(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】アロファネート基含有ポリイソシアネート組成物、ポリウレタン樹脂形成性組成物、シール材、膜モジュール
(51)【国際特許分類】
C08G 18/61 20060101AFI20240116BHJP
C08G 18/09 20060101ALI20240116BHJP
C08G 18/76 20060101ALI20240116BHJP
C08G 18/28 20060101ALI20240116BHJP
C09K 3/10 20060101ALI20240116BHJP
B01D 63/00 20060101ALI20240116BHJP
B01D 63/02 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
C08G18/61
C08G18/09
C08G18/76 057
C08G18/28 015
C09K3/10 D
B01D63/00 500
B01D63/02
(21)【出願番号】P 2019136507
(22)【出願日】2019-07-24
【審査請求日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】P 2018139332
(32)【優先日】2018-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】池本 満成
【審査官】佐藤 のぞみ
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/023358(WO,A1)
【文献】特開2018-095875(JP,A)
【文献】特開2017-12380(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00-18/87
C09K 3/10
B01D 63/00-63/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジフェニルメタンジイソシアネート(A)と、水酸基含有化合物(B)と、の反応生成物を含み、
該反応生成物は、アロファネート基を含み、
前記水酸基含有化合物(B)が、水酸基含有ポリメチルシロキサン化合物(B-1)と、分子量2000以下のモノオール化合物(B-2)と、を含み、
該水酸基含有ポリメチルシロキサン化合物(B-1)の含有量が、前記ジフェニルメタンジイソシアネート(A)と、前記水酸基含有化合物(B)との合計量に対し、1ppm以上100ppm以下であることを特徴とするアロファネート基含有ポリイソシアネート組成物(C)。
【請求項2】
前記水酸基含有ポリメチルシロキサン化合物(B-1)の含有量が、前記ジフェニルメタンジイソシアネート(A)と、前記水酸基含有化合物(B)との合計量に対し、10ppm以上50ppm以下であることを特徴とする請求項1に記載のアロファネート基含有ポリイソシアネート組成物(C)。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のアロファネート基含有ポリイソシアネート組成物(C)と、ポリオール成分(D)と、を含むポリウレタン樹脂形成性組成物。
【請求項4】
請求項3に記載のポリウレタン樹脂形成性組成物の硬化物を含むシール材。
【請求項5】
本体部と、
膜と、
前記本体部と、前記膜と、の間隙を封止するシール材と、を備え、
前記シール材が、
請求項4に記載のシール材である、膜モジュール。
【請求項6】
前記膜が、複数本の中空糸膜であり、
前記シール材は、
前記本体部と、前記複数本の中空糸膜の少なくとも一部と、の間隙、および、
前記複数本の中空糸膜相互の間隙の少なくとも一部を封止する請求項5に記載の膜モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アロファネート基含有ポリイソシアネート組成物、ポリウレタン樹脂形成性組成物、シール材、膜モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
中空糸もしくは平膜を分離膜とした膜モジュールは、水処理等の産業分野、血液処理等の医療分野など多岐にわたって用いられている。特に、浄水器、人工腎臓、人工肺等の用途にあっては、その需要が極めて増大している。
