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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】積層フィルム及び包装材
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/36 20060101AFI20240116BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20240116BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
B32B27/36
B32B27/00 M
B65D65/40 D
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019234505
(22)【出願日】2019-12-25
(65)【公開番号】P2021102301
(43)【公開日】2021-07-15
【審査請求日】2022-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】浜崎 桂輔
(72)【発明者】
【氏名】古根村 陽之介
(72)【発明者】
【氏名】森谷 貴史
【審査官】山本 晋也
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-167547(JP,A)
【文献】特開2017-132186(JP,A)
【文献】特開2016-175659(JP,A)
【文献】特開平10-264303(JP,A)
【文献】特開昭59-074109(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B
B65D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面層(A)及びヒートシール層(B)を有する積層フィルムであって、前記表面層(A)が結晶性ポリエステルとプロピレン系ブロック共重合体樹脂とを含有し、表面層(A)に含まれる樹脂成分中の結晶性ポリエステルの含有量が40~70質量%、プロピレン系ブロック共重合体樹脂の含有量が30~60質量%であり、ヒートシール層(B)が結晶性ポリエステル及びプロピレン系ブロック共重合体樹脂を含有し、ヒートシール層(B)に含まれる樹脂成分中の結晶性ポリエステルの含有量が70質量%以上であり、樹脂成分中のプロピレン系ブロック共重合体樹脂の含有量が1~30質量%であり、前記ヒートシール層(B)中のフィラーの含有量が300ppm以下であることを特徴とする積層フィルム。
【請求項2】
前記表面層(A)中の前記結晶性ポリエステルの融点が100~200℃、ガラス転移温度が10℃以下である請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項3】
前記積層フィルムが、前記積層フィルムの表面層(A)に厚さ12μmの二軸延伸ポリエステルフィルムをラミネートしたラミネートフィルムのヒートシール面(B)側を、厚さ100μmの二軸延伸ポリエステルフィルムに、200℃、0.2MPa、1秒の条件でヒートシールした後に、前記ラミネートフィルムを180°方向に300mm/minの速度で剥離したときのシール強度の最大値が9N/15mm以上である請求項1~のいずれかに記載の積層フィルム。
【請求項4】
表面層(A)及びヒートシール層(B)の間に、結晶性ポリエステルとプロピレン系ブロック共重合体樹脂とを含有する中間層(C)を有し、中間層(C)に含まれる樹脂成分中の結晶性ポリエステルの含有量が40~70質量%、プロピレン系ブロック共重合体樹脂の含有量が30~60質量%である請求項1~のいずれかに記載の積層フィルム。
【請求項5】
請求項1~のいずれかに記載の積層フィルムを用いた蓋材。
【請求項6】
