(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-12
(45)【発行日】2024-01-22
(54)【発明の名称】鋼材中の非金属介在物とその周囲母相間の界面状態を評価する方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/2022 20190101AFI20240115BHJP
G01N 17/00 20060101ALI20240115BHJP
G01N 3/32 20060101ALI20240115BHJP
【FI】
G01N33/2022
G01N17/00
G01N3/32 F
(21)【出願番号】P 2020028881
(22)【出願日】2020-02-22
【審査請求日】2023-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000180070
【氏名又は名称】山陽特殊製鋼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100185258
【氏名又は名称】横井 宏理
(74)【代理人】
【識別番号】100134131
【氏名又は名称】横井 知理
(72)【発明者】
【氏名】眞鍋 亮太
(72)【発明者】
【氏名】杉本 隼之
(72)【発明者】
【氏名】藤松 威史
【審査官】高田 亜希
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-073059(JP,A)
【文献】特開2010-217076(JP,A)
【文献】特開2004-045363(JP,A)
【文献】特開2008-196616(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0024077(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/00 -33/46
G01N 17/00
G01N 3/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
評価対象の鋼材から危険体積400mm
3以上の試験片を採取し、
該試験片に水素をチャージした後、
次いで該試験片に超音波振動による応力を負荷して試験片を破断させ、
該試験片の破面上の破壊起点付近に現出した非金属介在物のうちで最大のものを特定し、その介在物の大きさを測定し、
その破面と相対する側の破面上における最大の介在物の脱落痕を特定し、
特定された破面対の一方の破面上の非金属介在物の凸部形状を測定し、他方の破面側に残る当該非金属介在物の脱落痕側の凹部形状を測定し、
前記の最大の非金属介在物の大きさと、凸部形状と凹部形状を照合することで検出した差分とを用いて、鋼材中の非金属介在物の大きさならびにその介在物と周囲母相との間の界面状態を評価する方法。
【請求項2】
超音波疲労試験における試験片への負荷応力を550MPa以上としたことを特徴とする請求項1に記載の超音波疲労試験による
鋼材中の非金属介在物の大きさならびにその介在物と周囲母相との間の界面状態を評価する方法。
【請求項3】
超音波疲労試験における試験片への負荷応力を600MPa以上としたことを特徴とする請求項1に記載の超音波疲労試験による
鋼材中の非金属介在物の大きさならびにその介在物と周囲母相との間の界面状態を評価する方法。
【請求項4】
超音波疲労試験における試験片への負荷応力を650MPa以上としたことを特徴とする請求項1に記載の超音波疲労試験による
鋼材中の非金属介在物の大きさならびにその介在物と周囲母相との間の界面状態を評価する方法。
【請求項5】
試験片に水素をチャージする手段が、電解溶液中にあって試験片を陰極とした電気分解による電解チャージによるものであって、さらに電解溶液の温度が20℃以上80℃以下であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の超音波疲労試験による
鋼材中の非金属介在物の大きさならびにその介在物と周囲母相との間の界面状態を評価する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波疲労試験による鋼材中の非金属介在物の大きさならびに非金属介在物とその周囲母相との間の界面状態を評価する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
適正な潤滑条件下で使用されているにも関わらず、軸受が想定よりも早期に破損する短寿命はく離が起こる場合があり、軸受の小型・軽量化設計の実現への妨げとなっている。このようなはく離は、鋼に含まれる非金属介在物(以下、「介在物」と略す。)によって引き起こされている。こうした介在物は鋼の精錬・鋳造・凝固の過程で不可避的に生成し、その過程で除去しきれないものが以降の圧延や鍛造等を経た軸受素材中に含まれることになる。介在物を起点としたはく離では、通常、その起点は部品の表面ではなく、やや内部に端を発する。それは、軸受の軌道輪と転動体(球、ころ等)が転がり接触する際には、軌道輪のやや内部に高いせん断応力が生じることによる。