一般に、中空状もしくは平膜状繊維分離膜を用いた膜モジュールの端部を接着固定する膜シール材として、常温での可撓性、接着性、及び耐薬品性に優れるポリウレタン樹脂が広く用いられている。このような用途に用いられるポリウレタン樹脂に対して、膜モジュールの生産性を向上させるために、ポリイソシアネートやポリオールの低粘度化の要求が高まっている。
【0003】
また、特許文献1は、MDI(ジフェニルメタンジイソシアネート)と、モノオールと、から誘導されるアロファネート基含有ポリイソシアネートを開示している。特許文献1にかかるアロファネート基含有ポリイソシアネートは、低粘度であり、低温時におけるMDIの析出が少なく、取り扱いが容易であることから、接着剤やシール材の分野において有用であり、広く応用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、MDIとモノオールとから誘導されるアロファネート基含有ポリイソシアネートを用いたポリウレタン樹脂形成性組成物では、脱泡性が悪いため、硬化したポリウレタン樹脂中に気泡が残りやすいという問題があった。
本開示の一実施形態は、気泡の少ないポリウレタン樹脂の形成に資するアロファネート基含有ポリイソシアネート組成物、ポリウレタン樹脂形成性組成物を提供することに向けられている。また、本開示の他の実施形態は、該ポリウレタン樹脂形成性組成物の硬化物を含むシール剤、該シール材で封止されてなる膜モジュールを提供することに向けられている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施形態にかかるアロファネート基含有ポリイソシアネート組成物(C)は、ジフェニルメタンジイソシアネート(A)と、水酸基含有化合物(B)と、の反応生成物を含み、
該反応生成物は、アロファネート基を含み、
前記水酸基含有化合物(B)が、水酸基含有ポリメチルシロキサン化合物(B-1)を含み、
該水酸基含有ポリメチルシロキサン化合物(B-1)の含有量が、前記ジフェニルメタンジイソシアネート(A)と、前記水酸基含有化合物(B)との合計量に対し、1ppm以上300ppm以下である。
本開示の他の実施形態にかかるポリウレタン樹脂形成性組成物は、上記アロファネート基含有ポリイソシアネート組成物(C)と、ポリオール成分(D)と、を含む。
本開示の他の実施形態にかかるシール材は、上記ポリウレタン樹脂形成性組成物の硬化物を含む。
本開示の他の実施形態にかかる膜モジュールは、上記シール材により封止されている。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一実施形態によれば、気泡の少ないポリウレタン樹脂の形成に資するアロファネート基含有ポリイソシアネート組成物、ポリウレタン樹脂形成性組成物を提供することができる。また、本開示の他の実施形態によれば、該ポリウレタン樹脂形成性組成物の硬化物を含むシール剤、該シール材で封止されてなる膜モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の一実施形態にかかる中空糸膜モジュールの構成の一例を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、MDI(ジフェニルメタンジイソシアネート)のアロファネート基含有ポリイソシアネート組成物に、水酸基含有ポリメチルシロキサン化合物を含有させることにより上記課題を解決できることを見出した。
以下、本開示を実施するための例示的な実施形態を詳細に説明する。
【0010】
[第1の実施形態(アロファネート基含有ポリイソシアネート組成物)]
本開示の一実施形態にかかるアロファネート基含有ポリイソシアネート組成物は、ジフェニルメタンジイソシアネート(A)と、水酸基含有化合物(B)と、の反応生成物を含み、
該反応生成物は、アロファネート基を含み、
前記水酸基含有化合物(B)が、水酸基含有ポリメチルシロキサン化合物(B-1)を含み、
該水酸基含有ポリメチルシロキサン化合物(B-1)の含有量が、前記ジフェニルメタンジイソシアネート(A)と、前記水酸基含有化合物(B)との合計量に対し、1ppm以上300ppm以下である。
【0011】
<ジフェニルメタンジイソシアネート(A)>
MDI(A)には、一般に入手できるいずれのMDIモノマーも使用できる。そのMDIモノマーのアイソマーは、通常2,2’-MDIが0質量%以上5質量%以下、2,4’-MDIが0質量%以上95質量%以下、4,4’-MDIが5質量%以上100質量%以下である。
【0012】
