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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】サセプタ及び化学気相成長装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/205 20060101AFI20240116BHJP
   C23C 16/458 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
H01L21/205
C23C16/458
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019221474
(22)【出願日】2019-12-06
(65)【公開番号】P2020096181
(43)【公開日】2020-06-18
【審査請求日】2022-10-20
(31)【優先権主張番号】P 2018230897
(32)【優先日】2018-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100163496
【弁理士】
【氏名又は名称】荒 則彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100137017
【弁理士】
【氏名又は名称】眞島 竜一郎
(72)【発明者】
【氏名】馬渕 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】深田 啓介
【審査官】長谷川 直也
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-520255(JP,A)
【文献】特表平09-510582(JP,A)
【文献】特表2003-532612(JP,A)
【文献】特表2004-522294(JP,A)
【文献】特開2003-229370(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0180726(US,A1)
【文献】特開2013-098271(JP,A)
【文献】特開2000-315680(JP,A)
【文献】特公平07-078276(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/205
C23C 16/458
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面にウェハを載置する基体部を備え、
前記基体部は、前記ウェハの裏面に対してArガスを供給し、厚み方向に貫通する1つの開口部を有し、
前記第1面を平面視した際に、前記1つの開口部は、中心から同心円状に存在する1つの仮想円に沿って連続する円環開口部であり、
前記基体部は、前記円環開口部により、第1部分と、第2部分と、に分離され、
前記第1部分は、前記第2部分より内側に位置しており、
前記第1部分を上方に動かすことで、前記基体部に載置した前記ウェハを前記第2部分から離すことができる、サセプタ。
【請求項2】
前記第2部分は、本体部と、突出部と、を備え、
前記突出部は、前記本体部の厚み方向に突出し、前記第2部分の外周に備えられる、請求項1に記載のサセプタ。
【請求項3】
前記1つの開口部の幅は、1mm以下である、請求項1又は請求項2に記載のサセプタ。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載のサセプタと、
前記ウェハを加熱するヒータと、
前記ヒータの周囲に配置される前記Arガスの流路となる空間と、を備え、
前記空間が前記1つの開口部に接続され、
前記空間を形成する部材の不純物濃度を、0.1ppmw以下とした、化学気相成長装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サセプタ及び化学気相成長装置に関する。
【背景技術】
【0002】
炭化珪素(SiC)は、シリコン(Si)に比べて絶縁破壊電界が1桁大きく、バンドギャップが3倍大きく、熱伝導率が3倍程度高い等の特性を有する。炭化珪素はこれらの特性を有することから、パワーデバイス、高周波デバイス、高温動作デバイス等への応用が期待されている。このため、近年、上記のような半導体デバイスにSiCエピタキシャルウェハが用いられるようになっている。
【0003】
