IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エルジー・ケム・リミテッドの特許一覧

特許7418898変性共役ジエン系重合体、その製造方法、およびそれを含むゴム組成物
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-12
(45)【発行日】2024-01-22
(54)【発明の名称】変性共役ジエン系重合体、その製造方法、およびそれを含むゴム組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 236/10 20060101AFI20240115BHJP
   C08F 212/14 20060101ALI20240115BHJP
   C08F 8/34 20060101ALI20240115BHJP
   C08F 8/32 20060101ALI20240115BHJP
   C08L 9/00 20060101ALI20240115BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20240115BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20240115BHJP
【FI】
C08F236/10
C08F212/14
C08F8/34
C08F8/32
C08L9/00
C08K3/04
C08K3/36
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022529906
(86)(22)【出願日】2021-07-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-26
(86)【国際出願番号】 KR2021009028
(87)【国際公開番号】W WO2022030794
(87)【国際公開日】2022-02-10
【審査請求日】2022-05-23
(31)【優先権主張番号】10-2020-0098086
(32)【優先日】2020-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ヒョン・ジュン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ノ・マ・キム
【審査官】佐藤 のぞみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-120791(JP,A)
【文献】特表2019-516842(JP,A)
【文献】特開昭61-285207(JP,A)
【文献】国際公開第2019/112261(WO,A1)
【文献】特開2013-155253(JP,A)
【文献】特開2014-084373(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0128599(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 236/00-236/22
C08F 212/00-212/36
C08F 8/00-8/50
C08L 9/00-9/10
C08K 3/00-13/08
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位と、
N含有芳香族炭化水素化合物由来の単位と、
S含有芳香族炭化水素化合物またはS含有ヘテロ環化合物由来の単位とを含み、
前記N含有芳香族炭化水素化合物は、下記化学式1で表される化合物であり、
【化1】
前記化学式1中、
1a ~R 1c は、互いに独立して、水素原子;炭素数1~20のアルキル基;炭素数2~20のアルケニル基;炭素数2~20のアルキニル基;炭素数1~20のヘテロアルキル基、炭素数2~20のヘテロアルケニル基;炭素数2~20のヘテロアルキニル基;炭素数5~20のシクロアルキル基;炭素数6~20のアリール基;または炭素数3~20のヘテロ環基であり、
1d は、単結合、置換基で置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキレン基;置換基で置換もしくは非置換の炭素数5~20のシクロアルキレン基;または置換基で置換もしくは非置換の炭素数6~20のアリーレン基であり、ここで、前記置換基は、炭素数1~10のアルキル基、炭素数5~10のシクロアルキル基、または炭素数6~20のアリール基であり、
1e は、下記化学式1aで表される置換基であり、
【化2】
前記化学式1a中、
1f は、単結合、置換基で置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキレン基;置換基で置換もしくは非置換の炭素数5~20のシクロアルキレン基;または置換基で置換もしくは非置換の炭素数6~20のアリーレン基であり、ここで、前記置換基は、炭素数1~10のアルキル基、炭素数5~10のシクロアルキル基、または炭素数6~20のアリール基であり、
1g およびR 1h は、互いに独立して、炭素数1~20のアルキル基;炭素数2~20のアルケニル基;炭素数2~20のアルキニル基;炭素数1~20のヘテロアルキル基;炭素数2~20のヘテロアルケニル基;炭素数2~20のヘテロアルキニル基;炭素数5~20のシクロアルキル基;炭素数6~20のアリール基;炭素数3~20のヘテロ環基;または炭素数1~10のアルキル基で置換の1置換、2置換、または3置換のアルキルシリル基であるか、または、R 1g およびR 1h は、互いに連結され、Nとともに炭素数1~10のアルキル基で置換もしくは非置換の2~10のヘテロ環基を形成し;
前記S含有芳香族炭化水素化合物は、下記化学式2で表される化合物であり、
【化3】
前記化学式2中、
は、水素原子;炭素数1~30のアルキル基;炭素数2~30のアルケニル基;炭素数2~30のアルキニル基;炭素数1~30のヘテロアルキル基、炭素数2~30のヘテロアルケニル基;炭素数2~30のヘテロアルキニル基;炭素数5~30のシクロアルキル基;炭素数6~30のアリール基;または炭素数3~30のヘテロ環基であり、
は、単結合;または炭素数1~20のアルキレン基であり、
は、炭素数2~30のアルケニル基であり;
前記S含有ヘテロ環化合物は、下記化学式3で表される化合物であり、
【化4】
前記化学式3中、
は、水素原子、置換基Xで置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキル基、置換基Xで置換もしくは非置換の炭素数3~20のシクロアルキル基、または置換基Xで置換もしくは非置換の炭素数6~30のアリール基であり、
は、置換基Xで置換もしくは非置換の炭素数1~5のアルキレン基であり、
前記置換基Xは、ヒドロキシ基(-OH)、ハロゲン基、1級アミノ基(-NH )、および2級アミノ基(-NHR’)からなる群から選択され、前記Xが2級アミノ基である場合、R’は、炭素数1~10のアルキル基であり;
下記条件(i)および(ii)を満たす、変性共役ジエン系重合体。
(i)分子量分布(PDI;MWD):1.0以上3.0未満、および
(ii)Sの含量:重合体の総重量を基準として25~2000ppmである。
【請求項2】
Siの含量およびNの含量それぞれは、重合体の総重量を基準として50~500ppmである、請求項1に記載の変性共役ジエン系重合体。
【請求項3】
前記化学式1中、
1a~R1cは、互いに独立して、水素原子;炭素数1~10のアルキル基;炭素数2~10のアルケニル基;炭素数2~10のアルキニル基;炭素数1~10のヘテロアルキル基、炭素数2~10のヘテロアルケニル基;炭素数2~10のヘテロアルキニル基;炭素数5~10のシクロアルキル基;炭素数6~10のアリール基;または炭素数3~10のヘテロ環基であり、
1dは、単結合または非置換の炭素数1~10のアルキレン基であり、
1e、化学式1aで表される置換基であり、
前記化学式1a中、R1fは、単結合または非置換の炭素数1~10のアルキレン基であり、
1gおよびR1hは、互いに独立して、炭素数1~10のアルキル基;炭素数2~10のアルケニル基;炭素数2~10のアルキニル基;炭素数1~10のヘテロアルキル基;炭素数2~10のヘテロアルケニル基;炭素数2~10のヘテロアルキニル基;炭素数5~10のシクロアルキル基;炭素数6~10のアリール基;炭素数3~10のヘテロ環基または炭素数1~6のアルキル基で置換の1置換、2置換、または3置換のアルキルシリル基であるか、または、R1gおよびR1hは、互いに連結され、Nとともに炭素数1~6のアルキル基で置換もしくは非置換の炭素数2~10のヘテロ環基を形成するものである、請求項1または2に記載の変性共役ジエン系重合体。
【請求項4】
前記化学式2中、
は、水素原子;炭素数1~10のアルキル基;または炭素数1~10のヘテロアルキル基であり、
は、単結合;または炭素数1~10のアルキレン基であり、
は、炭素数2~10のアルケニル基である、請求項1から3のいずれか一項に記載の変性共役ジエン系重合体。
【請求項5】
前記化学式3中、
は、非置換の炭素数1~10のアルキル基、非置換の炭素数3~10のシクロアルキル基、または非置換の炭素数6~12のアリール基であり、
は、非置換の炭素数1~3のアルキレン基である、請求項1から4のいずれか一項に記載の変性共役ジエン系重合体。
【請求項6】
アミノアルコキシシラン系変性剤由来の官能基をさらに含む、請求項1からのいずれか一項に記載の変性共役ジエン系重合体。
【請求項7】
前記アミノアルコキシシラン系変性剤は、下記化学式4で表される化合物である、請求項に記載の変性共役ジエン系重合体。
【化5】
前記化学式4中、
20は、単結合または炭素数1~10のアルキレン基であり、
21およびR22は、互いに独立して、炭素数1~10のアルキル基であり、
23は、単結合または炭素数1~10のアルキレン基であり、
24は、水素、炭素数1~10のアルキル基、または炭素数1~10のアルキル基で置換の2置換、3置換、または4置換のアルキルシリル基であり、
aは2または3の整数であり、cは1~3の整数であり、bは0~2の整数であり、この際、b+c=3である。
【請求項8】
炭化水素溶媒中で、重合開始剤の存在下で、第1単量体と第2単量体を一次重合反応させて第1活性重合体を製造する第1重合反応ステップ(S1)と、
前記第1活性重合体と第3単量体を二次重合反応させる第2重合反応ステップ(S2)とを含み、
前記第1単量体は、共役ジエン系単量体、または共役ジエン系単量体および芳香族ビニル系単量体であり、前記第2単量体は、N含有芳香族炭化水素化合物であり、第3単量体は、S含有芳香族炭化水素化合物またはS含有ヘテロ環化合物であり、前記第3単量体がS含有ヘテロ環化合物である場合、リチウム化された後に重合反応に用いるものである、請求項1からのいずれか一項に記載の変性共役ジエン系重合体の製造方法。
【請求項9】
前記第2単量体および第3単量体は、それぞれ第1単量体100gを基準として0.01g~10gで用いる、請求項に記載の変性共役ジエン系重合体の製造方法。
【請求項10】
前記重合開始剤は、第1単量体、第2単量体、および第3単量体の総100gを基準として0.01mmol~10mmolで用いる、請求項またはに記載の変性共役ジエン系重合体の製造方法。
【請求項11】
前記(S2)ステップの後に、アミノアルコキシシラン系変性剤を添加し変性反応させるステップ(S3)をさらに含む、請求項から10のいずれか一項に記載の変性共役ジエン系重合体の製造方法。
