(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】クリーニングブレード、画像形成装置、プロセスカートリッジおよびシート搬送ローラ
(51)【国際特許分類】
G03G 21/00 20060101AFI20240116BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20240116BHJP
G03G 21/18 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
G03G21/00 318
G03G15/00 553
G03G21/18 114
(21)【出願番号】P 2020003486
(22)【出願日】2020-01-14
【審査請求日】2022-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 一彦
(72)【発明者】
【氏名】中井 洋志
(72)【発明者】
【氏名】大森 匡洋
【審査官】飯野 修司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/114243(WO,A1)
【文献】国際公開第2005/080469(WO,A1)
【文献】特開2005-156696(JP,A)
【文献】国際公開第2013/094129(WO,A1)
【文献】特開2017-010013(JP,A)
【文献】特開2012-203017(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 21/00
G03G 15/00
G03G 21/18
B65H 3/06
B65H 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレード部材の先端稜線部を表面移動する被清掃部材の表面に当接して被清掃部材の表面から付着物を除去するクリーニングブレードにおいて、
前記ブレード部材は、前記先端稜線部を含むエッジ層と、前記エッジ層に積層されるバックアップ層とを有する積層構造であり、
前記バックアップ層は、ポリロタキサン及び/又は架橋ポリロタキサンを含み、
前記先端稜線部は、ポリロタキサン及び/又は架橋ポリロタキサンを含む弾性体であ
り、
前記エッジ層のポリロタキサン及び/又は架橋ポリロタキサンの含有率が、前記バックアップ層のポリロタキサン及び/又は架橋ポリロタキサンの含有率よりも多いことを特徴とするクリーニングブレード。
【請求項2】
請求項1に記載のクリーニングブレードにおいて、
前記先端稜線部の体積抵抗が1×10
10Ω・cm以上であることを特徴とするクリーニングブレード。
【請求項3】
ブレード部材の先端稜線部を表面移動する被清掃部材の表面に当接して被清掃部材の表面から付着物を除去するクリーニングブレードにおいて、
前記ブレード部材は、前記先端稜線部を含むエッジ層と、前記エッジ層に積層されるバックアップ層とを有する積層構造であり、
前記バックアップ層は、ポリロタキサン及び/又は架橋ポリロタキサンを含み、
前記先端稜線部は、ポリロタキサン及び/又は架橋ポリロタキサンを含み、体積抵抗が
1×10
10Ω・cm以上であ
り、
前記エッジ層のポリロタキサン及び/又は架橋ポリロタキサンの含有率が、前記バックアップ層のポリロタキサン及び/又は架橋ポリロタキサンの含有率よりも多いことを特徴とするクリーニングブレード。
【請求項4】
請求項1乃至3いずれか一項に記載のクリーニングブレードにおいて、
前記ポリロタキサン及び/又は架橋ポリロタキサンは、前記先端稜線部を含む層にバルクとして含まれていることを特徴とするクリーニングブレード。
【請求項5】
ブレード部材の先端稜線部を表面移動する被清掃部材の表面に当接して被清掃部材の表面から付着物を除去するクリーニングブレードにおいて、
前記ブレード部材は、前記先端稜線部を含むエッジ層と、前記エッジ層に積層されるバックアップ層とを有する積層構造であり、
前記バックアップ層は、ポリロタキサン及び/又は架橋ポリロタキサンを含み、
前記エッジ層は、ポリロタキサン及び/又は架橋ポリロタキサンをバルクとして含
み、
前記エッジ層のポリロタキサン及び/又は架橋ポリロタキサンの含有率が、前記バックアップ層のポリロタキサン及び/又は架橋ポリロタキサンの含有率よりも多いことを特徴とするクリーニングブレード。
【請求項6】
請求項1乃至5いずれか一項に記載のクリーニングブレードにおいて、
前記先端稜線部は、ポリロタキサン及び/又は架橋ポリロタキサンを含むポリウレタンゴムであることを特徴とするクリーニングブレード。
【請求項7】
請求項1乃至6いずれか一項に記載のクリーニングブレードにおいて、
ポリロタキサン及び/又は架橋ポリロタキサンは、エーテル基を有することを特徴とするクリーニングブレード。
【請求項8】
請求項
1乃至7いずれか一項に記載のクリーニングブレードにおいて、
前記エッジ層のtanδピーク温度が、バックアップ層のtanδピーク温度よりも低温
であることを特徴とするクリーニングブレード。
【請求項9】
像担持体と、
前記像担持体の表面に付着した不要な付着物を除去するためのクリーニングブレードとを備え、
前記像担持体上に形成した画像を最終的にシートに転移させる画像形成装置において
前記クリーニングブレードとして、請求項1乃至
8いずれか一項に記載のクリーニングブレードを用いることを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
像担持体と、前記像担持体の表面に接触し、その表面上に付着した不要な付着物を除去するためのクリーニングブレードとを備え、画像形成装置に対して着脱自在に構成されたプロセスカートリッジにおいて、
前記クリーニングブレードとして、請求項1乃至
8のいずれか一項に記載のクリーニングブレードを用いることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリーニングブレード、画像形成装置、プロセスカートリッジおよびシート搬送ローラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ブレード部材の先端稜線部を表面移動する被清掃部材の表面に当接して被清掃部材の表面から付着物を除去するクリーニングブレードが知られている。
【0003】
特許文献1には、上記クリーニングブレードとして、ブレード部材を、先端稜線部を含むエッジ層とバックアップ層とで構成し、エッジ層を、イソシアネート成分として、1,5-ナフタレンジイソシアネート(NDI)を使用した硬度が80°(JIS-A)以上のポリウレタンとし、バックアップ層を、NDI系以外のイソシアネート成分を用い硬度が80°未満のポリウレタンとしたものが記載されている。これによれば、高硬度と低μ化(低摩擦化)、且つ、欠けにくい耐久性の高いクリーニングブレードを提供できると記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のクリーニングブレードでは、近年の更なる長寿命化に課題が残っていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するために、本発明は、ブレード部材の先端稜線部を表面移動する被清掃部材の表面に当接して被清掃部材の表面から付着物を除去するクリーニングブレードにおいて、前記ブレード部材は、前記先端稜線部を含むエッジ層と、前記エッジ層に積層されるバックアップ層とを有する積層構造であり、前記バックアップ層は、ポリロタキサン及び/又は架橋ポリロタキサンを含み、前記先端稜線部は、ポリロタキサン及び/又は架橋ポリロタキサンを含む弾性体であり、前記エッジ層のポリロタキサン及び/又は架橋ポリロタキサンの含有率が、前記バックアップ層のポリロタキサン及び/又は架橋ポリロタキサンの含有率よりも多いことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、クリーニングブレードの長寿命化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本実施形態に係る画像形成装置の概略構成図。
