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特許7419467ウェーハ及びウェーハの薄化方法並びにウェーハの薄化装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-12
(45)【発行日】2024-01-22
(54)【発明の名称】ウェーハ及びウェーハの薄化方法並びにウェーハの薄化装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20240115BHJP
   B24B 7/04 20060101ALI20240115BHJP
   B24B 1/00 20060101ALI20240115BHJP
   B24B 9/00 20060101ALI20240115BHJP
   B24B 21/00 20060101ALI20240115BHJP
【FI】
H01L21/304 621E
B24B7/04 A
B24B1/00 A
B24B9/00 601H
B24B21/00 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022148244
(22)【出願日】2022-09-16
(62)【分割の表示】P 2021094295の分割
【原出願日】2017-03-29
(65)【公開番号】P2022188089
(43)【公開日】2022-12-20
【審査請求日】2022-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】110003535
【氏名又は名称】スプリング弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】岸下 真一
【審査官】鈴木 孝章
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-335521(JP,A)
【文献】特開2015-135881(JP,A)
【文献】特開2009-119537(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B24B 7/04
B24B 1/00
B24B 9/00
B24B 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェーハをバックグラインディングによって所望の厚さに加工するウェーハの薄化方法であって、
前記ウェーハ外周のエッジ部を面取り部として加工し、
前記面取り部の上部を前記ウェーハの上面から薄化する目的厚さ(T)まで前記ウェーハの外周から内周に向かって水平に除去し、
外周から除去される取り代長さをL、面取り部の水平に対する角度φ、余裕代α、として、L=T/tanφ+αとなる形状に加工する際に、
前記加工後に、前記ウェーハの最外周部を研磨する研磨テープと、前記エッジ部の角部とが点接触とならないように前記角度φを決定することを特徴とするウェーハの薄化方法。
【請求項2】
ウェーハをバックグラインディングによって所望の厚さに加工するウェーハの薄化装置において、
前記ウェーハ外周のエッジ部を面取り部として加工する面取り装置と、
前記バックグラインディングの加工前に予め面取り加工された前記面取り部の上部を目的厚さ(T)まで前記ウェーハの外周から内周に向かって水平に切り込んで除去する砥石と、
を備え、除去される取り代長さをL、余裕代α、前記ウェーハの搬送カセットの内面で前記ウェーハの外周部と接触する部分の角度をφとして、L=T/tanφ+αとなる形状に加工する際に、
前記加工後に、前記ウェーハの最外周部を研磨する研磨テープと、前記エッジ部の角部とが点接触とならないように前記角度φを決定することを特徴とするウェーハの薄化装置。
【請求項3】
バックグラインディングによって所望の厚さに薄化されるウェーハにおいて、
前記ウェーハ外周のエッジ部が面取り部として加工され、
前記面取り部の上部は前記ウェーハの上面から薄化する目的厚さ(T)まで前記ウェーハの外周から内周に向かって水平に除去され、
