(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】電線束保護部材
(51)【国際特許分類】
H02G 3/04 20060101AFI20240116BHJP
F16L 57/00 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
H02G3/04 062
F16L57/00 A
(21)【出願番号】P 2020010902
(22)【出願日】2020-01-27
【審査請求日】2022-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100085660
【氏名又は名称】鈴木 均
(72)【発明者】
【氏名】萩原 芳輝
(72)【発明者】
【氏名】岡村 悠
(72)【発明者】
【氏名】川瀬 俊晴
(72)【発明者】
【氏名】本田 秀一
(72)【発明者】
【氏名】山堀 俊太
【審査官】岩井 一央
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3179032(JP,U)
【文献】実開昭57-180419(JP,U)
【文献】特開2008-206382(JP,A)
【文献】特開2015-126667(JP,A)
【文献】特開2015-47057(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/04
F16L 57/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のシート片の端縁間を電線束挿通方向と並行に延びる折り曲げ線を介して折り曲げ可能に連結したシート片ユニットを複数個、ユニット間折り曲げ線を兼ねる切断線を介して電線束挿通方向に沿って連結して成る電線束保護部材であって、
個々の前記シート片ユニットは、各シート片を前記各折り曲げ線に沿って折り曲げることにより、各シート片により電線束挿通方向へ貫通する電線束挿通空所を形成する構成を有
し、
前記切断線は、隣り合う前記シート片ユニット同士の屈曲方向に基づいて選択された範囲を切断することにより、残った部分を前記ユニット間折り曲げ線として利用する構成を有することを特徴とする電線束保護部材。
【請求項2】
前記電線束挿通方向に沿ってロール状に巻取り、コンパクト化できることを特徴とする請求項1に記載の電線束保護部材。
【請求項3】
少なくとも一つの前記シート片に貫通穴を形成したことを特徴とする請求項1又は2に記載の電線束保護部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種電子機器内に配線されるワイヤーハーネスを保護するための電線束保護部材に関する。
【背景技術】
【0002】
ワイヤーハーネスは、電子写真式プリンタ、インクジェット式プリンタ等の画像形成装置等の電子機器の内部配線や自動車の車内配線など、電源供給や信号通信に用いられる複数の電線を束にしたものである。以下、ワイヤーハーネスを電線束とも称する。
画像形成装置等の電子機器の内部では電線束を複雑な屈曲経路、分岐経路を経て配線しており、配線作業時や配線後に個々の電線がばらけたり、破損することを防止する必要性が高いため、電線束を包囲した状態で保護しつつ装置内に位置決めするための保護手段(プロテクタ)が種々提案されている。
例えば、従来、屈曲性に優れたプロテクタとして、コルゲート菅やスパイラルチューブ(特許文献1)を用いたものがある。しかし、コルゲート管タイプのプロテクタはワイヤーハーネスを配線作業前に菅体内に挿通する管通し作業が必要となるため、配線作業が全体として繁雑化する。また、スパイラルチューブタイプのプロテクタは、テープ状の保護シートをスパイラル状にワイヤーハーネスに巻き付ける作業が必要となり、この作業が煩雑となるため改善が求められていた。
特許文献2には、事前の管通し作業やテープの巻き付け作業を不要にしたワイヤーハーネスのプロテクタ(箱型収納型プロテクタ)が提案されている。このプロテクタは、略長方形のシート材をその長手方向に沿って略並行に形成された複数本の折り曲げに沿って谷折りすることにより略筒状体を形成する。折り曲げ前のシート材の面上にワイヤーハーネスを添接した状態でワイヤーハーネスを包囲するようにシート材を折り曲げることにより、この筒状体内部にワイヤーハーネスを挿通した状態とすることができる。また、このシート材の長手方向に沿って剛性のある硬質部と、曲げが容易な曲げ許容部とを交互に設けることにより、挿通したワイヤーハーネスを屈曲した経路で配線することを可能としている。
