IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ディスコの特許一覧

特許7418919ウェーハの外周縁位置の検出条件を選定する選定方法
<>
  • 特許-ウェーハの外周縁位置の検出条件を選定する選定方法 図1
  • 特許-ウェーハの外周縁位置の検出条件を選定する選定方法 図2
  • 特許-ウェーハの外周縁位置の検出条件を選定する選定方法 図3
  • 特許-ウェーハの外周縁位置の検出条件を選定する選定方法 図4
  • 特許-ウェーハの外周縁位置の検出条件を選定する選定方法 図5
  • 特許-ウェーハの外周縁位置の検出条件を選定する選定方法 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-12
(45)【発行日】2024-01-22
(54)【発明の名称】ウェーハの外周縁位置の検出条件を選定する選定方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20240115BHJP
   G01B 11/00 20060101ALI20240115BHJP
   H01L 21/68 20060101ALI20240115BHJP
【FI】
H01L21/304 601Z
G01B11/00 C
H01L21/68 F
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020047619
(22)【出願日】2020-03-18
(65)【公開番号】P2021150439
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 貴之
(72)【発明者】
【氏名】小松 淳
【審査官】三浦 みちる
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-219364(JP,A)
【文献】特開2017-228634(JP,A)
【文献】国際公開第2013/136591(WO,A1)
【文献】特開2006-030029(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
G01B 11/00
H01L 21/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェーハを保持する保持テーブルと、
該保持テーブルで保持されたウェーハに光を照射する光照射器と、該保持テーブルで保持されたウェーハを撮像し撮像画像を形成するカメラと、を有した撮像ユニットと、
該撮像ユニットで該ウェーハを撮像した撮像画像を表示する表示ユニットと、
該表示ユニットに表示された該撮像画像の特定の点を選択できる入力インターフェースと、を備えた装置においてウェーハの外周縁位置の検出条件を選定する選定方法であって、
該保持テーブルでウェーハを保持する保持ステップと、
該保持テーブルで保持された該ウェーハの外周部を該撮像ユニットで撮像し基準選択用撮像画像を形成する基準選択用撮像画像形成ステップと、
該基準選択用撮像画像を該表示ユニットに表示させ、表示された該基準選択用撮像画像から該ウェーハの該外周縁の一点をオペレータが該入力インターフェースで選択し該保持面上における該一点の座標を基準外周縁座標として記録する基準外周縁選択ステップと、
該光照射器から光量を変化させながら該光を次々に照射しつつ該保持テーブルで保持された該ウェーハの該外周部を該カメラで次々に撮像し、複数の条件選定用撮像画像を形成する条件選定用撮像画像形成ステップと、
複数の該条件選定用撮像画像をそれぞれ二値化処理のスライスレベルを変化させながら次々に該二値化処理を実施して複数の二値化画像を形成し、複数の該二値化画像において白い領域と黒い領域との境界を検出し、該境界上の画素のうち該基準外周縁座標との距離が最も小さい画素の座標をそれぞれの該二値化画像の境界座標として記録する境界座標記録ステップと、
複数の該二値化画像のうち該境界座標と該基準外周縁座標との距離値が最も小さい該二値化画像を最適二値化画像として検出し、該最適二値化画像が形成された際の該二値化処理における該スライスレベルを最適スライスレベルとして記録するとともに、該最適二値化画像の基となる該条件選定用撮像画像が撮像された際の該光照射器から照射された該光の該光量を最適光量として記録する検出条件登録ステップと、
を備えることを特徴とするウェーハの外周縁位置の検出条件を選定する選定方法。
【請求項2】
該検出条件登録ステップにおいて複数の該二値化画像のそれぞれの該境界座標のうち該基準外周縁座標との該距離値が最も小さい該二値化画像が複数存在する場合、
行または列の一方に光照射器から照射された該光の該光量をとり、該行または該列の他方にスライスレベルをとり、該二値化画像のそれぞれの該距離値を要素とする距離値テーブルを作成し、
該距離値テーブルのうち該距離値の最も小さい要素を互いに隣接するもの同士で結び付けて群を形成し、所属する該要素の数が最も多い群を選択し、
選択した該群に属する要素から該スライスレベルが中央値であるとともに該光量が中央値である要素を選択し、該要素の該距離値が導出された該二値化画像を該最適二値化画像とする
ことを特徴とする請求項1記載のウェーハの外周縁位置の検出条件を選定する選定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工ユニットと、撮像ユニットと、を有する加工装置において、板状のウェーハを該加工ユニットで加工する前に該撮像ユニットで該ウェーハの外周縁を検出する際におけるウェーハの外周縁位置の検出条件を選定する選定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話やコンピュータ等の電子機器に使用されるデバイスチップや電子部品の製造工程では、円板状の半導体ウェーハが各種の加工装置で加工される。例えば、ウェーハの表面に互いに交差する複数の分割予定ラインが設定される。ウェーハの表面の分割予定ラインによって区画される各領域には、例えば、IC(Integrated Circuit)、LSI(Large Scale Integration)等のデバイスが形成される。その後、分割予定ラインに沿ってウェーハを分割すると個々のデバイスチップを形成できる。
