IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ドクトル・ヨハネス・ハイデンハイン・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツングの特許一覧

<>
  • 特許-角度測定機構のための走査ユニット 図1
  • 特許-角度測定機構のための走査ユニット 図2
  • 特許-角度測定機構のための走査ユニット 図3
  • 特許-角度測定機構のための走査ユニット 図4
  • 特許-角度測定機構のための走査ユニット 図5
  • 特許-角度測定機構のための走査ユニット 図6
  • 特許-角度測定機構のための走査ユニット 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-12
(45)【発行日】2024-01-22
(54)【発明の名称】角度測定機構のための走査ユニット
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/245 20060101AFI20240115BHJP
【FI】
G01D5/245 110C
【請求項の数】 12
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020004178
(22)【出願日】2020-01-15
(65)【公開番号】P2020115130
(43)【公開日】2020-07-30
【審査請求日】2022-10-21
(31)【優先権主張番号】19152248.1
(32)【優先日】2019-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】390014281
【氏名又は名称】ドクトル・ヨハネス・ハイデンハイン・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】DR. JOHANNES HEIDENHAIN GESELLSCHAFT MIT BESCHRANKTER HAFTUNG
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100092967
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 修
(72)【発明者】
【氏名】グレゴール・ローゼンガー
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス・ミッテラー
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン・ファンク
(72)【発明者】
【氏名】エーリヒ・シュトラッサー
【審査官】吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】実開昭58-8159(JP,U)
【文献】特開2008-249342(JP,A)
【文献】特表2002-522754(JP,A)
【文献】特開2014-62903(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/12-5/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線(A)の周りを走査ユニットに対して回転可能な角度スケール(9)の相対的な角度位置を決定するための走査ユニットであって、
- 第1の表面(1.1)および第2の表面(1.2)を有するプリント基板(1)、
- 前記プリント基板(1)の前記第1の表面(1.1)に向かい合っている前記角度スケール(9)を走査可能であるように配置されている検出構成(2)、
- 評価電子機器(3)、
- ハウジング体(5;5’)を含んでおり、前記ハウジング体(5;5’)が、
・ 底(5.1)を含んでおり、かつ
・ 前記軸線(A)の周りで周方向に延びている切れ目(5.21、5.22、5.23、5.24)と、
・ 2つの切れ目(5.21、5.22、5.23、5.24)の間に軸線方向に延びているブリッジ部(5.31、5.32)とを有しており、これにより前記ハウジング体(5;5’)が軸線方向には柔軟だが、ねじり剛性および径方向剛性をもっており、
前記底(5.1)が、前記切れ目(5.21、5.22、5.23、5.24)と前記プリント基板(1)の軸線方向の間に配置されている、走査ユニット。
【請求項2】
