(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】配線基板
(51)【国際特許分類】
H05K 1/18 20060101AFI20240116BHJP
【FI】
H05K1/18 J
(21)【出願番号】P 2019193804
(22)【出願日】2019-10-24
【審査請求日】2022-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】船田 直裕
【審査官】黒田 久美子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06541711(US,B1)
【文献】特開平08-242047(JP,A)
【文献】特開2002-223082(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コネクタ及び積層セラミックコンデンサが基板に実装され、
平面視において、前記コネクタに他のコネクタを挿抜する時に応力が生じる起点となる挿抜位置の中心点をA、前記積層セラミックコンデンサの電極の中心同士を結ぶ第1の線分の中心点をB、前記第1の線分と、前記Aと前記Bとを結ぶ第2の線分とのなす角を前記積層セラミックコンデンサの実装角度(但し、前記実装角度は、0度以上90度以下である)としたときに、
少なくとも前記コネクタの周囲10mm以内の範囲では、前記積層セラミックコンデンサは、実装角度が0度から5度の間、又は、85度から90度の間の範囲のみに配置され
、
前記コネクタは、平面視で、長手方向と短手方向を有する形状であり、
前記挿抜位置は、前記長手方向に対し、両端、又は両端と中心部、である配線基板。
【請求項2】
前記基板は樹脂基板である請求項
1に記載の配線基板。
【請求項3】
前記樹脂基板はガラスエポキシ基板又は紙フェノール基板である請求項
2に記載の配線基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
配線基板に実装される電子部品の1つとしてコンデンサがある。コンデンサには、例えば、セラミックコンデンサ、タンタルコンデンサ、アルミ電解コンデンサ等がある。1つの配線基板には通常複数のコンデンサが使用されるため、コンデンサの配置には、様々な工夫がなされている。
【0003】
例えば、配線基板に発生する歪みを抑えながら、配線基板の部品実装密度を高める目的で、配線基板の裏面を支える支持部材を配置する技術が開示されている。又、支持部材を配置して配線基板に発生する歪みを抑えることで、セラミックコンデンサの静電容量特性が変化することを防止できることが記載されている(例えば、特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の技術では、コネクタを挿す時の配線基板に発生する歪みによる部品故障は抑制できても、コネクタを抜く時の配線基板に発生する歪みによる部品故障は抑制できない。
【0005】
本発明は、コネクタの挿抜時に生じる応力でショート故障が発生し難いように積層セラミックコンデンサを配置した配線基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本配線基板は、コネクタ及び積層セラミックコンデンサが基板に実装され、平面視において、前記コネクタに他のコネクタを挿抜する時に応力が生じる起点となる挿抜位置の中心点をA、前記積層セラミックコンデンサの電極の中心同士を結ぶ第1の線分の中心点をB、前記第1の線分と、前記Aと前記Bとを結ぶ第2の線分とのなす角を前記積層セラミックコンデンサの実装角度(但し、前記実装角度は、0度以上90度以下である)としたときに、少なくとも前記コネクタの周囲10mm以内の範囲では、前記積層セラミックコンデンサは、実装角度が0度から5度の間、又は、85度から90度の間の範囲のみに配置され、前記コネクタは、平面視で、長手方向と短手方向を有する形状であり、前記挿抜位置は、前記長手方向に対し、両端、又は両端と中心部、である。
【発明の効果】
【0007】
開示の技術によれば、コネクタの挿抜時に生じる応力でショート故障が発生し難いように積層セラミックコンデンサを配置した配線基板を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態に係る配線基板を例示する平面図である。
【
図3】応力がかかる方向とクラックの発生し易さとの関係を説明する図である。
【
