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特許7418788グルカゴン認識ペプチド並びにグルカゴン検出法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-12
(45)【発行日】2024-01-22
(54)【発明の名称】グルカゴン認識ペプチド並びにグルカゴン検出法
(51)【国際特許分類】
   C07K 7/08 20060101AFI20240115BHJP
   C07K 14/00 20060101ALI20240115BHJP
   A61K 51/08 20060101ALI20240115BHJP
   C09B 69/10 20060101ALI20240115BHJP
   G01N 33/531 20060101ALI20240115BHJP
   G01N 33/533 20060101ALI20240115BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20240115BHJP
   C07K 14/705 20060101ALN20240115BHJP
【FI】
C07K7/08 ZNA
C07K14/00
A61K51/08 200
C09B69/10 B
G01N33/531 Z
G01N33/533
G01N33/53 B
C07K14/705
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019189244
(22)【出願日】2019-10-16
(65)【公開番号】P2021063038
(43)【公開日】2021-04-22
【審査請求日】2022-08-22
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100166165
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 英直
(72)【発明者】
【氏名】重藤 元
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 祥夫
(72)【発明者】
【氏名】山村 昌平
【審査官】松村 真里
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-505828(JP,A)
【文献】特表2014-533098(JP,A)
【文献】特表平08-500737(JP,A)
【文献】Diabetes, Obesity and Metabolism,2014年,Vol.16, No.11,p.1155-1164
【文献】分析化学,2023年,Vol.72, No.6,p.233-238
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 7/00
C07K 14/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グルカゴン受容体の標的認識部位に基づくペプチド部(P)と、グルカゴンと前記ペプチド部(P)との相互作用により検出を可能にする標識部(T)と、前記ペプチド部(P)と標識部(T)とを連結する連結部(L)とを含む、グルカゴン検出用プローブであって、下記式:
【化1】
で表され
前記ペプチド部(P)の配列が、以下の:
XEVAXMYSSFQVMYTVGY (配列番号2)、
VLVIDGLLRTRYSQXIGDDLSVSTW (配列番号4)、
KCLFENVQCWTSNDNMGFWWILR (配列番号6)、
HEVVFAFVTDEHAQGTLRSAXLFFDLF(配列番号7)、
YTVGYIDGLLRTRYSQXIGDDLSVSTW (配列番号9)、及び
KCLFENVQCWTSNDNMGFWIDGLLRTRY(配列番号11)
(式中、Xは、アラニン又はリジンである)
からなる群から選ばれる配列であり、当該配列のペプチドがグルカゴンと相互作用する配列である、前記グルカゴン検出用プローブ。
【請求項2】
前記標識部が、1又は複数の蛍光標識を含む、請求項1に記載のプローブ。
【請求項3】
前記蛍光標識が、以下の:
【化2】
(式中、
Rは、非限定的に、互いに独立して、水素原子;炭素数1から15の直鎖型若しくは分枝型のアルキル基;炭素数1から10の直鎖型若しくは分枝型のエーテル;フェニル基;フェニル基の一部をアミノ基、ハロゲン、ニトロ基に置換したフェニル基;アミノ基;シアノ基;ニトロ基;カルボン酸若しくはその塩若しくはエステル若しくはアミド;スルホン酸若しくはその塩若しくはエステル若しくはアミド;チオール基;水酸基若しくはその塩;ケトン;ハロゲン;糖を表し;
A-1の場合、nは1~9の整数、A-2の場合、nは1~9の整数、A-3の場合、nは1~5の整数、A-4の場合、nは1~7の整数、A-5の場合、nは1~6の整数、A-6の場合、nは1~4の整数、A-7の場合、nは1~7の整数であり、A-8の場合、nは1~5の整数であり、nが2以上の場合、各Rは、互いに同一であっても異なっていてもよく;
