(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】画像形成装置及びワイヤハーネスを備える機器
(51)【国際特許分類】
G03G 15/00 20060101AFI20240116BHJP
G03G 21/16 20060101ALI20240116BHJP
G03G 21/00 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
G03G15/00 680
G03G21/16 152
G03G21/00 398
G03G21/00 500
(21)【出願番号】P 2020009590
(22)【出願日】2020-01-24
【審査請求日】2022-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】長澤 昂平
(72)【発明者】
【氏名】矢野 哲哉
(72)【発明者】
【氏名】萩原 芳輝
(72)【発明者】
【氏名】川瀬 俊晴
【審査官】市川 勝
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-340097(JP,A)
【文献】特開平10-228856(JP,A)
【文献】特開2017-156492(JP,A)
【文献】特開2009-105002(JP,A)
【文献】特開昭53-109185(JP,A)
【文献】特開昭61-210816(JP,A)
【文献】特開2011-238543(JP,A)
【文献】特開2013-037929(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/00
G03G 21/16
G03G 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤハーネスを備える画像形成装置であって、
前記ワイヤハーネスを流れる電流の経路上に設けられ、過電流が流れると前記経路上の他の部分より温度が上昇する発熱部と、
前記発熱部を覆う延焼防止部材と、を備え、
前記ワイヤハーネスは、前記発熱部から離間した領域が、前記延焼防止部材から露出
し、
前記発熱部は、前記ワイヤハーネスのワイヤを結んだ結び目部、または、前記ワイヤハーネスのワイヤをコイル巻きしたコイル巻き線部である、
画像形成装置。
【請求項2】
ワイヤハーネスを備える画像形成装置であって、
前記ワイヤハーネスを流れる電流の経路上に設けられ、過電流が流れると前記経路上の他の部分より温度が上昇する発熱部と、
前記発熱部を覆う延焼防止部材と、を備え、
前記ワイヤハーネスは、前記発熱部から離間した領域が、前記延焼防止部材から露出し、
前記領域の前記ワイヤハーネスのワイヤの屈曲半径は、前記発熱部の屈曲半径より大きい、
画像形成装置。
【請求項3】
ワイヤハーネスを備える画像形成装置であって、
前記ワイヤハーネスを流れる電流の経路上に設けられ、過電流が流れると前記経路上の他の部分より温度が上昇する発熱部と、
前記発熱部を覆う延焼防止部材と、を備え、
前記ワイヤハーネスは、前記発熱部から離間した領域が、前記延焼防止部材から露出し、
前記発熱部を前記経路上に複数連ねて備える、
画像形成装置。
【請求項4】
ワイヤハーネスを備える画像形成装置であって、
前記ワイヤハーネスを流れる電流の経路上に設けられ、過電流が流れると前記経路上の他の部分より温度が上昇する発熱部と、
前記発熱部を覆う延焼防止部材と、を備え、
前記ワイヤハーネスは、前記発熱部から離間した領域が、前記延焼防止部材から露出し、
前記発熱部は、前記経路上に一点に複数個重ねて備える、
画像形成装置。
【請求項5】
ワイヤハーネスを備える画像形成装置であって、
前記ワイヤハーネスを流れる電流の経路上に設けられ、過電流が流れると前記経路上の他の部分より温度が上昇する発熱部と、
前記発熱部を覆う延焼防止部材と、を備え、
前記ワイヤハーネスは、前記発熱部から離間した領域が、前記延焼防止部材から露出し、
前記発熱部は移動可能に固定される、
画像形成装置。