【0003】
このように転がり疲れは介在物を起点として部品内部で進行するという特徴があるが、近年、転がり疲れ寿命に対して単に介在物の影響だけではなく、介在物と母相間の界面状態として隙間をともなう場合にも有害性が高まると考えられるようになってきた。
【0004】
本発明者らは、鋼中に多数の空洞を残存・分散させたSUJ2鋼を人工的に作製し、これらの空洞に対する転がり疲れき裂挙動を観察し、得られた挙動と、空洞あるいは一般介在物に対する応力シミュレーションとを対比させた結果から、介在物と母相間に隙間(空隙)がある場合には有害性が助長されることを見出している(非特許文献1参照。)。
【0005】
これに関連して、介在物-母相間の隙間を閉塞させるためには、鋼材に熱間等方圧加圧(HIP(Hot Isostatic Pressing))加工を施すと、転がり疲れ寿命が大幅に向上することが報告されている(非特許文献2参照。)。
【0006】
これらのことから、介在物周囲に隙間があるときには、有害性が高まることが十分起こりうる。たとえば、鋼材中の介在物と母相では変形能が異なることから、鋼材が圧延や鍛造などの塑性加工を受けると、介在物と母相の界面に隙間が生じることが実際に生じることがある。
【0007】
昨今、鋼材の信頼性向上が求められるなかで、鋼材の持つ寿命特性を定量的に予測する技術がとりわけ望まれるようになっている。もっとも、上述したように介在物とその周囲母相との界面状態に隙間の有無といった違いがあるだけで転がり疲れ寿命挙動に差が生じることからすると、鋼材の寿命特性を単に介在物の評価のみから予測することは難しいことが分かってきた。したがって、従来から行われてきた鋼中の介在物の大きさを評価することのみならず、介在物とその周囲の母相との界面状態についても評価を行う必要が生じている。
【0008】
介在物周囲の隙間の状態を評価しようとするならば、例えば、鋼材を鏡面研磨後に光学顕微鏡や走査型電子顕微鏡を用いて観察する方法が考えられる。しかし、このような二次元観察は、介在物の大きさならびに隙間量のいずれに関しても最大の大きさとなる箇所を適切に観察できているとは限らず、評価の正確性が十分に確保しがたい。また、そもそも顕微鏡観察による評価方法では局所的な観察であることから評価範囲が限定的となりやすく、短寿命はく離を引き起こすような比較的大型の介在物をそのような局所的観察を用いて見つけ出すこと自体が容易ではない。
【0009】
そこで、より精密な評価をしようとすれば、二次元的な手法ではなく三次元的な観察手法を採る必要がある。その手法の1つとして放射光を利用した透過観察手法がありうるが、設備が大がかりで、利用のチャンスすら限られることから、手軽に実施できるような手法とはいえず実用性がない。また、X線CT(コンピュータ断層撮影法)や超音波探傷試験(UT)による観察手法も概念上はありえるが、いずれの方法においても、数十μmサイズの介在物周りの界面状態(隙間形状等)の違いを捉えることは、現有技術レベルでは難しいことから、実用性がない。
【0010】
鋼中の介在物を評価する従来の方法としては、水素侵入をさせた金属材料製の試験片に対してサーボ式疲労試験をする方法(たとえば特許文献1参照。)、超音波疲労試験による方法(たとえば特許文献2~4参照。)などにより、介在物起点で試験片を破断させることで、破面上に残った介在物を観察する手法がある。
【0011】
ところで、鋼中の比較的大型の介在物の存在頻度は高くないことから、鋼中に比較的大型の介在物が現実に含有されている場合であっても、試験片が小さければその中に大型の介在物は含まれず捕捉されにくいことになる。そこで、前提として大型介在物の存在を正しく捕捉して鋼の状態を適切に評価しておくことが重要である。
【0012】
比較的大型の介在物をより精密に評価するためには、試験片中に大型の介在物が内包される捕捉確率を高めるべく、あらかじめ試験片の評価体積を大きくとることが考えられる。大きな体積で評価可能な試験方法としては、例えば油圧式のサーボ式疲労試験法が挙げられる。しかしながら、当該試験機を用いた特許文献1で示されている応力負荷繰返し速度は50Hz~75Hz程度と遅いものであるから、試験片を破断させて、その破面上の介在物について評価をしようとしても、破断に非常に長時間を要してしまい、実用的には活用しにくいものに留まっている。
【0013】
ところで、超音波疲労試験機を用いて試験片を破断させ、破面に介在物を現出させて評価する方法は、市販の試験機を用いても、その応力負荷の繰り返し速度が20000Hzと非常に高速であることから、試験片の破断に要する時間はおよそ10分間以下に短縮されることとなる。そこで超音波疲労試験は、極めて迅速な試験方法である。
【0014】
