(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-12
(45)【発行日】2024-01-22
(54)【発明の名称】測定分析システム
(51)【国際特許分類】
G01N 21/3563 20140101AFI20240115BHJP
【FI】
G01N21/3563
(21)【出願番号】P 2019160222
(22)【出願日】2019-09-03
【審査請求日】2022-08-22
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(72)【発明者】
【氏名】古川 祐光
【審査官】伊藤 裕美
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-527781(JP,A)
【文献】特開平02-157654(JP,A)
【文献】特開2002-005824(JP,A)
【文献】特開2007-333513(JP,A)
【文献】特開2019-095937(JP,A)
【文献】特表2008-503741(JP,A)
【文献】特開2017-023021(JP,A)
【文献】特開2002-082048(JP,A)
【文献】特開平07-128030(JP,A)
【文献】特開2010-200820(JP,A)
【文献】特表平07-500182(JP,A)
【文献】特表2011-506066(JP,A)
【文献】特開2017-181300(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00-G01N 21/61
G01N 33/02-G01N 33/14
A01G 7/00
G06Q 50/00-G06Q 50/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析装置と、当該分析装置と通信可能な測定装置とを備える測定分析システムであって、
前記測定装置は、
光源が放射する7000nm~11000nmの波長の赤外光が照射される第1ミラーと、
前記第1ミラーが反射する前記赤外光
が果実に照射されたときの反射光が照射される第2ミラーと、
前記第2ミラーによる反射光を受光する受光部と、
前記受光部が受光した前記反射光に基づいて特定され
る吸収光情報を前記分析装置に送信する送信部と
を備え、
前記第1ミラーが反射する前記赤外光の軸と、前記第2ミラーに照射される前記反射光の軸とが、対向するように、前記第1ミラー及び前記第2ミラーが設けられて
おり、
前記分析装置は、
前記吸収光情報を取得する取得部と、
前記吸収光情報に基づいて、前記果実の味に関する成分の含有量の程度を特定する特定部と
を備える、
測定
分析システム。
【請求項2】
前記測定装置の位置を移動させる第1機構と、
前記第1ミラー及び前記第2ミラーの反射面の向きを変更する第2機構と、
前記果実の位置を特定するセンサと
前記特定された前記果実の位置に基づいて、前記第1機構及び前記第2機構を駆動するように制御する制御部と
を備える請求項
1に記載の測定
分析システム。
【請求項3】
対物レンズをさらに備え、
前記第1ミラーが反射した前記赤外光は前記対物レンズを介して前記果実へ照射される、請求項1に記載の測定分析システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分析装置、測定装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
スマート農業が注目を集めている。スマート農業とは、ロボット技術又は情報通信技術を活用して、省力化・精密化や高品質生産を実現する等を推進している新たな農業のことである(非特許文献1参照)。スマート農業では、農場の気温又は湿度などの栽培管理のための基礎データを自動測定又は自動制御するためのIoT(Internet of Things)技術が活用されており、高齢化を背景に、農作業の一層の効率化が期待されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】http://www.maff.go.jp/j/heya/sodan/17009/02.html
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
農作業の効率を改善するだけでなく、収穫対象物となる果実その他の対象物(本明細書において「オブジェクト」という。)が有する味および成分(本明細書において「味」で代表させる。)に関する情報を効率的に取得したいという要請がある。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、対象物の味に関する情報を効率的に取得するための技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る分析装置は、オブジェクトに赤外光を照射したときの吸収光に関する情報である吸収光情報を取得する取得部と、前記吸収光情報に基づいて、前記オブジェクトの味情報を特定する特定部とを備える。吸収光情報とは、吸光度スペクトルとラマン散乱スペクトルとを指すものとする。本明細書において、特記しない限りは吸光度スペクトルを想定した構成とするが、ラマン散乱スペクトルの利用を除外するものではない。