【
図4】ポリロタキサンがバルクとして含まれている状態と、バルクとして含まれていない状態について説明する図
【
図5】(a)は、先端稜線部にポリロタキサンが含まれていないウレタンゴムのみからなるクリーニングブレードの拡大図であり、(b)は、先端稜線部にポリロタキサンを含むウレタンゴムからなるクリーニングブレードの拡大図。
【
図6】(a)は、添加するポリロタキサン添加量が互いに異なるウレタンゴムの各温度におけるtanδを示すグラフであり、(b)は、ポリロタキサン添加量と、tanδのピーク温度との関係を示すグラフ。
【
図8】低温ランニングで用いるランニングチャートを示す図。
【
図9】クリーニング不良によるランニングチャートに現れる異常画像の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明に係るクリーニングが適用された中間転写方式のタンデム型のフルカラー画像形成装置(以下、単に「画像形成装置」という。)の一実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る画像形成装置1の概略構成図である。
この画像形成装置1は、その本体上部から、自動原稿搬送装置3、原稿読取部4を備えている。画像形成装置1は、原稿読取部4の下方に、画像形成済みのシートとしての記録紙Pを積載するスタック部5を備えている。また、画像形成装置1は、スタック部5の下方に、原稿読取部4によって読み取った原稿画像に基づいて画像を形成する画像形成部2と、画像形成部2に記録紙Pを給紙する給紙部6とを備えている。
【0009】
自動原稿搬送装置3は、原稿束から原稿を1枚ずつ分離して原稿読取部4のコンタクトガラス上に自動給紙し、原稿読取部4によりコンタクトガラス上に搬送された原稿を読み取る。
【0010】
画像形成部2は、複数の支持ローラに張架され、図中反時計回りに表面移動する中間転写ベルト17を備えている。中間転写ベルト17の下側の張架面に対して、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色のトナー像を形成する作像ユニット10Y、10C、10M、10Kが並列に配置してある。各作像ユニット10Y、10C、10M、10Kは、各色のトナー像が形成される感光体11Y、11C、11M、11Kを備えている。画像形成部2は、感光体11Y、11C、11M、11Kの周りに、それぞれ帯電装置、現像装置13Y、13C、13M、13K、感光体クリーニング装置等を備えている。
【0011】
また、画像形成部2は、中間転写ベルト17の各感光体11Y、11C、11M、11Kに対向位置の内周面に接するよう、1次転写ローラ14Y、14C、14M、14Kを備えている。また、画像形成部2は、中間転写ベルト17の表面移動方向に関して、1次転写ローラ14Y、14C、14M、14Kよりも下流側の外周面に接するよう、2次転写ローラ18を備えている。さらに、画像形成部2は、2次転写ローラ18よりも下流側の中間転写ベルト17の外周面に接するよう、ベルトクリーニング装置を備えている。画像形成部2は、2次転写ローラ18の上方に、定着装置20を備えている。
【0012】
また、画像形成部2は、各作像ユニット10Y、10C、10M、10Kの下方に、各感光体11Y、11C、11M、11Kにレーザ光を照射するための光書込ユニット19を備えている。また、画像形成部2は、中間転写ベルト17の上方に、トナー補給装置28を備えている。トナー補給装置28は、各色(イエロー、シアン、マゼンタ、ブラック)に対応した4つのトナーカートリッジ(トナー容器)を着脱自在(交換自在)に設置している。このトナー補給装置28におけるトナーカートリッジ以外の部分は、トナーカートリッジから排出されるトナーを現像装置13Y、13C、13M、13Kに搬送するトナー搬送装置である。
【0013】
給紙部6は、積層された複数枚の記録紙Pを収容する給紙カセット7と、積層された複数枚の記録紙Pからその最上位に位置する記録紙Pを画像形成部2に向けて給紙する給紙ローラ8と備えている。
【0014】
上記構成の画像形成装置1の画像形成動作を説明する。
画像形成装置1は、各作像ユニット10で、各色トナー像の形成を行う。画像形成装置1は、各感光体11の回転とともに、まず帯電装置で感光体11の表面を一様に帯電する。次いで、画像形成装置1は、光書込ユニット19から、原稿読取部4によって読み取った原稿の画像データを色毎に分解した画像情報データに基づくレーザ光を各感光体11上に照射し、静電潜像を形成する。その後、画像形成装置1は、各現像装置13によりトナーを静電潜像に付着させ可視像化することで各感光体11上に各色トナー像を形成する。
【0015】
画像形成装置1は、各感光体11Y、11C、11M、11K上の各色トナー像を、1次転写ローラ14Y、14C、14M、14Kにより中間転写ベルト17上に順次転写して、重ね合せカラートナー像を形成する。トナー画像転写後の各感光体11Y、11C、11M、11K上の表面は、感光体クリーニング装置15Y,15C,15M、15Kで残留トナーを除去して清掃し、再度の画像形成に備える。
【0016】
一方、給紙部6は、給紙カセット7に収容された記録紙Pを1枚づつ分離して給紙ローラ8にて画像形成部2に向けて送り出す。レジストローラ9は、給紙された用紙を突き当てて止める。そして、レジストローラ9は、画像形成部2のトナー像形成のタイミングに合わせて、突き当てて止めた記録紙Pを中間転写ベルト17と2次転写ローラ18との間の2次転写部に送り出す。2次転写部で中間転写ベルト17上の重ね合せカラートナー像が供給された記録紙Pに転写される。画像形成装置1は、トナー像が転写された記録紙Pを定着装置20へ搬送し、定着装置20によりトナー像を定着後、スタック部5へ排出する。一方、トナー像転写後の中間転写ベルト17の表面は、ベルトクリーニング装置で残留トナーを除去して清掃し、再度の画像形成に備える。
【0017】
なお、本実施形態では、各作像ユニット10は、感光体11、帯電装置、現像装置13、感光体クリーニング装置とが共通の支持体上に支持され、プリンタ本体に対して一体的に着脱自在に構成されたプロセスカートリッジの形態をとっている。このようなプロセスカートリッジの形態とすることで、メンテナンス性を向上させることができる。
【0018】
図2は、作像ユニット10の概略構成図である。
4つの作像ユニット10Y、10C、10M、10Kは、作像プロセスに用いられるトナーの色が異なる以外はほぼ同一構造であるので、作像ユニット及び現像装置及びトナー補給部における符号のアルファベット(Y、M、C、K)を省略する。
【0019】
図2に示すように、作像ユニット10は、像担持体であり、被清掃部材である感光体11と、帯電装置12(帯電ローラ)と、現像装置13と、感光体クリーニング装置15と、潤滑剤供給装置16とをケースに一体的に収納している。作像ユニット10は、装置本体に対して着脱可能なプロセスカートリッジの形態をとっている。帯電装置12(帯電ローラ)は、感光体11を帯電するものである。現像装置13は、感光体11上に形成される静電潜像を現像するものである。感光体クリーニング装置15は、感光体11上の未転写トナーを回収するものである。潤滑剤供給装置16は、感光体11上に潤滑剤を供給するものである。
