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特許7418902生分解性高吸水性樹脂およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-12
(45)【発行日】2024-01-22
(54)【発明の名称】生分解性高吸水性樹脂およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 290/10 20060101AFI20240115BHJP
   A61F 13/15 20060101ALI20240115BHJP
   A61L 15/28 20060101ALI20240115BHJP
   C08B 31/04 20060101ALI20240115BHJP
   C08B 37/08 20060101ALI20240115BHJP
   C08J 3/12 20060101ALI20240115BHJP
   C08L 101/16 20060101ALI20240115BHJP
【FI】
C08F290/10
A61F13/15 120
A61L15/28 200
C08B31/04
C08B37/08 A
C08J3/12 A CEP
C08L101/16
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022542442
(86)(22)【出願日】2021-09-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-10
(86)【国際出願番号】 KR2021012862
(87)【国際公開番号】W WO2022065843
(87)【国際公開日】2022-03-31
【審査請求日】2022-07-11
(31)【優先権主張番号】10-2020-0125238
(32)【優先日】2020-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ヒュンサム・チェ
(72)【発明者】
【氏名】ヘスン・ユン
(72)【発明者】
【氏名】キュンロク・ハム
(72)【発明者】
【氏名】ボムシン・チョ
(72)【発明者】
【氏名】ドンファン・イ
(72)【発明者】
【氏名】チ・ミョン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ソンジュン・ジュン
(72)【発明者】
【氏名】スンヒ・カン
【審査官】堀内 建吾
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-212302(JP,A)
【文献】特開平10-330433(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 290/10
A61F 13/15
A61L 15/32
C08B 31/04
C08B 37/08
C08J 3/12
C08L 101/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マレイン酸基(-OCOCH=CHCOOH)およびスルホコハク酸基(-OCOCH(SOH)CHCOOH)を有する変性ポリサッカライド(polysaccharide)を含む単量体および内部架橋剤の架橋重合体を含み、
前記マレイン酸基およびスルホコハク酸基の少なくとも一部は中和されており、
前記変性ポリサッカライド内マレイン酸基置換度は0.15~0.65であり、
前記変性ポリサッカライド内スルホコハク酸基置換度は0.05~0.60であり、
前記単量体は、少なくとも一部が中和された酸性基を有するアクリル酸系化合物を含む
生分解性高吸水性樹脂。
【請求項2】
前記変性ポリサッカライドは、変性デンプン(modified starch)または変性キトサン(modified chitosan)である、請求項1に記載の生分解性高吸水性樹脂。
【請求項3】
前記マレイン酸基は、マレイン酸(maleic acid)、またはマレイン酸無水物(Maleic acid anhydride)によって導入されたものである、請求項1または2に記載の生分解性高吸水性樹脂。
【請求項4】
前記マレイン酸基の置換度と前記スルホコハク酸基の置換度の合計は1以下である、請求項1から3のいずれか一項に記載の生分解性高吸水性樹脂。
【請求項5】
前記マレイン酸基の置換度およびスルホコハク酸基の置換度の比は1:0.1~1:3.0である、請求項1から4のいずれか一項に記載の生分解性高吸水性樹脂。
【請求項6】
前記変性ポリサッカライドは、下記化学式1-1~1-3で表される繰り返し単位のうちの1種以上;および下記化学式2-1~2-3で表される繰り返し単位のうちの1種以上を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の生分解性高吸水性樹脂:
【化1】
上記化学式1-1~1-3および2-1~2-3中、
Mは、それぞれ独立して、水素またはアルカリ金属である。
【請求項7】
内部架橋剤および重合開始剤の存在下で、マレイン酸基(-OCOCH=CHCOOH)およびスルホコハク酸基(-OCOCH(SOH)CHCOOH)を有する変性ポリサッカライド(polysaccharide)を含む単量体組成物を製造する段階;
前記単量体組成物を架橋重合して含水ゲル重合体を製造する段階;および
前記含水ゲル重合体を乾燥、粉砕および分級する段階を含む、
生分解性高吸水性樹脂の製造方法において、
前記変性ポリサッカライドのマレイン酸基およびスルホコハク酸基の少なくとも一部は中和されており、
前記変性ポリサッカライド内マレイン酸基置換度は0.15~0.65であり、
前記変性ポリサッカライド内スルホコハク酸基置換度は0.05~0.60であり、
前記単量体組成物は、少なくとも一部が中和された酸性基を有するアクリル酸系化合物を含む
生分解性高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項8】
前記変性ポリサッカライドは、
非変性ポリサッカライドを酸処理する第1段階;
前記第1段階で製造された酸処理されたポリサッカライドをマレイン酸(maleic acid)、またはマレイン酸無水物(Maleic acid anhydride)と反応させる第2段階;および
前記第2段階で製造されたポリサッカライドをサルファイト系化合物と反応させる第3段階を含んで製造される、請求項に記載の生分解性高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項9】
前記第3段階で、
前記サルファイト系化合物は、前記ポリサッカライドに導入されたビニル基と反応する、請求項に記載の生分解性高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項10】
請求項1からのいずれか一項に記載の生分解性高吸水性樹脂を含む衛生用品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保水能および加圧吸水能などの高吸水性樹脂の物性の低下なく優れた生分解性を示す、生分解性高吸水性樹脂およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高吸水性樹脂(Super Absorbent Polymer、SAP)とは自重の5百~1千倍程度の水分を吸収することができる機能を有する合成高分子物質であって、開発企業ごとにSAM(Super Absorbency Material)、AGM(Absorbent Gel Material)などそれぞれ異なる名称で命名している。前記の高吸水性樹脂は生理用品として実用化され始めて、現在は子供用紙おむつなど衛生用品以外に園芸用土壌補修剤、土木、建築用止水材、育苗用シート、食品流通分野での鮮度保持剤、およびしっぷ用などの材料や電気絶縁分野に至るまで広く使用されている。
【0003】