【請求項12】
前記変性剤は、重合開始剤1モルを基準として0.1モル~10モルで用いる、請求項11に記載の変性共役ジエン系重合体の製造方法。
【請求項13】
請求項1からのいずれか一項に記載の変性共役ジエン系重合体および充填剤を含む、ゴム組成物。
【請求項14】
前記ゴム組成物は、前記変性共役ジエン系重合体100重量部に対して0.1重量部~200重量部の充填剤を含む、請求項13に記載のゴム組成物。
【請求項15】
前記充填剤は、シリカ系充填剤またはカーボンブラック系充填剤である、請求項13または14に記載のゴム組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年08月05日付けの韓国特許出願第10-2020-0098086号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は、本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、加工性に優れるとともに、引張強度および粘弾性特性に優れた変性共役ジエン系重合体、その製造方法、およびそれを含むゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
近年、自動車に対する低燃費化の要求に伴い、タイヤ用ゴム材料として、転がり抵抗が少なく、耐摩耗性、引張特性に優れるとともに、ウェットスキッド抵抗性に代表される調整安定性も兼備した共役ジエン系重合体が求められている。
【0004】
タイヤの転がり抵抗を減少させるためには、加硫ゴムのヒステリシス損を小さくする方法が挙げられ、かかる加硫ゴムの評価指標としては、50℃~80℃の反発弾性、tanδ、グッドリッチ発熱などが用いられる。すなわち、前記温度での反発弾性が大きいか、tanδ、グッドリッチ発熱が小さいゴム材料が好ましい。
【0005】
ヒステリシス損の小さいゴム材料としては、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、またはポリブタジエンゴムなどが知られているが、これらは、ウェットスキッド抵抗性が小さいという問題がある。そこで、近年、スチレン-ブタジエンゴム(以下、SBRという)またはブタジエンゴム(以下、BRという)などの共役ジエン系重合体または共重合体が乳化重合や溶液重合により製造され、タイヤ用ゴムとして用いられている。中でも、乳化重合に比べて溶液重合が有する最も大きい長所は、ゴムの物性を規定するビニル構造の含量およびスチレンの含量を任意に調節することができ、カップリング(coupling)や変性(modification)などにより分子量および物性などが調節可能であるという点である。よって、最終的に製造されたSBRやBRの構造の変化が容易であり、鎖末端の結合や変性により鎖末端の動きを減少させ、シリカまたはカーボンブラックなどの充填剤との結合力を増加させることができるため、溶液重合によるSBRがタイヤ用ゴム材料として多く用いられる。
【0006】
かかる溶液重合によるSBRがタイヤ用ゴム材料として用いられる場合、前記SBR中のビニルの含量を増加させることで、ゴムのガラス転移温度を上昇させ、走行抵抗および制動力などのタイヤに求められる物性を調節することができるだけでなく、ガラス転移温度を適宜調節することで、燃料消費を低減することができる。前記溶液重合によるSBRは、アニオン重合開始剤を用いて製造し、形成された重合体の鎖末端を種々の変性剤を用いて結合させたり、変性させたりして用いられている。例えば、米国特許第4,397,994号には、一官能性開始剤であるアルキルリチウムを用いて、非極性溶媒下でスチレン-ブタジエンを重合することで得られた重合体の鎖末端の活性アニオンを、スズ化合物などのような結合剤を用いて結合させた技術が提示されている。
【0007】
一方、前記SBRまたはBRの重合は、回分式(batch)または連続式重合により行うことができるが、回分式重合による場合には、製造された重合体の分子量分布が狭いため物性の改善面では長所があるが、生産性が低く、加工性が劣悪であるという問題があり、連続式重合による場合には、重合が連続的に行われて生産性に優れるとともに加工性の改善面では長所があるが、分子量分布が広いため物性が劣悪であるという問題がある。そこで、SBRまたはBRの製造時、生産性、加工性、および物性の何れも同時に改善させるための研究が求められ続けている状況である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】US4397994A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記の従来技術の問題を解決するためになされたものであって、分子中にN含有芳香族炭化水素化合物由来の単位、およびS含有芳香族炭化水素化合物またはS含有ヘテロ環化合物由来の単位を含むことで、加工性に優れるとともに、引張特性などの機械的物性に優れ、粘弾性特性に優れた変性共役ジエン系重合体を提供することを目的とする。
【0010】
また、本発明は、前記変性共役ジエン系重合体の製造方法を提供することを目的とする。
さらに、本発明は、前記変性共役ジエン系重合体を含むことで、加工性、耐摩耗性、および転がり抵抗性に優れたゴム組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するための本発明の一実施形態によると、本発明は、共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位と、N含有芳香族炭化水素化合物由来の単位と、S含有芳香族炭化水素化合物またはS含有ヘテロ環化合物由来の単位とを含み、下記条件(i)および(ii)を満たす、変性共役ジエン系重合体を提供する。
(i)分子量分布(PDI;MWD):1.0以上3.0未満、および
(ii)Sの含量:重合体の総重量を基準として25ppm以上である。
【0012】
また、本発明は、炭化水素溶媒中で、重合開始剤の存在下で、第1単量体と第2単量体を一次重合反応させて第1活性重合体を製造する第1重合反応ステップ(S1)と、前記第1活性重合体と第3単量体を二次重合反応させる第2重合反応ステップ(S2)とを含み、前記第1単量体は、共役ジエン系単量体、または共役ジエン系単量体および芳香族ビニル系単量体であり、前記第2単量体は、N含有芳香族炭化水素化合物であり、第3単量体は、S含有芳香族炭化水素化合物またはS含有ヘテロ環化合物である、前記変性共役ジエン系重合体の製造方法を提供する。
さらに、本発明は、前記変性共役ジエン系重合体および充填剤を含む、ゴム組成物を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る変性共役ジエン系重合体は、分子中にN元素、S元素、およびSi元素を特定の含量以上含むことで、加工性に優れるとともに、引張特性のような機械的物性に優れ、粘弾性特性に優れるという効果がある。
【0014】
また、本発明に係る変性共役ジエン系重合体の製造方法は、第1単量体と第2単量体を一次重合反応し、第3単量体を添加して二次重合反応させる2段階の重合反応ステップを含むことで、高変性の変性共役ジエン系重合体を容易に製造することができる。
【0015】
さらに、本発明に係るゴム組成物は、前記変性共役ジエン系重合体を含むことで、加工性、耐摩耗性、および転がり抵抗性に優れるという効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明が容易に理解されるように、本発明をより詳細に説明する。
本発明の説明および特許請求の範囲で用いられている用語や単語は、通常的もしくは辞書的な意味に限定して解釈してはならず、発明者らは、自分の発明を最善の方法で説明するために、用語の概念を適切に定義することができるという原則に則って、本発明の技術的思想に合致する意味と概念で解釈すべきである。
【0017】
定義
本明細書において、用語「重合体」は、同一種類であるか異種類であるかを問わず、単量体を重合することで製造された重合体化合物を指す。これにより、一般用語の重合体は、単に1種の単量体から製造された重合体を指す際に通常用いられる単独重合体という用語、および共重合体という用語を網羅する。
【0018】
本明細書において、用語「1価の炭化水素基」は、1価のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、不飽和結合を1つ以上含むシクロアルキル基、およびアリール基などの炭素と水素が結合された1価の原子団を意味し得、1価の炭化水素で表される置換基の最小炭素原子数は、各置換基の種類に応じて決定することができる。
【0019】
本明細書において、用語「2価の炭化水素基」は、2価のアルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、シクロアルキレン基、不飽和結合を1つ以上含むシクロアルキレン基、およびアリーレン基などの炭素と水素が結合された2価の原子団を意味し得、2価の炭化水素で表される置換基の最小炭素原子数は、各置換基の種類に応じて決定することができる。
【0020】
本発明において、用語「アルキル基(alkyl group)」は、1価の脂肪族飽和炭化水素を意味し、メチル、エチル、プロピル、およびブチルなどの直鎖状アルキル基、およびイソプロピル(isopropyl)、sec-ブチル(sec-butyl)、tert-ブチル(tert-butyl)、およびネオペンチル(neo-pentyl)などの分岐状アルキル基の両方を含む意味であり得る。
【0021】
本明細書において、用語「アルケニル基(alkenyl group)」は、二重結合を1つまたは2つ以上含む1価の脂肪族不飽和炭化水素を意味し得る。
【0022】
本明細書において、用語「アルキニル基(alkynyl group)」は、三重結合を1つまたは2つ以上含む1価の脂肪族不飽和炭化水素を意味し得る。
【0023】
本明細書において、用語「アルキレン基(alkylene group)」は、メチレン、エチレン、プロピレン、およびブチレンなどの2価の脂肪族飽和炭化水素を意味し得る。
【0024】
本明細書において、用語「アリール基(aryl group)」は、芳香族炭化水素を意味し、また、1つの環が形成された単環芳香族炭化水素(monocyclic aromatic hydrocarbon)、または2つ以上の環が結合された多環芳香族炭化水素(polycyclic aromatic hydrocarbon)を両方とも含む意味であり得る。
【0025】
本明細書において、用語「ヘテロ環基(heterocyclic group)」は、シクロアルキル基またはアリール基中の炭素原子が1つ以上のヘテロ原子で置換されたものであって、例えば、ヘテロシクロアルキル基またはヘテロアリール基を何れも含む意味であり得、前記ヘテロ原子は、N、O、S、またはSiであってもよい。
【0026】
本明細書において、用語「含む」、「有する」という用語、およびこれらの派生語は、これらが具体的に開示されているか否かを問わず、任意の追加の成分、ステップもしくは手順の存在を排除することを意図しない。如何なる不確実性も避けるために、「含む」という用語の使用により請求された全ての組成物は、反対に述べられない限り、重合体であるかもしくはその他のものであるかを問わず、任意の追加の添加剤、補助剤、もしくは化合物を含んでもよい。これとは対照的に、「から本質的に構成される」という用語は、操作性において必須ではないものを除き、任意のその他の成分、ステップもしくは手順を任意の連続する説明の範囲から排除する。「から構成される」という用語は、具体的に述べられるか挙げられない任意の成分、ステップもしくは手順を排除する。