【請求項6】
ワイヤハーネスを備える画像形成装置であって、
前記ワイヤハーネスを流れる電流の経路上に設けられ、過電流が流れると前記経路上の他の部分より温度が上昇する発熱部と、
前記発熱部を覆う延焼防止部材と、を備え、
前記ワイヤハーネスは、前記発熱部から離間した領域が、前記延焼防止部材から露出し、
前記ワイヤハーネスが接続されるプリント基板を備え、
前記延焼防止部材は、前記プリント基板を覆い、
前記発熱部の近傍に温度検出器を備え、
前記温度検出器が、所定の温度より高い温度を検出した際には、電源供給を停止する、
画像形成装置。
【請求項7】
ワイヤハーネスを備える画像形成装置であって、
前記ワイヤハーネスを流れる電流の経路上に設けられ、過電流が流れると前記経路上の他の部分より温度が上昇する発熱部と、
前記発熱部を覆う延焼防止部材と、を備え、
前記ワイヤハーネスは、前記発熱部から離間した領域が、前記延焼防止部材から露出し、
前記ワイヤハーネスが接続されるプリント基板を備え、
前記延焼防止部材は、前記プリント基板を覆い、
前記発熱部の近傍に煙検出器を備え、
前記煙検出器が、煙を検出した際には、電源供給を停止する、
画像形成装置。
【請求項8】
前記発熱部は、線径の細い中継ハーネスである、
請求項
6又は請求項7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記発熱部は、前記プリント基板に形成されている、
請求項
6又は請求項7に記載の画像形成装置。
【請求項10】
ワイヤハーネスを備える機器であって、
前記ワイヤハーネスを流れる電流の経路上に設けられ、過電流が流れると前記経路上の他の部分より温度が上昇する発熱部と、
前記発熱部を覆う延焼防止部材と、を備え、
前記ワイヤハーネスは、前記発熱部から離間した領域が、前記延焼防止部材から露出
し、
前記発熱部は、前記ワイヤハーネスのワイヤを結んだ結び目部、または、前記ワイヤハーネスのワイヤをコイル巻きしたコイル巻き線部である、
機器。
【請求項11】
ワイヤハーネスを備える機器であって、
前記ワイヤハーネスを流れる電流の経路上に設けられ、過電流が流れると前記経路上の他の部分より温度が上昇する発熱部と、
前記発熱部を覆う延焼防止部材と、を備え、
前記ワイヤハーネスは、前記発熱部から離間した領域が、前記延焼防止部材から露出し、
前記領域の前記ワイヤハーネスのワイヤの屈曲半径は、前記発熱部の屈曲半径より大きい、
機器。
【請求項12】
ワイヤハーネスを備える機器であって、
前記ワイヤハーネスを流れる電流の経路上に設けられ、過電流が流れると前記経路上の他の部分より温度が上昇する発熱部と、
前記発熱部を覆う延焼防止部材と、を備え、
前記ワイヤハーネスは、前記発熱部から離間した領域が、前記延焼防止部材から露出し、
前記発熱部を前記経路上に複数連ねて備える、
機器。
【請求項13】
ワイヤハーネスを備える機器であって、
前記ワイヤハーネスを流れる電流の経路上に設けられ、過電流が流れると前記経路上の他の部分より温度が上昇する発熱部と、
前記発熱部を覆う延焼防止部材と、を備え、
前記ワイヤハーネスは、前記発熱部から離間した領域が、前記延焼防止部材から露出し、
前記発熱部は、前記経路上に一点に複数個重ねて備える、
機器。
【請求項14】
ワイヤハーネスを備える機器であって、
前記ワイヤハーネスを流れる電流の経路上に設けられ、過電流が流れると前記経路上の他の部分より温度が上昇する発熱部と、
前記発熱部を覆う延焼防止部材と、を備え、
前記ワイヤハーネスは、前記発熱部から離間した領域が、前記延焼防止部材から露出し、
前記発熱部は移動可能に固定される、
機器。
【請求項15】
ワイヤハーネスを備える機器であって、
前記ワイヤハーネスを流れる電流の経路上に設けられ、過電流が流れると前記経路上の他の部分より温度が上昇する発熱部と、
前記発熱部を覆う延焼防止部材と、を備え、
前記ワイヤハーネスは、前記発熱部から離間した領域が、前記延焼防止部材から露出し、
前記ワイヤハーネスが接続されるプリント基板を備え、