このような高吸水性樹脂は、通常、アクリル酸系単量体を重合開始剤の存在下で、架橋剤と共にバルク重合(bulk polymerization)、または懸濁重合(suspension polymerization)して含水ゲル重合体を得た後に製造される。したがって、従来の高吸水性樹脂は大部分生分解性を備えておらず、廃棄物として処理する時に環境問題を引き起こすようになる。具体的に、高吸水性樹脂が適用された様々な製品を埋め立てて廃棄する場合、土壌中の細菌や微生物などによってこのような高吸水性樹脂が分解されないので環境汚染を引き起こすことがある。
【0004】
よって、バイオマス由来素材を用いて優れた生分解性を示す高吸水性樹脂に対する試みが行われたことがあるが、従来の高吸水性樹脂と類似な水準の諸般物性を示しながら経済的に製造可能な生分解性高吸水性樹脂を製造することはそれほど容易ではなかった。
【0005】
これにより、高吸水性樹脂の基本的物性の低下なく生分解性を示すことができる高吸水性樹脂関連技術の開発が継続的に要請されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
よって、本発明では、保水能および加圧吸水能などの高吸水性樹脂の物性の低下なく優れた生分解性を示す高吸水性樹脂およびその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態によれば、
マレイン酸基(-OCOCH=CHCOOH)およびスルホコハク酸基(-OCOCH(SOH)CHCOOH)を有する変性ポリサッカライド(polysaccharide)を含む単量体および内部架橋剤の架橋重合体を含み、
前記マレイン酸基およびスルホコハク酸基の少なくとも一部は中和されており、
前記変性ポリサッカライド内マレイン酸基置換度は0.15~0.65であり、
前記変性ポリサッカライド内スルホコハク酸基置換度は0.05~0.60である、
生分解性高吸水性樹脂が提供される。
【0008】
本発明のまた他の実施形態によれば、内部架橋剤および重合開始剤の存在下で、マレイン酸基(-OCOCH=CHCOOH)およびスルホコハク酸基(-OCOCH(SOH)CHCOOH)を有する変性ポリサッカライド(polysaccharide)を含む単量体組成物を製造する段階;
前記単量体組成物を架橋重合して含水ゲル重合体を製造する段階;および
前記含水ゲル重合体を乾燥、粉砕および分級する段階を含む、
生分解性高吸水性樹脂の製造方法において、
前記変性ポリサッカライドのマレイン酸基およびスルホコハク酸基の少なくとも一部は中和されており、
前記変性ポリサッカライド内マレイン酸基置換度は0.15~0.65であり、
前記変性ポリサッカライド内スルホコハク酸基置換度は0.05~0.60である、
生分解性高吸水性樹脂の製造方法が提供される。
【0009】
さらに、本発明のまた他の一実施形態によれば、前記生分解性高吸水性樹脂を含む衛生用品が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の生分解性高吸水性樹脂は、化学的に変性された変性ポリサッカライドを使用して優れた生分解性を示す。また、本発明の生分解性高吸水性樹脂は、一定水準以上の重量平均分子量を有する変性ポリサッカライドを使用して、未反応の変性ポリサッカライドなく重合および架橋が可能であって保水能および加圧吸水能などの一般的な高吸水性樹脂の諸般物性が低下しなくなる。これにより、前記生分解性高吸水性樹脂は多様な衛生用品に適用されても廃棄時に環境汚染の問題を引き起こさなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】製造例1の段階1で製造されたマレイン酸化されたキトサンのH NMRスペクトルを示したものである。
図2】製造例1で最終製造された変性キトサン(M/S)のH NMRスペクトルを示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書で使用される用語は単に例示的な実施形態を説明するために使用されたものであって、発明を限定しようとする意図ではない。単数の表現は、文脈上明白に異なるものを意味しない限り、複数の表現を含む。本明細書で、「含む」、「備える」または「有する」などの用語は実施された特徴、段階、構成要素またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであり、一つまたはそれ以上の他の特徴や段階、構成要素、またはこれらを組み合わせたものの存在または付加可能性を予め排除しないものと理解されなければならない。
【0013】
また本発明において、各層または要素が各層または要素「上に」または「の上に」形成されると言及される場合には各層または要素が直接各層または要素の上に形成されることを意味するか、他の層または要素が各層の間、対象体、基材上に追加的に形成できるのを意味する。
【0014】
本発明は多様な変更を加えることができ様々な形態を有することができるところ、特定実施形態を例示し下記で詳しく説明する。しかし、これは発明を特定の開示形態に対して限定しようとするのではなく、発明の思想および技術範囲に含まれる全ての変更、均等物乃至代替物を含むと理解されなければならない。
【0015】
また、本明細書に使用される専門用語は単に特定実施形態を言及するためのものであり、本発明を限定することを意図しない。そして、ここで使用される単数形態は文句がこれと明確に反対の意味を示さない限り複数形態も含む。
【0016】
一方、本明細書で使用する用語「(メタ)アクリレート」はアクリレートおよびメタクリレートを全て含む。
【0017】
本発明の明細書に使用される用語「重合体」、または「高分子」は水溶性エチレン系不飽和単量体が重合された状態のものを意味し、全ての水分含量範囲または粒径範囲を包括することができる。前記重合体のうち、重合後乾燥前状態のものであって含水率(水分含量)が約40重量%以上の重合体を含水ゲル重合体と称することができ、このような含水ゲル重合体が粉砕および乾燥された粒子を架橋重合体と称することができる。
【0018】
また、用語「高吸水性樹脂粒子」は酸性基を含み酸性基およびビニル基を有し、前記酸性基の少なくとも一部が中和された変性デンプンが重合され内部架橋剤によって架橋された架橋重合体を含む、粒子状の物質をいう。
【0019】
また、用語「高吸水性樹脂」は文脈によって酸性基およびビニル基を有し、前記酸性基の少なくとも一部が中和された変性デンプンが内部架橋剤と共に重合された架橋重合体、または前記架橋重合体が粉砕された高吸水性樹脂粒子からなる粉末(powder)形態のベース樹脂を意味するか、または前記架橋重合体や前記ベース樹脂に対して追加の工程、例えば、表面架橋、微粉再組立、乾燥、粉砕、分級などを経て製品化に適した状態としたものを全て包括するものとして使用される。
【0020】
従来使用されている高吸水性樹脂はアクリル酸系単量体を重合開始剤の存在下で、架橋剤と共に重合して製造され、このように製造される高吸水性樹脂の場合、生分解性を有しなくて環境問題を引き起こしている。
【0021】
よって、生分解性を示すことができる高吸水性樹脂に対する開発が行われてきた。このような生分解性樹脂を製造することができる生分解性素材としてポリサッカライド(polysaccharide)、ポリアスパラギン酸(polyaspartic acid)、ポリグルタミン酸(polyglutamic acid)などの素材が言われているが、高吸水性樹脂の重要物性である吸収能を低下させてアクリル酸系単量体から製造される高吸水性樹脂を代替することには困難があった。
【0022】
よって、本発明者らはマレイン酸基(-OCOCH=CHCOOH)およびスルホコハク酸基(-OCOCH(SOH)CHCOOH)を有する変性ポリサッカライド(polysaccharide)を単量体にして高吸水性樹脂を製造する場合、優れた生分解性だけでなく保水能および加圧吸水能などの一般的な高吸水性樹脂の諸般物性がその間知られた生分解性素材と対比して優れていることを確認して本発明を完成した。