【0020】
帯電装置12は、感光体11の表面に対向するように配置してあり、帯電電圧を印加されている帯電ローラで主に構成している。
【0021】
現像装置13は、現像剤担持体としての現像ローラ13aと、攪拌スクリュ13b2と、供給スクリュ13b1と、現像ブレード13cとで主に構成している。現像ローラ13aは、現像剤を表面に担持するものである。攪拌スクリュ13b2は、現像剤収容部に収容された現像剤を攪拌しながら搬送するものである。供給スクリュ13b1は、攪拌された現像剤を現像ローラ13aに供給しながら搬送するものである。現像ブレード13cは、現像ローラ13aに対向し現像ローラ表面の現像剤を規制するものである。現像装置13は、攪拌スクリュ13b2によって現像剤収容部に収容された現像剤を攪拌しながら搬送し、攪拌された現像剤を供給スクリュ13b1によって現像ローラ13aに供給しながら搬送する。現像ローラ13aは、感光体11の表面にトナーを供給して静電潜像を可視像化する。
【0022】
クリーニング装置としての感光体クリーニング装置15は、クリーニングブレード15aを備えている。クリーニングブレード15aは、1層または2層のウレタンゴムなどの体積抵抗が1×1010Ω・cm以上の絶縁性の弾性体で構成されている。クリーニングブレード15aは、感光体11側に位置する先端稜線部を感光体11の表面に接触させて、感光体11の表面を清掃する。クリーニングブレード15aにより機械的に除去された感光体11上の残留トナー等の付着物は、感光体クリーニング装置15へ落下する。感光体クリーニング装置15内に設けられた搬送コイル15bは、落下した廃トナーを廃トナー回収容器へ搬送する。クリーニングブレード15aの詳細は、後述する。
【0023】
潤滑剤供給手段たる潤滑剤供給装置16は、ブレード状部材16d,固形潤滑剤16b、潤滑剤供給ローラ16a、保持部材16c、ケース16f、加圧機構160などを有している。潤滑剤供給ローラ16aは、感光体11と固形潤滑剤16bとに摺接する。保持部材16cは、固形潤滑剤16bを保持するものである。ケース16fは、保持部材16cを固形潤滑剤16bとともに収納するものである。加圧機構160は、保持部材16cとともに固形潤滑剤16bを潤滑剤供給ローラ16a側へ加圧するものである。
【0024】
潤滑剤供給装置16は、固形潤滑剤16bを、潤滑剤供給ローラ16aを介して感光体11の表面に塗布し、ブレード状部材16d(薄層化ブレード)で潤滑剤を均一化し、感光体11の表面を潤滑剤で皮膜化する。
【0025】
次に、本実施形態の特徴部について説明する。
図3は、クリーニングブレード15aの概略構成図である。クリーニングブレード15aは、感光体11に当接する先端稜線部151cを有するブレード部材15a1と、ブレード部材15a1を保持する金属製のブレードホルダー15a2とを有している。
ブレード部材15a1は、
図3(a)に示すように、弾性体からなる単層構造でもよいし、
図3(b)~
図3(e)に示すように、先端稜線部151cを含む弾性体からなるエッジ層151aと弾性体からなるバックアップ層151bとからなる二層構造でもよい。
図3(b)~
図3(d)のブレード部材は、遠心成型によって各層を順次重ね合わせることで作成されたものである。一方、
図3(e)のエッジ層151aは、スプレー塗工、ディップ塗工等によって矩形状のバックアップ層151bの先端稜線部を被膜することで作成されたものである。なお、上記弾性体とは、マルテンス硬度が5以下のものを言う。
【0026】
また、ブレード部材15a1は、体積抵抗値が1×1010Ω・cm以上(二層構造のブレード部材15a1については、エッジ層151aおよびバックアップ層151bいずれも体積抵抗値が1×1010Ω・cm以上)の絶縁体である。
【0027】
また、ブレード部材15a1の少なくとも先端稜線部151cを含む層は、ポリロタキサンがバルクとして含んでいる。具体的には、
図3(a)に示す単層のブレード部材15a1は、ブレード部材15a1そのものに、ポリロタキサンをバルクとして含んである。一方、
図3(b)~
図3(e)に示す二層構造のブレード部材15a1は、少なくともエッジ層151aにポリロタキサンをバルクとして含んである。二層構造のブレード部材15a1は、エッジ層151aとバックアップ層151bの両方に、ポリロタキサンをバルクとして含んでもよい。
【0028】
なお、上記バルクとして含むとは、ポリロタキサンが均一に分散していることである。
図4に示すようにポリロタキサンを点とした場合、
図4(a)~
図4(e)が、ポリロタキサンをバルクとして含んでいる状態である。一方、
図4(f)~
図4(h)、
図4(j)に示すように、ポリロタキサンが偏在しているもの、
図4(i)に示すように含浸処理で、ポリロタキサン濃度が場所により異ならせているものは、バルクとして含むものではない。
【0029】
また、バルクとして添加するポリロタキサンは、架橋ポリロタキサンでもよく、また、ポリロタキサンと架橋ポリロタキサンの両方をバルクとして添加してもよい。
【0030】
機械的に感光体から付着物を除去するクリーニングブレード15aの除去能力は、経時、環境毎(低温、常温、高温)に維持することが求められ、クリーニングブレードの性能が、作像ユニット10の寿命を左右する。近年、作像ユニット10の長寿命化の要求から、クリーニングブレード15aの長寿命化が求められ、耐磨耗性向上、及び環境変化に対する除去能力維持が課題となっている。
【0031】
このように、機械的に感光体から付着物を除去するクリーニングブレード15aにおいて、除去能力が低下するとクリーニングブレードからトナーがすり抜けが発生する。トナーのすり抜けは、以下の二つの不具合を引き起こす。まず、一つ目の不具合は、すり抜けトナーは下流にある帯電ローラ12aの汚れを加速し、汚れた帯電ローラ12aは帯電ムラ・帯電不良が引き起こし、ムラ画像・スジ状の異常画像が発生するという不具合である。
【0032】
2つ目の不具合は、潤滑剤供給ローラ16aがすり抜けトナーで汚れすぎると固形潤滑剤16bに対する研削能力が上昇し、潤滑剤の過剰塗布状態になる。潤滑剤の過剰塗布は潤滑剤による帯電ローラ12aの汚れを引き起こす他、過剰な潤滑剤は均一に塗布されず塗布ムラを引き起こしやすくなる。潤滑剤の塗布ムラは感光体11の帯電性のバラつきによる表面電位のバラつきを引き起こし画像の濃度ムラを引き起こすこととなる。
【0033】
また、機械的に感光体から付着物を除去するクリーニングブレード15aは、部材に電圧を印加し被清掃体たる感光体11上のトナーなどの付着物を静電的に除去するものとは異なり、感光体への当接圧が大きい。そのため、機械的に感光体から付着物を除去するクリーニングブレード15aは、先端稜線部151cがスティックスリップ運動をし、先端稜線部151cが摩耗しやすい。機械的に感光体から付着物を除去するクリーニングブレード15aは、この先端稜線部151cの摩耗が除去能力に大きな影響を及ぼす。クリーニングブレード15aのスティックスリップ運動による先端稜線部151cの摩耗は、先端稜線部151cを構成するウレタンゴム高分子の分子鎖の切断、破壊が摩耗として顕在化したものである。ウレタンゴム高分子を構成する分子鎖の切断、破壊は、先端稜線部151c付近へ集中する累積応力の大小によって説明できる。ウレタンゴム高分子の分子鎖に加わる累積応力が小さい場合は、分子鎖の切断、破壊が少なく、摩耗は進まない。しかし、先端稜線部151cがスティックスリップ運動することで累積応力が大きくなり、分子鎖の切断、破壊が多くなる。そして、このような分子鎖の切断および破壊が、摩耗として顕在化する。
【0034】