結晶化ポリエチレンテレフタレート樹脂からなる開口部を有する包装容器の開口部に請求項に記載の蓋材が設けられた包装容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品や医療品等の包装材に使用する積層フィルム及び蓋材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、食品や医療品等の各種樹脂容器の開口部を積層フィルムを使用した蓋材により密封、封止した容器が用いられている。これら容器の蓋材としては、通常、内容物を容易に取り出せるよう簡易に開封可能であると共に、内容物が容易に漏洩しない好適なシール性が求められている。また、近年では内容物の長期保存や衛生面の観点から高温殺菌処理がなされる用途も多く、これらシール性や易開封性に加え、高温処理後にも好適にシール強度を保持できる高い耐熱性が求められている。
【0003】
このような容器の蓋材に使用されるフィルムとして、例えば、基材層及びシール層に結晶性ポリエステルとオレフィン系樹脂とを使用した易剥離性フィルムが開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-167547号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記易剥離性フィルムは、一定のシール強度と易剥離性とを有するものであるが、ブロッキングや成膜時のニップロールやタッチロールへのフィルムの貼り付き防止のため、ヒートシール層に過剰にフィラーを配合しており、ヒートシール層の表面に突出したフィラーが被着体とのヒートシール性を阻害することによりシール強度を確保しにくく、内容物保護性が十分とは言えない構成であった。特に、高耐熱性の容器として使用されている結晶化ポリエチレンテレフタレート(C-PET)はヒートシール温度域でも容器が軟化しにくいため、高温殺菌処理がなされる用途に使用されることが多く、更なるシール強度の向上が求められている。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、好適なヒートシール性、易開封性、フィルム加工性を有し、ブロッキングが生じにくく、高いシール強度を有する積層フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、表面層(A)及びヒートシール層(B)を有する積層フィルムであって、前記表面層(A)が結晶性ポリエステルとプロピレン系ブロック共重合体樹脂とを含有し、表面層(A)に含まれる樹脂成分中の結晶性ポリエステルの含有量が40~70質量%、プロピレン系ブロック共重合体樹脂の含有量が30~60質量%であり、ヒートシール層(B)が結晶性ポリエステルを含有し、ヒートシール層(B)に含まれる樹脂成分中の結晶性ポリエステルの含有量が70質量%以上である積層フィルムにより、上記課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の積層フィルムは、好適なヒートシール性と易開封性とを有することから、各種樹脂容器の開口部を密封、封止する蓋材として好適に適用できる。また、高温処理後にも好適なヒートシール性を確保できることから、高温殺菌処理がなされる食品や医療品等の用途に特に好適に適用できる。また、フィラー等を含有しなくとも好適なフィルム加工性や耐ブロッキング性を得やすいことから、安定かつ低コストに製造可能である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の積層フィルムは、結晶性ポリエステルを樹脂成分中の40~70質量%含有し、プロピレン系ブロック共重合体樹脂を30~60質量%含有する表面層(A)と結晶性ポリエステルを樹脂成分中の70質量%以上含有するヒートシール層(B)と、を有する積層フィルムである。
【0010】
[表面層(A)]
本発明の積層フィルムの表面層(A)は、結晶性ポリエステルとプロピレン系ブロック共重合体樹脂とを含有し、表面層(A)に含まれる樹脂成分中の結晶性ポリエステルの含有量が40~70質量%、プロピレン系ブロック共重合体樹脂の含有量が30~60質量%の層である。当該表面層(A)を使用することで、好適なヒートシール性、易剥離性が得られ、剥離後に良好な剥離外観が得られる。
【0011】
表面層(A)中に含まれる結晶性ポリエステル(A)は、多価カルボン酸と多価アルコールとを重縮合して製造されるポリエステル樹脂である。
【0012】