MDI(A)としては、より低粘度のアロファネート基含有ポリイソシアネートを得るために、前述のMDIを用いることが好ましいが、ある程度の高粘度化も許容されるならば、ポリメリックMDIである、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネートも使用できる。その場合のポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネートの含有量は、使用するイソシアネート成分中0質量%以上50質量%以下が好ましい。ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネートの含有量が50質量%以下であれば粘度がより低く抑えられ、また不溶解物の生成をさらに抑制できる。
【0013】
<水酸基含有化合物(B)>
水酸基含有化合物(B)は、水酸基含有ポリメチルシロキサン化合物(B-1)を含む。
水酸基含有ポリメチルシロキサン化合物(B-1)の含有量は、MDI(A)と、水酸基含有化合物(B)との合計量に対し、1ppm以上300ppm以下である。水酸基含有ポリメチルシロキサン化合物(B-1)の含有量が1ppm未満であると気泡低減の効果が充分に得られず、300ppmを超えるとシロキサン化合物(B-1)が分離しアロファネート基含有ポリイソシアネート組成物(C)が白濁するため好ましくない。
水酸基含有ポリメチルシロキサン化合物(B-1)の含有量が1ppm以上200ppm以下であることが好ましく、1ppm以上100ppm以下であることがより好ましい。
【0014】
<<水酸基含有ポリメチルシロキサン化合物(B-1)>>
水酸基含有ポリメチルシロキサン化合物(B-1)としては、例えば式(1)または式(2)で表される化合物、およびこれらの混合物が挙げられる:
【0015】
【0016】
式中、
Rは炭素数1~9の炭化水素基であり、
nは10~200の整数であり、
aは、各々独立に、3~9の整数であり、
bは、各々独立に、0~9の整数である。
【0017】
<<他の水酸基含有化合物>>
水酸基含有ポリメチルシロキサン化合物(B-1)以外の水酸基含有化合物(B)としては、例えば分子量2000以下のモノオール化合物(B-2)、ポリオール化合物(B-3)が使用できる。
水酸基含有化合物(B)が、水酸基含有ポリメチルシロキサン化合物(B-1)に加えてさらに分子量2000以下のモノオール化合物(B-2)を含むと、アロファネート基含有ポリイソシアネート組成物(C)をより低粘度化させることができるため好ましい。
【0018】
<<モノオール化合物(B-2)>>
分子量2000以下のモノオール化合物(B-2)としては、脂肪族モノアルコール(B-21)、芳香族モノアルコール(B-22)、脂環族モノアルコール(B-23)、芳香脂肪族モノアルコール(B-24)、ポリオキシプロピレングリコールモノアルキルエーテル(B-25)およびヒマシ油脂肪酸のアルキルエステル(B-26)等が挙げられる。
【0019】
<<<脂肪族モノアルコール(B-21)>>>
脂肪族モノアルコール(B-21)としては、例えば、メタノール、エタノール、1-及び2-プロパノール、1-及び2-ブタノール、1-ペンタノール、1-ヘキサノール、2-メチル-1-ペンタノール、4-メチル-2-ペンタノール、2-エチル-1-ブタノール、1-ヘプタノール、1-オクタノール、2-オクタノール、2-エチルヘキサノール、3,5-ジメチル-1-ヘキサノール、2,2,4-トリメチル-1-ペンタノール、1-ノナノール、2,6-ジメチル-4-ヘプタノール、1-デカノール、1-ウンデカノール、1-ドデカノール、1-トリデカノール、1-テトラデカノール、1-ペンタデカノール、1-ヘキサデカノール、1-ヘプタデカノール、1-オクタデカノール、1-ノナデカノール、1-エイコサノール、1-ヘキサコサノール、1-ヘプタトリコンタノール、1-オレイルアルコール、2-オクチルドデカノール等の脂肪族モノアルコール、及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0020】
<<<芳香族モノアルコール(B-22)>>>
芳香族モノアルコール(B-22)としては、例えば、フェノール、クレゾール等が挙げられる。
【0021】
<<<脂環族モノアルコール(B-23)>>>
脂環族モノアルコール(B-23)としては、例えば、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール等が挙げられる。
【0022】
<<<芳香脂肪族モノアルコール(B-24)>>>
芳香脂肪族モノアルコール(B-24)としては、例えば、ベンジルアルコール等が挙げられる。
