(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-11
(45)【発行日】2024-01-19
(54)【発明の名称】ばね部材を有し半導体構造を劈開するための劈開システム、及びそのような構造を劈開するための方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/02 20060101AFI20240112BHJP
H01L 27/12 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
H01L21/02 B
H01L27/12 B
(21)【出願番号】P 2022519372
(86)(22)【出願日】2020-09-17
(86)【国際出願番号】 US2020051180
(87)【国際公開番号】W WO2021061480
(87)【国際公開日】2021-04-01
【審査請求日】2023-09-15
(32)【優先日】2019-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518112516
【氏名又は名称】グローバルウェーハズ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】GlobalWafers Co.,Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】カイザー,ジャスティン スコット
【審査官】平野 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-076570(JP,A)
【文献】特開2018-043377(JP,A)
【文献】特開平07-330179(JP,A)
【文献】特表2007-526628(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0062020(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/02
H01L 21/683
H01L 27/12
B65G 49/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面、及び通常、上面に平行である底面を有する半導体構造を劈開するための劈開システムであって、
開始位置から、劈開応力が半導体構造に作用される上昇位置まで移動可能な劈開アームと、
半導体構造の上面において半導体構造を把持するための吸引部材と、
劈開アームを通り延在する吸引ロッドと、ここで吸引ロッドは、吸引ロッドの第1端部の方で吸引部材に接続されている、
劈開アームが上昇位置にある状態において、半導体構造に劈開力を作用するばね部材と、
を備え
、
吸引ロッドは、ばね部材を通り延在し、
劈開システムはさらに、
吸引ロッドから半径方向外側に延在するカラーを備え、ばね部材は、カラーと劈開アームとの間に配置され、ばね部材は、劈開アームが上昇位置にあるときに圧縮され、
カラーは、ばね部材の圧縮を変更するために吸引ロッドの長手方向軸に沿って調整可能であるカラークランプの一部である、
劈開システム。
【請求項2】
ばね部材は、圧縮ばねである、請求項1に記載の劈開システム。
【請求項3】
吸引部材は、吸引カップであり、吸引ロッドは、吸引カップに真空を適用するために吸引カップに流体的に接続されその中に形成されたチャネルを含む、請求項1に記載の劈開システム。
【請求項4】
吸引部材は、第1吸引部材であり、吸引ロッドは、第1吸引ロッドであり、ばね部材は、第1ばね部材であり、当該劈開システムは、
半導体構造を把持する第2吸引部材と、
劈開アームを通り延在する第2吸引ロッドと、ここで第2吸引ロッドは、第2吸引ロッドの第1端部の方で第2吸引部材に接続されている、
劈開アームが上昇位置にある状態において半導体構造に劈開力を作用する第2ばね部材と、
を備える、請求項1に記載の劈開システム。
【請求項5】
半導体構造を把持する第3吸引部材と、
劈開アームを通り延在する第3吸引ロッドと、ここで第3吸引ロッドは、第3吸引ロッドの第1端部の方で第3吸引部材に接続されている、
劈開アームが上昇位置にある状態において半導体構造に劈開力を作用する第3ばね部材と、
をさらに備えた、請求項4に記載の劈開システム。
【請求項6】
劈開アームは、劈開アームを開始位置と上昇位置との間で動作させるために旋回軸周りに旋回し、当該劈開システムは、モーターを備え、モーターの作動において劈開アームを旋回させる、請求項1に記載の劈開システム。