多価カルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、及びトリメリット酸等の芳香族多価カルボン酸、並びにコハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカン酸、ダイマー酸、及びシクロヘキサンジカルボン酸等の脂肪族多価カルボン酸が挙げられる。
【0013】
また、多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチルトリメチレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、3-メチルペンタンジオール、ヘキサンジオール、ノナンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ペンタエチレングリコール、及びトリメチロールプロパン等の多価アルコールが挙げられる。
【0014】
上記の多価カルボン酸と多価アルコールとは、任意の組み合わせにより用いられる。具体的には、テレフタル酸/エチレングリコール共重合体、テレフタル酸/エチレングリコール/1,4-シクロヘキサンジメタノール三元共重合体、2,6-ナフタレンジカルボン酸/エチレングリコール共重合体、及びテルフタル酸/イソフタル酸/ブタンジオール3元共重合体等が挙げられる。
【0015】
結晶性ポリエステルの融点が100~200℃であることが好ましく、120~180℃であることがより好ましい。また、結晶性ポリエステルのガラス転移温度は、10℃以下であることが好ましく、-20℃以下であることがより好ましい。当該融点及びガラス転移温度の結晶性ポリエステルを使用することで好適なフィルム加工性、ヒートシール性、耐熱性を確保できる点で好ましい。このような結晶性ポリエステルとしては、例えば、商品名「バイロン」(東洋紡株式会社)で市販されている樹脂が挙げられる。
【0016】
表面層(A)に使用されるプロピレン系ブロック共重合体樹脂としては、プロピレンと他のα-オレフィンとを含有する樹脂を使用できる。α-オレフィンとしては、エチレン、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル・1-ペンテン、1-オクテン等が例示でき、なかでもエチレンが耐熱性や耐衝撃性に優れているため好ましい。プロピレン-エチレンブロック共重合体は、特に限定されないが、例えば第一工程において、プロピレンを主体とした重合体ブロックを重合し、第二工程において、エチレンとプロピレンの共重合体ブロックを重合して得られる。
【0017】
プロピレン系ブロック共重合体を使用する場合には、Tダイ成膜法において冷却ロール40℃で、厚み60μmとなるように成形した時のプロピレン系ブロック共重合体の曇り度が30%以上であることが好ましく、40%以上であることがより好ましい。当該曇り度の樹脂を使用することで好適な耐ブロッキング性やフィルム加工性が得られる。
【0018】
プロピレン系ブロック共重合体のメルトフローレート(MFR)は、成形が容易であり、また好適な易開封性を得やすいことから、0.5~10g/10分(230℃、21.18N)であることが好ましく、2~5g/10分であることがより好ましい。
【0019】
プロピレン系ブロック共重合体の融点は、成形が容易であり、また優れた耐熱性を確保しやすいことから、150℃以上であることが好ましく、160℃以上であることがより好ましい。
【0020】
プロピレン系ブロック共重合体樹脂を使用する場合には、その含有量が、表面層(A)に含まれる樹脂成分中の30~60質量%であることが好ましく、35~50質量%であることがより好ましい。当該含有量とすることで好適な易剥離性やフィルム加工性が得られ、また、剥離後に被着体に樹脂残りや膜残りがなく、好適な剥離外観が得られる点でも好ましい。
【0021】
表面層(A)に使用する樹脂としては、上記結晶性ポリエステルとプロピレン系ブロック共重合体樹脂のみを使用することも好ましいが、これら樹脂以外の包装用フィルムに使用される各種樹脂を使用してもよい。当該他の樹脂としては、例えば、エチレン系樹脂やプロピレン系樹脂等のオレフィン系樹脂を好ましく使用できる。エチレン系樹脂としては超低密度ポリエチレン(VLDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状中密度ポリエチレン(LMDPE),中密度ポリエチレン(MDPE)等のポリエチレン樹脂や、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)等を使用できる。また、プロピレン系樹脂としては、プロピレン単独重合体や、プロピレン-エチレンブテン-1共重合体等のプロピレン-α-オレフィンランダム共重合体などが挙げられる。