※は、結合手を示し、結合手において連結部(L)と結合する)
からなる群から選択される、請求項に記載のプローブ。
【請求項4】
前記蛍光標識が、以下の:
【化3】
(式中、※は、結合手を示し、結合手において連結部(L)と結合する)
からなる群から選択される、請求項に記載のプローブ。
【請求項5】
前記蛍光標識が、以下の:
【化4】
(式中、※は、結合手を示し、結合手において連結部(L)と結合する)
で表される、請求項に記載のプローブ。
【請求項6】
前記標識部(T)が、 連結部(L)を介し前記ペプチド部(P)のペプチドのN末端又はC末端に結合する、請求項1~のいずれか一項に記載のプローブ。
【請求項7】
前記相互作用が、100nM以下のKd値である、請求項に記載のプローブ。
【請求項8】
前記連結部(L)が、カルボニル基又はスルホニル基を含む、請求項1~のいずれか一項に記載のプローブ。
【請求項9】
試料中のグルカゴン濃度を測定する方法であって、
試料を請求項のいずれか一項に記載のプローブと接触させる工程、
励起光を照射し、励起された蛍光標識からの蛍光を測定する工程、及び
グルカゴンと、前記プローブの前記ペプチド部(P)との相互作用により変化した波長の蛍光に基づいてグルカゴン濃度を決定する工程
を含む、前記方法。
【請求項10】
前記試料が、血液試料である、請求項に記載の方法。
【請求項11】
グルカゴン濃度が、前記変化した波長の蛍光と、グルカゴン濃度との関係を示す検量線に基づいて決定される、請求項又は1に記載の方法。
【請求項12】
グルカゴン濃度決定用のキットであって、請求項1~のいずれか一項に記載のプローブを含むキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グルカゴン検出の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
グルカゴンはインスリンと拮抗することで血中のグルコース濃度(血糖値)を上昇させる作用を持つペプチドホルモンである。空腹状態などの血糖値の低下に呼応して膵臓のα細胞からグルカゴンが分泌される。肝臓細胞などがグルカゴンを感知し、グリコーゲンを分解することでグルコースを血中に放出し、その結果血糖値が上昇する。近年、血糖値の制御にはインスリンよりもグルカゴンが多くの役割を担っているとするグルカゴン中心説が提唱されるなどその重要性は増している。生体の血糖値制御方法についてインスリンを中心とした様々な研究がおこなわれており、多くの知見が積み重なっているが、グルカゴンに関する知見は多くない。その理由の一つがこれまでグルカゴンの検出が非常に難しかった点がある。生体におけるグルカゴンの役割を解明するためには簡易、迅速かつ高感度、特異性のよいグルカゴン検出方法が必要とされている。
【0003】
グルカゴンの検出方法として、グルカゴンに対する抗体を利用したELISA(Enzyme-Linked Immuno Sorbent Assay: 固相酵素免疫検定法)を利用した技術を挙げることができる。しかしながら、グルカゴンはグルカゴン前駆体からプロセッシングを受けることで成熟体となることから、同じアミノ酸配列を持つ類似体が多く存在する。そのため抗体を用いた検出方法ではグルカゴン以外のペプチについても検出してしまい、それにより偽陽性についての問題が生じる。
【0004】
そこで近年グルカゴンのN末端とC末端双方を認識する複数の抗体を同時に用いることで感度良いグルカゴン検出ELISAキットが販売されてきている。しかしながら、各社から販売されているそれらのキットを用いて同一患者の血中グルカゴンを検出すると、キットごとに測定結果が異なることが報告されるなど、その検出能力はいまだ十分とは言えない(非特許文献1)。また抗体を用いた検出方法では、専門技術が必須であり、可能な限り特異性高くグルカゴンの検出を行うために、抗体の反応を低温で数十時間以上(通常20時間程度)かけて行う必要があり、大量のサンプルを用いたハイスループットの測定には適していなかった。
【0005】
抗体を用いたグルカゴンの検出方法について、上述のような問題点があることから、血液中のグルカゴンを正確に測定するには、HPLCやLC-MSなどで時間を掛けて分析する手法が一般的である。しかしグルカゴンは血中における半減期が短い物質であることからこれらの分析手法も適切とは言えず、短時間で正確な測定を可能にする測定手法が望まれている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】Bak, M. J. et al. Specificity and sensitivity of commercially available assays for glucagon and oxyntomodulin measurement in humans. Eur. J. Endocrinol. 170, 529-538 (2014).
