(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-11
(45)【発行日】2024-01-19
(54)【発明の名称】自動分析装置
(51)【国際特許分類】
G01N 35/02 20060101AFI20240112BHJP
【FI】
G01N35/02 B
(21)【出願番号】P 2022503097
(86)(22)【出願日】2020-12-01
(86)【国際出願番号】 JP2020044679
(87)【国際公開番号】W WO2021171722
(87)【国際公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-08-18
(31)【優先権主張番号】P 2020032677
(32)【優先日】2020-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】福士 雄大
(72)【発明者】
【氏名】氣田 康宏
(72)【発明者】
【氏名】高田 英一郎
(72)【発明者】
【氏名】松平 風香
(72)【発明者】
【氏名】増田 藍
(72)【発明者】
【氏名】西山 高徳
【審査官】草川 貴史
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/173464(WO,A1)
【文献】特表平11-511846(JP,A)
【文献】特開2017-075789(JP,A)
【文献】国際公開第2011/074472(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/018163(WO,A1)
【文献】特表2013-524190(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00-37/00
G01N 1/00- 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体を分析する自動分析装置であって、
前記検体の分析に使用される試薬を収容する複数の試薬容器が一方向に配列される試薬ボトルから前記試薬を分注する試薬分注部と、
前記試薬ボトルが収納される試薬ラックと、を備え、
前記試薬ラックは、前記試薬容器が有する上向きの開口に対応する蓋を前記試薬容器の配列方向に沿って開く蓋開放部と、前記試薬分注部が前記開口に挿入される経路の外に前記蓋を固定する蓋固定部を有し、
前記蓋は、前記蓋が開く方向と直交する方向に突出する突出部を有し、
前記蓋開放部は、前記試薬ラックの上面に設けられ前記突出部が摺動するスロープであり、
前記蓋固定部は、前記スロープ
の最底面とのなす角が直角以上である面を有する壁面であることを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
請求項1に記載の自動分析装置であって、
前記スロープは、前記蓋が開くときの前記突出部の軌跡に沿う断面形状を有することを特徴とする自動分析装置。
【請求項3】
請求項
2に記載の自動分析装置であって、
前記スロープの断面形状は滑らかな曲線を含むことを特徴とする自動分析装置。
【請求項4】
請求項1に記載の自動分析装置であって、
前記スロープの最底面から前記試薬ラックの最上面までの高さは、前記突出部の外径よりも大きいことを特徴とする自動分析装置。
【請求項5】
請求項1に記載の自動分析装置であって、
前記壁面は、前記スロープの最底面とのなす角が直角以上である面を有することを特徴とする自動分析装置。
【請求項6】
請求項1に記載の自動分析装置であって、
前記スロープと前記壁面との間に、前記突出部が嵌合する溝が設けられることを特徴とする自動分析装置。
【請求項7】
請求項1に記載の自動分析装置であって、
前記試薬ラックは、前記試薬ボトルが所定の方向から挿入される場合以外は前記試薬ボトルの収納を妨げる逆挿入防止部をさらに有することを特徴とする自動分析装置。
【請求項8】
請求項
7に記載の自動分析装置であって、