【0022】
オレフィン系樹脂以外の樹脂としては、例えば、ポリエチレン系エラストマー、ポリプロピレン系エラストマー、ブテン系エラストマー等の熱可塑性エラストマー;エチレン-メチルメタアクリレート共重合体(EMMA)、エチレン-エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン-メチルアクリレート(EMA)共重合体、エチレン-エチルアクリレート-無水マレイン酸共重合体(E-EA-MAH)、エチレン-アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA)等のエチレン系共重合体;更にはエチレン-アクリル酸共重合体のアイオノマー、エチレン-メタクリル酸共重合体のアイオノマー等を例示できる。
【0023】
表面層(A)に使用する樹脂成分として、上記結晶性ポリエステルとプロピレン系ブロック共重合体樹脂以外の樹脂を使用する場合には、その含有量が表面層(A)に含まれる樹脂成分中の20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましい。
【0024】
表面層(A)中には、上記樹脂成分以外に各種添加剤等を適宜併用してもよい。添加剤としては、例えば、滑剤、ブロッキング防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、耐電防止剤、防曇剤等、着色剤等を適宜使用できる。これら添加剤を使用する場合には、表面層(A)に使用する樹脂成分100質量部に対して、好ましくは2質量部以下、より好ましくは0.01~1質量部程度で使用する。
【0025】
なお、これら添加剤を使用する場合には、好適なヒートシール性を確保しやすいことから、フィラーの含有量、特に無機フィラーの含有量を300ppm以下とすることが好ましく、200ppm以下とすることがより好ましく、100ppm以下とすることがさらに好ましく、実質的に含有しないことが特に好ましい。
【0026】
表面層(A)の積層フィルムの総厚に対する厚み比率は、好適なフィルム加工性やヒートシール性を得やすいことから、積層フィルムの総厚みに対する表面層(A)の厚み比率としては、50~95%の範囲であることが好ましく、60~90%の範囲であることがより好ましい。
【0027】
[ヒートシール層(B)]
本発明の積層フィルムのヒートシール層(B)は、結晶性ポリエステルを含有し、ヒートシール層(B)に含まれる樹脂成分中の結晶性ポリエステルの含有量が70質量%以上の層である。当該ヒートシール層(B)を使用することで、耐熱性やヒートシール性に優れた積層フィルムを実現できる。
【0028】
ヒートシール層(B)に使用する結晶性ポリエステルとしては、上記表面層(A)と同様のものを使用でき、好ましいものも同様である。
【0029】
ヒートシール層(B)中の結晶性ポリエステルの含有量は70質量%以上とすることで、好適なヒートシール性や耐熱性を得られる点で好ましい。また、好適なフィルム加工性が得られる点で、75質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがより好ましい。当該含有量の上限は特に制限されるものではないが、99質量%以下であることが好ましく、95質量%以下であることがより好ましく、90質量%以下であることがさらに好ましい。
【0030】
ヒートシール層(B)には上記結晶性ポリエステルと共に、プロピレン系ブロック共重合体樹脂を併用することが好ましい。プロピレン系ブロック共重合体樹脂としては、上記表面層(A)と同様のものを使用でき、好ましいものも同様である。当該プロピレン系ブロック共重合体樹脂を使用することで、好適なフィルム加工性、耐ブロッキング性、易剥離性が得られ、剥離後の剥離外観が良好となる点でも好ましい。
【0031】
ヒートシール層(B)中のプロピレン系ブロック共重合体の含有量は、好適な易剥離性やフィルム加工性を得やすいことから、1~30質量%が好ましく、5~25質量%がより好ましく、10~20質量%がさらに好ましい。