【0027】
測定方法および条件
本明細書において、「重量平均分子量(Mw)」、および「数平均分子量(Mn)」は、GPC(Gel permeation chromatograph)分析により測定したものである。分子量分布(PDI、MWD、Mw/Mn)は、測定された前記各分子量から計算する。具体的に、前記GPCは、PLgel Olexis(Polymer Laboratories社)カラム2本とPLgel mixed-C(Polymer Laboratories社)カラム1本を組み合わせて使用し、分子量の計算時に、GPC基準物質(Standard Material)としてPS(polystyrene)を用いて行い、GPC測定溶媒は、テトラヒドロフランに2wt%のアミン化合物を混ぜて製造する。
【0028】
本明細書において、「Siの含量」は、ICP分析方法により、誘導結合プラズマ発光分析器(ICP-OES;Optima 7300DV)を用いて測定する。前記誘導結合プラズマ発光分析器を用いる場合、約0.7gの試料を白金ルツボ(Pt crucible)に入れ、濃硫酸(98重量%、Electronic grade)約1mLを入れ、300℃で3時間加熱し、試料を電気炉(Thermo Scientific、Lindberg Blue M)にて、下記ステップ1~3のプログラムで灰化を進行した後、
【0029】
1)ステップ1:initial temp 0℃、rate(temp/hr)180℃/hr、temp(holdtime)180℃(1hr)
2)ステップ2:initial temp 180℃、rate(temp/hr)85℃/hr、temp(holdtime)370℃(2hr)
3)ステップ3:initial temp 370℃、rate(temp/hr)47℃/hr、temp(holdtime)510℃(3hr)
【0030】
残留物に濃硝酸(48重量%)1mL、濃フッ酸(50重量%)20μLを加え、白金ルツボを密封して30分以上振った(shaking)後、試料にホウ酸(boric acid)1mLを入れ、0℃で2時間以上保管した後、超純水(ultrapure water)30mLに希釈し、灰化を進行して測定する。
【0031】
本明細書において、「Nの含量」は、NSX分析方法により測定されてもよく、前記NSX分析方法は、極微量窒素定量分析器(NSX-2100H)を用いて測定する。例示的に、前記極微量窒素定量分析器を用いる場合、極微量窒素定量分析器(Auto sampler、Horizontal furnace、PMT & Nitrogen detector)をオンにし、Arを250ml/min、Oを350ml/min、オゾナイザ(ozonizer)を300ml/minにキャリアガス流量を設定し、ヒータ(heater)を800℃に設定した後、約3時間待機して分析器を安定化させる。分析器が安定化された後、窒素標準(Nitrogen standard)(AccuStandard S-22750-01-5ml)を用いて、検量線範囲5ppm、10ppm、50ppm、100ppm、および500ppmの検量線を作成し、各濃度に該当するエリア(Area)を得た後、濃度に対するエリアの割合を用いて直線を作成する。その後、試料20mgが入ったセラミックボートを前記分析器のAuto samplerに置いて測定してエリアを得る。得られた試料のエリアおよび前記検量線を用いて、Nの含量を計算する。この際、試料は、スチームで加熱された温水に入れ、撹拌して溶媒を除去した変性共役ジエン系重合体であって、残留単量体、残留変性剤、およびオイルが除去されたものである。
【0032】
本明細書において、「Sの含量」は、燃焼イオンクロマトグラフィー(C-IC)分析方法により測定し、前記燃焼イオンクロマトグラフィー分析は、ICS2100/AQF-2100Hを用いて測定する。具体的に、前記燃焼イオンクロマトグラフィーは、カラムとしてIonPac AS18(4×250mm)を、検出器としてsuppressed Conductivity Detectorを使用し、供給電流を76mAに設定し、溶媒としてはKOH 30.05mMを流量1ml/minで注入されるように設定する。燃焼温度は、注入口900℃、排出口1,000℃に設定し、キャリアガス流量は、Arガス200ml/min、Oガス400ml/minに設定し、分析器が安定化された後、標準物質(ERM-EC680KまたはERM-EC681M)を分析して検量線を作成する。その後、試料50mgが入ったボートを燃焼させた後、吸収剤(Absorbent)(H 900mg/kg)が含まれた水溶液に通過させて最終10mlの体積に希釈し、希釈されたサンプル100μLを採取し、分析器に通過させて出るSの含量を、前記標準物質の検量線を用いて計算する。
【0033】
変性共役ジエン系重合体
本発明は、加工性に優れるとともに、引張特性および粘弾性特性に優れた変性共役ジエン系重合体を提供する。
【0034】
本発明の一実施形態に係る変性共役ジエン系重合体は、共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位と、N含有芳香族炭化水素化合物由来の単位と、S含有芳香族炭化水素化合物またはS含有ヘテロ環化合物由来の単位とを含み、下記条件(i)および(ii)を満たすことを特徴とする。
(i)分子量分布(PDI;MWD):1.0以上3.0未満、および
(ii)Sの含量:重合体の総重量を基準として25ppm以上である。
【0035】
本発明の一実施形態によると、前記変性共役ジエン系重合体は、共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位、N含有芳香族炭化水素化合物由来の単位、およびS含有芳香族炭化水素化合物由来の単位またはS含有ヘテロ環化合物由来の単位を含むものであって、ここで、前記共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位は、共役ジエン系単量体が重合時になす繰り返し単位を意味し得る。
【0036】
また、前記N含有芳香族炭化水素化合物、S含有芳香族炭化水素化合物、およびS含有ヘテロ環化合物それぞれは、共役ジエン系単量体とともに重合されて重合体鎖を形成し、重合体鎖に官能基を導入させる変性単量体であってもよく、前記N含有芳香族炭化水素化合物由来の単位、S含有芳香族炭化水素化合物由来の単位、およびS含有ヘテロ環化合物由来の単位それぞれは、前記各化合物が重合時になす重合体鎖中に存在する前記各化合物由来の官能基を意味し得る。
【0037】
また他の例として、前記N含有芳香族炭化水素化合物由来の単位は、共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位を含む重合体鎖中に存在するか、重合体鎖の少なくとも片末端に存在してもよい。
【0038】
また、前記S含有芳香族炭化水素化合物由来の単位またはS含有ヘテロ環化合物由来の単位は、共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位を含む重合体鎖中または片末端に存在してもよい。
【0039】
また他の例として、前記変性共役ジエン系重合体は、アミノアルコキシシラン系変性剤由来の官能基をさらに含んでもよく、この場合、前記変性共役ジエン系重合体は、共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位、N含有芳香族炭化水素化合物由来の単位、およびS含有芳香族炭化水素化合物由来の単位またはS含有ヘテロ環化合物由来の単位を含み、これに加え、アミノアルコキシシラン系変性剤由来の官能基を含んでもよい。
【0040】
また、前記変性共役ジエン系重合体が変性剤由来の官能基を含む場合、前記N含有芳香族炭化水素化合物由来の単位は、共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位を含む重合体鎖中または片末端に存在し、S含有芳香族炭化水素化合物由来の単位またはS含有ヘテロ環化合物由来の単位は、前記重合体鎖中に存在し、前記変性剤由来の官能基は、前記重合体鎖の他の片末端に存在してもよい。すなわち、本発明の一実施形態に係る前記変性共役ジエン系重合体は、両末端が変性している両末端変性共役ジエン系重合体であってもよい。この場合、本発明の一実施形態に係る変性共役ジエン系重合体は、充填剤に対する親和性にさらに優れたN原子を両末端に含むことで、充填剤に対する親和性がさらに改善されることができ、その結果、加工性、機械的物性、および粘弾性特性にさらに優れるという効果がある。
【0041】
また、本発明の他の一実施形態によると、前記変性共役ジエン系重合体は、芳香族ビニル系単量体由来の繰り返し単位をさらに含んでもよく、この場合、前記変性共役ジエン系重合体は、共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位、芳香族ビニル系単量体由来の繰り返し単位、N含有芳香族炭化水素化合物由来の単位、およびS含有芳香族炭化水素化合物またはS含有ヘテロ環化合物由来の単位を含み、必要に応じて、変性剤由来の官能基をさらに含む共重合体であってもよい。ここで、前記芳香族ビニル系単量体由来の繰り返し単位は、芳香族ビニル系単量体が重合時になす繰り返し単位を意味し得る。
【0042】
本発明の一実施形態によると、前記共役ジエン系単量体は、1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、ピペリレン、3-ブチル-1,3-オクタジエン、イソプレン、2-フェニル-1,3-ブタジエン、および2-ハロ-1,3-ブタジエン(ハロは、ハロゲン原子を意味する)からなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0043】
前記芳香族ビニル単量体は、一例として、スチレン、α-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、4-プロピルスチレン、1-ビニルナフタレン、4-シクロヘキシルスチレン、4-(p-メチルフェニル)スチレン、1-ビニル-5-ヘキシルナフタレン、3-(2-ピロリジノエチル)スチレン(3-(2-pyrrolidino ethyl)styrene)、4-(2-ピロリジノエチル)スチレン(4-(2-pyrrolidino ethyl)styrene)、および3-(2-ピロリジノ-1-メチルエチル)-α-メチルスチレン(3-(2-pyrrolidino-1-methyl ethyl)-α-methylstyrene)からなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0044】
また他の例として、前記変性共役ジエン系重合体は、前記共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位とともに、炭素数1~10のジエン系単量体由来の繰り返し単位をさらに含む共重合体であってもよい。前記ジエン系単量体由来の繰り返し単位は、前記共役ジエン系単量体とは異なるジエン系単量体に由来した繰り返し単位であってもよく、前記共役ジエン系単量体とは異なるジエン系単量体は、一例として、1,2-ブタジエンであってもよい。前記変性共役ジエン系重合体がジエン系単量体をさらに含む共重合体である場合、前記変性共役ジエン系重合体は、ジエン系単量体由来の繰り返し単位を0超過重量%~1重量%、0超過重量%~0.1重量%、0超過重量%~0.01重量%、または0超過重量%~0.001重量%で含んでもよい。この範囲内にて、ゲルの生成を防止するという効果がある。