外周から除去される取り代長さをL、面取り部の水平に対する角度φ、余裕代α、として、L=T/tanφ+αとなる形状に加工され、
前記角度φは、前記ウェーハの外周部を研磨する研磨テープと、前記エッジ部の角部とが点接触とならないように決定されたことを特徴とするウェーハ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体基板の製造方法に係わり、特に半導体ウェーハを薄層化する際の歩留まりを向上できるウェーハ及びウェーハの薄化方法並びにウェーハの薄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造技術は機械加工技術をはじめ、リソグラフィ技術、薄膜形成技術、エッチング技術、イオン注入技術、洗浄技術などからなっている。半導体の機械加工技術としては、ウェーハ製造工程、ウェーハ処理工程、チップ化工程、組立工程の各工程において、切断(スライシング)、研削、ラッピング、ポリッシング、CMP(化学的機械的研磨)、バックグラインディング、ダイシングなどがある。
【0003】
また、最近、薄いカードや無線タグなどの用途に対する需要が拡大しており、また、高密度実装に対する要求が高まっている。これらの要求に対応するためには、ウェーハの極薄化が必要であり、極薄化技術への要求が高まっている。ウェーハの極薄化のために、ウェーハの研削において装置や方式などに種々の工夫が行われている。また、生産性の向上や低コスト化のためにウェーハの大口径化が進んでいるが、大口径ウェーハにおける極薄化を実現するには、研磨・研削方法、仕上げ方法、加工装置、搬送方法などに多くの工夫が必要とされている。
【0004】
半導体ウェーハの薄層化は、半導体ウェーハを裏面から研削して所望の厚さとするバックグラインディングで行われ、半導体ウェーハを単純に裏面から研削する場合には、半導体ウェーハは機械的強度が低下して割れやすくなる。また、半導体ウェーハが反りやすくなり、この結果、薄層化した場合、割れや反りによる半導体ウェーハの不良率が急激に増加する。
【0005】
バックグラインディングによる割れや反りを原因として半導体ウェーハの不良率が増加するのを防止するため、外縁部の数mmを残して半導体ウェーハの裏面を研削して、半導体ウェーハの外縁部の内側を薄層化する。つまり、外縁部の内側に凹部を形成することが知られ、例えば、特許文献1に記載されている。
【0006】
また、面取りされた薄化前のウェーハにおける表面側の周縁に環状の段差を形成してナイフエッジを防止すること、これらの段差は、最終的に得るウェーハの直径に対応した円形状で、その深さは、薄化後のウェーハの目的厚さに相当する深さとすること、が特許文献2に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2007-335659号公報
【文献】特開2007-152906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記従来技術においては、薄ウェーハの搬送リスク低減や反りの低減などに効果があり、エッジチッピングを少なくすることができる。しかしながら、バックグラインディングにより生じたマイクロクラック(微細な傷や割れ目)層によるウェーハの破損を防ぐために機械的に研磨して品質を向上することは困難であった。
【0009】
本発明の目的は、上記従来技術の課題を解決し、ウェーハの形状加工を行った後のハンドリング作業によるウェーハ破損、ウェーハ端面のエッジ部に研磨テープを押し当てる工程などにおけるウェーハ端面のダメージをなくして生産性及び収益性を向上することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明の構成は以下のとおりである。
【0011】