【0003】
また、薄型のデバイスチップを形成するために、ウェーハは、分割される前に予め研削されて薄化される。ここで、ウェーハの外周部には、表面から裏面に至る側面に面取り加工と呼ばれる加工が実施されており、該外周部において該ウェーハの該側面は曲面である。このようなウェーハを薄化すると、シャープエッジと呼ばれる鋭い断面形状が該外周部に形成され、ウェーハの外周部で破損がしょうじやすくなる。
【0004】
そこで、ウェーハを薄化する前にウェーハの外周部をトリミング加工して面取り部を除去しておく(特許文献1参照)。ウェーハの外周部をトリミング加工する際には、加工が実施される加工装置が備える撮像ユニットでウェーハの外周部を撮像し、撮像画像からウェーハの外周縁を検出し、外周縁の位置を特定する。そして、特定された外周縁の位置に基づいてトリミング加工を実施する位置が決定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2000-173961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
加工装置を使用するオペレータは、ウェーハの該外周部に照明を当てて撮像ユニットで該外周部を撮像する。そして、得られた撮像画像に二値化処理等の画像処理を実施し、二値化画像を確認してウェーハの外周縁の位置を特定する。ここで、照明の光量や、画像の二値化処理におけるスライスレベル等の条件の調整は、各オペレータが個々の基準で実施している。そのため、ウェーハの外周縁を検出する手順にはオペレータ間でばらつきが生じており、検出されるウェーハの外周縁の位置に誤差を生じる原因となっている。
【0007】
その上、ウェーハの外周縁位置の検出条件が不適切であると、ウェーハの外周縁位置を正しく検出できず、トリミング加工を実施するべき部分にトリミング加工が実施されないおそれがある。また、トリミング加工を実施するべきではない部分にトリミング加工が実施されるおそれがある。そこで、トリミング加工のばらつきや失敗を防止するために、ウェーハの外周縁位置の検出条件を適切に選定したいとの課題がある。
【0008】
本発明はかかる問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、撮像画像に基づいたウェーハの外周縁位置の検出を適切に実施できるようにウェーハの外周縁位置の検出条件を選定する選定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によれば、ウェーハを保持する保持テーブルと、該保持テーブルで保持されたウェーハに光を照射する光照射器と、該保持テーブルで保持されたウェーハを撮像し撮像画像を形成するカメラと、を有した撮像ユニットと、該撮像ユニットで該ウェーハを撮像した撮像画像を表示する表示ユニットと、該表示ユニットに表示された該撮像画像の特定の点を選択できる入力インターフェースと、を備えた装置においてウェーハの外周縁位置の検出条件を選定する選定方法であって、該保持テーブルでウェーハを保持する保持ステップと、該保持テーブルで保持された該ウェーハの外周部を該撮像ユニットで撮像し基準選択用撮像画像を形成する基準選択用撮像画像形成ステップと、該基準選択用撮像画像を該表示ユニットに表示させ、表示された該基準選択用撮像画像から該ウェーハの該外周縁の一点をオペレータが該入力インターフェースで選択し該保持面上における該一点の座標を基準外周縁座標として記録する基準外周縁選択ステップと、該光照射器から光量を変化させながら該光を次々に照射しつつ該保持テーブルで保持された該ウェーハの該外周部を該カメラで次々に撮像し、複数の条件選定用撮像画像を形成する条件選定用撮像画像形成ステップと、複数の該条件選定用撮像画像をそれぞれ二値化処理のスライスレベルを変化させながら次々に該二値化処理を実施して複数の二値化画像を形成し、複数の該二値化画像において白い領域と黒い領域との境界を検出し、該境界上の画素のうち該基準外周縁座標との距離が最も小さい画素の座標をそれぞれの該二値化画像の境界座標として記録する境界座標記録ステップと、複数の該二値化画像のうち該境界座標と該基準外周縁座標との距離値が最も小さい該二値化画像を最適二値化画像として検出し、該最適二値化画像が形成された際の該二値化処理における該スライスレベルを最適スライスレベルとして記録するとともに、該最適二値化画像の基となる該条件選定用撮像画像が撮像された際の該光照射器から照射された該光の該光量を最適光量として記録する検出条件登録ステップと、を備えることを特徴とするウェーハの外周縁位置の検出条件を選定する選定方法が提供される。
【0010】
好ましくは、該検出条件登録ステップにおいて複数の該二値化画像のそれぞれの該境界座標のうち該基準外周縁座標との該距離値が最も小さい該二値化画像が複数存在する場合、行または列の一方に光照射器から照射された該光の該光量をとり、該行または該列の他方にスライスレベルをとり、該二値化画像のそれぞれの該距離値を要素とする距離値テーブルを作成し、該距離値テーブルのうち該距離値の最も小さい要素を互いに隣接するもの同士で結び付けて群を形成し、所属する該要素の数が最も多い群を選択し、選択した該群に属する要素から該スライスレベルが中央値であるとともに該光量が中央値である要素を選択し、該要素の該距離値が導出された該二値化画像を該最適二値化画像とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様に係るウェーハの外周縁位置の検出条件を選定する選定方法では、まず、ウェーハの外周部を撮像して基準選択用撮像画像を形成し、該基準選択用撮像画像のうち該ウェーハの境界の一点を選択する。選択された該一点の座標は、基準外周縁座標として記録される。次に、光照射器で光量を変化させつつ光をウェーハに照射して複数の条件選定用撮像画像を作成し、それぞれの条件選定用撮像画像に対してスライスレベルを変化させつつ繰り返し二値化処理を実施し、複数の二値化画像を形成する。
【0012】
そして、複数の二値化画像のうち、それぞれ二値化画像に写る該ウェーハの境界と該基準外周縁座標との距離が最も小さくなる二値化画像を最適二値化画像として検出する。この最適二値化画像が形成された際の二値化処理のスライスレベルを最適スライスレベルとし、該最適二値化画像の基となる条件選定用撮像画像が形成された際の光照射器の光の光量を最適光量とする。