前記走査ユニットがブリッジ部(5.31、5.33;5.32、5.34)を有しており、前記ブリッジ部の軸線方向の間に1つの切れ目(5.21、5.22、5.23、5.24)が配置されており、したがって前記ブリッジ部(5.31、5.33;5.32、5.34)が、軸線方向にずれて配置されている、請求項1に記載の走査ユニット。
【請求項3】
前記走査ユニットがブリッジ部(5.31;5.32;5.33;5.34)の第1のペアを有しており、前記第1のペアのブリッジ部(5.31;5.32;5.33;5.34)が、前記軸線(A)に平行に法線ベクトルが方向づけられた平面内に配置されている、請求項1または2に記載の走査ユニット。
【請求項4】
前記走査ユニットがブリッジ部(5.31;5.32;5.33;5.34)の第2のペアを有しており、前記第1のペアの前記ブリッジ部(5.31)が前記第2のペアの前記ブリッジ部(5.32)に対して周方向に角度(γ)だけずれて配置されている、請求項3に記載の走査ユニット。
【請求項5】
前記第1のペアの前記ブリッジ部(5.31)が前記第2のペアの前記ブリッジ部(5.32)に対して周方向にそれぞれ同じ大きさの角度(γ)でずれて配置されている、請求項4に記載の走査ユニット。
【請求項6】
前記走査ユニットが切れ目(5.21;5.22;5.23;5.24)の第1のペアおよび切れ目(5.21;5.22;5.23;5.24)の第2のペアを有しており、前記第1のペアの前記切れ目(5.21)が前記第2のペアの前記切れ目(5.22)に対して軸線方向にずれて配置されている、請求項1から5のいずれか一項に記載の走査ユニット。
【請求項7】
前記第1のペアの前記切れ目(5.21)が前記第2のペアの前記切れ目(5.22)に対して周方向にずれて配置されている、請求項6に記載の走査ユニット。
【請求項8】
前記切れ目(5.21、5.22、5.23、5.24)の少なくとも1つが、少なくとも70°の外周角度(β)にわたって延びている、請求項1から7のいずれか一項に記載の走査ユニット。
【請求項9】
少なくとも2つの切れ目(5.21、5.22、5.23、5.24)が同じ大きさの外周角度(β)にわたって延びている、請求項1から8のいずれか一項に記載の走査ユニット。
【請求項10】
前記ハウジング体(5;5’)がストッパ面(5.4)を有しており、前記ストッパ面(5.4)が、前記軸線(A)に平行な方向成分をもつ法線を有している、請求項1から9のいずれか一項に記載の走査ユニット。
【請求項11】
前記ハウジング体(5;5’)は、前記底(5.1)と前記ブリッジ部(5.31;5.32;5.33;5.34)が1つの塊から成っているように形成されている、請求項1から10のいずれか一項に記載の走査ユニット。
【請求項12】
前記切れ目(5.21、5.22、5.23、5.24)の少なくとも1つが、少なくとも100°の外周角度(β)にわたって延びている、請求項8に記載の走査ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
角度測定機構は、例えば2つの互いに対して相対的に回転可能な機械部分の角度位置を決定するためのロータリエンコーダ内で使用される。
誘導式角度測定機構の走査ユニットの場合、しばしば、励磁コイルおよび受信コイルが導体路の形態で、共通のプリント基板上に施され、このプリント基板は、例えばロータリエンコーダの固定子と固定的に結合されている。このプリント基板に向かい合ってさらなる部品が存在しており、このさらなる部品上では、角度スケールとして、周期的な間隔をあけて導電面が目盛構造として施されており、この角度スケールは、ロータリエンコーダのロータと回転不能に結合している。励磁コイルに電気励起場が印加されると、受信コイル内では、ロータと固定子の間の相対回転中に、角度位置に応じた出力信号が生成される。この出力信号はその後、評価電子機器内でさらに処理される。
【0002】
原理的に、自己軸受部をもつ角度測定機構と、自己軸受部をもたない角度測定機構(以下に、軸受なしの角度測定機構と言う)とが区別される。自己軸受部をもつ角度測定機構は、通常は比較的小さなころ軸受を備えており、これにより、当該角度測定機構内の互いに対して相対的に回転可能な部材群が、互いに対して相対的な軸線方向および径方向の規定の位置に配置されている。これに対し、軸受なしの角度測定機構の場合、機械に取り付ける際に、互いに対して回転可能な部材群が、適切な位置で、とりわけ互いに対して正しい軸線方向の間隔をあけて固定されるよう注意を払わなければならない。
【背景技術】
【0003】