[1] ウェーハをバックグラインディングによって所望の厚さに加工するウェーハの薄化方法であって、上記ウェーハ外周のエッジ部を面取り部として加工し、上記面取り部の上部を上記ウェーハの上面から薄化する目的厚さ(T)まで上記ウェーハの外周から内周に向かって水平に除去し、外周から除去される取り代長さをL、面取り部の水平に対する角度φ、余裕代α、として、L=T/tanφ+αとなる形状に加工する際に、上記加工後に、上記ウェーハの最外周部を研磨する研磨テープと、上記エッジ部の角部とが点接触とならないように上記角度φを決定することを特徴とするウェーハの薄化方法。
[2] ウェーハをバックグラインディングによって所望の厚さに加工するウェーハの薄化方法であって、上記ウェーハ外周のエッジ部を面取り部として加工し、上記面取り部の上部を上記ウェーハの上面から薄化する目的厚さ(T)まで上記ウェーハの外周から内周に向かって水平に除去し、外周から除去される取り代長さをL、面取り部の水平に対する角度φ、余裕代α、として、L=T/tanφ+αとなる形状に加工し、上記角度φを上記ウェーハの搬送カセットの内面と、上記エッジ部の角部とが点接触とならないように決定することを特徴とするウェーハの薄化方法。
[3] ウェーハをバックグラインディングによって所望の厚さに加工するウェーハの薄化装置において、上記ウェーハ外周のエッジ部を面取り部として加工する面取り装置と、上記バックグラインディングの加工前に予め面取り加工された上記面取り部の上部を目的厚さ(T)まで上記ウェーハの外周から内周に向かって水平に切り込んで除去する砥石と、を備え、除去される取り代長さをL、余裕代α、上記ウェーハの搬送カセットの内面で上記ウェーハの外周部と接触する部分の角度をφとして、L=T/tanφ+αとなる形状に加工する際に、上記加工後に、上記ウェーハの最外周部を研磨する研磨テープと、上記エッジ部の角部とが点接触とならないように上記角度φを決定することを特徴とするウェーハの薄化装置。
[4] ウェーハをバックグラインディングによって所望の厚さに加工するウェーハの薄化装置において、上記ウェーハ外周のエッジ部を面取り部として加工する面取り装置と、上記バックグラインディングの加工前に予め面取り加工された上記面取り部の上部を目的厚さ(T)まで上記ウェーハの外周から内周に向かって水平に切り込んで除去する砥石と、を備え、除去される取り代長さをL、余裕代α、上記ウェーハの搬送カセットの内面で上記ウェーハの外周部と接触する部分の角度をφとして、L=T/tanφ+αとなる形状に加工し、上記角度φを上記ウェーハの搬送カセットの内面と、上記エッジ部の角部とが点接触とならないように決定することを特徴とするウェーハの薄化装置。
[5] バックグラインディングによって所望の厚さに薄化されるウェーハにおいて、上記ウェーハ外周のエッジ部が面取り部として加工され、上記面取り部の上部は上記ウェーハの上面から薄化する目的厚さ(T)まで上記ウェーハの外周から内周に向かって水平に除去され、外周から除去される取り代長さをL、面取り部の水平に対する角度φ、余裕代α、として、L=T/tanφ+αとなる形状に加工され、上記角度φは、上記ウェーハの外周部を研磨する研磨テープと、上記エッジ部の角部とが点接触とならないように決定されたことを特徴とするウェーハ。
[6] バックグラインディングによって所望の厚さに薄化されるウェーハにおいて、上記ウェーハ外周のエッジ部が面取り部として加工され、上記面取り部の上部は上記ウェーハの上面から薄化する目的厚さ(T)まで上記ウェーハの外周から内周に向かって水平に除去され、外周から除去される取り代長さをL、面取り部の水平に対する角度φ、余裕代α、として、L=T/tanφ+αとなる形状に加工され、上記角度φは、上記ウェーハの搬送カセットの内面と、上記エッジ部の角部とが点接触とならないように決定されたことを特徴とするウェーハ。
【0012】
また、本発明の他の構成は、ウェーハをバックグラインディングによって所望の厚さに加工するウェーハの薄化方法であって、前記ウェーハ外周のエッジ部を面取り部として加工し、前記面取り部の上部を前記ウェーハの上面から薄化する目的厚さ(T)まで前記ウェーハの外周から内周に向かって水平に除去し、外周から除去される取り代長さをL、面取り部の水平に対する角度φ、余裕代α、として、L=T/tanφ+αとなる形状に加工し、前記ウェーハを前記形状に加工した後、前記ウェーハの最外周部を研磨する研磨テープとの接触角と前記角度φとを等しくなるように決定されたものである。