【0013】
その後、ウェーハを加工する際には、保持テーブルにウェーハを保持した後、該最適光量の光を光照射器からウェーハに照射して該ウェーハの外周部をカメラで撮像し、得られた撮像画像を該最適スライスレベルで二値化処理して二値化画像を形成する。そして、該二値化画像に写る白い領域と黒い領域の境界をウェーハの外周縁として検出する。この場合、作業者の意思が極力排除された上、最適な検出条件でウェーハの外周縁位置が検出される。そのため、ばらつきなく適切にウェーハの外周縁位置を検出できる。
【0014】
したがって、本発明により撮像画像に基づいたウェーハの外周縁位置の検出を適切に実施できるようにウェーハの外周縁位置の検出条件を選定する選定方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】ウェーハ及び加工装置を模式的に示す斜視図である。
図2】表示ユニットに写る画面の一例を模式的に示す平面図である。
図3】基準選択用撮像画像を模式的に示す平面図である。
図4図4(A)は、条件選定用撮像画像を模式的に示す平面図であり、図4(B)は、二値化画像の一例を模式的に示す平面図であり、図4(C)は、二値化画像の他の一例を模式的に示す平面図であり、図4(D)は、二値化画像のさらに他の一例を模式的に示す平面図である。
図5】一部が拡大された距離値テーブルを模式的に示す平面図である。
図6図6(A)は、ウェーハの外周縁位置の検出条件を選定する選定方法の各ステップのフローが模式的に示されたフローチャートであり、図6(B)は、検出条件登録ステップのフローの一例が模式的に示されたフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
添付図面を参照して、本発明の一態様に係る実施形態について説明する。本実施形態に係るウェーハの外周縁位置の検出条件を選定する選定方法は、例えば、ウェーハにエッジトリミング加工を実施する切削装置で実施される。ただし、本実施形態に係る該選定方法は、他の装置で実施されてもよい。図1は、ウェーハ1と、切削装置2と、を模式的に示す斜視図である。
【0017】
まず、ウェーハ1について説明する。ウェーハ1は、例えば、Si(シリコン)、SiC(シリコンカーバイド)、GaN(ガリウムナイトライド)、GaAs(ヒ化ガリウム)、若しくは、その他の半導体等の材料からなる円板状の基板等である。ウェーハ1の表面1a側には互いに交差する複数の分割予定ライン3が設定される。分割予定ライン3によって区画された各領域には、IC(Integrated Circuit)、LSI(Large Scale Integration)等のデバイス5が形成されている。
【0018】
なお、ウェーハ1の材質に制限はない。例えば、セラミックス、樹脂、金属等の材料でなる基板をウェーハ1として用いることもできる。また、デバイス5の種類、数量、配置等にも制限はない。表面1aに複数のデバイス5が形成されたウェーハ1の裏面1b側から研削して薄化し、ウェーハ1を分割予定ライン3に沿って分割すると、個々のデバイスチップが得られる。
【0019】
ここで、ウェーハ1の外周部では、表面1aから裏面1bに至る側面に面取り加工と呼ばれる加工が実施されており、該外周部において該ウェーハの該側面は曲面である。このようなウェーハ1を薄化するとシャープエッジと呼ばれる鋭い断面形状が該外周部に形成され、ウェーハ1の外周部で破損が生じる可能性が高くなる。そこで、ウェーハ1を薄化する前にウェーハ1の外周部をエッジトリミングして面取り部を除去しておく。切削装置2では、ウェーハ1の外周部を切削して該面取り部を除去する。
【0020】
次に、切削装置2について説明する。図1は、切削装置2を模式的に示す斜視図である。切削装置2は、各構成要素を支持する基台4を備えている。基台4の中央上部には、X軸移動テーブル6と、該X軸移動テーブル6をX軸方向に移動させるX軸方向移動機構と、X軸方向移動機構を覆う排水路20と、が設けられている。該X軸方向移動機構は、X軸方向に平行な一対のX軸ガイドレール12を備えており、X軸ガイドレール12には、X軸移動テーブル6がスライド可能に取り付けられている。
【0021】
X軸移動テーブル6の下面側には、ナット部(不図示)が設けられており、このナット部には、X軸ガイドレール12に平行なX軸ボールねじ14が螺合されている。X軸ボールねじ14の一端部には、X軸パルスモータ16が連結されている。X軸パルスモータ16でX軸ボールねじ14を回転させると、X軸移動テーブル6はX軸ガイドレール12に沿ってX軸方向に移動する。
【0022】
X軸移動テーブル6上には、ウェーハ1を吸引、保持するための保持テーブル8が設けられている。保持テーブル8は、モータ等の回転駆動源(不図示)に連結されており、保持テーブル8の上面に垂直な回転軸の周りに回転可能である。また、保持テーブル8は、上述したX軸方向移動機構によりX軸方向に送られる。
【0023】
保持テーブル8の上部には、ウェーハ1の径に対応する円板状の多孔質部材が露出しており、該多孔質部材の上面がウェーハ1を吸引、保持する保持面8aとなる。この多孔質部材には、保持テーブル8の内部に形成された吸引路(不図示)を介して吸引源(不図示)が接続されている。
【0024】
基台4の上面には、ウェーハ1を切削する2つの切削ユニット18を支持する支持構造22が、X軸方向移動機構を跨ぐように配置されている。支持構造22の前面上部には、2つの切削ユニット18をそれぞれY軸方向及びZ軸方向に移動させる切削ユニット移動機構が設けられている。
【0025】
切削ユニット移動機構は、支持構造22の前面に配置されY軸方向に平行な一対のY軸ガイドレール24を備えている。Y軸ガイドレール24には、2つの切削ユニット18のそれぞれに対応する2つのY軸移動プレート26がスライド可能に取り付けられている。それぞれのY軸移動プレート26の裏面側には、ナット部(不図示)が設けられており、このナット部には、それぞれに対応するY軸ガイドレール24に平行なY軸ボールねじ28が螺合されている。
【0026】