【0045】
本発明の一実施形態によると、前記共重合体は、ランダム共重合体であってもよく、この場合、各物性間のバランスに優れるという効果がある。前記ランダム共重合体は、共重合体をなす繰り返し単位が無秩序に配列されたものを意味し得る。
【0046】
本発明の一実施形態に係る前記変性共役ジエン系重合体は、分子量分布(PDI;MWD)が1.0以上3.0未満、具体的には、1.1以上2.0未満、または1.1以上1.7以下を満たす。この範囲内にて、転がり抵抗性およびウェットスキッド抵抗性に優れ、各物性間のバランスに優れるという効果がある。
【0047】
また、前記変性共役ジエン系重合体は、数平均分子量(Mn)が1,000g/mol~2,000,000g/mol、10,000g/mol~1,000,000g/mol、または100,000g/mol~800,000g/molであってもよく、重量平均分子量(Mw)が1,000g/mol~3,000,000g/mol、10,000g/mol~2,000,000g/mol、または100,000g/mol~2,000,000g/molであってもよく、ピーク平均分子量(Mp)が1,000g/mol~3,000,000g/mol、10,000g/mol~2,000,000g/mol、または100,000g/mol~2,000,000g/molであってもよい。
【0048】
他の例として、前記変性共役ジエン系重合体は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC、Gel permeation chromatography)による分子量分布曲線がユニモーダル(unimodal)形態であることを満たすことができる。これは、連続式重合により重合された重合体に現れる分子量分布曲線であって、変性共役ジエン系重合体が均一な特性を有することを意味し得る。すなわち、本発明の一実施形態に係る変性共役ジエン系重合体は、連続式重合により製造され、ユニモーダル形態の分子量分布曲線を有し、且つ、分子量分布が1.0以上3.0未満であることを満たすことができる。
【0049】
また、前記変性共役ジエン系重合体は、重合体の総重量を基準として、Sの含量が25ppm以上、25ppm~2,000ppm、または100ppm~1,000ppmであることを満たす。この範囲内にて、変性共役ジエン系重合体の引張特性などの機械的物性にさらに優れることができる。一方、重合体中のSの含量は、S原子の含量を意味するものであって、S原子およびその含量は、前記S含有芳香族炭化水素化合物またはS含有ヘテロ環化合物に由来したものであってもよい。
【0050】
また他の例として、前記変性共役ジエン系重合体は、Siの含量およびNの含量それぞれが、重合体の総重量を基準として50ppm以上、100ppm以上、100ppm~500ppm、または100ppm~300ppmであってもよい。この範囲内にて、変性共役ジエン系重合体を含むゴム組成物の引張特性および粘弾性特性などの機械的物性に優れるという効果がある。一方、重合体中のSiの含量およびNの含量は、それぞれ重合体中に存在するSi原子およびN原子の含量を意味するものであって、前記Si原子およびその含量は、変性剤に由来したものであってもよく、N原子およびその含量は、N含有芳香族炭化水素化合物および変性剤に由来したものであってもよい。
【0051】
また他の例として、前記変性共役ジエン系重合体は、100℃で測定されたムーニー応力緩和率が0.5以上、0.5以上3.0以下、0.5以上2.5以下、または0.5以上2.0以下であってもよい。
【0052】
ここで、前記ムーニー応力緩和率は、同一量の変性(strain)に対する反応として現れるストレス(stress)の変化を示すものであって、ムーニー粘度計を用いて測定したものであってよい。具体的に、前記ムーニー応力緩和率は、Monsanto社のMV2000Eのラージロータ(Large Rotor)を用いて、100℃およびロータスピード(Rotor Speed)2±0.02pmの条件で、重合体を室温(23±5℃)で30分以上放置後に27±3gを採取してダイキャビティの内部に満たしておき、プラテン(platen)を作動させてトルク(torque)を印加しながらムーニー粘度を測定し、その後、トルクが解除されるにつれて現れるムーニー粘度変化の傾き値を測定して得た。
【0053】
一方、ムーニー応力緩和率は、当該重合体の分岐構造の指標として用いてもよく、例えば、ムーニー粘度が同等な重合体を比較する場合、分岐が多いほど、ムーニー緩和率が小さくなるため、分岐度の指標として用いてもよい。
【0054】
また、前記変性共役ジエン系重合体は、ムーニー粘度(Mooney viscosity)が、100℃で、30以上、40~150、または40~140であってもよい。この範囲内にて、加工性および生産性に優れるという効果がある。
【0055】
また、前記変性共役ジエン系重合体は、ビニルの含量が5重量%以上、10重量%以上、または10重量%~60重量%であってもよい。ここで、前記ビニルの含量は、ビニル基を有する単量体と芳香族ビニル系単量体とからなる共役ジエン系共重合体100重量%に対して、1,4-添加ではなく、1,2-添加された共役ジエン系単量体の含量を意味し得る。
【0056】
一方、本発明の一実施形態に係る前記N含有芳香族炭化水素化合物は、下記化学式1で表される化合物であってもよく、単量体と重合されて重合体鎖を構成し、重合体鎖に官能基を導入できるものであってもよい。
【0057】
【化1】
【0058】
前記化学式1中、
1a~R1cは、互いに独立して、水素原子;炭素数1~20のアルキル基;炭素数2~20のアルケニル基;炭素数2~20のアルキニル基;炭素数1~20のヘテロアルキル基、炭素数2~20のヘテロアルケニル基;炭素数2~20のヘテロアルキニル基;炭素数5~20のシクロアルキル基;炭素数6~20のアリール基;または炭素数3~20のヘテロ環基であり、
1dは、単結合、置換基で置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキレン基;置換基で置換もしくは非置換の炭素数5~20のシクロアルキレン基;または置換基で置換もしくは非置換の炭素数6~20のアリーレン基であり、ここで、前記置換基は、炭素数1~10のアルキル基、炭素数5~10のシクロアルキル基、または炭素数6~20のアリール基であり、
1eは、炭素数1~20のアルキル基;炭素数2~20のアルケニル基;炭素数2~20のアルキニル基;炭素数1~20のヘテロアルキル基;炭素数2~20のヘテロアルケニル基;炭素数2~20のヘテロアルキニル基;炭素数5~20のシクロアルキル基;炭素数6~20のアリール基;炭素数3~20のヘテロ環基;または下記化学式1aで表される置換基であり、
【0059】
【化2】
【0060】
前記化学式1a中、
1fは、単結合、置換基で置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキレン基;置換基で置換もしくは非置換の炭素数5~20のシクロアルキレン基;または置換基で置換もしくは非置換の炭素数6~20のアリーレン基であり、ここで、前記置換基は、炭素数1~10のアルキル基、炭素数5~10のシクロアルキル基、または炭素数6~20のアリール基であり、
1gおよびR1hは、互いに独立して、炭素数1~20のアルキル基;炭素数2~20のアルケニル基;炭素数2~20のアルキニル基;炭素数1~20のヘテロアルキル基;炭素数2~20のヘテロアルケニル基;炭素数2~20のヘテロアルキニル基;炭素数5~20のシクロアルキル基;炭素数6~20のアリール基;炭素数3~20のヘテロ環基;または炭素数1~10のアルキル基で置換の1置換、2置換、または3置換のアルキルシリル基であるか、または、R1gおよびR1hは、互いに連結され、Nとともに炭素数1~10のアルキル基で置換もしくは非置換の2~10のヘテロ環基を形成する。
【0061】
具体的に、前記化学式1中、R1a~R1cは、互いに独立して、水素原子;炭素数1~10のアルキル基;炭素数2~10のアルケニル基;炭素数2~10のアルキニル基;炭素数1~10のヘテロアルキル基、炭素数2~10のヘテロアルケニル基;炭素数2~10のヘテロアルキニル基;炭素数5~10のシクロアルキル基;炭素数6~10のアリール基;または炭素数3~10のヘテロ環基であり、R1dは、単結合または非置換の炭素数1~10のアルキレン基であり、R1eは、炭素数1~10のアルキル基;炭素数2~10のアルケニル基;炭素数2~10のアルキニル基;炭素数1~10のヘテロアルキル基;炭素数2~10のヘテロアルケニル基;炭素数2~10のヘテロアルキニル基;炭素数5~10のシクロアルキル基;炭素数6~10のアリール基;炭素数3~10のヘテロ環基;または化学式1aで表される置換基であり、前記化学式1a中、R1fは、単結合または非置換の炭素数1~10のアルキレン基であり、R1gおよびR1hは、互いに独立して、炭素数1~10のアルキル基;炭素数2~10のアルケニル基;炭素数2~10のアルキニル基;炭素数1~10のヘテロアルキル基;炭素数2~10のヘテロアルケニル基;炭素数2~10のヘテロアルキニル基;炭素数5~10のシクロアルキル基;炭素数6~10のアリール基;炭素数3~10のヘテロ環基または炭素数1~6のアルキル基で置換の1置換、2置換、または3置換のアルキルシリル基であるか、または、R1gおよびR1hは、互いに連結され、Nとともに炭素数1~6のアルキル基で置換もしくは非置換の炭素数2~10のヘテロ環基を形成してもよい。
【0062】
他の例として、前記化学式1中、R1a~R1cは、互いに独立して、水素原子;または炭素数1~6のアルキル基であり、R1dは、単結合または非置換の炭素数1~6のアルキレン基であり、R1eは、炭素数1~10のアルキル基または化学式1aで表される置換基であり、前記化学式1a中、R1fは、単結合または非置換の炭素数1~6のアルキレン基であり、R1gおよびR1hは、互いに独立して、炭素数1~10のアルキル基または炭素数1~6のアルキル基で置換のトリアルキルシリル基であるか;または、R1gおよびR1hは、互いに連結され、Nとともに炭素数1~3のアルキル基で置換もしくは非置換の炭素数2~6のヘテロ環基を形成してもよい。
【0063】
より具体的に、前記化学式1で表される化合物は、下記化学式1-1~化学式1-3で表される化合物の中から選択された1種以上であってもよい。
【0064】
【化3】
【0065】
【化4】
【0066】
【化5】
前記化学式1-3中、Meはメチル基である。
【0067】
また、前記S含有芳香族炭化水素化合物は、下記化学式2で表される化合物であってもよい。
【0068】
【化6】
【0069】
前記化学式2中、
は、水素原子;炭素数1~30のアルキル基;炭素数2~30のアルケニル基;炭素数2~30のアルキニル基;炭素数1~30のヘテロアルキル基、炭素数2~30のヘテロアルケニル基;炭素数2~30のヘテロアルキニル基;炭素数5~30のシクロアルキル基;炭素数6~30のアリール基;または炭素数3~30のヘテロ環基であり、
は、単結合;炭素数1~20のアルキレン基であり、