前記試薬ラックは、前記試薬ボトルが所定の方向から挿入されて収納されたときに前記試薬ボトルの側面に設けられる凹部に嵌合する板ばねをさらに有することを特徴とする自動分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動分析装置は、血液や尿等の検体に含まれる特定成分を自動的に定量分析あるいは定性分析するための装置である。自動分析装置による検体の分析には様々な試薬が用いられ、安定した分析結果を得るためには、蒸発乾燥による試薬の濃縮や埃等の混入による試薬の劣化を防ぐ必要がある。そこで分析に用いられる試薬は開閉可能な蓋を有する試薬容器に収容され、必要に応じて試薬容器の蓋が開閉される。なお多くの場合、上向きの開口を有する複数の試薬容器が一方向に配列され、各開口に対応する蓋が試薬容器の配列方向に沿って開閉される。
【0003】
特許文献1には、ヒンジを中心に開閉可能な複数の蓋を密閉状態から半開状態または半開状態から密閉状態にしたり、半開状態から開放状態または開放状態から半開状態にしたりする自動分析装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら特許文献1では、開放状態にされた蓋が試薬分注の妨げになる場合がある。すなわち開き過ぎた蓋は隣接する容器の開口を覆い、開き不足の蓋は対応する開口を覆うので、試薬分注のときに開口へ挿入される試薬分注部の経路を試薬容器の蓋が塞ぐことがある。
【0006】
そこで本発明は、試薬容器の蓋が試薬分注の妨げにならない自動分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明は、検体を分析する自動分析装置であって、前記検体の分析に使用される試薬を収容する複数の試薬容器が一方向に配列される試薬ボトルから前記試薬を分注する試薬分注部と、前記試薬ボトルが収納される試薬ラックと、を備え、前記試薬ラックは、前記試薬容器が有する上向きの開口に対応する蓋を前記試薬容器の配列方向に沿って開く蓋開放部と、前記試薬分注部が前記開口に挿入される経路の外に前記蓋を固定する蓋固定部を有することを特徴とする。
【0008】
また本発明は、検体を分析する自動分析装置であって、前記検体の分析に使用される試薬を収容する複数の試薬容器が一方向に配列される試薬ボトルから前記試薬を分注する試薬分注部と、前記試薬ボトルが収納される試薬ラックと、前記試薬ラックの下方への動作にともなって、前記試薬容器が有する上向きの開口に対応する蓋を前記試薬容器の配列方向に沿って開くとともに前記蓋の開放状態を維持する蓋支持部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、試薬容器の蓋が試薬分注の妨げにならない自動分析装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】試薬・検体収納部の内部に備えられるラックトレイの斜視模式図。
【
図4B】蓋が閉じた試薬ボトルが挿入された試薬ラックの斜視模式図。
【
図4C】試薬ボトルの蓋を開いた試薬ラックの斜視模式図。
【
図5A】蓋が閉じた試薬ボトルが挿入される前の試薬ラックを示す図。
【
図5B】蓋が閉じた試薬ボトルが挿入された試薬ラックを示す図。
【
図5C】蓋支持部の上方への移動にともなって蓋が開かれた状態を示す図。
【
図6】試薬ボトルの挿入方向を誤ったときの試薬ラックを示す図。
【
図7】試薬ボトルが収納された試薬ラックを挿入したラックトレイを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面に従って本発明に係る自動分析装置の好ましい実施例について説明する。なお、以下の説明及び添付図面において、同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。また、図面は実施形態を模式的に表したものであり、現実の物体を簡略化して示す場合がある。
【実施例1】
【0012】
図1を用いて、血液や尿等の検体に含まれる特定成分を自動的に定量あるいは定性分析する自動分析装置の全体構成の一例を説明する。自動分析装置は、試薬・検体収納部3と、インキュベータ1、試薬分注部8、検体分注部9、分析部10、搬送部11、廃棄ボックス15、制御部18を備える。