【0023】
以下、発明の具体的な実施形態により生分解性高吸水性樹脂およびその製造方法についてより詳しく説明する。
【0024】
生分解性高吸水性樹脂
具体的に、発明の一実施形態による生分解性高吸水性樹脂はマレイン酸基(-OCOCH=CHCOOH)およびスルホコハク酸基(-OCOCH(SOH)CHCOOH)を有する変性ポリサッカライド(polysaccharide)を含む単量体および内部架橋剤の架橋重合体を含む。
【0025】
ここで、前記架橋重合体は少なくとも一部が中和されたマレイン酸基(-OCOCH=CHCOOH)およびスルホコハク酸基(-OCOCH(SOH)CHCOOH)を有する変性ポリサッカライドを含む単量体が内部架橋剤の存在下で架橋重合されたものであって、前記ポリサッカライドが重合されて形成された主鎖が前記内部架橋剤によって架橋される形態の3次元網状構造を有する。このように、前記架橋重合体が前記ポリサッカライドが重合されて形成された主鎖が前記内部架橋剤によって架橋される形態の3次元網状構造を有する場合、内部架橋剤によって追加架橋されていない2次元線状構造を有する場合に比べて、高吸水性樹脂の諸般物性である保水能および加圧吸水能が顕著に向上できる。
【0026】
一方、ポリサッカライド、即ち、多糖類はグルコース繰り返し単位(glucose unit)からなる重合体炭水化物分子を意味するものであって、この時、グルコース繰り返し単位内の2番炭素原子と結合されたヒドロキシ基にアミノ基が導入されたグルコサミン繰り返し単位(glucosamine unit)および/またはグルコース繰り返し単位内の2番炭素原子と結合されたヒドロキシ基にN-アセチルアミノ基が導入されたN-アセチルグルコサミン繰り返し単位(N-acetylglucosamine unit)からなる重合体分子も含んで言う。したがって、前記ポリサッカライドは通常多糖類として知られた化合物を全て使用することができる。例えば、グルコース繰り返し単位からなるデンプン(starch)、グルコサミン繰り返し単位およびN-アセチルグルコサミン繰り返し単位からなるキトサン(chitosan)などが挙げられるが、これらに限定されるのではない。
【0027】
また、前記生分解性高吸水性樹脂に使用される変性ポリサッカライド(modified polysaccharide、改質多糖類)とは、通常自然または合成で得られる変性されていない非変性ポリサッカライドとは区分される概念であって、化学的処理および/または熱処理によってポリサッカライドを成すグルコース繰り返し単位内のヒドロキシ基(-OH)が他の官能基で置換されたものを意味する。このような改質ポリサッカライドは、ヒドロキシ基(-OH)の代わりに導入された官能基によって変性されていないポリサッカライドとは異なる物性を示すことができる。
【0028】
例えば、前記変性ポリサッカライドは、変性デンプン(modified starch)または変性キトサン(modified chitosan)である。
【0029】
一方、前記変性ポリサッカライド内にはマレイン酸基(-OCOCH=CHCOOH)およびスルホコハク酸基(-OCOCH(SOH)CHCOOH)が置換されており、前記マレイン酸基(-OCOCH=CHCOOH)およびスルホコハク酸基(-OCOCH(SOH)CHCOOH)の少なくとも一部は中和されている。
【0030】
また、前記マレイン酸基(-OCOCH=CHCOOH)およびスルホコハク酸基(-OCOCH(SOH)CHCOOH)は、前記ポリサッカライド内のグルコース/グルコサミン/N-アセチルグルコサミン繰り返し単位の6番炭素のヒドロキシ基に導入されたものであってもよい。これは、6番炭素に結合されたヒドロキシ基が2番および3番炭素に結合されたヒドロキシ基に比べて反応性が良いためである。ここで、6番炭素のヒドロキシ基とは、一般的なポリサッカライドのグルコース繰り返し単位を下記化学式Aで表す時、6番と表された炭素に結合されているヒドロキシ基を意味する。
【0031】
【化1】
【0032】
また、前記ポリサッカライド内のマレイン酸基(-OCOCH=CHCOOH)は、マレイン酸(maleic acid)、またはマレイン酸無水物(Maleic acid anhydride)によって導入されたものであってもよい。例えば、マレイン酸無水物によって非変性ポリサッカライド分子内に存在するヒドロキシ基(-OH)がマレイン酸基(-OCOCH=CHCOOH)で置換できる。
【0033】
この時、前記変性ポリサッカライドのマレイン酸基(-OCOCH=CHCOOH)の置換度(Degree of substitution;DS)は、以下で「DS」と表され、0.15~0.65である。前記マレイン酸基の置換度が0.15未満である場合、架橋重合に参加しない変性ポリサッカライドが多量残っていることがあり、前記マレイン酸基の置換度が0.65超過である場合、マレイン酸基導入のために多量使用されたマレイン酸無水物が完全に除去されなくて最終高吸水性樹脂の物性に影響を及ぼすことがある。好ましくは、前記マレイン酸基の置換度は0.16以上、0.17以上、0.18以上、0.19以上、0.20以上、0.21以上、0.22以上、0.23以上、0.24以上、0.25以上、0.26以上、0.27以上、0.28以上、0.29以上、0.30以上、0.31以上、0.32以上、0.33以上、0.34以上、0.35以上、または0.36以上であり;0.64以下、0.63以下、0.62以下、0.61以下、0.60以下、0.59以下、0.58以下、0.57以下、0.56以下、0.55以下、0.54以下、0.53以下、0.52以下、または0.51以下である。
【0034】
ここで、マレイン酸基の置換度とは、グルコース繰り返し単位当りマレイン酸基で置換されたヒドロキシ基(-OH)の平均個数を意味する。即ち、グルコース繰り返し単位当り三つのヒドロキシ基が存在するので、理論的な最大置換度は3であり、置換度が0.1であるということは10個のグルコース繰り返し単位当り一つのヒドロキシ基が置換されたことを意味する。前記マレイン酸基の置換度は最終製造された変性ポリサッカライドのH NMR分析を通じて計算することができ、より具体的な内容は後述の製造例を参照する。
【0035】
また、前記ポリサッカライド内のスルホン酸基は、亜硫酸水素ナトリウム(sodium bisulfite)、亜硫酸水素カリウム(Potassium bisulfite)、亜硫酸アンモニウム(ammonium sulfite)および亜硫酸ナトリウム(sodium sulfite)から構成される群より選択される1種以上のサルファイト系化合物によって導入されたものであってもよい。例えば、前記スルホン酸基は亜硫酸水素ナトリウムを使用して導入できる。
【0036】
好ましくは、前記スルホン酸基は、スルホコハク酸基(-OCOCH(SOH)CHCOOH)形態に導入されたものであってもよい。言い換えると、前記スルホン酸基は、先に導入されたマレイン酸基の二重結合と前記サルファイト系化合物との反応でスルホコハク酸基形態に導入できる。
【0037】
前記変性ポリサッカライドのスルホコハク酸基(-OCOCH(SOH)CHCOOH)置換度は以下で「DS」と表され、0.05~0.60である。前記スルホコハク酸基の置換度が0.05未満である場合、保水能および有効吸収能改善に限界があることがあり、前記スルホコハク酸基の置換度が0.60超過である場合、重合に参加するビニル基が減少するようになって3次元架橋重合体構造を確保しにくいことがある。好ましくは、前記スルホコハク酸基の置換度は、0.06以上、0.07以上、0.08以上、0.09以上、0.10以上、0.11以上、0.12以上、0.13以上、0.14以上、0.15以上、または0.16以上であり;0.59以下、0.58以下、0.57以下、0.56以下、0.55以下、0.54以下、0.53以下、0.52以下、0.51以下、0.50以下、0.49以下、0.48以下、0.47以下、0.46以下、0.45以下、0.44以下、0.43以下、0.42以下、0.41以下、0.40以下、0.39以下、0.38以下、0.37以下、0.36以下、0.35以下、0.34以下、0.33以下、0.32以下、0.31以下、0.30以下、0.29以下、または0.28以下である。