SiCエピタキシャルウェハは、SiC基板上にSiC半導体デバイスの活性領域となるSiCエピタキシャル膜を成長させることによって製造される。SiC基板は、昇華法等で作製したSiCのバルク単結晶から加工して得られ、SiCエピタキシャル膜は、化学的気相成長法(Chemical Vapor Deposition:CVD)によって形成される。
尚、本明細書において、SiCエピタキシャルウェハは、SiCエピタキシャル膜を形成後のウェハを意味し、SiCウェハは、SiCエピタキシャル膜を形成前のウェハを意味する。
【0004】
例えば、特許文献1には、SiCエピタキシャル膜を積層する化学気相成長装置が記載されている。SiCエピタキシャル膜は、サセプタに載置されたSiCウェハ上に成膜される。
【0005】
また例えば、特許文献2には、化学気相成長装置に用いられるサセプタが記載されている。特許文献2に記載のサセプタは、内側サセプタと外側サセプタとが分離する、分離構造を有する。内側サセプタと外側サセプタとの間には、隙間が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-50164号公報
【文献】特開2009-70915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のサセプタを用いると、SiCエピタキシャル膜が成膜された後のSiCエピタキシャルウェハは、SiCエピタキシャル膜が積層された面と反対側の裏面が荒れる場合がある。
【0008】
SiCエピタキシャルウェハに生じる裏面荒れは、曇りを発生し、表面検査中にデフォーカスの原因となる。またSiCデバイスを作製する際に、裏面酸化膜が剥がれる原因となる。SiCエピタキシャルウェハの裏面荒れは、SiCエピタキシャルウェハの裏面を研磨することで解消できる。しかしながら、裏面を研磨する工程を加えると生産プロセスが増加し、スループットが低下する。
【0009】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、化学気相成長法によりウェハにエピタキシャル膜を成膜した際に、ウェハの裏面荒れを抑制できるサセプタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、鋭意検討の結果、ウェハの裏面に不活性ガスを流入することで、ウェハの裏面荒れの発生を抑制することができることを見出した。
すなわち、本発明は、上記課題を解決するために、以下の手段を提供する。
【0011】
(1)本発明の第1の態様にかかるサセプタは、第1面にウェハを載置する基体部を備え、前記基体部は、前記ウェハの裏面に対してArガスを供給し、厚み方向に貫通する複数の開口部を有する。
【0012】
(2)上記(1)の態様にかかるサセプタにおいて、前記基体部は、本体部と、突出部と、を備え、前記開口部は、前記本体部に備えられ、前記突出部は、前記本体部の厚み方向に突出し、前記基体部の外周に備えられてもよい。
【0013】
(3)上記(1)又は(2)の態様にかかるサセプタにおいて、前記第1面を平面視した際に、前記複数の開口部は、中心から同心円状に存在する複数の仮想円に沿って存在してもよい。
【0014】
(4)上記(3)の態様にかかるサセプタにおいて、前記複数の仮想円の隣接間距離は、10mm以下であってもよい。
【0015】
(5)上記(3)又は(4)の態様にかかるサセプタにおいて、前記複数の開口部の一部は、前記仮想円に沿って連続する円環開口部であってもよい。
【0016】
(6)上記(3)~(5)の何れか一項の態様にかかるサセプタにおいて、前記複数の開口部の一部は、前記仮想円に沿って点在する貫通孔であってもよい。
【0017】
(7)上記(1)~(6)の何れか一項の態様にかかるサセプタにおいて、前記複数の開口部の少なくとも一部は、平面視した際に長軸を有していてもよい。
【0018】
(8)上記(1)~(7)の何れか一項の態様にかかるサセプタにおいて、前記開口部の幅は、1mm以下であってもよい。
【0019】
(9)本発明の第2の態様にかかるサセプタは、ウェハの主面に化学気相成長法によってエピタキシャル膜を成長させる化学気相成長装置に用いられるサセプタであって、前記サセプタは、ウェハを載置する第1面と、前記第1面に向って厚み方向に貫通し、前記ウェハに対して希ガスを供給する開口部と、を有し、前記第1面を平面視した際に、前記開口部は、中心から外周に向って螺旋状に形成された螺旋開口部である。
【0020】
(10)上記(9)の態様にかかるサセプタにおいて、前記螺旋開口部における径方向の隣接間距離は、10mm以下であってもよい。
【0021】
(11)本発明の第3の態様のかかる化学気相成長装置は、第1の態様または第2の態様にかかるサセプタを備える。
【発明の効果】
【0022】