図5】コンデンサの実装角度について説明する図である。
【
図6】コンデンサの実装角度とクラックの発生し易さとの関係を説明する図(その1)である。
【
図7】コンデンサの実装角度とクラックの発生し易さとの関係を説明する図(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0010】
図1は、本実施形態に係る配線基板を例示する平面図である。
図1を参照すると、配線基板1は、基板10と、能動部品20と、受動部品30とを有している。
【0011】
能動部品20や受動部品30は、基板10の一方の側に実装されている。但し、基板10の他方の側にも、能動部品20や受動部品30を実装し、両面実装としてもよい。
【0012】
能動部品20や受動部品30の端子は、基板10に形成された部品実装用のランドに、はんだ等により接続されている。基板10には、能動部品20や受動部品30の端子の必要な部分同士を接続する配線パターンや、能動部品20に接続される電源配線(VDD配線)や接地配線(GND配線)が形成されている。
【0013】
基板10は、特に制限されないが、例えば、樹脂基板(ガラスエポキシ基板、紙フェノール基板等)、セラミック基板、シリコン基板等である。基板10は、片面に配線パターンが形成された片面基板、両面に配線パターンが形成された両面基板、複数の配線パターンが絶縁層を介して積層された多層基板の何れであってもよい。
【0014】
能動部品20は、特に制限されないが、例えば、半導体集積回路、トランジスタ、ダイオード等である。受動部品30は、特に制限されないが、例えば、コンデンサ、抵抗、インダクタ、コネクタ等である。
【0015】
図2は、コンデンサの外観を例示する図であり、
図2(a)は斜視図、
図2(b)は平面図である。
図2(a)及び
図2(b)に示すように、コンデンサC1及びC2は、略直方体の本体31と、本体31の対向する側に形成された電極32及び33とを有している。本体31は、例えば、チタン酸バリウム等からなる誘電体である。電極32及び33は、導電体であり、例えば銅の表面に錫めっきを施したものである。
【0016】
本願では、
図2(b)に示すように、平面視において、電極32の中心32aと電極33の中心33aとを結ぶ方向(
図2(b)の破線Dの方向)をコンデンサの実装方向と称する。
【0017】
配線基板1には、様々な応力がかかり、応力の方向によっては、配線基板1に実装された部品にクラックが入り、ショート故障が発生する場合がある。特に、積層セラミックコンデンサは応力によりクラックが入るとショート故障が発生する場合がある。従って、雌型のコネクタの挿抜位置に対して積層セラミックコンデンサをどの位置にどの方向に配置するかは重要である。
【0018】
そこで、発明者らは、積層セラミックコンデンサについて、応力がかかる方向とクラックの発生し易さとの関係を調査した。以降、特に指定しない限り、コンデンサは積層セラミックコンデンサを指すものとする。
【0019】
発明者らの検討により、
図3(a)に示すようにコンデンサCの実装方向Dに対して応力Fの角度が90度(垂直)である場合や、
図3(b)に示すようにコンデンサCの実装方向Dに対して応力Fの角度が0度(平行)である場合は、クラックが発生し難いことがわかった。
【0020】
これに対し、
図3(c)に示すようにコンデンサCの実装方向Dに対して応力Fの角度が45度である場合は、
図3(a)や
図3(b)の場合に比べてクラックが発生し易いことがわかった。
【0021】
コンデンサにかかる応力は、主に、基板10に実装された雌型のコネクタに対し、雄型のコネクタを挿抜したときに発生すると考えられる。このとき、雄型のコネクタのどの位置を持って挿抜するかを想定することで、挿抜位置を特定できる。ここで、挿抜位置とは、雄型のコネクタの挿抜時に雌型のコネクタに最も力がかかる位置であり、雄型のコネクタの挿抜時に応力が発生する起点となる位置である。
【0022】
図4(a)に示すように、例えば、長手方向の長さが比較的短く、雄型のコネクタの中心部を持てば挿抜できる場合には、挿抜位置Pは雌型のコネクタCN1の中心部の一箇所である。
【0023】
又、
図4(b)に示すように、長手方向の長さが比較的長く、雄型のコネクタの両端部を持てば挿抜できる場合には、挿抜位置Pは雌型のコネクタCN2の両端部の二箇所である。又、
図4(c)に示すように、長手方向の長さが更に長く、雄型のコネクタの中心部及び両端部を持てば挿抜できる場合には、挿抜位置Pは雌型のコネクタCN3の中心部及び両端部の三箇所である。