それぞれのY軸ボールねじ28の一端部には、Y軸パルスモータ28aが連結されている。Y軸パルスモータ28aでY軸ボールねじ28を回転させると、対応するY軸移動プレート26は、Y軸ガイドレール24に沿ってY軸方向に移動する。Y軸移動プレート26の表面(前面)には、それぞれ、Z軸方向に平行な一対のZ軸ガイドレール30が設けられている。それぞれのZ軸ガイドレール30には、Z軸移動プレート32がスライド可能に取り付けられている。
【0027】
Z軸移動プレート32の裏面側(後面側)には、ナット部(不図示)が設けられており、このナット部には、Z軸ガイドレール30に平行なZ軸ボールねじ34が螺合されている。Z軸ボールねじ34の一端部には、Z軸パルスモータ36が連結されている。Z軸パルスモータ36でZ軸ボールねじ34を回転させれば、Z軸移動プレート32は、Z軸ガイドレール30に沿ってZ軸方向に移動する。
【0028】
2つのZ軸移動プレート32のそれぞれの下部には、保持テーブル8で保持されたウェーハ1を切削する切削ユニット18と、保持テーブル8で保持されたウェーハ1を撮像する撮像ユニット38と、が固定されている。Y軸移動プレート26をY軸方向に移動させれば、切削ユニット18及び撮像ユニット38はY軸方向に移動する。Z軸移動プレート32をZ軸方向に移動させれば、切削ユニット18及び撮像ユニット38はZ軸方向に移動する。
【0029】
切削ユニット18は、Y軸方向に平行な回転軸を構成するスピンドル(不図示)を備える。スピンドルの先端には円環状の切削ブレード18aが装着される。スピンドルの他端側にはモータ等の回転駆動源(不図示)が連結されている。該回転駆動源を使用してスピンドルを回転させると、スピンドルの先端に装着された切削ブレード18aが回転する。
【0030】
切削ブレード18aは、例えば、円環状の基台と、基台の外周部に固定された円環状の刃先と、を有している。基台の中央部には、この基台を貫通する略円形の装着穴が設けられており、切削ブレード18aを切削ユニット18に装着する際には、該装着穴にスピンドルが突き通される。
【0031】
切削ブレード18aの刃先は、金属または樹脂等で形成された結合材と、該結合材に分散固定された複数のダイヤモンド砥粒と、を含み、砥石部とも呼ばれる。結合材からはダイヤモンド砥粒が表出しており、切削ブレード18aを回転させながらウェーハ1に切り込ませると、表出した該ダイヤモンド砥粒がウェーハ1に接触してウェーハ1が切削される。
【0032】
切削装置2は、さらに、保持テーブル8で保持されたウェーハ1を撮像して撮像画像を形成する撮像ユニット38を備える。撮像ユニット38で形成された該撮像画像は、ウェーハ1の外周縁の位置を検出する際に使用される。保持テーブル8で保持されたウェーハ1をエッジトリミング加工する際、まず、撮像ユニット38でウェーハ1の表面1aを撮像し、ウェーハ1の外周縁の位置を検出する。
【0033】
撮像ユニット38は、保持テーブル8で保持されたウェーハ1に光を照射する光照射器と、保持テーブル8で保持されたウェーハ1を撮像し撮像画像を形成するカメラと、を有する。
【0034】
カメラは、例えば、保持テーブル8で保持されたウェーハ1に焦点を合わせられるレンズと、該レンズを通る光を受光できる受光素子と、を備える。該受光素子は、例えば、CCD(Charge-Coupled Device)センサーや、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサー等である。カメラは、受光素子で受光される光を基に、撮像画像を形成する。
【0035】
光照射器は、撮像画像に鮮明にウェーハ1を写すために使用される。該光照射器は、例えば、LED(Light Emitting Diode)や電球が使用される。該光照射器は、例えば、落射照明の光源として撮像ユニット38に組み込まれており、該レンズを通してウェーハ1に光を照射する。または、該光照射器は、カメラの外部からウェーハ1に光を照射する。光照射器がウェーハ1に照射する該光の光量(強度)は、調整可能である。
【0036】
エッジトリミング加工を実施する際には、裏面1b側を保持面8aに対面させた状態で保持テーブル8の上にウェーハ1を載せ、保持テーブル8でウェーハ1を保持する。そして、保持テーブル8と、切削ユニット18と、を保持面8aに平行な方向に相対的に移動させ、ウェーハ1の外周縁の接線の直上に切削ブレード18aを位置付ける。このとき、撮像ユニット38を使用して検出されたウェーハ1の外周縁の位置に関する情報が参照される。
【0037】
そして、切削ブレード18aを回転させつつ所定の高さ位置まで下降させ、保持テーブル8と、切削ユニット18と、を保持面8aに平行な方向に相対的に移動させ、切削ブレード18aをウェーハ1の外周部に切り込ませる。その後、保持テーブル8を保持面8aに垂直な軸の周りに1回転以上回転させる。
【0038】
すると、ウェーハ1が外周縁に沿って切削されて、エッジトリミング加工が実施される。このような方法によりエッジトリミング加工が実施されるため、切削ブレード18aの刃先の厚さは、ウェーハ1の除去される部分の幅よりも大きいことが好ましい。
【0039】
ただし、切削ブレード18aの厚さはこれに限定されず、ウェーハ1の除去される部分の幅よりも小さくてもよい。この場合、切削ブレード18aをウェーハ1の径方向に沿って移動させつつ、保持テーブル8を保持面8aに垂直な軸の周りに複数回回転させ、ウェーハ1の除去される部分の全域を切削する。または、例えば、ウェーハ1の除去される部分と、残される部分と、の境界を切削して両部分を分離してもよい。
【0040】
なお、ウェーハ1は、外周部において表面1aから裏面1bに至る全厚さにおいて切削されてもよく、表面1aから所定の深さまでの一部が切削されてもよい。切削ブレード18aの下端の高さ位置は、エッジトリミング加工を実施する深さにより決定される。
【0041】
切削装置2は、さらに、切削装置2の状態や操作画面、警告画面等を表示する表示ユニットと、切削装置2に各種の指令を入力する入力インターフェースと、を備える。表示ユニットは、例えば、液晶ディスプレイである。また、入力インターフェースは、例えば、マウスやジョイスティック等のポインティングデバイスやキーボード等である。
【0042】
