(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】生体モニタ装置、生体モニタ方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/00 20060101AFI20240116BHJP
【FI】
A61B5/00 G
A61B5/00 102A
(21)【出願番号】P 2020048414
(22)【出願日】2020-03-18
【審査請求日】2023-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 健広
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 利夫
【審査官】磯野 光司
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-517286(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0110470(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00-5/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モニタ対象者から所定周期毎に計測された生体情報を時系列データとして取得する取得部と、
期間長が異なる少なくとも2つの基準期間に基づき、前記時系列データの移動平均を前記基準期間毎にそれぞれ算出する第1の算出部と、
前記第1の算出部で算出された前記移動平均の各々を比較可能な状態で表示させる表示制御部と、
前記時系列データと前記移動平均との乖離度を算出する第2の算出部と、
前記第1の算出部で算出された前記移動平均の各々と、前記第2の算出部で算出された前記乖離度とに基づいて、前記モニタ対象者の状態を判定する判定部と、
を備え、
前記表示制御部は、前記第2の算出部で算出された前記乖離度を、前記第1の算出部で算出された前記移動平均の各々とともに表示させる生体モニタ装置。
【請求項2】
前記表示制御部は、前記取得部で取得された前記時系列データを、前記第1の算出部で算出された前記移動平均の各々と比較可能な状態で表示させる請求項1に記載の生体モニタ装置。
【請求項3】
前記第1の算出部で算出された前記移動平均の各々に基づいて、前記モニタ対象者の状態を判定する判定部を更に備える請求項
1又は2に記載の生体モニタ装置。
【請求項4】
前記表示制御部は、前記判定部で異常と判定された場合、異常を報知するための情報を表示させる請求項
1~3の何れか一項に記載の生体モニタ装置。
【請求項5】
モニタ対象者から所定周期毎に計測された生体情報を時系列データとして取得する工程と、
期間長が異なる少なくとも2つの基準期間に基づき、前記時系列データの移動平均を前記基準期間毎にそれぞれ算出する工程と、
算出された前記移動平均の各々を比較可能な状態で表示させる工程と、
前記時系列データと前記移動平均との乖離度を算出する工程と、
前記移動平均の各々と、前記乖離度とに基づいて、前記モニタ対象者の状態を判定する工程と、
前記乖離度を、前記移動平均の各々とともに表示させる工程と、
を含む生体モニタ方法。
【請求項6】
モニタ対象者から所定周期毎に計測された生体情報を時系列データとして取得するステップと、
期間長が異なる少なくとも2つの基準期間に基づき、前記時系列データの移動平均を前記基準期間毎にそれぞれ算出するステップと、
算出された前記移動平均の各々を比較可能な状態で表示させるステップと、
前記時系列データと前記移動平均との乖離度を算出するステップと、
前記移動平均の各々と、前記乖離度とに基づいて、前記モニタ対象者の状態を判定するステップと、
前記乖離度を、前記移動平均の各々とともに表示させるステップと、
をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体モニタ装置、生体モニタ方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ウェアラブルデバイス等の各種の計測装置を用いることで、病院等の医療機関以外でも血圧や心拍等の生体情報を容易に計測することができるようになってきている。また、上記の計測装置を用いることで、限られた時間のみの一時的な計測結果だけではなく、日常的に計測することで時系列に連続した生体情報(時系列データ)も比較的容易に取得することが可能となっている。
【0003】