前記延焼防止部材は、前記プリント基板を覆い、
前記発熱部の近傍に温度検出器を備え、
前記温度検出器が、所定の温度より高い温度を検出した際には、電源供給を停止する、
機器。
【請求項16】
ワイヤハーネスを備える機器であって、
前記ワイヤハーネスを流れる電流の経路上に設けられ、過電流が流れると前記経路上の他の部分より温度が上昇する発熱部と、
前記発熱部を覆う延焼防止部材と、を備え、
前記ワイヤハーネスは、前記発熱部から離間した領域が、前記延焼防止部材から露出し、
前記ワイヤハーネスが接続されるプリント基板を備え、
前記延焼防止部材は、前記プリント基板を覆い、
前記発熱部の近傍に煙検出器を備え、
前記煙検出器が、煙を検出した際には、電源供給を停止する、
機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像形成装置及びワイヤハーネスを備える機器に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、MFP(Multifunction Printer)やレーザプリンタ等の画像形成を行う画像形成装置が広く使われている。
【0003】
画像形成装置には、モータやヒータ等のような多くの駆動ユニットが用いられている。駆動ユニットに電源供給や制御通信のために、駆動ユニットの数が増えるに伴って多くのワイヤハーネスが用いられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
画像形成装置の内部には、駆動伝達手段として樹脂製のギヤやプーリーなど可燃性部材が用いられている。特許文献1には、高圧線のスパークによるギヤやプーリーなどの発火防止をする目的で、ギヤ等の駆動伝達手段と高圧線等のハーネスのレイアウトをそれぞれ逆側に集めた発明でマシン構造により発火防止をする構成が開示されている。
【0005】
しかしながら、画像形成装置内をはい回る規模が大きいワイヤハーネスになると延焼防止が困難であるという課題があった。
【0006】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、ワイヤハーネスを流れる電流の経路上を発火源とした発火の延焼を極力小さい規模で防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一の態様によれば、ワイヤハーネスを備える画像形成装置であって、前記ワイヤハーネスを流れる電流の経路上に設けられ、過電流が流れると前記経路上の他の部分より温度が上昇する発熱部と、前記発熱部を覆う延焼防止部材と、を備え、前記ワイヤハーネスは、前記発熱部から離間した領域が、前記延焼防止部材から露出し、前記発熱部は、前記ワイヤハーネスのワイヤを結んだ結び目部、または、前記ワイヤハーネスのワイヤをコイル巻きしたコイル巻き線部である画像形成装置を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、極力小さい規模でワイヤハーネスを流れる電流の経路上を発火源とした発火の延焼を極力小さい規模で防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態に係る画像形成装置のワイヤハーネスはい回しの概要について説明する図である。
【
図2】第1実施形態に係る画像形成装置の延焼防止について説明する図である。
【
図3】第1実施形態に係る画像形成装置において特定箇所において発火させやすくするための手段について説明する図である。
【
図4】第1実施形態に係る画像形成装置において特定箇所において発火させやすくするための手段について説明する図である。
【
図5】第1実施形態に係る画像形成装置において特定箇所において発火させやすくするための手段について説明する図である。
【
図6】第1実施形態に係る画像形成装置において特定箇所において発火させやすくするための手段について説明する図である。
【
図7】第1実施形態に係る画像形成装置において発火させにくくするための手段について説明する図である。