【0038】
好ましくは、前記マレイン酸基の置換度と前記スルホコハク酸基の置換度の合計(DS+DS)は1以下であり、より好ましくは0.2以上、0.3以上、0.4以上、または0.5以上であり;0.90以下、0.85以下、0.80以下、0.75以下、または0.70以下である。
【0039】
好ましくは、前記変性ポリサッカライド内前記マレイン酸基の置換度およびスルホコハク酸基の置換度の比(DS:DS)は1:0.1~1:3.0であり、より好ましくは1:0.2以上、または1:0.3以上であり;1:2.5以下、1:2.4以下、1:2.3以下、1:2.2以下、1:2.1以下、1:2.0以下、1:1.9以下、1:1.8以下、1:1.7以下、1:1.6以下、1:1.5以下、1:1.4以下、1:1.3以下、1:1.2以下、1:1.1以下、1:1.0以下、1:0.9以下、または1:0.8以下である。
【0040】
一方、前記変性ポリサッカライドのマレイン酸基およびスルホコハク酸基の一部は中和されており、その中和度は変性ポリサッカライドの種類および実現しようとする最終高吸水性樹脂の物性によって調節できる。例えば、変性デンプンの場合、分子量が高いため水不溶性または中和度を高めてカルボキシル基(COOH)をカルボキシレート(COO-)形態に中和させて水に対する溶解度を高めることができる。具体的に、前記変性ポリサッカライドの中和度は、40~95モル%、または40~80モル%、または45~75モル%であってもよい。
【0041】
一実施形態で、前記変性ポリサッカライドは、下記化学式1-1~1-3で表される繰り返し単位のうちの1種以上;および下記化学式2-1~2-3で表される繰り返し単位のうちの1種以上を含むことができる。
【0042】
【化2】
【0043】
上記化学式1-1~1-3および2-1~2-3中、
Mは、それぞれ独立して、水素またはアルカリ金属である。
【0044】
具体的には、前記化学式1-1~1-3および2-1~2-3中、Mはそれぞれ独立してH、Na、またはKである。
【0045】
一例として、前記変性ポリサッカライドが変性デンプンまたは変性デキストリンである場合には前記化学式1-1および化学式2-1で表される繰り返し単位を含むことができ、変性キトサンである場合には前記化学式1-2、化学式1-3、2-1および2-2で表される繰り返し単位を全て含むことができる。
【0046】
また、前記変性ポリサッカライドは500~1,000,000g/molの重量平均分子量を有し、前記変性デンプンの重量平均分子量が過度に低い場合、十分な架橋が行われず多量の未反応変性デンプンが残るようになる問題があり、過度に高い場合、高分子量の変性ポリサッカライドの高分子鎖のもつれ(entanglement)現象によって酸処理および官能基導入自体が困難なことがあって、重量平均分子量が1,000,000g/mol超過である変性ポリサッカライドの製造自体が容易ではないという問題がある。
【0047】
ここで、重量平均分子量(Mw)は、ポリスチレン(PS)をCalibration用標準試料として使用したゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を使用して測定することができる。より具体的に、変性ポリサッカライド200mgを200ml ジメチルホルムアミド(Dimethylformamide)(DMF)溶媒に希釈して約1000ppmのサンプルを製造した後、Agilent 1200 series GPC機器を使用して1ml/min FlowでRI detectorを通じて重量平均分子量を測定することができる。この時、サンプルの分子量は、標準PSスタンダード(Standard)8種を用いて検量線を作成した後、これを基準にして算出できる。
【0048】
一方、前記変性ポリサッカライドは変性デンプンであってもよい。前記変性デンプンは、総重量を基準にして1:99~50:50重量比のアミロースおよびアミロペクチンを含むことができる。前述のグルコース繰り返し単位の6番炭素に結合されたヒドロキシ基が他の置換基で置換される変性はアミロースおよびアミロペクチンの両方とも起こることが可能であるが、加工性および溶解度側面からアミロペクチンの含量がアミロース含量以上であった方が有利である。
【0049】
また、前記変性デンプンは、糊化温度(gelatinization temperature)が50~90℃であり、最高粘度(Peak viscosity;BU)が50~1,000であってもよい。
【0050】
このような前記変性デンプンは、ジャガイモデンプン、トウモロコシデンプン、米デンプン、小麦デンプン、タピオカデンプンおよびサツマイモデンプンから構成される1種以上のデンプンが変性されたものであってもよい。特に、加工性および溶解度側面からアミロペクチンの含量が多いジャガイモデンプンが好ましい。
【0051】
一方、前記単量体は、少なくとも一部が中和された酸性基を有するアクリル酸系化合物をさらに含むことができる。
【0052】
前記アクリル酸系単量体は、下記化学式3で表される化合物である:
【0053】
[化学式3]
R-COOM'
【0054】
上記化学式3中、
Rは、不飽和結合を含む炭素数2~5のアルキル基であり、
M'は、水素原子、1価または2価金属、アンモニウム基または有機アミン塩である。
【0055】
好ましくは、前記単量体は、(メタ)アクリル酸、およびこれら酸の1価(アルカリ)金属塩、2価金属塩、アンモニウム塩および有機アミン塩からなる群より選択された1種以上であってもよい。
【0056】
このようにアクリル酸系単量体として(メタ)アクリル酸および/またはその塩を使用する場合、吸水性の向上した高吸水性樹脂を得ることができて有利である。
【0057】
ここで、前記アクリル酸系単量体は、酸性基を有し、前記酸性基の少なくとも一部が中和されたものであってもよい。好ましくは、前記単量体を水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウムなどのようなアルカリ物質で部分的に中和させたものが使用できる。この時、前記アクリル酸系単量体の中和度は、40~95モル%、または40~80モル%、または45~75モル%であってもよい。前記中和度の範囲は最終物性によって調節できる。しかし、前記中和度が過度に高ければ中和された単量体が析出されて重合が円滑に行われにくいことがあり、逆に、中和度が過度に低ければ高分子の吸収力が大きく低下するだけでなく、取り扱いの困難な弾性ゴムのような性質を示すことがある。
【0058】
また、本明細書で使用する用語「内部架橋剤」は高吸水性樹脂粒子の表面を架橋させるために通常使用される表面架橋剤と区分するために使用する用語であって、前述の変性ポリサッカライドのビニル基を架橋させて重合させる役割を果たす。前記段階での架橋は表面または内部の区分なく行われるが、高吸水性樹脂粒子の表面架橋工程が行われる場合に、最終製造された高吸水性樹脂の粒子表面は表面架橋剤によって架橋された構造になっており、内部は前記内部架橋剤によって架橋された構造になっているようになる。
【0059】
前記内部架橋剤としては、変性ポリサッカライド重合時に架橋結合の導入を可能にするものであればいかなる化合物も使用可能である。非制限的な例として、前記内部架橋剤は、N,N’-メチレンビスアクリルアミド、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリストールテトラアクリレート、トリアリールアミン、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコール、グリセリン、またはエチレンカーボネートなどの多官能性架橋剤が単独使用または2以上併用されてもよく、これらに制限されるわけではない。好ましくは、このうちのN,N’-メチレンビスアクリルアミドまたはポリエチレングリコールジアクリレートが使用できる。