もっとも、特許文献2~4に示される方法のように、具体的な試験片に鑑みると、その危険体積は総じて小さいサイズに限られてしまっていることがわかる。たとえば、特許文献2では14.14mm3、特許文献3では33mm3、特許文献4では48.4mm3とある。
しかしながら、このような小さいサイズでは、鋼中に低い頻度で存在する大型の非金属介在物を捕捉しがたく、大型の非金属介在物を評価する方法として用いるには不適当となる。もちろん、試験片の本数を増やせば、評価体積が増えることにより、大型介在物を評価できる可能性があるが、試験片の作製コストからみて現実的ではない。したがって、これらの既存の方法では、大型の介在物を見つけ出して、その周囲母相との界面状態を評価する手法として未だ十分とはいえず、適切な手法となりえていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【文献】特開2010-217076号公報
【文献】特開2009-281738号公報
【文献】特許第3944568号公報
【文献】特開2012-73059号公報
【非特許文献】
【0016】
【文献】藤松威史ら著「高炭素クロム軸受鋼の転がり疲れにおける内部欠陥からのき裂発生挙動」、鉄と鋼、一般社団法人日本鉄鋼協会、Vol.94、No.1(2008年)、13~20頁
【文献】K.Hashimoto et.al「Effect of inclusion/matrix interface cavities on internal-fracture-type rolling contact fatigue life」、Materials&Design、Elsevier B.V.、Vol. 32,Issue 10,2011年12月、4980-4985頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
比較的大型の介在物は、想定外の早期のはく離の起因となりうるものの、その評価に対して介在物の大きさと、介在物周囲の母相との界面状態(隙間の有無やその隙間量)を併せて評価することが欠かせないほど重要といえる。
【0018】
そこで、従来の方法では達成されていない、介在物とその周囲母相との界面状態を精密に評価可能な三次元的な手法が必要とされている。また、介在物はより大型になるほどに寿命への有害性が高いと考えられることから、鋼中に含まれる比較的大きい介在物とその周囲母相との界面状況を評価可能とする手法の確立が必要である。
【0019】
もっとも、既存の方法では、大型の介在物の含有状況を的確に把握することに対してさえ、試験結果を得るまでに長時間を要する、あるいは評価体積が小さく十分な評価ができないといった課題が残されており、精密な実状把握の手段としては利用できなかった。例えば、たしかに、特許文献1に示された方法によると、長時間を要するところを、試験片へ水素を侵入させることで、水素脆化によって寿命を促進させれば、試験の短時間化を図ることができることにつながる。もっとも、この促進策によっても、特許文献1の試験片の破断までの所要時間は平均して数時間であり、依然として長時間を要することから、さらなる試験の迅速化が不可欠である。
【0020】
一方、超音波試験機は迅速な試験に有利とされているが、付与できる超音波の出力には限度があることから、単純に試験片を大きくしたところで、今度は試験片に負荷することのできる最大応力(負荷応力)が小さくなってしまい、試験片を破断させることができないこととなるので、評価そのものが困難となってしまう。
【0021】
そこで、超音波試験の試験片のサイズを小さくせざるを得ないこととなる。もっとも、試験片の危険体積が小さすぎると、迅速な試験片の破断はできるものの、低頻度でしか存在しない比較的大型の介在物を適切に捉えることはできなくなるので、不十分な試験結果を得ることしかできなくなる。したがって、介在物の適切な評価手段とはなり得ない。
【0022】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、迅速かつ低コストの手段により、鋼中の比較的大型の鋼中非金属介在物の大きさならびにその周囲母相との界面状態(隙間の有無や隙間量)を精度よく評価するための方法を提供すること、すなわち、既存の方法に比べて圧倒的に大きなサイズの試験片を用い、超音波疲労試験によって迅速に大きな試験片を破断させ、その破面を観察することによる鋼中に含まれる大型介在物とその周囲母相との界面状態の評価方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明者らは、従来は、超音波疲労試験片の危険体積が14.14mm3~48.4mm3程度であったものを、たとえば770mm3といったサイズへと大幅に増大したものを用いることで、従来困難であった、鋼中に低頻度に存在する比較的大型な介在物を捕捉容易とすることができ、本発明の狙いとする評価を行うための超音波疲労試験片として有用であることを見出した。