本発明のサセプタは、化学気相成長法によりウェハにエピタキシャル膜を成膜した際に、ウェハの裏面荒れを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本実施形態に係るサセプタの一例の断面模式図である。
図2】本実施形態に係るサセプタの一例の平面模式図である。
図3】本実施形態に係るサセプタの一例の平面模式図である。
図4】本実施形態に係るサセプタの一例の平面模式図である。
図5】本実施形態に係るサセプタの一例の平面模式図である。
図6】本実施形態に係るサセプタの一例の平面模式図である。
図7】本実施形態に係るサセプタの一例の平面模式図である。
図8】本実施形態に係る化学気相成長装置の断面模式図である。
図9】円環状の開口部を有するサセプタを用いて成長したSiCエピタキシャルウェハの裏面荒れ分布を示すグラフである。
図10】円状の開口部を有するサセプタを用いて成長したSiCエピタキシャルウェハの裏面荒れ分布を示すグラフである。
図11】成長中のSiCエピタキシャルウェハの表面温度分布を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、サセプタについて、図を適宜参照しながら詳細に説明する。以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために便宜上、特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などは実際とは異なっていることがある。以下の説明で例示される材質、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、本発明の効果を奏する範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0025】
<サセプタ>
(第1実施形態)
本実施形態に係るサセプタは、ウェハWの主面Wa上に化学気相成長法によってエピタキシャル膜を成長させる化学気相成長装置に用いられるサセプタである。
図1は、第1実施形態に係るサセプタの断面図である。図1は、サセプタ1がウェハWを載置している状態を示す。図1(a)に示されるように本体部11がウェハWを載置する構成であっても良いし、図1(b)に示されるように突出部12がウェハWを載置する構成であっても良い。好ましくは、突出部12がウェハWを載置する。
【0026】
サセプタ1は、基体部を有する。基体部は、本体部11と突出部12と外周突出部14とを有する。基体部は、載置されるウェハWと略平行な方向に延びる。突出部12は、本体部11から略直交する方向に突出する。図2に示すように突出部12は、基体部の外周の領域に位置する。外周突出部14は、突出部12の上面から略直交する方向に突出する。外周突出部14は、サセプタ1に載置されたウェハWが径方向に飛び出すことを防ぐ。
本実施形態中で、サセプタ1がウェハWを載置する方向を第1方向とし、第1方向の反対方向を第2方向とする。
【0027】
サセプタ1は、第1面10aと第2面10bとを有する。第1面10aは、サセプタ1の第1方向側の表面である。第1面10aは、本体部11の第1面11aと突出部12の第1面12aと外周突出部14の第1面14aからなる。第2面10bは、第1面10aと反対側の面である。第2面10bの下方には、ウェハWを加熱するヒータ等が配置される。
【0028】
サセプタ1は、複数の開口部13を有する。開口部13は、サセプタ1の第1面10aと第2面10bとの間を貫通し、貫通孔を形成する。複数の開口部13のそれぞれは、ウェハWの裏面Wbに向って希ガスを供給する。希ガスは、例えばArガスである。希ガスは、例えば、サセプタを加熱するためのヒータを保護するために、サセプタ1の第2面10bに供給するArガスを流用できる。
【0029】
開口部13の断面形状は、特に問わない。図1に示す開口部13のそれぞれは、厚み方向に直線的に形成されている。開口部13は、厚み方向の途中で曲がっていてもよい。また開口部13は、サセプタの10の径方向の内側又は外側に向かって傾斜してもよい。開口部13が径方向の内側又は外側に傾斜することで希ガスの流れ方向を制御できる。それぞれの開口部13から径方向の内側又は外側に向って順に希ガスを供給することで、ウェハWの裏面Wbの全面に希ガスを十分供給できる。
【0030】