【0013】
試薬・検体収納部3は、試薬ボトル4と検体容器5を収納し、所定の温度で保管するものである。試薬・検体収納部3の内部には、試薬ボトル4と検体容器5が収納される空間を区分けするラックトレイ20が設けられる。ラックトレイ20の詳細は
図2を用いて後述される。試薬ボトル4には、分析に用いられる複数の試薬が収容される。試薬ボトル4の詳細は
図3A及び
図3Bを用いて後述される。検体容器5には、血液や尿等の検体が収容される。試薬・検体収納部3の上面には試薬吸引孔6と検体吸引孔7が設けられ、試薬ボトル4に収容される試薬は試薬吸引孔6から、検体容器5に収容される検体は検体吸引孔7からそれぞれ吸引される。試薬・検体収納部3の内部ではラックトレイ20が回転することにより、所望の試薬ボトル4や検体容器5が試薬吸引孔6や検体吸引孔7の下に位置づけられる。
【0014】
インキュベータ1は、円周上に配置される反応容器2を一定温度で保持するものであり、回転することにより反応容器2を所定の位置まで移動させる。インキュベータ1に配置される空の反応容器2は、搬送部11によって容器トレイ14から搬送される。空の反応容器2には、試薬・検体収納部3から試薬分注部8と検体分注部9によって試薬と検体が分注される。より具体的には、試薬分注部8は、
図1に点線で示される円弧上を移動して、試薬ボトル4に挿入されて所定量の試薬を吸引し、空の反応容器2へ試薬を分注する。そして検体分注部9も点線の円弧上を移動して、検体容器5から所定量の検体を吸引し、試薬が分注された反応容器2へ検体を分注する。反応容器2に分注された試薬と検体は一定温度で保持されることにより反応し、反応の結果が分析部10によって分析される。
【0015】
なお検体のコンタミネーションを防ぐために、検体分注部9は検体を分注する度に分注チップ12を付け替えても良い。分注チップ12は、廃棄ボックス15の上面に設けられるチップ装着位置16へチップトレイ13から搬送部11によって搬送され、チップ装着位置16において検体分注部9に装着される。検体の分注に用いられた分注チップ12は、廃棄ボックス15が備える廃棄孔17に廃棄される。廃棄孔17には、分析後の反応容器2も廃棄される。
【0016】
制御部18は、以上説明した各部の動作を制御するものであり、例えばCPU(Central Processing Unit)である。すなわち、試薬・検体収納部3とインキュベータ1の回転動作や温度制御、試薬分注部8と検体分注部9の分注動作、分析部10の分析動作、搬送部11の搬送動作等は制御部18によって制御される。
【0017】
図2を用いて、ラックトレイ20の一例について説明する。ラックトレイ20は、円板部21と、円筒部22、円柱部23、内側隔壁24、外側隔壁25を有する。円板部21は円形状を有する板であり、開口を有していても良い。円筒部22は、円板部21と同心円の円筒形状を有する部材であり、円板部21の上に設けられ、円板部21の外径よりも小さい外径を有する。円柱部23は、円板部21と同心円の円柱形状を有する部材であり、円板部21の上に設けられ、円筒部22の外径よりも小さい外径と円筒部22の高さより低い高さを有する。
【0018】
内側隔壁24は、円筒部22と円柱部23の間の空間を周方向に等分する板である。周方向に隣り合う二枚の内側隔壁24と円筒部22とによって囲われる空間には、複数の試薬ボトル4が搭載される試薬ラック40が収納される。試薬ラック40が収納される各空間には、一つ以上のリブ26と一つ以上の内側ピン27が設けられる。リブ26は、円筒部22の内周面に設けられ、円板部21の上面から円筒部22の軸方向に沿って延在し、試薬ラック40の一部が摺動する。内側ピン27は、円板部21の上面であって円筒部22よりも内側に設けられ、試薬ラック40に嵌合することで試薬ラック40の位置決めに用いられる。
図2のラックトレイ20では六枚の内側隔壁24が円柱部23から円筒部22へ放射状に配置され、六つの試薬ラック40を収納できる。
【0019】