【文献】Siu, F. Y. et al. Structure of the human glucagon class B G-protein-coupled receptor.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
グルカゴンを短時間で正確な測定を可能にする新たなグルカゴン検出方法の開発が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、抗体に依らない新たなグルカゴン検出プローブについて鋭意研究を行ったところ、グルカゴン受容体の標的認識に関与するアミノ酸配列に着目してグルカゴンを認識可能なペプチドを取得した。さらに、当該ペプチドに、グルカゴンと当該ペプチドとの相互作用により検出を可能にする標識部を付けることで、グルカゴン検出用プローブを開発し、グルカゴン検出方法を確立した。
【0009】
そこで、本発明は、以下に関する:
[1] グルカゴン受容体の標的認識部位に基づくペプチド部(P)と、グルカゴンと前記ペプチド部(P)との相互作用により検出を可能にする標識部(T)と、前記ペプチド部(P)と標識部(T)とを連結する連結部(L)とを含む、グルカゴン検出用プローブであって、下記式:
【化1】
で表される、前記グルカゴン検出用プローブ。
[2] 前記ペプチド部のアミノ酸配列が、配列番号1で表されるグルカゴン受容体のアミノ酸配列の122~149位、184~240位、278~308位、及び361~389位からなる群から選ばれる領域中の少なくとも1の部分配列を含み、かつ
133位のアミノ酸、135位のアミノ酸、138位のアミノ酸、140~145位のアミノ酸、149位のアミノ酸、191位のアミノ酸、194~195位のアミノ酸、198位のアミノ酸、200~202位のアミノ酸、204~205位のアミノ酸、208~209位のアミノ酸、212位のアミノ酸、215位のアミノ酸、286位のアミノ酸、290~291位のアミノ酸、294~295位のアミノ酸、297~300位のアミノ酸、302~308位のアミノ酸、361~362位のアミノ酸、365~366位のアミノ酸、369位のアミノ酸、374位のアミノ酸、378位のアミノ酸、381~384位のアミノ酸、386~387位のアミノ酸
からなる群から選ばれる少なくとも5個のアミノ酸を含む、少なくとも10残基の配列であるか、又は当該アミノ酸配列に1又は数個のアミノ酸の置換、欠失、及び/又は付加がされた改変配列であって、当該改変配列のペプチドがグルカゴンと相互作用する配列である、項目1に記載のプローブ。
[3] 前記標識部が、1又は複数の蛍光標識を含む、項目1又は2に記載のプローブ。
[4] 前記蛍光標識が、以下の:
【化2】
(式中、
Rは、非限定的に、互いに独立して、水素原子;炭素数1から15の直鎖型若しくは分枝型のアルキル基;炭素数1から10の直鎖型若しくは分枝型のエーテル;フェニル基;フェニル基の一部をアミノ基、ハロゲン、ニトロ基に置換したフェニル基;アミノ基;シアノ基;ニトロ基;カルボン酸若しくはその塩若しくはエステル若しくはアミド;スルホン酸若しくはその塩若しくはエステル若しくはアミド;チオール基;水酸基若しくはその塩;ケトン;ハロゲン;糖を表し;
A-1の場合、nは1~9の整数、A-2の場合、nは1~9の整数、A-3の場合、nは1~5の整数、A-4の場合、nは1~7の整数、A-5の場合、nは1~6の整数、A-6の場合、nは1~4の整数、A-7の場合、nは1~7の整数であり、A-8の場合、nは1~5の整数であり、nが2以上の場合、各Rは、互いに同一であっても異なっていてもよく;
※は、結合手を示し、結合手において連結部(L)と結合する)
からなる群から選択される、項目3に記載のプローブ。
[5] 前記蛍光標識が、以下の:
【化3】
(式中、※は、結合手を示し、結合手において連結部(L)と結合する)
からなる群から選択される、項目4に記載のプローブ。
[6] 前記蛍光標識が、以下の:
【化4】
(式中、※は、結合手を示し、結合手において連結部(L)と結合する)
で表される、項目5に記載のプローブ。
[7] 前記標識部(T)が、 前記ペプチド部のペプチドのN末端又はC末端に結合する、項目1~4のいずれか一項に記載のプローブ。
[8] 前記ペプチド部の配列が、5~40残基である、項目1~7のいずれか一項に記載のプローブ。
[9] 前記ペプチド部(P)の配列が、以下の:
XEVAXMYSSFQVMYTVGY (配列番号2)、
VLVIDGLLRTRYSQXIGDDLSVSTW (配列番号4)、
KCLFENVQCWTSNDNMGFWWILR (配列番号6)、
HEVVFAFVTDEHAQGTLRSAXLFFDLF(配列番号7)、
YTVGYIDGLLRTRYSQXIGDDLSVSTW (配列番号9)、及び
KCLFENVQCWTSNDNMGFWIDGLLRTRY(配列番号11)、
(式中、Xは、アラニン又はリジンである)