しかし、この箱型収納型プロテクタにあっては、配線経路における屈曲角度や配線長さに応じてサイズや形状の異なるシート材(プロテクタ素材)を予め種々準備する必要があるためにプロテクタが多品種となり、品種管理の手数が増大して繁雑化し、且つ保管場所の確保が必要になるという問題があった。
また、箱形収納型プロテクタの全長が長尺化する場合、運搬や配線時の取扱いが不便化するばかりか、多数を保管する場合に嵩張るために収納スペースが増えたり、管理に手間取る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、様々な角度に屈曲し、様々な長さを有した配線経路に対応することができ、多品種となることがなく、しかもコンパクト化することにより取扱いや保管時の手数を低減できる電線束保護部材を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するため、本発明は、複数のシート片の端縁間を電線束挿通方向と並行に延びる折り曲げ線を介して折り曲げ可能に連結したシート片ユニットを複数個、ユニット間折り曲げ線を兼ねる切断線を介して電線束挿通方向に沿って連結して成る電線束保護部材であって、個々の前記シート片ユニットは、各シート片を前記各折り曲げ線に沿って谷折りする(折り曲げる)ことにより、各シート片により電線束挿通方向へ貫通する電線束挿通空所を形成する構成を有し、前記切断線は、隣り合う前記シート片ユニット同士の屈曲方向に基づいて選択された範囲を切断することにより、残った部分を前記ユニット間折り曲げ線として利用する構成を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、様々な角度に屈曲し、様々な長さを有した配線経路に対応することができ、多品種となることがなく、しかもコンパクト化することにより取扱いや保管時の手数を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本発明の一実施形態に係る電線束保護部材を構成するシート片ユニットの展開状態を示す説明図である。
【
図2】筒状に折り曲げた複数のシート片ユニットを列状に連結した状態を示した斜視図である。
【
図3】
図1に示したシート片ユニットを一列に連結した大面積のシート片ユニット群をロール状に巻き取ることによりコンパクト化した状態を示した斜視図である。
【
図4】折り曲げ線に沿って筒状(箱状)に折り曲げられた電線束保護部材の電線束挿通空所S内に電線束Cを挿通した状態を示した斜視図である。
【
図5】(a)及び(b)は本発明の電線束保護部材により屈曲した経路で配線される電線束Cを保護する場合の構成例の細部を示す説明図、及びその要部拡大図である。
【
図6】電線束保護部材の他の取付例を示した斜視図である。
【
図7】変形実施形態に係る電線束保護部材の構成、及び組み付け状態を示す斜視図である。
【
図8】変形実施形態に係る電線束保護部材(シート片ユニット)の説明図である。
【
図9】シート片ユニットの連結構造の他の例を示す斜視図である。
【
図10】(a)は他の実施形態に係る電線束保護部材(シート片ユニット)の一部の外観斜視図であり、(b)は円筒状に湾曲させた状態で各留め部同士を係合させた状態を示す斜視図である。
【
図11】(a)は留め部の変形例を示した説明図であり、(b)(c)は留め部同士の組み付け手順を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を図面に示した実施の形態により詳細に説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る電線束保護部材を構成するシート片ユニットの展開状態を示す説明図であり、
図2は筒状に折り曲げた複数のシート片ユニットを列状に連結した状態を示した斜視図である。
本実施形態に係る電線束保護部材1は、複数のシート片11~15の各端縁(長尺端縁)E1間を矢印Aで示す電線束挿通方向(長手方向)と並行に延びる折り曲げ線L1を介して折り曲げ自在に連結したシート片ユニット10を複数個、ユニット間折り曲げ線を兼ねる切断線L2を介して(一列に、列状に)電線束挿通方向Aに沿って連結したものである。個々のシート片ユニット10は、各シート片11~15を各折り曲げ線L1に沿って谷折りする(折り曲げる)ことにより、各シート片により電線束挿通方向(長手方向)Aへ貫通する電線束挿通(包囲)空所Sを形成する構成を有する。