なお、試験片1本あたりの評価対象部位の体積のことを危険体積と称し、試験片を複数本測定した場合の危険体積は、それらを合計したものである。
【0024】
もっとも、超音波疲労試験機には最大出力に制約があることから、試験片を単純に大型化しただけでは試験片を容易に破断させられず、評価ができない。なぜなら、試験片を大型化すると、それに伴って試験片に負荷することができる最大応力(負荷応力)は小さくなるため、超音波疲労試験機の最大出力に制約がある以上、そのままでは大型化した試験片を破損させることはできないのである。
【0025】
そこで本発明者らは、大型化を図った試験片にあらかじめ水素チャージを行うことで、鋼材の水素脆化作用を利用することとし、これにより試験片のサイズが大型化して負荷できる応力が低応力となった場合であっても、効率よく短時間内に介在物起点で試験片を破断させうることを見出した。
【0026】
すなわち、本発明者らは、こうした通常では破断しない大型サイズの試験片を用いつつも、水素チャージによる水素脆化を利用することによって、従来は、超音波疲労試験機を用いて破断させる手法が適用困難であった大型サイズの試験片を短時間で破断する方法を見出したのである。
【0027】
この方法によると、原理上、大型サイズの試験片の危険体積内に含まれる最大介在物(試験片の軸方向に対する垂直断面内の投影サイズが最大となるもの)を起点として破断することが期待できる。
【0028】
さらに、本発明者らは、この方法により破断させた超音波疲労試験片の破面対上に現出した破断起点に注目して、起点部付近に存在する介在物側ならびにその介在物が脱落した相対側の双方を観察したところ、介在物がちょうど母相との界面で剥がれた場合の対となる介在物脱落側には、介在物が脱落した痕跡だけではなく、介在物周囲に隙間の痕跡が見られることを発見した。この痕跡は試験片の介在物周囲に予め存在していた隙間とみることができる。
【0029】
そして、本発明者らは、水素チャージを援用した超音波疲労試験方法によれば、破断起点周囲の塑性変形は最小限度に留めることができるため、破面上に現れた介在物側(凸側)とそれと相対する介在物脱落痕側(凹側)との高低差を精密に評価することによって介在物の片側における隙間量を捕捉し、評価することが可能であることを見出し、本発明に至ったものである。
【0030】
そこで、本発明の課題を解決するための第1の手段は、
評価対象の鋼材から危険体積400mm3以上の試験片を採取し、
該試験片に水素をチャージした後、
次いで該試験片に超音波振動による応力を負荷して試験片を破断させ、
該試験片の破面上の破壊起点付近に現出した非金属介在物のうちで最大のものを特定し、その介在物の大きさを測定し、
その破面と相対する側の破面上における最大の介在物の脱落痕を特定し、
特定された破面対の一方の破面上の非金属介在物の凸部形状を測定し、他方の破面側に残る当該非金属介在物の脱落痕側の凹部形状を測定し、
前記の最大の非金属介在物の大きさと、凸部形状と凹部形状を照合することで検出した差分とを用いて、鋼材中の非金属介在物の大きさならびにその介在物と周囲母相との間の界面状態を評価する方法である。
【0031】
なお、ここでいう試験片1本あたりの危険体積とは、
図2に示すような平行部を設けた超音波疲労試験片においては、試験片中央部の平行部の体積を指す。試験片中央部が平行部ではなくテーパー状部である場合も、試験片の負荷応力の90%以上が作用する領域の体積を危険体積とみなすことができるので、それらの領域の体積も本発明における危険体積とする。
【0032】
第2の手段は、超音波疲労試験における試験片への負荷応力を550MPa以上としたことを特徴とする第1の手段に記載の超音波疲労試験による鋼材中の非金属介在物ならびにその周囲母相との間の界面状態を評価する方法である。
【0033】
第3の手段は、超音波疲労試験における試験片への負荷応力を600MPa以上としたことを特徴とする第1の手段に記載の超音波疲労試験による鋼材中の非金属介在物ならびにその周囲母相との間の界面状態を評価する方法である。
【0034】
第4の手段は、超音波疲労試験における試験片への負荷応力を650MPa以上としたことを特徴とする第1の手段に記載の超音波疲労試験による鋼材中の非金属介在物ならびにその周囲母相との間の界面状態を評価する方法である。
【0035】
第5の手段は、試験片に水素をチャージする手段が、電解溶液中にあって試験片を陰極とした電気分解による電解チャージによるものであって、さらに電解溶液の温度が20℃以上80℃以下であることを特徴とする第1~第4のいずれか1の手段に記載の超音波疲労試験による鋼材中の非金属介在物ならびにその周囲母相との間の界面状態を評価する方法である。
【0036】