【
図8】第2実施形態に係る画像形成装置について説明する図である。
【
図9】第2実施形態に係る画像形成装置において、ケーブルで短絡が発生した場合について説明する図である。
【
図10】第2実施形態に係る画像形成装置の第1変形例について説明する図である。
【
図11】第2実施形態に係る画像形成装置の第2変形例について説明する図である。
【
図12】第2実施形態に係る画像形成装置の第3変形例について説明する図である。
【
図15】第2比較例において、ワイヤハーネスで短絡が発生した場合について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示を実施するための形態について図面を参照して説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成については、同一又は対応する符号を付することにより重複した説明を省く。
【0011】
<<第1実施形態>>
図1は、第1実施形態に係る画像形成装置1のワイヤハーネスはい回しの概要について説明する図である。
【0012】
第1実施形態に係る画像形成装置1は、例えば、レーザプリンタである。画像形成装置1は、電源インレットI1に接続された電源PS1を備える。電源PS1には、電源インレットI1を介して外部から電源が供給される。電源PS1は、供給された電源を画像形成装置1の各構成要素にあわせて供給する。また、第1実施形態に係る画像形成装置1は、プリント基板PCB1、PCB2を備える。プリント基板PCB1、PCB2には、画像形成装置1の各構成要素を制御する。さらに、第1実施形態に係る画像形成装置1は、モータM1、M2、M3、M4、ヒータH1を備える。各モータは、例えば、帯電ローラ、現像ローラ等を回転させるためのモータである。ヒータH1は、例えば、画像定着用ヒータである。また、第1実施形態に係る画像形成装置1は、センサS1、S2、S3を備える。各センサは、例えば、温度センサ、インクの残量センサ等である。さらに、第1実施形態に係る画像形成装置1は、表示用発光素子L1やスイッチSWを備える。それぞれの構成要素の間は、ワイヤハーネスWHにより接続されている。
【0013】
画像形成装置1において、多数の構成要素の間をワイヤハーネスWHによって接続している。したがって、ワイヤハーネスが画像形成装置1内を隅々まではい回っている。画像形成装置1内を隅々まではい回っているワイヤハーネスから発火した場合に、どこで発火するのかが特定できなければ延焼対策は困難である。例えば、すべてのワイヤハーネスを延焼防止部材で覆うことが考えられる。しかしながら、はい回し規模が大きいワイヤハーネスのすべてを延焼防止部材で覆うような延焼防止方法は対策範囲や対策コストが大きくなってしまうため現実的ではない。そこで、第1実施形態の画像形成装置1では、特定箇所において発火させやすくすることによって、延焼防止を行う。
【0014】
具体的な方法について説明する。
図2は、第1実施形態に係る画像形成装置1の延焼防止について説明する図である。
【0015】
第1実施形態に係る画像形成装置1では、1本のワイヤハーネスWH1上の特定箇所に高いインピーダンスもしくは熱がこもりやすい箇所を持たせる。ワイヤハーネスWH1は、コネクタC1とコネクタC2の間にワイヤWを備える。ワイヤハーネスWH1の周辺には、樹脂製のギヤやプーリーのような可燃性部材FM1、FM2が配置されている。ワイヤWに、発熱領域RHと、その両側に低発熱領域RN1、RN2を有する。発熱領域RHは、ワイヤWに過電流が流れると、低発熱領域RN1、RN2より温度が上昇する領域である。発熱領域RHを、どのように、ワイヤWに過電流が流れると、低発熱領域RN1、RN2より相対的に温度が上昇させるようにするかについては、後述する。そして、第1実施形態に係る画像形成装置1は、発熱領域RHを覆うように、延焼防止部材Bar1を備える。延焼防止部材Bar1は、発熱領域RHの後述する発熱部で発火した際に延焼を防止する部材である。延焼防止部材Bar1は、不燃性材料、例えば、金属等、で形成される。