【0060】
このような内部架橋剤の存在下での前記変性デンプンの架橋重合は、重合開始剤、必要によって増粘剤(thickener)、可塑剤、保存安定剤、酸化防止剤などの存在下で熱重合、光重合または混成重合で行われてもよく、具体的な内容は後述することにする。
【0061】
また、前記高吸水性樹脂は、150~850μmの平均粒径を有する粒子形態であってもよい。この時、このような粒径は、ヨーロッパ不織布産業協会(European Disposables and Nonwovens Association、EDANA)規格EDANA WSP 220.3方法によって測定できる。より具体的には、前記高吸水性樹脂組成物は、総重量を基準にして約90重量%、好ましくは95重量%以上が約150~850μmの粒径を有する高吸水性樹脂粒子であってもよく、約10重量%未満、より具体的には約5重量%未満が約150μm未満の粒径を有する微粉であってもよい。前記高吸水性樹脂が150μm未満の粒径を有する微粉を多量含む場合、高吸水性樹脂の諸般物性を低下させることがあって好ましくない。
【0062】
また、前記生分解性高吸水性樹脂は、EDANA法 WSP 241.3によって測定した保水能(CRC)が10~50g/gであってもよい。
【0063】
また、前記生分解性高吸水性樹脂は、EDANA法 WSP 242.3によって測定した0.7psiでの加圧吸水能(AUP)5~30g/gであってもよい。
【0064】
生分解性高吸水性樹脂の製造方法
一方、前記生分解性高吸水性樹脂は、下記製造方法で製造することができる:
内部架橋剤および重合開始剤の存在下で、マレイン酸基(-OCOCH=CHCOOH)およびスルホコハク酸基(-OCOCH(SOH)CHCOOH)を有する変性ポリサッカライド(polysaccharide)を含む単量体組成物を製造する段階;
前記単量体組成物を架橋重合して含水ゲル重合体を製造する段階;および
前記含水ゲル重合体を乾燥、粉砕および分級する段階を含む、
生分解性高吸水性樹脂の製造方法において、
前記変性ポリサッカライドのマレイン酸基およびスルホコハク酸基の少なくとも一部は中和されており、
前記変性ポリサッカライド内マレイン酸基置換度は0.15~0.65であり、
前記変性ポリサッカライド内スルホコハク酸基置換度は0.05~0.60である、
生分解性高吸水性樹脂の製造方法。
【0065】
一方、前記変性ポリサッカライドは、
非変性ポリサッカライドを酸処理する第1段階;
前記第1段階で製造された酸処理されたポリサッカライドをマレイン酸(maleic acid)、またはマレイン酸無水物(Maleic acid anhydride)と反応させる第2段階;および
前記第2段階で製造されたポリサッカライドをサルファイト系化合物と反応させる第3段階を含んで製造することができる。
【0066】
まず、変性ポリサッカライドを製造するための、第1段階として、非変性ポリサッカライドを酸処理することができる。このような酸処理は、水素結合によるデンプンの剛直な構造を破壊して後述の第2段階でのマレイン酸化(maleation)および第3段階でのスルホン酸化(sulfonation)などのポリサッカライドの変性のための製造効率を高めるために行われる。具体的に、前記酸処理は、塩酸などの酸性溶液を使用して25~50℃の温度で6時間~48時間行うことができる。
【0067】
その次に、前記第1段階で酸処理されたポリサッカライドをマレイン酸(maleic acid)、またはマレイン酸無水物(Maleic acid anhydride)と反応させて、マレイン酸基が導入されたポリサッカライドを製造する第2段階を行うことができる。また、前記第2段階の酸処理されたポリサッカライドと、マレイン酸(maleic acid)またはマレイン酸無水物(Maleic acid anhydride)の反応は50~100℃の温度で4時間~12時間行うことができる。
【0068】
一例として、マレイン酸無水物を使用して前記酸処理されたポリサッカライドをマレイン酸化(maleation)することができ、これにより、マレイン酸基が置換されたポリサッカライドが製造できる。
【0069】
その次に、前記第2段階で製造されたポリサッカライドをサルファイト系化合物と反応させて、カルボキシル基およびビニル基以外にスルホン酸基が追加的に導入されたポリサッカライドを製造することができる。この時、サルファイト系化合物としては、亜硫酸水素ナトリウム(sodium bisulfite)、亜硫酸水素カリウム(Potassium bisulfite)、亜硫酸アンモニウム(ammonium sulfite)および亜硫酸ナトリウム(sodium sulfite)から構成される群より選択される1種以上の化合物が使用できる。また、具体的に、前記第3段階の前記第2段階で製造されたポリサッカライドとサルファイト系化合物との反応は30~60℃の温度で4時間~12時間行うことができる。
【0070】
また、前記サルファイト系化合物は、前記ポリサッカライドに導入されたビニル基と反応できる。
【0071】
一例として、前記サルファイト系化合物を使用してポリサッカライド内のマレイン酸基をスルホン酸化、言い換えると、マレイン酸基が置換されたポリサッカライドをスルホコハク酸化(sulfosuccinylation)することができ、これにより、マレイン酸基およびスルホコハク酸基が置換されたポリサッカライドが製造できる。
【0072】
その次に、前記製造された変性デンプンを内部架橋剤および重合開始剤の存在下で、架橋重合して含水ゲル重合体を形成する段階を行うことができる。
【0073】
前記段階は、前記変性デンプン、内部架橋剤および重合開始剤を混合して単量体組成物を準備する段階、および前記単量体組成物を熱重合または光重合して含水ゲル重合体を形成する段階からなってもよい。この時、前記変性デンプンおよび内部架橋剤に関する説明は前述のところを参照する。
【0074】
また、追加的に、前記単量体組成物は、少なくとも一部が中和された酸性基を有するアクリル酸系化合物をさらに含むことができる。前記単量体組成物内に、前記変性ポリサッカライドおよび前記アクリル酸系化合物は99:1~1:99の重量比で含まれてもよい。前述の範囲を満足する場合に、前記生分解性高吸水性樹脂は、優れた生分解性を示すことができながら、同時に吸水性および保水能が向上できる。
【0075】
前記単量体組成物で、前記内部架橋剤は、前記変性ポリサッカライド100重量部に対して0.1~5重量部で使用できる。例えば、前記内部架橋剤は、変性ポリサッカライド100重量部に対して0.1重量部以上、または0.2重量部以上であり、5重量部以下、3重量部以下、2重量部以下、1重量部以下、または0.5重量部以下で使用できる。前記内部架橋剤の含量が過度に低い場合、架橋が十分に起こらなくて適正水準以上の強度実現が難しいことがあり、前記内部架橋剤の含量が過度に高い場合、内部架橋密度が高まって所望の保水能の実現が難しいことがある。
【0076】
また、前記重合開始剤は重合方法によって適切に選択でき、熱重合方法を用いる場合には熱重合開始剤を使用し、光重合方法を用いる場合には光重合開始剤を使用し、混成重合方法(熱および光を全て使用する方法)を用いる場合には熱重合開始剤と光重合開始剤を全て使用することができる。但し、光重合方法によっても、紫外線照射などの光照射によって一定量の熱が発生し、また、発熱反応である重合反応の進行によってある程度の熱が発生するので、追加的に熱重合開始剤を使用することもできる。
【0077】
前記光重合開始剤は、紫外線などの光によってラジカルを形成することができる化合物であれば、その構成の限定なく使用できる。
【0078】