本出願人のDE102008046741A1では、差込コネクタを備えた走査ユニットを有する角度測定機構が記載されている。さらにEP0845659A2では、駆動部に取り付けられた走査ユニットが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】DE102008046741A1
【文献】EP0845659A2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、とりわけ軸受なしの誘導式角度測定機構のための、比較的少ない手間で正確に適合させてさらなる機械部分に取り付け可能な走査ユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は本発明により、請求項1の特徴によって解決される。
それゆえ本発明は、軸線の周りを走査ユニットに対して回転可能な角度スケールの相対的な角度位置を決定するための走査ユニットを含んでいる。この走査ユニットは、第1の表面および第2の表面を有するプリント基板を含んでいる。走査ユニットはさらに、少なくとも1つの検出構成を含んでおり、この検出構成は、プリント基板の第1の表面に対して軸線方向に向かい合っている角度スケールを走査可能であるように配置されている。走査ユニットは評価電子機器も含んでおり、評価電子機器は、通常は複数の電子部品から成っており、しばしば集積回路(ASICモジュール)を有している。さらに走査ユニットは底を有するハウジング体を含んでいる。これに加えてハウジング体は、軸線の周りで周方向に延びている切れ目と、周方向で2つの切れ目の間に軸線方向に延びているブリッジ部とを有している。とりわけ、切れ目およびブリッジ部は、ハウジング体が軸線方向には柔軟だが、ねじり剛性および径方向剛性をもっているように形成されている。加えて底は、切れ目とプリント基板の軸線方向の間に配置されており、したがってとりわけ評価電子機器は、切れ目とプリント基板の間で保護されて収められている。
【0007】
以下では、ブリッジ部の概念の下、ハウジング体のうち軸線方向成分をもって走っているまたは軸線方向成分をもって延びているブリッジ状または細長片状の領域が意図されている。各ブリッジ部は、2つの切れ目の間にあり、つまりとりわけブリッジ部の周方向の両側にそれぞれ1つの切れ目が配置されている。
【0008】
検出構成により、角度に応じた出力信号が生成可能であり、この出力信号は、評価電子機器内でさらに処理可能である。角度に応じた出力信号とは、とりわけ角度スケールと走査ユニットの間の相対的な角度位置についての情報を内包している信号である。ハウジング体はねじり剛性をもって形成されており、これはハウジング体が、接線方向に向いた力の導入時に、まったくまたはごく僅かにしか変形しないということである。加えてハウジング体は径方向に対して剛性をもって形成され得る。
【0009】
有利なのは、走査ユニットがブリッジ部を有しており、これらのブリッジ部の軸線方向の間に1つの切れ目が配置されていることであり、したがってこれらのブリッジ部は、軸線方向にずれて配置されている。とりわけ、当該ブリッジ部は同一線上に並んで配置されていることができ、つまりこれらのブリッジ部は、周方向には互いに対してずれずに配置されている。
【0010】
本発明のさらなる形態では、走査ユニットが、ブリッジ部の第1のペアを有しており、この第1のペアのブリッジ部は周方向にずれて配置されている。これらのブリッジ部は、周方向に例えば180°または120°ずれて配置され得る。とりわけ軸線Aの周りの中心角度であるずれ角度の確定に関しては、それぞれブリッジ部の(周方向の)真ん中が基準線と見なされ得る。
【0011】
有利なのは、走査ユニットがブリッジ部の第1のペアを有しており、これらのブリッジ部が、軸線に平行に法線ベクトルが方向づけられた幾何平面内に配置されていることである。
【0012】
これに加え、走査ユニットはブリッジ部の第2のペアを有することができ、この場合、第1のペアのブリッジ部は第2のペアのブリッジ部に対して軸線方向にずれて配置され得る。それだけでなく、第1のペアのブリッジ部は第2のペアのブリッジ部に対して周方向にずれて配置され得る。有利なのは、第1のペアのブリッジ部が第2のペアのブリッジ部に対して周方向にそれぞれ同じ角度でずれて配置されていることである。とりわけ、当該ブリッジ部は60°または72°または90°または120°ずれて配置され得る。
【0013】
本発明のさらなる形態では、走査ユニットが切れ目の第1のペアを有している。有利なのは、この場合に走査ユニットが切れ目の第2のペアを有しており、第1のペアの切れ目が第2のペアの切れ目に対して軸線方向にずれて配置されていることである。この場合にはとりわけ、第1のペアの切れ目は第2のペアの切れ目に対して周方向にずれて配置され得る。