ところで、上述した生体情報は季節変動や日内変動等、時間経過に伴い基準となる生体情報の値が変化することが知られている。そのため、生体情報の時間的な変化を捉えることで、モニタ対象者の健康支援を行うことができる。例えば、従来、2種類の期間に基づいて生体情報の移動平均を算出し、各期間での基準範囲と比較して異常の有無を判定することで、異常時に信号を出力する技術が提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の技術では、期間毎に算出した生体情報の移動平均から異常の有無を判定することはできるが、両期間における生体情報の推移を比較することはできない。そのため、例えば、モニタ対象者の状態が普段と異なる状態にあるのか等を容易に確認することができず、モニタ対象者の健康支援を行う上で更なる改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、生体情報に基づく健康支援を効率的に行うことが可能な生体モニタ装置、生体モニタ方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、モニタ対象者から所定周期毎に計測された生体情報を時系列データとして取得する取得部と、期間長が異なる少なくとも2つの基準期間に基づき、前記時系列データの移動平均を前記基準期間毎にそれぞれ算出する第1の算出部と、前記第1の算出部で算出された前記移動平均の各々を比較可能な状態で表示させる表示制御部と、前記時系列データと前記移動平均との乖離度を算出する第2の算出部と、前記第1の算出部で算出された前記移動平均の各々と、前記第2の算出部で算出された前記乖離度とに基づいて、前記モニタ対象者の状態を判定する判定部と、を備え、前記表示制御部は、前記第2の算出部で算出された前記乖離度を、前記第1の算出部で算出された前記移動平均の各々とともに表示させる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、生体情報に基づく健康支援を効率的に行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態にかかる生体モニタシステムの概要を示す概念図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る計測装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る生体モニタ装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る生体モニタ装置の機能構成の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、実施形態の表示制御部が表示する画面の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、実施形態の生体モニタ装置が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、変形例1に係る生体モニタ装置の機能構成の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、2人の人物の心拍を模式的に示す図である。
【
図9】
図9は、干渉により発生した干渉波を模式的に示す図である。
【
図10】
図10は、変形例1の生体モニタ装置が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に添付図面を参照して、生体モニタ装置、生体モニタ方法及びプログラムの実施形態を詳細に説明する。
【0010】
図1は、実施形態にかかる生体モニタシステム1の概要を示す概念図である。生体モニタシステム1は、計測装置10と生体モニタ装置20とを有する。
【0011】
計測装置10は、モニタ対象者となるユーザUの生体情報を計測することが可能な各種のデバイスである。生体情報は、ユーザUの生体から得られる各種の情報(バイタルデータとも呼ばれる)であり、例えば、心拍、血圧、血中酸素飽和度、血糖値、呼吸、体重、及び体温等が挙げられる。
【0012】
計測装置10は、生体情報を計測可能な計測部16(
図2参照)を備え、ユーザUから生体情報を計測(以下、取得ともいう)する。計測装置10の形態は特に問わず、種々の形態を採用することができる。例えば、計測装置10は、腕時計型やブレスレット型等のウェアラブルデバイスであってもよい。また、計測装置10は、血圧計や電子体温計等のヘルスケアデバイスであってもよい。また、計測装置10は、ユーザUが横臥するベッド等に設けられる敷物型や据え置き型のデバイスであってもよい。また、計測装置10は、ユーザUの顔部等を撮像可能な位置に設けられるカメラ型のデバイスであってもよい。
【0013】
また、計測装置10が、生体情報を取得する方法や構成は特に問わず、公知の技術やセンシング機器を用いることができる。例えば、計測装置10は、パルスオキシメータ技術を用いたセンサ装置を備えることで、光により心拍や血中酸素飽和度を計測してもよい。また、例えば、計測装置10は、接触式又は非接触式の血圧センサや温度センサ、重量センサ、呼気センサ等を備えてもよい。
