(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-12
(45)【発行日】2024-01-22
(54)【発明の名称】クリールユニット及びクリール装置
(51)【国際特許分類】
B65H 67/08 20060101AFI20240115BHJP
D01H 15/00 20060101ALI20240115BHJP
B65H 69/06 20060101ALI20240115BHJP
【FI】
B65H67/08 Z
D01H15/00 B
B65H69/06
(21)【出願番号】P 2020051449
(22)【出願日】2020-03-23
【審査請求日】2023-02-17
(73)【特許権者】
【識別番号】390006323
【氏名又は名称】ポリプラスチックス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591070587
【氏名又は名称】株式会社梶製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】弁理士法人G-chemical
(72)【発明者】
【氏名】石沢 宏康
(72)【発明者】
【氏名】村上 浩
(72)【発明者】
【氏名】北川 英樹
【審査官】久慈 純平
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-302341(JP,A)
【文献】特開2014-34466(JP,A)
【文献】特開2008-94540(JP,A)
【文献】特開2018-16733(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 67/08
D01H 15/00
B65H 69/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
糸条パッケージから糸条を引き出すクリールユニットであって、
第1架台と、第2架台と、ガイドロールと、第1カッターと、第2カッターと、スプライサーと、ガイドと、引き取りローラーとを備え、
第1架台に設置した糸条パッケージから繰り出した第1糸条を、引き取りローラーで一方向に進行させ、
第2架台に設置した糸条パッケージから、進行する第1糸条と略並行に第2糸条を繰り出して、その先端をガイドに係止して、
進行する第1糸条にガイドロールを押圧して、第1糸条の進行経路を第2糸条側に移動させ、第2糸条を係止したガイドを第1糸条側に移動させて、進行する第1糸条に第2糸条を接触させ、
第1糸条と第2糸条の接触部分にスプライサーから空気を噴射して第1糸条と第2糸条を交絡させ、
交絡部より進行方向後方の第1糸条を第1カッターにより切断し、交絡部より先端側の第2糸条を第2カッターで切断することで、第1糸条に第2糸条を継糸する機構を備えた、クリールユニット。
【請求項2】
糸条パッケージから糸条を引き出すクリールユニットであって、
第1架台と、第2架台と、第1ガイドロールと、第2ガイドロールと、第1カッターと、第2カッターと、第3カッターと、第4カッターと、スプライサーと、第1ガイドと、第2ガイドと、引き取りローラーとを備え、
第1架台に設置した糸条パッケージから繰り出した第1糸条を、引き取りローラーで一方向に進行させ、
第2架台に設置した糸条パッケージから、進行する第1糸条と略並行に第2糸条を繰り出して、その先端を第2ガイドに係止して、
進行する第1糸条に第1ガイドロールを押圧して、第1糸条の進行経路を第2糸条側に移動させ、第2糸条を係止した第2ガイドを第1糸条側に移動させて、進行する第1糸条に第2糸条を接触させ、
第1糸条と第2糸条の接触部分にスプライサーから空気を噴射して第1糸条と第2糸条を交絡させ、
交絡部より進行方向後方の第1糸条を第1カッターにより切断し、交絡部より先端側の第2糸条を第2カッターで切断することで、第1糸条に第2糸条を継糸する機構と、
第2架台に設置した糸条パッケージから繰り出した第2糸条を、引き取りローラーで一方向に進行させ、
第1架台に設置した糸条パッケージから、進行する第2糸条と略並行に第1糸条を繰り出して、その先端を第1ガイドに係止して、
進行する第2糸条に第2ガイドロールを押圧して、第2糸条の進行経路を第1糸条側に移動させ、第1糸条を係止した第1ガイドを第2糸条側に移動させて、進行する第2糸条に第1糸条を接触させ、
第2糸条と第1糸条の接触部分にスプライサーから空気を噴射して第2糸条と第1糸条を交絡させ、
交絡部より進行方向後方の第2糸条を第4カッターにより切断し、交絡部より先端側の第1糸条を第3カッターで切断することで、第2糸条に第1糸条を継糸する機構とを備えた、クリールユニット。
【請求項3】
糸条パッケージの糸条残分を検知するセンサーを備える、請求項1又は2に記載のクリールユニット。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1項に記載のクリールユニットを複数個備えたクリール装置。
【請求項5】
請求項4に記載のクリール装置を用いて糸条パッケージから糸条を引き出す工程を含む、長繊維強化プラスチックの製造方法。
【請求項6】
更に、糸条パッケージから引き出された糸条に溶融プラスチックを付着及び/又は含浸させる工程、糸条に付着及び/又は含浸した溶融プラスチックを固化させる工程を含む、請求項5に記載の長繊維強化プラスチックの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糸条パッケージから糸条を引き出すクリールユニットと、前記クリールユニットを複数個備えるクリール装置に関する。
【背景技術】
【0002】
クリール装置を用いて、複数個の糸条パッケージから引き出された糸条を一方向に引き揃え、糸条群としたものに、熱可塑性樹脂に含浸させる等の加工を連続的に行うことが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