【0014】
切れ目の少なくとも1つが、少なくとも70°の外周角度にわたって、とりわけ少なくとも100°または少なくとも140°の外周角度にわたって延びていることが有利である。さらに、すべての切れ目が同じ大きさの外周角度にわたって延びているか、または少なくとも1つのペアの切れ目が同じ大きさの外周角度にわたって延びている場合が有利である。
【0015】
ペアの概念は、2つの要素の群を意味し、ここではつまり2つの切れ目または2つのブリッジ部を意味する。この表現は、ハウジング体の対応する領域が、2つの要素に加えてさらなる1つまたは複数のこのような要素(切れ目、ブリッジ部)も有し得ることを排除しない。
【0016】
ハウジング体が、軸線の方向に少なくとも0.5mm、とりわけ少なくとも1.0mm、好ましくは少なくとも1.5mmのストロークで弾性変形可能に形成されていることが有利である。
【0017】
ハウジング体がストッパ面を有しており、このストッパ面が、軸線に平行な方向成分をもつ法線を有することが有利である。とりわけ、これによりハウジング体がストッパ面で、軸線方向に突っ張り支持され得ることが可能にされるべきである。
【0018】
ハウジング体は、底とブリッジ部がモノリシックに1つの塊から成っているかまたは1つの塊から作り出されているように形成されていることが有利である。例えば、ハウジング体全体がモノリシックに形成されていることができ、またはハウジング体の少なくとも1つのモノリシックな部分が存在しており、この部分に底およびブリッジ部が属している。
【0019】
有利なのは、走査ユニットがコンタクト支持体を有しており、コンタクト支持体が、差し込み接続を確立するための電気コンタクトを取り囲んでおり、かつプリント基板の第2の表面に取り付けられており、したがって電気コンタクトが軸線方向成分をもつ方向に走っていることである。コンタクト支持体は、とりわけ円筒形の外壁を有しており、この外壁の対称軸線は、その周りを角度スケールが回転可能な軸線である。最後に走査ユニットは、開口部を有するハウジング体を含んでおり、この開口部は内壁を有している。コンタクト支持体は開口部内に突き出ており、開口部の内壁とコンタクト支持体の外壁の間には、径方向の予応力がかかった第1の弾性要素が配置されており、これによりコンタクト支持体は、開口部の内壁に対してセンタリングされて配置されている。プリント基板は、ハウジング体に対して第1の隙間をあけて、ハウジング体に対して径方向に離隔して、ハウジング体と回転剛性をもって結合している。
【0020】
検出構成は、例えばプリント基板の第1の表面に取り付けられ得る。検出構成が、1つもしくは複数の受信巻線として、または磁気抵抗性導体路として形成されている場合には、検出構成上に、とりわけ絶縁特性を有し、かつ機械的な保護を意味する薄層を配置してもよい。
【0021】
本発明のさらなる形態では、第1の隙間が接着剤で塞がれている。
第1の弾性要素がOリングとして形成されており、このOリングが軸線を中心として配置されており、とりわけ径方向の予応力によって変形していることが有利である。
【0022】
プリント基板が、ハウジング体に対して第2の隙間をあけて、ハウジング体に対して軸線方向に離隔して、ハウジング体と回転剛性をもって結合していることが有利であり、第2の隙間も接着剤で塞がれ得る。
【0023】
本発明のさらなる形態では、コンタクト支持体の外壁は、幾何的には円筒の側面に基づいて形成されている。
さらに、開口部は回転対称の内面を有することができ、上記の軸線が内面の対称軸線である。例えば、内面は中空円筒の内輪郭であり得る。
【0024】
ハウジング体が底を有することが有利である。加えてプリント基板は、評価電子機器または評価電子機器の電子コンポーネントが底とプリント基板の間に配置されるように、ハウジング体に配置されている。この場合には底が穴を有することができ、この穴内では、コンタクト支持体を収容するためにスリーブが固定されている。特に経済的な構造方式は、スリーブとして、規格化されたハウジングネジ接続(Gehaeuseverschraubung)が使用される場合に達成され得る。その代わりに、さらなる部材が使用されない構造方式も可能であり、つまりコンタクト支持体が直接的に底の(ネジ)穴内に突き出ている。
【0025】
スリーブと穴の間に、とりわけOリングとして形成され得る第2の弾性要素が設けられていることが有利である。