【請求項7】
劈開アームに接続されたベローズ吸引カップをさらに備え、ベローズ吸引カップは、吸引部材に対して半径方向内側に配置されている、請求項6に記載の劈開システム。
【請求項8】
吸引ロッドは、劈開アームに接続されていない、請求項1に記載の劈開システム。
【請求項9】
半導体構造の底面において半導体構造を把持するための1つ又は複数の吸引部材を備える、請求項1に記載の劈開システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連するアプリケーションへの相互参照
この出願は、2019年9月27日に出願された米国仮特許出願第62/906,860号の利益を請求し、該出願は、その全体が参照として本書に編入される。
【0002】
開示分野
本開示の分野は、半導体構造を劈開するための劈開システム、特に、半導体構造を2つの部分に分離するために蓄積されたばねエネルギーを使用する劈開システムに関する。また、本開示の分野は、そのような劈開システムを使用することによって半導体構造を劈開するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
従来の劈開システムは、劈開される構造の上面及び底面を把持するために真空下にある吸引カップを使用する。構造の上面を把持する一連の上側吸引カップは、劈開アームに接続されている。モーターは、劈開アームに上向きの力を作用し、半導体構造に張力をかける。一旦、十分な張力がかかると、半導体構造の周縁にブレードが接触され、劈開を開始する。劈開が開始された後、劈開アームは上向きに移動し、劈開は、ブレードが接触したエッジから反対側のエッジの方へ半導体構造に沿って伝播する。
【0004】
劈開プロセスは、半導体構造を2つの部分に分離させる。劈開プロセスによってシリコンオンインシュレータ構造を製造するために、「ドナー」構造が層状構造から分離されて、ハンドルウェーハによって支持される絶縁体層上に配置されたシリコンデバイス層を残す。結果として得られる構造の表面の品質(例えば、表面粗さ)は、劈開の品質に依存する。
【0005】
従来の劈開方法は、しばしば、望ましくない粗さパターンをもたらす。原子間力顕微鏡で測定したとき、劈開後のより大きい粗さは、完成した構造(例えばSOI構造)においてより大きい表面粗さを引き起こす。大きい劈開粗さは、エピタキシャル成長中にヒロックを形成させる。このようなヒロックは、最終検査で輝点欠陥として検出される。従来の劈開方法はまた、劈開円弧の表面粗さの形成を引き起こす一貫性のない劈開引張力をもたらす。このような劈開円弧は、一般に、ウェーハのエッジに垂直である円弧端部を有する劈開開始点側に円弧中心を有する。劈開がウェーハを横切って伝播するとき、劈開開始点の直径方向に反対側のポイントに円弧が近づくと、円弧が真っ直ぐになり、曲率を反転する可能性がある状態で、円弧両端部は、上記エッジに垂直に留まる。
【0006】
劈開の品質は、劈開制御システム、劈開アームの質量特性、モーター特性、及び初期張力及び相対的ブレード位置を含む制御パラメーターに依存する。これらのパラメーターは、劈開の品質を向上するように調整するのが困難である。
【0007】
改善された表面粗さ特性を有する劈開構造をもたらす新しい劈開システム、及びそのような劈開システムの使用を伴う劈開方法に関する必要性が存在する。
【0008】
この欄は、以下に記述され及び/又はクレームされる、本開示の様々な態様に関連する可能性のある技術の様々な態様を読者に紹介することを意図しており、この議論は、本開示の様々な態様のより良い理解を容易にするために、背景情報を読者に提供するのに役立つと信じる。したがって、これらの記述は、先行技術の承認としてではなく、この観点から読まれるべきであるということが理解されるべきである。
【発明の概要】
【0009】
本開示の一態様は、上面、及び通常、上面に平行な底面を有する半導体構造を劈開するための劈開システムに向けられている。該劈開システムは、開始位置から、劈開応力が半導体構造に加えられる上昇位置まで移動可能である劈開アームを含む。劈開システムは、半導体構造の上面において半導体構造を把持するための吸引部材を含む。吸引ロッドは、劈開アームを通り延在する。吸引ロッドは、吸引ロッドの第1端部の方で(toward)吸引部材に接続されている。ばね部材は、劈開アームが上昇位置にあるとき、半導体構造に劈開力を加える。
【0010】