電解溶液の温度が高くなれば、水素チャージによって試験片にチャージされる水素量を増加させることができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明の供する方法、すなわち、試験片を超音波疲労試験することで、試験片中に含まれるもののなかでも大型の介在物から破断させ、さらに、その破面の起点となった介在物とそれと相対する介在物脱落側の双方を観察する方法では、あらかじめ水素チャージを行うことで鋼材の水素脆化によって比較的大型の試験片であっても破断応力を低下させることが可能であることから、超音波疲労試験によって通常は破断できない大きな試験片であっても小さい負荷応力で短時間に破断させることができるので、試験片のサイズを大きくすることができる。
【0038】
すると、破断が困難であり超音波疲労試験に用いることができなかった大きな危険体積を有する試験片であっても破壊させることが可能となって疲労試験に供することができる。そこで、本発明の方法によると、従来は試験体積が少ないために見落とされやすかった鋼中に含まれる比較的大型の非金属介在物を見つけ出すことができるとともに、さらにその周囲母相との界面状態をも精密に評価できることとなる。
【0039】
また、超音波疲労試験において試験片に負荷する応力をより高めていくと、水素チャージと相俟ってより短時間で迅速に試験片を破断させることができる。したがって、さらに効率的な評価の実現が期待される。
【0040】
なお、負荷応力を高めていくと発熱しやすくなる鋼材もあるので、出力を上昇させることが難しい場合であっても、水素チャージによって出力(負荷応力)を高めすぎることなく試験片を破断させることができるので、迅速性を犠牲にしすぎることなく低出力で試験を行うことができる。
【0041】
また、水素チャージを、試験片を陰極とした電気分解による電解チャージとし、さらに電解液温度を高くすることで試験片への水素チャージ量を増やすことができる。そこで、水素脆化によってより迅速に試験片を破断させることができることとなる。すると、評価鋼材中に存在する、従来は見落とされていた比較的大型な非金属介在物とその周囲の母相との界面状態を迅速に捉えることができるようになるので、転がり疲れ寿命を律速する鋼中の欠陥の状態を評価する手法として有益であり、高い実用性を備えた評価手法となる。
【0042】
また、本発明の手段によると、非金属介在物とその周囲の母相との界面状態を、破面対の双方を観察して、その形状を対比することで差分から求めることができるので、隙間形状を的確に捕捉し把握しうることとなるので、非金属介在物の大きさの評価に加え、介在物と母相との界面状態を精度よく評価することができる。
【0043】
以上のとおり、本発明の手段によると、鋼中の比較的大型の鋼中非金属介在物の大きさならびにその周囲母相との界面状態(隙間の有無や隙間量)を精度よく評価するための方法を迅速かつ低コストに提供しうることとなる。すなわち、既存の方法に比べて圧倒的に大きなサイズの試験片を用いつつも、超音波疲労試験によって迅速に大きな試験片を破断させることができ、大型の介在物を捕捉したうえで、その破面を観察することによる鋼中に含まれる大型介在物とその周囲母相との界面状態の評価をすることができる。
【0044】
転がり疲れ寿命には、非金属介在物とその周囲母相との界面状態が影響を及ぼすと推測される。そして、製法の違いによる影響によって、界面状態にも相違が生じうると考えられる。たとえば、軸受の製造工程で通常行われているわけではないが、HIP加工を加えることで界面状態として隙間が閉塞した状況になることは上述の通りである。本発明の手段によると、非金属介在物の大きさの評価に加え、介在物と母相との界面状態を精度よく評価することができるので、界面状態の変化による違いを的確に捕捉しうるところであるから、本発明の手段を用いることで寿命に対するそれぞれの製法の良し悪しを判断しうることとなる。また、本発明の手段によって非金属介在物とその周囲の母相との界面状態を評価することは、より良い製法を開発していくうえでも非常に有効な評価手段として機能しうる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】本発明の方法の実施工程を示したフローチャートである。
【
図2】実施形態の試験片の形状の一例を示す図である。
【
図3】実施形態の試験片の水素チャージの有無または水素チャージの際の電解溶液温度によって試験片破断までに要する疲労サイクル数を示す図である。
【
図4】超音波疲労試験後に破断した試験片破面を示す、走査型電子顕微鏡(SEM)で撮像した二次電子像の例である。
【
図5】
図4で破壊起点として現出した介在物部分ならびにその相対する介在物の脱落側を拡大し、SEMで撮像した二次電子像の例である。
【
図6】
図4で観察した破面について、測定顕微鏡のZ軸測定機能によって介在物-母相間の界面状態(隙間の有無、隙間量)を評価する方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本発明に係る実施の形態の一例を、