からなる群から選ばれる配列、又は当該配列に1又は数個のアミノ酸の置換、欠失、及び/又は付加がされた改変配列であって、当該改変配列のペプチドがグルカゴンと相互作用する配列である、項目1~8のいずれか一項に記載のプローブ。
[10] 前記相互作用が、100nM以下のKd値である、項目9に記載のプローブ。
[11] 前記連結部(L)が、カルボニル基又はスルホニル基を含む、項目1~10のいずれか一項に記載のプローブ。
[12] 試料中のグルカゴン濃度を測定する方法であって、
試料を項目3~11のいずれか一項に記載のプローブと接触させる工程、
励起光を照射し、励起された蛍光標識からの蛍光を測定する工程、及び
グルカゴンと、前記プローブの前記ペプチド部(P)との相互作用により変化した波長の蛍光に基づいてグルカゴン濃度を決定する工程
を含む、前記方法。
[13] 前記試料が、血液試料である、項目12に記載の方法。
[14] グルカゴン濃度が、前記変化した波長の蛍光と、グルカゴン濃度との関係を示す検量線に基づいて決定される、項目12又は13に記載の方法。
[15] グルカゴン濃度決定用のキットであって、項目1~11のいずれか一項に記載のプローブを含むキット。
【発明の効果】
【0010】
本発明のグルカゴン検出用プローブを用いることで、短時間で簡易にグルカゴンの検出が可能になり、またグルカゴンに対する特異性も高い。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明のグルカゴン検出用プローブ(ECL0、1、2、3、0-1、2-1)にグルカゴン(500nM)を反応させた場合の蛍光の変化を示すグラフである。
図2図2は、本発明のグルカゴン検出用プローブ(ECL0(A)及びECL0-1(B))に、グルカゴンの濃度を変えて反応させた場合の蛍光の変化を示すグラフである。
図3図3は、本発明のグルカゴン検出用プローブ(ECL0、ECL0-1、及びECL2-1)に、グルカゴンの濃度を変えて反応させた場合の、蛍光強度比(453nmの蛍光強度/505nm蛍光強度)に基づく検量線を示すグラフである。
図4図4は、本発明のグルカゴン検出用プローブ(ECL0、1、2、3、0-1、2-1)に、グルカゴン及びグルカゴン類似体(ミニグルカゴン、オキシントモジュリン、及びグリセンチン)と反応させた場合の蛍光強度の変化を示すグラフである。
図5図5は、市販のグルカゴン検出用のELISAキットを用いて、グルカゴン及びグルカゴン類似体を測定した結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のグルカゴン検出用プローブは、グルカゴン受容体の標的認識部位に基づくペプチド部(P)と、標識部(T)と、連結部(L)とを含む。標識部(T)とペプチド部(P)とは、連結部(L)を介して結合する。グルカゴン検出用プローブは、一例として、下記の式[I]:
【化5】
で表される。標識部(T)は、グルカゴンと前記ペプチド部との相互作用により検出を可能にする標識部である。グルカゴンが前記ペプチド部と相互作用することで、標識部に変化が生じ、検出が可能となる。
【0013】
グルカゴン受容体は7回膜貫通型の受容体であり、N末端側のアミノ酸と貫通領域(Extra Cellular Loop:ECL)における細胞膜近傍のアミノ酸がグルカゴンと相互作用すると考えられている(非特許文献2)。グルカゴンと相互作用するアミノ酸を含む領域を標的認識部位と呼ぶ。標的認識部位は、グルカゴン受容体のアミノ酸配列(配列番号1)の少なくとも1の部分ペプチドを含む。標的認識部位としては、一例として配列番号1の122~149位、184~240位、278~308位、及び361~389位が挙げられる。標的認識部位に含まれる1又は複数のアミノ酸は、グルカゴンとの結合に関与している。これらのアミノ酸について1残基置換を行って改変されたグルカゴン受容体は、グルカゴンとの結合性が低下する。1残基置換によりグルカゴンとの結合性が低下するアミノ酸として、133位のアミノ酸、135位のアミノ酸、138位のアミノ酸、140~145位のアミノ酸、149位のアミノ酸、191位のアミノ酸、194~195位のアミノ酸、198位のアミノ酸、200~202位のアミノ酸、204~205位のアミノ酸、208~209位のアミノ酸、212位のアミノ酸、215位のアミノ酸、286位のアミノ酸、290~291位のアミノ酸、294~295位のアミノ酸、297~300位のアミノ酸、302~308位のアミノ酸、361~362位のアミノ酸、365~366位のアミノ酸、369位のアミノ酸、374位のアミノ酸、378位のアミノ酸、381~384位のアミノ酸、386~387位のアミノ酸が挙げられる。したがって、標的認識部位に含まれる少なくとも1の部分配列であって、これらの少なくとも5残基のアミノ酸を含むペプチドは、グルカゴンとの相互作用を有するといえる。
【0014】