【0014】
なお、計測装置10が取得可能な生体情報の種類は特に問わず、一種類の生体情報を取得してもよいし複数種類の生体情報を取得してもよい。また、複数種類の計測装置10を用意してもよい。例えば、血圧を計測する専用の計測装置10と血糖値を計測する専用の計測装置10とを個別に用意してもよい。
【0015】
計測装置10は、ユーザUから所定周期毎に生体情報を取得する。また、計測装置10は、ユーザU等の操作に応じて生体情報を取得する。計測装置10は、取得した生体情報を生体モニタ装置20に送信する。なお、計測装置10が複数台で構成される場合には、計測装置10の各々から個別に生体情報が送信される形態としてもよいし、何れか一の計測装置10に生体情報が収集された後、当該計測装置10から送信される形態としてもよい。
【0016】
生体モニタ装置20は、本実施形態における生体モニタ装置の一例である。生体モニタ装置20は、例えば、スマートフォンやタブレット端末、PC(Personal Computer)、サーバ装置等の情報処理装置(コンピュータ)であり、計測装置10と通信可能に接続される。
【0017】
計測装置10と生体モニタ装置20との接続方法(通信方法)は特に問わず、種々の方法を採用することが可能である。例えば、計測装置10と生体モニタ装置20とは、Bluetooth(登録商標)等の近距離無線通信で接続されてもよい。また、計測装置10と生体モニタ装置20とは、無線LAN等やインターネット等のネットワークを介して接続されてもよい。
【0018】
生体モニタ装置20は、計測装置10から送信される生体情報を取得し、取得した生体情報に基づいて、ユーザUの健康状態を示す画面を表示するための処理を行う。
【0019】
次に、上述した計測装置10及び生体モニタ装置20の構成について説明する。
【0020】
図2は、計測装置10のハードウェア構成の一例を示す図である。
図2に示すように、計測装置10は、CPU(Central Processing Unit)11、ROM(Read Only Memory)12、RAM(Random Access memory)13、表示部14、操作部15、計測部16及び通信部17等を備える。
【0021】
CPU11は、プロセッサの一例であり、計測装置10の動作を統括的に制御する。ROM12は、電源を切ってもプログラム又はデータを保持することができる不揮発性のメモリである。RAM13は、CPU11のワークエリア等として用いられる揮発性のメモリである。
【0022】
表示部14は、例えば液晶パネル等の表示バイスで形成され、各種の情報を表示する。操作部15は、例えば各種操作ボタン等の入力デバイスを有し、ユーザUによる操作を受け付ける。なお、操作部15は、表示部14に設けられるタッチパネルであってもよい。
【0023】
計測部16は、生体情報を計測するためのセンサ装置である。計測部16は、取得した生体情報をCPU11に出力する。なお、計測部16が取得する生体情報には、ユーザUから計測された計測値の他、生体情報の種類(心拍、血圧等)を示す情報や、計測日時を示す日時情報等が含まれてもよい。
【0024】
通信部17は、例えばBluetooth(登録商標)等の通信規格に準拠した通信インタフェースである。通信部17は、CPU11の制御の下、生体モニタ装置20との間で通信を確立する。
【0025】
CPU11は、ROM12等に格納されたプログラム又はデータをRAM13上に読み出して各種の処理を実行することで、計測装置10の動作を制御する。例えば、CPU11は、予め定められたタイミング毎や、操作部15を介した操作に応じて計測部16を動作させる。また、CPU11は、計測部16で計測された生体情報を、通信部17を介して生体モニタ装置20に順次送信させる。
【0026】
なお、CPU11は、計測装置10が備えるRTC(Real Time Clock)等の計時部(図示せず)が計時する日時に基づき、計測部16の動作タイミングや現在日時の計時を行う。また、CPU11は、ユーザUを特定することが可能な識別情報を生体情報とともに送信させてもよい。
【0027】
図3は、生体モニタ装置20のハードウェア構成の一例を示す図である。
図3に示すように、生体モニタ装置20は、CPU21、ROM22、RAM23、記憶部24、表示部25、操作部26、及び通信部27等を備える。
【0028】
CPU21は、プロセッサの一例であり、生体モニタ装置20の動作を統括的に制御する。ROM22は、電源を切ってもプログラム又はデータを保持することができる不揮発性のメモリである。RAM23は、CPU21のワークエリア等として用いられる揮発性のメモリである。
【0029】
記憶部24は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等の記憶装置である。記憶部24は、CPU21が実行可能な各種のプログラムや各種の設定情報等を記憶する。