各シート片11~15は、マイラー、その他の樹脂材料をシート状に構成した柔軟性のある素材(不織布等)からなり、本例ではシート片11,12,13はほぼ同形状の長方形状であり、シート片14,15はシート片12,13の長尺端縁E1に連設された細幅の長方形(帯状体)である。なお、一つのシート片ユニット10を構成するシート片の枚数、個々のシート片の形状、厚み、強度等は、図示のものに限定されず、種々変形可能である。シート片の厚さを大きくすることにより絶縁性、保護力を高めることができる。
シート片ユニットは、例えば大面積(長尺)のシート片母材をプレス加工により所要形状に切断することにより形成する。使用する金型に折り曲げ線L1を形成するための突条や、ミシン目などから成る切断線L2を形成するための小突起列を設けておくことにより、各線L1,L2もプレス加工時に一括して形成可能である。
個々のシート片ユニットは隣接する他のシート片ユニットとの間の切断線L2を完全に切断して分離した状態で折り曲げ線L1に沿って折り曲げて筒状、箱体状に組み立てることもできるが、隣接する他のシート片ユニットとの間の切断線L2の一部だけを切断することにより連結を維持した状態でも組立が可能である。
後述するように各シート片を弾性変形可能な柔軟性材料から構成することにより連結された状態にある複数のシート片ユニットを長手方向に沿ってロール状に丸めてコンパクト化することが可能となる。
【0008】
折り曲げ線L1は、各シート片11~15の長尺端縁E1間が容易に破断しないような強度を有し、且つ折り曲げ自在に連結するために、薄肉化、スリット、或いはミシン目を形成する等の加工を加えることにより形成される。なお、折り曲げ線L1をリブ状の突条としてもよい。
切断線L2は、隣接し合うシート片ユニットの各シート片11~15の端縁(短尺端縁)E2間を折り曲げ可能、且つ破断可能に連結しており、短尺端縁E2に沿って人手により(或いは、工具をもちいて)破断(折り曲げ)できるようにミシン面等により構成されている。隣接する2つのシート片ユニットを切断線L2に沿って切断せずに直線状に配列する場合にはこの2つのシート片ユニット間の切断線L2は切断する必要がない。一方のシート片ユニットに対して他方のシート片ユニットを90度、その他の角度で屈曲した位置関係にする場合には、各シート片11~15の端縁(短尺端縁)E2に夫々設けられた切断線L2の何れかを切断し、他の切断線を残すことにより、残った切断線を折り曲げ線として利用する。
電線束保護部材1を構成する各シート片ユニット10は、各シート片11~15の短尺端縁E2間を切断線L2を介して連結されているため、一つのシート片ユニット10だけを切り離して機器内の配線経路に配置することもできるし、複数のシート片ユニットを連結したままの状態で配置することもできる。また、平坦面に沿って複数のシート片ユニットを直線状に連結したままの状態で配置することもできるし、
図2に示すように切断線L2によりシート片ユニット10間を屈曲させた連結状態で配置することもできる。
図2の例では屈曲角度が90度の例を示しているが、これは一例であり、鋭角、鈍角であっても良い。また、
図2では各シート片ユニット間の屈曲方向は下から3個10A~10Cは同一平面に沿った方向へ屈曲しているが、最上部のシート片ユニット10Dは、他の3個とは異なった奧方向(三次元方向)へ屈曲している。また、最下部のシート片ユニット10Aとその直上のシート片ユニット10Bとの間は各シート片12の短尺端縁E2同士が折り曲げ線を兼ねる切断線L2により連結されており、他の切断線L2部分では切断されている。シートユニット10Bと三番目のシートユニット10Cとは各シート片13の短尺端縁E2同士が一部の切断線L2により連結されており、他の切断線L2部分では切断されている。更に、三番目のシートユニット10Cと最上部のシートユニット10Dとは各シート片11の短尺端縁E2同士が切断線L2により連結されており、他の切断線L2部分では切断されている。このように隣接する2つのシート片ユニットは、5つのシート片11~15のうちの一つのシート片の短尺端縁同士を連結した状態にすると共に、他のシート片の短尺端縁を切断することにより任意の方向へ屈曲させた位置関係とすることが可能となる。
【0009】
図2の状態で各シート片ユニット10の電線束挿通空所S内に電線束を挿通することにより束ねることができる。また、電線束を束ねた状態で機器内の配線経路にある部材に両面テープなどを用いてシート片ユニットを固定する。