【0023】
<<<ポリオキシプロピレングリコールモノアルキルエーテル(B-25)>>>
ポリオキシプロピレングリコールモノアルキルエーテル(B-25)としては、例えば前記した脂肪族モノアルコール(B-21)とポリオキシプロピレングリコールとの反応物が挙げられ、ポリオキシプロピレンメチルエーテル、ポリオキシプロピレンエチルエーテル、ポリオキシプロピレンブチルエーテル、ポリオキシプロピレン-2-エチルヘキシルエーテル、ポリオキシプロピレンオレイルエーテル、ポリオキシプロピレン-2-オクチルドデカエーテル及びこれらの混合物等が挙げられる。
ポリオキシプロピレングリコールモノアルキルエーテルの分子量は、ポリウレタン樹脂の成型加工性、接着強度に優れるとの観点から、90以上2000以下であることが好ましく、分子量は150以上1000以下であることがより好ましい。
【0024】
<<<ヒマシ油脂肪酸のアルキルエステル(B-26)>>>
ヒマシ油脂肪酸のアルキルエステル(B-26)としては、ヒマシ油と前述の脂肪族モノアルコール(B-21)とのエステル化物が挙げられる。
【0025】
<<ポリオール化合物(B-3)>>
ポリオール化合物(B-3)としては、ポリエーテルポリオール(B-31)、ヒマシ油系ポリオール(B-32)、ポリエステルポリオール(B-33)及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0026】
<<<ポリエーテルポリオール(B-31)>>>
ポリエーテルポリオール(B-31)としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、スクロース、水添ビスフェノールA等の炭素数2~24のポリオール;及びこれらのポリオールの1種又は2種以上の混合物を出発物質としたアルキレンオキシド付加物;等が挙げられる。
【0027】
<<<ヒマシ油系ポリオール(B-32)>>>
ヒマシ油系ポリオール(B-32)としては、例えばヒマシ油、部分脱水ヒマシ油、部分アシル化ヒマシ油、ヒマシ油と前記ポリエーテルポリオール(B-31)とのエステル交換物、ヒマシ油とヒマシ油以外の動植物油とのエステル交換物、及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0028】
<<<ポリエステルポリオール(B-33)>>>
ポリエステルポリオール(B-33)としては、例えばシュウ酸、アジピン酸、アゼライン酸、ドデカン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、二量化リノール酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、1,3-ペンタンジカルボン酸、1,4-ヘキサンジカルボン酸等の多塩基酸及びこれらの混合物から選択される1種以上と、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、シュークローズ、水添ビスフェノールA等のポリオール、及びこれらの混合物から選択される1種以上と、の脱水縮合物等が挙げられる。
【0029】
<<アロファネート化触媒>>
アロファネート化触媒としては、例えば、アセチルアセトン亜鉛;亜鉛、鉛、錫、銅、コバルト等の金属カルボン酸塩;3級アミン;3級アミノアルコール;4級アンモニウム塩;およびこれらの混合物;等が挙げられる。
アロファネート化触媒の添加量としては、アロファネート基含有ポリイソシアネート組成物(C)の全量に対して、1ppm以上1000ppm以下の範囲が好ましく、10ppm以上500ppm以下の範囲がより好ましい。1ppm以上であれば反応が迅速に進み、1000ppm以下であればプレポリマーの着色をさらに抑制できるため好ましい。
【0030】
<<触媒毒>>
アロファネート化反応触媒を不活性化する場合の触媒毒としては、酸性物質が適当であり、例えば、無水塩化水素、硫酸、燐酸、モノアルキル硫酸エステル、アルキルスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、モノ又はジアルキル燐酸エステル、塩化ベンゾイル、ルイス酸が挙げられる。その添加量は、アロファネート化触媒のモル数に対し当量以上加えることが好ましく、1.0倍モル当量以上1.5倍モル当量以下加えることが好ましい。
【0031】
<<アロファネート基含有ポリイソシアネート組成物(C)のイソシアネート基含有量>>