図1に示す試験方法のフローチャートに沿って、順に説明する。なお、この実施例では軸受鋼のSUJ2鋼を評価鋼材の代表例として用いた事例を説明する。もちろん本発明の測定方法は対象鋼種を特段限定するものではないので、他の鋼材においても鋼材の特質に合わせた条件のもとで試験片を破断させて、鋼中の介在物大きさと介在物周囲の母相との間の界面状態を適切に評価することができる。
【0047】
(工程A:超音波疲労試験片の採取と調整について)
超音波疲労試験片の作製にあたっては、評価対象の鋼材について、適切な熱処理を実施した後、一例として
図2のような試験片仕上げ形状を想定し、以降の焼入焼戻工程でのスケールや脱炭層の除去を考慮した粗加工を実施する。その後、適切な焼入焼戻しを施した後、仕上げ加工を行って試験片とする。こうした試験片を複数本、たとえば10本程度作製することが好ましい。これは介在物の大きさ評価ならびに介在物とその周囲母相との界面状態の評価による実態把握に対し、ある程度のn数であることが望ましいからである。ただし、評価本数は評価母材の量の制約もあることから特に本数は定めない。
【0048】
なお、試験片は評価対象となる危険体積を可能な限り増やす意図から、
図2に示すような試験片中央部に平行部を有するものが好ましい。もっとも、試験片中央部が平行部ではなくテーパー状部であっても良く、その場合は試験片の負荷応力の90%以上が作用する領域の体積を危険体積とみなす。こうした試験片への負荷応力はCAE解析を用いることで合理的に推定することができる。
【0049】
仕上げ加工された試験片は、その共振周波数が試験に供する試験機の発振周波数(たとえば以下では20000Hzであることを前提に説明する。)を満たしている必要があるため、試験に際しては、事前に加工された試験片の共振周波数を確認する必要がある。
【0050】
なお、今回用いた超音波疲労試験機の共振周波数は20000Hz±500Hzであるが、試験片の共振周波数は20000Hz±200Hz以内であることが望ましく、さらには、20000Hz±30Hz以内であることが望ましい。試験片の共振周波数が望ましい範囲内に無い場合は、試験片長さを調節することで望ましい共振周波数の範囲内となるように適宜調整する。
【0051】
(工程A:具体例)
実施例で用いた超音波疲労試験は、SUJ2鋼のφ65mm圧延材を評価対象の鋼材とした。まず、焼ならしならびに球状化焼なましとして、865℃にて1時間保持後空冷し、その後最高点加熱温度を800℃とし、その温度にて保持後に徐冷を行った。
そこから、
図2に示す試験片仕上げ形状を考慮した粗形状への加工(粗加工)を施した。粗加工された試験片は焼入焼戻し(835℃,30min.保持→油冷(O.Q.)→180℃,1.5h.保持→空冷(A.C.))処理を行った後、さらに
図2の形状に仕上げ加工して試験片を作製した。
【0052】
実施例として作製された試験片の共振周波数は19980Hzであり、前述の条件内を満たしていることを確認した。
(比較試験1)
【0053】
ところで、超音波疲労試験機の定格出力に対して、試験片のサイズを大きくして危険体積を増大させると、試験片へと負荷できる最大応力は危険体積の大きさに伴って低下することとなる。たとえば実施例での試験に供した超音波疲労試験機に
図2に示されるような形状の試験片を適用すると、試験片へと負荷できる最大応力は870MPaとなる。
【0054】
そこで、比較試験として、試験片に対して最大応力に近い840MPaの試験応力にて水素チャージを行わずに超音波疲労試験を行った。しかし、5.0×10
9サイクル経過後でも試験片は破断に至らなかった。後述のように、この試験は超音波発振と休止を繰り返す間欠試験であるから、5.0×10
9サイクルとは、6.75日の試験時間に相当する。すなわち、約1週間かけても、
図2の試験片を超音波試験機では破断させることができなかった。試験片を破断できなければ、その後の解析によって評価鋼材中の非金属介在物を評価することができない。
【0055】
そこで、
図2のような大きさサイズの試験片では、超音波試験機で付与できる負荷応力が小さくなり、破断に至りにくいことで、超音波試験機による評価の迅速性は大きく損なわれ、試験効率が極端に下がってしまうので、大きなサイズの試験片では実効性に乏しいことが明らかとなった。
【0056】
(工程B:試験片への水素チャージ方法)
そこで、超音波疲労試験にて大型の試験片(前述と同様の
図2の試験片)をより迅速に破断させるために、試験片への水素チャージによる水素脆化によって試験片の破断応力を低下させることとする。
【0057】
試験片への水素チャージ方法としては、種々の電解液に浸漬させる方法、高圧の水素ガス中に暴露する方法、さらには電解液中にて試験片を陰極として電気分解を実施することによる方法等が適用でき、試験片への水素チャージ方法は特に限定されるものではない。
【0058】
実施例では、一例として、水素チャージは試験片を陰極とする電気分解によるものとし、純粋に3%塩化ナトリウム+0.3%チオシアン酸アンモニウムを添加した電解液を用い、試験片を陰極として電気分解する陰極チャージ法を行う。
【0059】