本開示の別の態様は、上面、及び一般的に上面に平行な底面を有する半導体構造を劈開するための劈開システムに向けられている。この劈開システムは、半導体構造の上面において半導体構造を把持するための1つ又は複数の吸引カップを含む。吸引ロッドは、吸引ロッドの第1端部の方で1つ又は複数の吸引カップに接続されている。ばね部材は、劈開中、半導体構造に劈開力を加える。吸引ロッドは、ばね部材を通り延在する。
【0011】
本開示のさらに別の態様は、上面、及び一般的に上面に平行な底面を有する半導体構造を劈開するための方法に向けられている。半導体構造の上面は、吸引カップと接触する。半導体構造の上面を把持するため、真空が吸引カップに作用される。劈開アームは、ばね部材に、半導体構造において劈開力を作用させるために、開始位置から上昇位置へ移動される。ばね部材は、劈開アームが上昇されたときに、ばねエネルギーを蓄える。半導体構造は、劈開アームが上昇位置にあるとき、半導体構造の劈開を開始するためにブレードと接触する。蓄えられたばねエネルギーは、半導体構造をブレードと接触させた後に解放され、半導体構造を劈開面に沿って2つの部分に分離する。
【0012】
本開示の上述の態様に関連して記載された特徴の様々な改良が存在する。さらなる特徴もまた、本開示の上述の態様に組み込まれ得る。これらの改良及び追加の特徴は、個別に、又は任意の組み合わせにおいて存在し得る。例えば、本開示の図示付きの実施形態のいずれかに関連して以下に論じる様々な特徴は、単独で又は任意の組み合わせで、本開示の上述の態様のいずれかに組み込まれ得る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、半導体構造を劈開するための劈開システムの斜視図である。
【
図2】
図2は、劈開システムの一部の詳細な斜視図である。
【
図3】
図3は、劈開アームが開始位置にある劈開システムの断面側面図である。
【
図4】
図4は、劈開アームが上昇位置にあり、ばね部材が圧縮されている劈開システムの断面側面図である。
【
図5】
図5は、劈開アームが開始位置にある劈開システムの概略正面図である。
【
図6】
図6は、劈開アームが上昇位置にある劈開システムの概略正面図である。
【
図7】
図7は、ばね部材が蓄積されたエネルギーを解放するときの劈開中の劈開システムの概略正面図である。
【
図8】
図8は、一例のばね部材に関するばね圧縮の関数としての全ばね力のグラフである。対応する参照文字は、図面全体の対応する部分を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
ここで
図1を参照して、半導体構造S(
図5)を劈開するための劈開システム5が示されている。劈開システム5は、劈開アーム9と、半導体構造Sを把持するために劈開アーム9から延在する吸引部材13とを含む。吸引部材13は、劈開アーム9を通り延びる吸引ロッド23から延在する。劈開システム5は、以下でさらに述べるように、半導体構造を分離するために、蓄積されたばねエネルギーを解放するばね部材33を含む。半導体構造Sに引張応力を作用させるために、劈開アーム9は、開始位置(
図5)から、ばね部材33及び/又は劈開アーム9が半導体構造Sに劈開力を作用する上昇位置(
図6)に移動する。
【0015】
本開示の実施形態に従って劈開される半導体構造Sは、一般に、半導体構造への劈開力の適用時及び劈開開始時(例えば、周縁に接触するブレードの使用)に劈開する任意の構造であり得る。適切な構造は、イオン注入によって形成される弱化ゾーンなどの構造内に形成された弱化ゾーンを有し得る。いくつかの構造は、劈開されてシリコンオンインシュレータ構造を形成する(例えば、ドナーウェーハを劈開することによってハンドルウェーハに配置された誘電体層にシリコンデバイス層を形成する)層状のシリコンオンインシュレータ構造(例えば、誘電体層に配置されたドナーウェーハ、及びハンドルウェーハを有する)を含み得る。半導体構造Sは、上面41(
図5)と、上面41に通常平行な底面43とを含む。半導体構造Sはまた、上面41から底面43まで延在する周縁45を含む。
【0016】
劈開システム5は、半導体構造Sの上面41において半導体構造Sを、構造Sの劈開伝播前縁21(
