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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】バルーンポンピング駆動装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 60/497 20210101AFI20240116BHJP
   A61M 60/295 20210101ALI20240116BHJP
   A61M 60/17 20210101ALI20240116BHJP
【FI】
A61M60/497
A61M60/295
A61M60/17
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020064766
(22)【出願日】2020-03-31
(65)【公開番号】P2021159394
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2022-09-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003694
【氏名又は名称】弁理士法人有我国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 克明
(72)【発明者】
【氏名】黒木 秀洋
【審査官】寺澤 忠司
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-508094(JP,A)
【文献】特開2003-278652(JP,A)
【文献】特開2006-280156(JP,A)
【文献】特開平09-173442(JP,A)
【文献】特開平10-094607(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0088499(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 60/00-60/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルーンに接続されるガス圧力室を形成するとともに少なくとも一部の可動部が残部の固定部に対し相対変位可能な容積可変の圧力容器と、
前記ガス圧力室内のヘリウムガスに前記可動部を介して陽圧および陰圧を印加するポンピング駆動機構と、を備えたバルーンポンピング駆動装置であって、
前記ポンピング駆動機構が、前記圧力容器を挟んで互いに接近および離隔可能に対向配置された一方および他方の出力軸を有する複数のリニアアクチュエータを有し、前記一方および他方の出力軸の変位に応じた駆動操作力を前記可動部に伝達して前記ガス圧力室内に前記陽圧および陰圧を発生させるように構成されていることを特徴とするバルーンポンピング駆動装置。
【請求項2】
前記ポンピング駆動機構が、前記一方および他方の出力軸の変位に応じた流体の圧力を前記駆動操作力として前記可動部に受圧させる圧力伝達要素を有することを特徴とする請求項1に記載のバルーンポンピング駆動装置。
【請求項3】
記圧力容器と前記一方および他方の出力軸との間に介装されるとともに、前記ヘリウムガスを収容する前記ガス圧力室としての少なくとも1つの操作圧力室を画成する一方および他方のベローズを有しており、
前記一方および他方のベローズの一端部がそれぞれ前記圧力容器の前記固定部に結合されて前記圧力容器により閉止される一方、前記一方および他方のベローズの他端部がそれぞれ閉止されつつ前記一方および他方の出力軸によって可動に支持されていることを特徴とする請求項に記載のバルーンポンピング駆動装置。
【請求項4】
前記圧力容器の前記固定部が、少なくとも前記ガス圧力室側に円環板状部分を有するとともに、前記圧力容器の前記可動部が前記固定部の前記円環板状部分の両面側にそれぞれ支持された一方および他方のダイアフラムを有することを特徴とする請求項1に記載のバルーンポンピング駆動装置。
【請求項5】
前記ポンピング駆動機構の前記複数のリニアアクチュエータを、所定の入力信号に従って、前記一方および他方の出力軸を同一軸線上で互いに逆方向に駆動し、両出力軸の接近および離隔により前記ガス圧力室内の前記ヘリウムガスに前記可動部を介して陽圧および陰圧を印加するポンピング制御部を有することを特徴とする請求項1ないしのいずれか一項に記載のバルーンポンピング駆動装置。
【請求項6】
前記可動部及び前記出力軸のうち少なくとも何れかの位置を検出する位置センサをさらに備え、