【0007】
本発明の一態様に係る測定装置は、前記分析装置と通信可能な測定装置であって、光源から導かれた赤外光を反射し、前記オブジェクトを照射するミラーと、前記ミラーからの照射光が前記オブジェクトに照射されたときの前記オブジェクトによる反射光が前記ミラーを介して導かれる受光部と、前記受光部が受光した前記反射光に基づいて特定される前記吸収光情報を前記分析装置に送信する送信部とを備え、前記光源から導かれた赤外光の前記ミラーによる前記オブジェクトへの照射光の光軸と、前記オブジェクトによる前記反射光の光軸とが、略同軸となるように、前記ミラーが設けられている。
【0008】
本発明の一態様に係るプログラムは、コンピュータを、オブジェクトに赤外光を照射したときの吸収光に関する情報である吸収光情報を取得する取得部、前記吸収光情報に基づいて、前記オブジェクトの味情報を特定する特定部、として機能させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、対象物の味に関する情報を効率的に取得するための技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】一実施形態に係る測定装置の外観の一例を示す模式図である。
【
図2】一実施形態に係るプローブの構成の一例を示す模式図である。
【
図3】一実施形態に係るプローブの構成の他の例を示す模式図である。
【
図4】一実施形態に係るプローブの構成の他の例を示す模式図である。
【
図5】一実施形態に係る測定装置の構成の一例を示す模式図である。
【
図6】一実施形態に係る分析装置の構成の一例を示す模式図である。
【
図7A】一実施形態に係る吸収光の情報の一例を示す図である。
【
図7B】一実施形態に係る吸収光の情報の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図面を参照して、本発明の実施形態を以下に説明する。なお、各図面は、発明が理解できる程度に、構成要素の形状、大きさ及び配置が概略的に示されているに過ぎない。本発明は以下の記述によって限定されるものではなく、各構成要素は本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。以下の説明に用いる図面において、同様の構成要素については同一の符号を付して示す。
【0012】
1.測定装置
図1を参照して、本実施形態に係る測定装置の外観構成の概要を説明する。同図に示すように、測定装置1は、台車11と、プローブ12と、支持部13と、車輪14とを備える。
【0013】
台車11は、プローブ12を載置して移動する台である。車輪14は、台車11に回転可能に取り付けられる。車輪14は、台車11に搭載された駆動部(図示せず。)から伝達されたトルクにより回転する。台車11、車輪14、及び上記駆動部は、測定装置1の移動機構を構成する。
【0014】
プローブ12は、支持部13を介して台車11に取り付けられている。プローブ12は、オブジェクトに関する情報を測定する測定部である。例えば、プローブ12は、オブジェクトに光を照射し、その反射光を受光する。プローブ12は、対象オブジェクトに関する情報を測定するために、当該反射光を分光する。プローブ12からの照射光の方向は、後述するプローブ12に備える回動機構の動作に応じて変動する。
図1において、例えば、照射光15aは、ある時点でプローブ12から照射される光の光路(方向)を示している。光路15b、15c、15dはそれぞれ、回動機構による回動後の照射光の光路を示している。符号16は、プローブ12からの照射光の光路の変動による軌道を概念的に示している。プローブ12からの照射光の光路が変動することにより、広い範囲に位置するオブジェクトの情報を測定可能である。
【0015】
図2から
図4を参照して、プローブ12の構成の例を説明する。以下に説明するプローブ12の構成は、例に過ぎず、他の構成が採用されてもよい。
【0016】
<共通光路型:実施例1>
図2を参照して、共通光路型の実施例1を採用するプローブ12aの構成を説明する。
図2は、プローブ12aの断面を示す模式図である。共通光路型とは、プローブからの照射光の軸と、プローブが受光する反射光の軸とが略共通になるように構成されたものである。プローブ12aは、光ファイバ1201、光ファイバ1202、ビームスプリッタ1203、ミラー1204、及び図示しない光源を備える。光ファイバ1201、光ファイバ1202、ビームスプリッタ1203、ミラー1204、及び光源により、光学系を構成する。
【0017】