また、鋼中への水素拡散係数は温度依存性を示すことから、電解液温度を高くすることで水素チャージを高効率化することができる。そこで、電解液を例えば室温よりも高い温度としてもよく、水素チャージが容易に調整できる。
【0060】
(工程B:具体例)
水素脆化によって試験片の破断応力を低下させるに十分な水素量を鋼中へとチャージするため、前述の電解液を用いた陰極チャージ法にて、24時間の連続した水素チャージを行った。試験片に流れる平均電流密度は1.0mA/cm2となるように設定した。
【0061】
試験片への水素チャージにおける電解液温度を、25℃または50℃の2通りに設定し、水素チャージの結果をガスクロマトグラフによる昇温脱離分析より測定した。試験片への水素チャージは、電解液温度が25℃のときは3.5wt・ppm、50℃のときは6.8wt・ppmとなり、電解液温度を高くすることで水素チャージ量を増加させられることを確認した。
【0062】
(工程C:超音波疲労試験について)
試験片にチャージされた水素は、試験片を大気中へと取り出した後は徐々に放出されるため、水素チャージ後は速やかに超音波疲労試験へと供することが望ましい。続いて、水素チャージ後に行う超音波疲労試験について説明する。
【0063】
超音波疲労試験では、試験片に対して超音波振動により引張・圧縮の繰返し軸加重を負荷するが、試験片に連続して超音波による加振を加えると、引張と圧縮とを高速で繰返すことによる内部摩擦で熱が発生し、試験片が発熱することが知られる。そのため、適切な試験を実施するためには、必要に応じて例えばチラーで冷却した圧縮エアーを試験片に吹き付けることによる冷却ならびに、超音波の発振と停止を繰返す、間欠運転によって発熱を抑えるなどをすることが望ましい。
【0064】
さらに、硬度の低い鋼材においては、硬度の高い鋼材に比べて同一負荷応力下において試験中の内部摩擦が大きいことから発熱しやすくなる。すなわち、迅速化しようとして単純に超音波疲労試験機の最大応力を負荷することはできない場合があり、発熱等を考慮すると、試験に用いる応力は、試験片の硬さに応じ、すなわち評価鋼材の種類に応じ、適切に選定する必要がある。
【0065】
(工程C:具体例)
本実施例で試験に供したSUJ2鋼(硬さ720HV)では、冷却を考慮して、圧縮エアーの吹きつけ、ならびに0.11secの超音波加振と0.40secの停止を繰返す間欠運転によって、負荷応力840MPaにおいても過度に発熱させることなく適切に試験をすることができた。
【0066】
図3は、試験片に対する水素チャージの有無または水素チャージの際の溶液温度によって試験片が破断するまでに要する疲労サイクル数の違いを示す図である。前述のとおり、水素チャージを実施しない場合、試験片が破断することはなかった。他方、試験片に水素チャージをすることで破断応力は大きく低下したことから、840MPaのみならず、750MPaや、さらにより低い負荷応力においても、試験片を破断させることが可能であった。たとえば、
図3における試験片の破断寿命は、負荷応力660Mpaのときは、4.89×10
6サイクルであり、負荷応力620MPaのときは、9.05×10
6サイクルであり、水素チャージなしには破断が困難であった低い負荷応力を用いた場合であっても、合理的な時間内に試験片を破断しうることが確認されている。
【0067】
さらに、水素チャージを実施する際の電解液温度を25℃から50℃とすることで、鋼中への水素侵入量は3.5wt・ppmから6.8wt・ppmへと増加していることが、ガスクロマトグラフを用いた昇温脱離分析法から明らかとなっている。そして、水素侵入量の増加に対して試験片の破断までに要するサイクル数が短くなる傾向も認められることから、水素チャージの際の電解液を高温とすることは、超音波疲労試験の迅速化に有効といえる。
【0068】
また評価鋼材をSCM420鋼(硬さ420HV)に代えた超音波疲労試験を行った。もっとも、SCM420鋼では、負荷応力750MPaとやや出力を抑えた場合であっても、SUJ2鋼の時と同様の冷却を実施しただけでは試験片の発熱が顕著に認められた。そこで、前述のとおり、評価鋼材の硬さに応じ、より低い負荷応力で試験を実施することが必要であり、SCM420では、さらに出力を抑えて最大710MPaの負荷応力とすることで、発熱を抑え、試験を遂行することができた。
【0069】
(工程D:SEM観察による破壊起点となった介在物および周囲母相との界面状態の確認について)
表1に、試験に供した11本の試験片の破断後の結果を示す。なお、試験応力は破断までに要する試験時間と関係があるものの、応力の違いは現出する介在物径には影響を与えていない。本実施例は、試験片の発熱を抑えるために0.11secの超音波加振と0.40secの停止の繰り返しにより超音波疲労試験を行っているが、加振時は20000Hzで繰り返し応力を付与していることから、きわめて迅速に破断させることができている。試験片の破壊起点となった非金属介在物(起点介在物)の確認は走査型電子顕微鏡(SEM)によって行った。そして介在物大きさの測定は、このSEMによる観察像に基づく介在物投影面積の平方根(√area)として求めることができる。もちろん、さらに精度の良い測定方法があればそれを用いることを妨げるものではない。