この角度測定機構は、誘導式角度測定機構として形成され得るか、または光学式、磁気式、もしくは容量式の原理に基づくことができる。さらに、角度スケールと、走査ユニットと、評価電子機器とを有するこの角度測定機構が、軸受なしの角度測定機構として形成されていることが好ましい。
【0026】
本発明の有利な形成は従属請求項から読み取れる。
本発明による走査ユニットのさらなる詳細および利点は、添付の図に基づく2つの例示的実施形態の以下の説明から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】走査ユニットの一部としてのコンタクト支持体を備えたプリント基板の側面図である。
図2】コンタクト支持体を備えたプリント基板の透視図である。
図3】ハウジング体の断面図である。
図4】プリント基板およびコンタクト支持体を備えたハウジング体の断面図である。
図5】走査ユニットの透視図である。
図6】取り付けられた状態での走査ユニットを備えた角度測定機構の断面図である。
図7】第2の例示的実施形態に基づく走査ユニットの透視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
角度測定機構内で用いられるべき走査ユニットの一部が、図1では側面図で、または図2では透視図で示されている。これにより走査ユニットは、なかでも、剛性でガラス繊維強化されたエポキシ樹脂をベースとする円盤状または円形のプリント基板1を含んでいる。プリント基板1は、必然的に第1の表面1.1と、第1の表面1.1に向かい合っている第2の表面1.2とを有している。紹介している例示的実施形態では、走査ユニットは誘導式の測定原理に基づいている。それに応じて、第1の表面1.1に配置されている検出構成2は複数の受信巻線として形成されている。これに加えて第1の表面1.1には複数の励磁導体路10が配置されている。
【0029】
第2の表面1.2には、なかでも評価電子機器3の電子部品3.1が取り付けられている。プリント基板1の第2の表面1.2にはコンタクト支持体4も、例えばSMDプロセスによって取り付けられている。コンタクト支持体4は、差し込み接続の確立に適した電気コンタクト4.1(図2)を取り囲んでおり、この電気コンタクト4.1は、軸線Aに平行な方向に走っている。コンタクト支持体4は、幾何的に考察すると、実質的に円筒側面に相当する外壁4.2または外面を有している。外壁4.2は、周りを囲んでいる溝を有しており、この溝内に第1の弾性要素6、ここではOリングが配置されている。
【0030】
走査ユニットはそのうえ、例えば図3に示したハウジング体5を有している。ハウジング体5は、ハウジング体5の剛性のリング状区間内に成形された底5.1を含んでいる。この底には、軸線Aを中心とする穴があり、この穴にスリーブ5.11がねじ込まれている。スリーブ5.11のフランジと底5.1との軸線方向の間に、第2の弾性要素7がある。第2の弾性要素7も、ここではOリングとして形成されている。スリーブ5.11は、端から端までの開口部Hを有しており、それに対応して内壁5.111を有している。内壁5.111は、凹面の中空円筒の幾何形状を有しており、この幾何形状の対称軸線は軸線Aである。ハウジング体5は、底5.1の軸線方向の両側で、実質的に中空円筒の形状を有している。これに加えてハウジング体5は、リング状の端面に、加工されたストッパ面5.4を有している。
【0031】
ハウジング体5の軸線方向の変形性が達成されるよう、紹介している例示的実施形態では、複数の、それぞれハウジング体5の部分外周にわたって入れられた切れ目5.21、5.22、5.23、5.24が設けられている。これらの切れ目は、例えば図3および図4で、ハッチングされた断面の間の領域で明らかになっているように、ハウジング体5の壁を径方向に完全に貫通している。これらの切れ目5.21、5.22、5.23、5.24の周方向の間には、軸線方向に走っているブリッジ部5.31、5.32、5.33、5.34が存在している。とりわけ、切れ目5.21、5.22、5.23、5.24は鋸切削プロセスによって生成することができ、軸線方向に延びているブリッジ部5.31、5.32、5.33、5.34はそのままにされる。この場合、ハウジング体5は、除去されなかった領域がメアンダー状の形を有するように形成されている。つまり、ブリッジ部5.31、5.32、5.33、5.34は、そのままにされた材料のうち軸線方向成分において走っている領域である。
【0032】