【0016】
ワイヤハーネスWH1は、過電流が流れると発熱領域RHの温度が低発熱領域RN1、RN2より温度が上昇する。発熱領域RHの温度が上昇することにより、低発熱領域RN1、RN2に対して、発熱領域RHが発火しやすい。そこで、発熱領域RHに延焼防止部材Bar1を備えることにより、可燃性部材FM1、FM2に延焼することを防止することができる。ワイヤハーネスWH1に発熱領域RHを有することにより、過電流が流れ続けた際の発火する領域、すなわち、発火源FPの存在する領域、を限定させることができる。過電流が流れ続けた際の発火源FPの存在する領域を限定することにより、発火源FPとなる特定箇所を延焼防止部材で覆うことにより延焼対策を施すことが可能となる。ワイヤハーネスWH1では、発熱領域RHを有することにより、延焼防止対策を行う範囲を限定することができる。すなわち、延焼防止部材Bar1は、発熱部を有する発熱領域RHを覆う。また、発熱領域RHの発熱部から離間したワイヤハーネスWHの一部(低発熱領域RN1、RN2)を延焼防止部材Bar1から露出する。したがって、ワイヤハーネスを流れる電流の経路上を発火源とした発火の延焼を極力小さい規模で防止する。また、範囲を限定することにより対策コストを最低限に抑えることができる。
【0017】
さらには、ワイヤハーネスWHの発熱領域RHにおいて、ワイヤが発火することにより電線が溶けて切れる。電線が切れることにより、導通しない状態にさせて被害を最小限に抑えることができる。
【0018】
ワイヤハーネスWHのワイヤWの発熱領域RHが、ワイヤWに過電流が流れると、低発熱領域RN1、RN2より相対的に温度が上昇して、発火させやすくする方法について説明する。
図3~
図6は、第1実施形態に係る画像形成装置1において特定箇所において発火させやすくするための手段について説明する図である。
【0019】
図3は、ワイヤW1に結び目部KN1を設けることにより、温度が上昇して発火しやすくする方法を示す。ワイヤW1に結び目部KN1を設けることにより、結び目部KN1の部分のインピーダンスが高くなる。インピーダンスが高くなることにより、過電流が流れると発熱しやすくなる。さらに、結び目部KN1を設けることにより、結び目部KN1内の空気の流れが悪くなり熱がこもりやすくなる。熱がこもりやすくなることにより、温度が上昇しやすくなる。したがって、ワイヤW1に過電流が流れると、結び目部KN1の部分の温度が上昇し発火しやすくなる。
【0020】
図4は、ワイヤW2にコイル巻き線部CLを設けることにより、温度が上昇して発火しやすくする方法を示す。ワイヤW2にコイル巻き線部CLを設けることにより、コイル巻き線部CLの部分のインピーダンスが高くなる。インピーダンスが高くなることにより、過電流が流れると発熱しやすくなる。さらに、コイル巻き線部CLを設けることにより、コイル巻き線部CL内の空気の流れが悪くなり熱がこもりやすくなる。熱がこもりやすくなることにより、温度が上昇しやすくなる。したがって、ワイヤW2に過電流が流れると、コイル巻き線部CLの部分が発火しやすくなる。
【0021】
また、温度上昇の度合いを調整するには、例えば、
図5の結び目部KN21、KN22、KN23(当該結び目部をまとめて結び目部列KN2という。)のように、結び目部を複数連ねて備えることにより調整するようにしてよい。なお、
図5では、各結び目部を円で表している。例えば、結び目部列KN2の温度上昇の度合いをさらに大きくしたい場合には、結び目部の個数を増やせばよい。また、温度上昇の度合いを調整するには、一点に複数回巻いて結び目部を複数個重ねることにより大きな結び目部を設けてもよい。なお、
図6では、複数回重ねて巻いた様子を円の大きさで表している。
【0022】
上記では、結び目部の温度上昇の度合いの調整方法について説明したが、コイル巻き線部CLについても、個数や巻く回数、多重巻きというにより、温度上昇の度合いを調整してもよい。
【0023】
なお、結び目部、コイル巻き線部は、発熱部の一例である。
【0024】