各シート片ユニットの幅寸法(折り曲げ線L1の間隔)や長手方向寸法(切断線L2の間隔)を、挿通しようとする電線束の太さや長さに対応するように予め設定したものを複数準備しておくことにより、配線作業時に最適な電線束保護部材を選択することが可能となり、柔軟な対応が可能となる。
【0010】
次に、
図3は
図1に示したシート片ユニットを一列に連結した大面積のシート片ユニット群をロール状に巻き取ることによりコンパクト化した状態を示している。
個々のシート片を弾性的に変形可能であり、且つ原形に復帰可能な柔軟、弾性材料から構成することにより、電線束保護部材1をロール状に巻き取ったり、巻き出して平坦状に展開させることが可能となる。ロール状にコンパクト化することにより保管時や運搬時における収納スペースの節約が可能となる。また、展開した状態で収納、集積したい場合にはそのような対応も可能となる。
また、配線作業に際してもロール状の状態から必要な長さ分だけのシート片ユニットを切り出して効率的に作業を実施することが可能となる。
【0011】
次に、
図4は折り曲げ線に沿って筒状(箱状)に折り曲げられた電線束保護部材の電線束挿通空所S内に電線束Cを挿通した状態を示している。
図1にも示したように各シート片ユニット10の幅方向両端縁に位置するシート片14,15は小突片状の留め部14a、15aを備えており、切除線L3から外側を切除することにより各留め部14a、15aのみを残すことができる。各留め部は、切り込み部14b、15bを有しており、
図4に示したように一方の留め部の切り込み部を他方の留め部の切り込み部に差し込むことにより両留め部同士が離脱することを防止して、シート片ユニットが電線束挿通方向Aと直交する方向へ開放しないように保持することが可能となる。
即ち、
図3に示したロール状の電線束保護部材1から必要個数のシート片ユニットを連結した状態で取出し(切断線から切断し)、各シート片ユニットの内面に沿って電線束Cを添設した状態で各シート片を各折り曲げ線L1に沿って谷折りして筒状(箱状)に形成する。次いで、各切除線L3から不要部分を切除することにより突出させた各留め部14a、15aを組み付けることにより筒状体を維持する。このため、管通しや巻付け作業を伴わない簡易な電線保護作業が完了できる。切断線L2を手作業で容易に破断できるように構成しておけば、必要とされるシート片ユニットの個数、全長、屈曲角度に応じて切断箇所を調整することが可能となる。
なお、
図4では二個のシート片ユニットを連結した構成例を示したが、一個でも良いし、
図2に示したように3個以上を連結してもよい。
図示の例では個々のシート片ユニットに一対の留め部14a、15aを設けたが、連結された全てのシート片ユニットに留め部を設けることなく、連結された2個のシート片ユニットに対して一対の留め部14a、15aを設けるようにしたり、3個のシート片ユニットに対して一対の留め部14a、15aを設けるようにしてもよい。このように留め部を間引きして配置すれば、組立て作業性を向上させることができる。
なお、留め部は必須ではない。即ち、留め部をシート片14,15に設けずに、折り曲げた状態の各シート片を電線束に被せることによりシート片ユニットのバラケを防止したり、シート片ユニットを電線束に沿わせるように組み付けて筒状体の保形性を確保することにより、留め部を破断する作業を省略して組立作業性を向上することができる。また、留め部に代えて粘着テープなどにより接着、保形してもよい。
【0012】
次に、
図5(a)及び(b)は本発明の電線束保護部材により屈曲した経路で配線される電線束Cを保護する場合の構成例の細部を示す説明図、及びその要部拡大図である。
この例では、90度の屈曲角度で配線される電線束Cを保護する際に、シート片ユニット10Eと10Fとを90度の屈曲角度で連結した状態としている。シート片ユニット10Eの中央のシート片11の一方の短尺端縁E2に設けた切断線L2のみを残して他のシート片12~15の切断線L2を切断することにより、他方のシート片ユニット10Fのシート片11の短尺端縁E2との連結を維持している。このように2つのシート片ユニット10E,10F間を分断することなく、屈曲した電線束の配線経路に対応した保護部材の取付が可能となる。なお、本例では90度に屈曲した配線経路を示しているが、これは一例であり、0~180度の角度範囲での対応が可能である。また、個々のシート片ユニットが柔軟性のあるシート片により構成されているため、切断線L2での屈曲以外にも、個々のシート片ユニットを長手方向へ湾曲させたり、幅方向へ捻れさせるなどの変形が可能であり、湾曲したり、傾斜したり、凸部や凹部を有した種々の配線経路、配線対象への微妙な対応が可能となる。