さらに、入力ユニットは、表示ユニットに重ねられたタッチパネルでもよい。この場合、切削装置2は、表示ユニットと入力ユニットが一体化されたタッチパネル付きディスプレイ40を備えることとなる。切削装置2を使用する作業者は、タッチパネルを用いて切削装置2を操作でき、また、切削装置2に加工条件等の情報を入力できる。以下、入力ユニットが表示ユニットに重ねられたタッチパネルである場合を例に説明するが、本実施形態に係る加工装置はこれに限定されない。
【0043】
切削装置2は、さらに、制御ユニット2aを備える。制御ユニット2aは、切削ユニット18、保持テーブル8、各移動機構、撮像ユニット38、及び表示ユニット等の切削装置2の各構成要素を制御する機能を有する。制御ユニット2aは、所定の加工条件に従って切削装置2の各構成要素を制御して、ウェーハ1の加工を遂行する。
【0044】
制御ユニット2aは、例えば、CPU(Central Processing Unit)等の処理装置と、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の主記憶装置と、フラッシュメモリ等の補助記憶装置と、を含むコンピュータによって構成される。補助記憶装置に記憶されるソフトウェアに従い処理装置等を動作させることによって、制御ユニット2aの機能が実現される。
【0045】
なお、撮像ユニット38でウェーハ1を撮像する際、ウェーハ1の外周部においてはウェーハ1の表面1aで光が反射されてカメラに到達する。そのため、撮像画像では、ウェーハ1に属する画素が比較的高い輝度となり、ウェーハ1の外部に属する画素が比較的低い輝度となる。
【0046】
ただし、撮像画像はこれに限定されない。すなわち、光の照射方法や撮像方法次第では、ウェーハ1に属する画素で輝度が比較的小さくなり、ウェーハ1の外部に属する画素で輝度が比較的大きくなる場合がある。図3には、撮像画像の一例が模式的に示されている。なお、各図では、説明の便宜のために、ウェーハ1に属する画素が黒く示されており、ウェーハ1の外部に属する画素が白く示されている。
【0047】
撮像ユニット38を使用してウェーハ1の外周縁の位置を検出する際、撮像画像に写るウェーハ1の外周縁部分において、ウェーハ1とその外部とで画素の輝度差が大きい場合、外周縁の位置を精密に検出するのは容易である。
【0048】
しかしながら、ウェーハ1の外周部は面取り加工がされており、面取り部では光照射器から照射された光が一様に反射されない。そして、撮像して得られた撮像画像では、ウェーハ1の内側から外周縁を挟んでウェーハ1の外部にかけて画素の輝度が緩やかに変化するため、ウェーハ1の外周縁を明瞭に捉え、外周縁の位置を厳密に検出するのは容易ではない。
【0049】
そこで、撮像画像に写るウェーハ1の外周縁の位置を精密に検出できるように、該撮像画像に対して制御ユニット2aにより二値化処理等の画像処理が実施される。ここで、二値化処理とは、例えば、撮像画像を構成する各画素に対して輝度の判定を行い、スライスレベルと呼ばれる閾値よりも輝度の低い画素を黒色(第1の色)に変換し、輝度が該スライスレベル以上である画素を白色(第2の色)に変換する画像処理である。ただし、二値化処理では、黒色及び白色ではない色が使用されてもよい。
【0050】
二値化処理により得られた二値化画像では、白色画素と黒色画素は明確に区別できるため、その境界の位置を容易に検出できる。ここで、スライスレベルは調整可能である。スライスレベルは、例えば、撮像画像に写るウェーハ1の外周部において、ウェーハ1に属する画素が黒色(第1の色)となるように、かつウェーハ1の外部に属する画素が白色(第2の色)となるように調整される。すると、二値化画像における白色の領域と、黒色の領域と、の境界がウェーハ1の外周縁と一致するため、該外周縁の位置を容易且つ高精度に検出できるようになる。
【0051】
切削装置2では、保持テーブル8にウェーハ1が搬入されたとき、制御ユニット2aが撮像ユニット38を制御してウェーハ1の外周部を撮像して撮像画像を形成する。そして、制御ユニット2aが撮像画像に二値化処理を実施して二値化画像を形成し、二値化画像からウェーハ1の外周縁の位置を検出する。そして、検出されたウェーハ1の外周縁の位置に基づいてウェーハ1をトリミング加工する。
【0052】
しかしながら、撮像画像の二値化処理におけるスライスレベルの調整は、各オペレータが個々の基準で実施している。また、撮像ユニット38でウェーハ1の外周縁を撮像する際の光照射器の光量の調整も各オペレータが個々の基準で実施している。すなわち、ウェーハ1の外周縁位置の検出条件の選定は、各オペレータの主観に左右される。そのため、設定される該検出条件はオペレータ間でばらつきが生じやすく、検出されるウェーハ1の外周縁位置に誤差を生じる原因となっている。
【0053】
その上、ウェーハの外周縁位置が正しく検出されない可能性もある。ウェーハ1の外周縁の位置が正しく検出されなければ、トリミング加工を実施するべき部分にトリミング加工が実施されないおそれがある。また、トリミング加工を実施するべきではない部分にトリミング加工が実施されるおそれがある。そのため、トリミング加工のばらつきや失敗を防止するために、ウェーハの外周縁位置の検出条件を適切に選定したいとの課題がある。
【0054】
そこで、本実施形態に係るウェーハの外周縁位置の検出条件を選定する選定方法では、光照射器の光量及び二値化処理におけるスライスレベル等の検出条件を所定の手順で選定する。該選定方法は、例えば、切削装置2の制御ユニット2aの機能により主に実施される。
【0055】
該選定方法では、まず、ウェーハ1の外周部を撮像ユニット38で撮像し撮像画像を形成する。この撮像画像を基準選択用撮像画像と呼ぶこととする。そして、制御ユニット2aは、表示ユニットに該基準選択用撮像画像を表示させる。図2は、表示ユニットとして機能するタッチパネル付きディスプレイ40に基準選択用撮像画像42が表示されている様子を模式的に示す平面図である。
【0056】
表示ユニットには、例えば、写る画面を説明する説明表示40aと、ウェーハ1や基準選択用撮像画像42に関する情報表示40bと、指令を入力するためのボタン40cと、が基準選択用撮像画像42とともに表示される。該選定方法では、オペレータが表示ユニットに表示された基準選択用撮像画像42を確認し、該基準選択用撮像画像42に写るウェーハ1の外周縁のうち一点を入力インターフェースで選択する。
【0057】