前記光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインエーテル(benzoin ether)、ジアルキルアセトフェノン(dialkyl acetophenone)、ヒドロキシルアルキルケトン(hydroxyl alkylketone)、フェニルグリオキシレート(phenyl glyoxylate)、ベンジルジメチルケタール(Benzyl Dimethyl Ketal)、アシルホスフィン(acyl phosphine)およびアルファ-アミノケトン(α-aminoketone)からなる群より選択される一つ以上を使用することができる。一方、アシルホスフィンの具体例としては、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、エチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィネートなどが挙げられる。より多様な光開始剤についてはReinhold Schwalm著書である“UV Coatings:Basics、Recent Developments and New Application(Elsevier 2007年)”p115によく明示されており、上述の例に限定されない。
【0079】
また、前記熱重合開始剤としては、過硫酸塩系開始剤、アゾ系開始剤、過酸化水素およびアスコルビン酸からなる開始剤群より選択される一つ以上を使用することができる。具体的に、過硫酸塩系開始剤の例としては過硫酸ナトリウム(Sodium persulfate;Na)、過硫酸カリウム(Potassium persulfate;K)、過硫酸アンモニウム(Ammonium persulfate;(NH)などがあり、アゾ(Azo)系開始剤の例としては2,2-アゾビス-(2-アミジノプロパン)二塩酸塩(2,2-azobis(2-amidinopropane)dihydrochloride)、2,2-アゾビス-(N,N-ジメチレン)イソブチルアミジン二塩酸塩(2,2-azobis-(N,N-dimethylene)isobutyramidine dihydrochloride)、2-(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル(2-(carbamoylazo)isobutylonitril)、2,2-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩(2,2-azobis[2-(2-imidazolin-2-yl)propane]dihydrochloride)、4,4-アゾビス-(4-シアノ吉草酸)(4,4-azobis-(4-cyanovaleric acid))などがある。より多様な熱重合開始剤についてはOdian著書の“Principle of Polymerization(Wiley、1981)”、p203によく明示されており、上述の例に限定されない。
【0080】
このような重合開始剤は、前記変性ポリサッカライド100重量部に対して2重量部以下で使用できる。即ち、前記重合開始剤の濃度が過度に低い場合、重合速度が遅くなり最終製品に残存モノマーが多量で抽出されることがあって好ましくない。逆に、前記重合開始剤の濃度が前記範囲より高い場合、ネットワークを成す高分子鎖が短くなって水可溶成分の含量が高まり加圧吸水能が低まるなど樹脂の物性が低下することがあって好ましくない。
【0081】
前記単量体組成物は必要によって、増粘剤(thickener)、可塑剤、保存安定剤、酸化防止剤などの添加剤をさらに含むことができる。
【0082】
そして、前記単量体を含む単量体組成物は、高分子量のデンプンのように不溶性である場合、懸濁液状態であってもよく、低分子量のデキストリンのように水溶性である場合、水などの溶媒に溶解された溶液状態であってもよい。このような単量体組成物中の固形分含量、即ち、単量体、内部架橋剤および重合開始剤の濃度は、重合時間および反応条件などを考慮して適切に調節できる。例えば、前記単量体組成物内の固形分含量は、10~80重量%、または15~60重量%、または30~50重量%であってもよい。
【0083】
前記単量体組成物が上記のような範囲の固形分含量を有する場合、高濃度水溶液の重合反応で現れるゲル効果現象を用いて重合後未反応単量体を除去する必要がないようにしながらも、後述の重合体の粉砕時に粉砕効率を調節するために有利であり得る。
【0084】
この時使用できる溶媒は前述の成分を溶解することができればその構成の限定なく使用でき、例えば、水、エタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メチルエチルケトン、アセトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、トルエン、キシレン、ブチロラクトン、カルビトール、メチルセロソルブアセテートおよびN,N-ジメチルアセトアミドなどから選択された1種以上を組み合わせて使用することができる。
【0085】
一方、前記変性ポリサッカライドの架橋重合は、熱重合、光重合または混成重合して含水ゲル重合体を形成することができれば、特に構成の限定なく行うことができる。
【0086】
具体的に、重合方法は重合エネルギー源によって大きく熱重合および光重合に分けられ、通常熱重合を行う場合、ニーダー(kneader)などの攪拌軸を有する反応器で行うことができ、光重合を行う場合、移動可能なコンベヤーベルトを備えた反応器で行うか、底の平たい容器で行うことができるが、上述の重合方法は一例であり、本発明は上述の重合方法に限定されない。
【0087】
一例として、前述のように攪拌軸を備えたニーダー(kneader)などの反応器に、熱風を供給するか反応器を加熱して熱重合を行って得られた含水ゲル重合体は、反応器に備えられた攪拌軸の形態によって、反応器排出口に排出される含水ゲル重合体は数センチメートル~数ミリメートル形態であってもよい。具体的に、得られる含水ゲル重合体の大きさは注入されるモノマー組成物の濃度および注入速度などによって多様に示され、通常重量平均粒径が2~50mmである含水ゲル重合体が得られる。
【0088】
また、前述のように移動可能なコンベヤーベルトを備えた反応器または底の平たい容器で光重合を行う場合、通常得られる含水ゲル重合体の形態はベルトの幅を有するシート状の含水ゲル重合体であってもよい。この時、重合体シートの厚さは注入されるモノマー組成物の濃度および注入速度または注入量によって変わるが、通常約0.5~約5cmの厚さを有するシート状の重合体が得られるようにモノマー組成物を供給することが好ましい。シート状の重合体の厚さが過度に薄い程度にモノマー組成物を供給する場合、生産効率が低くて好ましくなく、シート状の重合体の厚さが5cmを超過する場合には過度に厚い厚さによって、重合反応が厚さ全体にかけて均一に起こらないことがある。
【0089】
この時、このような方法で得られた含水ゲル重合体は、含水率が40~70重量%であってもよい。例えば、前記含水ゲル重合体の含水率は40重量%以上、45重量%以上、または50重量%以上であり、70重量%以下、65重量%以下、または60重量%以下であってもよい。前記含水ゲル重合体の含水率が過度に低い場合、以後の粉砕段階で適切な表面積を確保しにくくて乾燥の効率が落ちる恐れがあり、前記含水ゲル重合体の含水率が過度に高い場合、以後の粉砕段階で受ける圧力が増加して加圧下吸水能力が低下することがあり、粉砕以後乾燥段階で多くのエネルギーおよび長い時間がかかる恐れがある。
【0090】
一方、本明細書全体で「含水率」は、全体含水ゲル重合体重量に対して占める水分の含量であって、含水ゲル重合体の重量から乾燥状態の重合体の重量を引いた値を意味する。具体的には、赤外線加熱を通じてクラム状態の重合体の温度を上げて乾燥する過程で重合体中の水分蒸発による重量減少分を測定して計算された値と定義する。この時、含水率を測定するための乾燥は、室温で約50℃まで温度を上昇させた後、50℃で約6時間真空乾燥することで行われる。
【0091】
一方、前記含水ゲル状重合体の製造後、後続の乾燥および粉砕工程の遂行に先立ち、製造された含水ゲル状重合体を粉砕する粗粉砕工程を選択的に行うことができる。
【0092】