図2は、第1実施形態にかかるサセプタ1の平面図である。図2に示すように、サセプタ1は、平面視が略円形であるように構成される。本体部11の第1面11aは、直線部11OFを有する略円形であることが好ましい。また、突出部12の第1面12aは、直線部12OFを有する略円環状であることが好ましい。直線部11OFおよび直線部12OFは、ウェハWのオリエンテーションフラット(以下、オリフラという。)に合わせて設けられる。本体部11の第1面11aは、直線部11OFを有さない構成であってもよい。また、突出部12の第1面12aは、直線部12OFを有さない構成であってもよい。ウェハWがオリフラを有さない場合は、本体部11の第1面11aは略円形でもよく、突出部12の第1面12aは略円環状でもよい。
【0031】
複数の開口部13の数および間隔は、適宜選択することができる。ウェハW全面を鏡面化するように配置することが好ましい。例えば、複数の開口部13のうち、最隣接の開口部13同士の距離は10mm以下である。最隣接の開口部13同士の距離は0.01mm以上であることが好ましい。また、例えば、複数の開口部13のうち、すべての開口部13を中心に半径10mmの円を描くとき、載置されるウェハWの全ての位置がいずれかの円の内部に含まれるように、開口部13配置する。尚、ウェハWの中心に対応する箇所に開口部13の一部が設けられることが好ましい。
【0032】
開口部13の形状は特に問わない。開口部13の平面視形状は、例えば、円形である。開口部13が平面視円形の場合、その径は好ましくは1mm以下とすることができる。より好ましくは、0.4mm以下であり、さらに好ましくは、0.1mm以下である。径の下限値は0.01mmであることが好ましい。また例えば、開口部13が平面視不定形の場合、その平面視における長軸の幅は、好ましくは1mm以下である。より好ましくは、0.4mm以下であり、さらに好ましくは、0.1mm以下である。長軸の幅の下限値は0.01mmであることが好ましい。開口部13の孔の径、および長軸の幅は、開口部13の配置、希ガスの流量や、温度等により、適宜選択可能である。
【0033】
上述のように、本実施形態にかかるサセプタ1は、複数の開口部13を介してウェハWの裏面Wbに希ガスを十分供給し、ウェハWの裏面Wbの荒れを抑制できる。供給する希ガスの流量は、開口部13の配置や、大きさ等と併せて調整し、1つの開口部13により裏面荒れを抑制する範囲を調整することができる。
【0034】
SiCエピタキシャル膜を成長する際、ウェハWに向って原料ガス(Si系ガス、C系ガス)、キャリアガス、エッチングガス等が供給される。これらのガスの一部は、ウェハWの裏面Wbに回り込む。裏面荒れの一因として、SiCエピタキシャル膜を成長するために供給するガスの裏面Wbへの回り込みが挙げられる。また、水素ガス等のウェハWをエッチングする効果を有するガスが、ウェハWの裏面Wbに供給されると、ウェハWの裏面Wbを荒らす原因となりうる。また例えば、原料ガスの一部がウェハWの裏面Wbに回り込むと、Si系ガスとC系ガスのバランスが崩れ、結晶性の悪いエピタキシャル膜が裏面Wbに形成される場合がある。結晶性の悪いエピタキシャル膜は、ウェハWの裏面Wbを荒らす原因となりうる。
【0035】
これに対し、本実施形態にかかるサセプタ1は、ウェハWの裏面Wbに希ガスを供給する。ウェハWの裏面Wbに供給された希ガスは、種々のガスがウェハWの裏面Wbに回り込むことを防ぐ。その結果、本実施形態にかかるサセプタ1は、ウェハWの裏面Wbの荒れを抑制できる。
【0036】
(第2実施形態)
図3は、第2実施形態にかかるサセプタ10の平面図である。第2実施形態にかかるサセプタ10は、開口部13(13A)の配置が図2に示すサセプタ1と異なる。図3において図2に示すサセプタ1と同一の構成については、同一の符号を付し、説明を省く。
【0037】
図3に示すように、複数の開口部13A、第1面10aを平面視した際に、中心から同心円状に存在する複数の仮想円Vcに沿って存在する。開口部13と同じ形状を有しているが、仮想円Vcに沿って配置される貫通孔を開口部13Aとする。
【0038】
複数の仮想円Vcは、サセプタ10の中心から一定間隔で存在する。複数の仮想円Vcの隣接間距離L1は、例えば10mm以下であることが好ましく、5mm以下であることがより好ましい。隣接間距離L1の下限値は0.01mmであることが好ましい。複数の仮想円Vcの隣接間距離L1がこの範囲であることで、ウェハWの裏面Wbの全面に希ガスを十分供給できる。複数の仮想円Vcは、それぞれ等間隔であることが好ましい。仮想円Vcの隣接間距離Lは、ある仮想円Vcと隣接する仮想円Vcとの径方向の距離である。
【0039】