外側隔壁25は、円筒部22と円板部21の間の空間を周方向に等分する板である。周方向に隣り合う二枚の外側隔壁25と、円筒部22及び円板部21によって囲われる空間には、複数の検体容器5が搭載される検体ラック41が収納される。検体ラック41が収納される各空間には、一つ以上の外側ピン28が設けられる。外側ピン28は、円板部21の上面であって円筒部22よりも外側に設けられ、検体ラック41に嵌合することで検体ラック41の位置決めに用いられる。
【0020】
図3Aと
図3Bを用いて、試薬ボトル4の一例について説明する。
図3Aと
図3Bには、試薬ボトル4の正面図とともに、二つの側面図と上面図が含まれる。試薬ボトル4は複数の試薬容器30がケース33によって一体化されて構成される。複数の試薬容器30は、上向きの開口36と開口36を塞ぐ蓋31をそれぞれ有し、一方向に配列される。なお
図3Aには三つの蓋31が閉じた状態の試薬ボトル4が示され、
図3Bには三つの蓋31が開いた状態の試薬ボトル4が示される。
【0021】
蓋31はヒンジ35によって試薬容器30に接続され、ヒンジ35を軸として試薬容器30が配列される方向に沿って開閉される。蓋31には、蓋31の開閉に用いられる突出部32が設けられる。突出部32は、例えば蓋31が開閉される方向と直交する方向に突出し、円柱形状を有する。閉じられた蓋31によって開口36が塞がれることにより、試薬容器30に収容される試薬の蒸発乾燥や試薬への埃等の混入を防止できる。なお試薬が分注されるときには蓋31が開かれた開口36を介して試薬容器30に挿入される試薬分注部8が試薬を吸引する。
【0022】
ケース33には、試薬ボトル4のデータ管理に用いられるICタグ34が貼り付けられても良い。ICタグ34には、試薬ボトル4に関するデータが記録されても良いし、試薬ボトル4を識別するための識別子が記録されても良い。ICタグ34に識別子が記録される場合は、試薬ボトル4に関するデータと識別子とが紐づけられて、制御部18がアクセス可能な記憶部に記憶される。また操作者はICタグ34が貼りつけられた位置によって、試薬ボトル4の向きを確認することができる。
【0023】
ところで、開き過ぎた蓋31によって隣接する開口36が覆われたり、開き不足の蓋31によって対応する開口36が覆われたりすると、試薬容器30に試薬分注部8を挿入できず、試薬分注に不都合が生じる。そこで本実施例では、試薬分注の妨げならないように試薬容器30の蓋31を試薬分注部8の経路の外に固定する蓋固定部を試薬ラック40に設ける。
【0024】
図4A乃至
図4Cを用いて、試薬ラック40の一例について説明する。なお
図4Aには試薬ラック40単体の斜視模式図が示され、
図4Bには蓋31が閉じた試薬ボトル4が挿入された試薬ラック40が、
図4Cには試薬ボトル4の蓋31を開いた試薬ラック40がそれぞれ示される。試薬ラック40は、ハンドル42、蓋支持部43、ボトル収納部44を有する。
【0025】
ハンドル42は、試薬ラック40を持ち運ぶために操作者によって掴まれる部分であり、二本の固定シャフト45によってボトル収納部44と接続される。
【0026】
ボトル収納部44は、放射状に配置される複数の仕切り壁54と底面56を有し、隣接する二つの仕切り壁54と底面56とによって囲われる空間に試薬ボトル4を収納する。
図4A乃至
図4Cでは七枚の仕切り壁54が配置され、六つの試薬ボトル4が収納できる。底面56には、内側ピン27が嵌合する孔である位置決め孔57と、リブ26が通過する溝であるリブ通過溝58が設けられる。
【0027】
仕切り壁54のそれぞれには、仕切り壁54の表面から突き出る形状を有し、試薬ボトル4の側面に設けられる凹凸に沿って変位可能な板ばね55が設けられる。板ばね55が試薬ボトル4の凹部に嵌合することによって、試薬ボトル4の位置は固定される。すなわち試薬ラック40が持ち運ばれるときに自重によって試薬ボトル4が試薬ラック40から脱落することを防止したり、試薬ボトル4がボトル収納部44から浮き上がることを抑制したりする。
【0028】
蓋支持部43は、ハンドル42とボトル収納部44の間に配置され、固定シャフト45に沿って移動可能であり、接触部50と複数の蓋ガイド部51を有する。蓋支持部43には、ボトル収納部44に対して摺動可能で、蓋支持部43の上下動のガイドとなる摺動シャフト46が接続されても良い。また摺動シャフト46の下端には、蓋支持部43の移動範囲を制限するための段差が設けられても良い。