【0032】
ヒートシール層(B)においても、樹脂成分として上記結晶性ポリエステルとプロピレン系ブロック共重合体樹脂のみを使用することも好ましいが、これら樹脂以外の包装用フィルムに使用される各種樹脂を使用してもよい。当該他の樹脂としては、上記表面層(A)にて例示した各種樹脂を同様に使用できる。これら他の樹脂を使用する場合には、その含有量がヒートシール層(B)に含まれる樹脂成分中の20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましい。
【0033】
ヒートシール層(B)においても上記表面層(A)と同様の各種添加剤等を適宜併用してもよい。これら添加剤を使用する場合には、ヒートシール層(B)に使用する樹脂成分100質量部に対して、好ましくは2質量部以下、より好ましくは0.01~1質量部程度で使用する。
【0034】
フィラーの含有量、特に無機フィラーの含有量についても、表面層(A)と同様に300ppm以下とすることが好ましく、200ppm以下とすることがより好ましく、100ppm以下とすることがさらに好ましく、実質的に含有しないことが特に好ましい。
【0035】
ヒートシール層(B)の積層フィルムの総厚に対する厚み比率は、易開封性やフィルム加工性を得やすいことから、積層フィルムの総厚みに対するヒートシール層(B)の厚み比率としては、5~30%の範囲であることが好ましく、10~20%の範囲であることがより好ましい。
【0036】
[中間層(C)]
本発明の積層フィルムにおいては、上記表面層(A)とヒートシール層(B)の間に、中間層(C)を設けることも好ましい。当該中間層(C)としては、結晶性ポリエステルとプロピレン系ブロック共重合体樹脂とを含有し、中間層(C)に含まれる樹脂成分中の結晶性ポリエステルの含有量が40~70質量%、プロピレン系ブロック共重合体樹脂の含有量が30~60質量%の層とすることで、特に安定した易剥離性を確保しやすくなる。
【0037】
中間層(C)に使用する結晶性ポリエステル及びプロピレン系ブロック共重合体樹脂としては、上記表面層(A)と同様のものを使用でき、好ましいものも同様である。
【0038】
中間層(C)中の結晶性ポリエステルの含有量は40~70質量%とすることが好ましく、50~60質量%とすることがより好ましい。結晶性ポリエステルの含有量を当該範囲とすることで、安定した易開封性を確保しやすくなる点で好ましい。
【0039】
中間層(C)中のプロピレン系ブロック共重合体樹脂の含有量は30~60質量%とすることが好ましく、35~50質量%とすることがより好ましい。プロピレン系ブロック共重合体樹脂の含有量を当該範囲とすることで、表面層(A)やヒートシール層(B)との層間強度を確保しつつ、好適な易剥離性が得られる点で好ましい。
【0040】
中間層(C)においても、樹脂成分として上記結晶性ポリエステルとプロピレン系ブロック共重合体樹脂のみを使用することも好ましいが、これら樹脂以外の包装用フィルムに使用される各種樹脂を使用してもよい。当該他の樹脂としては、上記表面層(A)にて例示した各種樹脂を同様に使用できる。これら他の樹脂を使用する場合には、その含有量が中間層(C)に含まれる樹脂成分中の20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましい。
【0041】
中間層(C)においても上記表面層(A)と同様の各種添加剤等を適宜併用してもよい。これら添加剤を使用する場合には、中間層(C)に使用する樹脂成分100質量部に対して、好ましくは2質量部以下、より好ましくは0.01~1質量部程度で使用する。
【0042】
中間層(C)を設ける場合には、積層フィルムの総厚みに対する中間層(C)の厚み比率としては、5~30%の範囲であることが好ましく、10~20%の範囲であることがより好ましい。
【0043】
中間層(C)は二層以上の複数層で構成してもよいが、当該複数層構成とする場合には各層が結晶性ポリエステルとプロピレン系ブロック共重合体樹脂とを含有し、中間層(C)に含まれる樹脂成分中の結晶性ポリエステルの含有量が40~70質量%、プロピレン系ブロック共重合体樹脂の含有量が30~60質量%の層とすることで、本発明の効果を好適に実現できる。なお、中間層を複数層とする場合には、当該配合範囲であれば、各層が同一の配合であっても、異なる配合であってもよい。また、中間層を複数層とする場合には、中間層の総厚が上記厚み比率範囲であることが好ましい。