画像形成装置が使用される環境は、空調が管理されたオフィス環境のみならず、低温低湿から高温高湿環境まで様々な温湿度環境で使用される。また、空調管理されたオフィス環境でも、空調管理された就業時間以外は、低温低湿、高温高湿環境にさらされる。例えば、空調制御が開始した直後は画像形成装置自体がオフィスの空調設定温湿度に追従しきれず、空調制御開始直後は低温低湿、高温高湿にさらされることになる。
【0035】
画像形成装置が、低温低湿、高温高湿にさらされることで、この画像形成装置に搭載されているクリーニングブレード15aも低温低湿、高温高湿にさらされることになる。クリーニングブレード15aを構成する弾性ゴム材は、温湿度の影響によってゴム物性の変化が起こりやすい。低温化によるゴム弾性低下による当接圧変化や、高温化によるゴム硬度低下による当接圧変化により、クリーニングブレード15aは、鳴き、異音などの不具合や、高湿化(加水分解促進)による機械強度低下などによるクリーニング性能の低下が発生する。
【0036】
本実施形態のクリーニングブレード15aは、上述したように先端稜線部151cを含む層に、ポリロタキサンを添加することで、耐摩耗性、低温環境下におけるクリーニング性の改善を図っている。
【0037】
下記化1は、ロタキサン構造式を示している。
【0038】
【0039】
上記化1に示すように、ロタキサン構造は、線状高分子がシクロデキストリンからなる環状分子を貫き、さらに環状分子が抜けないようにアダマンタン基などの大きな分子で線状高分子の両末端を留めた構造である。このような構造であるため、環状分子が線状高分子上を自由に動くことができる。ポリロタキサンは、線状高分子が、多数の環状分子を貫いたものである。環状分子の構成分子であるシクロデキストリンは、多数の水酸基が存在する。これら水酸基を架橋点として環状分子同士、または環状分子と他のポリマー(例えば、ウレタンゴム)と架橋させると、架橋点が自由に動き、架橋点が滑車のような働きをする滑車効果が得られる。
【0040】
ポリロタキサンとしては、エーテル系、エステル系があり、エーテル系としては、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)鎖のポリロタキサンが挙げられる。エステル系としては、アドバンストソフトマテリアル社のカプロラクトン鎖のポリロタキサンが挙げられる。
【0041】
図5(a)は、先端稜線部151cにポリロタキサンが含まれていないウレタンゴムのみからなるクリーニングブレードの拡大図であり、
図5(b)は、先端稜線部151cにポリロタキサンを含むウレタンゴムからなるクリーニングブレードの拡大図である。
機械的に感光体から付着物を除去するクリーニングブレード15aにおいて、先端稜線部151cは、
図5に示すように、図中矢印Aに示す感光体移動方向に引っぱられた後、元の位置に戻るスティックスリップ運動が発生する。クリーニングブレード15aは、このような先端稜線部151cのスティックスリップ運動により架橋点への応力集中が繰り返され、分子鎖の切断、破壊が多く発生する。その結果、先端稜線部にポリロタキサンを含んでいないクリーニングブレードは、破線で示すように疲労破壊が発生し、ブレード摩耗が進行する。
【0042】
一方、
図5(b)に示すように、先端稜線部151cがポリロタキサンを含むウレタンゴムからなるクリーニングブレードにおいては、先端稜線部151cがスティックスリップ運動しても上記滑車効果により架橋点への応力集中が起きない。その結果、先端稜線部151cがポリロタキサンを含むクリーニングブレードは、分子鎖の切断、破壊がほとんど起こらず、疲労破壊によるブレード部材15a1の摩耗が良好に抑えられる。このように、クリーニングブレード15aの先端稜線部151cに、ポリロタキサンを添加したクリーニングブレードは、耐磨耗性を大幅に向上させることができ、長寿命化を図ることができる。
【0043】
下記表1は、添加するポリロタキサン添加量が互いに異なるウレタンゴムの物性値を示すものである。
図6(a)は、添加するポリロタキサン添加量が互いに異なるウレタンゴムの各温度におけるtanδを示すグラフであり、
図6(b)は、ポリロタキサン添加量と、tanδのピーク温度との関係を示すグラフである。
【0044】
【0045】
また、表1および
図6(a)、
図6(b)からわかるように、ポリロタキサンの添加量が増えるほど、tanδのピーク温度が下がることがわかる。よって、クリーニングブレード15aの先端稜線部151cを含む層がポリロタキサンを含むことで、低温環境下でも、先端稜線部151cのゴム性を維持することが可能となる。これにより、先端稜線部にポリロタキサンを含むクリーニングブレードは、低温環境下でもゴム弾性を維持でき、当接圧の低下を抑制することができ、低温環境下でも良好なクリーニング性を得ることができる。
【0046】
また、表1からわかるように、ポリロタキサンの添加量が、25%以上のものは、引張り強度がポリロタキサンを添加していないものに比べて低下しており、耐摩耗性が低下するおそれがある。従って、先端稜線部151cを含む層へのポリロタキサンの添加量は、15%以下にするのが好ましい。
【0047】
また、二層構造のブレード部材を有するクリーニングブレードは、ポリロタキサンをバックアップ層151bにもバルクとして含ませてもよい。このように、バックアップ層151bにもポリロタキサンを添加したクリーニングブレードは、バックアップ層151bの低温環境下におけるゴム性を維持でき、より一層低温環境下における当接圧の低下を抑制することができ好ましい。
【0048】
エッジ層151aとバックアップ層151bのそれぞれにポリロタキサンを添加する場合は、バックアップ層151bのポリロタキサンの添加量は、エッジ層151aのポリロタキサン添加量よりも少なくするのが好ましい。これは、tanδピーク温度が低温であると、35℃などの高温環境下での弾性が非常に大きくなり、捲れや異音、異常振動が起きるおそれがあるからである。そのため、バックアップ層151bのポリロタキサンの添加量は、エッジ層151aのポリロタキサン添加量よりも少なくして、バックアップ層151bのtanδのピーク温度を下げすぎないようにする。これにより、クリーニングブレードは、低温環境下、高温環境下のいずれの環境下において、ブレード全体で適切な弾性を維持することができる。よって、クリーニングブレードは、低温環境下でのクリーニング性を良好にでき、かつ、高温環境下での捲れや異音、異常振動の発生を抑制できる。
【0049】
通常、エステル系のウレタンゴムブレードの場合は、加水分解により引張強度、硬度、などの機械特性が低下することが分かっており、ブレードの感光体に対する当接圧変動の原因として課題となっている。そのため、ポリロタキサンは、環状分子の構成分子であるシクロデキストリンの水酸基(化1に示す(R1)-OH)にエーテル基を付けるのが好ましい。エーテル基を付けることで、ウレタンゴムブレードは、加水分解性が起こりにくくなる。これにより、加水分解による引張強度、硬度、などの機械特性が低下を抑制でき、クリーニングブレードは、経時に渡り良好なクリーニング性を維持することができる。
【0050】
ポリロタキサンの製法は、例えば、特許第6286439号公報などに開示されている公知の製法を用いることができ、上記水酸基(化1に示す(R1)-OH)にエーテル基を付けたエーテル系ポリロタキサンも次のような製法で得ることができる。エーテル系のポリロタキサンの製造は、まず、ポリエチレングリコール(PEG)と2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシラジカル(TEMPO)、臭化ナトリウムを水に溶解する。次に、エーテル系のポリロタキサンの製造は、水酸化ナトリウム等を加えて強アルカリ性で反応させたあと、エタノールを加えて反応を終了させ、ここに水に溶解したα-シクロデキストリンを加え、包接錯体を得る。次に、ポリロタキサンの製造は、得られた包接錯体に対してさらにアダマンタンアミンを加えて反応させることでPEGの末端がアダマンタンで封止されたポリロタキサンを得る。次に、エーテル系のポリロタキサンの製造は、ポリロタキサンを濾過により取り出して乾燥させてから、テトラヒドロフラン(THF)等の環状エーテルを加えて加熱撹拌する。これにより、α-シクロデキストリンにTHFがグラフト化されたエーテル系ポリロタキサンができる。