図5)の方で(toward)把持するための吸引部材13を含む。図示された実施形態では、吸引部材13は、吸引カップである。他の実施形態では、半導体構造Sの上面及び底面のそれぞれにチャックを接続して構造Sに劈開力を加えるために接着部材が使用され得る。図示の実施形態は、半導体構造Sの劈開伝播前縁21の方で半導体構造Sの上面41を把持するために、第1、第2及び第3の吸引部材13を含むが、劈開システム5は、より多い又はより少ない吸引部材13(例えば、1、2、3、4、5、もしくは6つ、又はより多くの吸引部材)を含み得るということを理解すべきである。さらに、図示の実施形態は、第1、第2及び第3の吸引ロッド23、並びに第1、第2及び第3のばね部材33を含むが、劈開システム5は、より多い又はより少ない吸引ロッド23及び/又はばね部材33(例えば、1、2、3、4、5、もしくは6つ、又はより多くの吸引ロッド23、及び/又は、1、2、3、4、5、もしくは6つ、又はより多くのばね部材33)を含み得る。
【0017】
各吸引部材13は、吸引ロッド23の第1端部53(
図2)の方で、対応する吸引ロッド23に接続されている。各吸引ロッド23は、劈開アーム9を通り延在する。劈開アーム9及び吸引ロッド23は、劈開アームがその開始位置(
図5)から上昇位置(
図6)まで移動するとき、及び半導体構造が分離されるときに(
図7)、吸引ロッド軸Aに沿って互いに対して移動できる(
図3及び
図4)。劈開アーム9は、その中に形成されたチャンバー11(
図4)を含み、その中で吸引ロッド23が劈開アーム9に対して移動する。
【0018】
吸引ロッド23は、対応するばね部材33を通り延在する。図示の実施形態では、吸引ロッド23は、劈開アーム9に接続されておらず、劈開アーム9及び吸引ロッド23は、吸引ロッド軸Aに沿って互いに対して移動し得る。劈開システム5は、劈開アーム9及び吸引ロッド23を互いに対して動くことを可能にする上側及び下側のベアリング55、49(
図3;例えば、示されるようなリニアブッシング)を含む。吸引ロッド23は、劈開アームが開始位置(
図5)から上昇位置(
図6)まで移動するとき、及び半導体構造の劈開中に蓄積されたばねエネルギーを解放する間(
図7)、ベアリング49、55内を移動する。シール部材19(例えば、テフロン(登録商標)パッド)は、半導体構造Sの粒子汚染を低減するために、吸引ロッド23が劈開アーム9に対して移動するチャンバー11を密閉する(
図4)。
【0019】
各吸引ロッド23は、吸引カップ13と半導体構造Sの上面41(
図5)との間に真空を適用するために吸引カップ13に流体接続され、吸引ロッドの中に形成されたチャネル25(
図3)を含む。チャネル25は、真空源(例えば、真空ポンプ)に流体接続されている真空導管27(
図1)に接続されている。一旦、真空が適用されると、吸引部材13は、半導体構造Sの上面41に密閉される。
【0020】
各ばね部材33は、カラー63と劈開アーム9との間に配置されている。各カラー63は、それぞれの吸引ロッド23から吸引ロッド23の第2端部31に向かって半径方向外向きに延在する。ばね部材33は、少なくとも部分的に、劈開アーム9に形成された凹部51(
図3)に受け入れられる。各凹部51は、それぞれのばね部材33に隣接する床部71を有する。ばね部材33は、ばね部材33の過圧縮を防止するためのストッパーとして機能するリテーナ57(
図4)によって固定されている。
図4に示すように、リテーナ57が床部71に接触したとき、吸引ロッド23及び劈開アーム9の相対的な動きは、妨げられる。
【0021】
いくつかの実施形態では、各カラー63は、カラークランプ79の一部である。カラークランプ79は、クランプ79が吸引ロッド23の長手方向軸Aに沿って移動され及び再固定され得るように調整可能である。このようにして、ばね部材33の圧縮を調整することができる(例えば、劈開アーム9の開始位置にあるときのばね部材33の予圧縮(pre-compression)が調整可能である)。ばね部材33の予圧縮を変更することは、ばねエネルギー解放の終端での引張力を変更し、劈開波(cleave wave)の運動状態及び表面粗さを変更することができる。予圧縮を増加させることは、ばねがエネルギーを放出するときに減じられる加速度を増加する。ばねエネルギーが減少するときに、ばねエネルギーが最小になるところと、劈開アームの回転が始まるときとのマッチングも、最終的な表面粗さに影響を与える可能性がある。
【0022】
図示の実施形態では、ばね部材33は、圧縮されたときに(即ち、劈開アーム9が上昇されたとき)、半導体構造Sに劈開力を作用する螺旋状の圧縮ばねである。他の実施形態では、ばね部材33は、引張ばねである(例えば、ばね部材は、劈開アームの下に配置され、劈開アーム及び劈開アームの下に配置される保持部材に接続される)。さらに他の実施形態では、ばね部材33は、2つ以上の積み重ねられた皿ばねのセットのような、1つ又は複数の皿ばね(即ち、円錐形状の皿ばね)である。他の実施形態では、圧縮空気ばね、圧縮エラストマー、又は伸長エラストマーなどの他のばね部材が使用可能である。