【0024】
なお、長手方向の長さが比較的短く、挿抜位置が一箇所であっても、雄型のコネクタの中心からずれた位置を持った方が挿入し易い場合には、挿抜位置は雄型のコネクタの中心部からずれた位置となる場合もある。
【0025】
このように、雄型のコネクタのどの位置を持って挿抜するかを想定することにより、雌型のコネクタの挿抜位置(すなわち、応力が発生する起点となる位置)を特定できる。
【0026】
コネクタ挿抜時の応力は、雌型のコネクタの挿抜位置(複数の挿抜位置がある場合には各々の挿抜位置)から基板10に放射状にかかる。そのため、雌型のコネクタの挿抜位置を特定できると、基板10上のコネクタ実装位置情報から、雌型のコネクタに対してコンデンサを配置してもよい位置と、配置しない方が良い位置とを把握することができる。つまり、コンデンサは、雌型のコネクタの挿抜位置から放射状にかかる応力を考慮し、応力がかかっても故障し難い角度で配置することが好ましい。
【0027】
図5は、コンデンサの実装角度について説明する図である。
図5に示すように、平面視において、コネクタCNの挿抜位置Pの中心点をA、コンデンサCの電極32の中心32aと電極33の中心33aとを結ぶ第1の線分の中心点をBとする。このとき、本願では、第1の線分と、中心点Aと中心点Bとを結ぶ第2の線分とのなす角をコンデンサCの実装角度θとする。但し、実装角度θは、0度以上90度以下である。つまり、実装角度θは、鈍角側ではなく、鋭角側の角度を示す。
【0028】
図6は、コンデンサの実装角度とクラックの発生し易さとの関係を説明する図(その1)であり、
図1のA部の拡大図である。
図6において、コンデンサC1及びC2は積層セラミックコンデンサであり、CN1は雌型のコネクタである。なお、コンデンサC1及びC2、コネクタCN1は、
図1に示した受動部品30の一部である。
【0029】
雌型のコネクタCN1に対して雄型のコネクタを挿す場合には、コネクタCN1の挿抜位置Pから放射状に応力が生じる。
図6(a)では、コネクタCN1の挿抜位置Pから放射状に生じる応力の一部を2本の矢印F1で模式的に図示している。
【0030】
雌型のコネクタCN1に対して雄型のコネクタを抜く場合には、
図6(a)とは反対方向(つまり、コネクタCN1の周囲から挿抜位置Pに向かう方向)に応力が生じる。
図6(b)では、コネクタCN1の周囲から挿抜位置Pに向かう応力の一部を2本の矢印F2で模式的に図示している。
【0031】
図3を参照して説明したように、コンデンサCの実装方向Dに対して応力Fの角度が90度(垂直)である場合や、コンデンサCの実装方向Dに対して応力Fの角度が0度(平行)である場合は、クラックが発生し難い。つまり、コンデンサの実装角度が0度又は90度であれば、コンデンサにクラックが発生し難い。
【0032】
図6(a)及び
図6(b)において、コンデンサC1の実装角度は0度であり、コンデンサC2の実装角度は90度である。つまり、
図6(a)及び
図6(b)では、応力F1又はF2がコンデンサC1及びC2にクラックが入り難い方向にかかる。
【0033】
一方、仮に、コンデンサC3を
図7の位置に配置した場合を考える。
図7(a)に示すように、雌型のコネクタCN1に対して雄型のコネクタを挿す場合には、矢印F3のように、コネクタCN1の挿抜位置Pから応力が生じる。なお、
図7(a)に示す1本の矢印F3は、コネクタCN1の挿抜位置Pから放射状に生じる応力の一部を模式的に図示したものである。
【0034】
又、
図7(b)に示すように、雌型のコネクタCN1に対して雄型のコネクタを抜く場合には、矢印F4のように、
図7(a)とは反対方向(つまり、コネクタCN1の周囲から挿抜位置Pに向かう方向)に応力が生じる。なお、
図7(b)に示す1本の矢印F4は、コネクタCN1の周囲から挿抜位置Pに向かう応力の一部を模式的に図示したものである。
【0035】
図3を参照して説明したように、コンデンサCの実装方向Dに対して応力Fの角度が45度である場合は、0度や90度の場合に比べてクラックが発生し易い。つまり、コンデンサの実装角度が45度であれば、コンデンサにクラックが発生し易い。
【0036】
図7(a)及び
図7(b)において、コンデンサC3の実装角度は45度である。つまり、
図7(a)及び
図7(b)では、コネクタCN1の挿抜時に、応力F3又はF4がコンデンサC3にクラックが入り易い方向にかかる。
【0037】