図3は、基準選択用撮像画像42を模式的に示す平面図である。図3に例示する通り、基準選択用撮像画像42には、ウェーハ1が黒く写ると共にウェーハ1の外部が白く写る。特にウェーハ1の外周縁1cに近い程、ウェーハ1が写る画素は明るくなる。その一方で、ウェーハ1の外周縁1cに近い程、ウェーハ1の外部が写る画素は暗くなる。
【0058】
すなわち、図3に示す通り、基準選択用撮像画像42では、ウェーハ1の内部から外部にかけて外周縁1cを挟んで画素の輝度にグラデーションが生じる。そのため、ウェーハ1の外周縁1cは、輝度のグラデーションが生じている領域の中に位置することとなる。ここで、基準選択用撮像画像42の該領域では互いに隣接する画素間の輝度の差が小さいため、各画素の輝度に基づいてウェーハ1の外周縁1cの位置を検出するのは容易ではない。ウェーハ1が白く写り外部が黒く写る場合についても同様である。
【0059】
そこで、基準選択用撮像画像42を確認したオペレータが目視で外周縁1cの位置を判定し、外周縁1cの一点を選択する。図3には、オペレータが選択する該一点の一例が模式的に示されている。オペレータにより該一点が入力されたとき、制御ユニット2aは、保持テーブル8の保持面8a上においてウェーハ1の外周縁1cの該一点が位置する座標を検出し、該座標を基準外周縁座標44として記録する。なお、このとき基準選択用撮像画像42が表示ユニットに拡大されて表示されてもよい。
【0060】
次に、制御ユニット2aは、撮像ユニット38を制御し、光照射器から光量を変化させながら次々に光をウェーハ1に照射しつつウェーハ1をカメラで撮像する。そして、撮像時の該光の光量が互いに異なる複数の条件選定用撮像画像を形成する。図4(A)は、条件選定用撮像画像46の一例を模式的に示す平面図である。
【0061】
制御ユニット2aは、撮像ユニット38で複数の条件選定用撮像画像46を形成した後、各条件選定用撮像画像46に対して二値化処理を実施する。このとき、二値化処理のスライスレベルを変化させながら繰り返し各条件選定用撮像画像46の二値化処理を実施し、複数の二値化画像を形成する。
【0062】
図4(B)、図4(C)、及び図4(D)には、それぞれ、図4(A)に示す条件選定用撮像画像46に対して二値化処理を実施することで形成された二値化画像48a,48b,48cの例が模式的に示されている。各二値化画像48a,48b,48cは、形成される際に実施された二値化処理のスライスレベルがそれぞれ異なる。
【0063】
例えば、図4(B)に示された二値化画像48aが形成された際のスライスレベルは比較的低く、条件選定用撮像画像46に写ったグラデーションが生じた領域に存在する大部分の画素が白色とされている。そのため、ウェーハ1が写る領域に存在する画素も一部が二値化処理により白色とされている。その結果、二値化画像48aでは、予め記録された基準外周縁座標44と離れた位置に白色の領域と黒色の領域の境界50aが位置するようになる。
【0064】
また、例えば、図4(D)に示された二値化画像48cが形成された際のスライスレベルは比較的高く、条件選定用撮像画像46に写ったグラデーションが生じた領域に存在する大部分の画素が黒色とされている。そのため、ウェーハ1の外部が写る領域に存在する画素も一部が二値化処理により黒色とされている。その結果、二値化画像48cでは、予め記録された基準外周縁座標44と離れた位置に白色の領域と黒色の領域の境界50cが位置するようになる。
【0065】
これに対して、図4(C)に示された二値化画像48bが形成された際のスライスレベルは適度な値であり、条件選定用撮像画像46に写ったグラデーションが生じた領域の一部の画素が二値化処理により黒色とされるとともに、該領域の他の部分が白色とされる。このとき、スライスレベルが最適値に近い程、二値化画像48bにおいて白色の領域と黒色の領域の境界50bが基準外周縁座標44に接近する。そして、境界50bがウェーハ1の外周縁1cと重なる場合、境界50bが基準外周縁座標44を通る。
【0066】
以上に説明する通り、異なるスライスレベルで条件選定用撮像画像46に二値化処理を実施すると、白色の領域と黒色の領域の境界50a,50b,50cの位置が異なる二値化画像48a,48b,48cが形成されることがわかる。
【0067】
そして、二値化画像48a,48b,48cに写る境界50a,50b,50cと、基準外周縁座標44と、の距離が近い程、二値化処理のスライスレベルがより適正であったと言える。すなわち、各二値化画像48a,48b,48cにおける該距離の値に基づいて二値化処理のスライスレベルの良否を評価できることがわかる。
【0068】
また、同様に条件選定用撮像画像が撮像された際の光照射器の光量が適度であるほど最終的に形成される二値化画像における白色の領域と黒色の領域の境界が基準外周縁座標44に近づく。例えば、二値化処理のスライスレベルを一定とすれば、最終的に形成される二値化画像における該境界と、基準外周縁座標44と、の距離の値に基づいて光照射器の光量の良否を評価できることがわかる。
【0069】
したがって、本実施形態に係るウェーハの外周縁位置の検出条件を選定する選定方法では、光照射器の光量が異なる条件で複数の条件選定用撮像画像を形成し、そのそれぞれに対して異なるスライスレベルで二値化処理を実施し複数の二値化画像を形成する。そして、白色の領域と黒色の領域との境界と、基準外周縁座標44と、の距離が最も近い二値化画像を最適二値化画像として選定する。
【0070】
このとき、該最適二値化画像の基となる条件選定用撮像画像が撮像された際の光照射器の光量が最適光量であり、該最適二値化画像が形成された際の二値化処理のスライスレベルが最適スライスレベルである。そして、エッジトリミング加工を実施するにあたりウェーハ1の外周縁位置を検出する際には、光照射器の光量を該最適光量に設定してウェーハ1の外周部を撮像し、形成された撮像画像を該最適スライスレベルで二値化処理して二値化画像を形成する。
【0071】
該二値化画像に写る白色の領域と黒色の領域の境界をウェーハ1の外周縁位置として検出すると、ウェーハ1の外周縁位置が高精度に検出される。そのため、検出された外周縁位置に基づくとウェーハ1に極めて高精度なトリミング加工を実施できる。すなわち、本実施形態によると、ウェーハ1の外周縁位置を高精度に検出できる検出方法が得られたといえる。
