を用いて製剤化することにより行うことができる。
【0030】
使用態様
本発明の外用医薬組成物は、消炎鎮痛が求められる局所(皮膚)に外用投与することにより使用される。本発明の外用医薬組成物は、外用消炎鎮痛剤として、肩こりに伴う肩の痛み、関節痛、腰痛、筋肉痛、腱鞘炎(手・手首の痛み)、肘の痛み(テニス肘等)、打撲痛、ねんざ痛、骨折痛、神経痛、変形性関節症、関節炎等に対する治療目的で使用することができる。
【0031】
2.ロキソプロフェン及び/又はその薬学的に許容される塩の経皮浸透性を向上する方法
本発明は、(A)ロキソプロフェン及び/又はその塩と(C)水とを含む外用医薬組成物の、ロキソプロフェン及び/又はその塩の経皮浸透性を向上する方法を提供する。具体的には、本発明のロキソプロフェン及び/又はその薬学的に許容される塩の経皮浸透性を向上する方法は、外用医薬組成物中で、(A)ロキソプロフェン及び/又はその塩と(C)水とともに、(B)界面活性剤を、前記(B)成分を構成する界面活性剤のHLB値と当該界面活性剤の(B)成分中の重量比率との積の総和として表される総HLB値が10以下となるように共存させる。本発明のロキソプロフェン及び/又はその薬学的に許容される塩の経皮浸透性を向上する方法において、総HLB値、使用される成分の種類や配合量、外用医薬組成物の製剤形態等については、前記「1.外用医薬組成物」の欄に記載の通りである。
【実施例
【0032】
以下に実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0033】
試験例1
[外用医薬組成物の調製]
表1に示す組成の外用医薬組成物を調製した。具体的には、以下の手順で調製した。まず、エタノールにロキソプロフェンNa(ロキソプロフェンナトリウム水和物)を混合し、均一になるまで撹拌した。得られた溶液に、界面活性剤(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(10)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(40)、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルエーテル(20E.O.)(4P.O.)(つまりポリオキシエチレン(20モル)
ポリオキシプロピレン(4モル)セチルエーテル)、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルエーテル(20E.O.)(8P.O.)(つまりポリオキシエチレン(20モル)ポリオキシプロピレン(8モル)セチルエーテル)、オレイン酸ポリグリセリル-2、オレイン酸ソルビタン、及び/又はモノオレイン酸グリセリル)を混合し、均一になるまで攪拌した。最後に、合計量が100gとなるように精製水を添加し、均一になるまで撹拌した。なお、表1において各成分の量を示す数値の単位%は、重量%を意味する。
【0034】
[経皮浸透性の評価]
調製した外用医薬組成物を、以下のフランツセル試験に供した。
縦型フランツセル(型式TP-8S、VIDREX社製)をスターラーの上に固定し、ウォーターバスにつないで32℃程度に保った。ヘアレスマウスから摘出した皮膚(直径約1.5cm、面積約1.77cm2)をフランツセルに角層が上になるように置いた。その上からフランツセルの蓋を止め、金具で固定した。次いで、空気が入らないように、レセプターセルにリン酸緩衝液(PBS)を充填した。調製した外用医薬組成物56μlをドナーである上記皮膚の角質層側に塗布した。4時間後、レセプター液を300μl採取し、採取したレセプター液中のロキソプロフェンナトリウムをHPLCで定量分析した。ロキソプロフェンナトリウムの定量値から、以下の式に基づいて、ロキソプロフェンナトリウムの経皮透過率(%)を求めた。なお、レセプターセル中の累積透過ロキソプロフェン重量とは、採取したレセプター液300μl中のロキソプロフェンナトリウムの定量値を、充填量9.6ml当たりに換算した量である。
【0035】
【数1】
【0036】
得られた結果を表1に示す。表1から明らかなように、水及びロキソプロフェンナトリウムに加えて総HLB値が10超となるように界面活性剤を含む場合(比較例1~3)は、界面活性剤を含まない場合(参考例1)と同様に、ロキソプロフェンナトリウムの経皮浸透率が低かった。これに対し、総HLB値が10以下となるように界面活性剤を含む場合(実施例1~5)には、ロキソプロフェンナトリウムの経皮浸透率が飛躍的に増加していた。特に、総HLB値が6以下となるように界面活性剤を含む場合(実施例1~3)のロキソプロフェンナトリウムの経皮浸透率の増加が極めて顕著であった。
【0037】
【表1】