前記粗粉砕工程は後続の乾燥工程で乾燥効率を高め、最終製造される高吸水性樹脂粉末の粒子の大きさを制御するための工程であって、この時、使用される粉砕機は構成の限定はないが、具体的に、垂直型切断機(Vertical pulverizer)、ターボカッター(Turbo cutter)、ターボグラインダ(Turbo grinder)、回転切断式粉砕機(Rotary cutter mill)、切断式粉砕機(Cutter mill)、円板粉砕機(Disc mill)、小片破砕機(Shred crusher)、破砕機(Crusher)、ミートチョッパー(meat chopper)および円板式切断機(Disc cutter)からなる粉砕機器群より選択されるいずれか一つを含むことができるが、上述の例に限定されない。
【0093】
前記粗粉砕工程は、一例として、前記含水ゲル状重合体の粒径が約2~約10mmになるように行うことができる。含水ゲル状重合体の粒径が2mm未満に粉砕することは前記含水ゲル状重合体の高い含水率によって技術的に容易でなく、また、粉砕された粒子間に互いに凝集する現象が発生することもある。一方、粒径が10mm超過に粉砕する場合、以後に行われる乾燥段階の効率増大効果が微小である。
【0094】
その次に、前記段階で製造した含水ゲル状重合体を乾燥、粉砕、および分級してベース樹脂を製造する段階が行われる。
【0095】
前記乾燥方法は、含水ゲル状重合体の乾燥工程として通常使用されるものであれば、その構成の限定なく選択されて使用できる。具体的に、熱風供給、赤外線照射、極超短波照射、または紫外線照射などの方法で乾燥段階を行うことができる。
【0096】
具体的に、前記乾燥は、真空条件下で100℃未満の温度、具体的に、約30℃~約80℃の温度で行うことができる。前記乾燥温度が100℃以上である場合、変性ポリサッカライドが分解されることがあって適合せず、前記乾燥温度が30℃未満である場合には乾燥時間が過度に長くなる恐れがある。
【0097】
一方、乾燥時間の場合には工程効率などを考慮して、約20~約90分間行うことができるが、これに限定されない。
【0098】
このような乾燥段階進行後の重合体の含水率は、約5~約10重量%であってもよい。
【0099】
前記乾燥工程後には、粉砕工程が行われる。
【0100】
前記粉砕工程は、重合体粉末、即ち、ベース樹脂の粒径が約150~約850μmになるように行うことができる。このような粒径に粉砕するために使用される粉砕機は具体的に、ピンミル(pin mill)、ハンマーミル(hammer mill)、スクリューミル(screw mill)、ロールミル(roll mill)、ディスクミル(disc mill)またはジョグミル(jog mill)などを使用することができるが、上述の例に本発明が限定されるのではない。
【0101】
また、前記のような粉砕段階後、最終製品化される高吸水性樹脂の物性を管理するために、粉砕された重合体粉末を粒径によって分級する工程をさらに経てもよい。
【0102】
好ましくは、粒径が約150~約850μmである重合体を分級して、このような粒径を有する重合体のみをベース樹脂にして表面架橋反応段階を経て製品化することができる。
【0103】
前記工程の結果として得られるベース樹脂は、アクリル酸系単量体と内部架橋剤を媒介として架橋重合された架橋重合体を含む粉末形態を有することができる。具体的に、前記ベース樹脂は、150~850μmの粒径を有する粉末形態を有することができる。
【0104】
一方、さらに、前述の生分解性高吸水性樹脂を含む衛生用品が提供される。
【0105】
以下、発明の理解のために好ましい実施例が提示される。しかし、下記の実施例は発明を例示するためのものに過ぎず、発明をこれらのみに限定するのではない。
【実施例
【0106】
製造例1:変性キトサン(M/S)の製造
(1)段階1:キトサンのマレイン酸化段階
キトサン20gとマレイン酸無水物(Maleic Anhydride)100gを250mlの三口フラスコに投入した後、90℃で6時間攪拌した。反応後、混合物をアセトン溶媒に沈殿およびろ過して過量投入されたマレイン酸無水物(Maleic Anhydride)を除去し、50℃で24時間以上乾燥した後、マレイン酸化されたキトサンを得た。
【0107】
(2)段階2:マレイン酸化された官能基のうちの少なくとも一部のスルホン化段階
マレイン酸化されたキトサン20gと亜硫酸水素ナトリウム(sodium bisulfite)5gを250mlの三口フラスコに投入した後、40℃で6時間攪拌した。攪拌後、反応物をNaCOを添加してpH6~7に調整した後、水とエタノールで数回洗浄後、50℃で24時間以上乾燥して最終マレイン酸基(-OCOCH=CHCOOH)およびスルホコハク酸基(-OCOCH(SOH)CHCOOH)基が導入された変性キトサン(M/S)を製造した。
【0108】
前記製造されたキトサンの重量平均分子量が50,000g/molであり、マレイン酸基(-OCOCH=CHCOOH)の置換度(DS)は0.22であり、スルホコハク酸基(-OCOCH(SOH)CHCOOH)置換度(DS)は0.55であった。この時、これらの各置換基の置換度はH NMRのマレイン酸基のビニル(Vinyl)(CH=CH、6.3ppm)に該当するピーク(Peak)の積分(Integral)比率を基に計算し、具体的な計算方法は下記の通りである。
【0109】
まず、前記段階1で製造されたマレイン酸化されたキトサンに対するH NMRスペクトルを得て、これを図1に示した。図1を参照すれば、マレイン酸基のビニル基に該当する6.3ppmでピークが現れたことから、キトサンにマレイン酸基が導入されたのを確認することができ、このようなピークの積分(Integral)比率を基に前記段階1で製造されたマレイン酸化されたキトサンのマレイン酸基(-OCOCH=CHCOOH)置換度が分かった。
【0110】
その次に、最終製造された変性キトサン(M/S)に対してH NMRスペクトルを得て、これを図2に示した。図2を参照すれば、マレイン酸基のビニル基に該当する6.3ppmでのピークが減少したことから、マレイン酸基のビニル基にスルホン酸基が導入されてマレイン酸基のビニル基が減少したのを確認することができた。また、このようなピークの積分(Integral)比率を基に最終製造された変性キトサン(M/S)のマレイン酸基(-OCOCH=CHCOOH)置換度が分かった。また、これにより、最終製造された変性キトサン(M/S)のスルホコハク酸基(-OCOCH(SOH)CHCOOH)の置換度を計算することができる。
【0111】
製造例2:変性デンプン1(M/S-1)の製造
(1)段階1:非変性デンプンの酸処理段階
デンプン20gを2M HCl溶液200mlに投入した後、35℃で24時間攪拌した。その後、フィルターして水とエタノールで数回洗浄後、50℃で24時間以上乾燥して酸処理されたデンプンを得た。
【0112】
(2)段階2:酸処理されたデンプンのマレイン酸化段階
酸処理されたデンプン20gとマレイン酸無水物(Maleic Anhydride)100gを250mlの三口フラスコに投入した後、90℃で6時間攪拌した。反応後、混合物をアセトン溶媒に沈殿およびろ過して過量投入されたマレイン酸無水物(Maleic Anhydride)を除去し、50℃で24時間以上乾燥した後、マレイン酸化された変性デンプンを得た。
【0113】
(3)段階3:マレイン酸化された官能基のうちの少なくとも一部のスルホン化段階
マレイン酸化された変性デンプン20gと亜硫酸水素ナトリウム(sodium bisulfite)5gを250mlの三口フラスコに投入した後、40℃で6時間攪拌した。攪拌後、反応物をNaCOを添加してpH6~7に調整した後、水とエタノールで数回洗浄後、50℃で24時間以上乾燥して最終マレイン酸基(-OCOCH=CHCOOH)およびスルホコハク酸基(-OCOCH(SOH)CHCOOH)基が導入された変性デンプン1(M/S-1)を製造した。
【0114】