アロファネート基含有ポリイソシアネート組成物(C)のイソシアネート基含有量は、ポリウレタン樹脂の成型加工性、接着強度に優れるとの観点から、3質量%以上30質量%以下が好ましく、5質量%以上28質量%以下がより好ましく、10質量%以上26質量%以下であることが特に好ましい。
【0032】
<<アロファネート基含有ポリイソシアネート組成物(C)の粘度(25℃)>>
アロファネート基含有ポリイソシアネート組成物(C)の25℃における粘度は、ポリウレタン樹脂の成型加工性に優れるとの観点から、50mPa・s以上10000mPa・s以下が好ましく、100mPa・s以上5000mPa・s以下がより好ましく、200mPa・s以上3000mPa・s以下であることが特に好ましい。
【0033】
[第2の実施形態(ポリウレタン樹脂形成性組成物)]
本開示の一実施形態にかかるポリウレタン樹脂形成性組成物は、上記アロファネート基含有ポリイソシアネート組成物と、ポリオール成分(D)と、を含む
【0034】
<ポリオール成分(D)>
アロファネート基含有ポリイソシアネート組成物(C)と反応し、ポリウレタン樹脂形成性組成物を形成するポリオール成分(D)としては、特に限定されるものではなく、活性水素基を含有する化合物であればいずれも使用することができる。例えば、低分子ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリラクトン系ポリオール、ヒマシ油系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオールや、水酸基含有アミン系化合物等が挙げられる。これらは、単独でまたは2種類以上組み合わせて使用することができる。これらの中でもヒマシ油系ポリオールが、耐薬品性、耐溶出物性に優れるため好ましい。
【0035】
<<低分子ポリオール>>
低分子ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,2-、1,3-又は1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサングリコール、1,8-オクタンジオール、1,10-デカンジオ-ル、ネオペンチルグリコール、水添ビスフェノールA等の2価の低分子ポリオール;グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の3価以上の低分子ポリオール;等が挙げられる。低分子ポリオールの分子量は50以上200以下が好ましい。
【0036】
<<ポリエーテル系ポリオール>>
ポリエーテル系ポリオールとしては、上記低分子ポリオールのアルキレンオキシド(炭素数2~4個のアルキレンオキサイド、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等)付加物、およびアルキレンオキサイドの開環重合物等が挙げられる。具体的にはポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの共重合物であるチップドエーテル等が挙げられる。ポリエーテル系ポリオールの数平均分子量は、シール材製造時において成型加工性に優れるとの観点から200以上7000以下が好ましく、500以上5000以下であることが更に好ましい。
【0037】
<<ポリエステル系ポリオール>>
ポリエステル系ポリオールとしては、例えばポリカルボン酸とポリオールとの縮合重合により得られるポリオール等が挙げられる。ポリエステル系ポリオールの数平均分子量は、シール材の製造時において成型加工性に優れるとの観点から、200以上5000以下が好ましく、500以上3000以下であることがより好ましい。ポリカルボン酸としては、脂肪族飽和もしくは不飽和ポリカルボン酸、例えば、アゼライン酸、ドデカン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、リシノール酸、2量化リノール酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族ポリカルボン酸;等が挙げられる。ポリオールとしては、上記低分子ポリオールと、上記ポリエーテル系ポリオールと、からなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
【0038】
<<ポリラクトン系ポリオール>>