前記ポンピング制御部が、前記位置センサで検出された前記位置に基づいて、前記複数のリニアアクチュエータをフィードバック制御することを特徴とする請求項に記載のバルーンポンピング駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルーンポンピング駆動装置に関し、特に補助循環法による循環器系の機能補助装置の駆動に好適な医療用のバルーンポンピング駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医療用のバルーンポンピング駆動装置は、例えば大動脈内バルーンポンピング(以下、IABPという)装置のように、循環器系疾患の治療現場において心臓のポンプ機能の低下や不全を一時的に補う機能補助装置を駆動するのに使用されている。
【0003】
従来のバルーンポンピング駆動装置としては、例えば図11に示すように、バルーン201に連通するガス圧力室202と陽圧や陰圧を導入可能な空気圧力室203との間にダイアフラム204を設けた圧力伝達隔壁手段205と、その圧力伝達隔壁手段205を介してバルーン201をポンピング駆動するための陽圧と陰圧をそれぞれコンプレッサ206で発生して陽圧タンク207および陰圧タンク208に蓄圧し、陽圧と陰圧を電磁バルブ209A、209Bの切替えにより交互に空気圧力室203に印加する圧力印加手段210とを備えるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、ダイアフラムの中央部をプレートに固着させ、そのプレートをボールねじ機構で移動させることで、バルーンをポンピング駆動するもの(例えば、特許文献2参照)や、バルーンに連通するガス圧力室をベローズで構成し、そのベローズの閉止端部をボールねじ機構で移動させることによりベローズを伸縮させて、バルーンをポンピング駆動するものも知られている(例えば、特許文献1、段落0057および第3図参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平9-173442号公報
【文献】特開平3-280969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、コンプレッサ206を用いて陽圧と陰圧を発生させて、その陽圧と陰圧を電磁バルブ209A、209Bにより切り替える従来の前者のバルーンポンピング駆動装置においては、圧力印加手段210側に陽圧側と陰圧側のタンク207、208やコンプレッサ206、電磁バルブ209A、209B等をそれぞれ設ける必要から、装置構成が複雑になってしまうという問題があった。
【0007】
また、ボールねじ機構等の回転から直線運動への運動変換機構を用いる従来の後者のバルーンポンピング駆動装置にあっては、運動変換機構の構造上、べローズを伸縮駆動する大きな推力が得られるものの、ベローズに急峻な動きを生じさせることが容易でなく、高応答性の要求に十分に応えることができないという問題があった。
【0008】
これに対し、例えば電磁式のリニアモータ等を用いて圧力付与手段を構成することで急峻な動きが可能な高応答性を得ることが考えられるが、その場合には、運動変換機構を用いる場合のような十分な推力を得ることが困難であるという問題があった。
【0009】
本発明は、前述のような従来の未解決の課題を解決すべくなされたものであり、十分な推力と高応答性を有する構成の簡素なバルーンポンピング駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のバルーンポンピング駆動装置は、上記目的達成のため、バルーンに接続されるガス圧力室を形成するとともに少なくとも一部の可動部が残部の固定部に対し相対変位可能な容積可変の圧力容器と、前記ガス圧力室内のガスに前記可動部を介して陽圧および陰圧を印加するポンピング駆動機構と、を備えたバルーンポンピング駆動装置であって、前記ポンピング駆動機構が、前記圧力容器を挟んで互いに接近および離隔可能に対向配置された一方および他方の出力軸を有する複数のリニアアクチュエータと、前記一方および他方の出力軸の変位に応じた駆動操作力を前記可動部に伝達して前記ガス圧力室内に前記陽圧および陰圧を発生させる圧力伝達要素と、を有することを特徴とする。
【0011】
この構成により、本発明では、圧力容器を挟んで配置されたアクチュエータの一方および他方の出力軸の変位に応じて、圧力伝達要素を介し、両出力軸の接近および離隔方向の駆動操作力が交互に圧力容器の可動部に伝達され、ガス圧力室内に陽圧および陰圧が交互に発生することとなる。したがって、アクチュエータの一方および他方の出力軸からの往復方向の推力や両出力軸の相対変位に基づいてバルーンポンピングのための駆動操作力が得られ、バルーンポンピングのための十分な推力と高応答性を有する構成の簡素なバルーンポンピング駆動装置となる。
【0012】
本発明においては、前記圧力伝達要素が、前記一方および他方の出力軸の変位に応じた流体の圧力を前記駆動操作力として前記可動部に受圧させる構成となっているとよい。このようにすると、圧力容器の可動部を可撓性もしくは弾性変形可能な膜体等で構成しつつ、その可動部に所要の駆動操作力を迅速・的確に伝達できることになる。