【0013】
また、本発明は、ウェーハをバックグラインディングによって所望の厚さに加工するウェーハの薄化方法であって、前記ウェーハ外周のエッジ部を面取り部として加工し、前記面取り部の上部を前記ウェーハの上面から薄化する目的厚さ(T)まで前記ウェーハの外周から内周に向かって水平に除去し、外周から除去される取り代長さをL、面取り部の水平に対する角度φ、余裕代α、として、L=T/tanφ+αとなる形状に加工し、前記角度φを前記ウェーハの搬送カセットの内面で前記ウェーハの外周部と接触する部分の角度と等しくなるように決定したものである。
【0014】
さらに、本発明は、ウェーハをバックグラインディングによって所望の厚さに加工するウェーハの薄化装置において、前記ウェーハ外周のエッジ部を面取り部として加工する面取り装置と、前記バックグラインディングの加工前に予め面取り加工された前記面取り部の上部を目的厚さ(T)まで前記ウェーハの外周から内周に向かって水平に切り込んで除去する砥石と、を備え、除去される取り代長さをL、余裕代α、前記ウェーハの搬送カセットの内面で前記ウェーハの外周部と接触する部分の角度をφとして、L=T/tanφ+αとなる形状に加工し、前記ウェーハを前記形状に加工した後、前記ウェーハの最外周部を研磨する研磨テープとの接触角と前記角度φとを等しくなるように決定したものである。
【0015】
また、本発明は、ウェーハをバックグラインディングによって所望の厚さに加工するウェーハの薄化装置において、前記ウェーハ外周のエッジ部を面取り部として加工する面取り装置と、前記バックグラインディングの加工前に予め面取り加工された前記面取り部の上部を目的厚さ(T)まで前記ウェーハの外周から内周に向かって水平に切り込んで除去する砥石と、を備え、除去される取り代長さをL、余裕代α、前記ウェーハの搬送カセットの内面で前記ウェーハの外周部と接触する部分の角度をφとして、L=T/tanφ+αとなる形状に加工し、前記角度φを前記ウェーハの搬送カセットの内面で前記ウェーハの外周部と接触する部分の角度と等しくなるように決定したものである。
【0016】
さらに、本発明は、バックグラインディングによって所望の厚さに薄化されるウェーハにおいて、前記ウェーハ外周のエッジ部が面取り部として加工され、前記面取り部の上部は前記ウェーハの上面から薄化する目的厚さ(T)まで前記ウェーハの外周から内周に向かって水平に除去され、外周から除去される取り代長さをL、面取り部の水平に対する角度φ、余裕代α、として、L=T/tanφ+αとなる形状に加工され、前記角度φは、前記ウェーハの外周部を研磨する研磨テープとの接触角と等しくなるように決定されたものである。
【0017】
さらに、本発明は、バックグラインディングによって所望の厚さに薄化されるウェーハにおいて、前記ウェーハ外周のエッジ部が面取り部として加工され、前記面取り部の上部は前記ウェーハの上面から薄化する目的厚さ(T)まで前記ウェーハの外周から内周に向かって水平に除去され、外周から除去される取り代長さをL、面取り部の水平に対する角度φ、余裕代α、として、L=T/tanφ+αとなる形状に加工され、前記角度φは、前記ウェーハの搬送カセットの内面で前記ウェーハの外周部と接触する部分の角度と等しくなるように決定されたものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ウェーハ外周の面取り部の上部は薄化する目的厚さ(T)まで外周から内周に向かって水平に除去され、取り代長さをL、面取り部の水平に対する角度φ、余裕代α、として、L=T/tanφ+αとなる形状に加工するので、ウェーハの形状加工を行った後のハンドリング作業によるウェーハ破損、ウェーハ端面のエッジ部に研磨テープを押し当てる工程などにおけるウェーハ端面のダメージをなくしてバックグラインディング加工を実現できる。したがって、薄化ウェーハの生産性及び収益性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係わる主要部を示す正面図