【0051】
以下、本出願人が行なった評価試験について説明する。
評価試験は、
図3(a)に示した単層構造のブレード部材を備えた実施例1~38、比較例1~7のクリーニングブレード15aについて、ブレード摩耗速度と、低温環境下でのクリーニング性について評価を行ったものである。
【0052】
まず、比較例1~7のクリーニングブレードについて説明する。
【0053】
[比較例1]
(プレポリマーの調製)
本出願人は、プラクセル220N(ダイセル)100部に、コロネートT-100(東ソー)を18部加え、真空下で100℃に加熱し30分撹拌することで両末端がイソシアネート基となったプレポリマーAを得た。
【0054】
(硬化剤の調製)
本出願人は、1、4-ブタンジオール(関東化学)、トリメチロールプロパン(関東化学)を77:23の割合で混合し、100℃に加熱して全体が均一な液状になるようにして硬化剤Aを得た。
【0055】
(ウレタンゴム成型)
本出願人は、プレポリマーA100部に、硬化剤Aを4部(マルテンス硬度が約0.3[N/mm2]となる添加量)加え、硬化剤AがレポリマーA100部に充分に分散するように自公転撹拌機にて混合する。次に、本出願人は、自公転撹拌機にて混合した混合物を、表面にシリコーン系離型剤を塗布した遠心成型機の表面に流し込み、120℃で1000rpmにて30分間回転させ加熱硬化させてウレタンゴムシートを成型する。次に、本出願人は、回転を止めて遠心成型機の表面からゴムシートを脱型し、平面状の金属板の上に置く。次に、本出願人は、これを温度35℃、湿度85%に設定した恒温恒湿槽に1週間入れて未反応のイソシアネート基を反応完結させることでウレタンゴムを得た。
【0056】
本出願人は、得られたウレタンゴムを(所定の寸法に)裁断し、クリーニングブレード用のゴム短冊を得た。これを所定の板金に接着することで本出願人は、比較例1のクリーニングブレードを得た。
【0057】
[比較例2、3]
本出願人は、比較例2~3のクリーニングブレードを次のようにして得た。すなわち、本出願人は、プレポリマーAにコロネートT-100を狙いのマルテンス硬度となるように所定量を追加添加した。比較例2の狙いのマルテンス硬度は、1.0[N/mm2]であり、比較例3の狙いのマルテンス硬度は、2.0[N/mm2]である。そして、本出願人は、自公転撹拌機でコロネートT-100を分散させたあとに、硬化剤Aを所定量添加する以外は、比較例1と同様にして比較例2~3のクリーニングブレードを作製した。
【0058】
[比較例4~6]
比較例4~6は、プレポリマーの材料としてPTG2000SN(保土谷化学)を用いて作製するプレポリマーBを用いる以外は、比較例1~3と同様にして作製したものである。
【0059】
[比較例7]
比較例7は、プレポリマーの材料としてニッポラン4073(東ソー)を用いて作製するプレポリマーCを用いる以外は、比較例2と同様、マルテンス硬度1.0[N/mm2]を狙って作製したものである。
【0060】
次に、ブレード摩耗速度について説明する。
まず、ブレード摩耗速度の評価は、以下の摩耗ランニングを実施する。
<摩耗ランニング>
・評価環境 :23℃50%RH
・画像形成装置 :リコー製 MPC5100S
・ランニングチャート:画像面積率:5[%] A4ヨコ
・感光体走行距離 :200km
【0061】
<摩耗速度の測定>
ブレード摩耗速度は、KEYENCE製 レーザー顕微鏡 VK-9500にてランニング評価試験後のクリーニングブレード先端の立体像を観察し、摩耗面積S[μm
2]を求めた。摩耗面積Sは、
図7に示す斜線部に示す使用初期に対する喪失部分の断面積である。そして、求めた摩耗面積Sを感光体の走行距離(200km)で除算して(割り算して)ブレード摩耗速度が算出される。
【0062】
低温環境下でのクリーニング性は、以下の低温ランニング条件下で、ランニングチャートを出力し、印刷したランニングチャートを目視で評価することで行った。
<低温ランニング条件>
・評価環境 :10℃15%RH
・画像形成装置 :リコー製 MPC5100S
・クリーニングブレード:上記摩耗ランニング200km後のブレード
・ランニングチャート :縦帯ベタ A4ヨコ
・ランニング枚数 :1000枚
【0063】
図8は、低温ランニングで用いるランニングチャートを示している。
図8に示すように、ランニングチャートは、K、C、M、Yの縦帯ベタ画像が、所定の間隔で並んだものである。
【0064】
図9は、クリーニング不良によるランニングチャートに現れる異常画像Eの一例を示す図である。
図9(a)は、Kの縦帯ベタパターンにおいてクリーニング不良が発生し、スジ状の異常画像Eが画像上に連続して発生している例である。
図9(b)は、C、M、Yの縦帯ベタパターンにおいてクリーニング不良が発生し、短いスジ状の異常画像Eが断続的に発生している例である。
図9(c)は、C、Mの縦帯ベタパターンにおいてクリーニング不良が発生し、幅方向に多量にクリーニング不良が発生している例であり、異常画像Eは太いスジ状となっている。このように、クリーニング不良は、トナー入力のある、ランニングチャートの縦帯ベタパターンに対応して発生することが多い。
低温環境下でのクリーニング性の評価は、出力したランニングチャート1000枚について、
図9(a)~
図9(c)に示すような異常画像Eがあるか否かを目視で確認して行う。
【0065】
低温環境下でのクリーニング性の評価は、以下の4段階で評価である。
・「○」:出力したランニングチャート1000枚中に、クリーニング不良による異常画像Eが一枚もない場合
・「△」:出力したランニングチャート1000枚中に、クリーニング不良による異常画像Eが10枚以下発生した場合
・「×」:出力したランニングチャート1000枚中に、クリーニング不良による異常画像Eが11枚以上、30枚以下発生した場合
・「××」:出力したランニングチャート1000枚中に、クリーニング不良による異常画像Eが31枚以上発生した場合
【0066】
下記表2は、比較例1~7のクリーニングブレードの物性と、ブレード摩耗速度と、低温環境下でのクリーニング性について示したものである。
【0067】
【0068】
表2のマルテンス硬度[N/mm2]は、以下のようにして測定した。
・測定機器:フィシャー・インストルメンツ社製 HM2000
・荷重:1[mN]
・押し込み時間:10[s]
・クリープ時間:5[s]
・測定位置:エッジ部から感光体表面と対向するブレード対向面側へ20[μm]の離れたブレード対向面上の位置、又はエッジ部からブレード対向面と隣接するブレード先端面側へ20[μm]の離れたブレード先端面上の位置
・圧子:ビッカース圧子
・測定環境:23[℃]50[%]
【0069】
表2の体積抵抗率は、三菱ケミカルアナリテック社のハイレスタ-UXを用いて、次の方法で測定した。すなわち、測定者は、試験温度(23℃・50%RH)に4時間以上置いたサンプルを対向電極板上に置き、サンプルにプローブを載せる。測定者は、印加電圧を500Vにセットし、10秒間電圧印加後、抵抗値[Ω]を読み取る。測定者は、サンプルの厚みをノギス等で測定しておき、次の式1で体積抵抗率を算出する。