【0030】
表示部25は、例えば液晶パネル等の表示バイスで形成され、各種の情報を表示する。操作部26は、例えば各種操作ボタン等の入力デバイスを有し、ユーザU等による操作を受け付ける。なお、操作部26は、表示部25に設けられるタッチパネルであってもよい。
【0031】
通信部27は、例えばBluetooth(登録商標)等の通信規格に準拠した通信インタフェースである。通信部27は、CPU21の制御の下、計測装置10との間で通信を確立する。
【0032】
CPU21は、ROM22や記憶部24に格納されたプログラム又はデータをRAM23上に読み出し各種の処理を実行することで、生体モニタ装置20の動作を制御する。例えば、CPU21は、ROM22や記憶部24に格納されたプログラム等と協働することで、
図4に示す機能部を生体モニタ装置20に実現させる。
【0033】
図4は、生体モニタ装置20の機能構成の一例を示す図である。
図4に示すように、生体モニタ装置20は、取得部201と、第1の算出部202と、第2の算出部203と、表示制御部204と、判定部205とを機能部として備える。なお、生体モニタ装置20が備える機能部の一部又は全部は、ソフトウェア(プログラム)によって実現されるソフトウェア構成であってもよいし、CPU21等に搭載された専用回路等によって実現されるハードウェア構成であってもよい。
【0034】
取得部201は、取得部の一例である。取得部201は、計測装置10から送信された生体情報を取得する。具体的には、取得部201は、通信部27と協働することで、通信部27が受信した生体情報を順次取得する。ここで、取得部201が取得する生体情報は、ユーザUの生体情報を時系列的に計測したものとなる。以下では、取得部201が取得する時系列的に連続した生体情報の系列を「時系列データ」ともいう。
【0035】
第1の算出部202は、第1の算出部の一例である。第1の算出部202は、期間長が異なる少なくとも2つの基準期間に基づいて、時系列データの移動平均を算出する。ここで、基準期間は、1時間や1日、1週間、1ヶ月の単位等、任意に設定可能とするが、生体情報の種類に応じて設定することが好ましい。
【0036】
例えば、心拍、呼吸、血圧、体温、体重等の生体情報は、季節変動や日内変動があることが分かっている。また、生体情報は、終末期に近付くと低下する傾向にある。そのため、少なくとも比較的長期の期間長と、比較的短期の期間長との2つの基準期間を設定することで長期的な生体情報の変動と短期的な生体情報の変動とを捉えることができる。
【0037】
また、基準期間は、モニタ対象者のユーザUの状態に応じて設定することが好ましい。例えば、病気(心臓、腎臓、肝臓の疾患、腹膜炎等)等の要因により、浮腫が発生する可能性にあるモニタ対象者では、浮腫の発生を検出するための基準期間を設定することが好ましい。具体的には、浮腫が発生した場合、1日や半日の間に300g~500g程度、体重が増加する傾向にある。そのため、例えば基準期間を1日、半日又は数時間の期間長とすることで、モニタ対象者に浮腫が発生したことを捉えることができる。また、例えば、栄養障害等の低栄養状態にある場合、数週間から半月程度にかけて数キログラムの体重が減少することが想定される。この場合、基準期間を1週間、数週間、1ヶ月程度の期間長とすることで、モニタ対象者の低栄養状態を捉えることができる。
【0038】
本実施形態では、期間長の異なる2種類の基準期間が設定されているものとする。以下では、2種類の基準期間を区別して表す場合、比較的長期の基準期間を「第1の基準期間」、第1の基準期間より短期の基準期間を「第2の基準期間」とも表記する。
【0039】
具体的には、第1の算出部202は、上述した第1の基準期間と第2の基準期間との各々に基づき、時系列データの移動平均をそれぞれ算出する。移動平均は、時系列データにおける基準期間ごとの生体情報(計測値)の平均値を、時間をずらしながら順次算出したものである。なお、複数種類の生体情報の時系列データが取得される場合、第1の算出部202は、生体情報の種類毎に、第1の基準期間及び第2の基準期間に基づく移動平均をそれぞれ算出する。
【0040】
第2の算出部203は、第2の算出部の一例である。第2の算出部203は、取得部201で取得された時系列データと、第1の算出部202で算出された移動平均とに基づいて、時系列データ及び各移動平均の間の乖離度を算出する。例えば、第2の算出部203は、以下の算出方法により3種類の乖離度K1~K3を算出する。
【0041】
まず、取得部201で取得された時系列データ(生体情報)の計測値がV1であるとする。また、計測値V1が取得された時点での、第1の基準期間に係る移動平均の値(以下、移動平均値ともいう)がV2、第2の基準期間に係る移動平均値がV3であるとする。