クリール装置を用いて、複数個の糸条パッケージから糸条を引き出す場合、1個の糸条パッケージから糸条の引き出しが終わると、作業を一時停止して、糸条パッケージを新たなものに換えて、新糸条パッケージから引き出された糸条に繋ぎ替える作業が必要である。
【0004】
そして、複数個の糸条パッケージの糸条残量にばらつきがあると、度々作業を停止して繋ぎ替えることが必要となり、作業効率が著しく低下することが問題であった。また、巻き取り量が均一の糸条パッケージを使用すれば、複数個の糸条パッケージを同時に繋ぎ替えることができるが、巻き取り量が均一の糸条パッケージは割高であることが問題であった。また、巻き取り量が不均一な糸条パッケージは安価であるが、このような糸条パッケージを使用した場合にも、糸条残量にかかわらず同時に繋ぎ替えると、作業効率の低下を抑制することができるが、糸条の廃棄分が多くなるため、コスト削減効果は低いことが問題であった。
【0005】
また、クリール装置を用いて引き出された糸条を、長繊維強化プラスチックに加工する場合は、糸条の引き出し作業が停止すると、溶融プラスチックを含浸する工程に付していた糸条は、加熱された状態で停止するため、プラスチックが焦げる等により商品価値が著しく低下して、廃棄を余儀なくされていた。そして、度々糸条の引き出し作業が停止すると、廃棄量が膨大になることが問題であった。すなわち、歩留まりの低下が問題であった。
【0006】
特許文献2には、ガラス繊維の糸を自動的に繋ぎ替える装置の発明が記載されている。しかし、ここに記載の装置は、第1の糸と第2の糸とを合わせて把持し、ここにスプライサーから空気を噴射して第1の糸と第2の糸とを繋ぐため、糸の引き出し作業を停止すること無く繋ぎ替えようとすると、糸に過剰な張力がかかり、糸が切断されやすいことが問題であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2018-016733号公報
【文献】特開平04-066480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の目的は、第1の糸条パッケージの糸条を引き出す作業を停止することなく、第2の糸条パッケージの糸条に繋ぎ替える継糸機能を備えたクリールユニットを提供することにある。
本発明の他の目的は、前記クリールユニットを複数備えるクリール装置を提供することにある。
本発明の他の目的は、前記クリール装置を用いて長繊維強化プラスチックを製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するものとして、本発明は、糸条パッケージから糸条を引き出すクリールユニットであって、
第1架台と、第2架台と、ガイドロールと、第1カッターと、第2カッターと、スプライサーと、ガイドと、引き取りローラーとを備え、
第1架台に設置した糸条パッケージから繰り出した第1糸条を、引き取りローラーで一方向に進行させ、
第2架台に設置した糸条パッケージから、進行する第1糸条と略並行に第2糸条を繰り出して、その先端をガイドに係止して、
進行する第1糸条にガイドロールを押圧して、第1糸条の進行経路を第2糸条側に移動させ、第2糸条を係止したガイドを第1糸条側に移動させて、進行する第1糸条に第2糸条を接触させ、
第1糸条と第2糸条の接触部分にスプライサーから空気を噴射して第1糸条と第2糸条を交絡させ、
交絡部より進行方向後方の第1糸条を第1カッターにより切断し、交絡部より先端側の第2糸条を第2カッターで切断することで、第1糸条に第2糸条を継糸する機構を備えた、クリールユニットを提供する。
【0010】
本発明は、また、糸条パッケージから糸条を引き出すクリールユニットであって、
第1架台と、第2架台と、第1ガイドロールと、第2ガイドロールと、第1カッターと、第2カッターと、第3カッターと、第4カッターと、スプライサーと、第1ガイドと、第2ガイドと、引き取りローラーとを備え、
第1架台に設置した糸条パッケージから繰り出した第1糸条を、引き取りローラーで一方向に進行させ、
第2架台に設置した糸条パッケージから、進行する第1糸条と略並行に第2糸条を繰り出して、その先端を第2ガイドに係止して、
進行する第1糸条に第1ガイドロールを押圧して、第1糸条の進行経路を第2糸条側に移動させ、第2糸条を係止した第2ガイドを第1糸条側に移動させて、進行する第1糸条に第2糸条を接触させ、
第1糸条と第2糸条の接触部分にスプライサーから空気を噴射して第1糸条と第2糸条を交絡させ、
交絡部より進行方向後方の第1糸条を第1カッターにより切断し、交絡部より先端側の第2糸条を第2カッターで切断することで、第1糸条に第2糸条を継糸する機構と、
第2架台に設置した糸条パッケージから繰り出した第2糸条を、引き取りローラーで一方向に進行させ、
第1架台に設置した糸条パッケージから、進行する第2糸条と略並行に第1糸条を繰り出して、その先端を第1ガイドに係止して、
進行する第2糸条に第2ガイドロールを押圧して、第2糸条の進行経路を第1糸条側に移動させ、第1糸条を係止した第1ガイドを第2糸条側に移動させて、進行する第2糸条に第1糸条を接触させ、
第2糸条と第1糸条の接触部分にスプライサーから空気を噴射して第2糸条と第1糸条を交絡させ、
交絡部より進行方向後方の第2糸条を第4カッターにより切断し、交絡部より先端側の第1糸条を第3カッターで切断することで、第2糸条に第1糸条を継糸する機構とを備えた、クリールユニットを提供する。
【0011】
本発明は、また、糸条パッケージの糸条残分を検知するセンサーを備える前記クリールユニットを提供する。
【0012】
本発明は、また、前記クリールユニットを複数個備えたクリール装置を提供する。
【0013】
本発明は、また、前記クリール装置を用いて糸条パッケージから糸条を引き出す工程を含む、長繊維強化プラスチックの製造方法を提供する。