なお、コンデンサの実装角度が0度から45度に近ずくにつれて、コネクタ挿抜時の応力によりコンデンサにクラックが入り易くなる。同様に、コンデンサの実装角度が90度から45度に近ずくにつれて、コネクタ挿抜時の応力によりコンデンサにクラックが入り易くなる。
【0038】
そこで、全てのコンデンサを、実装角度が0度又は90度となるように配置することが好ましいが、発明者らの検討結果によれば、上記の効果は、実装角度が0度から5度の間、又は、85度から90度の間となるように配置すれば、実装角度を0度又は90度とした場合と同程度に得られる。
【0039】
具体的には、発明者らは、コンデンサの実装角度を変えた複数種類の基板について、基板に歪みゲージを取付けた状態で、予め決めた挿抜力で基板上のコネクタを挿抜した時の基板の歪み量を測定し、コンデンサにクラックの入る歪み規格値を超えない実装角度について実験を行った。又、発明者らは、コンデンサの実装角度を変えた複数種類の基板について、予め決めた挿抜力で基板上のコネクタを挿抜した時の基板の歪み量のシミュレーションを行った。
【0040】
そして、実験結果及びシミュレーション結果から、実装角度0度から±5度、又は、90度から±5度の範囲でコンデンサを配置すれば、クラックが発生しないことを確認した。
【0041】
なお、以上では、基板に実装された雌型のコネクタに雄型のコネクタを挿抜する例について説明したが、基板に実装された雄型のコネクタに雌型のコネクタを挿抜する場合についても、上記の実装角度でコンデンサを配置することで、同様の効果を奏する。
【0042】
このように、コネクタの挿抜位置を特定し、挿抜位置を起点とした応力の向きに対し、予め基板10の配線パターン設計時にコンデンサを応力に強い実装角度で配置することで、応力によりコンデンサにクラックが生じることを防止できる。その結果、コンデンサにショート故障が発生してコンデンサを介して配線同士が短絡することを防止できる。
【0043】
なお、コネクタの挿抜位置に発生する応力は、剛性の低い基板を用いるほど、コンデンサに伝達し易い。従って、基板10の剛性が低い場合ほど、上記の実装角度でコンデンサを配置する技術的意義が大きい。
【0044】
すなわち、基板10としてセラミック基板やシリコン基板を用いる場合よりも、樹脂基板を用いる場合の方が、上記の実装角度でコンデンサを配置する技術的意義が大きい。例えば、基板10として樹脂基板であるガラスエポキシ基板や紙フェノール基板を用いた場合に、上記の実装角度でコンデンサを配置する技術的意義が大きい。
【0045】
なお、配線基板1がある程度大きい場合には、配線基板1の全体で上記の実装角度でコンデンサを配置する必要はないが、少なくともコネクタの周囲10mm以内の範囲では、上記の実装角度でコンデンサを配置することが好ましい。なお、コネクタの周囲10mm以内の範囲とは、平面視において、コネクタの最外周部から10mm以内の範囲である。
【0046】
『コネクタの周囲10mm以内の範囲』は、上記と同様に、実験結果及びシミュレーション結果から導いたものである。具体的には、発明者らは、コンデンサの実装角度と実装位置を変えた複数種類の基板について、基板に歪みゲージを取付けた状態で、予め決めた挿抜力で基板上のコネクタを挿抜した時の基板の歪み量を測定し、コンデンサにクラックの入る歪み規格値を超えない実装角度及び実装位置について実験を行った。又、発明者らは、コンデンサの実装角度と実装位置を変えた複数種類の基板について、予め決めた挿抜力で基板上のコネクタを挿抜した時の基板の歪み量のシミュレーションを行った。
【0047】
そして、実験結果及びシミュレーション結果から、コンデンサの実装位置がコネクタの周囲10mm以内では、実装角度0度から±5度、又は、90度から±5度の範囲でコンデンサを配置しないと、クラックが発生することを確認した。一方、コンデンサの実装位置がコネクタの周囲10mmを超えていれば、必ずしも実装角度0度から±5度、又は、90度から±5度の範囲でコンデンサを配置しなくても、クラックが発生しない場合があることを確認した。
【0048】
以上、好ましい実施形態等について詳説したが、上述した実施形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0049】
1 配線基板
10 基板
20 能動部品
30 受動部品
31 本体
32、33 電極
C1、C2、C3 コンデンサ
CN1、CN2、CN3 コネクタ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0050】