【0044】
[積層フィルム]
本発明の積層フィルムは、上記表面層(A)及びヒートシール層(B)を有するフィルムである。最小の層構成は(A)/(B)の層構成であり、中間層(C)をもうける場合には(A)/(C)/(B)の層構成の積層フィルムである。本発明の積層フィルムは、当該構成により、好適なヒートシール性や易剥離性を有し、成膜時のブロッキングが生じにくく、高温処理後にも高いシール強度を確保した好適な耐熱性を有する。
【0045】
本発明の積層フィルムは、フィルムの厚さが5~100μmのものが好ましく、より好ましくは10~50μm、さらに好ましくは20~40μmである。フィルムの厚さがこの範囲であれば、好適なヒートシール性や耐熱性、フィルム加工性等を得やすくなる。
【0046】
また、各層の厚みは、特に制限されるものではないが、例えば、表面層(A)の厚みとしては、1~90μmであることが好ましく、10~40μmであることがより好ましく、20~30μmであることがさらに好ましい。ヒートシール層(B)の厚みは1~30μmであることが好ましく、2~20μmであることがより好ましく、2.5~10μmであることがさらに好ましい。中間層(C)を設ける場合には、その厚みは1~30μmであることが好ましく、2~20μmであることがより好ましく、3~10μmであることがさらに好ましい。
【0047】
なお、中間層(C)を複数層とする場合、好ましくは、表面層(A)/中間層(C1)/中間層(C2)/ヒートシール層(B)等の構成とする場合には、中間層の総厚みが上記中間層(C)の厚み範囲であることが好ましい。
【0048】
本発明の積層フィルムは、内容物保護の観点から、厚さ12μmの二軸延伸ポリエステルフィルムとラミネートした構成で、本発明のシーラントフィルムを厚さ100μmの二軸延伸ポリエステルフィルムに、シール幅1cmで、200℃、0.2MPa、1秒の条件でヒートシールした試験片を、180°方向に300mm/minの速度で剥離したときのシール強度の最大値が9N/15mm以上であることが好ましく、12N/15mm以上であることが好ましい。
【0049】
本発明の積層フィルムの製造方法としては、特に限定されないが、例えば、表面層(A)、ヒートシール層(B)に用いる各樹脂又は樹脂混合物、中間層(C)を設ける場合には、さらに中間層(C)に用いる樹脂又は樹脂混合物を、それぞれ別々の押出機で加熱溶融させ、共押出多層ダイス法やフィードブロック法等の方法により溶融状態で(A)/(B)の順や、(A)/(C)/(B)の順で積層した後、インフレーションやTダイ・チルロール法等によりフィルム状に成形する共押出法が挙げられる。この共押出法は、各層の厚さの比率を比較的自由に調整することが可能で、衛生性に優れ、コストパフォーマンスにも優れた積層フィルムが得られるので好ましい。
【0050】
本発明の積層フィルムは、上記の製造方法によって、実質的に無延伸の積層フィルムとして得られるため、真空成形による深絞り成形等の二次成形も可能となる。
【0051】
さらに、印刷インキとの接着性や、ラミネート用シーラントフィルムとして使用する場合のラミネート適性を向上させるため、前記表面層(A)に表面処理を施すことが好ましい。このような表面処理としては、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、クロム酸処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線処理等の表面酸化処理、あるいはサンドブラスト等の表面凹凸処理を挙げることができるが、好ましくはコロナ処理である。
【0052】
[蓋材]