【0072】
以上に説明した本実施形態に係るウェーハの外周縁位置の検出条件を選定する選定方法について小括する。図6(A)は、該検出条件を選定する選定方法の各ステップのフローを示すフローチャートである。図6(A)に示す通り、該選定方法では、まず、保持テーブル8でウェーハ1を保持する保持ステップS10を実施する。そして、保持テーブル8で保持されたウェーハ1の外周部を撮像ユニット38で撮像し基準選択用撮像画像42を形成する基準選択用撮像画像形成ステップS20を実施する。
【0073】
次に、基準外周縁選択ステップS30を実施する。すなわち、基準選択用撮像画像42を表示ユニットに表示させ、表示された基準選択用撮像画像42からウェーハ1の外周縁1cの一点を入力インターフェースで選択し保持面8a上における該一点の座標を基準外周縁座標44として記録する。
【0074】
その後、条件選定用撮像画像形成ステップS40を実施する。すなわち、撮像ユニット38の光照射器から光量を変化させながら光を次々に照射しつつ保持テーブル8で保持されたウェーハ1の外周部を撮像ユニット38のカメラで次々に撮像し、複数の条件選定用撮像画像46を形成する。
【0075】
そして、境界座標記録ステップS50を実施する。境界座標記録ステップS50では、複数の条件選定用撮像画像46をそれぞれ二値化処理のスライスレベルを変化させながら次々に該二値化処理を実施して複数の二値化画像48a,48b,48cを形成する。次に、各二値化画像48a,48b,48cにおいて白い領域と黒い領域との境界50a,50b,50cを検出する。
【0076】
その後、各二値化画像48a,48b,48cの該境界50a,50b,50c上の画素のうち基準外周縁座標44との距離が最も小さい画素の座標をそれぞれの該二値化画像48a,48b,48cの境界座標として記録する。
【0077】
最後に、検出条件登録ステップS60を実施する。検出条件登録ステップS60では、複数の二値化画像48a,48b,48cのうち該境界座標と基準外周縁座標44との距離値が最も小さい該二値化画像48a,48b,48cを最適二値化画像として検出する。そして、最適二値化画像が形成された際の二値化処理のスライスレベルを最適スライスレベルとして記録するとともに、該最適二値化画像の基となる該条件選定用撮像画像が撮像された際の該光照射器から照射された該光の該光量を最適光量として記録する。
【0078】
なお、境界座標記録ステップS50では、二値化画像の白色の領域と黒色の領域の境界と、基準外周縁座標44と、の距離値を算出する際には、例えば、二値化画像において該境界を構成する各画素のうち、基準外周縁座標44との距離が最も小さい画素を選定する。そして、選定された該画素の座標を二値化画像の境界座標として記録する。
【0079】
そして、例えば、基準外周縁座標44と、境界座標と、実際の距離を算出してもよい。例えば、保持テーブル8の保持面8a上に実際の長さに基づく値の座標系が設定される場合、両座標の距離を実際の長さで算出できる。
【0080】
ただし、基準外周縁座標44と、境界座標と、の距離値は、撮像画像を構成する画素を単位として距離値が表現されていてもよい。例えば、第1の画素と、該第1の画素に隣接する第2の画素と、の距離値を1とする。この場合、第1の画素と、第2の画素と、の間に他の画素が1つ存在する場合、距離値が2となる。
【0081】
すなわち、基準外周縁座標44と、境界座標と、の距離の絶対値は必ずしも重要ではない。基準外周縁座標44と、境界座標と、の距離が最も小さくなるときの光照射器の光量と、二値化処理のスライスレベルと、が導出できれば十分である。すなわち、距離値は互いの大小関係の判定が可能であれば形態に限定はない。
【0082】
ただし、該光量及び該スライスレベルが最適値に近い程、各二値化画像における該距離値に大きな差が現れなくなる。そして、検出条件登録ステップS60では、該距離値が最も小さくなるような二値化画像が複数存在して、最適二値化画像を一つに決定できない場合も考えられる。次に、この場合における最適光量と、最適スライスレベルと、の導出方法について説明する。
【0083】
この場合、検出条件登録ステップS60では、各二値化画像が撮像された際の光照射器の光量と、二値化処理のスライスレベルと、の分布に基づいて最適光量と、最適スライスレベルと、を導出するとよい。以下、この場合における検出条件登録ステップS60について説明する。図6(B)は、この場合における検出条件登録ステップS60のフローを示すフローチャートである。
【0084】
該光量と、該スライスレベルと、の分布を評価する際には、まず、距離値テーブルと呼ぶことのできる表を作成するとよい(S61)。図5には、一例に係る距離値テーブル52の一部分が模式的に示されている。距離値テーブル52では、行または列の一方に光照射器から照射された光の光量をとる。また、行または列の他方にスライスレベルをとる。そして、距離値テーブル52では、二値化画像のそれぞれの該距離値を要素として、それぞれの該要素が行列状に並べられる。
【0085】
図5に示す例では、距離値テーブル52の縦方向が光照射器の光量56の階層を表しており、距離値テーブル52の下方に向かうに従って光量の値が高くなるように各要素が並べられる。その一方で、距離値テーブル52の横方向が二値化処理のスライスレベル54の階層を表しており、距離値テーブル52の右側に向かうに従ってスライスレベル54が高くなるように各要素が並べられる。
【0086】
図5に示された領域は、距離値テーブル52のうち該距離値が最低値となる要素が多く含まれる領域を抜き出したものである。図5に示された領域を確認すると、距離値テーブル52に含まれる各要素の該距離値の最低値は1であり、該距離値が1である要素が複数存在することが理解される。
【0087】
該距離値には、ばらつきが存在する。そして、最適光量ではない光量で撮像ユニット38によりウェーハ1が撮像され、得られた撮像画像を最適スライスレベルではないスライスレベルで二値化処理して二値化画像が形成された場合においても該距離値が低くなる場合がある。
【0088】
そこで、該距離値が内包するばらつき等の影響を極力排除するために、距離値テーブル52における該距離値の分布を評価する際には、該距離値の最も小さい要素を互いに隣接するもの同士で結び付けて群58を形成するとよい。そして、複数の群58が形成された場合、所属する要素の数が多い群58を選択するとよい(S62)。