体積抵抗率ρV[Ω・cm]= 抵抗値×体積抵抗係数÷サンプル厚み・・・(式1)
なお、体積抵抗係数はプローブごとに異なり、通常は装置メーカーによって校正した際の値が開示されこれを用いる。
【0070】
表2の表面抵抗率は、同様に三菱ケミカルアナリテック社のハイレスタ-UX等を用いて、次の方法で測定した。すなわち、測定者は、試験温度(23℃・50%RH)に4時間以上置いたサンプルを、絶縁の樹脂板上に置き、サンプルにプローブを載せる。次に、測定者は、印加電圧を500Vにセットし、10秒間電圧印加後、抵抗値[Ω]を読み取り、次の式2で表面抵抗率を算出した。
表面抵抗率ρS[Ω]=抵抗値×表面抵抗係数・・・(式2)
なお、表面抵抗係数はプローブごとに異なり、通常は装置メーカーによって校正した際の値が開示され、これを用いる。
【0071】
表2に示すように、比較例1~3を比較すると、マルテンス硬度が大きいほど、摩耗速度が多いことがわかる。また、摩耗速度が大きいほど、低温でのクリーニング性も悪化傾向にあることがわかる。このような傾向は、比較例4、5、6を比較しても同様の傾向がみられた。
【0072】
次に、実施例1~9について説明する。
[実施例1]
(プレポリマー)
プレポリマーは、比較例1~3と同じプレポリマーAである。
【0073】
(硬化剤の調製)
本出願人は、1、4-ブタンジオール(関東化学)、トリメチロールプロパン(関東化学)、エステル系ポリロタキサン(品名:SH1300P アドバンストソフトマテリアル)を33:6:61の割合で混合し、100℃に加熱して全体が均一な液状になるようにして硬化剤Cを得た。
【0074】
(ウレタンゴム成型)
本出願人は、プレポリマーA100部に、硬化剤Aを9部(ポリロタキサンの添加量が全体の1%となる添加量)加え、自公転撹拌機にて硬化剤AをプレポリマーAに充分に分散させる。その後、本出願人は、比較例1と同様のゴム成型を行うことで、実施例1のウレタンゴムを得た。本出願人は、得られたウレタンゴムを(所定の寸法に)裁断することで、クリーニングブレード用のゴム短冊を得た。本出願人は、これを所定の板金に接着することで実施例1のクリーニングブレードを得た。
【0075】
[実施例2~9]
実施例2~9のクリーニングブレードは、次の工程以外は、実施例1と同様にして作製したものである。すなわち、実施例1と異なる工程は、プレポリマーAにコロネートT-100を狙いの硬度となるように所定量を追加添加し、自公転撹拌機で分散させた後、ポリロタキサンの添加量の割合が狙いの割合となるように硬化剤Cを所定量添加する工程である。
【0076】
実施例1~3のクリーニングブレードは、ポリロタキサンの添加量を1%として、比較例1~3のクリーニングブレードと同様にマルテンス硬度が異なる3水準(0.3[N/mm2]、1.0[N/mm2]、2.0[N/mm2])のクリーニングブレードである。
【0077】
実施例4~6のクリーニングブレードは、ポリロタキサンの添加量を5%として、マルテンス硬度が異なる3水準(0.3[N/mm2]、1.0[N/mm2]、2.0[N/mm2])のクリーニングブレードである。
【0078】
実施例7のクリーニングブレードは、ポリロタキサンの添加量10%とし、マルテンス硬度1.0[N/mm2]狙いで作製したものである。実施例8のクリーニングブレードは、ポリロタキサンの添加量20%とし、マルテンス硬度2.0[N/mm2]狙いで作製したものである。また、実施例9のクリーニングブレードは、ポリロタキサンの添加量20%とし、マルテンス硬度2.0[N/mm2]狙いで作製したものである。
【0079】
これら、実施例1~9について、本出願人は、比較例1~7と同様の摩耗速度評価試験と、低温クリーニング評価試験を行なった。その結果は、下記表3である。
【0080】
【0081】
比較例1と実施例1、比較例2と実施例2、比較例3と実施例3との比較から明らかなように、ポリロタキサンを添加していない比較例よりもポリロタキサンを1%添加した実施例の方が、摩耗速度が少なく、低温でのクリーニング性が向上していることがわかる。また、実施例1と実施例4、実施例2と実施例5、実施例3と実施例6の比較から分かるように、ポリロタキサンを5%添加した実施例4~6の方が、ポリロタキサン添加量を1%の実施例1~3よりも、摩耗速度が減少していることがわかる。
【0082】
また、実施例5と実施例7との比較、実施例6と実施例8と実施例9との比較からわかるように、ポリロタキサン添加量5%の場合と、ポリロタキサン添加量10%以上の場合とで、摩耗速度はほとんど変わらない結果が得られた。また、実施例6と実施例8、実施例6と実施例9の比較からわかるように、ポリロタキサンの添加量が多い実施例8、9は、実施例6よりも、低温クリーニング性の評価が一段良い評価となった。
【0083】
次に、実施例10~18について説明する。
[実施例10~18]
実施例10~18のクリーニングブレードは、硬化剤中のポリロタキサンとしてエーテル系ポリロタキサンを用いて作製する硬化剤Dを用いる以外は、実施例1~9のクリーニングブレードと同様にして作製したものである。エーテル系ポリロタキサンは、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)鎖のポリロタキサンである。
【0084】
実施例10~12のクリーニングブレードは、実施例1~3と同様のポリロタキサンの添加量(添加量:1%)、3水準(0.3[N/mm2]、1.0[N/mm2]、2.0[N/mm2])のクリーニングブレードである。実施例13~15のクリーニングブレードは、実施例4~6と同様のポリロタキサンの添加量(添加量:5%)、マルテンス硬度が異なる3水準(0.3[N/mm2]、1.0[N/mm2]、2.0[N/mm2])のクリーニングブレードである。また、実施例16のクリーニングブレードは、実施例7と同様のポリロタキサンの添加量(10%)、狙いのマルテンス硬度(1.0[N/mm2])のクリーニングブレードである。実施例17のクリーニングブレードは、実施例8と同様のポリロタキサンの添加量(20%)、狙いのマルテンス硬度(2.0[N/mm2])のクリーニングブレードである。実施例18のクリーニングブレードは、実施例9と同様のポリロタキサンの添加量(50%)、狙いのマルテンス硬度(2.0[N/mm2])のクリーニングブレードである。
【0085】
これら、実施例10~18のクリーニングブレードについて、本出願人は、比較例1~7と同様の摩耗速度評価試験と、低温クリーニング評価試験を行なった。その結果は、下記表4である。
【0086】
【0087】
表4に示すように、実施例10~18について、実施例1~9と同様な傾向が確認できる。すなわち、ポリロタキサンを含むことで、ポリロタキサンを含まない比較例1~3に比べて摩耗速度が少なく、低温でのクリーニング性が向上していることが確認できる。また、ポリロタキサンを5%添加した実施例13~15は、ポリロタキサンの添加量1%の実施例10~12よりも摩耗速度が低減していることも確認できる。また、ポリロタキサン添加量5%の場合と、ポリロタキサン添加量10%以上の場合とで、摩耗速度は、ほとんど変わらないことも確認できる。また、実施例15と実施例117、18に比較から、ポリロタキサンの含有量を増やすことで、低温クリーニング性が改善されることが確認できる。このことから、エーテル系ポリロタキサンについても、エステル系ポリロタキサンと同等の効果が得られることが確認された。
【0088】
次に、実施例19~27について説明する。
[実施例19~27]
実施例19~27のクリーニングブレードは、プレポリマーの材料としてPTG2000SN(保土谷化学)を用いて作製するプレポリマーBを用いる以外は、実施例1~9と同様にして作製したものである。