本発明の積層フィルムは、そのまま蓋材として使用してもよいが、表面層(A)上に基材フィルムをラミネートした積層体からなる蓋材とすることも好ましい。基材フィルムとしては、シール性やデッドホールド性を損なわないものであれば特に制限はないが、例えば、二軸延伸ポリエステル(PET)、易裂け性二軸延伸ポリエステル(PET)、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)を中心層とした共押出二軸延伸ポリプロピレン、二軸延伸エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)をコートした共押出二軸延伸ポリプロピレン、二軸延伸ナイロン等が挙げられる。接着方法としては、ドライラミネーション、ウェットラミネーション、ノンソルベントラミネーション、押出ラミネーション等の方法が挙げられる。
【0053】
前記ドライラミネーションで用いる接着剤としては、例えば、ポリエーテル-ポリウレ
タン系接着剤、ポリエステル-ポリウレタン系接着剤等が挙げられる。
【0054】
本発明の蓋材は、開口部を有する容器への、ヒートシールにより密着させて密閉するための蓋材として使用するものであるが、この開口部を有する容器として、その最表面層の素材(蓋材をヒートシールする部分)が樹脂である容器に好ましく適用できる。特に、ヒートシール部がC-PETを主成分とする容器に対しても好適なシール性や耐熱性を実現できることから、C-PET容器用の蓋材としても好ましく使用できる。
【実施例
【0055】
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明をより詳しく説明する。以下、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
【0056】
(実施例1)
表面層(A)及びヒートシール層(B)の各層を形成する樹脂成分として、各々下記の樹脂を使用して、各層を形成する樹脂、樹脂混合物を調整した。これら樹脂、樹脂混合物を押出機に供給して溶融し、溶融した樹脂をフィードブロックを有するTダイ・チルロール法の共押出多層フィルム製造装置に供給し、共溶融押出により、フィルムの層構成が、表面層(A)/ヒートシール層(B)の2層構成で、各層の厚み比率が90%/10%、総厚みが30μmの積層フィルムを得た。
表面層(A):結晶性ポリエステル(1)(融点140℃、ガラス転移温度-70℃)60部、プロピレン-エチレンブロック共重合体樹脂(1)(メルトフローレート(以下、MFR)(230℃、21.18N)2.0g/10min、密度0.9g/cm、融点165℃、フィルム成膜時の曇り度52%)40部
ヒートシール層(B):結晶性ポリエステル樹脂(1)80部、プロピレン-エチレンブロック共重合体樹脂(1)20部
【0057】
(実施例2)
総厚みを25μmとした以外は実施例1と同様にして多層フィルムを得た。
【0058】
(実施例3)
総厚みを50μmとした以外は実施例1と同様にして多層フィルムを得た。
【0059】
(実施例4)
表面層(A)、中間層(C)及びヒートシール層(B)の各層を形成する樹脂成分として、各々下記の樹脂を使用して、各層を形成する樹脂、樹脂混合物を調整した。これら樹脂、樹脂混合物を押出機に供給して溶融し、溶融した樹脂をフィードブロックを有するTダイ・チルロール法の共押出多層フィルム製造装置に供給し、共溶融押出により、フィルムの層構成が、表面層(A)/中間層(C)/ヒートシール層(B)の3層構成で、各層の厚み比率が70%/20%/10%、総厚みが30μmの積層フィルムを得た。
表面層(A):結晶性ポリエステル(1)60部、プロピレン-エチレンブロック共重合体樹脂(1)40部
中間層(C):結晶性ポリエステル(1)58部、プロピレン-エチレンブロック共重合体樹脂(1)42部
ヒートシール層(B):結晶性ポリエステル(1)80部、プロピレン-エチレンブロック共重合体樹脂(1)20部
【0060】
(実施例5)
中間層(C)に使用する樹脂成分を下記とした以外は実施例4と同様にして積層フィルムを得た。
中間層(C):結晶性ポリエステル(1)55部、プロピレン-エチレンブロック共重合体樹脂(1)45部
【0061】
(実施例6)
中間層(C)に使用する樹脂成分を下記とした以外は実施例4と同様にして積層フィルムを得た。
中間層(C):結晶性ポリエステル(1)53部、プロピレン-エチレンブロック共重合体樹脂(1)47部
【0062】
(実施例7)
ヒートシール層(B)に使用する樹脂成分を下記とした以外は実施例1と同様にして積層フィルムを得た。
ヒートシール層(B):結晶性ポリエステル(1)90部、プロピレン-エチレンブロック共重合体樹脂(1)10部