図2】本発明の一実施形態に係わる主要部を示す平面図
図3】本発明の一実施形態に係わる面取り加工をした時点でウェーハWの形状を示す断面図
図4】本発明の一実施形態に係わるトリミング砥石による切り込みを示す断面図
図5】本発明の一実施形態に係わるウェーハWの外周部の詳細な形状を示す断面図
図6】本発明の一実施形態に係わるウェーハWと研磨テープとの接触の状態を示した側面図
図7】本発明の一実施形態に係わる研磨装置の構成を示す図
図8】本発明の一実施形態に係わるバックグラインディング工程とウェーハWの形状を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。半導体ウェーハの薄層化は、半導体ウェーハを裏面から研削して所望の厚さとするバックグラインディングで行われ、その後の製造過程の中では、ウェーハを薄化する前の段階でウェーハの周縁を面取りし、取扱い時に周縁に割れや欠けなどの損傷を生じにくくする加工を施す。
【0021】
また、面取り加工されたウェーハが薄化されると、周縁の断面は外周側に行くほど薄くなるように鋭角化し、ナイフエッジ状に変化するので、周縁が厚さ方向に沿った面(面方向に垂直な面)になるように、予め薄化前にナイフエッジにならないようにするための切削加工を行う。
【0022】
まず、面取り装置を説明する。図1は本発明の一実施形態に係わる面取り装置の主要部を示す正面図、図2は平面図である。
【0023】
図に示すように面取り装置50は、ウェーハ送りユニット50Aと研削ユニット50Bとから構成される。ウェーハ送りユニット50Aの水平に配設されたベースプレート51上には、一対のY軸ガイドレール52、52が所定の間隔を持って敷設される。この一対のY軸ガイドレール52、52上にはY軸リニアガイド54、54、を介してY軸テーブル56がスライド自在に支持される。
【0024】
Y軸テーブル56の下面にはナット部材58が固着されており、ナット部材58にはY軸ボールネジ60が螺合される。Y軸ボールネジ60は、一対のY軸ガイドレール52、52の間において、その両端部がベースプレート51上に配設された軸受部材62、62に回動自在に支持されており、その一端にY軸モータ64が連結される。
【0025】
Y軸モータ64を駆動することによりY軸ボールネジ60が回動し、ナット部材58を介してY軸テーブル56がY軸ガイドレール52、52に沿って水平方向(Y軸方向)にスライド移動する。
【0026】
Y軸テーブル56上には、一対のY軸ガイドレール52、52と直交するように一対のX軸ガイドレール66、66が敷設される。この一対のX軸ガイドレール66、66上にはX軸リニアガイド68、68、…を介してX軸テーブル70がスライド自在に支持される。
【0027】
X軸テーブル70の下面にはナット部材72が固着されており、ナット部材72にX軸ボールネジ74が螺合される。X軸ボールネジ74は、一対のX軸ガイドレール66、66の間において、その両端部がX軸テーブル70上に配設された軸受部材76、76に回動自在に支持されており、その一方端に不図示のX軸モータの出力軸が連結される。
【0028】
したがって、X軸モータを駆動することによりX軸ボールネジ74が回動し、ナット部材72を介してX軸テーブル70がX軸ガイドレール66、66に沿って水平方向(X軸方向)にスライド移動する。
【0029】
X軸テーブル70上には、垂直にZ軸ベース80が立設されており、Z軸ベース80には一対のZ軸ガイドレール82、82が所定の間隔を持って敷設される。この一対のZ軸ガイドレール82、82にはZ軸リニアガイド84、84を介してZ軸テーブル86がスライド自在に支持される。
【0030】
Z軸テーブル86の側面にはナット部材88が固着されており、ナット部材88にZ軸ボールネジ90が螺合される。Z軸ボールネジ90は、一対のZ軸ガイドレール82、82の間において、その両端部がZ軸ベース80に配設された軸受部材92、92に回動自在に支持されており、その下端部にZ軸モータ94の出力軸が連結される。