開口部13Aは、例えば、仮想円Vcの周方向に等間隔で位置する。開口部13Aの周方向の隣接間距離L2は、例えば10mm以下であることが好ましく、5mm以下であることがより好ましい。隣接間距離L2の下限値は0.01mmであることが好ましい。開口部13Aの周方向の隣接間距離L2がこの範囲であることで、ウェハWの裏面Wbの全面に希ガスを十分供給できる。開口部13Aの周方向の隣接間距離L2は、同一仮想円Vc上に存在する隣接する二つの開口部13Aの最短距離である。
開口部13Aは、サセプタ10の中心にも存在することが好ましい。
【0040】
サセプタ10のその他の構成は、サセプタ1と同様の構成とすることができる。
【0041】
(第3実施形態)
図4は、第3実施形態にかかるサセプタ20の平面図である。第3実施形態にかかるサセプタ20は、開口部13(13A、13B)の形状が図3に示すサセプタ10と異なる。図4において図3に示すサセプタ10と同一の構成については、同一の符号を付し、説明を省く。
【0042】
図4に示すように、複数の開口部13Bは、第1面10aを平面視した際に、中心から同心円状に存在する複数の仮想円Vcに沿って存在する。図4において複数の開口部13Bのそれぞれは、仮想円Vcに沿って連続する円環形状を有する貫通孔である(以下円環開口部13Bと言う)。円環開口部13Bは、仮想円Vcに沿う部分以外に存在してもよく、サセプタ20は開口部13Aを同時に有してもよい。
【0043】
円環開口部13Bは、サセプタ20の中心から同心円状に一定間隔で存在する。複数の円環開口部13Bの隣接間距離L3は、例えば10mm以下であることが好ましく、5mm以下であることがより好ましい。隣接間距離L3の下限値は0.01mmであることが好ましい。円環開口部13Bの隣接間距離L3がこの範囲であることで、ウェハWの裏面Wbの全面に希ガスを十分供給できる。円環開口部13Bは、それぞれ等間隔であることが好ましい。円環開口部13Bの隣接間距離L3は、ある円環開口部13Bと隣接する円環開口部13Bとの径方向の距離である。
なお、サセプタ20の中心にも開口部が備えられていることが好ましい。
【0044】
円環開口部13Bの幅、すなわち径方向の幅は、1mm以下であることが好ましく、0.4mm以下であることがより好ましく、円環開口部13B近傍の温度状態が大きく変動することが避けられるため0.1mm以下であることがさらに好ましい。なお、円環開口部13Bの幅の下限値は0.01mmであることが好ましい。
【0045】
第3実施形態にかかるサセプタ20は、複数の円環開口部13Bを介してウェハWの裏面Wbに希ガスを十分供給し、ウェハWの裏面Wbの荒れを抑制できる。
【0046】
(第4実施形態)
図5は、第4実施形態にかかるサセプタ30の平面図である。第4実施形態にかかるサセプタ30は、開口部13(13A、13B)の形状が図3に示すサセプタ10と異なる。図5において図3に示すサセプタ10と同一の構成については、同一の符号を付し、説明を省く。
【0047】
図5に示すように、複数の開口部13は、第1面10aを平面視した際に、中心から同心円状に存在する複数の仮想円Vcに沿って存在する。図5において複数の開口部13は、仮想円Vcに沿って連続する一つの円環開口部13Bと、仮想円Vcに沿って点在する複数の開口部13Aと、からなる。図5に示すサセプタ30は、第2実施形態にかかる開口部13Aと第3実施形態にかかる円環開口部13Bとが組み合わさったものである。
【0048】
サセプタ30は、一つの円環開口部13Bによって第1部分31と第2部分32とに分離される。第1部分31は、第2部分32よりサセプタ30の内側に位置する。第1部分31は、例えば、上下駆動機構(突き上げ機構)により、上下に可動してもよい。第1部分31が上方に動かすことで、第2部分32とウェハWとを離すことができる。第2部分32とウェハWとが離れると、搬送時のウェハWの取り付け、取り外しが容易になる。
【0049】
第4実施形態にかかるサセプタ30は、開口部13A及び円環開口部13Bを介してウェハWの裏面Wbに希ガスを十分供給し、ウェハWの裏面Wbの荒れを抑制できる。
【0050】
(第5実施形態)
図6は、第5実施形態に係るサセプタの平面図である。第5実施形態にかかるサセプタ40は、開口部13(13C)の形状が図3に示すサセプタ10と異なる。図6において、図3に示すサセプタとどういつの構成については、同一の符号を付し、説明を省く。
【0051】
第5実施形態に係るサセプタ40の開口部13Cは、平面視した際に長軸を有する。開口部13Cは、平面視した際に長軸を有する矩形形状である貫通孔である(以下、矩形開口部13Cという)。図6は、全ての開口部13が矩形開口部13Cであるものを示したが、開口部13は、矩形開口部13Cと、開口部13Aや円環開口部13B等とが組み合わさったものであってもよい。