【0042】
この場合、第2の算出部203は、下記式(1)を用いることで、計測値V1と移動平均値V2との乖離度K1を算出する。また、同様に下記式(2)を用いることで、計測値V1と移動平均値V2との乖離度K2を算出する。さらに、第2の算出部203は、下記式(3)を用いることで、移動平均値V2、V3間の乖離度K3を算出する。
K1=(V1-V2)…(1)
K2=(V1-V3)…(2)
K3=K1-K2…(3)
【0043】
なお、乖離度の算出方法は上記例に限定されず、他の算出方法を用いて算出してもよい。また、複数種類の生体情報の時系列データが取得される場合、第2の算出部203は、生体情報の種類毎に乖離度K1~K3をそれぞれ算出する。
【0044】
表示制御部204は、表示制御部の一例であり、表示部25に表示する画面を制御する。表示制御部204は、第1の算出部202で算出された第1の基準期間及び第2の基準期間に係る移動平均の各々を比較可能な状態で表示部25に表示させる。また、表示制御部204は、取得部201で取得された時系列データを、第1の算出部202で算出された移動平均の各々と比較可能な状態で表示部25に表示させる。
【0045】
図5は、表示制御部204が表示する画面の一例を示す図である。
図5において、縦軸は、生体情報の計測値を表し、横軸は時間経過を表す。また、実線で表すグラフG1は、取得部201で取得された時系列データを、鎖線で表すグラフG2は、第1の基準期間に係る移動平均を、一点鎖線で表すグラフG3は、第2の基準期間に係る移動平均を示す。
【0046】
表示制御部204は、
図5に示すように、同一の画面内、つまり座標系内に、時系列データと移動平均の各々とを可視化して表示させる。これにより、ユーザUの健康状態を管理するユーザ(以下、管理ユーザともいう)は、グラフG1~G3の変化の傾向や、グラフG1~G3間の関係を容易に比較することができる。ここで、管理ユーザは、モニタ対象者のユーザU自身であってもよいし、ユーザU以外の人物(ユーザUの家族、ユーザUの介護者、医療従事者等)であってもよい。
【0047】
例えば、管理ユーザは、
図5の画面を参照することで、時間の経過と共にグラフG1~G3が低下傾向にあることを認識することができる。また、管理ユーザは、
図5の画面を参照することで、まずグラフG1とグラフG2との乖離が始まり、しばらくしてグラフG2とグラフG3との乖離が生じ、さらにはグラフG1とグラフG2との乖離が生じることを認識することができる。これにより、管理ユーザは、グラフG1と、グラフG2及びグラフG3との乖離の程度から、ユーザUの状態が、普段の状態とどの程度違いがあるのかを容易に把握することができる。なお、本実施形態において「普段の状態」とは、グラフG2及びグラフG3の何れか一方又は両方の状態を意味する。
【0048】
また、表示制御部204は、第2の算出部203で算出された乖離度を、時系列データ及び移動平均と同一の画面に表示させる。例えば、
図5では、第2の算出部203で算出された乖離度K3を棒グラフ状の形態で表している。ここで、乖離度K3は、各時点における乖離度K3の大きさを表している。なお、
図5の例では、乖離度K3は負値となるため横軸の下方に向けて棒グラフを伸ばしているが、上方に向けて棒グラフを伸ばしてもよい。また、乖離度の表示形態はこれに限らず、例えば、グラフG2と同様にグラフ状に表示させてもよい。また、乖離度K1や乖離度K2についても、時系列データ及び移動平均と同一の画面に表示させてもよい。
【0049】
これにより、管理ユーザは、時系列データと移動平均との乖離度や、移動平均間の乖離度を容易に確認することができる。また、管理ユーザは、現時点での乖離度や乖離度の推移を、時系列データ及び移動平均と対比させながら容易に確認することができる。したがって、管理ユーザは、ユーザUの状態が、普段の状態とどの程度違いがあるのかを容易に把握することができる。
【0050】
なお、複数種類の生体情報の時系列データが取得される場合には、表示制御部204は、生体情報の種類毎に、上述したグラフG1~G3を生成し表示させるものとする。この場合、表示制御部204は、複数種類の生体情報に係るグラフG1~G3を同一の画面内に表示させてもよいし、生体情報の種類毎に切り替えて表示させてもよい。
【0051】
図4に戻り、判定部205は、判定部の一例である。判定部205は、取得部201で取得された時系列データ、第1の算出部202で算出された移動平均、第2の算出部203で算出された乖離度等に基づいてユーザUの状態を判定する。
【0052】