また、低発熱領域RN1、RN2において発火させにくくするための手段について説明する。
図7は、第1実施形態に係る画像形成装置において発火させにくくするための手段について説明する図である。
【0025】
低発熱領域RN1、RN2では、ワイヤハーネスWHのワイヤが折れ曲がらないようにまっすぐはい回す。ワイヤハーネスWHのワイヤが折れ曲がらないようにまっすぐはい回すことにより、インピーダンスが低くなる。インピーダンスを低くすることにより、発火しにくくすることができる。さらに、ワイヤハーネスWHのワイヤが折れ曲がらないようにまっすぐはい回すことにより、熱がこもりにくくすることができる。熱がこもりにくくすることにより、温度の上昇を抑えることができる。例えば、
図7(A)に示すワイヤWZのように、ワイヤWZの途中に折り曲げ箇所があるとそこから発火する可能性がある。そこで、
図7(B)のワイヤW5のように、屈曲半径を大きくするように配線する。
【0026】
発火しにくくする具体的な条件について説明する。例えば、ワイヤハーネスの方向を変更する場合は、屈曲半径(ワイヤの曲がり量)に対して、以下のような角度規定をもってはい回す。ここでは、屈曲半径をR(mm)ワイヤの公称線径(ワイヤ束の太さ(直径))をD(mm)とする。
【0027】
Dが8以下の場合 : Rは4D以上
Dが8より大きく12以下の場合: Rは5D以上
Dが12より大きい場合 : Rは6D以上
このように、ワイヤをはい回すことで、インピーダンスが高くなることや熱がこもることを防ぐことができる。
【0028】
<作用・効果>
本実施形態の画像形成装置1は、1本のワイヤハーネスを流れる電流の経路上に、特定箇所にのみ過電流が流れると前記経路上の他の部分より温度が上昇する発熱部を持たせる。ワイヤハーネスの特定箇所にのみ発熱部を持たせることで、ワイヤハーネスに過電流が流れた場合、発熱部から発煙及び発火がするため、危険箇所を前もって特定することができる。そして、発煙及び発火する恐れがある箇所にのみ延焼防止部材で覆えば良いため、対策範囲の縮小及び対策コストを削減することができる。したがって、ワイヤハーネスを流れる電流の経路上を発火源とした発火の延焼を極力小さい規模で防止する。
【0029】
本実施形態の画像形成装置1は、結び目部やコイル巻き線部を設置することにより、発熱領域を設けている。ワイヤの配線の形状を変更することにより、発熱領域を形成することができることから、追加の部品が必要なく、低コストで対策することができる。さらに、巻き数等を変えることにより、温度上昇の度合いを調整することができる。また、結び目部やコイル巻き線部は、配線の一部に形成され、配線は若干移動可能に固定されていることから、結び目部やコイル巻き線部の位置を変えることで発火する箇所を任意にずらすことができる。
【0030】
ここで、第1比較例について説明する。
図13は、第1比較例について説明する図である。第1比較例のワイヤハーネスWHZは、コネクタCZ1とコネクタCZ2の間にワイヤWZを備える。ワイヤWZには、発熱領域は設けられていない。発熱領域が設けられていないことから、ワイヤハーネスWHZに過電流が流れ続けた際、ワイヤWZのどこで発火するか予想することができない。すなわち、発火源FPZがワイヤWZのどこになるのか予想することができない。したがって、延焼防止の対策を行う際には、ワイヤハーネスWHZのワイヤWZ全体を延焼防止部材BarZにより覆う必要がある。しかしながら、ワイヤハーネスのはい回し規模が大きいため、すべてワイヤハーネスを延焼防止部材で覆うことは対策範囲や対策コストが大きくなってしまうため現実的ではない。それに対して、本実施形態の画像形成装置1では、対策範囲の縮小及び対策コストを削減することができる。
【0031】
<<第2実施形態>>
次に、第2実施形態について説明する。
【0032】
通常、プリント基板は発火する可能性がある。発火する可能性があるため、プリント基板を発火源としたマシン焼損を防ぐために、プリント基板を板金等の難燃部材により取り囲み延焼防止が行われている。第2実施形態の画像形成装置では、プリント基板から各センサ、モータ等まで接続されているワイヤハーネスを流れる電流の経路上を発火源としたマシン焼損を防ぐ。