前記製造された変性デンプンは重量平均分子量が50,000g/molであり、マレイン酸基(-OCOCH=CHCOOH)の置換度(DS)は0.62であり、スルホコハク酸基(-OCOCH(SOH)CHCOOH)置換度(DS)は0.07であった。
【0115】
この時、各置換基の置換度は、前記段階2で製造されたマレイン酸化された変性デンプンと最終製造された変性デンプン(M/S)それぞれに対するH NMRスペクトルを求めた後、各スペクトルでのマレイン酸基のビニル(CH=CH、6.3ppm)に該当するピーク(Peak)の積分(Integral)比率を基に計算した。具体的な計算方法は前記製造例1の変性キトサン(M/S)に対する置換度計算方法を参照し、以下の残りの製造例も同様な方法で計算した。
【0116】
製造例3:変性デンプン2(M/S-2)の製造
前記製造例2で亜硫酸水素ナトリウムを10g使用したことを除いては、製造例2と同様な方法を使用して変性デンプン2(M/S-2)を製造した。
【0117】
前記製造された変性デンプンは重量平均分子量が50,000g/molであり、マレイン酸基(-OCOCH=CHCOOH)の置換度(DS)は0.51であり、スルホコハク酸基(-OCOCH(SOH)CHCOOH)置換度(DS)は0.16であった。
【0118】
製造例4:変性デンプン3(M/S-3)の製造
前記製造例2で亜硫酸水素ナトリウムを14g使用したことを除いては、製造例2と同様な方法を使用して変性デンプン3(M/S-3)を製造した。
【0119】
前記製造された変性デンプンは重量平均分子量が50,000g/molであり、マレイン酸基(-OCOCH=CHCOOH)の置換度(DS)は0.36であり、スルホコハク酸基(-OCOCH(SOH)CHCOOH)置換度(DS)は0.28であった。
【0120】
製造例5:変性デンプン4(M/S-4)の製造
前記製造例2で亜硫酸水素ナトリウムを20g使用したことを除いては、製造例2と同様な方法を使用して変性デンプン4(M/S-4)を製造した。
【0121】
前記製造された変性デンプンは重量平均分子量が50,000g/molであり、マレイン酸基(-OCOCH=CHCOOH)の置換度(DS)は0.21であり、スルホコハク酸基(-OCOCH(SOH)CHCOOH)置換度(DS)は0.43であった。
【0122】
比較製造例1:変性デンプン(M)の製造
(1)段階1:非変性デンプンの酸処理段階
デンプン20gを2M HCl溶液200mlに投入した後、35℃で24時間攪拌した。その後、フィルターして水とエタノールで数回洗浄後、50℃で24時間以上乾燥して酸処理されたデンプンを得た。
【0123】
(2)段階2:酸処理されたデンプンのマレイン酸化段階
酸処理されたデンプン20gとマレイン酸無水物(Maleic Anhydride)100gを250mlの三口フラスコに投入した後、90℃で6時間攪拌した。反応後、混合物をアセトン溶媒に沈殿およびろ過して過量投入されたマレイン酸無水物(Maleic Anhydride)を除去し、50℃で24時間以上乾燥した後、マレイン酸化された変性デンプン(M)を得た。
【0124】
最終製造された変性デンプン(M)は重量平均分子量が50,000g/molであり、マレイン酸基(-OCOCH=CHCOOH)の置換度(DS)が0.70であった。
【0125】
比較製造例2:変性デンプン(M/S’)の製造
前記製造例2で亜硫酸水素ナトリウムを30g使用したことを除いては、製造例2と同様な方法を使用して変性デンプン(M/S’)を製造した。
【0126】
前記製造された変性デンプンは重量平均分子量が50,000g/molであり、マレイン酸基(-OCOCH=CHCOOH)の置換度(DS)は0.14であり、スルホコハク酸基(-OCOCH(SOH)CHCOOH)置換度(DS)は0.54であった。
【0127】
実施例1
攪拌機、窒素投入器、温度計を装着した3Lガラス容器に、前記製造例1で製造した変性キトサン(M/S)100g、内部架橋剤としてポリエチレングリコールジアクリレート(Mn=575)0.23g、光開始剤としてビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド0.008g、熱開始剤として過硫酸ナトリウム(SPS)0.12g、98%水酸化ナトリウム溶液39.7gおよび水200gを添加して窒素を連続的に投入しながら単量体組成物を製造した。
【0128】
前記単量体組成物を横250mm、縦250mm、高さ30mmのステンレス材質の容器に加えて80℃のUVチャンバーで紫外線を60秒間照射(照射量:10mV/cm)し、2分間エージング(aging)させて、含水ゲル状重合体を得た。
【0129】
得られた含水ゲル状重合体を3mm×3mmの大きさに粉砕した後、得られたゲル型樹脂を600μmの孔大きさを有するステンレスワイヤーガーゼの上に約30mm厚さで広げておいて50℃真空オーブンで10時間乾燥した。このように得られた乾燥重合体を粉砕機を使用して粉砕し、ASTM規格の標準網ふるいで分級して300~600μmの粒子の大きさを有するベース樹脂を得て、これを高吸水性樹脂にした。
【0130】
実施例2~5
変性キトサン(M/S)の代わりに下記表1の変性デンプンを使用したことを除いては、実施例1と同様な方法を使用して高吸水性樹脂を製造した。
【0131】
比較例1および2
変性キトサン(M/S)の代わりに下記表1の変性デンプンを使用したことを除いては、実施例1と同様な方法を使用して高吸水性樹脂を製造した。
【0132】
実験例
前記実施例および比較例で製造した高吸水性樹脂に対して、次のような方法で物性を評価し、その結果を下記表1に示した。
【0133】
別に表記しない限り、下記物性評価は全て恒温恒湿(23±1℃、相対湿度50±10%)で行い、生理食塩水または塩水は0.9重量%塩化ナトリウム(NaCl)水溶液を意味する。
【0134】
(1)遠心分離保水能(CRC:Centrifuge Retention Capacity)
各樹脂の無荷重下吸収倍率による保水能をEDANA WSP 241.3によって測定した。
【0135】
具体的に、高吸水性樹脂W(g)(約0.2g)を不織布製の封筒に均一に入れて密封(seal)した後、常温で生理食塩水(0.9重量%)に浸水させた。30分経過後、遠心分離機を用いて250Gの条件下で前記封筒から3分間水気を切って、封筒の質量W(g)を測定した。また、樹脂を使用せず同一な操作を行った後にその時の質量W(g)を測定した。得られた各質量を用いて次の式によってCRC(g/g)を算出した。
【0136】
[数式1]
CRC(g/g)={[W(g)-W(g)]/W(g)}-1
【0137】
(2)加圧吸水能(AUP:Absorption Under Pressure)
各樹脂の0.7psiの加圧吸水能を、EDANA法 WSP 242.3によって測定した。
【0138】
具体的に、内径60mmのプラスチックの円筒底にステンレス製400mesh鉄網を装着させた。常温および湿度50%の条件下で鉄網上に高吸水性樹脂W(g)(0.90g)を均一に散布し、その上に0.7psiの荷重を均一にさらに付与することができるピストンは外径60mmより若干小さく円筒の内壁と隙間がなく上下動きが妨害を受けないようにした。この時、前記装置の重量W(g)を測定した。
【0139】
直径150mmのペトリ皿の内側に直径90mmおよび厚さ5mmのガラスフィルターをおいて、0.9重量%塩化ナトリウムで構成された生理食塩水をガラスフィルターの上面と同一レベルになるようにした。その上に直径90mmのろ過紙1枚をのせた。ろ過紙の上に前記測定装置をのせて、液を荷重下で1時間吸収させた。1時間後、測定装置を持ち上げて、その重量W(g)を測定した。
【0140】
得られた各質量を用いて以下の式によって加圧吸水能(g/g)を算出した。
【0141】
[数式2]
AUP(g/g)=[W(g)-W(g)]/W(g)
【0142】
(3)生分解性テスト
KS M ISO 14855-1規格に基づいて測定した。
【0143】
【表1】
図1
図2