切れ目5.21、5.22、5.23、5.24は、ペアにまとめることができ、図では、符号において同じ最終番号をもつ切れ目が1つのペアに属している(したがって同じ符号をもつそれぞれ2つの切れ目が存在している)。紹介している例示的実施形態では、ハウジング体5は、切れ目5.21、5.22、5.23、5.24のそれぞれ4つのペアを有している。
【0033】
例えば、切れ目の第1のペアは切れ目5.21を有しており、これらの切れ目5.21は、軸線A上の一点に対して(点)対称に配置されている。同じことが、切れ目の第2のペアに割り当てられ得る切れ目5.22ならびに第3および第4のペアに当てはまる。
【0034】
図5から分かるように、ここでは、切れ目の第1のペアの切れ目5.21が切れ目の第2のペアの切れ目5.22に対し、軸線方向にずれて、かつ外周に沿って約90°ずれて配置されている。
【0035】
切れ目5.21、5.22、5.23、5.24は、約170°の外周角度βにわたって延びている。
切れ目の第1のペアの切れ目5.21は第1の幾何平面内にあり、かつ切れ目の第2のペアの切れ目5.22は、第1の幾何平面に対して軸線方向にずれて配置されている第2の幾何平面内にある。第1の幾何平面も第2の幾何平面も、それぞれの平面のそれぞれの法線ベクトルが軸線Aに平行に方向づけられるように配置されている。紹介している例示的実施形態では、同じ考察が、切れ目5.23;5.24の第3および第4のペアにも当てはまる。
【0036】
ブリッジ部5.31、5.32、5.33、5.34も、4つのペアにまとめることができ、ハウジング体5は、ここでは全部で8つのブリッジ部5.31、5.32、5.33、5.34を有しており、これらのブリッジ部のうち、図5では6つが見えている。ブリッジ部の第1のペアはブリッジ部5.31を含んでおり、これらのブリッジ部5.31は、軸線A上の一点に対して(点)対称に配置されている。第1のペアのブリッジ部5.31は、互いに対して角度α=180°周方向にずれて配置されている。同じことが、ブリッジ部の第2のペアに割り当てられ得るブリッジ部5.32ならびに第3および第4のペアのブリッジ部5.33、5.34に当てはまる。ブリッジ部の第1のペアのブリッジ部5.31はブリッジ部の第2のペアのブリッジ部5.32に対し、軸線方向にずれて、かつ外周に沿って外周角度γ、ここでは90°ずれて配置されている。紹介している例示的実施形態では、ブリッジ部5.31、5.32、5.33、5.34の4つのペアは、互いに対して軸線方向にずれて配置されている。ここでは、第1および第3のペアのブリッジ部5.31、5.33が、第2および第4のペアのブリッジ部5.32、5.34に対して同じ外周角度γだけずれて配置されている。
【0037】
さらに、ハウジング体5はブリッジ部の第1のペアを有するように形成されており、この第1のペアのブリッジ部5.31は、軸線Aに平行に法線ベクトルが方向づけられた仮想平面内に配置されている。言い換えれば、軸線Aは上記の平面と垂直に交わっている。同じ考察が、ブリッジ部の第2のペアのブリッジ部5.32にも当てはまり、これらのブリッジ部5.32が置かれている平面は、ブリッジ部の第1のペアのための当該平面に対して軸線方向にずれて配置されている。
【0038】
走査ユニットは、ブリッジ部5.31、5.32、5.33、5.34を有しており、これらのブリッジ部の軸線方向の間には1つの切れ目5.21、5.22、5.23、5.24が配置されており、したがってこれらのブリッジ部5.31、5.32、5.33、5.34は軸線方向にずれて配置されている。とりわけ、同一線上に並んで軸線方向にずれて配置されているブリッジ部5.31、5.33の間に、切れ目5.22が配置されている。同様に、同一線上に並んで軸線方向にずれて配置されているブリッジ部5.32、5.34の間に、切れ目5.23が配置されている。
【0039】
紹介している例示的実施形態では、ハウジング体5は、スリーブ5.11を除いて一体的にまたは一つの部分から成って形成されている。とりわけ、ハウジング体5はアルミニウム材料から製造されている。
【0040】
走査ユニットを組み立てる過程では、プリント基板1がコンタクト支持体4と一緒に第1の弾性要素6もろとも、ハウジング体5と組み合わせられ、これにより、例えば図4に示したような構成が存在している。これに対応して、コンタクト支持体4が開口部H内に突き出ている。開口部Hの内壁5.111とコンタクト支持体4の外壁4.2の間には、第1の弾性要素6が、径方向の予応力がかかった状態で、つまり径方向に押しつぶされて配置されている。この予応力によりコンタクト支持体4は、開口部Hの内壁5.111に対し、さらなる関与なく、センタリングされて配置されている。ハウジング体5の造形およびプリント基板1の寸法決定により、プリント基板1はハウジング体5に対して第1の隙間Gr(図4)をあけて、径方向に離隔して配置されている。