【0052】
第5実施形態に係るサセプタ40の開口部13の一部は、矩形開口部13Cである。矩形開口部13Cは、サセプタ40に一定間隔で存在する。複数の矩形開口部13Cの隣接間距離L4は、例えば10mm以下であることが好ましく、5mm以下であることがより好ましい。隣接間距離L4の下限値は0.01mmであることが好ましい。矩形開口部13Cは、それぞれ等間隔であることが好ましい。矩形開口部13Cの隣接間距離L4は、ある矩形開口部13Cと隣接する矩形開口部13Cとの距離である。
【0053】
矩形開口部13Cの幅(矩形開口部13Cの短軸)は、1mm以下であることが好ましく、0.4mm以下であることがより好ましく、0.1mm以下であることが矩形開口部13C近傍の温度状態が大きく変動することが避けられるためさらに好ましい。矩形開口部13Cの幅の下限値は0.01mmである。複数の矩形開口部13Cのそれぞれの幅は、異なっていてもよい。
【0054】
矩形開口部13Cの長さ(矩形開口部13Cの長軸)は、本体部11の外周部11bの領域上の2点を結ぶ長さであることが好ましい。本体部11の外周部11bは、本体部11の外周端から中心方向に10mmの領域のことをいう。また、本体部11の外周端から中心方向に1mmの領域をさしてもよい。複数の矩形開口部13Cの長さは異なっていてもよい。
【0055】
矩形開口部13Cが、同一直線上に連続な開口ではなく、同一直線状に断続的に位置する複数の開口であってもよい。また、様々な向きの矩形開口部13Cが組み合わされていてもよい。また、図6に示すサセプタ40は、全ての開口部13が矩形開口部13Cであるが、開口部13は、矩形開口部13Cと、開口部13Aや円環開口部13B等の様々な形状の開口部が組み合わさったものであってもよい。
【0056】
本実施形態に係る矩形開口部13Cは、これらに限られるものではない。矩形開口部13Cは、平面視した際に長軸を有する開口部の一例である。平面視した際に長軸を有する開口部は、他にも台形や楕円形状である。本実施形態に係る開口部は、当該構成を備えることで、載置するウェハWの裏面荒れを抑制し、SiCエピタキシャルウェハを成長することができる。
【0057】
(第6実施形態)
図7は、第6実施形態にかかるサセプタ50の平面図である。第6実施形態にかかるサセプタ50は、開口部13(13D)の形状が図3に示すサセプタ10と異なる。図7において図3に示すサセプタ10と同一の構成については、同一の符号を付し、説明を省く。
【0058】
図7に示すように、開口部13Dは、第1面10aを平面視した際に、中心から外周に向って連続する一つの貫通孔である。開口部13Dは、第1面10aを平面視した際に、螺旋状に形成されている(以下螺旋状開口部13Dと言う)。
螺旋状開口部13Dは、サセプタ50の中心を通って形成されることが好ましい。
【0059】
螺旋状開口部13Dにおける径方向の隣接間距離L5は、例えば10mm以下であることが好ましく、5mm以下であることがより好ましい。隣接間距離L5の下限値は0.01mmであることが好ましい。螺旋状開口部13Dの径方向の隣接間距離L5がこの範囲であることで、ウェハWの裏面Wbの全面に希ガスを十分供給できる。螺旋状開口部13Dにおける径方向の隣接間距離L5は、サセプタ50を中心を通る切断面で切断した際に、隣接する開口部間の距離である。
また、螺旋状開口部13Dの幅、すなわち径方向の幅は、1mm以下であることが好ましく、0.4mm以下であることがより好ましく、螺旋状開口部13D近傍の温度状態が大きく変動することが避けられるため0.1mm以下であることがさらに好ましい。なお、螺旋状開口部13Dの幅の下限値は0.01mmであることが好ましい。
【0060】
第6実施形態にかかるサセプタ50は、螺旋状開口部13Dを介してウェハWの裏面Wbに希ガスを十分供給し、ウェハWの裏面Wbの荒れを抑制できる。
【0061】
<化学気相成長装置>
(第7実施形態)
図8は、第7実施形態に係る化学気相成長装置の一例を示す断面模式図である。
図8は、理解を容易にするために、支持体70にサセプタ30が載置され、サセプタ30にウェハWが載置された状態を示す。
【0062】
第7実施形態にかかる化学気相成長装置100は、炉体60と支持体70とヒータ80とを有する。
【0063】
炉体60は、ガス供給管61と、図示しないガス排気口と、搬送口62とを有する。
炉体60の材料は、高温に耐えられることのできるものであれば、公知のものを使用することができる。例えば、C、SiC、金属炭化物、SiCまたは金属炭化物で被覆されたC、ステンレス等を使用することができる。
【0064】