【0031】
Z軸モータ94を駆動することによりZ軸ボールネジ90が回動し、ナット部材88を介してZ軸テーブル86がZ軸ガイドレール82、82に沿って鉛直方向(Z軸方向)にスライド移動する。Z軸テーブル86上にはθ軸モータ96が設置される。
【0032】
θ軸モータ96の出力軸にはZ軸に平行なθ軸(回転軸θ)を軸心とするθ軸シャフト98が連結されており、このθ軸シャフト98の上端部に吸着テーブル(保持台)10が水平に連結される。ウェーハWは、吸着テーブル10上に載置されて、真空吸着によって保持される。
【0033】
ウェーハ送りユニット50Aにおいて、吸着テーブル10は、Y軸モータ64を駆動することにより図中Y軸方向に水平移動し、X軸モータを駆動することにより図中X軸方向に水平移動する。そして、Z軸モータ94を駆動することにより図中Z軸方向に垂直移動し、θ軸モータ96を駆動することによりθ軸回りに回転する。
【0034】
研削ユニット50Bのベースプレート51上には架台102が設置される。架台102上には外周モータ104が設置されており、この外周モータ104の出力軸にはZ軸に平行な回転軸CHを軸心とするスピンドル106が連結される。ウェーハWの外周部を面取り加工する砥石ホイール108は、スピンドル106に着脱可能に装着され、外周モータ104を駆動することにより回転する。砥石ホイール108にウェーハWが接触する加工点に向けてクーラント(研削液)を吐出するノズル121が設けられる。
【0035】
以上のごとく構成された面取り装置50において、ウェーハWは次のように面取り加工される。面取り加工の実施前の準備工程として、面取り加工するウェーハWを吸着テーブル10上に載置して吸着保持する。そして、外周モータ104とθ軸モータ96とを駆動して、砥石ホイール108と吸着テーブル10とを共に同方向に高速回転させる。例えば、砥石ホイール108の回転速度を3000rpmとし、吸着テーブル10の回転速度を、ウェーハWの外周速度が5mm/secとなる速さとする。
【0036】
また、Z軸モータ94を駆動して吸着テーブル10の高さを調整してウェーハWの高さを砥石ホイール108の高さに対応させる。さらに、X軸モータを駆動して、ウェーハWの回転軸となるθ軸(回転軸θ)と、砥石ホイール108の回転軸CHとのX軸方向の位置を一致させる。
【0037】
次に、面取り加工の実施工程として、Y軸モータ64を駆動して、ウェーハWを砥石ホイール108に向けて送る。そして、ウェーハWの外周部が砥石ホイール108に当接する直前で減速し、その後、低速でウェーハWを砥石ホイール108に向けて送る。
【0038】
これにより、ウェーハWの外周部が砥石ホイール108に摺接し、次に説明するように、微小量ずつ研削されて面取り加工される。また、ノズル121から加工点に向けてクーラントを吐出し、加工点の冷却と共に、研削屑や砥石の磨耗粉(破砕・脱落した砥粒)の排出が行われる。
【0039】
そして、ウェーハWの外周部が研削溝の最深部に到達して所定時間が経過すると面取り加工を終了し、ウェーハWを砥石ホイール108から離間する方向に移動させてウェーハWを回収する位置に移動させる。面取り加工及び形状加工は、CBNやSDダイヤ砥石でウェーハの外周部を加工する。
【0040】
図3は、面取り加工を終了した時点でウェーハWの形状を示す断面図である。図8は、バックグラインディング工程とウェーハWの形状を示す断面図である。ウェーハWのエッジ部分の断面形状は面取りされて、面取り部W-1は、ややRの付いた形状であるとなっている。
【0041】
ウェーハWを吸着テーブル10上に載置し、ウェーハWを保持した状態でバックグラインディング砥石21によって裏面側を図8の点線で示すように研削して薄化するバックグラインディングを行う。このままだとエッジ部分W-10が面取り角度によるシャープな形状となる。そして、機械的強度が非常に弱くなり、エッジチッピングが生じる。また、研削水の影響や加工条件になどによりエッジ部分がばたつき、チッピングが発生しウェーハ破損の原因となる。