【0033】
図8は、第2実施形態に係る画像形成装置1について説明する図である。
図8は、第2実施形態に係る画像形成装置1のプリント基板PCB3とセンサS5との間のハーネス接続構成を説明する図である。プリント基板PCB3とセンサS5との接続は、メインハーネスWHMと、メインハーネスWHMよりインピーダンスを高く設定した中継ハーネスWHSと、により接続する。メインハーネスWHMの近くには、可燃性部材FM3が設けられている。中継ハーネスWHSは、インピーダンスを高くすることにより、過電流が流れると発熱しやすくなる。したがって、中継ハーネスWHSは、過電流が流れるとメインハーネスWHMより温度が上昇する。そして、中継ハーネスWHSは板金等で構成されたプリント基板PCB3の延焼防止部材BarPの中に設置する。すなわち、過電流が流れるとメインハーネスWHMより温度が上昇する中継ハーネスWHSを覆う。また、メインハーネスWHMの中継ハーネスWHSから離間した領域は、延焼防止部材BarPから露出する。なお、メインハーネスWHMと中継ハーネスWHSのインピーダンスの大小関係の設定は、電線の太さにより管理・設定する構成としている。電線の太さ以外でのインピーダンス操作も可能であるが、太さで管理・設定した場合には、電線の使用線番のみでの管理が可能となり、簡単な構成で対応することができる。
【0034】
図9は、第2実施形態に係る画像形成装置1において、ケーブルで短絡が発生した場合について説明する図である。
図9は、メインハーネスWHMで異常が発生した場合の動作(焼損過程)を説明した図である。
図9の「×」で示したショートポイントSPでレアショート等の異常が発生した場合、過電流がメインハーネスWHM、中継ハーネスWHSに流れる。過電流がメインハーネスWHM、中継ハーネスWHSに流れると、インピーダンスが高い部分、すなわち、中継ハーネスWHSより温度が上昇し、最終的には発火する。そして中継ハーネスWHSが発火後は、プリント基板PCB3の延焼防止部材BarPにより、他部品への引火、延焼は抑えている。他部品への引火、延焼は抑えているため、一定時間経過後には、鎮火し安全停止することができる。なお、中継ハーネスWHSは発火と共に断線するため、メインハーネスWHMへの異常電流の通電も、断線するタイミングまでとなる。中継ハーネスWHSが断線するまでしか異常電流が流れないため、中継ハーネスWHS発火後のメインハーネスWHMの電流による発火は発生しない。
【0035】
なお、中継ハーネスWHSは、発熱部の一例である。
【0036】
<作用・効果>
本実施形態の画像形成装置1では、通常適用されているプリント基板の延焼防止対策により、ハーネスを発火源としたマシン焼損を防ぐことができる。通常適用されているプリント基板の延焼防止対策によりハーネスを発火源としたマシン焼損を防ぐことから対策用の部品等を追加することなく対策することができる。
【0037】
ここで、第2比較例について説明する。
図14は、第2比較例について説明する図である。第2比較例では、センサS5からプリント基板PCB3までメインハーネスWHMのみで接続されている。
図15は、第2比較例において、メインハーネスWHMで短絡が発生した場合について説明する図である。
図15の「×」で示したショートポイントSPでレアショート等の異常が発生した場合、過電流がメインハーネスWHMに流れる。その場合に、メインハーネスWHMのどの部分で発火するかは分からない。特に、延焼防止部材BarPの外でハーネス発火に至る可能性があり、発火した場合には他の可燃性部材FM3に延焼し、ひいてはマシン焼損に至ってしまう可能性がある。延焼防止対策を行う場合には、発火場所が分からないため、メインハーネスWHM全体に延焼防止を行う必要がある。しかしながら、ワイヤハーネスのはい回し規模が大きいため、すべてワイヤハーネスを延焼防止部材で覆うことは対策範囲や対策コストが大きくなってしまう。本実施形態の画像形成装置1では、通常適用されているプリント基板の延焼防止対策により、ハーネスを発火源としたマシン焼損を防ぐことができる。