この例では、シート片11の外面、或いはシート片12の外面を配線対象物に対して接着等により固定してもよいし、接着せずに各シート片ユニットを電線束に沿わせるだけでもよい。
【0013】
次に、
図6は電線束保護部材の他の取付例を示しており、2つのシート片ユニット10,10の側方のシート片13の端縁の切断線L2のみを残して他のシート片11,12,14,15の端縁の切断線L2を切断することにより、両シート片ユニットを連結している。このように2つのシート片ユニット間を連結する5本の切断線L2のうちから切断せずに残す切断線を選択することにより、シート片ユニットの向きを変更する(屈曲させる)ことが可能となる。配線対象物の形状や周辺の障害物との関係でシート片ユニットの向きを変更できるので便利である。このため、
図2に示した三次元的な配線経路に対しても複数個のシート片ユニットを連結した状態で対応することが可能となり、シート片ユニットの取付作業を伴う配線作業を効率化することができる。
図1、
図2等では一種類のサイズを有した電線束保護部材1を示したが、シート片ユニットの長手方向寸法、幅方向寸法が異なるものを複数種類準備することにより、電線束の太さの違いに対応した保護が可能となる。つまり、各シート片11~15の長手方向寸法や幅方向寸法を種々変更したものを製作、準備しておくことが便利である。
また、上記実施形態では連結される全てのシート片ユニットを同形状としたが、各シート片11~15の長手方向寸法、幅方向寸法が異なるシート片ユニットを連結するように構成してもよい。即ち、異なった容積の電線束挿通空所Sを形成する複数のシート片ユニットを連結するようにしてもよい。
【0014】
次に、
図7は変形実施形態に係る電線束保護部材の構成、及び組み付け状態を示す斜視図である。
上記実施形態では5枚のシート片11~15を4箇所の折り曲げ線L1に沿って谷折りすることにより略四角柱状の電線束保護部材を形成したが、
図7の変形例に示すように3枚のシート片11,12,13を2本の折り曲げ線L1により折り曲げ自在に連結することにより、各折り曲げ線L1を谷折りしたときに三角柱状の電線束挿通空所Sを形成するようにしてもよい。このように折り曲げ線L1の数を減ずることによりシート片の枚数が減ることとなり、組立性を簡素化することができる。
また、折り曲げ線L1の数を1本としてもよい。つまり、二枚のシート片の一つの長尺端縁同士を折り曲げ線により折り曲げ、開閉自在に連結した構成でもよい。
【0015】
次に、
図8は変形例に係る電線束保護部材(シート片ユニット)の説明図であり、任意のシート片に夫々一個以上の貫通穴20を形成することにより、箱形に組立てた電線束保護部材1を取付対象物(配線対処物)である製品側板金やモールドの突起箇所等へ固定する作業を容易化する。各シート片に貫通穴20を形成することにより各方向に貫通穴を形成することができ、電線束保護部材の組立時に、任意の貫通穴を取付対象物としての電子機器等の外装材の突起部に固定したり、ブッシュ等に差し込むことで、保持性能を確立できる。或いは、貫通穴20を利用して細いワイヤなどの線材やクリップを挿通して取付対象物に固定することが可能となる。
【0016】
次に、
図9はシート片ユニットの連結構造の他の例を示す斜視図である。
図2の実施形態では一つのシート片ユニットと隣接する他の一つのシート片ユニットとの間を屈曲位置関係とした例を示したが、
図9に示したように複数のシート片ユニットを直線状に連結したシート片ユニット群30を形成する一方で、このシート片ユニット群30の一端に対して他のシート片ユニット群40を一つの切断線L2を介して90度の屈曲角度で連結させることもできる。更に、シート片ユニット群40の他端には他のシート片ユニット10を異なった方向(三次元方向)へ90度屈曲させて連結している。
本例では、電線束Cの各部位の長さ、配線方向の変化箇所に応じて、シート片ユニットの連結個数、屈曲位置等を変更してシート片ユニットによる電線束のカバー長さを調整している。電線束が直線状に延びる部位が一つのシート片ユニットの長手方向長を越える場合には複数のシート片ユニットを直線状に連結しつつ箱体状に組立てを行い、更に電線束が屈曲する箇所では切断線L2を利用してシート片ユニット間を屈曲させる。屈曲箇所に続く配線経路が一つのシート片ユニットの長手方向長を越える場合には前記と同様に複数のシート片ユニットを直線状に連結すればよい。