【0014】
本発明は、また、更に、糸条パッケージから引き出された糸条に溶融プラスチックを付着及び/又は含浸させる工程、糸条に付着及び/又は含浸した溶融プラスチックを固化させる工程を含む、前記長繊維強化プラスチックの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明のクリールユニットは、第1架台1に設置された糸条パッケージからの第1糸条10の引き出し作業を停止することなく、第2架台2に設置された糸条パッケージから引き出される第2糸条20に繋ぎ替えることができる。そのため、繋ぎ替えの度に作業を中断する場合に比べて、引き出し作業効率を飛躍的に向上させることができ、歩留まりの低下を防止することができる。
また、上記の通り、糸条の引き出し作業を停止することなく、繋ぎ替えることができるので、本発明のクリールユニットを使用すれば、巻き取り量が不均一である糸条パッケージを使用した場合にも、作業効率を低下させることなく、複数ある糸条パッケージのそれぞれが、糸条残量が一定以下になった時点で継糸作業を実施することができる。
そして、前記クリールユニットを備えるクリール装置を使用すれば、コストを削減しつつ、効率よく長繊維強化プラスチックを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施形態1に係るクリールユニットC1の、継糸作業開始前を示す模式平面図である。
【
図2】実施形態1に係るクリールユニットC1の、継糸作業開第1段階を示す模式平面図である。
【
図3】実施形態1に係るクリールユニットC1の、継糸作業第2段階を示す模式平面図である。
【
図4】実施形態1に係るクリールユニットC1の、継糸作業終了時を示す模式平面図である。
【
図5】架台の一例を示す模式図(a)と、外取りタイプの糸条パッケージの一例を示す模式図(b)である。
【
図6】ガイド付き(第2)スプライサー23のアーム部42に第2糸条20を係止して待機している状態を示す模式図(a)と、空気噴出して、第1糸条10に第2糸条20を継糸する際に、開口部をパッドで封止している状態を示す模式図(b)である。
【
図7】ガイド付き第2カッター24のアーム部52に第2糸条20を係止している状態を示す模式図である。
【
図8】架台1又は2に設置した糸条パッケージから糸条10又は20を繰り出す際の、繰り出される糸条と水平面との角度(α:度)を示す模式図である。
【
図9】実施形態2に係るクリールユニットC2の、継糸作業開始前を示す模式平面図である。
【
図10】実施形態2に係るクリールユニットC2の、継糸作業開第1段階を示す模式平面図である。
【
図11】実施形態2に係るクリールユニットC2の、継糸作業第2段階を示す模式平面図である。
【
図12】実施形態2に係るクリールユニットC2の、継糸作業終了時を示す模式平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の実施の形態を、必要に応じて図面を参照しつつ詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0018】
(実施形態1)
実施形態1に係るクリールユニットC1は、糸条パッケージから繰り出された糸条を引き出す装置であって、
図1~4に示す通り、(C1-a)~(C1-d)の順に作動して、第1架台1に設置された糸条パッケージの第1糸条10から、第2架台2に設置された糸条パッケージの第2糸条20に繋ぎ替えて引き出す機構[1]を備える。
【0019】
クリールユニットC1は、
図1に示す通り、ライン100に沿って、第1架台1と第2架台2と、(第1)ガイドロール11と、第1カッター12と、ガイド付き(第2)スプライサー23と、ガイド付き第2カッター24と、引き取りローラー3とが、この順に設置されている。そして、糸条パッケージから、引き取りローラー3により引き出された糸条は、ライン100に沿って進行する。
【0020】
クリールユニットC1では、ライン100上の一点を交絡位置102とし、ライン100の進行方向において、交絡位置102近傍にガイド付き(第2)スプライサー23を備え、交絡位置102より後方に、(第1)ガイドロール11と第1カッター12とを備え、交絡位置102より前方に、ガイド付き第2カッター24を備える。
【0021】
糸条パッケージ80は、糸条が円筒状に巻き取られたものであり、巻き取られた糸条の繰り出し方法によって外取りタイプと、内取りタイプがある。前記外取りタイプは、
図5(b)に示すように、糸条82が軸81に巻かれたものであり、外側より糸条を繰出して使用するものである。そして、前記内取りタイプは、軸となるものがない状態で巻かれたものであり、内側より糸条を繰出して使用するものである。
【0022】
糸条82は、例えば5~16000tex程度の繊度の繊維の束から成る。また、前記繊維としては、特に制限が無く、例えば、セルロース繊維、綿、絹、麻、毛、レーヨン、ポリエステル、アクリル、ナイロン、アラミド繊維等の有機繊維;カーボン繊維、ガラス繊維、ステンレス繊維等の無機繊維が挙げられる。また、前記繊維は、表面処理(例えば、収束剤等による表面処理)がなされていてもよい。
【0023】
第1架台1と第2架台2は、糸条パッケージ80を、糸条を繰り出し可能な状態で設置するための部材である。架台の形状は設置される糸条パッケージ80の糸条の繰り出し方法に応じて選択することができる。
【0024】
たとえば、糸条パッケージ80が外取りタイプ80の場合には、
図5(a)に記載の、取付け軸70と、取付け軸70の両端の固定具71とを備える架台によって、回転可能に保持することが好ましい。前記形状の架台の場合、取付け軸70に、外取りタイプの糸条パッケージ80を環装することによって、糸条パッケージ80を保持することができる。
【0025】