【0089】
次に、該群58に属する各要素の該光量のパラメータを抽出して該光量の中央値56aを算出するとともに、各要素の該スライスレベル54のパラメータを抽出して該スライスレベル54の中央値54aを算出する。そして、選択した群58に属する複数の要素からスライスレベル54が中央値54aであるとともに該光量が中央値56aである要素60を選択する(S63)。そして、該要素60の該距離値が導出された該二値化画像を上述の最適二値化画像として検出するとよい(S64)。
【0090】
該距離値が最も小さくなる二値化画像が複数存在する場合、検出条件登録ステップS60では、このような手順で最適二値化画像を選択すると、ウェーハ1の外周縁位置の検出条件として最適な光量と、スライスレベルと、を導出できる。
【0091】
なお、検出条件登録ステップS60は、主に制御ユニット2aの機能により実施されるステップである。以上の説明は、制御ユニット2aの各構成で実行される処理の内容を概念的に説明したものであり、検出条件登録ステップS60は他の手順の処理により実現されてもよく、例えば、距離値テーブル52の一部または全部は、実際に生成されなくてもよい。距離値テーブル52の一部または全部が生成されない場合においても、該距離値が最も小さい複数の二値化画像から最適二値化画像を選定できればよい。
【0092】
さらに、検出条件登録ステップS60では、距離値が最低値となる複数の要素で群を形成する場合について説明したが、検出条件登録ステップS60はこれに限定されない。例えば、距離値テーブル52の各要素のうち距離値の最低値を含む所定の範囲の値域に距離値を有する要素により群が形成されてもよい。
【0093】
例えば、図5に示す例では、距離値が1となる要素のみで群58を形成する場合について説明したが、群58は、距離値が1または2となる要素で形成されてもよい。すなわち、ある閾値で区分けできる該所定の範囲に距離値を有する要素で群を形成し、該群に含まれる要素から特定の要素を選定して最適二値化画像を決めてもよい。
【0094】
該距離値には様々な要因により誤差やばらつきが含まれるため、距離値の最低値となる要素のみで群58を形成する場合よりもより、群58に含ませる要素の該距離値に所定の幅を設けると、最適二値化画像としてより好適な二値化画像を選定できる場合がある。
【0095】
このように、該距離値が最も小さくなる二値化画像が複数存在する場合とは、最適二値化画像として選定可能な二値化画像が複数存在する場合をいう。そして、該距離値が最も小さくなる二値化画像が一つとなる場合においても、距離値テーブル52を形成して上述の手順で最適二値化画像が決定されてもよい。
【0096】
以上に説明する通り、本実施形態に係るウェーハの外周縁位置の検出条件を選定する選定方法によると、ウェーハの外周縁位置の検出を適切に実施できるように光照射器の光量と、二値化処理におけるスライスレベルと、を含む検出条件を適切に選定できる。このとき、切削装置2を操作するオペレータによる指令の入力作業は、基準選択用撮像画像42に写るウェーハ1の外周縁1cの一点を選択する作業のみである。
【0097】
したがって、オペレータの主観で光照射器の光量が決定されることはなく、撮像画像に実施する二値化処理のスライスレベルが決定されることもない。これらの検出条件は、自動的に最適な条件で決定される。そのため、切削装置2でエッジトリミング加工を実施する際に、撮像ユニット38でウェーハ1の外周縁の位置を精密にかつばらつきなく検出できる。よって、ウェーハ1に対してエッジトリミング加工を高品質に実施できる。
【0098】
なお、本発明は、上記の実施形態の記載に限定されず、種々変更して実施可能である。例えば、上記の実施形態では、エッジトリミング加工を実施する前段階においてウェーハ1の外周縁の位置を精密に検出できるように検出条件を選定する場合について説明した。しかしながら、本発明の一態様はこれに限定されない。さらに、上記の実施形態では、外周縁に面取り部が形成されたウェーハ1の外周縁位置を検出する検出条件を選定する場合について説明したが、ウェーハ1はこれに限定されない。
【0099】
すなわち、ウェーハ1の外周縁には面取り部が形成されていなくてもよく、本発明の一態様は、面取り部が外周縁に形成されたウェーハ1のエッジトリミング加工を精密に実施する以外の目的で実施されてもよい。
【0100】
また、上記実施形態では、保持テーブル8の保持面8aにウェーハ1の裏面1b側を接触させるようにウェーハ1を切削装置2に搬入する場合について主に説明したが、本発明の一態様はこれに限定されない。例えば、ウェーハ1の裏面1bには、基材層及び糊層を備える粘着テープが予め貼着されていてもよく、ウェーハ1は該粘着テープを介して保持テーブル8に載せられ保持されてもよい。
【0101】
該粘着テープは、例えば、ウェーハ1の径よりも大きい径で形成される。この場合、粘着テープは、金属等の材料で形成された環状フレームの開口を塞ぐように該環状フレームに貼着される。そして、ウェーハ1を粘着テープに貼着するとフレームユニットが形成でき、ウェーハ1を該粘着テープを介して環状フレームで支持できる。
【0102】
その他、上記実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0103】
1 ウェーハ
1a 表面
1b 裏面
1c 外周縁
3 分割予定ライン
5 デバイス
2 切削装置
2a 制御ユニット
4 基台
6 X軸移動テーブル
8 保持テーブル
8a 保持面
12,24,30 ガイドレール
14,28,34 ボールねじ
16,28a,36 パルスモータ
18 切削ユニット
18a 切削ブレード
20 排水路
22 支持構造
26,32 移動プレート
38 撮像ユニット
40 タッチパネル付きディスプレイ
40a 説明表示
40b 情報表示
40c ボタン
42 基準選択用撮像画像
44 基準外周縁座標
46 条件選定用撮像画像
48a,48b,48c 二値化画像
50a,50b,50c 境界
52 距離値テーブル
54 スライスレベル
54a,56a 中央値
56 光量
58 群
60 要素
図1
図2
図3
図4
図5
図6