光ファイバ1201は、光源からの照射光a11がビームスプリッタ1203を照射するように当該照射光を導く導光材である。光源からの照射光a11は、オブジェクトに関する情報を測定するために適した波長範囲を含む光、例えば、赤外光である。光源から発光する当該赤外光の波長は、例えば、8000nm~10000nm、又は7000nm~11000nmである。後述する光源から放射される光についても同様である。
また、吸収光情報としてラマン散乱スペクトルと得る場合には、光源はレーザー光(波長400nm~1100nmが用いられることが多い)を用いる。
【0018】
ビームスプリッタ1203は、入射光を所定の比率で反射光と透過光とに分割する光学部材である。ビームスプリッタ1203は、偏光ビームスプリッタであってもよい。光ファイバ1201からの入射光のビームスプリッタ1203による反射光a12は、ミラー1204を照射する。また、ミラー1204からの入射光b12のビームスプリッタ1203による透過光は、検出光b13として光ファイバ1202に導かれる。
【0019】
ミラー1204は、ビームスプリッタ1203からの入射光a12を反射し、当該反射光a13によりプローブ12aの外部のオブジェクト(試料)(図示せず。)を照射する反射材である。また、ミラー1204は、照射された当該オブジェクトの反射光b11を入射し、その反射光b12によりビームスプリッタ1203を照射する。また、ミラー1204は、モータなどの回動機構(図示せず。)により、軸x1を中心に矢印D1のように回動する。当該回動により、ミラー1204の反射面の向きが変動し、反射光a13を広範囲に放射することが可能である。
【0020】
光ファイバ1202は、ビームスプリッタ1203の透過光を受光し、プローブ12aの外部(例えば、後述する分光器)に導く導光材である。すなわち、ミラー1204からの照射光a13がオブジェクトに照射されたときの当該オブジェクトによる反射光b11が、ミラー1204を介して光ファイバ1202(受光部)に導かれる。
【0021】
図2に示す光学系において、光源から導かれた光のミラー1204を介したオブジェクトへの照射光a13の光軸と、当該オブジェクトによる反射光b11の光軸とが、同軸又は略同軸となるように、光学系(光ファイバ1201、光ファイバ1202、ビームスプリッタ1203、及びミラー1204を含む。)が設けられ又は構成されている。
【0022】
このように
図2に示す光学系によれば、照射光a13の光軸と、反射光b11の光軸とが、同軸又は略同軸(すなわち、照射光a13及び反射光b11の光路が共通又は略共通)となるように構成されている。その結果、プローブ12aからオブジェクトまでの距離に関わらず、プローブ12aの照射光a13と、受光(反射光b11)の軸を変更せずに、オブジェクトを適切に照射し、当該オブジェクトの反射光を適切に受光することが可能である。
【0023】
<共通光路型:実施例2>
図3を参照して、共通光路型の実施例2を採用するプローブ12bの構成を説明する。
図3は、プローブ12bの断面を示す模式図である。プローブ12bは、光ファイバ1211、光ファイバ1212、ミラー1213、及び図示しない光源を備える。光ファイバ1211、光ファイバ1212、ミラー1213、及び光源により、光学系を構成する。
【0024】
光ファイバ1211は、光源からの照射光a21をプローブ12b内に導く導光材である。
【0025】
ミラー1213は、光ファイバ1211から照射された入射光a22を反射し、当該反射光(照射光a23)によりプローブ12bの外部のオブジェクト(試料)(図示せず。)を照射する反射材である。また、ミラー1213は、照射された当該オブジェクトの反射光b21を入射し、その反射光b22は、光ファイバ1212に導かれる。また、ミラー1213は、モータなどの回動機構(図示せず。)により、軸x2を中心に矢印D2のように回動する。当該回動により、ミラー1213の反射面の向きが変動し、反射光(照射光a23)を広範囲に放射することが可能である。
【0026】
光ファイバ1212は、ミラー1213からの反射光b22を受光し、プローブ12bの外部(例えば、後述する分光器)に導く導光材である。すなわち、ミラー1213からの照射光a23がオブジェクトに照射されたときの当該オブジェクトによる反射光b21が、ミラー1213を介して反射光b22として光ファイバ1212(受光部)に導かれる。
【0027】
図3に示す光学系において、光源から導かれた光(例えば、赤外光)のミラー1213によるオブジェクトへの照射光a23の光軸と、当該オブジェクトによる反射光b21の光軸とが、略同軸となるように、光学系(光ファイバ1211、光ファイバ1212、及びミラー1213を含む。)が設けられ又は構成されている。
【0028】
このように