例えば、判定部205は、生体情報の種別毎に予め設定された計測値の基準範囲と、取得部201で取得された時系列データ(生体情報)の計測値とを比較する。そして、判定部205は、計測値が基準範囲にある場合に正常と判定し、計測値が基準範囲から逸脱した場合に異常と判定する。また、例えば、判定部205は、生体情報の種別毎及び基準期間毎に設定された移動平均値の基準範囲と、第1の算出部202で算出された移動平均値とを比較する。そして、判定部205は、移動平均値が基準範囲にある場合に正常と判定し、移動平均値が基準範囲から逸脱した場合に異常と判定する。また、例えば、判定部205は、生体情報の種別毎に設定された乖離度の基準範囲と、第2の算出部203で算出された乖離度とを比較する。そして、判定部205は、乖離度が基準範囲にある場合に正常と判定し、乖離度が基準範囲から逸脱した場合に異常と判定する。ここで、乖離度に基づくユーザUの状態判定は、時系列データと移動平均との関係に基づく状態判定に対応する概念である。なお、判定部205は、時系列データ、移動平均及び乖離度の判定結果を複合的に用いて、ユーザUの状態判定を行う形態としてもよい。
【0053】
また、他の判定方法として、判定部205は、時系列データ、移動平均(第1移動平均、第2移動平均)及び乖離度の何れか又は全ての条件から、ユーザUの状態を出力するよう機能付けられた学習済みモデルを用いてユーザUの状態を判定してもよい。この場合、学習済みモデルは、時系列データ、移動平均及び乖離度の何れか又は全てを学習用の入力データとし、当該入力データの条件と、教師データとなる医師等の診断結果との関係を学習させることで作成することができる。判定部205は、上記の学習済みモデルに時系列データ、移動平均及び乖離度の何れか又は全てを入力することで、当該学習済みモデルの出力結果からユーザUの状態(診断結果)を判定することができる。なお、学習済みモデルの作成方法は特に問わず、公知の技術を用いることができる。
【0054】
判定部205は、ユーザUの状態が異常と判定した場合、表示制御部204と協働することで、異常を報知するための情報を表示部25に表示させる。具体的には、表示制御部204は、判定部205でユーザUの状態が異常と判定されると、例えば
図5に示した画面にユーザUの異常を報知するメッセージ等の情報を表示させる。これにより、生体モニタ装置20は、管理ユーザに対し、ユーザUの状態の注意喚起を行うことができる。
【0055】
以下、
図6を参照して、生体モニタ装置20の動作例について説明する。
図6は、生体モニタ装置20が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【0056】
まず、取得部201は、計測装置10で計測された生体情報を時系列データとして取得する(ステップS11)。次いで、第1の算出部202は、基準期間(第1の基準期間及び第2の基準期間)の各々に基づき、時系列データから移動平均をそれぞれ算出する(ステップS12)。また、第2の算出部203は、ステップS11で取得された時系列データの計測値と、ステップS12で算出された移動平均値の各々とに基づき乖離度を算出する(ステップS13)。次いで、表示制御部204は、ステップS11~S13で取得された時系列データ、移動平均及び乖離度を同一の画面に表示することで、対比可能(比較可能)な状態で表示させる(ステップS14)。
【0057】
続いて、判定部205は、ステップS11~S13で取得された時系列データ、移動平均及び乖離度の何れか又は全てに基づき、ユーザUの状態を判定する(ステップS15)。判定部205は、ユーザUの状態が正常と判定した場合には(ステップS16;No)、ステップS11に処理を戻す。
【0058】
一方、判定部205は、ステップS16でユーザUの状態が異常と判定した場合には(ステップS16;Yes)、異常を報知する情報を表示部25に表示させた後(ステップS17)、ステップS11に処理を戻す。
【0059】
このように、生体モニタ装置20によれば、ユーザUから所定周期毎に計測された生体情報を時系列データとして取得し、少なくとも2つの基準期間に基づいて時系列データの移動平均を算出し、算出した移動平均の各々を比較可能な状態で表示させる。これにより、管理ユーザは、移動平均間の関係を容易に確認することができる。したがって、生体モニタ装置20は、管理ユーザに対し、長期的又は短期的な観点からユーザUがどのような状態にあるのか、普段の状態とどのように異なるのか等を把握させることができるため、生体情報に基づく健康支援を効率的に行うことができる。
【0060】
また、生体モニタ装置20は、ユーザUから計測された時系列データを、移動平均の各々と比較可能な状態で表示させる。これにより、管理ユーザは、時系列データと移動平均と間の関係を容易に確認することができる。したがって、生体モニタ装置20は、管理ユーザに対し、ユーザUの現在の状態が普段の状態とどの程度異なるか等を把握させることができるため、生体情報に基づく健康支援を効率的に行うことができる。
【0061】