ポリラクトン系ポリオールとしては、グリコール類やトリオール類等の重合開始剤に、ε-カプロラクトン、α-メチル-ε-カプロラクトン、ε-メチル-ε-カプロラクトン等と、β-メチル-σ-バレロラクトン等からなる群より選ばれる少なくとも1種を、触媒の存在下で付加重合させたポリオール等が挙げられる。触媒としては、有機金属化合物、金属キレート化合物、脂肪酸金属アシル化合物などが挙げられる。ポリラクトン系ポリオールの数平均分子量は、シール材の製造時において成型加工性に優れるとの観点から200以上5000以下が好ましく、500以上3000以下であることがより好ましい。
【0039】
<<ヒマシ油系ポリオール>>
ヒマシ油系ポリオールとしては、ヒマシ油脂肪酸とポリオール(上記低分子ポリオールとポリエーテル系ポリオールからなる群より選ばれる少なくとも1種)との反応により得られる線状または分岐状ポリエステルが挙げられる。線状または分岐状ポリエステルとしては、例えば、ヒマシ油脂肪酸のジグリセライド、モノグリセライド、ヒマシ油脂肪酸とトリメチロールアルカンとのモノ、ジまたはトリエステル、ヒマシ油脂肪酸とポリプロピレングリコールとのモノ、ジ、またはトリエステル等が挙げられる。ヒマシ油系ポリオールの数平均分子量は、シール材製造時において成型加工性に優れるとの観点から300以上4000以下が好ましく、数平均分子量は500以上3000以下であることがより好ましい。
【0040】
<<ポリオレフィン系ポリオール>>
ポリオレフィン系ポリオールとしては、例えばポリブタジエンもしくはブタジエンとスチレンあるいはアクリロニトリルとの共重合体の末端に水酸基を導入したポリブタジエン系ポリオール等が挙げられる。
その他、末端にカルボキシル基と水酸基とからなる群より選ばれる少なくとも1種を有するポリエステルに、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキシドを付加反応させて得られるポリエーテルエステル系ポリオール等が挙げられる。
【0041】
<<水酸基含有アミン系化合物>>
水酸基含有アミン系化合物としては、例えば、アミノ化合物にアルキレンオキサイドを付加させた、アミノアルコール等を挙げることができる。
アミノアルコールとしては、例えば、エチレンジアミン等のアミノ化合物のプロピレンオキサイドもしくはエチレンオキサイド付加物である、N,N,N’,N’-テトラキス[2-ヒドロキシプロピル]エチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラキス[2-ヒドロキシエチル]エチレンジアミン、モノ、ジおよびトリエタノールアミン、N-メチル-N,N-ジエタノールアミン、N-エチル-N,N-ジエタノールアミン、N-プロピル-N,N-ジエタノールアミン、N-ブチル-N,N-ジエタノールアミン、N-ヘキシル-N,N-ジエタノールアミン、N-シクロヘキシル-N,N-ジエタノールアミン、N-ラウリル-N,N-ジエタノールアミン、N-エタノール-N,N-ジ[2-ヒドロキシプロパノール]アミンおよびこれらの混合物を挙げることができる。
【0042】
これらのなかで、ポリウレタン樹脂の耐熱性を向上させたい場合は、N,N,N’,N’-テトラキス[2-ヒドロキシプロピル]エチレンジアミンやN,N,N’,N’-テトラキス[2-ヒドロキシエチル]エチレンジアミンが効果的である。
また、これらのなかで、ポリオール(D)の粘度を低減させたい場合は、N-ラウリル-N,N-ジエタノールアミンやN-エタノール-N,N-ジ[2-ヒドロキシプロパノール]アミンが好ましい。
【0043】
該水酸基含有アミン系化合物を使用する場合の配合量は、ポリオール成分(D)中に1質量%以上50質量%以下の範囲が好ましく、5質量%以上40質量%以下の範囲が特に好ましい。ポリオール成分(D)中の割合が1質量%以上であると、水酸基含有アミン系化合物の触媒効果が良好に得られ、50質量%以下であると反応性が適度に抑制されるため、作業性がさらに良好となりモジュールへの充填性にさらに優れる。
【0044】
ポリウレタン樹脂形成性組成物としては、アロファネート基含有ポリイソシアネート組成物(C)のイソシアネート基と、ポリオール成分(D)の活性水素基と、のモル比(イソシアネート基/活性水素基)が0.8以上1.6以下の範囲内であることが好ましく、0.9以上1.2以下の範囲内が特に好ましい。このような混合割合で得られるポリウレタン樹脂形成性組成物によれば、耐久性に優れ、水、血液等の液体中へのポリウレタン樹脂からの溶出物の量がきわめて少ないポリウレタン樹脂形成性組成物が得られる。
【0045】