図3に示す光学系によれば、照射光a23の光軸と、反射光b21の光軸とが、同軸又は略同軸(すなわち、照射光a23及び反射光b21の光路が共通又は略共通)となるように構成されている。その結果、プローブ12bからオブジェクトまでの距離に関わらず、プローブ12bの照射光a23と、受光(反射光b21)の軸を変更せずに、オブジェクトを適切に照射し、当該オブジェクトの反射光を適切に受光することが可能である。
【0029】
<対向光路型>
図4を参照して、対向光路型を採用するプローブ12cの構成の例を説明する。
図4は、プローブ12cの断面を示す模式図である。プローブ12cは、光源1221、回転モータM1、第1ミラー1222、第2ミラー1223、光ファイバ1224、対物レンズL1、及び集光レンズL2を備える。光源1221、回転モータM1、第1ミラー1222、第2ミラー1223、光ファイバ1224、対物レンズL1、及び集光レンズL2は、光学系を構成する。
【0030】
光源1221は、例えば、赤外光を放射する。当該赤外光の波長は、例えば、8000nm~10000nm、又は7000nm~11000nmである。光源1221の放射光は、第1ミラー1222の反射面を照射する。
【0031】
第1ミラー1222及び第2ミラー1223は、入射光を反射する反射材である。第1ミラー1222は、光源1221からの入射光を反射する。プローブ12cの外部のオブジェクトS1は、第1ミラー1222の反射光(照射光a31)により対物レンズL1を介して照射される。
【0032】
このように、対向光路型の構成を採用するプローブ12cでは、光ファイバなどの導光材を介さずに光源1221からの光をオブジェクトS1に照射する。そのため、前述の共通光路型よりも照射光の光量を増加させることが可能である。また、対向光路型では、対物レンズL1を介して光源1221からの光を照射するため、前述の共通光路型よりも、より遠方に位置するオブジェクトを照射することが可能である。
【0033】
第2ミラー1223は、照射光a31のオブジェクトS1による反射光b31を入射し、その反射光により集光レンズL2を照射する。第2ミラー1223から集光レンズL2を介して集光された光は、光ファイバ1224により受光される。
【0034】
回転モータM1は、第1ミラー1222及び第2ミラー1223を回動するトルクを発生する回動機構である。第1ミラー1222及び第2ミラー1223は、回転モータM1からのトルクにより軸x3を中心に矢印D3のように回動する。当該回動により、第1ミラー1222及び第2ミラー1223の反射面の向きが変動する。これにより、第1ミラー1222を介した照射光a31を広範囲に放射することが可能となり、さらに、広範囲に位置するオブジェクトS1による反射光b31を第2ミラー1223に入射させることが可能となる。
【0035】
光ファイバ1224は、導光材であり、集光レンズL2を介して受光した光(反射光b31)をプローブ12cの外部(例えば、後述する分光器)に導く。
【0036】
図4に示すように、プローブ12cの光学系は、照射光a31の光軸と、反射光b31の光軸とが、同軸又は略同軸(すなわち、照射光a31及び反射光b31の光路が共通又は略共通)となるように構成されている。その結果、プローブ12cからオブジェクトS1までの距離に関わらず、プローブ12cの照射光(照射光a31)と、受光(反射光b31)の軸を変更せずに、オブジェクトS1を適切に照射し、オブジェクトS31の反射光を適切に受光することが可能である。
【0037】
図5は、測定装置1が備える主な構成の例を示すブロック図である。測定装置1は、プローブ12、分光器102、送信部103、センサ104、移動機構105、及び制御部106を備える。
【0038】
図5に示す例において、プローブ12は、限定はしないが、前述の対向光路型を採用するプローブ12cと同様の構成を備える。同図に示すように、プローブ12は、主な構成として、光源1221、第1ミラー1222、第2ミラー1223、受光部101、及び回転モータM1を備える。受光部101は、例えば、前述の光ファイバ1224である。すなわち、受光部101は、第2ミラー1223による(オブジェクトによる)反射光を受光する。光源1221、第1ミラー1222、第2ミラー1223、及び回転モータM1については、既に説明しているため、ここでは説明を省略する。なお、プローブ12は、プローブ12a若しくはプローブ12bと同様の構成、又は他の構成を採用しても良い。
【0039】
分光器102は、受光部101から受光した光を波長成分に分光し、各波長成分の光の強度を測定する。分光器102は、当該測定の結果を受光情報として出力する。なお、光源として波長走査型光源(例えば量子カスケードレーザー)を用いる場合は、分光器102は、光強度を感知可能な単一検出器のみで良い。
【0040】
送信部103は、無線又は有線により情報を外部に送信する通信部である。送信部103は、分光器102による測定結果の情報(受光情報)を後述する分析装置に送信する。送信部103は、さらに、光源1221からの照射光の各波長成分の光の強度の情報(照射光情報)を分析装置に送信する。
【0041】