ガス供給管61は、原料ガス等を炉体60内に供給する。供給された原料ガスは、支持体70上のサセプタ30に載置したウェハWに供給される。
【0065】
ガス供給管61は、原料ガス、キャリアガス、ドーピングガス、および、希ガス等を供給する。原料ガスとしては、公知のSi系ガス、C系ガスを使用することができる。キャリアガス、ドーピングガスとしては、それぞれ窒素等を用いることができる。
【0066】
支持体70は、載置部71と支持柱72とを有する。載置部71は、上下駆動機構を備えてもよい。載置したサセプタ30およびサセプタ30上のウェハWを上下駆動し、搬送時に取り外ししやすくなる。
載置部71が上下駆動機構を有する場合、上下駆動機構は、サセプタ30を上下に駆動する。上下駆動機構は、サセプタ30の第1部分31を上下駆動する。ウェハWは、搬送口62から炉体60内に搬送される。第1部分31のみが上方に移動することで、搬送時に第2部分32が搬送機構と接触することが避けられ、ウェハWの搬送が容易になる。当該構成により高温の炉体60を冷却せずにウェハWを搬送することができる。また、搬送後に再度高温に加熱する必要もない。そのため、エピタキシャルウェハ製造におけるスループットを向上することができる。
【0067】
支持体70は、周方向に回転駆動する。支持体70が回転すると、支持体70に載置したサセプタ30が回転する。
支持体70は、周方向に回転駆動することができるので、支持体70上にウェハWを載置したサセプタ30を載置することで、エピタキシャル成長中にウェハWを回転駆動し、ウェハWに対して均等に原料ガスを供給することができる。従って、面内均一性の高いエピタキシャルウェハを製造することができる。
【0068】
ヒータ80は、支持体70の内部に備えられる。ヒータ80の周囲には、ヒータ80を保護する希ガスが供給される。希ガスは、サセプタ30の開口部13(13A,13B)を介して、ウェハWの裏面に供給される。
ヒータ80は、炉体60内を高温に加熱する。
希ガスが供給される空間、すなわちヒータ80の周囲に設置する部材の不純物濃度は、低いことが好ましい。例えば、不純物濃度は、0.1ppmw以下であることが好ましく、0.01ppmw以下であることがより好ましい。不純物は、例えばBやAlである。ヒータ80の周囲の不純物が多い状態でサセプタ30の開口部13Bを介して、載置されるウェハWの裏面方向に希ガスが供給されると、ウェハWの表面に不純物が回り込む恐れがある。ウェハWの表面に不純物が回り込むと、製造するSiCエピタキシャルウェハの品質を低下させる恐れがあるため、好ましくない。
【0069】
第7実施形態にかかる化学気相成長装置100は、ヒータ80を保護する希ガスが、サセプタ30の開口部13(13A、13B)を介して、ウェハWの裏面に供給される。そのため、第7実施形態にかかる化学気相成長装置100は、ウェハWの裏面Wbの荒れを抑制できる。
【実施例
【0070】
「実施例1」
実施例1にかかるサセプタは、第3実施形態にかかるサセプタ20(図4参照)の円環開口部13Bが一つの場合である。実施例1にかかるサセプタは、円環開口部の内部の第1部分と円環開口部外部の第2部分とに分離される。円環開口部は、サセプタの中心を中心とし、半径が40mmの円の円周部分に存在し、円環開口部の径方向の幅は、0.4mmとした。
【0071】
実施例1にかかるサセプタの第1面に6インチのSiCウェハを載置して、SiCウェハの主面に化学気相成長法によりSiCエピタキシャル膜を成長した。SiCエピタキシャル膜の成長時において、サセプタの裏面側には、ヒータを保護するためにArガスを供給した。Arガスの一部は、サセプタの円環開口部を介してウェハの裏面側に供給された。円環開口部から流出するArガスの流量は、5sccm程度であった。実施例1において、成長させたエピタキシャル膜の膜厚は、30μmである。
【0072】
図9は、エピタキシャル膜を成膜後のウェハの裏面の表面粗さを示す図である。横軸は、円環開口部から径方向の距離であり、縦軸はウェハ裏面の表面粗さである。横軸の「0mm」はウェハの円環開口部に対応する位置であり、横軸の正方向は、円環開口部に対応する位置からウェハの中心に向かう方向である。ウェハ裏面の表面粗さは、レーザテック社製の表面検査装置(SICA)のHazemap機能を用いて測定した。本実施例では、レーザテック社製の表面検査装置(SICA)のHazemapを用いて測定を行ったが、Zygoコーポレーション製の白色干渉計システム(Zygo)等類似する原理の装置を用いて観察してもよい。
【0073】