また、生体モニタ装置20は、時系列データと移動平均との乖離度や移動平均間の乖離度を算出し、算出した乖離度を移動平均や時系列データとともに表示させる。これにより、管理ユーザは、時系列データと移動平均との乖離度や移動平均間の乖離度を容易に確認することができる。したがって、生体モニタ装置20は、管理ユーザに対し、ユーザUの状態が普段の状態とどの程度相違するのかをより直観的に把握させることができる。
【0062】
また、生体モニタ装置20は、移動平均や乖離度に基づいてユーザUの状態を判定し、異常と判定した場合に表示により報知を行う。これにより、管理ユーザは、表示された情報を見ることでユーザUに異常が発生したことを容易に把握することができる。したがって、生体モニタ装置20は、管理ユーザに対しユーザUの状態の注意喚起を促すことができるため、生体情報に基づく健康支援を効率的に行うことができる。
【0063】
以上説明した実施形態は、上述の生体モニタ装置20が有する構成又は機能の一部を変更することで、適宜に変形して実施することも可能である。そこで、以下では、上述した実施形態に係る変形例を他の実施形態として説明する。なお、以下では、上述した実施形態と異なる点を主に説明することとし、既に説明した内容と共通する点については詳細な説明を省略する。また、以下で説明する変形例は、個別に実施されてもよいし、適宜組み合わせて実施されてもよい。
【0064】
[変形例1]
上述の実施形態では、生体モニタ装置20は、計測装置10で計測された生体情報を取得する形態としたが、計測装置10が使用される環境や条件によっては、ユーザUの状態判定の妨げとなる外乱が生体情報に含まれる可能性がある。
【0065】
例えば、ベッドに設置した計測装置10により生体情報を計測する環境では、ユーザU以外の他の生物がベッドに存在すると、他の生物の生体情報が外乱としてユーザUの生体情報に重畳する可能性がある。一例として、介護施設等では、ユーザUのベッドに介護スタッフが乗りユーザUのケアを行うような場合がある。この場合、介護スタッフの生体情報が外乱として重畳する可能性がある。また、他の例として、自宅等でユーザUとペットが1つのベッドで就寝する場合がある。この場合、ペットの生体情報が外乱として重畳する可能性がある。
【0066】
そこで、本変形例では、生体情報に重畳したユーザU以外の他の生物の生体情報を外乱として検出することが可能な構成について説明する。なお、上述した実施形態と同様の構成については同一の符号を付与し説明を省略する。
【0067】
図7は、本変形例に係る生体モニタ装置20の機能構成の一例を示す図である。
図7に示すように、本変形例に係る生体モニタ装置20は、取得部201aと、第1の算出部202と、第2の算出部203と、表示制御部204と、判定部205とを機能部として備える。
【0068】
ここで、取得部201aは、上述した第1の実施形態の取得部201に対応する機能部である。取得部201aは、上述した取得部201と同様の機能を備えるとともに、外乱検出部211を更に備える。
【0069】
外乱検出部211は、外乱検出部の一例である。外乱検出部211は、生体情報に重畳したユーザU以外の他の生物の生体情報を外乱として検出する。具体的には、外乱検出部211は、生体情報の種類に応じた検出方法を用いて外乱の検出を行う。以下、外乱検出部211による外乱検出方法について説明する。
【0070】
まず、計測装置10で計測される生体情報が。心拍や呼吸等のパルス信号として計測される種類の生体信号である場合の外乱検出方法について説明する。この場合、外乱検出部211は、計測装置10から送信されたパルス信号を信号処理することで当該パルス信号に含まれた外乱成分を検出する。
【0071】
例えば、
図8に示すように、1分間の心拍数がX回の人物CH1とY回の人物CH2とが存在したとする。
図8は、異なる2人の人物CH1、CH2の心拍を模式的に示す図である。縦軸は心拍の電位を、横軸は時間経過を意味する。また、心拍X、Yは、
図8に示した波形の周波数に対応する。
【0072】
ここで、人物CH1と人物CH2との心拍が重畳した場合、
図9に示すように、心拍X、Yが干渉することで両心拍(周波数)の差分に応じた干渉波Pが発生することになる。
図9は、干渉により発生した干渉波を模式的に示す図である。
【0073】
そこで、外乱検出部211は、計測装置10から送信されたパルス信号を信号処理することで干渉波Pの有無を判定する。そして、外乱検出部211は、パルス信号から干渉波Pを検出した場合に外乱を検出したと判断する。
【0074】
なお、干渉波Pの検出方法は特に問わず、例えば包絡線検波等の公知の技術を用いてもよい。また、外乱検出の指標となる周波数の閾値(例えば、20Hz等)を予め設定しておき、外乱検出部211は、この閾値以下の波形(干渉波P)をパルス信号から検出した場合に、外乱を検出したと判断してもよい。また、パルス信号に対する信号処理についても特に問わず、例えば、外乱検出部211は、フーリエ変換やウェーブレット変換等、干渉波Pの検出を容易化するための信号処理を施してもよい。