糸条パッケージ80が内取りタイプの場合には、平板状の架台に載置するのが好ましい。そして、前記架台は、繰り出される糸条がねじれないようにするために、糸条の引き出し速度に応じた速度で、軸部を中心に回転する機能を備えることが好ましい。
【0026】
第1架台1と第2架台2の配置方法には特に制限が無く、ライン100を中心に、上下に配置(詳細には、一方を上位に配置し、一方を下位に配置)する方法や、並列に配置する方法がある。空間効率及を高める点では、上下配置が好ましい。
【0027】
更に、取付け軸70と固定具71とを備える架台は、取付け軸70が水平になるよう設置してもよいし、取付け軸70が垂直或いは斜めになるよう設置してもよい。
【0028】
第1架台1に設置された糸条パッケージから繰り出された第1糸条10は、引き取りローラー3によって引き出される。第1糸条10の引き出し速度は、例えば8~1000m/分である。
【0029】
引き取りローラー3は、架台に設置された糸条パッケージから繰り出した糸条を、ライン100に沿って引き出すための部材である。引き取りローラー3は、前記効果を有する範囲において特に制限が無いが、例えば、糸条を2本のロールで挟み込み、押えて送るロール式引取機や、糸条を2本のベルトで挟み込み、押さえて送るベルト式引取機である。
【0030】
(第1)ガイドロール11は、円筒状のガイドロール部材と、このガイドロール部材に内挿される支軸と、この支軸を回転自在に支持する軸受とから構成されている。そして、(第1)ガイドロール11を進行する第1糸条10を押圧すると、第1糸条の進行に追従して回転する。前記ガイドロール部材は、糸条との摩擦抵抗を抑えるために表面処理(例えば、梨地処理後に、ハードクロムメッキを施す等の処理)が施されていてもよい。
【0031】
(第1)ガイドロール11は、交絡位置102より進行方向後方の、ライン100より外側(好ましくは、引き取りローラー3により第1糸条10を引き出した場合の、第1糸条10の進行経路より外側)において、移動可能に設置される。そして、第1糸条と第2糸条の継糸作業を開始するタイミングで、(第1)ガイドロール11を、駆動機構によってライン100側(
図1矢印103)に移動させると、(第1)ガイドロール11は第1糸条10の進行速度に合わせて回転しながら、進行中の第1糸条10を第2糸条20側に押圧する。これにより、摩擦による劣化を抑制しつつ、(第1)ガイドロール11を経由した第1糸条10の進行経路を、ライン100上を通る経路に変更させることができる。
【0032】
ガイド付き(第2)スプライサー23は、進行する第1糸条10と略並行に繰り出された第2糸条20を、第1糸条10と継糸するまでのあいだ係止するための機能と、空気(例えば、圧縮空気)を噴射する機能を有する部材である。尚、第2糸条20を、「進行する糸条と略並行に繰り出す」とは、第2糸条20(ここでは、新糸条)を、架台に設置された糸条パッケージから、第1糸条10(ここでは、旧糸条)の進行方向前方側であって、進行する旧糸条と交わらない位置に繰り出すことを意味する。ガイド付き(第2)スプライサー23としては、特に制限されることはないが、例えば、特表2017-508686号に記載の糸継ぎ機を使用することができる。
図6に示されるガイド付き(第2)スプライサー23は、噴射口41近傍に、第2糸条20をガイドするためのアーム部42と、空気噴出時に開口部を封止するパッド43を備える。パッド43を備えることにより、効率よく且つ効果的に糸条を交絡させることができる。また、空気噴射により第2糸条20が吹き飛ばないように保持することもできる。
【0033】
ガイド付き(第2)スプライサー23は、ライン100の進行方向において交絡位置102近傍の、ライン100より外側(好ましくは、引き取りローラー3により第2糸条20を引き出した場合の、第2糸条20の進行経路より外側)において移動可能に設置せられ、第2糸条20を係止した状態で待機し、第1糸条と第2糸条の継糸作業を開始するタイミングで、駆動機構によってライン100側に移動して、第1糸条10と第2糸条20とが接触した部分に、空気を噴射する。
【0034】
ガイド付き(第2)スプライサー23は、第1糸条10と第2糸条20とが接触した部分に空気を噴射することで、各糸条の繊維をほぐし、交絡させて、第1糸条と第2糸条とを継糸する。ガイド付き(第2)スプライサー23による空気噴射は、第1糸条10と第2糸条20との接触した部分を、第2糸条20側(すなわち、新糸条側)から空気噴射を行うことが、効率よく且つ効果的に糸条を交絡させることができる点で好ましい。空気の噴射時間は、例えば0.1~5秒程度である。また、空気の噴射は連続的に行ってもよいし、間欠的に行ってもよい。
【0035】
ガイド付き第2カッター24は、進行する第1糸条10と略並行に繰り出された第2糸条20を、第1糸条10と継糸するまでのあいだ係止するための機能と、継糸後に余分な第2糸条を切断する機能とを備える部材である。
図7に示されるガイド付き第2カッター24は、刃51近傍に、第2糸条20をガイドするためのアーム部52を備える。
【0036】
ガイド付き第2カッター24は、交絡位置102より進行方向前方の、ライン100より外側(好ましくは、引き取りローラー3により第2糸条20を引き出した場合の、第2糸条20の進行経路より外側)において移動可能に設置される。そして、第2糸条20を係止した状態で待機し、第1糸条と第2糸条の継糸作業を開始するタイミングで、駆動機構によってライン100側に移動し、ガイド付き(第2)スプライサー23により第1糸条10と第2糸条20とを交絡させた後に、第2糸条20の交絡部104より先端側25を切断して除去する。第2糸条20の切断位置は、交絡部104より先端側であればよいが、なかでも、交絡部104の前方0.1~50mm辺りで切断することが、一旦繋がれた糸条が剥がれる等の不都合を排除することができる点で好ましい。
【0037】