【0041】
角度測定機構全体が精密に機能するには、検出構成2を備えたプリント基板1が、軸線Aに対してセンタリングされて配置されることが重要なだけでなく、この関連で、プリント基板1の規定の軸線方向の位置が確立されることも重要である。紹介している例示的実施形態では、プリント基板1の第1の表面1.1が、ハウジング体5のストッパ面5.4に揃えて取り付けられる。
【0042】
このために、最初にプリント基板1ができるだけ、つまりぶつかるまでハウジング体5内に押し込まれる。その後、接着剤8が、周りを囲んでいる隙間Gr内にもたらされる。その次に、ストッパ面5.4が平らな面に押し付けられる。その後、プリント基板1が平らな面と接触して上記の揃った構成が達成されるまで、コンタクト支持体4が開口部Hに対して変位される。ここでは、コンタクト支持体4が取付補助工具でプリント基板1の方向に押される場合が有利であり得る。この位置では、プリント基板1の第2の表面1.2はハウジング体5に当接しておらず、むしろ軸線方向の第2の隙間Gaが存在しており、これはここでは結果的に、まだ硬化してない接着剤8が毛管効果によりこの第2の隙間Ga内に入り込むことになる。ハウジング体5の軸線方向の予応力およびコンタクト支持体4への軸線方向の圧力により、プリント基板1とストッパ面5.4の間の厳密に揃った位置が維持されることが保証される。つまり、第1の隙間Grおよび第2の隙間Gaは、この段階では接着剤8(図6)によって塞がれており、この接着剤8は、後に例えば加熱炉内で硬化される。接着剤8の硬化後、プリント基板1はハウジング体5と不動におよびとりわけ回転剛性をもって結合しており、したがってこれで、ハウジング体5の軸線方向の予応力が取り除かれ得る。これにより電子部品3.1は、例えば潤滑剤または水分の侵入のような外部の影響に対し、および機械的な影響に対し、効果的に遮蔽されている。
【0043】
図3図5に基づく走査ユニットおよび角度スケール9は、図6に基づいて一緒に角度測定機構を構成し、この角度測定機構は、ここでは誘導式角度測定機構として形成されており、つまり誘導式の測定原理に基づいている。角度スケール9は、紹介している例示的実施形態では、リング状の基板として形成されており、この基板上では、周期的シーケンスおよび同じ目盛ピッチで、導電性および非導電性の領域、つまり導電性の異なる領域が設けられている。角度スケール9は、ハブ15と回転不能に結合されている。
【0044】
図6は、誘導式走査ユニットを備えており、かつこの走査ユニットがモータに取り付けられている角度測定機構を示している。モータは、固定子側のブレーキを有しており、ブレーキはアンカーディスク12を含んでいる。さらにモータは、モータのハウジングおよびアンカーディスク12に対して回転可能な軸13を有している。軸13とハブ15は、回転不能に、およびプリント基板1と角度スケール9の間に隙間幅Dで厳密にアライメントされた空隙をあけて、結合される。このために軸13は、ハブ15の雄ネジ山に噛み合い得る第1の雌ネジ山13.1を有している。したがって軸13とハブ15の間の相応の相対回転により、ハブ15の軸13に対する軸線方向の変位が達成され得る。ハブ15を軸13に取り付ける過程では、最初にハブ15が軸13内にねじ込まれ、補助工具により、ハウジング12の上縁と角度スケール9の表面との間隔または隙間幅D、ここでは例えば1.4mmが、厳密に調整される。この位置に達するとすぐに、中心のネジ16が、軸13の第2の(より小さい)雌ネジ山13.2内に回し込まれる。これは結果的に、軸13およびハブ15のネジ山の間隔がぴったり押し付けられることになり、したがってこれにより、目盛構造をもつ角度スケール9が軸13に回転不能に据え付けられている。
【0045】