【0017】
次に、
図10(a)は他の実施形態に係る電線束保護部材(シート片ユニット)の一部の外観斜視図であり、各シート片ユニット10に折り曲げ線L1が存在しない点が特徴的である。折り曲げ線L1が存在しないために
図10(b)に示すように円筒状に湾曲させた状態で各留め部14a、15a同士を係合させて保形することができる。
図1、
図2の実施形態では、折り曲げ線L1が存在するために折り曲げた時に四角柱が形成される。そのために各シート片11~15の端縁に設けられた各切断線L2は、必ず各シート片単位で切断されることとなる。従って、例えばシート片11とシート片12の各切断線L2だけを残して他のシート片13,14,15の各切断線L2を切断するという如き自由度がない。
これに対して
図10の構成によれば、折り曲げ線L1が存在しないために、切断線L2はシート片ユニットの端縁の全長に渡って連続して延在しており、切断線L2のどの部位をどの長さだけ残し、残りの部位を切断するかは任意自在となる。このため、隣接する2つのシート片ユニットの屈曲方向、屈曲角度を任意自在に選定することができる。一つのシート片ユニットに対する他のシート片ユニットの屈曲方向(方位)を360度の範囲で選定することができる。
即ち、
図10の電線束保護部材は、一枚のシート片から成るシート片ユニット10を複数個、ユニット間折り曲げ線を兼ねる切断線L2を介して一列に、或いは列状に電線束挿通方向Aに沿って連結して成り、個々のシート片ユニットは、筒状に湾曲させることにより電線束挿通方向へ貫通する電線束挿通空所Sを形成することを特徴とする。
【0018】
次に、
図11(a)は留め部の変形例を示した説明図であり、同図(b)(c)は留め部同士の組み付け手順を示す説明図である。
一方の留め部14aにはスリット14cが形成されている。他方の留め部15aは横長の長方形状をなしており、2つの折り曲げ線L4により留め部15aの両端部15cを矢印方向へ折り曲げて畳むことにより、(b)に示したようにスリット14c内に挿入可能な形態になる。留め部15aを(b)のように折り畳んだ状態でスリット14c内に差し込んでスリットの反対側に突出させてから(c)のように両端部15cを開放する。これにより両留め部が脱落不能に係合する。
【0019】
<本発明に係る実施態様の構成、作用、効果のまとめ>
第1の態様に係る電線束保護部材は、複数のシート片1~5の端縁E1間を電線束挿通方向Aと並行に延びる折り曲げ線L1を介して折り曲げ可能に連結したシート片ユニット10を複数個、ユニット間折り曲げ線を兼ねる切断線L2を介して(一列に、列状に)電線束挿通方向に沿って連結して成る。個々のシート片ユニットは、各シート片を各折り曲げ線に沿って谷折りする(折り曲げる)ことにより、各シート片により電線束挿通方向へ貫通する電線束挿通空所Sを形成する。
これによれば、コンパクト化による保管が簡単で、様々な電線束の太さや長さに対応し、様々な角度の屈曲配線経路にも対応した電線束の保護部材を提供することができる。また、ワイヤーハーネスを管通しする等の手間が不要な箱型収納型プロテクタと同様に複数のシート材を筒状に折り曲げる構成でありながら、様々な角度に屈曲し、様々な長さを有した配線経路に対応することができ、多品種となることがなく、しかもコンパクト化することにより取扱いや保管時の手数を低減できる。
即ち、電線束保護部材毎に構成するシート片ユニットの電線束挿通方向長さ(長手方向長さ)、及び幅方向寸法(シート片の形状、サイズ)を異ならせることにより、取付対象物の配線経路の状況の違いに応じて使用する電線束保護部材を種々選択することができ、柔軟な対応が可能となる。具体的には、電線束保護部材毎に切断線間隔、折り曲げ線間隔が異なるシート片ユニットを含むように構成することにより、折り曲げ位置、切断位置を種々の態様で変化させることが可能となり、電線束を任意の方向に適宜方向付けしつつ簡易な組付け手数で組立を完了することが可能となる。また、電線束挿通空所の容積の異なるシート片ユニットを用いることにより電線束の太さの変化に対応させることができる。
一つの電線束保護部材には電線束挿通方向長が同じサイズのシート片ユニットだけを複数個連結するようにしてもよいし、異なったサイズのシート片ユニットを混在させてもよい。これにより、取付対象物の配線経路の状況の違いに応じた柔軟な対応が可能となる。