【0042】
バックグラインディングにおいて、研削条件に関しては粗研削、仕上げ研削共に、バックグラインディング砥石21の送り込み速度を最終仕上げ厚み付近で低速化することで低負荷研削することが、エッジチッピングの低減には良い。さらに、バックグラインディングの加工前に予めウェーハWの外周エッジ部に溝入れを行っておくエッジトリミングが有効である。
【0043】
ただし、単純に薄化後のウェーハWの目的厚さTに相当する深さで溝入れするだけでは、最終仕上げ厚み付近でのチッピング、ウェーハWをカセットに収納するときの外形部における擦り傷等の搬送ダメージ、研磨テープを使用したエッジを研磨するときのダメージを低減することは困難である。
【0044】
エッジトリミングにおいて、図3の斜線部をトリミング砥石20でバックグラインディング前に加工してウェーハW端面をエッジトリミングしてダメージを除去する。トリミング砥石20は、ビトリファイド砥石、3000番以上レジン砥石等が適している。エッジトリミングの後、研削されたウェーハWにある微少な凹凸を研磨し、表面の性能に影響が出ないように鏡面仕上げを行う。
【0045】
図4は、トリミング砥石20による切り込みを示す断面図である。図3の斜線部である面取り部W-1の上部は、ウェーハWの上面から目的厚さTに相当する50~150μm除去され、Y方向で水平に平滑化される。次にZ方向に揺動して切り込み方向に対して垂直面である立ち上がり部W-2を鏡面加工してクラックの侵入を防ぐ。
【0046】
これにより、加工性を良くしてキャビテーション効果を促進して、クーラントが入りにくい、スラッジが排出され難い、による加工点での目詰まりを防止できる。したがって、研削面の洗浄、研削屑の排出を促進し、研削砥粒の突出し量を安定的に確保されて加工品質が向上する。
【0047】
図5は、ウェーハWの外周部の詳細な形状を示す断面図である。Lは、搬送ダメージ、研磨テープによるダメージを避けるために必要な取り代長さであり、ウェーハWの外周から内周に向かって除去される。Lの値を適正にしなければ面取り加工後の工程におけるダメージを低減して品質を向上することが困難となる。
【0048】
搬送カセット(図示せず)の内面は、通常、ウェーハWの外周部に対して所定の角度で接触するようになっている。φは、搬送カセット等の保持具又はその後の研磨工程における研磨テープとの接触角に略等しくなるように面取りした角度である。φは、ウェーハWのエッジの角部W-3が搬送カセット等の保持具の内面又は研磨テープと点接触とならないようにするため必要である。
【0049】
図6は、ウェーハWと研磨テープ31との接触の状態を示した側面図である。加工すべき取り代長さLは、T/tanφ以下であると、使用するウェーハWの角部W-3が搬送カセットの内面、研磨テープ31と点接触となってぶつかって、角部W-3にチッピングを生じる恐れが高まる。研磨テープ31は、送りボビン34からガイドローラ38、39によってガイドされ送り出される。そして、研磨テープ31は、ウェーハWの外周部に当接してガイドローラ36、37を介して巻き取りボビン35に巻き取られる。
【0050】
ウェーハWの最外周部W-4は研磨テープ31によって十分な鏡面仕上げがされる必要があり、微少な凹凸を研磨によって、やや丸味を持った形状に仕上げる。したがって、αを余裕代(0.1~0.5mmが好ましい)として、
L=T/tanφ+αとなる形状に加工する。
Tは、使用するウェーハWの目的厚さ、φは搬送カセット等の保持具、又は研磨テープとの接触角と略等しくされた面取り角度として、バックグラインディング前に加工することで、ウェーハW端面に生じうるダメージを回避することができる。
【0051】
図7は研磨装置の構成を示す図である。研磨装置は、ウェーハWを保持するウェーハステージ3と、ウェーハステージ3を平行な方向に移動させるウェーハステージ移動機構4と、ウェーハWのエッジ部を研磨する研磨テープ部としてのエッジ研磨ユニット5と、エッジ研磨ユニット5をウェーハステージ3に保持されたウェーハWのエッジ部に対して移動させる研磨移動機構6と、備えている。