【0063】
(実施例8)
表面層(A)に使用する樹脂成分を下記とした以外は実施例1と同様にして積層フィルムを得た。
表面層(A):結晶性ポリエステル(1)55部、プロピレン-エチレンブロック共重合体樹脂(1)45部
【0064】
(実施例9)
総厚みを25μmとした以外は実施例8と同様にして多層フィルムを得た。
【0065】
(実施例10)
表面層(A)に使用する樹脂成分を下記とした以外は実施例7と同様にして積層フィルムを得た。
表面層(A):結晶性ポリエステル(1)55部、プロピレン-エチレンブロック共重合体樹脂(1)45部
【0066】
(比較例1)
表面層(A)及びヒートシール層(B)に使用する樹脂成分を下記とした以外は実施例1と同様にして積層フィルムを得た。
表面層(A):結晶性ポリエステル(1)60部、プロピレン-エチレンランダム共重合体樹脂(1)(MFR(230℃、21.18N)8.0g/10min、密度0.9g/cm、融点138℃)40部
ヒートシール層(B):結晶性ポリエステル(1)80部、プロピレン-エチレンランダム共重合体樹脂(1)20部
【0067】
(比較例2)
表面層(A)に使用する樹脂成分を下記とした以外は実施例1と同様にして積層フィルムを得た。
表面層(A):結晶性ポリエステル(1)35部、プロピレン-エチレンブロック共重合体樹脂(1)65部
【0068】
(比較例3)
表面層(A)に使用する樹脂成分を下記とした以外は実施例1と同様にして積層フィルムを得た。
表面層(A):結晶性ポリエステル(1)80部、プロピレン-エチレンブロック共重合体樹脂(1)20部
【0069】
(比較例4)
ヒートシール層(B)に使用する樹脂成分を下記とした以外は実施例1と同様にして積層フィルムを得た。
ヒートシール層(B):結晶性ポリエステル(1)60部、プロピレン-エチレンブロック共重合体樹脂(1)40部
【0070】
実施例及び比較例にて得られた積層フィルムにつき、以下の評価を行った。得られた結果は下表のとおりである。
【0071】
[フィルム加工性の評価]
実施例及び比較例の積層フィルムについて、成膜時におけるフィルム加工性を以下の基準で評価した。
〇:多層フィルムがニップロールを通過する際に当該ロールに貼り付くことなく成膜でき、巻き上がったフィルムにしわの発生もない。
△:ニップロールを通過する際に若干当該ロールへの貼り付きが生じ、巻き上がったフィルムにしわが発生する。
×:多層フィルムがニップロールを通過する際に当該ロールに貼り付いて、フィルムの巻き上げが困難。
【0072】
[シール強度の評価]
得られた積層フィルムの表面層(A)側に、ウレタン系接着剤を使用して膜厚12μmの2軸延伸ポリエステルフィルムをラミネートして、ラミネートフィルムを作成した。得られたラミネートフィルムを、10cm×10cmに切り出し、厚さ100μmの二軸延伸ポリエステルフィルムと、ヒートシール面が二軸延伸ポリエステルフィルム側に来るように重ね合わせ、ヒートシールテスター(テスター産業製精密ヒートシーラー)を用いて、シール温度200℃に調節された上部ヒートシールバーが、積層フィルムの最外層側にくるようにセットし、シール幅1cmで、0.2MPa、1秒の条件でヒートシールした。ヒートシールされた部分と垂直方向に15mm幅の短冊状の試験片を切り出し、万能型引張試験機(株式会社エー・アンド・ディー製)を用いて、180°方向に300mm/minの速度で剥離したときの最大強度をシール強度とした。好適な易剥離性とシール性が得られているか、以下の基準で評価した。
◎:14N超、20N以下
〇:9N超、14N以下
×:9N以下
【0073】
[剥離外観の評価]
上記シール強度測定に使用した試験片において剥離後の被着体外観を目視で観察し、以下の基準で評価した。
〇:被着体(二軸延伸ポリエステルフィルム)に樹脂残りや膜残りがなかった。
×:積層フィルムが凝集剥離して被着体に樹脂残りや膜残りが確認された。
【0074】
【表1】
【0075】
【表2】
【0076】
上記表から明らかなとおり、実施例1~10の本発明の積層フィルムは、高いシール強度を有しつつ、好適なフィルム加工性や開封性を有するものであった。一方、比較例1~4の積層フィルムは、好適なフィルム加工性や開封性、高いシール強度を兼備できないものであった。