グルカゴン受容体の標的認識部位に基づくペプチド部(P)とは、配列番号1で表されるグルカゴン受容体の標的認識部位に含まれる少なくとも1の部分ペプチドを含んでおり、それにより、グルカゴンと相互作用することができるペプチドである。ペプチド部(P)の長さは特に限定されないが、グルカゴンとの相互作用を確保する観点から、通常10残基以上、好ましくは15残基以上、より好ましくは18残基以上であり、さらにより好ましくは20残基以上である。ペプチド合成の容易さの観点から100残基以下、好ましくは40残基以下、より好ましくは35残基以下、さらにより好ましくは30残基以下である。一方、ペプチド部は、タンパク合成で作成することもでき、その場合グルカゴン受容体の全長を使用することもできるし、さらに切断してペプチドを生成してもよい。その場合には、ペプチド部の長さは、300残基以下、好ましくは150残基以下、より好ましくは100残基以下、さらにより好ましくは50残基以下である。ペプチド部は、標的認識部位に含まれる単一の部分ペプチドから構成されていてもよいし、2又はそれ以上の部分ペプチドを、リンカーを介して又は直接連結することで構成されてもよい。一の態様では、標的認識部位に基づくペプチド部は、122~149位、184~240位、278~308位、及び361~389位からなる群から選ばれる領域中の部分配列、又はその改変配列を含み、さらに1残基置換によりグルカゴンとの結合性が低下するアミノ酸を少なくとも5、より好ましくは少なくとも10個、さらにより好ましくは少なくとも15個を含む。標的認識部位に基づくペプチド部に含まれる122~149位、184~240位、278~308位、及び361~389位からなる群から選ばれる領域中の部分配列は、グルカゴンとの相互作用を確保する観点から通常5残基以上、好ましくは10残基以上、より好ましくは15残基以上であり、部分配列のアミノ酸数の上限は領域中のアミノ酸数に依存する。
【0015】
グルカゴン受容体の標的認識部位に基づくペプチド部(P)としては、一例として以下の:
XEVAXMYSSFQVMYTVGY (配列番号2)、
VLVIDGLLRTRYSQXIGDDLSVSTW (配列番号4)、
KCLFENVQCWTSNDNMGFWWILR (配列番号6)、
HEVVFAFVTDEHAQGTLRSAXLFFDLF(配列番号7)、
YTVGYIDGLLRTRYSQXIGDDLSVSTW (配列番号9)、及び
KCLFENVQCWTSNDNMGFWIDGLLRTRY(配列番号11)
(式中、Xは、アラニン又はリジンである)
からなる群から選ばれるアミノ酸配列又はその改変配列を含むペプチドを使用しうる。配列番号2、4、6及び7のアミノ酸配列は、配列番号1のアミノ酸配列の132位~149位、191位~215位、286位~308位、及び361位~387位のアミノ酸配列にそれぞれ相当する。配列番号9のアミノ酸配列は、配列番号1のアミノ酸配列の145位~149位と194位~215位に相当する。配列番号11のアミノ酸配列は、配列番号1のアミノ酸配列の286位~304位と194位~202位に相当する。
【0016】
改変配列としては、元の配列に1又は数個のアミノ酸の置換、欠失、及び/又は付加がされた配列であって、当該配列のペプチドがグルカゴンと相互作用することができる配列や、元の配列の1又は数個のアミノ酸に任意の修飾がされた配列が挙げられる。特に複数の部分配列を含む場合、部分配列を繋ぐリンカーとして1又は数個のアミノ酸が付加されてもよい。1又は数個とは、1~9の任意の整数を指す。したがって、改変配列において、一例として、1個、2個、3個、4個、又は5個のアミノ酸が、置換、欠失、及び/又は付加されてよい。さらに別の態様では、改変配列としては、元の配列に対して少なくとも90%の同一性を有し、当該配列のペプチドがグルカゴンと相互作用することができる配列を指してもよい。配列同一性は、好ましくは少なくとも93%、さらに好ましくは少なくとも95%の同一性を有することが好ましい。グルカゴン受容体の標的認識部位に基づくペプチド部と、グルカゴンとの間の相互作用については、Kd値で表すことができ、1μm以下、好ましくは500nM以下、より好ましくは200nM以下、さらに好ましくは100nM以下、さらにより好ましくは50nM以下、特に好ましくは10nM以下のKd値である場合に、相互作用を有すると決定することができる。N末端のアミノ基にリンカーを連結させる観点から、元の配列中のリジン残基をそれ以外のアミノ酸残基、例えばアラニンへと置換してもよい。このように1又は数個、例えば1個、2個、3個、4個、又は5個のアミノ酸置換があった場合も、グルカゴンとの相互作用は失われない。
【0017】
標識部(T)としては、蛍光標識が挙げられる。グルカゴンとグルカゴン受容体の標的認識部位に基づくペプチド部との相互作用により、蛍光標識の蛍光波長が変化する。この蛍光波長の変化を検出することでグルカゴンの検出を可能となり、変化した蛍光波長の強度を測定することにより、グルカゴンの濃度を決定することができる。このような蛍光標識として、ナフタレン、アントラセン、ピレン、ビフェニル、クマリン、ベンゾチアゾール、フルオレセイン、ローダミン、ビピリジン、キノリン、フェナントロリン、シアノピラニルなどの多環芳香族化合物又は複素環化合物を挙げることができる。さらに具体的には、蛍光標識は、下記の化学式で表される化合物である:
【化6】
(式中、
Rは、非限定的に、互いに独立して、水素原子;炭素数1から15の直鎖型若しくは分枝型のアルキル基;炭素数1から10の直鎖型若しくは分枝型のエーテル;フェニル基;フェニル基の一部をアミノ基、ハロゲン、ニトロ基に置換したフェニル基;アミノ基;シアノ基;ニトロ基;カルボン酸若しくはその塩若しくはエステル若しくはアミド;スルホン酸若しくはその塩若しくはエステル若しくはアミド;チオール基;水酸基若しくはその塩;ケトン;ハロゲン;糖(グルコース、マンノース、メリビオース、ガラクトース、フルクトースなど)を表し;
A-1の場合、nは1~9の整数、A-2の場合、nは1~9の整数、A-3の場合、nは1~5の整数、A-4の場合、nは1~7の整数、A-5の場合、nは1~6の整数、A-6の場合、nは1~4の整数、A-7の場合、nは1~7の整数であり、A-8の場合、nは1~5の整数であり、nが2以上の場合、各Rは、互いに同一であっても異なっていてもよく;
※は、結合手を示す)
ここで、結合手は連結部(L)と結合することができる。
【0018】
より具体的に、蛍光標識は、下記の化学式で表される化合物である:
【化7】
(式中、※は、結合手を示す)
ここで、結合手は連結部(L)と結合することができる。特に好ましくは、蛍光標識は、式a-5で表される化合物を使用することができる。
【0019】
標識部(T)とペプチド部(P)とを連結する連結部(L)は、共有結合により標識部(T)とペプチド部(P)との連結を可能にするものであれば、任意の連結部を用いることができる。連結部は、ペプチド部とグルカゴンとの相互作用により標識部の標識が変化する限りにおいて任意のリンカーをもちいることができる。合成したペプチド部(P)に、簡便に標識部(T)を連結させる観点から、連結部は、ペプチド部とグルカゴンとの相互作用を妨げない限り、ペプチド部の任意の反応性官能基を介して連結してもよい。反応性官能基としては、末端のアミノ基及びカルボキシ基の他に、鎖内のアミノ基、カルボキシ基、水酸基、スルフヒドリル基などが挙げられうる。ペプチド部のアミノ基と反応して生じる連結部は、一例として、カルボニル基又はスルホニル基を含むことが好ましく、下記の式で表されうる:
【化8】
(式中、R2は、存在しないか又は-(CH2m-(mは1~5の整数)である)。ペプチド部のカルボキシ基と反応して生じる連結部は、一例として、アミド結合を介して結合されうる:
【化9】
(式中、R2は、存在しないか又は-(CH2m-(mは1~5の整数)である)。ペプチド部のスルフヒドリル基と結合する場合には、マレイミドなどを含む連結基により連結されうる。
【0020】
連結部は、ペプチド部(P)のN末端、C末端、又は側鎖に結合する。ペプチド部とグルカゴンとの相互作用を妨げない観点から、N末端又はC末端に結合することが好ましい。さらに製造の容易さから、連結部はより好ましくはN末端に結合する。連結部(L)がN末端に結合する場合、連結部はアミド結合又はスルホンアミド結合を形成する。
【0021】
1の態様では、標識部(T)は、式(a-5)で表される化合物であり、連結部(L)はスルホニル基である。具体的に下記式:
【化10】
(式中、※は、結合手を示す)
ここで、結合手はペプチド部に結合する。
【0022】
標識部の蛍光標識とは別に、ペプチド部に別の蛍光標識又は発光標識を付けてもよい。蛍光標識を付けた場合、FRETの原理により、ペプチド部へのグルカゴンの結合により蛍光が変化してもよい。発光標識を付けた場合、さらに溶液中に発光基質を添加することで、BRETの原理により、ペプチド部へのグルカゴンの結合により蛍光が変化してもよい。
【0023】
標識部(T)と連結部(L)とは予め結合した状態で塩を形成していてよく、合成されたペプチドに対し、反応させることで、グルカゴン検出用プローブを形成してもよい。反応は、選択された連結部に応じて適宜選択することができる。
【0024】
本発明の別の態様では、本発明はグルカゴン検出用プローブを用いたグルカゴン測定方法に関する。グルカゴン測定方法は、以下の:
試料にグルカゴン検出用プローブと接触させる工程;
励起光を照射し、励起された蛍光標識からの蛍光を測定する工程;
グルカゴンと前記グルカゴン検出用プローブのペプチド部(P)との相互作用により変化した波長の蛍光強度に基づいてグルカゴン濃度を決定する工程
を含む。グルカゴン濃度の決定は、蛍光強度と濃度との関係を示す検量線に基づく。
【0025】
本発明のグルカゴン測定方法に供する試料は、グルカゴンが含有する任意の溶液であってよい。一例として、血液試料である。血液試料は、血液に由来する試料であり、血液、血清、又は血漿がそのまま、或いは沈降処理や希釈処理などの処理を経て使用されうる。
【0026】