第1カッター12は、継糸後に余分な第1糸条を切断する機能を備える部材である。尚、第1カッター12は、第1糸条をガイドする機能を備えていてもよい。第1カッター12は、交絡位置102より進行方向後方であって、(第1)ガイドロール11より進行方向前方の、ライン100より外側(好ましくは、引き取りローラー3により第1糸条10を引き出した場合の、第1糸条10の進行経路より外側)において移動可能に設置される。そして、第1糸条と第2糸条の継糸作業を開始するタイミングで、駆動機構によってライン100側に移動し、ガイド付き(第2)スプライサー23により第1糸条10と第2糸条20とを交絡させた後に、第1糸条10を交絡部104より進行方向後方にて切断する。第1糸条10の切断位置は、交絡部104より進行方向後方であれば特に制限がなく、交絡部104の後方0.1~500mm辺りである。
【0038】
第1カッター12、ガイド付き第2カッター24、(第1)ガイドロール11、及びガイド付き(第2)スプライサー23は、糸条の切断が終了すれば、駆動機構によって、元の位置に戻る。
【0039】
尚、本実施形態では、ガイドは、第2カッター及び(第2)スプライサーに付属しているが、第2カッターや(第2)スプライサーとは別に設けてもよいし、第2カッター又は(第2)スプライサーの一方にのみ付属していてもよい。
【0040】
第2カッターや(第2)スプライサーとは別個の部材として設けられる場合のガイドは、前記効果を有する範囲において特に制限が無いが、例えば、糸条を通過させるためのリングを形成したワイヤである。
【0041】
そして、ガイドは、第2カッターより進行方向前方の、ライン100より外側(好ましくは、引き取りローラー3により第2糸条20を引き出した場合の、第2糸条20の進行経路より外側)において移動可能に設置される。そして、ガイドは、第2糸条20を係止した状態で待機し、第1糸条と第2糸条の継糸作業を開始するタイミングで、駆動機構によってライン100側に移動する。これにより、ガイドに係止される第2糸条を、第1糸条と接触させることができる。そして、糸条の切断が終了すれば、駆動機構によって、元の位置に戻される。
【0042】
クリールユニットC1は、第1架台1に設置された糸条パッケージの糸条残分を検知するセンサー(図示せず)を備えていてもよい。そして、センサーにより第1糸条の残分が一定以下になったことを検知したのを機に、第1糸条と第2糸条の継糸作業を開始する機能を備えていてもよい。
【0043】
前記センサーとしては、例えば、糸条パッケージの糸条残分が少なくなると、第1糸条パッケージの円筒状の軸が可視化するので、それを検知するセンサーであってもよいし、超音波を照射して糸条パッケージの糸条厚みが一定以下となったのを感知するセンサーであってもよいし、糸条パッケージの重量が一定以下となったのを感知するセンサーであってもよい。
【0044】
更に、第1架台1に設置した糸条パッケージから第1糸条10を繰り出す角度、及び第2架台2に設置した糸条パッケージから第2糸条20を繰り出す角度(水平面と引き出される糸条との角度(α;度)、
図8参照)は、例えば60度以上となるように調整することが、糸にかかる張力を抑制することができる点において好ましい。そこで、糸条パッケージから繰り出される糸条の角度を調整するために、糸条の進行方向を転換する機能を備えるガイドを設けてもよい。
【0045】
前記ガイドとしては、前記効果を有する範囲において特に制限が無いが、例えば、糸条を通過させるためのリングを形成したワイヤである。
【0046】
更にまた、上記クリールユニットC1を構成する各部材は、それぞれ別個の部材として設けられていてもよいし、2個以上の部材が結合していてもよい。すなわち、ガイド付き第2カッター24や、ガイド付き(第2)スプライサー23のように、1個の部材が2個以上の機能を備えていてもよい。
【0047】
上記構成を有するクリールユニットC1は、下記[1]の継糸機構を備える。
[1]第1架台1に設置した糸条パッケージから繰り出され、引き取りローラー3により引き出されて一方向に進行する第1糸条に、第2架台2に設置した糸条パッケージから引き出された第2糸条を継糸する機構。
【0048】
クリールユニットC1によれば、第1架台1に設置された糸条パッケージからの第1糸条の引き出し作業を停止することなく、第2架台2に設置された糸条パッケージから引き出される第2糸条に繋ぎ替える作業、すなわち継糸作業、を行うことができる。そのため、継糸の度に作業を中断する場合に比べて、引き出し作業効率を飛躍的に向上させることができる。また、第1架台1に設置された糸条パッケージからの第1糸条の引き出しが終わりに近づいた時に、前記継糸作業を行うことで糸条の無駄を無くすことができ、原料コストの削減や、資源の有効利用に効果を発揮することができる。
【0049】
そして、クリールユニットから引き出された糸条に加工を施すことが望まれる場合には、引き取りローラー3の進行方向前方及び/又は進行方向後方に加工装置を設けて、進行する糸条に加工を施せばよい。
【0050】
(実施形態2)
実施形態2に係るクリールユニットC2は、糸条パッケージから繰り出された糸条を引き出す装置であって、第1架台1に設置された糸条パッケージの第1糸条10から、第2架台2に設置された糸条パッケージの第2糸条20に繋ぎ替えて引き出す機構[1]、及び
図9~12に示す通り、(C2-e)~(C2-h)の順に作動して、第2架台2に設置された糸条パッケージの第2糸条20から、第1架台1に設置された糸条パッケージの第1糸条10に繋ぎ替えて引き出す機構[2]を備える。そして、機構[1]では、クリールユニットC1の機構[1]と同様に、
図1~4に示す通り、(C1-a)~(C1-d)の順に作動する。
【0051】
クリールユニットC2は、