なお、必要に応じて、アロファネート基含有ポリイソシアネート組成物(C)のイソシアネート基とポリオール成分(D)の活性水素基との反応を促進させる有機スズ化合物などの金属化合物系触媒;トリエチレンジアミン(TEDA)、テトラメチルヘキサメチレンジアミン(TMHMDA)、ペンタメチルエチレントリアミン(PMDETA)、ジメチルシクロヘキシルアミン(DMCHA)、ビスジメチルアミノエチルエーテル(BDMAEA)等の3級アミン触媒;等の公知のウレタン化触媒を使用することができる。
【0046】
[第3の実施形態(シール材)]
本開示の一実施形態にかかるシール材は、上記ポリウレタン樹脂形成性組成物の硬化物を含む。このとき、シール材は、当該シール材の一方の側から他方の側を目視可能な程度に透明であることが好ましい。特に医療用、工業用分離装置を構成する中空糸膜モジュール用のシール材においては、異物の混入を確認するために目視において濁りがないことが要求される。
【0047】
アロファネート基含有ポリイソシアネート組成物(C)は、ポリオール成分(D)と反応させることにより、ポリウレタン樹脂形成性組成物の硬化物となる。ポリウレタン樹脂形成性組成物の硬化物は、各種シール材として用いることができる。なかでも、得られたポリウレタン樹脂から溶出する抽出物が少ないことから、医療用、工業用分離装置を構成する膜モジュール用シール材として有用である。
【0048】
ポリウレタン樹脂形成性組成物を用いて中空或いは平膜状繊維分離膜を用いたモジュール用膜シール材を得る場合、該組成物を室温下で反応させるか、またはゲル化時間の短縮や混合粘度の低下させるため、アロファネート基含有ポリイソシアネート組成物(C)とポリオール成分(D)とを各々30~60℃に加温して反応させてもよい。
【0049】
[第4の実施形態(膜モジュール)]
本開示の一実施形態にかかる膜モジュールは、
本体部と、
膜と、
前記本体部と、前記膜と、の間隙を封止するシール材と、を備え、
前記シール材が、上述したシール材である。
【0050】
次いで、本開示の一実施形態にかかる膜モジュールについて図面を参照しながらさらに詳細に説明する。
図1は本開示の一実施形態にかかる膜モジュールの構成の一例を示す概念図である。
図1に示す膜モジュール(中空糸膜モジュール)100は、ハウジング(本体部)11を備え、その内部に複数の中空糸膜(膜)13が充填されている。例えば、透析器として用いられる中空糸膜モジュールの場合、数千~数万本の中空糸膜が充填されている。
【0051】
また、ハウジング11の側面には第1の流体入口15および第1の流体出口17が設けられており、これらを介してハウジング11内には第1の流体(気体または液体)が流出入する。第1の流体入口15から流入した第1の流体は、ハウジング11内に充填された複数の中空糸膜13と接触しながらその間隙(中空糸膜外部)を通過し、第1の流体出口17から排出される。なお、中空糸膜13内部にはシール材19が存在していないため、中空糸膜13内には不図示のキャップ部材に設けられた第2の流入口(一端側)および第2の流出口(他端側)を介して第2の流体(気体または液体)が流出入する。そして、中空糸膜13を介して第1の流体と第2の流体とが接触することで、一方の流体中から他方の流体中への(あるいはさらに他方の流体中から一方への流体中への)物質移動が生じる。例えば、中空糸膜型の透析器の場合、透析液と血液とが接触することで、血液中の老廃物や過剰な水分が透析液に移動する。
【0052】
なお、
図1に示す膜モジュール100は、複数の中空糸膜13を備え、それらの両端においてシール材19が間隙を封止する構成であるが、本実施形態にかかる膜モジュールはかかる構成に何ら限定されるものではない。例えば、平膜、スパイラル膜等の種々の形状を有する、複数または単数の膜であってもよい。また、シール材は膜の両端に設けられた構成に限られるものではなく、膜の一部(中空糸状であれば一端)のみに設けられていてもよく、膜の端部すべて、例えば平膜の外縁部すべてに設けられていてもよい。さらに、シール材は、膜の端部以外の一部に設けられて封止する構成であってもよい。また、
図1に示す膜モジュール100のハウジング11は円筒状の形状を有するが、円筒状以外の任意の形状であってもよい。
【0053】
複数の中空糸膜13の集束体の端部における中空糸膜13相互の隙間を、上述したポリウレタン樹脂形成性組成物により封止し、当該組成物を硬化させて上述したシール材を形成する(当該シール材によって中空糸膜相互の間隙が封止される)ことで、膜モジュール100を作製することができる。
【0054】
本開示の一実施形態にかかる膜モジュールは、抽出物の発生が良好に抑制されるため、医療用、水処理用モジュールとして好適に使用することができる。膜モジュールとして具体的には、血漿分離装置、人工肺、人工腎臓、人工肝臓、家庭用・工業用水処理装置が挙げられる。