図9に示すように、円環開口部の近傍は、ウェハ裏面の表面粗さが小さくなった。Arガスが、円環開口部を介して供給されることで、ウェハ裏面に原料ガス(Si系ガス、C系ガス)、キャリアガス、エッチングガス等が供給されることが阻害されたためと考えられる。特に円環開口部から内側10mmの範囲は、ウェハ裏面の鏡面性が高かった。
【0074】
したがって、円環開口部を10mm間隔で同心円状に配置することで、ウェハの裏面を鏡面化することができる。円環開口部の間隔は、供給するArの量によって変化させることができる。
【0075】
また円環開口部の内側と外側とで、ウェハ裏面の表面粗さが異なる。原料ガス(Si系ガス、C系ガス)、キャリアガス、エッチングガス等は、ウェハの外周側から供給されるためと考えられる。円環開口部をサセプタの内側又は外側に向って傾斜させると、希ガスの流れ方向を制御でき、よりキャリアガス、エッチングガス等の供給を阻害できると考えられる。
【0076】
「実施例2」
実施例2にかかるサセプタは、中心に一つだけ開口部13を有する場合である。開口部は、円形であり、径方向の幅、すなわち、直径が1.0mmである。
【0077】
実施例2にかかるサセプタの第1面に、サセプタの中心とウェハの中心とが一致するように、6インチのSiCウェハを載置して、SiCウェハの主面に化学気相成長装置によりSiCエピタキシャル膜を成長した。SiCエピタキシャル膜の成長時において、サセプタの裏面側には、ヒータを保護するためにArガスを供給した。Arガスの一部は、サセプタの開口部を介してウェハの裏面側に供給された。開口部から流出するArガスの流量は、5sccm程度であった。実施例2において成長させたエピタキシャル膜の膜厚は10μmである。
【0078】
図10は、エピタキシャル膜を成膜後のウェハの裏面の表面粗さを示す図である。横軸は、ウェハ中心からの距離であり、縦軸はウェハ裏面の表面粗さである。横軸の正方向は、ウェハの径方向の1つである。ウェハ裏面の表面粗さは、レーザテック社製の表面検査装置(SICA)のHazemap機能を用いて測定した。本実施例では、レーザテック社製の表面検査装置(SICA)のHazemapを用いて測定を行ったが、Zygoコーポレーション製の白色干渉計システム(Zygo)等類似する原理の装置を用いて観察してもよい。
【0079】
図10に示すように、サセプタの中心に備えられた開口部の周辺は、ウェハ裏面の粗さが小さくなった。Arガスが、開口部を介して供給されることで、ウェハ裏面に原料ガス(Si系ガス、C系ガス)キャリアガス、エッチングガス等が供給されることは阻害されたためと考えられる。
【0080】
「参考例1~3」
参考例1~3は、円環開口部13Bの径方向の幅を変えた場合に、ウェハの温度分布の変化をシミュレーションにより測定した。参考例1は円環開口部13Bを設けない場合のウェハの温度分布であり、参考例2は円環開口部13Bの径方向の幅を0.1mmとした場合のウェハの温度分布であり、参考例3は円環開口部13Bの径方向の幅を0.4mmとした場合のウェハの温度分布である。
【0081】
図11は、円環開口部13Bの径方向の幅を変えた場合における参考例1~3のウェハの温度分布の変化をシミュレーションにより測定した結果である。図11に示すように、円環開口部13Bの幅が0.4mmの場合は、円環開口部13Bの近傍でウェハの温度が上昇した。これは円環開口部13Bの溝により、サセプタの輻射率が変動したためと考えられる。Siは、Cより昇華しやすい。そのため、ウェハの温度が高温になると、Siが昇華し、SiCウェハの裏面の結晶性が低下し、表面粗さが低下する。図9において円環開口部13Bの直上のウェハ裏面の表面粗さが局所的に増加しているのは、当該現象に起因すると考えられる。換言すると、円環開口部13の径方向の幅を0.1mm以下にすると、ウェハの裏面の表面粗さをより低減できる。
【産業上の利用可能性】
【0082】
以上のように、本発明に係るサセプタは、厚み方向に貫通する複数の開口部を有することにより、化学気相成長法によりウェハに成膜を行った際に、ウェハに裏面荒れの発生を抑制し、デフォーカスや裏面酸化膜剥離などの生じづらい、SiCエピタキシャルウェハを提供することができる。
【符号の説明】
【0083】
1,10,20,30,40,50 サセプタ
10a 第1面
10b第2面
11 本体部
12 突出部
13 開口部
13A 開口部
13B 円環開口部
13C 矩形開口部
13D 螺旋状開口部
14 外周突出部
31 第1部分
32 第2部分
60炉体
70 支持体
71 載置部
72 支持柱
80 ヒータ
Vc 仮想円
W ウェハ
Wb 裏面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11