【0029】
接触部50は、試薬ラック40がラックトレイ20に収納されるときに円柱部23の上面に接触するように設けられる。すなわち試薬ラック40がラックトレイ20に収納されるときに、接触部50が円柱部23の上面に接触することにより、蓋支持部43が上方に移動させられる。
【0030】
蓋ガイド部51は仕切り壁54のそれぞれの上方に設けられ、試薬ラック40がラックトレイ20に収納されるときに蓋ガイド部51の下面がリブ26の上面に接触する。すなわち試薬ラック40がラックトレイ20に収納されるときに、蓋ガイド部51の下面がリブ26の上面に接触することによっても、蓋支持部43が上方に移動させられる。隣接する蓋ガイド部51は、試薬容器30の開口36の外径と同じ距離をもって配置され、半円形部51Aによって接続される。半円形部51Aは、試薬容器30の開口36の側面と同じ形状を有し、試薬ボトル4が逆向きに挿入されることを防止する。半円形部51Aの詳細については
図6を用いて後述される。
【0031】
また蓋ガイド部51のそれぞれの上面には、スロープ52とストッパ53が設けられる。スロープ52は、蓋支持部43が上方へ移動するときに蓋31の突出部32が摺動する斜面であり、試薬容器30の蓋31を開く蓋開放部として機能する。またストッパ53は、スロープ52に対して立設する壁面であり、蓋31を試薬分注部8の経路の外に固定する蓋固定部として機能する。すなわち蓋支持部43が上方に移動することにより、試薬容器30の蓋31が開くとともに試薬分注部8の経路の外に固定される。スロープ52とストッパ53の詳細については
図8A乃至
図8C、
図9A乃至
図9C、
図10A及び
図10Bを用いて後述される。
【0032】
図5A乃至
図5Cを用いて、試薬ラック40が試薬容器30の蓋31を開く動作について説明する。なお
図5Aには蓋31が閉じた試薬ボトル4が挿入される前の試薬ラック40、
図5Bには蓋31が閉じた試薬ボトル4が挿入された試薬ラック40、
図5Cには試薬ボトル4の蓋31を開いた試薬ラック40の平面図とA-A断面図がそれぞれ示される。
【0033】
蓋31が閉じた試薬ボトル4は、
図5Aに示されるように、試薬ラック40に外周側から挿入される。試薬ボトル4が挿入される過程において板ばね55は試薬ボトル4の側面の凹凸に沿って変位し、試薬容器30の開口36の側面が半円形部51Aに収まると板ばね55は試薬ボトル4の側面の凹部に嵌合して試薬ボトル4の位置が固定される。試薬ラック40に試薬ボトル4が固定された時点では、
図5Bに示されるように、突出部32はスロープ52の最上部に位置しており、蓋31は閉じたままである。試薬ラック40に試薬ボトル4が固定された状態で試薬ラック40がラックトレイ20に挿入されると、接触部50が円柱部23の上面に接触し、蓋ガイド部51の下面がリブ26に接触する。試薬ラック40がラックトレイ20にさらに挿入されると、蓋支持部43が上方に移動する。蓋支持部43の上方への移動により、突出部32は押し上げられながらスロープ52の表面を摺動し、
図5Cに示されるように、蓋31が開く。開いた蓋31はストッパ53によって、試薬分注部8の経路の外に固定される。
【0034】
図6を用いて、試薬ラック40に試薬ボトル4が逆向きに挿入された場合について説明する。試薬ボトル4が正しい方向から挿入された場合、
図5Bに示されるように、試薬容器30の開口36の側面が半円形部51Aに収まる。これに対して試薬ボトル4が逆向きに挿入された場合には、ヒンジ35が接続される箇所の形状が半円形部51Aと合わず、試薬ボトル4は試薬ラック40からはみ出た状態となる。試薬ボトル4が試薬ラック40からはみ出た状態では、ラックトレイ20に試薬ラック40を挿入できないので、試薬ボトル4の逆向き挿入を防止できる。
【0035】
図7を用いて、試薬ボトル4が収納された試薬ラック40をラックトレイ20に挿入した状態について説明する。