図9に示す通り、ライン100に沿って、第1架台1と第2架台2と、第1ガイドロール11と第2ガイドロール21と、第1カッター12と第4カッター22と、ガイド付き第1スプライサー13とガイド付き第2スプライサー23と、ガイド付き第2カッター24とガイド付き第3カッター14と、引き取りローラー3とが、この順に設置されている。
【0052】
また、第1ガイドロール11と第2ガイドロール21、第1カッター12と第4カッター22、ガイド付き第1スプライサー13とガイド付き第2スプライサー23、ガイド付き第2カッター24とガイド付き第3カッター14は、それぞれライン100を挟んで略対称に配置される。
【0053】
そして、第1ガイドロール11と第1カッター12と、ガイド付き第2スプライサー23とガイド付き第2カッター24は機構[1]において作動し、第2ガイドロール21と第4カッター22と、ガイド付き第1スプライサー13とガイド付き第3カッター14は機構[2]において作動する。そして、作業対象である糸条が第1糸条と第2糸条の間で変更になる以外は、第2ガイドロール21と第4カッター22は、第1ガイドロール11と第1カッター12と同様に作動し、ガイド付き第1スプライサー13とガイド付き第3カッター14は、ガイド付き第2スプライサー23とガイド付き第2カッター24と同様に作動する。
【0054】
そして、第2架台2に設置した糸条パッケージから繰り出された第2糸条20は、引き取りローラー3により引き取られ、ライン100に沿って一方向に進行する。
【0055】
第2ガイドロール21は第1ガイドロール11と同じ機能を有する部材である。第2ガイドロール21は、交絡位置102より進行方向後方の、ライン100より外側(好ましくは、引き取りローラー3により第2糸条20を引き出した場合の、第2糸条20の進行経路より外側)において移動可能に設置される。そして、第2ガイドロール21は、駆動機構によってライン100側(
図9矢印103)に移動すると、第2糸条の進行速度に合わせて回転しながら、進行中の第2糸条を第1糸条側に押圧する。これにより、摩擦による劣化を抑制しつつ、第2ガイドロール21を経由した第2糸条の進行経路を、ライン100上を通る経路に変更させることができる。
【0056】
ガイド付き第1スプライサー13は、ガイド付き(第2)スプライサー23と同じ機能を有する部材である。ガイド付き第1スプライサー13は、進行する第2糸条20と略並行に繰り出された第1糸条10を、第2糸条20と継糸するまでのあいだ係止するための機能と、空気(例えば、圧縮空気)を噴射する機能を有する。
【0057】
ガイド付き第1スプライサー13は、ライン100の進行方向において交絡位置102近傍の、ライン100より外側(好ましくは、引き取りローラー3により第1糸条10を引き出した場合の、第1糸条10の進行経路より外側)において移動可能に設置せられ、第1糸条10を係止した状態で待機し、第2糸条と第1糸条の継糸作業を開始するタイミングで、駆動機構によってライン100側に移動して、第2糸条20と第1糸条10とが接触した部分に、空気を噴射する。
【0058】
ガイド付き第3カッター14は、ガイド付き第2カッター24と同じ機能を有する部材である。ガイド付き第3カッター14は、進行する第2糸条20と略並行に繰り出された第1糸条10を、第2糸条20と継糸するまでのあいだ係止するための機能と、継糸後に、余分な第1糸条を切断する機能とを備える。
【0059】
ガイド付き第3カッター14は、交絡位置102より進行方向前方、且つライン100より外側(好ましくは、引き取りローラー3により第1糸条10を引き出した場合の、第1糸条10の進行経路より外側)において移動可能に設置される。そして、ガイド付き第3カッター14は、第1糸条10を係止した状態で待機し、第1糸条と第2糸条の継糸作業を開始するタイミングで、駆動機構によってライン100側に移動し、ガイド付き第1スプライサー13により第1糸条10と第2糸条20とを交絡させた後に、第1糸条10の交絡部104より先端側15を切断し、除去する。第1糸条10の切断位置は、交絡部104より先端側であればよいが、なかでも、交絡部104の前方0.1~50mm辺りで切断することが、一旦繋がれた糸条が剥がれる等の不都合を排除することができる点で好ましい。
【0060】
尚、本実施形態では、ガイドは、第3カッター及び第1スプライサーに付属しているが、第3カッターや第1スプライサーとは別に設けてもよいし、第3カッター又は第1スプライサーの一方にのみ付属していてもよい。
【0061】
第4カッター22は、第1カッター12と同じ機能を有する部材である。すなわち、継糸後に余分な第2糸条を切断する機能を備える部材である。また、第4カッター22は、第2糸条をガイドする機能を備えていてもよい。第4カッター22は、交絡位置102より進行方向後方であって、第2ガイドロール21より進行方向前方、且つライン100より外側(好ましくは、引き取りローラー3により第2糸条20を引き出した場合の、第2糸条20の進行経路より外側)において移動可能に設置される。そして、第1糸条と第2糸条の継糸作業を開始するタイミングで、駆動機構によってライン100側に移動し、ガイド付き第1スプライサー13により第1糸条10と第2糸条20とを交絡させた後に、第2糸条20を交絡部104より進行方向後方にて切断する。第2糸条20の切断位置は、交絡部104より進行方向後方であれば特に制限がなく、交絡部104の後方0.1~500mm辺りである。
【0062】
ガイド付き第1スプライサー13、ガイド付き第3カッター14、第2ガイドロール21、及び第4カッター22は、糸条の切断が終了すれば、駆動機構によって、元の位置に戻る。
【0063】
スプライサーによる空気噴射は、旧糸条と新糸条との接触部を、新糸条側から空気噴射を行うことが好ましい。従って、進行する第1糸条10に第2糸条20を繋ぐ場合には、第1糸条10と第2糸条20との接触部を、第2糸条20側から空気噴射を行い、進行する第2糸条20に第1糸条10を繋ぐ場合には、第1糸条10と第2糸条20との接触部を第1糸条10側から空気噴射を行うことが好ましい。そのため、スプライサーが空気噴射方向を選択できる場合は、空気噴射方向を前記の通りに設定することが好ましく、スプライサーが空気噴射方向を選択できない場合には、