【0070】
【0071】
図4は、超音波疲労試験後の試験片の破面を撮影したSEM画像である。その破壊形態は、図中の破線の領域で示されるような試験片内部の非金属介在物を起点としたフィッシュアイ模様を呈していた。
【0072】
図5は、
図4の中で示した破線の領域に含まれるフィッシュアイの中心付近に見られる破壊起点となった非金属介在物を拡大したSEM画像である。また、非金属介在物の大きさの測定は、投影面積の平方根(√area)として求める。
【0073】
(工程E:介在物と母相間の界面状態の評価)
図6は、介在物(凸部)とその脱落痕側(凹部)の破面対の凸部と凹部の差分の対比として、高低差測定による介在物と母相間の界面状態(隙間有無、隙間量)の評価の方法を示した模式図である。高低差の評価については、測定顕微鏡(工具顕微鏡とも称される)の高さ測定機能(Z軸測定機能)を用いて、少なくとも倍率1000倍程度の高倍率を用いて観察を行うことが好適である。このように測定顕微鏡を用いることで、破面対のうち、介在物については破面に対して盛り上がった介在物部分の凸部の高さを測定し、脱落痕側についてはその凹部の破面からの深さを測定し、両者の高低差を評価することにより、介在物の片側について介在物と母相間の隙間の有無や隙間量といった界面の状態について評価を行う。
【0074】
実例として
図5に示す軸受鋼圧延材から採取した超音波疲労試験後の破面上に観察された√areaで28.6μmの介在物に関し、測定顕微鏡を用いて凸部形状(
図5左)の最大高さ、凹部形状(
図5右)の最大深さを計測したところ、それぞれ9.5μm,17.5μmであった。これらの差分から得られる介在物-母相間に存在する片側隙間量は、8μmであった。
【0075】
なお、本評価方法の実施例の一例として、介在物片側の隙間量の最大値を評価している例で説明しているが、これに限られない。たとえば、高低差を評価可能なSEMなどを用いて介在物または脱落痕の3次元画像をそれぞれ取得するなどすれば、その両画像の形状データを利用して、介在物-母相間の隙間を3次元的に捕捉することで差分を検出し、これを評価に用いることもできる。
【0076】
以上のように、本発明によれば、あらかじめ鋼製の試験片に水素チャージして脆化させることによって、試験機の出力を高めたり、試験機を大型化したりすることなく、既存の超音波疲労試験機を用いて大型の試験片に付与しうる負荷応力のみでもって迅速に破断させることができることになり、所望とする鋼中の比較的大きな介在物の大きさの評価とともに、その介在物と周囲母相との間の隙間の有無や隙間量といった界面の状態の評価を可能とすることができる。
【0077】
本発明による超音波疲労試験によって試験片を破断させた際に、さらに、破面に現出させた介在物に関してEDS分析等の手段を用いて化学組成を特定したり、また現出した介在物の大きさを評価したりすることを行ってもよい。また、それらの評価結果と介在物周囲の母相との界面状態との関係性を調査する手段としても本発明を活用することができる。このときの破壊起点となっている非金属介在物の組成は、例えばSEMに付属のエネルギー分散型X線分光器(EDS)により得られた特性X線に基づいて分析することで特定することができる。
【0078】
近年、工業部品としての信頼性を担保する観点において、転がり疲れ寿命のばらつきが大きいことが改めて注目されるなか、そのばらつきの発生原因に関するこれまでの知見は、実際の鋼材における介在物と母相間の界面状態そのものの影響を加味して評価しておらず、その界面状態の具体的な実情はつまびらかにはされていなかった。
本発明の手段によれば、介在物の大きさ、とりわけ比較的大きな体積内に含まれる介在物の大きさの実状評価が可能になることに加えて、介在物と母相の界面状態(隙間の有無、隙間量)を具体的に窺い知ることができる。
このことは、本発明以前とは異なり、鋼材や部品の転がり疲れ寿命を評価し、それと鋼材中の介在物の状態とを関連付けて検証しようとする場合において、介在物の大きさのみでは説明ができないような寿命挙動(例えば、同一鋼材すなわち介在物の大きさ分布が同様となる鋼材から、異なる塑性加工プロセスを通じて製造した部品同士に寿命差が生じた場合などを指す、ここで言う塑性加工プロセスとは熱間、温間、冷間の加工温度域における圧延、鍛造、転造、局所加工などが含まれる)が生じた場合に、界面状態に関する情報を加味して検証できることを意味している。
そこで、本発明の手段は、介在物と寿命との関係を従来以上に精緻に検証できることを通じて、将来的な疲労寿命の予測技術の実現にも資するものである。また、その検証結果をもとに介在物と母相の界面状態の改質を検討することにも活用できる。
【符号の説明】
【0079】
1 試験片
2 危険体積部分(評価部位)