【0013】
本発明においては、前記圧力伝達要素が、前記圧力容器と前記一方および他方の出力軸との間に介装されるとともに、前記流体を収容する少なくとも1つの操作圧力室を画成する一方および他方のベローズを有しており、前記一方および他方のベローズの一端部がそれぞれ前記圧力容器の前記固定部に結合されて前記圧力容器により閉止される一方、前記一方および他方のベローズの他端部がそれぞれ閉止されつつ前記一方および他方の出力軸によって可動に支持されている構成としてもよい。その場合、さらに、可動部をベローズと一体化することで操作圧力室とガス圧力室を一体化することもでき、あるいは、ダイアフラム状の可動部の内外にガス圧力室と操作圧力室とをそれぞれ画成することも可能である。
【0014】
本発明においては、前記圧力容器の前記固定部が、前記可動部を往復動可能に支持するとともに、前記圧力容器の前記可動部が、前記一方および他方の出力軸の変位に応じた流体の圧力を受圧する受圧面を有している構成とすることもできる。すなわち、可動部をピストンやダイアフラム等で構成することにより、圧力容器内に可変容積のガス圧力室を形成する構成とすることができる。
【0015】
本発明においては、前記圧力容器の前記固定部が、少なくとも前記ガス圧力室側に円環板状部分を有するとともに、前記圧力容器の前記可動部が前記固定部の前記円環板状部分の両面側にそれぞれ支持された一方および他方のダイアフラムを有する構成とすることもできる。このようにすると、円環板状部分の内径や板厚に応じてバルーンに連通する二次側のガス圧力室の容積を必要十分に抑えつつ、一次側の操作圧力室内の陽圧や陰圧をガス圧力室に迅速・的確に伝達し、かつ、心臓の拍動等に対応する所要の収縮時間や膨張時間に亘って十分な陽圧や陰圧を印加し続けることができる。
【0016】
本発明においては、前記ポンピング駆動機構の前記複数のリニアアクチュエータを、所定の入力信号に従って前記一方および他方の出力軸を同一軸線上で互いに逆方向に駆動し、両出力軸の接近および離隔により前記ガス圧力室内のガスに前記可動部を介して陽圧および陰圧を印加するポンピング制御部を有する構成とすることができる。この場合、心電図波形や動脈圧波形等に対応する所定の入力信号に従ってバルーンの拡張・収縮タイミングが的確に制御可能となる。
【0017】
本発明においては、前記可動部および前記出力軸のうち少なくとも何れかの位置を検出する位置センサをさらに備え、前記ポンピング制御部が、前記位置センサで検出された前記位置に基づいて、前記複数のリニアアクチュエータをフィードバック制御する構成とすることができる。この場合、振動を低減しつつ、バルーンの動作を制御することができる。
【0018】
なお、前記圧力容器の前記固定部が、シリンダ状に形成されるとともに、前記圧力容器の前記可動部が、ピストン状に形成されている構成とすることも考えられる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、バルーンポンピングのための十分な推力と高応答性を有する構成の簡素なバルーンポンピング駆動装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1実施形態に係るバルーンポンピング駆動装置および同装置でポンピング駆動される大動脈内バルーンポンピングカテーテルの全体略図である。
図2】本発明の第1実施形態に係るバルーンポンピング駆動装置の要部概略構成図である。
図3】本発明の第1実施形態に係るバルーンポンピング駆動装置におけるポンピング駆動機構の動作説明図である。
図4】(a)本発明の第1実施形態に係るバルーンポンピング駆動装置におけるポンピング駆動機構の対向する一対の可動部の動作説明図、(b)はそのポンピング駆動機構の一対の可動部における可動板の往復変位に応じた可動位置の時間変化を示すチャートである。
図5】本発明の第1実施形態に係るバルーンポンピング駆動装置における一対の可動部の可動板の往復変位に対応する可動位置の時間変化を示すチャートで、図4(b)に示す一態様とは可動板の往復変位パターンを異ならせた変形態様を示している。
図6】本発明の第1実施形態に係るバルーンポンピング駆動装置におけるポンピング駆動のための出力軸の移動方向切替え制御の手順を示すフローチャートである。
図7】本発明の第1実施形態に係るバルーンポンピング駆動装置の作動ガスの制御系の概略構成図である。
図8】本発明の第2実施形態に係るバルーンポンピング駆動装置の要部概略構成図である。
図9】本発明の第3実施形態に係るバルーンポンピング駆動装置の要部概略構成図である。
図10】本発明の第4実施形態に係るバルーンポンピング駆動装置の要部概略構成図である。
図11】従来例のバルーンポンピング駆動装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0022】