図9~12に示すように、第1糸条側10から空気を噴射するガイド付き第1スプライサー13と、第2糸条20側から空気を噴射するガイド付き第2スプライサー23を設置するのが好ましい。
【0064】
クリールユニットC2は、クリールユニットC1と同様に、第1架台1及び第2架台2に設置された各糸条パッケージの糸条残分を検知するセンサーを備えていてもよい。そして、センサーにより糸条残分が一定以下になったことを検知したのを機に、継糸作業を開始する機能を備えていてもよい。
【0065】
上記構成を有するクリールユニットC2は、下記[1][2]の継糸機構を備える。
[1]第1架台1に設置した糸条パッケージから繰り出され、引き取りローラー3により引き出されて一方向に進行する第1糸条に、第2架台2に設置した糸条パッケージから引き出された第2糸条を継糸する機構。
[2]第2架台2に設置した糸条パッケージから繰り出され、引き取りローラー3により引き出されて一方向に進行する第2糸条に、第1架台1に設置した糸条パッケージから引き出された第1糸条を継糸する機構。
【0066】
クリールユニットC2によれば、第1架台1に設置された糸条パッケージから繰り出された第1糸条10の引き出し作業を停止することなく、第2架台2に設置された糸条パッケージから繰り出された第2糸条20に繋ぎ替える作業を行うことができ、また、第2架台2に設置された糸条パッケージから繰り出された第2糸条20の引き出し作業を停止することなく、第1架台1に設置された糸条パッケージから繰り出された第1糸条10に繋ぎ替える作業を行うこともできる。そのため、継糸作業後に、架台に設置された、旧糸条パッケージを新糸条パッケージに取り替えることで、連続的に糸条の引き出し作業を行うことができ、継糸の度に作業を中断する場合に比べて、引き出し作業効率を飛躍的に向上させることができ、歩留まりの低下を抑制することができる。
【0067】
[クリール装置]
本開示のクリール装置は、クリールユニットC1又はクリールユニットC2を複数個備える。
【0068】
前記クリール装置が備えるクリールユニットの数は、特に制限はないが、例えば1~48個である。クリールユニットの配置方法としては、特に制限がなく、上下配置や並列配置など、用途に応じて適宜選択することができる。
【0069】
前記クリール装置によれば、糸条の引き出し作業を停止することなく、糸条の繋ぎ替え作業を行うことができる。そのため、連続的に糸条の引き出し作業を行うことができ、引き出し作業効率を飛躍的に向上させることができる。また、糸条の無駄を無くすことができ原料コストの削減や、資源の有効利用に効果を発揮することができる。
【0070】
[長繊維強化プラスチックの製造方法]
本開示の長繊維強化プラスチックの製造方法は、上記クリール装置を用いて糸条パッケージから糸条を引き出す工程を含む。
【0071】
前記長繊維強化プラスチックは予備成形体(若しくは、プリプレグ)であり、前記長繊維強化プラスチックの形状としては、例えば、ペレット状やテープ状など、最終製品である成形体の成型方法に応じて適宜選択することができる。
【0072】
例えば、最終製品である成形体を射出成形により形成する場合にはペレット状が好ましく、前記成形体をプレス成形やインサート成形により形成する場合には、テープ状が好ましい。
【0073】
前記長繊維強化プラスチックの製造方法は、前記工程以外にも他の工程を設けることができる。
【0074】
ペレット状の長繊維強化プラスチックの製造方法は、以下の工程を含むことが好ましい。
[1] 上記クリール装置を用いて糸条パッケージから糸条を引き出す工程
[2] 糸条パッケージから引き出された糸条に溶融プラスチックを付着及び/又は含浸させる工程
[3] 糸条に付着及び/又は含浸した溶融プラスチックを固化させて、ストランド状(=紐状)の長繊維強化プラスチックを得る工程
[4] ストランド状の長繊維強化プラスチックを裁断する工程
【0075】
前記工程[2]で使用するプラスチックとしては、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、スチレン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂等の熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0076】
前記ポリオレフィン系樹脂には、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ-1-ブテン、ポリイソブチレン、エチレンとプロピレンの共重合体、エチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体、ポリメチルペンテン、エチレン又はプロピレン(50モル%以上)と他の共重合モノマー(例えば、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、芳香族ビニル等)とのランダム、ブロック、若しくはグラフト共重合体が含まれる。
【0077】
また、前記ポリオレフィン系樹脂には、マレイン酸変性ポリオレフィン(マレイン酸変性ポリプロピレン)、無水マレイン酸変性ポリオレフィン(無水マレイン酸変性ポリプロピレン)等の酸変性ポリオレフィンも含まれる。
【0078】
前記ポリアミド系樹脂には、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド69、ポリアミド610、ポリアミド1010、ポリアミド612、ポリアミド46、ポリアミド11、ポリアミド12等の脂肪族ポリアミド;ナイロンMXD、ナイロン6T(ヘキサメチレンジアミンとテレフタル酸)、ナイロン6I、ナイロン9T、ナイロンM5T、ナイロン10T等の芳香族ポリアミドが含まれる。