は、炭素数2~30のアルケニル基である。
【0070】
具体的に、前記化学式2中、Rは、水素原子;炭素数1~10のアルキル基;または炭素数1~10のヘテロアルキル基であり、Rは、単結合;または炭素数1~10のアルキレン基であり、Rは、炭素数2~10のアルケニル基であってもよい。
【0071】
より具体的に、前記化学式2で表される化合物は、下記化学式2-1で表される化合物であってもよい。
【0072】
【化7】
【0073】
また、前記S含有ヘテロ環化合物は、下記化学式3で表される化合物であってもよい。
【0074】
【化8】
【0075】
前記化学式3中、
は、水素原子、置換基Xで置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキル基、置換基Xで置換もしくは非置換の炭素数3~20のシクロアルキル基、または置換基Xで置換もしくは非置換の炭素数6~30のアリール基であり、
は、置換基Xで置換もしくは非置換の炭素数1~5のアルキレン基であり、
前記置換基Xは、ヒドロキシ基(-OH)、ハロゲン基、1級アミノ基(-NH)、および2級アミノ基(-NHR’)からなる群から選択され、前記Xが2級アミノ基である場合、R’は、炭素数1~10のアルキル基である。
【0076】
具体的に、前記化学式3中、Rは、非置換の炭素数1~10のアルキル基、非置換の炭素数3~10のシクロアルキル基、または非置換の炭素数6~12のアリール基であり、Rは、非置換の炭素数1~3のアルキレン基であってもよい。
【0077】
より具体的に、前記化学式3で表される化合物は、下記化学式3-1で表される化合物であってもよい。
【0078】
【化9】
【0079】
また、本発明に係る前記変性剤は、共役ジエン系重合体の少なくとも片末端を変性させるための変性剤であってもよく、具体的な例として、シリカ親和性変性剤であってもよい。前記シリカ親和性変性剤は、変性剤として用いられる化合物中にシリカ親和性官能基を含有する変性剤を意味し、前記シリカ親和性官能基は、充填剤、特にシリカ系充填剤との親和性に優れており、シリカ系充填剤と変性剤由来の官能基との間の相互作用が可能な官能基を意味し得る。
【0080】
具体的に、本発明の一実施形態によると、前記アミノアルコキシシラン系変性剤は、下記化学式4で表される化合物であってもよい。
【0081】
【化10】
【0082】
前記化学式4中、
20は、単結合または炭素数1~10のアルキレン基であり、R21およびR22は、互いに独立して、炭素数1~10のアルキル基であり、R23は、単結合または炭素数1~10のアルキレン基であり、R24は、水素、炭素数1~10のアルキル基、または炭素数1~10のアルキル基で置換の2置換、3置換、または4置換のアルキルシリル基であり、aは2または3の整数であり、cは1~3の整数であり、bは0~2の整数であり、この際、b+c=3であってもよい。
【0083】
具体的な例として、前記化学式4中、R20は、単結合または炭素数1~5のアルキレン基であってもよく、R21およびR22は、互いに独立して、炭素数1~5のアルキル基であってもよく、R23は、単結合または炭素数1~5のアルキレン基であり、R24は、水素、炭素数1~5のアルキル基、または炭素数1~5のアルキル基で置換のトリアルキルシリル基であってもよく、aは2または3の整数であってもよく、cは1~3の整数であってもよく、bは0~2の整数であってもよく、この際、b+c=3であってもよい。
【0084】
より具体的な例として、前記化学式4で表される化合物は、N,N-ビス(3-(ジメトキシ(メチル)シリル)プロピル)-メチル-1-アミン(N,N-bis(3-(dimethoxy(methyl)silyl)propyl)-methyl-1-amine)、N,N-ビス(3-(ジエトキシ(メチル)シリル)プロピル)-メチル-1-アミン(N,N-bis(3-(diethoxy(methyl)silyl)propyl)-methyl-1-amine)、N,N-ビス(3-(トリメトキシシリル)プロピル)-メチル-1-アミン(N,N-bis(3-(trimethoxysilyl)propyl)-methyl-1-amine)、N,N-ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)-メチル-1-アミン(N,N-bis(3-(triethoxysilyl)propyl)-methyl-1-amine)、N,N-ジメチル-3-(トリメトキシシリル)プロパン-1-アミン(N,N-dimethxyl-3-(trimethoxysilyl)propan-1-amine)、N,N-ジエチル-3-(トリメトキシシリル)プロパン-1-アミン(N,N-diethyl-3-(trimethoxysilyl)propan-1-amine)、N,N-ジエチル-3-(トリエトキシシリル)プロパン-1-アミン(N,N-diethyl-3-(triethoxysilyl)propan-1-amine)、トリ(トリメトキシシリル)アミン(tri(trimethoxysilyl)amine)、トリ(3-(トリメトキシシリル)プロピル)アミン(tri-(3-(trimethoxysilyl)propyl)amine)、N,N-ビス(3-(ジエトキシ(メチル)シリル)プロピル)-1,1,1-トリメチルシランアミン(N,N-bis(3-(diethoxy(methyl)silyl)propyl)-1,1,1-trimethlysilanamine)、および3-(ジメトキシ(メチル)シリル)-N,N-ジエチルプロパン-1-アミン(3-(dimethoxy(methyl)silyl)-N,N-diethylpropane-1-amine)からなる群から選択された1種であってもよい。
【0085】
変性共役ジエン系重合体の製造方法
また、本発明は、前記変性共役ジエン系重合体の製造方法を提供する。
本発明の一実施形態に係る前記変性共役ジエン系重合体は、後述の製造方法により製造されることで、分子量分布が1.0以上3.0未満として狭く、分子中のSの含量、Siの含量、およびNの含量が前述の範囲で存在することができ、そこで、加工性に優れるとともに、引張特性および粘弾性特性の何れにもバランスよく優れることができる。
【0086】
本発明の一実施形態に係る前記変性共役ジエン系重合体の製造方法は、重合開始剤の存在下で、第1単量体と第2単量体を一次重合反応させて第1活性重合体を製造する第1重合反応ステップ(S1)と、前記第1活性重合体と第3単量体を二次重合反応させる第2重合反応ステップ(S2)とを含み、前記第1単量体は、共役ジエン系単量体、または共役ジエン系単量体および芳香族ビニル系単量体であり、前記第2単量体は、N含有芳香族炭化水素化合物であり、第3単量体は、S含有芳香族炭化水素化合物またはS含有ヘテロ環化合物であることを特徴とする。
【0087】
また、前記製造方法は、前記(S2)ステップの後に、アミノアルコキシシラン系変性剤を添加し変性反応させるステップ(S3)をさらに含んでもよい。
【0088】
前記製造方法で用いられる共役ジエン系単量体、芳香族ビニル系単量体、N含有芳香族炭化水素化合物、S含有芳香族炭化水素化合物、S含有ヘテロ環化合物、およびアミノアルコキシシラン系変性剤は前述のとおりであるため、以下ではこれらの記載を省略する。
【0089】
前記炭化水素溶媒は、特に制限されるものではないが、例えば、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、イソオクタン、シクロヘキサン、トルエン、ベンゼン、およびキシレンからなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0090】
前記重合開始剤は、特に制限されるものではないが、例えば、メチルリチウム、エチルリチウム、プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n-ブチルリチウム、s-ブチルリチウム、t-ブチルリチウム、ヘキシルリチウム、n-デシルリチウム、t-オクチルリチウム、フェニルリチウム、1-ナフチルリチウム、n-エイコシルリチウム、4-ブチルフェニルリチウム、4-トリルリチウム、シクロヘキシルリチウム、3,5-ジ-n-ヘプチルシクロヘキシルリチウム、シクロペンチルリチウム、ナフチルナトリウム、ナフチルカリウム、リチウムアルコキシド、ナトリウムアルコキシド、カリウムアルコキシド、リチウムスルホネート、ナトリウムスルホネート、カリウムスルホネート、リチウムアミド、ナトリウムアミド、カリウムアミド、およびリチウムイソプロピルアミドからなる群から選択される1種以上であってもよい。
【0091】
本発明の一実施形態によると、前記重合開始剤は、単量体の総100gを基準として0.01mmol~10mmol、0.05mmol~5mmol、0.1mmol~2mmol、0.1mmol~1mmol、または0.15~0.8mmolで用いてもよい。ここで、前記単量体の総100gは、第1単量体、第2単量体、および第3単量体の合計量を表すものであってもよい。
【0092】
また、本発明の一実施形態によると、前記第2単量体および第3単量体は、それぞれ第1単量体100gを基準として0.01g~10g、または0.1g~1gで用いてもよい。この場合、製造された重合体中のSの含量が前述の範囲に容易に調節されることができ、さらに優れた引張特性を有する重合体を製造することができる。
【0093】
一方、前記第3単量体として化学式3で表される化合物を用いる場合、化学式3で表される化合物は、下記例示的な反応式1のようにリチウム化した後に重合反応に参加することができる(Corey-Seebach Reaction)。
【0094】
【化11】
前記反応式1中、RおよびRは、前述のとおりである。
【0095】
前記(S1)ステップおよび(S2)ステップの一次重合反応および二次重合反応は、一例として、アニオン重合であってもよく、具体的な例として、アニオンによる成長重合反応により重合末端にアニオン活性部位を有するリビングアニオン重合であってもよい。また、前記(S1)ステップおよび(S2)ステップの一次重合反応および二次重合反応は、昇温重合、等温重合、または定温重合(断熱重合)であってもよい。前記定温重合は、重合開始剤を投入した後に任意に熱を加えず、それ自体の反応熱で重合させるステップを含む重合方法を意味し、前記昇温重合は、前記重合開始剤を投入した後に任意に熱を加えて温度を増加させる重合方法を意味し、前記等温重合は、前記重合開始剤を投入した後に熱を加えて熱を増加させるかまたは熱を奪うことで重合物の温度を一定に維持する重合方法を意味し得る。
【0096】
また、本発明の一実施形態によると、前記(S1)ステップの一次重合反応は、前記共役ジエン系単量体の他に、炭素数1~10のジエン系化合物をさらに含んで行われてもよく、この場合、長時間運転時に反応器の壁面にゲルが形成されるのを防止するという効果がある。前記ジエン系化合物の一例として、1,2-ブタジエンであってもよい。
【0097】
前記(S1)ステップおよび(S2)ステップの一次重合反応および二次重合反応は、それぞれ、一例として、100℃以下、-20℃~90℃、0℃~80℃、0℃~70℃、または10℃~70℃の温度範囲で行われてもよい。この範囲内にて、重合体の分子量分布を狭く調節し、物性の改善に優れるという効果がある。
【0098】