【0089】
これら、実施例19~27について、本出願人は、比較例1~7と同様の摩耗速度評価試験と、低温クリーニング評価試験を行なった。その結果は、下記表5である。
【0090】
【0091】
表5に示すように、実施例19~27については、実施例1~9と同様な傾向が確認できる。すなわち、プレポリマーBを用いたポリロタキサンを含まない比較例4~6に対して、ポリロタキサンを含む実施例19~27は、摩耗速度、低温クリーニング性が良い結果を得ることができる。また、ポリロタキサンを5%添加した実施例22~24は、ポリロタキサンの添加量1%の実施例19~21よりも摩耗速度が低減している。また、ポリロタキサン添加量5%の場合と、ポリロタキサン添加量10%以上の場合とで、摩耗速度はほとんど変わらない。また、ポリロタキサンの含有量を増やすと、低温クリーニング性が改善される。このことから、ウレタンゴム主鎖構造がエーテル系(PTMG:ポリテトラメチレンエーテルグリコール)とエステル系のポリロタキサンとの組み合わせでも、同等の効果が得られることがわかる。
【0092】
次に、実施例28~36について説明する。
[実施例28~36]
実施例28~36のクリーニングブレードは、硬化剤中のポリロタキサンとしてエーテル系ポリロタキサンを用いて作製する硬化剤Dを用いる以外は、実施例19~27と同様にして作製したものである。
【0093】
これら、実施例28~36のクリーニングブレードについて、本出願人は、比較例1~7と同様の摩耗速度評価試験と、低温クリーニング評価試験を行なった。その結果は、下記表6である。
【0094】
【0095】
表6に示すように、実施例28~36についても、実施例19~27と同様な傾向が確認できる。このことから、ウレタンゴム主鎖構造がエーテル系(PTMG:ポリテトラメチレンエーテルグリコール)とエーテル系のポリロタキサンとの組み合わせでも、同等の効果が得られる。
【0096】
次に、実施例37、38について説明する。
[実施例37、38]
実施例37のクリーニングブレードは硬化剤Cを用いる以外は、比較例7と同様にして作製したものである。また、実施例38のクリーニングブレードは硬化剤Dを用いる以外は、比較例7と同様にして作製したものである。
【0097】
これら、実施例37~38について、本出願人は、比較例1~7と同様の摩耗速度評価試験と、低温クリーニング評価試験を行なった。その結果が、下記表7である。
【0098】
【0099】
表7に示すように、ポリロタキサンを含む実施例37、38は、ポリロタキサンを含まない比較例7に比べて、摩耗速度、低温クリーニング性が良い結果が得られた。このように、ウレタンゴム主鎖構造がアジペートとエステル系のポリロタキサンとの組み合わせ、アジペートとエーテル系のポリロタキサンとの組み合わせでも、摩耗速度、低温クリーニング性の改善効果を得ることができる。なお、プレポリマーCについても、ポリロタキサンの添加割合が互いに異なるクリーニングブレードを作製して、摩耗速度評価、低温クリーニング評価試験を行なったが、実施例1~9と同様な傾向が得られた。
【0100】
以上の評価試験から、ポリロタキサンを含むことで、滑車効果により摩耗速度が低減され、クリーニングブレードの耐久性を向上できる。また、ポリロタキサンを含むことで、ガラス転移温度が低温側にシフトし、低温でもゴム性が十分に維持されて当接圧の低下が起きず、低温環境下でも良好にクリーニングすることができる。また、ポリロタキサンの添加量は、5%以上、20%以下が好ましい。ポリロタキサンの添加量を5%以上とすることで、5%未満の場合に比べて、摩耗速度、低温クリーニング性をより一層改善することができる。また、添加量20%以上でポリロタキサン添加による効果が飽和してしまうため、ポリロタキサンの添加量を20%以下とするのが好ましい。
【0101】
また、上記評価試験では、単層ブレードを用いたが、先端稜線部151cを含むエッジ層151aとバックアップ層151bとからなる二層構造のブレード部材についても、エッジ層151aにポリロタキサンを含むことで、上記評価試験と同様な結果が得られる。
【0102】
また、ポリロタキサンは、記録紙Pを搬送するレジストローラ9や、給紙ローラ8などの搬送ローラの表層としての弾性層に含ませてもよい。
【0103】
図10は、搬送ローラとしての給紙ローラ8の斜視図である。
給紙ローラ8は、芯材としての樹脂製のハブ8aと、表面層としての弾性層8eとを有している。弾性層8eは、体積抵抗が1×10
10Ω・cm以上の絶縁性でウレタンゴム等の弾性体からなり、ハブ8aの外輪8cの外周面上に被覆してある。給紙ローラ8は、ハブ8aの内輪8bの内部空間に回転軸を挿入された状態で取り付けてある。
【0104】
給紙ローラ8の回転速度は、製造誤差などによりばらつくおそれがある。そのため給紙ローラ8の回転速度が、給紙ローラ8よりも搬送方向上流側の搬送ローラの回転速度よりも遅くなることがある。このように、給紙ローラ8の回転速度が送方向上流側の搬送ローラの回転速度よりも遅いと、記録紙が給紙ローラ8と搬送ローラとに搬送されているとき、回転速度の遅い給紙ローラ8は、記録紙に対してスリップする。このスリップ時に、クリーニングブレードと同様、架橋点への応力集中が起こり、分子鎖の切断が発生して弾性層8eが摩耗する。また、低温環境下において、弾性層8eのゴム弾性が低下し記録紙との当接圧が変化するなどにして記録紙の搬送性が悪化するおそれがある。
【0105】
よって、この給紙ローラ8の弾性層8eにポリロタキサンをバルクとして含ませることで、ロタキサンの滑車効果により弾性層8eの摩耗を抑制し、給紙ローラ8の長寿命化を図ることができる。また、弾性層8eにロタキサンをバルクとして含ませることで、tanδのピーク温度を下げることができ、低温環境下でも良好な搬送性を維持することができる。
【0106】
なお、上述では、給紙ローラ8について説明したが、レジストローラ9、排紙ローラなどの搬送ローラについても、弾性層にポリロタキサンをバルクとして含むませることで、長寿命化を図れ、かつ、低温環境下での搬送性を維持することができる。
【0107】
以上に説明したものは一例であり、次の態様毎に特有の効果を奏する。
(態様1)
ブレード部材15a1の先端稜線部151cを表面移動する感光体11などの被清掃部材の表面に当接して被清掃部材の表面から付着物を除去するクリーニングブレード15aにおいて、先端稜線部151cは、ポリロタキサン及び/又は架橋ポリロタキサンを含む弾性体である。
これによれば、上述した検証試験で説明したように、ポリロタキサン及び/又は架橋ポリロタキサンを含むことで、摩耗速度がポリロタキサン及び/又は架橋ポリロタキサンを含まないものに比べて向上した。これにより、クリーニングブレードの高寿命化が図れる。
【0108】
(態様2)
態様1において、先端稜線部の体積抵抗が1×1010Ω・cm以上である。
これによれば、ブレード部材を導電性とするために先端稜線部151cに導電剤を含ませずにすみ、導電剤による先端稜線部に影響が生じることがなくクリーニング性などに影響が及ぶのを防止できる。また、本態様のクリーニングブレードは、先端稜線部151cを被清掃部材に当接させて、被清掃部材の表面から付着物を機械的に除去するものである。そのため、先端稜線部の体積抵抗が1×1010Ω・cm以上であり、導電性を有してなくても、良好に被清掃部材の表面から付着物を除去することができる。
【0109】
(態様3)
ブレード部材15a1の先端稜線部151cを表面移動する感光体11などの被清掃部材の表面に当接して被清掃部材の表面から付着物を除去するクリーニングブレード15aにおいて、先端稜線部151cは、ポリロタキサン及び/又は架橋ポリロタキサンを含み、体積抵抗が1×1010Ω・cm以上である。