【0038】
<変形例1>
図10は、第2実施形態に係る画像形成装置の第1変形例について説明する図である。
【0039】
過電流が流れると温度が上昇する部分については、ワイヤハーネスを流れる電流の経路上に設けられていれば、ワイヤハーネスに限らない。例えば、
図10の第1変形例のようにプリント基板PCB4のように、プリント基板PCB4のパターン配線で、インピーダンスの高い線路LH1を、線路LN1、LN2の間に設けることによって対応してもよい。線路LH1は過電流が流れると線路LN1、LN2、メインハーネスWHMより温度が上昇する。インピーダンスの調整は、例えば、パターンの太さ変更することにより行う。このように、プリント基板PCB4上のパターンに過電流が流れると、メインハーネスWHMを流れる電流の経路上の他の部分より温度が上昇する発熱部(線路LH1)を設けることにより、構成の簡略化することができる。また、構成を簡略化することによりコストを抑えることができる。
【0040】
なお、線路LH1は、発熱部の一例である。
【0041】
<変形例2>
図11は、第2実施形態に係る画像形成装置の第2変形例について説明する図である。
【0042】
図11は、第2実施形態に係る画像形成装置に、さらに、メインハーネスWHMのインピーダンスより高く設定した中継ハーネスWHSの温度を検出する温度検出器TSを備える。温度検出器TSは、中継ハーネスWHSの近傍に設けられる。そして、プリント基板PCB5には、異常温度を検出した場合(所定の温度より高い温度を検出した場合)には、当該電源ラインの電源供給を停止するように制御する制御IC1を備える。当該温度検出器TSを備えることにより、中継ハーネスの焼損やプリント基板PCB5の発火前に画像形成装置1を安全停止させることができる。安全に停止させることにより、延焼だけではなく発火を防止してより安全性を向上させることができる。
【0043】
<変形例3>
図12は、第2実施形態に係る画像形成装置の第3変形例について説明する図である。
【0044】
図11は、第2実施形態に係る画像形成装置に、さらに、メインハーネスWHMのインピーダンスより高く設定した中継ハーネスWHSから発生する煙を検出する煙検出器SSを備える。煙検出器SSは、中継ハーネスWHSの近傍に設けられる。そして、プリント基板PCB6には、発煙を検出した場合には、当該電源ラインの電源供給を停止するように制御する制御IC2を備える。当該煙検出器SSを備えることにより、中継ハーネスの焼損やプリント基板PCB5の発火前に画像形成装置1を安全停止させることができる。安全に停止させることにより、延焼だけではなく発火を防止してより安全性を向上させることができる。さらに、一つ煙検出器SSにより、数ヵ所の監視が可能となるため、安全性を安価構成にて確保することができる。
【0045】
<その他の変形例>
上記各実施形態では、画像形成装置について説明したが、本発明はワイヤハーネスを備える機器であれば適用することが可能である。
【0046】
なお、上記各実施形態に挙げた構成等に、その他の要素との組み合わせなど、ここで示した構成に本発明が限定されるものではない。これらの点に関しては、本発明の主旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0047】
1 画像形成装置
Bar1 延焼防止部材
BarP 延焼防止部材
CL コイル巻き線部
KN1 結び目部
KN21 結び目部
KN22 結び目部
KN23 結び目部
LH1 線路
PCB1 プリント基板
PCB2 プリント基板
PCB3 プリント基板
PCB4 プリント基板
PCB5 プリント基板
PCB6 プリント基板
RH 発熱領域
SS 煙検出器
TS 温度検出器
WH1 ワイヤハーネス
WHM メインハーネス
WHS 中継ハーネス
【先行技術文献】
【特許文献】
【0048】