また、前記(S1)ステップおよび(S2)ステップの一次重合反応および二次重合反応は回分式重合または連続式重合により行ったり、前記一次重合反応は回分式、二次重合反応は連続式重合により行ったりすることのように、必要に応じて、回分式重合と連続式重合を組み合わせて行ってもよい。
【0099】
また、前記(S1)ステップおよび(S2)ステップの一次重合反応および二次重合反応は、回分式重合と連続式重合のどの重合により行うかを問わず、第1単量体および第2単量体を一次的に重合反応させ、その後、第3単量体を添加して二次的に重合反応させると、本発明に係る前記変性共役ジエン系重合体を製造することができる。
【0100】
一例として、前記(S1)ステップおよび(S2)ステップを回分式重合により行う場合、重合反応器に炭化水素溶媒、重合開始剤、第1単量体、および第2単量体を投入し、一次重合反応して第1活性重合体を製造し、これに第3単量体を投入し、二次重合反応してもよい。
【0101】
また他の例として、前記(S1)ステップおよび(S2)ステップを連続式重合により行う場合、2器以上の重合反応器を用い、前記第1単量体および第2単量体は、重合反応器のうち第1反応器に投入して一次重合反応を行い、前記第3単量体は、第2反応器に投入して二次重合反応を行ってもよい。すなわち、前記製造方法において、第3単量体は、第1単量体および第2単量体の重合反応が一定時間行われてから投入されて重合に参加するものであってもよい。
【0102】
本発明に係る前記製造方法は、単量体の重合参加の時間差により形成される重合体鎖中の前記第1単量体、第2単量体、および第3単量体の位置が調節されてもよく、例えば、第2単量体は、第1単量体と重合開始時点からともに重合が進行し、第2単量体由来の単位は、重合体鎖の片末端部位に位置してもよく、その後に投入されて重合に参加した第3単量体の重合により由来する第3単量体由来の単位は、前記重合体鎖の他の片末端部位に位置してもよい。一方、前記第2単量体は、非常に少ない量で重合に使用するため、重合が進行するにつれ、第2単量体由来の単位は、重合体鎖の片末端部位、例えば、重合開始とともに形成された部位に位置し、その後、重合が進行し続けるにつれ、第1単量体由来の繰り返し単位だけがさらに形成された重合体鎖が製造されることができる。
【0103】
また、前記製造方法が変性反応を含む場合、上記のように一次重合反応および二次重合反応の後に変性反応を行うことで、重合体鎖の片末端に第2単量体由来の単位を、重合体鎖の他の片末端に第3単量体由来の単位を含み、第3単量体由来の単位が存在する末端部位に変性剤由来の官能基を含む構造を有する変性共役ジエン系重合体を製造することができ、前記変性共役ジエン系重合体は、前記構造を有することで、引張特性および粘弾性特性にバランスよく優れることができる。
【0104】
また他の例として、前記変性共役ジエン系重合体の製造方法は、2器以上の重合反応器および変性反応器を含む複数の反応器において、連続式重合方法により行われてもよい。例えば、前記(S1)ステップおよび(S2)ステップは、第1反応器を含めて2器以上の重合反応器で連続的に行われてもよく、前記重合反応器の数は、反応条件および環境に応じて弾力的に決定されてもよい。前記連続式重合方法は、反応器に反応物を連続的に供給し、生成された反応生成物を連続的に排出する反応工程を意味し得る。前記連続式重合方法による場合、生産性および加工性に優れ、製造される重合体の均一性に優れるという効果がある。
【0105】
また、本発明の一実施形態によると、前記重合反応器において連続的に活性重合体の製造時、第1反応器での重合転換率は50%以下、10%~50%、または20%~50%であってもよい。この範囲内にて、重合反応の開始後、重合体が形成されるにつれて発生する副反応を抑制し、重合時に直鎖状(linear)構造の重合体を誘導することができ、これにより、重合体の分子量分布を狭く調節することができるため、物性の改善に優れるという効果がある。
この際、前記重合転換率は、反応温度、反応器での滞留時間などに応じて調節されてもよい。
【0106】
前記重合転換率は、一例として、重合体の重合時、重合体を含む重合体溶液上の固体濃度を測定して決定されてもよく、具体的な例として、前記重合体溶液を確保するために、各重合反応器の出口にシリンダー型容器を取り付け、一定量の重合体溶液をシリンダー型容器に充填し、前記シリンダー型容器を反応器から分離し、重合体溶液が充填されているシリンダーの重さ(A)を測定した後、シリンダー型容器に充填されている重合体溶液をアルミニウム容器、一例として、アルミニウム皿に移し、重合体溶液が除去されたシリンダー型容器の重さ(B)を測定し、重合体溶液が入ったアルミニウム容器を140℃のオーブンで30分間乾燥させ、乾燥された重合体の重さ(C)を測定した後、下記数学式1により計算してもよい。
【0107】
【数1】
【0108】
前記数学式1中、総固形分含量は、各反応器から分離した重合体溶液中の総固形分(単量体)の含量であって、重合体溶液100%に対する固形分の重量百分率である。例示的に、総固形分含量が20重量%である場合、前記数学式1にこれを適用時には20/100、すなわち0.2に代入されて計算されてもよい。
【0109】
一方、前記第1反応器で重合された重合物は、変性反応器前の重合反応器まで順次移送され、最終的に重合転換率が95%以上になるまで重合が進行してもよく、第1反応器で重合された後、第2反応器、または第2反応器ないし変性反応器前の重合反応器まで、各反応器別の重合転換率は、分子量分布の調節のために、各反応器別に適宜調節して行われてもよい。
【0110】
一方、前記(S1)ステップにおいて、活性重合体の製造時、第1反応器での重合物の滞留時間は1分~40分、1分~30分、または5分~30分であってもよい。この範囲内にて、重合転換率の調節が容易であり、これにより、重合体の分子量分布を狭く調節することができ、これにより、物性の改善に優れるという効果がある。
【0111】
本発明において、用語「重合物」は、各反応器内で重合が行われている重合体形態の中間体を意味し、反応器内で重合が行われている、重合転換率が95%未満の重合体を意味し得る。
【0112】
本発明の一実施形態によると、前記(S1)ステップで製造された活性重合体の分子量分布(PDI、polydispersed index;MWD、molecular weight distribution;Mw/Mn)は2.0未満、1.0以上~1.7未満、または1.1以上~1.6未満であってもよい。この範囲内にて、変性剤との変性反応またはカップリングにより製造される変性共役ジエン系重合体の分子量分布が狭いため、物性の改善に優れるという効果がある。
【0113】
一方、前記(S1)ステップの重合は、極性添加剤を含んで行われてもよく、前記極性添加剤は、単量体の総100gを基準として0.001g~50g、0.001g~10g、または0.005g~0.1gの割合で添加してもよい。また他の例として、前記極性添加剤は、重合開始剤の総1mmolを基準として0.001g~10g、0.005g~5g、0.005g~4gの割合で添加してもよい。
【0114】
前記極性添加剤は、一例として、テトラヒドロフラン、2,2-ジ(2-テトラヒドロフリル)プロパン、ジエチルエーテル、シクロペンチルエーテル、ジプロピルエーテル、エチレンメチルエーテル、エチレンジメチルエーテル、ジエチルグリコール、ジメチルエーテル、3級ブトキシエトキシエタン、ビス(3-ジメチルアミノエチル)エーテル、(ジメチルアミノエチル)エチルエーテル、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、ナトリウムメントレート(sodium mentholate)、および2-エチルテトラヒドロフルフリルエーテル(2-ethyl tetrahydrofurfuryl ether)からなる群から選択された1種以上であってもよく、好ましくは、2,2-ジ(2-テトラヒドロフリル)プロパン、トリエチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、ナトリウムメントレート(sodium mentholate)、または2-エチルテトラヒドロフルフリルエーテル(2-ethyl tetrahydrofurfuryl ether)であってもよい。前記極性添加剤を含む場合、共役ジエン系単量体および芳香族ビニル系単量体を共重合させる場合、これらの反応速度差を補うことで、ランダム共重合体を容易に形成できるように誘導するという効果がある。
【0115】
本発明の一実施形態によると、前記(S2)ステップの反応またはカップリングは、変性反応器で行われてもよく、この際、前記変性剤は、単量体の総100gを基準として0.01mmol~10mmolの量で用いてもよい。また他の例として、前記変性剤は、前記(S1)ステップの重合開始剤1モルを基準として0.1モル~10モル、0.1モル~5モル、または0.1モル~3モルで用いてもよい。
【0116】
また、本発明の一実施形態によると、前記変性剤は、変性反応器に投入されてもよく、前記(S2)ステップは、変性反応器で行われてもよい。また他の例として、前記変性剤は、前記(S1)ステップで製造された活性重合体を、(S2)ステップを行うための変性反応器に移送するための移送部に投入されてもよく、前記移送部内で活性重合体と変性剤の混合により反応またはカップリングが進行してもよい。
【0117】
本発明の一実施形態に係る前記変性共役ジエン系重合体の製造方法は、前述の変性共役ジエン系重合体の特性を満たすことができる方法であり、上記のように、本発明が達成しようとする効果は、上記の特徴を満たした場合に達成可能であるが、少なくとも前記製造方法において、連続式工程下で、第1反応器から第2反応器に移送する際の重合転換率は満たす必要があり、その他の重合条件の場合は多様に制御されることで、本発明に係る変性共役ジエン系重合体が有する物性を実現することができる。
【0118】
さらに、本発明は、上記の変性共役ジエン系重合体を含むゴム組成物を提供する。
前記ゴム組成物は、前記変性共役ジエン系重合体を10重量%以上、10重量%~100重量%、または20重量%~90重量%の量で含んでもよい。この範囲内にて、引張強度、耐摩耗性などの機械的物性に優れ、各物性間のバランスに優れるという効果がある。
【0119】
また、前記ゴム組成物は、前記変性共役ジエン系重合体の他に、必要に応じて、他のゴム成分をさらに含んでもよく、この際、前記ゴム成分は、ゴム組成物の総重量に対して90重量%以下の含量で含まれてもよい。具体的な例として、前記他のゴム成分は、前記変性共役ジエン系重合体100重量部に対して1重量部~900重量部で含まれてもよい。
【0120】
前記ゴム成分は、一例として、天然ゴムまたは合成ゴムであってもよく、具体的な例として、シス-1,4-ポリイソプレンを含む天然ゴム(NR);前記一般的な天然ゴムを変性または精製した、エポキシ化天然ゴム(ENR)、脱タンパク天然ゴム(DPNR)、水素化天然ゴムなどの変性天然ゴム;スチレン-ブタジエン共重合体(SBR)、ポリブタジエン(BR)、ポリイソプレン(IR)、ブチルゴム(IIR)、エチレン-プロピレン共重合体、ポリイソブチレン-co-イソプレン、ネオプレン、ポリ(エチレン-co-プロピレン)、ポリ(スチレン-co-ブタジエン)、ポリ(スチレン-co-イソプレン)、ポリ(スチレン-co-イソプレン-co-ブタジエン)、ポリ(イソプレン-co-ブタジエン)、ポリ(エチレン-co-プロピレン-co-ジエン)、ポリスルフィドゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、エピクロロヒドリンゴム、ハロゲン化ブチルゴムなどの合成ゴムであってもよく、これらの何れか1つまたは2つ以上の混合物が用いられてもよい。