【0023】
図5に示すように、劈開システム5は、半導体構造Sの劈開伝播前縁21の方で半導体構造Sの上面41を把持する前部吸引部材13の第1セット(例えば、
図1に示されるような3つの吸引部材13)を含む。劈開システム5はまた、劈開伝播後縁35の方で半導体構造Sの上面41を把持する1つ又は複数の後部吸引部材15(例えば、吸引カップ)を含む(即ち、後部吸引部材15は、吸引部材13の第1セットへ半径方向内側に配置される)。
【0024】
劈開アーム9は、半導体構造Sが劈開する前に上昇位置(
図6)に移動するので、後部吸引部材15は、劈開アーム9の動きを調整(accommodate)するように構成することができる。いくつかの実施形態では、後部吸引部材15は、劈開アーム9と半導体構造Sとの間の距離の変化を調整するベローズ吸引カップである。該ベローズ吸引カップ15は、劈開アーム9が動作するとき、屈曲及び/又は伸張可能なベローズセクション37(
図1)を含む。後部吸引カップ15は、劈開アーム9に接続された後部吸引ロッド39に接続されている。後部吸引ロッド39は、劈開アーム9の動作を可能にするために剛性又は可撓性であり得る。
【0025】
ここで
図5を参照すると、半導体構造Sの上面41を把持する吸引部材13に加えて、劈開システム5は、半導体構造Sの底面43を把持する1つ又は複数の吸引部材29のセットを含む。吸引部材29は、劈開アーム9が上昇したときに適所に固定される(つまり、動かない)吸引ロッド47に接続されている。
【0026】
本開示の実施形態によれば、半導体構造を劈開するために、半導体構造Sは、下部吸引部材29が半導体構造Sの底面43に接触するように、下部吸引部材29にセットされる(
図5)。半導体構造Sの上面41を上部吸引部材13、15と接触させるように、劈開アーム9を下げる。半導体構造Sの底面43を把持するために下部吸引部材29に真空が適用される。真空はまた、半導体構造Sの上面41を把持するために、真空導管27及び吸引ロッドのチャネル25(
図5)を介して上部吸引部材13、15に作用される。
【0027】
半導体構造Sを把持した後、劈開アーム9は、その開始位置(
図5)から上昇位置(
図6)まで移動される。劈開アーム9は、旋回構造59(
図1)に接続されている。劈開システム5は、モーター67を含み、モーター67の作動時に劈開アーム9を旋回させる。劈開アーム9は、旋回構造59を通り延在する旋回軸P周りに旋回する。モーター67は、チェーン又はベルトによって旋回構造59に接続することができ、又はモーター67は、旋回構造59に組み込まれたダイレクトドライブモーターであり得る。モーター67は、DC又はACサーボモーターであり得、任意的に、劈開アーム9の加速、減速、及び/又は速度を制御し得る。
【0028】
劈開アーム9が開始位置(
図5)から上昇位置(
図6)に移動するとき、劈開アーム9は、吸引ロッド23を軸方向に上方へ移動する。このことは、ばね部材33を圧縮し、半導体構造Sに劈開力F(即ち、半導体構造の劈開を促進する上向きの力)を作用させ、及び、ばねにばねエネルギーを蓄えさせる。本開示のいくつかの実施形態によれば、劈開アーム9は、ばねが完全に圧縮され、ばねリテーナ57が劈開アーム9に接触するポイントまで回転されない。ばね部材33の圧縮は、劈開の開始時にばねエネルギーが解放される状態で、ばねエネルギーをばね部材33に蓄積させる。ばね部材33によって加えられる劈開力F(及びモーターを介する任意の追加の力)は、吸引ロッド23を介して伝達される。劈開アーム9の上昇位置において、下部吸引部材29は、半導体構造Sに保持力を作用し、上部吸引部材13、15は、半導体構造Sが引張状態にあるように上向きの引っ張り力を作用する。いくつかの実施形態では、ばね部材33によって作用される劈開力Fは、半導体構造Sに作用される唯一の劈開力である(例えば、ばね部材33を介して作用される力以外の上向きの力は、劈開に使用されない)。いくつかの実施形態では、ブレード61によって劈開が伝播された後、劈開アームは、上方に動かされない(即ち、ばね部材33は、蓄積されたエネルギーを解放することによって劈開を伝播し続ける)。
【0029】
一旦、劈開アーム9が上昇位置(
図6)にあると、ブレード61が作動され、ブレードを半導体構造Sの周縁45に接触させる。ブレード61は、劈開面に沿った劈開を容易にするため、半導体構造における損傷領域の近くの周縁に接触し得る。ブレード61は、劈開面65(