本発明のグルカゴン測定方法は、蛍光測定機器を用いて蛍光を測定する。励起光及び励起されて生じる蛍光の波長は、グルカゴン検出用プローブの標識部の種類に応じて決定することができる。一例として、式(a-5)で表される化合物の蛍光標識を用いる場合、330~350nmの波長の励起光(一例として327nm)を用いることができ、520nmの蛍光を発するが、ペプチド部とグルカゴンとの相互作用により変調された蛍光波長450nm~500nmを測定することができる。蛍光波長の遷移は、ペプチド部とグルカゴンとが相互作用することにより、プローブ周辺の環境が親水的な環境から疎水的な環境に変化したことで短波長側の蛍光強度が増加したためであると考えられる。ペプチド部の種類に応じて、変調された蛍光波長は変化しうるため、ピークとなる蛍光波長についてはプローブ毎に決定する必要がある。元の蛍光波長の強度と変調された蛍光波長の強度との強度比を元にグルカゴン濃度を決定することができる。強度比を用いてグルカゴンの濃度を決定することで、原理上プローブの蛍光強度に依存せずより安定的にグルカゴンの測定が可能となる。
【0027】
本発明に係るグルカゴン検出用プローブを用いたグルカゴン測定方法では、グルカゴンを特異性高く測定することができる。図4に示されるとおり、実施例で作成されたグルカゴン検出用プローブ(ECL0、ECL1、ECL2、ECL3、ECL0-1、及びECL2-1)は、グルカゴンとオキシントモジュリンにのみ反応性を示し、ミニグルカゴン、グリセンチンに対しては反応性を示さなかった。必ずしも限定されることを意図するものではないが、オキシントモジュリンとグルカゴンのN末端のアミノ酸配列が共通していることから、本発明で開発したペプチドプローブは、グルカゴンのN末端を認識していると考えられる。また、プローブ毎にグルカゴン/オキシントモジュリンの蛍光強度比がそれぞれ異なることから、プローブの配列によって特異性が変化しうる。従来のグルカゴンを測定する方法であるELISA法(図5)では、測定サンプルと抗体溶液との反応時間に20~48時間が必要であった一方で、本発明のグルカゴン検出プローブでは30分以内、好ましくは15分以内、特に好ましくは5~10分で測定が可能である。またELISA法では、オキシントモジュリンのみならずミニグルカゴンについても検出してしまうため、特異性の問題がみられた。
【0028】
本発明のさらに別の態様では、本発明はグルカゴン検出用プローブを含む、グルカゴン測定キットにも関する。グルカゴン測定キットは、さらに製品説明書や、蛍光強度に基づいた検量線などが含まれていてもよい。本発明のグルカゴン検出用プローブは、遊離グルカゴンに結合することから、生体イメージングにも使用することもできる。生体イメージングに用いるグルカゴン検出キットに関してもよい。
【0029】
本明細書において言及される全ての文献はその全体が引用により本明細書に取り込まれる。以下に説明する本発明の実施例は例示のみを目的とし、本発明の技術的範囲を限定するものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲の記載によってのみ限定される。本発明の趣旨を逸脱しないことを条件として、本発明の変更、例えば、本発明の構成要件の追加、削除及び置換を行うことができる。
【実施例
【0030】
実施例1:グルカゴン検出用プローブの調製
5-(ジメチルアミノ)ナフタレン-1-スルホン酸の合成
【化11】
200mL三口フラスコに、5-アミノ-ナフタレン-1-スルホン酸(1.0g, 4.5mmol)(東京化成工業)、ヨウ化メチル(6.4g, 45mmol)、水素化ホウ素ナトリウム(0.2g, 10.0mmol)、THF100mLを加え、窒素気流下、5時間還流した。溶媒を減圧留去後、1N塩酸を加え、析出した沈殿を分取した。水で洗浄後、減圧乾燥し目的化合物を得た。
収率:85%
1H-NMR (CD3OD, 500MHz, r.t., TMS,δ/ppm) 2.86 (6H, s), 7.34 (1H, d), 7.54 (1H, t), 7.86 (1H, d), 8.00 (1H, t), 8.45 (1H, d), 8.89 (1H, d).
【0031】
5-(ジメチルアミノ)ナフタレン-1-スルホニルクロリドの合成
【化12】
100mL三口フラスコに、5-(ジメチルアミノ)ナフタレン-1-スルホン酸(1.0g, 3.7mmol)、塩化チオニル(0.5g, 4.0mmol)、ジクロロメタン50mLを加え、室温で6時間撹拌した。反応溶液を冷水にあけ,酢酸エチルで抽出した。有機層を水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し,溶媒を減圧留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (ヘキサン:酢酸エチル=95:5 v/v ) で精製し目的化合物を得た。
収率:85%
1H-NMR (CD3OD, 500MHz, r.t., TMS,δ/ppm) 2.85 (6H, s), 7.35 (1H, d), 7.52 (1H, t), 7.84 (1H, d), 8.01 (1H, t), 8.47 (1H, d), 8.86 (1H, d).