【0121】
前記ゴム組成物は、一例として、本発明の変性共役ジエン系重合体100重量部に対して0.1重量部~200重量部、または10重量部~120重量部の充填剤を含んでもよい。前記充填剤は、一例として、シリカ系充填剤であってもよく、具体的な例として、湿式シリカ(含水ケイ酸)、乾式シリカ(無水ケイ酸)、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、またはコロイドシリカなどであってもよく、好ましくは、破壊特性の改良効果およびウェットグリップ(wet grip)性の両立効果に最も優れた湿式シリカであってもよい。また、前記ゴム組成物は、必要に応じて、カーボンブラック系充填剤をさらに含んでもよい。
【0122】
また他の例として、前記充填剤としてシリカが用いられる場合、補強性および低発熱性の改善のためのシランカップリング剤がともに用いられてもよい。具体的な例として、前記シランカップリング剤は、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2-メルカプトエチルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリエトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルベンゾリルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、ビス(3-ジエトキシメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、3-メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、ジメトキシメチルシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、またはジメトキシメチルシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィドなどであってもよく、これらの何れか1つまたは2つ以上の混合物が用いられてもよい。好ましくは、補強性の改善効果を考慮すると、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィドまたは3-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアジルテトラスルフィドであってもよい。
【0123】
また、本発明の一実施形態に係る前記ゴム組成物は、ゴム成分として、活性部位にシリカとの親和性が高い官能基が導入された変性共役ジエン系重合体が用いられているため、シランカップリング剤の配合量は、通常の場合よりも低減されてもよく、これにより、前記シランカップリング剤は、シリカ100重量部に対して1重量部~20重量部、または5重量部~15重量部で用いられてもよい。この範囲内にて、カップリング剤としての効果が十分に発揮されながらも、ゴム成分のゲル化を防止するという効果がある。
【0124】
本発明の一実施形態に係る前記ゴム組成物は、硫黄架橋性であってもよく、加硫剤をさらに含んでもよい。前記加硫剤は、具体的に、硫黄粉末であってもよく、ゴム成分100重量部に対して0.1重量部~10重量部で含まれてもよい。この範囲内にて、加硫ゴム組成物の必要な弾性率および強度を確保するとともに、低燃費性に優れるという効果がある。
【0125】
本発明の一実施形態に係る前記ゴム組成物は、前記成分の他に、ゴム工業界で通常用いられる各種添加剤、具体的には、加硫促進剤、プロセス油、酸化防止剤、可塑剤、老化防止剤、スコーチ防止剤、亜鉛華(zinc white)、ステアリン酸、熱硬化性樹脂、または熱可塑性樹脂などをさらに含んでもよい。
【0126】
前記加硫促進剤としては、一例として、M(2-メルカプトベンゾチアゾール)、DM(ジベンゾチアジルジスルフィド)、CZ(N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド)などのチアゾール系化合物、もしくはDPG(ジフェニルグアニジン)などのグアニジン系化合物が用いられてもよく、ゴム成分100重量部に対して0.1重量部~5重量部で含まれてもよい。
【0127】
前記プロセス油は、ゴム組成物中で軟化剤として作用するものであって、一例として、パラフィン系、ナフテン系、または芳香族系化合物であってもよく、引張強度および耐摩耗性を考慮すると芳香族系プロセス油が、ヒステリシス損および低温特性を考慮するとナフテン系またはパラフィン系プロセス油が用いられてもよい。前記プロセス油は、一例として、ゴム成分100重量部に対して100重量部以下の含量で含まれてもよい。この範囲内にて、加硫ゴムの引張強度、低発熱性(低燃費性)の低下を防止するという効果がある。
【0128】
前記酸化防止剤は、一例として、2,6-ジ-t-ブチルパラクレゾール、ジブチルヒドロキシトルエニル、2,6-ビス((ドデシルチオ)メチル)-4-ノニルフェノール(2,6-bis((dodecylthio)methyl)-4-nonylphenol)、または2-メチル-4,6-ビス((オクチルチオ)メチル)フェノール(2-methyl-4,6-bis((octylthio)methyl)phenol)であってもよく、ゴム成分100重量部に対して0.1重量部~6重量部で用いられてもよい。
【0129】
前記老化防止剤は、一例として、N-イソプロピル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、6-エトキシ-2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン、またはジフェニルアミンとアセトンの高温縮合物などであってもよく、ゴム成分100重量部に対して0.1重量部~6重量部で用いられてもよい。
【0130】
本発明の一実施形態に係る前記ゴム組成物は、前記配合処方に応じて、バンバリーミキサー、ロール、インターナルミキサーなどの混練機を用いて混練することで得ることができ、成形加工後、加硫工程により、低発熱性および耐摩耗性に優れたゴム組成物を得ることができる。
【0131】
これにより、前記ゴム組成物は、タイヤトレッド、アンダトレッド、サイドウォール、カーカスコーティングゴム、ベルトコーティングゴム、ビードフィラー、チェーファー、またはビードコーティングゴムなどのタイヤの各部材や、防塵ゴム、ベルトコンベア、ホースなどの各種工業用ゴム製品の製造において有用である。
【0132】
さらに、本発明は、前記ゴム組成物を用いて製造されたタイヤを提供する。
前記タイヤは、タイヤまたはタイヤトレッドを含んでもよい。
【0133】
以下、本発明を具体的に説明するために実施例を挙げて詳細に説明する。しかし、本発明に係る実施例は、種々の形態に変形可能であり、本発明の範囲が、以下で詳述する実施例に限定されると解釈されてはならない。本発明の実施例は、当業界で平均的な知識を有する者に、本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0134】
実施例1
3器の反応器が直列に連結された連続反応器のうち第1反応器に、n-ヘキサンにスチレンが60重量%で溶解されたスチレン溶液を2.67kg/h、n-ヘキサンに1,3-ブタジエンが60重量%で溶解された1,3-ブタジエン溶液を11.2kg/h、n-ヘキサンに1-メチル-4-(4-ビニルベンジル)ピペラジン(1-methyl-4-(4-vinylbenzyl)piperazine)(Sigma-Aldrich)が15重量%で溶解された第2単量体溶液を72.04g/h、n-ヘキサン46.28kg/h、極性添加剤としてn-ヘキサンに2,2-(ジ-2(テトラヒドロフリル)プロパンが10重量%で溶解された溶液を35.0g/h、n-ヘキサンにn-ブチルリチウムが6.6重量%で溶解されたn-ブチルリチウム溶液を90.91g/hの速度で注入した。この際、第1反応器の温度は65℃となるように維持し、重合転換率が45%となった際、移送配管を介して、第1反応器から第2反応器に重合物を移送した。
【0135】
次いで、第2反応器に、n-ヘキサンに1,3-ブタジエンが60重量%で溶解された1,3-ブタジエン溶液を2.95kg/h、n-ヘキサンにフェニル(ビニル)スルフィド(phenyl(vinyl)sulfide)(CAS No.1822-73-7、Sigma-Aldrich)が5重量%で溶解された第3単量体溶液を25.52g/hの速度で注入した。この際、第2反応器の温度は75℃となるように維持し、重合転換率が95%以上となった際、移送配管を介して、第2反応器から第3反応器に重合物を移送した。
【0136】
前記第2反応器から第3反応器に重合物を移送し、変性剤としてN,N-ジメチル-3-(トリメトキシシリル)プロパン-1-アミン(N,N-dimethyl-3-(trimethoxysilyl)propan-1-amine)が20重量%で溶解された溶液を60.0g/hの速度で第3反応器に投入した。第3反応器の温度は、65℃となるように維持した。
【0137】
その後、第3反応器から排出された重合溶液に、酸化防止剤として30重量%で溶解されたIR1520(BASF社)溶液を166.67g/hの速度で注入して撹拌した。その結果として得られた重合物をスチームで加熱された温水に入れ、撹拌して溶媒を除去し、変性共役ジエン系重合体を製造した。
【0138】
実施例2
実施例1において、第3単量体溶液として、n-ヘキサンに2-メチル-1,3-ジチアン(2-methyl-1,3-dithiane)(CAS No.6007-26-7、Sigma-Aldrich)が5重量%で溶解された溶液を25.15g/hで第2反応器に連続的に供給したことを除いては、前記実施例1と同様に行い、変性共役ジエン系重合体を製造した。
【0139】
実施例3
実施例1において、第3単量体溶液を51.04g/hで第2反応器に連続的に供給したことを除いては、前記実施例1と同様に行い、変性共役ジエン系重合体を製造した。
【0140】
実施例4
実施例1において、第2単量体溶液として、n-ヘキサンに4-エチル-N,N-ビス(トリメチルシリル)アニリン(4-ethyl-N,N-bis(trimethylsilyl)aniline)が15重量%で溶解された溶液を87.76g/hで第1反応器に連続的に供給したことを除いては、前記実施例1と同様に行い、変性共役ジエン系重合体を製造した。
【0141】
比較例1
実施例1において、第2単量体溶液および第3単量体溶液を第1反応器に供給していないことを除いては、実施例1と同様に行い、変性共役ジエン系重合体を製造した。
【0142】
比較例2
実施例1において、第3単量体溶液を第2反応器に供給していないことを除いては、実施例1と同様に行い、変性共役ジエン系重合体を製造した。
【0143】
比較例3
実施例1において、第2単量体溶液を第1反応器に供給していないことを除いては、実施例1と同様に行い、変性共役ジエン系重合体を製造した。
【0144】
比較例4
実施例2において、第2単量体溶液を第1反応器に供給していないことを除いては、実施例2と同様に行い、変性共役ジエン系重合体を製造した。
【0145】
実験例1