具体的には、一つの電線束保護部材中に切断線間隔、折り曲げ線間隔(電線束挿通空所の容積)が異なるシート片ユニットを所定の順番で混在、配列させることにより、折り曲げ位置、切断位置を種々の態様で変化させることが可能となり、電線束を任意の方向(二次元方向、三次元方向)に適宜方向付けしつつ簡易な組付け手数で組立て(電線束包囲作業)を完了することが可能となる。
【0020】
各シート片は長方形等の四辺形、その他、折り曲げ線に沿って折り曲げて電線束挿通空所を形成できる形状であれば、どのような形状であってもよい。シート片に使用する樹脂材料は充分な強度、耐久性を有し、かつ弾性変形が可能な柔軟な絶縁材料が好ましい。
電線束挿通方向(長手方向)と並行に延びる折り曲げ線とは、必ずしも厳密な平行を意味しない。折り曲げ線の本数は、一本以上であればよい。折り曲げ線が三本、或いは四本であれば、折り曲げ後に形成される形状は箱形(四角柱状)となり、折り曲げ線が二本であれば三角筒(柱)形状となる。折り曲げ線が一本であれば二つ折り状態とすることができる。折り曲げ線数が少ないことにより組立手数を減らして作業性を向上できる。また、折り曲げ線に沿って折ることは必須ではなく、折り曲げ線で折り曲げることなく管状(円筒状)に丸めることにより管状の電線束挿通空所を形成することもできる。円筒状にすることで、特殊な屈曲角度で配線された電線束への対応性を向上できる。なお、シート片ユニットに折り曲げ線を設けずに円筒状にのみ組立形成できるように構成しても良い。
【0021】
切断線は実施形態では電線束挿通方向(折り曲げ線)と直交した方向へ延びているが、直交することは必須はなく交差する方向に延びれば良い。切断線を各シート片の長手方向端縁に設けて任意のシート片の切断線を切断できるようにしたので、隣接する2つのシート片ユニットの位置関係(直線状か、屈曲位置関係か)、及び屈曲方向(二次元か三次元か)を任意自在に決定することができる。
折り曲げ線も切断線も、シート片ユニットをプレス加工により形成する際に一括形成すれば製造手数を減ずることができる。
箱状、筒状、管状に変形させたシート片ユニットは、予めシート片に設けられた留め部を利用して開放しないように固定してもよい。
シート片ユニットを弾性的に変形、原形復帰可能な柔軟材料から構成することにより、種々の方向への変形が可能となり、配線箇所の条件に応じた変形が可能となる。また、ロール状に巻き取ってコンパクトすれば、省スペースでの運搬、集積、保管時の取扱が便利となる。
【0022】
第2の態様に係る電線束保護部材は、電線束挿通方向に沿ってロール状に巻取り、コンパクト化できることを特徴とする。
複数のシート片ユニットを列状に連結した電線束保護部材を柔軟な材質から構成することにより、ロール状にコンパクト化して取扱時、運搬時、保管時の利便性を向上することができる。
【0023】
第3の態様に係る電線束保護部材は、少なくとも一つのシート片に貫通穴20を形成したことを特徴とする。
シート片ユニットのシート片に1箇所以上の貫通穴を設けることにより、折り曲げ線に沿って折ることにより筒状体、箱状体等の形状とした際に、貫通穴を利用して製品側板金やモールドの突起箇所等への固定が容易となる。
【0024】
第4の態様に係る電線束保護部材は、一枚のシート片から成るシート片ユニット10を複数個、ユニット間折り曲げ線を兼ねる切断線L2を介して一列に、或いは列状に電線束挿通方向Aに沿って連結して成り、個々のシート片ユニットは、筒状に湾曲させることにより電線束挿通方向へ貫通する電線束挿通空所Sを形成することを特徴とする。
これによれば、切断線L2のどの部位をどの長さで残すのかという選択自由度が広がり、一つのシート片ユニットに対する他のシート片ユニットの方向性を3次元の方位へ自由に設定することが可能となる。これによれば、電線束の配線経路に柔軟に対応してシート片ユニット間を捻れた方向へ連結することも可能となる。組立性も簡略化することができる。
【符号の説明】
【0025】
1…電線束保護部材、10,10A~10F…シート片ユニット、11,12,14,15…シート片、14a、15a…留め部、L1…折り曲げ線、L2…切断線、L3…切除線、E1…長尺端縁、E2…短尺端縁、20…貫通穴、2…短尺端縁E、20…貫通穴、30…シート片ユニット群、40…シート片ユニット群。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0026】
【文献】特開2016-52240公報
【文献】特開2015-012740公報