センサ104は、測定装置1の周囲に存在するオブジェクトを認識し、かつ、当該オブジェクトの位置を特定する装置である。センサ104は、例えば、カメラを備えて構成される。センサ104は、カメラにより測定装置1の周囲の画像を取得し、当該画像に対する画像認識処理を実行することにより、対象となるオブジェクトの存在及び位置を特定する。
【0042】
移動機構105は、測定装置1の移動のための機構である。移動機構105は、例えば、センサ104による認識結果に基づいて、測定装置1が対象オブジェクトの近傍に移動するように動作する。例えば、対象オブジェクトが農園に実る果実の場合、測定装置1は、果実を求めて農園内を移動機構105により移動する。移動機構105は、例えば、台車11と、車輪14と、車輪14の駆動部とを備える。移動機構105は、他の機構により構成されても良い。移動機構105は、例えば、飛行機構又は歩行機構を備えて構成されても良い。
【0043】
制御部106は、測定装置1が備える各構成の動作を制御する。制御部106は、例えば、センサ104による認識結果に基づいて、移動機構105の動作を制御し、測定装置1がオブジェクトの近傍に移動するように制御しても良い。さらに、制御部106は、プローブ12の回転モータM1の動作を制御し、プローブ12からの照射光によりオブジェクトを照射し、オブジェクトによる反射光をプローブ12により受光するように制御しても良い。対向光路型の場合、制御部106は、プローブ12の回転モータM1の動作を制御し、第1ミラー1222及び第2ミラー1223の反射面の向きを変更する。共通光路型の場合、制御部106は、プローブ12の光学系の1つのミラーの反射面の向きを変更するように制御する。
【0044】
制御部106は、例えば、CPU(Central Processing Unit)及びメモリを備える。制御部106において、CPUがメモリに記憶されたコンピュータプログラムを実行することにより、各種の制御が実現される。
【0045】
2.分析装置
図6を参照して、本実施形態に係る分析装置について説明する。分析装置は、測定装置1による測定結果を分析することにより、オブジェクトの特徴を特定する。本実施形態において、分析装置は、特に、オブジェクトである果実の味情報を特定する。
【0046】
図6に示すように、分析装置2は、主な構成として、通信部201、記憶部202、入出力部203、及び制御部204を備える。分析装置2は、パーソナルコンピュータなどの情報処理装置により構成される。
【0047】
通信部201は、外部装置との間で各種情報の送受信を行うための通信インタフェースである。測定装置1の通信部と、分析装置2の通信部201とを介して、測定装置1及び分析装置2は、相互に通信可能である。通信部201は、例えば、測定装置1による測定結果の情報を受信する。記憶部202は、外部装置から受信した情報、分析装置2による処理に必要な情報、分析装置2の処理結果の情報など、各種の情報を記憶する装置である。記憶部202は、例えば、磁気記憶装置又は半導体記憶装置等により構成される。入出力部203は、分析装置2に対する入力及び分析装置2による出力を行うための装置である。入出力部203は、入力装置及び出力装置を含む。入力装置は、例えば、分析装置2に対してユーザによる操作入力を行うためのキーボードやマウスなどを含む。出力装置は、例えば、分析装置2による処理結果の画像を出力するためのディスプレイ装置、及び音声を出力するためのスピーカ装置などを含む。
【0048】
制御部204は、分析装置2が備える各構成の動作を制御する。制御部204は、図示しないがCPU及びメモリを備える。制御部204は、機能構成として、取得部2401及び特定部2402を含む。制御部204において、CPUがメモリに記憶されたコンピュータプログラムを実行することにより、上記の機能構成を含む各種の機能が実現される。
【0049】
取得部2401は、測定装置1による測定結果の情報に基づいて、オブジェクトに赤外光を照射したときの吸収光に関する情報である吸収光情報を取得する。具体的には、取得部2401は、まず、測定装置1の送信部103により送信された受光情報及び照射光情報を、通信部201を介して受信する。取得部2401は、受光情報が示すオブジェクトからの反射光の強度と、照射光情報が示すオブジェクトへの照射光の強度との間の差分に基づいて、オブジェクトに赤外光を照射したときの吸収光に関する情報である吸収光情報を取得する。
【0050】
特定部2402は、取得部2401により取得された吸収光情報に基づいて、オブジェクトの味情報を特定する。具体的には、特定部2402は、吸収光情報が示す吸収光について、所定範囲の波長成分の吸収光強度を特定し、当該強度に基づいて、オブジェクトの味情報を特定する。
【0051】