図7)に沿って劈開を開始し、半導体構造Sを劈開面65に沿って2つの部分に分離させる。ブレード61が劈開を開始すると、ばね部材33に蓄積されたばねエネルギーが解放され、吸引ロッド23が劈開アーム9を介して上方に移動され、これは、半導体構造Sの上部セクション69(
図7)を下部セクション73から分離し続ける。
【0030】
いくつかの実施形態では、劈開システムは、劈開の品質を制御するように調整可能であるように構成される。例えば、このシステムは、蓄積され劈開中に放出されるエネルギー量を調整するように、異なるばね定数を有する交換可能なばね部材を含み得る。いくつかの実施形態では、劈開システムは、螺旋状のばね及び積み重ねた皿ばねなどの異なるタイプの交換可能なばねを含む。螺旋状のばねは、変位の関数として線形の劈開力を提供することができ、皿ばねは、比較的一定の吸引カップ力を提供することができる。あるいはまた、又はそれに加えて、上述したカラークランプ79は、ばね部材33のストローク、及びばね部材33によって蓄積され劈開伝播中に放出されるエネルギーを変更するために、吸引ロッドの長手方向軸に沿って動かされることができる。
【0031】
従来の劈開システムと比較して、本開示の劈開システムは、いくつかの利点を有する。本劈開システムにおけるばね部材の使用は、劈開アームが上昇するときに、ばねエネルギーを蓄えることを可能にする。劈開がブレードによって伝播されると、ばねのエネルギーは、半導体構造を2つの部分に分離させるように解放される。このことは、劈開が、劈開制御システム、劈開アームの質量、及び/又はモーターの特性よりはむしろ、蓄積されたばねエネルギーに依存可能にする。このことは、劈開を、伝播中、首尾一貫(consistent)させ(均質にし)、これは劈開された表面の表面粗さを低減し、劈開の円弧を減じる可能性がある。劈開システムがカラークランプを含む実施形態では、カラークランプは、ばね部材の予圧縮を調整するために、吸引ロッドの長手方向軸に沿って動かすことができる。劈開アセンブリがベローズ吸引カップを含む実施形態では、劈開アームは、半導体構造Sを、半導体構造の劈開伝播後縁の方で依然として把持しながら、上方に移動することができる。他の実施形態では、ばねの取り付けポイントを再配置(移転)するように設計を変更することによって、予圧縮を増加又は減少させることができる。
【実施例】
【0032】
本開示のプロセスは、以下の実施例によってさらに説明される。これらの例は、限定的な意味で見られるべきではない。
例1:ばね力と圧縮
【0033】
図8は、ばね圧縮の関数としての全ばね力を示している。劈開アームの開始位置では、ばねエネルギーは、3.61ポンドである。ばねは、6.5ポンドのばね力を生成するため、約12mm圧縮された。劈開が伝播し、ばねエネルギーが予圧縮量の3.61ポンドまで解放された。ばねは、6.971ポンドの最大圧縮力を生み出すことができた。6.971ポンド未満の力で劈開するウェーハに関して、アームが劈開力に寄与することなく、ばねだけで劈開に十分である。いくつかの実施形態では、劈開の終わり(3.61ポンド)での吸引カップの終了速度は、劈開アームの開始回転速度に近似するか、又は一致するであろう。
【0034】
本明細書で使用される場合、「約(about)」、「実質的に」、「本質的に」及び「ほぼ(approximately)」の用語は、寸法、濃度、温度、又は他の物理的又は化学的性質又は特性の範囲と組み合わせて使用されるとき、例えば、丸め、測定方法、又はその他の統計的変動に起因する変動を含んで、性質又は特性の範囲の上限及び/又は下限に存在する可能性のある変動をカバーすることを意味する。
【0035】
本開示又はその実施形態の要素を紹介するとき、冠詞「a」、「an」、「the」及び「上記(said)」は、1つ又は複数の要素が存在することを意味することを意図している。「備える(comprising)」、「含む(including)」、「含む(containing)」及び「有する(having)」の用語は、包括的であることを意図しており、列記された要素以外の追加の要素が存在する可能性があることを意味する。特定の配向を示す用語の使用(例えば、「上」、「底」、「側」など)は、説明の便宜のためであり、記述された品目のいずれの特定の配向を要求しない。
【0036】
種々の変更は、本開示の範囲を逸脱することなく、上述の構成及び方法においてなされることができるので、上述の記載及び添付の図面に含まれるすべての事項は、理解を助けるためのもので限定を意味するものではないと解釈されるべきである。