前記実施例および比較例で製造された各変性共役ジエン系重合体に対して、それぞれ重合体中のスチレン単位の含量および1,2-ビニルの含量と、重量平均分子量(Mw、×10g/mol)、数平均分子量(Mn、×10g/mol)、分子量分布(PDI、MWD)、Siの含量、Nの含量、およびSの含量をそれぞれ測定した。結果を下記表1に示した。
【0146】
1)スチレン単位(SM)の含量(重量%)および1,2-ビニル(Vinyl)の含量(重量%)
前記各重合体中のスチレン単位(SM)および1,2-ビニル(Vinyl)の含量は、Varian VNMRS 500 MHz NMRを用いて測定および分析した。
【0147】
NMRの測定時、溶媒としては1,1,2,2-テトラクロロエタンを用い、溶媒ピーク(solvent peak)は5.97ppmで計算し、7.2~6.9ppmはランダムスチレン、6.9~6.2ppmはブロックスチレン、5.8~5.1ppmは1,4-ビニルおよび1,2-ビニル、5.1~4.5ppmは1,2-ビニルのピークとしてスチレン単位および1,2-ビニルの含量を計算した。
【0148】
2)重量平均分子量(Mw、×10 g/mol)、数平均分子量(Mn、×10 g/mol)、および分子量分布(PDI、MWD)
GPC(Gel permeation Chromatography)分析により前記重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)を測定した。また、分子量分布(PDI、MWD、Mw/Mn)は、測定された前記各分子量から計算して得た。具体的に、前記GPCは、PLgel Olexis(Polymer Laboratories社)カラム2本とPLgel mixed-C(Polymer Laboratories社)カラム1本を組み合わせて使用し、分子量の計算時に、GPC基準物質(Standard Material)としてPS(polystyrene)を用いて行った。GPC測定溶媒は、テトラヒドロフランに2重量%のアミン化合物を混ぜて製造した。
【0149】
3)Siの含量
前記Siの含量は、ICP分析方法により、誘導結合プラズマ発光分析器(ICP-OES;Optima 7300DV)を用いて測定した。具体的に、約0.7gの試料を白金ルツボ(Pt crucible)に入れ、濃硫酸(98重量%、Electronic grade)約1mLを入れ、300℃で3時間加熱し、試料を電気炉(Thermo Scientific、Lindberg Blue M)にて、下記ステップ1~3のプログラムで灰化を進行した後、
1)ステップ1:initial temp 0℃、rate(temp/hr)180℃/hr、temp(holdtime)180℃(1hr)
2)ステップ2:initial temp 180℃、rate(temp/hr)85℃/hr、temp(holdtime)370℃(2hr)
3)ステップ3:initial temp 370℃、rate(temp/hr)47℃/hr、temp(holdtime)510℃(3hr)
残留物に濃硝酸(48重量%)1mL、濃フッ酸(50重量%)20μLを加え、白金ルツボを密封して30分以上振った(shaking)後、試料にホウ酸(boric acid)1mLを入れ、0℃で2時間以上保管した後、超純水(ultrapure water)30mLに希釈し、灰化を進行して測定した。
【0150】
4)Nの含量
Nの含量は、NSX分析方法により、極微量窒素定量分析器(NSX-2100H)を用いて測定した。具体的に、極微量窒素定量分析器(Auto sampler、Horizontal furnace、PMT & Nitrogen detector)をオンにし、Arを250ml/min、Oを350ml/min、オゾナイザを300ml/minにキャリアガス流量を設定し、ヒータを800℃に設定した後、約3時間待機して分析器を安定化させた。分析器が安定化された後、窒素標準(Nitrogen standard)(AccuStandard S-22750-01-5ml)を用いて、検量線範囲5ppm、10ppm、50ppm、100ppm、および500ppmの検量線を作成し、各濃度に該当するエリアを得た後、濃度に対するエリアの割合を用いて直線を作成した。その後、試料20mgが入ったセラミックボートを前記分析器のAuto samplerに置いて測定し、エリアを得た。得られた試料のエリアおよび前記検量線を用いて、Nの含量を計算した。
【0151】
5)Sの含量
燃焼イオンクロマトグラフィー(C-IC)分析方法により測定し、前記燃焼イオンクロマトグラフィー分析は、ICS2100/AQF-2100Hを用いて測定した。具体的に、前記燃焼イオンクロマトグラフィーは、カラムとしてIonPac AS18(4×250mm)を、検出器としてsuppressed Conductivity Detectorを使用し、供給電流を76mAに設定し、溶媒はとしてはKOH 30.05mMを流量1ml/minで注入されるように設定した。燃焼温度は、注入口900℃、排出口1,000℃に設定し、キャリアガス流量は、Arガス200ml/min、Oガス400ml/minに設定し、分析器が安定化された後、標準物質(ERM-EC680KまたはERM-EC681M)を分析して検量線を作成した。その後、試料50mgが入ったボートを燃焼させた後、吸収剤(H 900mg/kg)が含まれた水溶液に通過させ、最終10mlの体積に希釈し、希釈されたサンプル100μLを採取し、分析器に通過させて出るSの含量を、前記標準物質の検量線を用いて計算した。
【0152】
【表1】
【0153】
前記表1に示されたように、実施例1~実施例4の変性共役ジエン系重合体は、分子量分布が1.0以上3.0未満であり、Sの含量が25ppm以上を示すとともに、Siの含量が100ppm以上、Nの含量が200ppm以上であることを確認した。一方、比較例1および比較例2の場合は、Sの含量が0であり、比較例1、比較例3、および比較例4は、実施例1~実施例4に比べて、Nの含量が半分レベルに顕著に減少した数値を示し、この際、比較例1は、本発明が提示するN含有芳香族炭化水素化合物、S含有芳香族炭化水素化合物、およびS含有ヘテロ環化合物を用いることなく製造された重合体であり、比較例2は、重合時にS含有芳香族炭化水素化合物およびS含有ヘテロ環化合物を用いることなく製造された重合体であり、比較例3および比較例4は、重合時にN含有芳香族炭化水素化合物を用いることなく製造された重合体である。これにより、本発明に係る変性共役ジエン系重合体は、重合体鎖中に、N含有芳香族炭化水素化合物由来の単位、およびS含有芳香族炭化水素化合物由来の単位またはS含有ヘテロ環化合物由来の単位、そして変性剤由来の単位を含んでいることが分かり、後述の実験例2から、このような差による引張強度、転がり抵抗性、および耐摩耗性の改善の顕著な効果を確認することができる。
【0154】
実験例2
前記実施例および比較例で製造された各変性共役ジエン系共重合体を含むゴム組成物およびそれにより製造された成形品の物性を比較分析するために、引張強度、耐摩耗性、および転がり抵抗性をそれぞれ測定し、その結果を下記表3に示した。
【0155】
1)ゴム試験片の製造
実施例および比較例の各変性共役ジエン系重合体を原料ゴムとし、下記表2に示した配合条件で配合した。表2中の原料の含量は、原料ゴムの100重量部基準に対する各重量部である。
【0156】
【表2】
【0157】
具体的に、前記ゴム試験片は、第1段混練および第2段混練を経て混練される。第1段混練においては、温度制御装置付きのバンバリーミキサーを用いて、原料ゴム、シリカ(充填剤)、有機シランカップリング剤(X50S、Evonik)、プロセス油(TDAE oil)、亜鉛華(ZnO)、ステアリン酸、酸化防止剤(TMQ(RD)(2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンポリマー)、老化防止剤(6PPD((ジメチルブチル)-N-フェニル-フェニレンジアミン)、およびワックス(Microcrystaline Wax)を混練した。この際、混練機の初期温度を70℃に制御し、配合完了後、145℃の排出温度で一次配合物を得た。第2段混練においては、前記一次配合物を室温まで冷却した後、混練機に一次配合物、硫黄、ゴム促進剤(DPD(ジフェニルグアニジン))、および加硫促進剤(CZ(N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド))を加え、100℃以下の温度で混合して二次配合物を得た。その後、160℃で20分間キュアリング工程を経てゴム試験片を製造した。
【0158】
2)引張強度
引張特性は、ASTM 412の引張試験法に準じて各試験片を製造し、前記試験片の切断時の引張強度を測定した。具体的に、引張特性は、Universal Test Machin 4204(Instron社)引張試験機を用いて、室温で50cm/minの速度で測定した。表3における結果値は、比較例1の結果値を基準としてindexで示したものであるため、その数値が高いほど優れることを示す。
【0159】
3)転がり抵抗性(rolling resistance)
粘弾性特性は、動的機械分析器(GABO社)を用いて、Film Tensionモードで、周波数10Hz、各測定温度(-60℃~60℃)で動的変形に対する粘弾性挙動を測定し、tanδ値を確認した。測定結果値において、高温60℃でのtanδ値が低いほど、ヒステリシス損が少なく、転がり抵抗性(燃費性)に優れることを示す。表3における結果値は、比較例1の結果値を基準としてindexで示したものであるため、その数値が高いほど優れることを示す。
【0160】
4)耐摩耗性(DIN摩耗試験)
各ゴム試験片に対して、ASTM D5963に準じてDIN摩耗試験を進行し、DIN loss index(損失体積指数(loss volume index):ARIA(Abration resistance index、Method A)で示した。表3における結果値は、比較例1の結果値を基準としてindexで示したものであり、その数値が高いほど優れることを示す。
【0161】
【表3】
【0162】
前記表3に示されたように、実施例1~実施例4は、比較例1~比較例4に比べて、引張強度、転がり抵抗性、および耐摩耗性の何れも大幅に改善された効果を確認した。具体的に、実施例1~実施例4は、比較例1に比べて、測定された引張強度、転がり抵抗性、および耐摩耗性の何れも10%以上に顕著に上昇した効果を示した。この際、比較例1は、本発明が提示するN含有芳香族炭化水素化合物、S含有芳香族炭化水素化合物、およびS含有ヘテロ環化合物を用いることなく製造された重合体である。また、実施例1~実施例4は、比較例2~比較例4に比べても、測定された引張強度、転がり抵抗性、および耐摩耗性がそれぞれ最小5%以上最大15%以上に顕著に改善され、この際、比較例2~比較例4は、本発明が提示するN含有芳香族炭化水素化合物を用いないか、S含有芳香族炭化水素化合物およびS含有ヘテロ環化合物を用いることなく製造された重合体である。
【0163】
これにより、本発明に係る変性共役ジエン系重合体は、重合時にN含有芳香族炭化水素化合物、およびS含有芳香族炭化水素化合物またはS含有ヘテロ環化合物を用いて製造されることで、重合体鎖中に前記N含有芳香族炭化水素化合物由来の単位、およびS含有芳香族炭化水素化合物由来の単位またはS含有ヘテロ環化合物由来の単位を含むことで、引張強度、転がり抵抗性、および耐摩耗性の何れもバランスよく顕著に改善可能であることを確認することができる。