特定部2402は、オブジェクトの吸収光情報に基づいて、例えば、オブジェクトに含まれる酸の情報及び糖の情報を特定可能である。また、特定部2402は、オブジェクトの吸収光情報に基づいて、オブジェクトに含まれるリコピンの含有量の程度に関する情報を特定可能である。本実施形態において特に、波長範囲7.7~8.5μmにおける吸収光の強度に基づいて酸の含有量の程度を把握できる。また、本実施形態において特に、波長範囲8.5~10.5μmにおける吸収光の強度に基づいて糖の含有量の程度を把握できる。これに従い、特定部2402は、例えば、波長範囲7.7~8.5μmの吸収光の強度に基づいて、オブジェクトに含まれる酸の含有量の程度を把握してもよい。また、特定部2402は、例えば、波長範囲8.5~10.5μmの吸収光の強度に基づいて、オブジェクトに含まれる糖の含有量の程度を把握してもよい。含有量の程度は、任意の尺度を設定することができ、例えば、多い、普通、少ない、の三段階で設定されてもよいし、含有量が多い順に10から1の十段階で設定されても良い。
【0052】
なお、測定装置1による測定の対象になるオブジェクト、及び分析装置2の分析対象となるオブジェクトは、好ましくは、イチゴ、トマト、サクランボ、又はブルーベリーなどの非可食の皮を有さない果実を含む。
【0053】
図7A及び
図7Bを参照して、取得部2401により取得された吸収光情報と、特定部2402により特定されるオブジェクトの味情報とについて説明する。同図には、吸収光の波長と、吸収光強度との間の関係が、吸収光情報としてグラフで示されている。
図7Aは、イチゴaをオブジェクトとするグラフである。
図7Bは、イチゴaとは異なるイチゴbをオブジェクトとする吸収光情報のグラフである。
【0054】
図7A及び
図7Bにおいて、酸の含有量の程度を示す波長範囲は、他の領域より光強度が高いため、特定部2402により酸の含有量が多いことが特定される。また、糖の含有量の程度を示す波長範囲も、他の領域より光強度が高いため、特定部2402により糖の含有量が多いことが特定される。一方で、イチゴaの糖を示す波長範囲の光強度は、イチゴbの糖を示す波長範囲の光強度よりも高い。そのため、イチゴaの糖の含有量の方が、イチゴbの糖の含有量よりも多いことが特定される。
【0055】
以上のように本実施形態によれば、分析装置2は、果実などのオブジェクトに赤外光を照射したときの吸収光に関する情報である吸収光情報を取得し、当該吸収光情報に基づいて、オブジェクトの味情報を特定する。その結果、分析装置2は、オブジェクトの味に関する情報を効率的に取得することが可能である。すなわち、人がオブジェクトの味見をしたり、オブジェクトを破壊したり(例えば、検査のために潰す、カットするなど。)することなく、味情報を特定することができる。例えば、オブジェクトに照射する光として赤外以外の光、例えば、近赤外を採用した場合、本実施形態のような分析を行うことはできない。
【0056】
また、オブジェクトが農業における果実などの農作物である場合、農作物の生産(育成)環境を変化させたとき(例えば、温度若しくは湿度を変化させたとき、土壌に肥料を加えたとき)の効果を適時に把握することができる。具体的には、トマトの生産場の湿度を上げた次の日から測定装置1及び分析装置2を使用してトマトの味情報を取得することにより、トマトに含まれる酸及び糖の含有量の程度の変化(すなわち、湿度を変更させたことによる効果)を把握可能である。
【0057】
さらに、農作物の生産環境の特徴(例えば、温度、湿度、肥料など)を説明変数とし、分析装置2により取得された果実などの農作物の味情報を目的変数として機械学習を行うことにより、学習済みモデルを生成することが可能である。当該学習済みモデルを使用して、美味しい農作物を生産するための最適な生産環境を特定することができる。
【0058】
[変形例]
上記の実施形態において、測定装置1及び分析装置2が有する構成及び機能を説明したが、一方の装置が有する少なくとも一部の構成及び機能を他方の装置が有するようにしてもよい。また、測定装置1及び分析装置2が有する構成及び機能を一つの装置により実現してもよいし、三つ以上の装置により実現してもよい。
【0059】
本実施形態における測定装置1及び分析装置2を実装するためのコンピュータプログラムは、CD-ROM等の光学ディスク、磁気ディスク、半導体メモリなどの各種の記録媒体を通じて、又は通信ネットワークなどを介してダウンロードすることにより、コンピュータにインストール又はロードすることができる。
【0060】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。実施形態が備える各要素並びにその配置、材料、条件、形状及びサイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、異なる実施形態で示した構成同士を部分的に置換し又は組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0061】
1 測定装置、2 分析装置、11 台車、12 プローブ12、13 支持部、14 車輪、201 通信部、202 記憶部、203 入出力部、204 制御部