その後、走査ユニット、とりわけハウジング体5が、モータのアンカーディスク12に固定される。ハウジング体5のアンカーディスク12に対する相対回転が回避されるように、ハウジング体5は、固定子側のいわゆるコイルボビン14の溝に挿入される滑りキー16(図5)を有している。これに加え、ハウジング体5に軸線方向に予応力がかけられ、したがってハウジング体5は弾性変形しており、かつ切れ目5.21、5.22、5.23、5.24の軸線方向の隙間幅が、応力を取り除いた状態に比べて減少している。この軸線方向の予応力を保つため、図6に基づき、周りを囲んでいる安全リング11(ここでは止め輪)が取り付けられる。こうすることで、走査ユニットがハウジング体5のストッパ面5.4で、モータのアンカーディスク12に永続的に突っ張り支持されることが保証されている。アンカーディスク12からストッパ面5.4が浮き上がることは、モータの比較的強い振動の際または衝突の発生の際にもあり得ない。ストッパ面5.4に対するプリント基板1の揃った配置により、プリント基板1と角度スケール9の間隔は、予め調整された隙間幅Dに相当している。
【0046】
ハウジング体5は上述の構造方式により、軸線方向には柔軟だが、ねじり剛性および径方向剛性をもって形成されている。
角度測定機構の動作中は、角度スケール9が走査ユニットに対して軸線Aの周りを回転する。この相対回転性を達成するために、この角度測定機構では自己軸受部、つまりころ軸受またはすべり軸受は設けられておらず、したがって紹介している例示的実施形態では、軸受なしの角度測定機構である。
【0047】
つまり、角度スケール9および走査ユニットは互いに対して相対的に回転可能に配置されており、軸13に固定された角度スケール9が、角度測定機構の動作中に回転する。それゆえここでは、角度スケール9と走査ユニットの間の相対回転数は、軸13と定置のハウジング体5の間の回転数にも相当する。固定子側の走査ユニット上での回転しない励磁コイル10により、この角度測定機構の動作中には均質な交流場が生成され、この交流場が、角度スケール9により、角度位置または軸13の回転角度に応じて変調される。同様に走査ユニット上にある検出構成2内では、変調された電磁場により、角度に応じた信号が生成される。検出構成2、つまりここでは受信巻線によって生成された信号は、評価電子機器3により、走査ユニットと角度スケール9の間の相対的な角度位置が決定されるようにさらに処理される。ハウジング体5内にある差込コネクタまたは電気コンタクト4.1は、図では示されていない接続ケーブルと接触し、この接続ケーブルは、それに続く電子機器につながっている。
【0048】
基本的には、測定構成が実際の走査間隔Dの変化にも反応することが確認され得る。走査間隔Dは、固定子側のブレーキがかかっているか否かの情報を内包している。したがって、ブレーキのそれぞれ目下の状態(かかっているまたは解除されている)が、走査ユニットによって確定され得る。
【0049】
紹介している例示的実施形態では、角度測定機構は、いわゆる全周走査に基づいて構成されている。つまりとりわけ、走査ユニットは、走査ユニットまたは検出構成2によって角度スケール9をほぼ全周にわたって走査可能であるように、かつこうして角度に応じた出力信号を生成可能であるように形成されている。つまり、位置信号を取得するために、角度スケール9のほぼ全部の目盛構造が走査ユニットによって走査される。
【0050】
図7に基づいて、第1の例示的実施形態とはハウジング体5’の代替的な形態によって異なっている第2の例示的実施形態が示される。この変形形態により、走査ユニットのクランプ締めでの取付が可能にされ得る。ハウジング体5’は、軸線方向に走っている2つのスリット5.5および楔形要素5.6を有しており、楔形要素5.6は、クランプネジ5.7によって軸線方向に移動させ得る。これにより、この領域内でのハウジング体5’の外輪郭を径方向外側へと押しやることができ、これは、モータハウジングの対応する寸法決定の場合、ハウジング体5’の永続的なクランプ締めを生じさせる。
【符号の説明】
【0051】
1 プリント基板
1.1 第1の表面
1.2 第2の表面
2 検出構成
3 評価電子機器
3.1 電子部品
4 コンタクト支持体
4.1 電気コンタクト
4.2 外壁
5、5’ ハウジング体
5.1 底
5.11 スリーブ
5.111 内壁
5.21、5.22、5.23、5.24 切れ目
5.31、5.32、5.33、5.34 ブリッジ部
5.4 ストッパ面
5.5 スリット
5.6 楔形要素
5.7 クランプネジ
6 第1の弾性要素
7 第2の弾性要素
8 接着剤
9 角度スケール
10 励磁コイル
11 安全リング
12 アンカーディスク、ハウジング
13 軸
13.1 第1の雌ネジ山
13.2 第2の(より小さい)雌ネジ山
14 コイルボビン
15 ハブ
16 ネジ
16 滑りキー
A 軸線
D 隙間幅、走査間隔
Gr 第1の隙間
Ga 第2の隙間
H 開口部
α 角度
β 外周角度
γ 外周角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7