これによれば、上述した検証試験で説明したように、ポリロタキサン及び/又は架橋ポリロタキサンを含むことで、摩耗速度が、ポリロタキサン及び/又は架橋ポリロタキサンを含まないものに比べて向上した。これにより、クリーニングブレードの高寿命化が図れる。
【0110】
(態様4)
態様1乃至3いずれかにおいて、ポリロタキサン及び/又は架橋ポリロタキサンは、先端稜線部151cを含む層にバルクとして含まれている。
これによれば、先端稜線部151cにポリロタキサン及び/又は架橋ポリロタキサンが偏在して含まれる場合に比べて、ポリロタキサン及び/又は架橋ポリロタキサンを添加した効果(滑車効果による摩耗速度の低減、tanδピーク温度の低下による低温クリーニング性)を良好に得ることができる。
【0111】
(態様5)
ブレード部材15a1の先端稜線部151cを表面移動する感光体11などの被清掃部材の表面に当接して被清掃部材の表面から付着物を除去するクリーニングブレード15aにおいて、先端稜線部151cを含む層は、ポリロタキサン及び/又は架橋ポリロタキサンをバルクとして含む。
これによれば、上述した検証試験で説明したように、ポリロタキサン及び/又は架橋ポリロタキサンを含むことで、摩耗速度が、ポリロタキサン及び/又は架橋ポリロタキサンを含まないものに比べて向上した。これにより、クリーニングブレードの高寿命化が図れる。
【0112】
(態様6)
態様1乃至5いずれかにおいて、先端稜線部151cは、ポリロタキサン及び/又は架橋ポリロタキサンを含むポリウレタンゴムである。
これによれば、先端稜線部151cに弾性を持たせることができ、感光体11などの被清掃部材の表面の位置変動に追随でき良好に当接圧を維持することができ、良好なクリーニング性を得ることができる。
【0113】
(態様7)
態様1乃至6いずれかにおいて、ポリロタキサン及び/又は架橋ポリロタキサンは、エーテル基を有する。
これによれば、加水分解を起こりにくくでき、加水分解による引張強度、硬度、などの機械特性が低下を抑制できる。これにより、経時に渡り良好なクリーニング性を維持することができる。
【0114】
(態様8)
態様1乃至7いずれかにおいて、ブレード部材15a1は、先端稜線部151cを含むエッジ層151aと、エッジ層151aに積層されるバックアップ層151bとを有する積層構造である。
これによれば、低温環境下、高温環境下のいずれの環境下において、ブレード部材全体で適切な弾性を維持することが可能となる。
【0115】
(態様9)
態様8において、バックアップ層151bは、ポリロタキサン及び/又は架橋ポリロタキサンを含む。
これによれば、バックアップ層151bの低温環境下におけるゴム性を維持でき、より一層低温環境下における当接圧の低下を抑制することができる。
【0116】
(態様10)
態様9において、バックアップ層151bのポリロタキサン及び/又は架橋ポリロタキサンの含有率と、エッジ層151aのポリロタキサン及び/又は架橋ポリロタキサンの含有率とが互いに異なる。
これによれば、バックアップ層151bとエッジ層151aとでtanδピーク温度を異ならせることができ、低温環境下、高温環境下のいずれの環境下において、ブレード部材全体で適切な弾性を維持することが可能となる。
【0117】
(態様11)
態様10において、エッジ層151aのポリロタキサン及び/又は架橋ポリロタキサンの含有率が、バックアップ層151bのポリロタキサン及び/又は架橋ポリロタキサンの含有率よりも多い。
これによれば、エッジ層151aのtanδのピーク温度を、バックアップ層151bに比べて低くすることができる。これにより、クリーニングブレードは、先端稜線部151cの低温環境下におけるゴム性を維持でき、低温環境下でも良好な当接圧を維持できる。これにより、クリーニング性を得ることができる。
また、バックアップ層151bのtanδのピーク温度をエッジ層151aよりも高くでき、高温環境下でのブレード部材の弾性が大きくなりすぎるのを抑制することができる。これにより、高温環境下において捲れや異音、異常振動が起きるのを抑制することができる。
【0118】
(態様12)
態様11において、エッジ層151aのtanδピーク温度が、バックアップ層151bのtanδピーク温度よりも低温である。
これによれば、低温環境下において良好なクリーニング性を得ることができ、かつ、高温環境下において捲れや異音、異常振動が起きるのを抑制することができる。
【0119】
(態様13)
感光体11などの像担持体と、像担持体の表面に付着した不要な付着物を除去するためのクリーニングブレード15aとを備え、像担持体上に形成した画像を最終的に記録紙などのシートに転移させる画像形成装置において、クリーニングブレードとして、態様1乃至12いずれかのクリーニングブレードを用いる。
これによれば、経時にわたりクリーニング不良が原因の異常画像を抑制でき、かつ、低温環境下におけるクリーニング不良が原因の異常画像を抑制することができる。
【0120】
(態様14)
感光体11などの像担持体と、像担持体の表面に接触し、その表面上に付着した不要な付着物を除去するためのクリーニングブレード15aとを備え、画像形成装置に対して着脱自在に構成された作像ユニット10などのプロセスカートリッジにおいて、クリーニングブレード15aとして、態様1乃至12のいずれかのクリーニングブレードを用いる。
これによれば、長寿命のプロセスカートリッジを提供することができる。
【0121】
(態様15)
ハブ8aなどの芯材と、弾性層8eなどの表面層とを有し、回転することによって記録紙などのシートを搬送する給紙ローラ8などのシート搬送ローラにおいて、表面層は、ポリロタキサン及び/又は架橋ポリロタキサンを含む。
これによれば、
図10を用いて説明したように、シート搬送ローラの摩耗を抑制し、かつ、低温環境下におけるシート搬送性の低下を抑制することができる。
【0122】
(態様16)
態様15において、表面層は、弾性体からなる。
これによれば、シートに対して所定の当接圧を得ることができ、良好にシートを搬送することができる。
【0123】
(態様17)
態様15または16において、表面層の体積抵抗が1×1010Ω・cm以上である。
これによれば、導電性とするために表面層に導電剤を含ませずにすみ、導電剤によりシート搬送性などに影響が出るのを抑制することができる。
【0124】
(態様18)
態様15乃至17いずれかにおいて、表面層は、ポリロタキサン及び/又は架橋ポリロタキサンをバルクとして含む。
これによれば、表面層にポリロタキサン及び/又は架橋ポリロタキサンが偏在して含まれる場合に比べて、ポリロタキサン及び/又は架橋ポリロタキサンを添加した効果(滑車効果による摩耗速度の低減、tanδピーク温度の低下による低温環境下でのシート搬送性)を良好に得ることができる。
【0125】
(態様19)
シート搬送ローラによって搬送されるシートに画像を形成する画像形成装置であって、シート搬送ローラとして、態様15乃至18のシート搬送ローラを用いた。
これによれば、経時にわたり良好にシートを搬送でき、かつ、低温環境下においても、良好にシートを搬送することができる。
【符号の説明】
【0126】
1 :画像形成装置
2 :画像形成部
6 :給紙部
8 :給紙ローラ
8a :ハブ
8b :内輪
8c :外輪
8e :弾性層
9 :レジストローラ
11 :感光体
15 :感光体クリーニング装置
15a :クリーニングブレード
15a1 :ブレード部材
15a2 :ブレードホルダー
15b :搬送コイル
151a :エッジ層
151b :バックアップ層
151c :先端稜線部
E :異常画像
P :記録紙
S :摩耗面積
【先行技術文献】
【特許文献】
【0127】