【0075】
次に、計測装置10で計測される生体情報が、体重等の定量的な数値として計測される種類の生体情報の場合の外乱検出方法について説明する。この場合は、生体情報の種類やユーザUの特性に応じて、外乱検出の指標となる閾値を予め設定しておくことで対応することができる。
【0076】
例えば、計測装置10が体重を計測する場合、ユーザUの通常時の体重Mに基づき、外乱検出用の閾値(例えば、M+5Kg等)を手動又は自動で設定する。そして、外乱検出部211は、計測装置10から送信された体重が閾値以上となった場合に、外乱を検出したと判断する。なお、閾値を自動で設定する場合、例えば第1の算出部202で算出された移動平均等に基づいて、外乱検出部211が閾値を自動で調整する構成としてもよい。
【0077】
次に、計測装置10が生体情報の計測部16とともに、ユーザUの顔部を撮像することが可能なRGBカメラ等の撮像装置を備える場合の外乱検出方法について説明する。かかる構成では、計測装置10からは、生体情報とともに撮像装置で撮像された撮像画像が生体モニタ装置20に送信される。なお、撮像装置がサーモカメラ等の計測部16を兼ねる場合には、サーモカメラによって計測されたユーザUの体温(体温分布)と、RGB画像とが生体モニタ装置20に送信されることになる。
【0078】
この場合、外乱検出部211は、公知の顔認証技術等を用いることで、予め設定されたユーザUの顔画像又は顔部の特徴を示す特徴情報を基に、計測装置10から送信された撮像画像にユーザU以外の人物(或いは生物)が存在するか否かを判定する。そして、外乱検出部211は、ユーザU以外の人物が存在すると判定した場合に、外乱を検出したと判断する。
【0079】
取得部201aは、外乱検出部211の機能により生体情報から外乱が検出された場合、外乱が検出された期間分の時系列データ(生体情報)を取得の対象から除外する。例えば、取得部201aは、外乱が検出された期間分の生体情報を破棄することで、後段の機能部で使用されないよう除外する。
【0080】
以下、
図10を参照して、本変形例に係る生体モニタ装置20の動作例について説明する。
図10は、本変形例の生体モニタ装置20が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【0081】
まず、取得部201は、計測装置10で計測された生体情報を時系列データとして取得する(ステップS21)。次いで、外乱検出部211は、ステップS21で取得された時系列データから外乱を検出したか否かを判定する(ステップS22)。ここで、外乱が検出された場合(ステップS22;Yes)、取得部201は、取得した生体情報を破棄などすることで取得の対象から除外し(ステップS23)、ステップS21に処理を戻す。
【0082】
一方、ステップS22で外乱が検出されない場合(ステップS22;No)、取得部201は、取得した時系列データを後段の機能部に引き渡すことでステップS24~S29の処理を実行させる。なお、ステップS24~S29の処理は、
図6で説明したステップS12~S17と同様であるため説明を省略する。
【0083】
以上のように、本変形例に係る生体モニタ装置20では、計測装置10で計測される生体情報に外乱が含まれる場合に、その外乱が含まれる期間の生体情報を取得の対象から除外することができる。これにより、生体モニタ装置20では、不正確な生体情報を除外することができるため、ユーザUの生体情報をより正確にモニタすることができる。
【0084】
[変形例2]
上述の実施形態では、計測装置10と生体モニタ装置20とを別の装置としたが、これに限らず、計測装置10が生体モニタ装置20の機能を備える形態としてもよい。この場合、計測装置10は、上述した生体モニタ装置20の機能構成(
図4、
図7参照)を備えることで、自装置で計測された生体情報に基づく画面(
図5参照)を表示部14表示させることができる。
【0085】
以上、本発明の実施形態(及び変形例)を説明したが、上述の実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。本発明は、上述の実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上述の実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【符号の説明】
【0086】
1 生体モニタシステム
10 計測装置
20 生体モニタ装置
201、201a 取得部
202 第1の算出部
203 第2の算出部
204 表示制御部
205 判定部
211 外乱検出部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0087】