【実施例】
【0055】
以下、本発明について説明するが、本発明はこれらの実施例に限定して解釈されるものではない。なお、以下において「%」は特に断りのない限り「質量%」を意味する。
【0056】
以下の成分を実施例及び比較例で使用した。
[ジフェニルメタンジイソシアネート(A)]
A1;4,4’-MDI(東ソー社製、製品名 ミリオネートMT、イソシアネート基含有量=33.6%)
A2;2,4’-MDIおよび4,4’-MDIの混合物(東ソー社製、製品名 ミリオネートNM、イソシアネート基含有量=33.6%)
【0057】
[水酸基含有化合物(B)]
[シロキサン化合物(B-1)]
シロキサン化合物B11;両末端水酸基含有ポリジメチルシロキサン(信越化学工業社製、製品名 KF-6001、OHV=62mgKOH/g)
シロキサン化合物B12;片末端水酸基含有ポリジメチルシロキサン(信越化学工業社製、製品名 X-22-170BX、OHV=20mgKOH/g)
[モノオール(B-2)]
B21;トリデカノール(KHネオケム製)
B22;2-オクチルドデカノール(花王社製、製品名 カルコール200GD)
【0058】
[触媒]
触媒;アセチルアセトン亜鉛(東京化成工業社製)
[触媒毒]
触媒毒;塩化ベンゾイル(東京化成工業社製)
【0059】
[ポリオール成分(D)]
ヒマシ油(伊藤製油社製、製品名 ヒマシ油LAV、OHV=160mgKOH/g)
N,N,N’,N’-テトラキス[2-ヒドロキシプロピル]エチレンジアミン(ADEKA社製、製品名 EDP-300、水酸基価=760mgKOH/g)
【0060】
なお、以下において説明する合成例、実施例及び比較例において所定量とは、表1および表2に記載の各組成量をいう。
【0061】
[プレポリマー合成例1]
1リットル容の四口フラスコにMDI A1を所定量加え、窒素気流下攪拌しながら50℃に温調した。次いで攪拌しながらシロキサン化合物B11とモノオールB21を所定量加え、ウレタン化反応の発熱が収まった後に90℃まで昇温した。内温が90℃で安定したところで、触媒を所定量添加し90℃で4時間反応させた。しかる後に、触媒毒を加えて反応を停止させ、プレポリマーC-1を得た。プレポリマーC-1は黄色透明液体であった。その性状を表1に示す。
【0062】
[プレポリマー合成例2~4、プレポリマー比較合成例1~2]
A成分(A1,A2)、B-1成分(B11,B12)およびB-2成分(B21,B22)を表1に示す組成に変更し、プレポリマー合成例1と同様の操作でプレポリマーを合成した。その性状を表1に示す。
【0063】
さらに、プレポリマーC-1~C-6の外観を目視で評価し、濁りが確認できないものをクリア、わずかでも濁りの認められるものを濁りとした。結果を表1に示す。
【0064】
なお、25℃における粘度は、25℃雰囲気下で回転粘度計(B型、3号ローター)を用いて測定した。
【0065】
【0066】
[ポリオール調製例]
ヒマシ油75質量部、N,N,N’,N’-テトラキス[2-ヒドロキシプロピル]エチレンジアミン25質量部を混合し、ポリオール成分D-1(OHV=310mgKOH/g)を調製した。
【0067】
[実施例1~4、比較例1]
プレポリマーとポリオールとを表2に示す配合組成で混合し、以下に示す脱泡性評価方法により脱泡性を評価した。結果を表2に示す。
【0068】
<脱泡性評価方法>
1)25℃に温調したプレポリマーとポリオールとを、表2に示す割合で300mlのポリプロピレン製(PP)カップに量り取る。
2)回転機に取り付けたクローバー羽で500rpm、10秒間攪拌し、配合液を得る。
3)100mlのPPカップに配合液を20ml移す。
4)真空ポンプを取り付けた濾過鐘内に3)のPPカップをセットし、減圧を開始する。
5)減圧開始20秒で絶対圧70mmHgまで減圧する。
6)減圧開始60秒後の泡の高さを100mlのPPカップの容量で読み取る。
【0069】
脱泡性のよいものも配合液は一旦膨らむが、脱泡開始20~30秒程度で破泡して元の容量(20ml)付近まで戻る。脱泡性の悪いものは破泡することなく膨らんだままとなる。上記試験において、減圧開始60秒後の容量が20ml以上50ml以下であるプレポリマーは、即座に成型に供することができるため、脱泡性良好と判断できる。
【0070】
【符号の説明】
【0071】
11 ハウジング(本体部)
13 中空糸膜
15 第1の流体入口
17 第1の流体出口
19 シール材