【0079】
前記工程[2]では、糸条を構成する繊維束の中心部にまで溶融プラスチックを含浸させてもよいし、溶融プラスチックが糸条の表面を被覆するだけでもよい。更には、これらの中間であってもよい。すなわち、溶融プラスチックが糸条の表面を被覆し、且つ繊維束の表面近傍に含浸していてもよい。
【0080】
糸条に付着及び/又は含浸させる溶融プラスチック量は、用途に応じて適宜変更することができる。
【0081】
前記工程[3]における、糸条に付着及び/又は含浸した溶融プラスチックの固化は、プラスチックの融点以下の温度で冷却することによって行うことができる。冷却方法としては、空冷、水冷等が挙げられる。糸条に含浸させた溶融プラスチックを固化させることで、工程[3]を経て、ストランド状の長繊維強化プラスチック(=繊維束が長さ方向に揃えられた糸条に、プラスチックが付着して一体化した、ストランド状の複合体)が得られる。
【0082】
また、必要に応じて、冷却前に、溶融プラスチックが付着及び/又は含浸した糸条に成形処理を施してもよい。成形方法としては特に制限がないが、例えば、ストランドの太さを任意に調整する場合は、所望する太さに合わせた開口を有する口金から、溶融プラスチックが付着及び/又は含浸した糸条を、押出機等を利用して押出して成形し、その後、冷却する方法等が挙げられる。
【0083】
前記工程[4]は、ストランド状の長繊維強化プラスチックを、例えばペレット状(円柱状)に、裁断する工程である。裁断サイズは用途に応じて適宜選択することができ、例えば5~50mmの範囲である。
【0084】
工程[4]を経て、ペレット状の長繊維強化プラスチック(=ペレットと同じ長さの、繊維束が長さ方向に揃えられた糸条に、プラスチックが付着して一体化した、ペレット状の複合体)が得られる。
【0085】
テープ状の長繊維強化プラスチックの製造方法は、以下の工程を含むことが好ましい。
[1] 上記クリール装置を用いて糸条パッケージから糸条を引き出す工程
[2’] 糸条パッケージから引き出された糸条を開繊する工程
[3’] 開繊した糸条(=開繊糸)に溶融プラスチックを付着及び/又は含浸させる工程
[4’] 溶融プラスチックが付着及び/又は含浸した糸条を固化させて、テープ状の長繊維強化プラスチックを得る工程
【0086】
前記工程[2’]では、例えば、糸条に厚み方向に圧力を加えることで糸条を開繊することができる。これにより開繊糸が得られる。
【0087】
前記工程[3’]は、開繊糸を本工程に付す以外は、ペレット状の長繊維強化プラスチックの工程[2]と同様の方法で行うことができる。
【0088】
前記工程[4’]における冷却は、ペレット状の長繊維強化プラスチックの工程[3]と同様の方法で行うことができる。
【0089】
また、必要に応じて、冷却前に、溶融プラスチックが付着及び/又は含浸した糸条に成形処理を施してもよい。成形方法としては特に制限がないが、例えば、任意のサイズのテープを所望する場合は、所望するテープサイズ(厚み、幅)に合わせたスリットから、溶融プラスチックが付着及び/又は含浸した糸条を、押出機等を利用して押出して成形し、その後、冷却する方法や、溶融プラスチックが付着及び/又は含浸した糸条を、所望するテープサイズ(厚み、幅)までローラー等で加圧して成形し、その後、冷却する方法が挙げられる。
【0090】
工程[4’]を経て、任意の厚みや幅を有するテープ状の長繊維強化プラスチック(=テープと同じ長さの開繊糸が、長さ方向に揃えられ、ここにプラスチックが付着して一体化した、テープ状の複合体)が得られる。
【0091】
従来は、糸条の繋ぎ替えを行う度に、引き取りローラー3による糸条の引き出しを停止させていた。そのため、長繊維強化プラスチックの製造効率が悪かった。また、溶融プラスチックを含浸する工程に付した状態で、糸条の引き出し作業が停止すれば、糸条は加熱された状態に長く留まるため、プラスチックが焦げる等により、歩留まりが低下する問題が生じていた。しかし、本開示の製造方法によれば、糸条の引き出し作業を停止することなく糸条の繋ぎ替えが可能なクリール装置を用いて長繊維強化プラスチックを製造するため、歩留まりの低下を抑制することができ、長繊維強化プラスチックの製造効率を飛躍的に向上させることができる。
【0092】
そして、前記製造方法によって得られる、ペレット状の長繊維強化プラスチックには、ペレットと等しい長さの繊維(繊維の長さは、例えば5~50mm程度)が、ペレットの長さ方向に配列した状態で含まれる。また、テープ状の長繊維強化プラスチックには、テープの長さに等しい長さの繊維が、テープの長さ方向に配列した状態で含まれる。そのため、前記ペレット状の長繊維強化プラスチックやテープ状の長繊維強化プラスチックを、溶融し成形して得られる成形体は、軽量であり、その上、高い機械的強度を有するので、金属代替品として好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0093】
1 第1架台
10 第1糸条
11 第1ガイドロール
12 第1カッター
13 ガイド付き第1スプライサー
14 ガイド付き第3カッター
15 交絡部より先端側の第1糸条
2 第2架台
20 第2糸条
21 第2ガイドロール
22 第4カッター
23 ガイド付き(第2)スプライサー
24 ガイド付き第2カッター
25 交絡部より先端側の第2糸条
3 引き取りローラー
41 噴射口
42 ガイド付きスプライサーのアーム部
43 スプライサー開口部封止用のパッド
51 刃
52 ガイド付きカッターのアーム部
70 取付け軸
71 固定具
80 糸条パッケージ(外取りタイプ)
81 軸
82 巻き取られた糸条
100 ライン
101 ライン(若しくは、糸条)の進行方向
102 交絡位置
103 ガイドロールの移動方向
104 糸条の交絡部