【0052】
ウェーハステージ移動機構4は、円筒部材30を回転自在に支持する軸台11と、軸台11と一体に移動可能な可動部12と、ウェーハステージ3を基台13にて移動可能に支持する支持台14と、を備えている。なお、可動部12は、矢印Yで示す方向に移動可能となっている。また、円筒部材30は、β軸を回転軸として回転可能に構成される。
【0053】
エッジ研磨ユニット5は、研磨テープ(帯状研磨部材)31をウェーハWのエッジ部に当接させ押圧するエッジ当接部としての研磨ヘッド部32と、研磨テープ31を研磨ヘッド部32に送る研磨テープ送り機構33とを備えている。
【0054】
研磨テープ送り機構33は、研磨テープ31を研磨ヘッド部32に送るテープ送り出し部としての送りボビン34と、研磨ヘッド部32に繰り出された研磨テープ31を巻き取るテープ巻き取り部としての巻き取りボビン35と、巻き取りボビン35を回転させる回転機構(不図示)と、を備えている。なお、研磨テープ31としては、研磨面となるその片面に研磨粒子の砥粒をベースフィルムに塗布した研磨テープを用いる。
【0055】
研磨移動機構6は、研磨ヘッド部32及び研磨テープ送り機構33からなるエッジ研磨ユニット5を保持する円筒部材40を有する軸台41と、軸台41と一体に移動可能な可動部42と、可動部42を支持する軸台43と、軸台43と一体に移動可能な可動部44と、を備えている。
【0056】
以上のように、バックグラインディングの加工前に予めウェーハWの外周エッジ部に単に、目的厚さTに相当する深さで溝入れするだけではなく、ウェーハWをカセットに収納するときの外形部における擦り傷等の搬送ダメージ、あるいは研磨テープを使用したエッジを研磨するときのダメージを考慮して最適なエッジトリミングを行う。これにより、バックグラインディング時のダメージ、最終仕上げ厚み付近でのチッピングを効果的に防ぐことができる。
【0057】
なお、エッジトリミングする際に、トリミング砥石20をZ方向に揺動することで、Z方向へ砥粒を振動させ、元々の切削能力と砥粒の振動加速運動が追加され、研削性能が向上する。これにより、Z方向への低ダメージ加工とすることができる。また、切り込み方向に対して平行面となる側に砥粒のキャビテーションを促進し、垂直面となる立ち上がり部W-2の表面にはダメージが発生しない。そして、砥粒への潤滑不良と加工負荷が分散されることにより、砥石の形状維持性能が向上し、ワーク品質の安定化、砥石ライフの向上を図ることができる。
【符号の説明】
【0058】
W…ウェーハ、W-1…面取り部、W-2…立ち上がり部、W-3…角部、W-4…最外周部、W-10…エッジ部分、φ…面取り角度、L…取り代長さ、T…目的厚さ、α…余裕代、3…ウェーハステージ、4…ウェーハステージ移動機構、5…エッジ研磨ユニット、6…研磨移動機構、10…吸着テーブル、11、41、43…軸台、12、42、44…可動部、13…基台、14…支持台、20…トリミング砥石、21…バックグラインディング砥石、30…円筒部材、31…研磨テープ、32…研磨ヘッド部、33…研磨テープ送り機構、34…送りボビン、35…巻き取りボビン、36、37、38、39…ガイドローラ、40…円筒部材、50…面取り装置、50A…ウェーハ送りユニット、50B…研削ユニット、51…ベースプレート、52…Y軸ガイドレール、54…Y軸リニアガイド、56…Y軸テーブル、58、72、88…ナット部材、60…Y軸ボールネジ、62…軸受部材、64…Y軸モータ、66…X軸ガイドレール、68…X軸リニアガイド、70…X軸テーブル、74…X軸ボールネジ、76、92…軸受部材、80…Z軸ベース、82…Z軸ガイドレール、84…Z軸リニアガイド、86…Z軸テーブル、90…Z軸ボールネジ、94…Z軸モータ、96…θ軸モータ、98…θ軸シャフト、102…架台、104…外周モータ、106…スピンドル、108…砥石ホイール、121…ノズル
図1
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