図7は試薬ラック40が挿入されたラックトレイ20の平面図とB-B断面図である。操作者がハンドル42を持ち、ラックトレイ20の上方から試薬ラック40を挿入すると、接触部50を円柱部23が、蓋ガイド部51をリブ26がそれぞれ押し上げ、蓋ガイド部51が上方に移動する。蓋ガイド部51が上方に移動するのにともない、突出部32はスロープ52の表面を摺動して蓋31が開く。
【0036】
図8A乃至
図8Cを用いて、スロープ52とストッパ53の一例について説明する。
図8Aは蓋ガイド部51の平面図であり、
図8Bと
図8Cは
図8AのC-C断面図である。スロープ52は蓋31が開くときの突出部32の軌跡に沿う断面形状を有し、例えば
図8Bのような傾きの異なる複数の斜面の組み合わせであったり、
図8Cのような滑らかな曲線を含む面であったりしても良い。突出部32の軌跡に沿う断面形状をスロープ52が有することにより、突出部32がスロープ52の最底面に位置するとき、蓋31が開き不足にならずにすみ、蓋31が対応する開口36が覆われることを防止できる。またスロープ52の断面形状が滑らかな曲線を含むことにより、突出部32の摺動が円滑になる。さらに突出部32がストッパ53に接触することにより、蓋31が開き過ぎずにすみ、隣接する開口36が蓋31によって覆われることを防止できる。
【0037】
図9A乃至
図9Cを用いて、スロープ52とストッパ53の他の例について説明する。
図9Aは蓋ガイド部51の平面図であり、
図9Bと
図9Cは
図9AのC-C断面図である。スロープ52の最底面から最上面までの高さhは、突出部32の外径dよりも大きいことが好ましい。h>dであることにより、スロープ52とストッパ53で囲われる空間から突出部32が逸脱しにくくなるので、蓋31が開き過ぎることを抑制できる。またストッパ53はスロープ52の最底面とのなす角が直角以上である面を有することが好ましい。例えば
図9Bでは鉛直方向に立設するストッパ53の上端部に傾斜面53Aを有しており、
図9Cではストッパ53が上向きに傾斜している。スロープ52の最底面とのなす角が直角以上である面をストッパ53が有することにより、試薬ラック40から試薬ボトル4を取り出す際、突出部32がストッパ53の上端部に引っかからずにすむ。
【0038】
図10Aと
図10Bを用いて、スロープ52とストッパ53の他の例について説明する。
図10Aは蓋ガイド部51の平面図であり、
図10Bは
図10AのC-C断面図である。スロープ52とストッパ53との間には、突出部32が嵌合する溝52Aが設けられても良い。突出部32が溝52Aに嵌合することにより、蓋31の開閉を抑制できる。
【0039】
以上、本発明の実施例について説明した。本発明は上記実施例に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形しても良い。また、上記実施例に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせても良い。さらに、上記実施例に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除しても良い。例えば、検体ラック41はラックトレイ20ではなく他の収納部に収納されても良く、そこから検体が分注されても良い。
【符号の説明】
【0040】
1:インキュベータ、2:反応容器、3:試薬・検体収納部、4:試薬ボトル、5:検体容器、6:試薬吸引孔、7:検体吸引孔、8:試薬分注部、9:検体分注部、10:分析部、11:搬送部、12:分注チップ、13:チップトレイ、14:容器トレイ、15:廃棄ボックス、16:チップ装着位置、17:廃棄孔、18:制御部、20:ラックトレイ、21:円板部、22:円筒部、23:円柱部、24:内側隔壁、25:外側隔壁、26:リブ、27:内側ピン、28:外側ピン、30:試薬容器、31:蓋、32:突出部、33:ケース、34:、ICタグ、35:ヒンジ、36:開口、40:試薬ラック、41:検体ラック、42:ハンドル、43:蓋支持部、44:ボトル収納部、45:固定シャフト、46:摺動シャフト、50:接触部、51:蓋ガイド部、51A:半円形部、52:スロープ、52A:溝、53:ストッパ、53A:傾斜面、54:仕切り壁、55:板ばね、56:底面、57:位置決め孔、58:リブ通過溝