【0032】
蛍光標識結合グルカゴンペプチドの調製
下記の表1に示すアミノ酸配列を有するペプチドを、ペプチド固相合成装置(委託元:ユーロフィンジェノミクス株式会社もしくはペプチド研究所株式会社)を用いて調製した。
【表1】
【0033】
合成した各ペプチド2mgを水もしくはジメチルスルホキシド(DMSO)50μLに融解し、トリエチルアミン2μLと混合した。減圧乾燥した5-(ジメチルアミノ)ナフタレン-1-スルホニルクロリド25mgをジメチルホルムアミド200μLに融解した。ペプチド溶液に蛍光色素の融解液を20μL添加し、室温で2時間撹拌後、4℃で一晩静置した。翌日、ペプチド溶液を減圧蒸留し、トルエンを1mL添加し、再度減圧蒸留した。もう一度トルエンを1mL添加し減圧蒸留した。その後ジクロロメタン1mLを添加し、余分な蛍光色素を排除することで精製を行い十分に減圧蒸留にて乾燥し、蛍光色素の修飾された各ペプチド溶液を水もしくはDMSOで融解しプローブ溶液とした。蛍光標識が付されたペプチドは下記の通りであった:
【表2】
【0034】
実施例2:グルカゴンの測定
グルカゴン(入手元:ペプチド研究所)を0.1%ウシ血清アルブミン(BSA)添加生理食塩水(PBS)に溶解して500nMの濃度のグルカゴン溶液を取得した。上記において合成した200μMのプローブ溶液とグルカゴン溶液を25℃下で混合し、混合直後における蛍光スペクトルを、蛍光測定器(販売元:株式会社 日立ハイテクサイエンス、励起波長327nm)を用いて測定した。各ペプチドを用い、グルカゴンを添加した際、添加しなかった際の蛍光スペクトルを示す(図1A:ECL0、B:ECL1、C:ECL2、D:ECL3、E:ECL0-1、F:ECL2-1)。ECL0、1、2、3、0-1、2-1を用いた際、グルカゴンと反応時に蛍光のピークの短波長側へのシフトが観察された。
【0035】
さらに、グルカゴンを0.1%BSA添加PBSに溶解して、0.5nM、0.75nM、1.25nM、2.5nM、5nM、7.5nM、12.5nM、25nM、50nM、75nM、125nM、250nM、及び500nMのグルカゴン溶液を調製した。ECL0及びECL0-1のプローブ溶液(200μM)とグルカゴン溶液を25℃下で混合し、混合直後における蛍光スペクトルを、蛍光測定器(販売元:株式会社 日立ハイテクサイエンス、励起波長327nm)を用いて測定した。各ペプチドを用い、グルカゴン濃度に応じた蛍光スペクトルを示す(図2A:ECL0、B:ECL0-1)。グルカゴン濃度の増加に伴い短波長側の蛍光強度の増加が観察された。得られた蛍光スペクトルに基づいて453nmの蛍光強度と505nmの蛍光強度の比率を求め、ECL0、ECL0-1、及びECL2-1について検量線を作成した(図3)。
【0036】
実施例3:グルカゴン類似体との交差性(特異性)解析
本発明のペプチドプローブ(ECL0, 1, 2, 3, 0-1, 2-1)とグルカゴンと類似の配列を持つペプチドとの反応性について解析を行うため、上述と同様の条件でグルカゴンの代わりに、下記表3に示される配列を有するミニグルカゴン、オキシントモジュリン、及びグリセンチンを、0.1%BSA添加PBSに溶解して250nMのグルカゴン類似体の溶液を調製した。また、同様に250nMのグルカゴン溶液を調製した。200μMの各ペプチドプローブ溶液と、グルカゴン溶液又はグルカゴン類似体の溶液とを25℃下で混合し、混合直後における蛍光スペクトルを、蛍光測定器(販売元:株式会社 日立ハイテクサイエンス、励起波長327nm)を用いて測定した。各ペプチドプローブと、グルカゴン溶液を添加した際、グルカゴン類似体の溶液を添加した際、添加しなかった際の蛍光スペクトルを示す(図4)。各ペプチドプローブは、グルカゴン以外のグルカゴン類似体に対しては、オキシントモジュリンにのみ反応性を有した。本発明のペプチドプローブを用いた場合、5-10分で測定が完了した。
【表3】
【0037】
比較例1:ELISAとの特異性の比較
既存技術との比較のために、市販のグルカゴン検出ELISAキット(株式会社メルコディア)を用いてグルカゴン及び類似体の検出を行った。実施例3と同様の条件で、濃度を250pMのグルカゴン溶液、及びグルカゴンの代わりに表3に示される配列を有するミニグルカゴン、オキシントモジュリン、及びグリセンチンを、0.1%BSA添加PBSに溶解して250pMのグルカゴン類似体の溶液を調製した。また、同様に250pMのグルカゴン溶液を調製した。調整した溶液を用いて製品に記載のプロトコールに従いグルカゴン並びにその類似体の測定を行った。このプロトコールでは、測定サンプルと抗体溶液の反応時間に20-48時間必要であった。その測定結果を示す(図5)。グルカゴンとオキシントモジュリンにおいて強いシグナルが観察され、さらにミニグルカゴンについても弱いシグナルが観察された。
【産業上の利用可能性】
【0038】
生化学、医療、分析化学における高感度、高選択的かつ簡便な分析法として利用が可能である。本発明のように溶液中の定性・定量分析だけに留まらず、生体組織中のグルカゴンの可視化イメージング色素、簡易分析キットに応用して、販売することもできる。
また将来的には、インシュリンなどの他のマーカーも含めた糖尿病マーカーとして、診断薬、マーカー試薬としても応用が期待されると考える。
図1
図2
図3
図4
図5
【配列表】
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