(第1実施形態)
図1ないし図7は、本発明の第1実施形態に係るバルーンポンピング駆動装置の構成を示しており、本発明を大動脈内バルーンポンピングカテーテルのバルーンポンピング(IABP(intra-aortic balloon pumping))に使用する場合を例示している。
【0023】
まず、その構成について説明する。
【0024】
図1および図2に示すように、本実施形態のバルーンポンピング駆動装置10は、大動脈内バルーンポンピングカテーテル2(要部のみ図示する)の所定容積のバルーン1に接続されるガス圧力室11を形成する圧力容器12と、ガス圧力室11内のガス、例えばヘリウムガスに外部気圧より高圧な陽圧および外部気圧より低圧な陰圧を交互に印加することができるポンピング駆動機構13と、を具備している。
【0025】
図2に示すように、圧力容器12は、例えば少なくとも内周部が円環板状をなす環状の固定部21と、その固定部21の両面側に結合された一方および他方の可動部22A、22Bとによって構成されており、各可動部22Aまたは22B(以下、単に可動部22ともいう)の少なくとも一部が残部側である固定部21に対して相対的に変位する容積可変の密閉可能な容器となっている。固定部21には、バルーン1内に連通させるための連通孔21aが形成されている。
【0026】
ポンピング駆動機構13は、圧力容器12を間に挟んでその中心軸線C上で互いに軸対向するように配置された一方および他方のリニアアクチュエータ30A、30Bと、各リニアアクチュエータ30Aまたは30B(以下、単にリニアアクチュエータ30ともいう)を圧力容器12に対し突き当て結合する結合手段(一突当て部のみ図示する)16A、16Bとを含んで構成されている。
【0027】
また、一方および他方のリニアアクチュエータ30A、30Bは、圧力容器12を間に挟んでその中心軸線C上で互いに接近および離隔可能なそれぞれの出力軸31を有しており、各リニアアクチュエータ30は、圧力容器12のガス圧力室11内のヘリウムガスに対し、対応する可動部22を介して陽圧および陰圧を印加することができるようになっている。
【0028】
具体的には、各可動部22は、それぞれ圧力容器12の固定部21の内径に近い外径を有する円板状の可動板23と、両端部が可動板23および固定部21の内周部近傍にそれぞれ気密的に結合されたベローズ24とを有している。
【0029】
一方および他方の可動部22A、22Bのベローズ24は、圧力容器12の固定部21と一方および他方のリニアアクチュエータ30A、30Bの出力軸31との間に伸張および収縮可能に介装されている。そして、両ベローズ24は、圧力容器12側のそれぞれの一端で圧力容器12の固定部21に結合される一方、それぞれの他端側で可動板23により閉止されつつ可動板23を介し一方または他方の出力軸31に可動に支持されている。これにより、両ベローズ24の拡張および収縮により容積を変化させることができるガス圧力室11が画成されている。
【0030】
このガス圧力室11は、ヘリウムガス(圧縮性流体)を収容しつつ拡張および収縮により容積を変化させることで、バルーン1内のガス圧力およびガス量を変化させることができる、バルーンポンピング用の少なくとも1つの操作圧力室となっている。
【0031】
また、本実施形態のバルーンポンピング駆動装置10には、2つの可動部22A、22Bの可動板23(以下、可動板23A、23Bともいう)に対応して、2つの位置センサ25A、25Bが設けられている。位置センサ25Aは、可動板23Aの軸方向の位置(変位)を検出する。位置センサ25Bは、可動板23Bの軸方向の位置(変位)を検出する。後で詳細に説明するが、位置センサ25Aは、可動板23Aの位置に基づいて、リニアアクチュエータ30Aの動作をフィードバック制御(詳細は後述する)するために利用され、位置センサ25Bは、可動板23Bの位置に基づいて、リニアアクチュエータ30Bの動作をフィードバック制御するために利用される。
【0032】
一方および他方のリニアアクチュエータ30A、30Bは、各出力軸31の先端部31aに円板状の可動板23を一体に結合または一体に形成することで、両出力軸31の相対的な変位に応じた駆動操作力を対応する可動部22に伝達し、ガス圧力室11内に陽圧および陰圧を発生させることができる圧力伝達要素を、各出力軸31の先端部31aに一体的に装着した構成となっている。
【0033】
これにより、リニアアクチュエータ30A、30Bの出力軸31の先端部31a(圧力伝達要素)は、それぞれの出力軸31の相対的な変位に応じた駆動操作力圧力容器12の各可動部22に伝達するようになっている。
【0034】
図2および図3に示すように、各リニアアクチュエータ30は、前述の出力軸31と、その出力軸31を軸方向に往復変位可能に収納するケース32と、出力軸31の軸方向中央側に一体的に装着され出力軸31の径方向に延びるインナーコア36とインナーコア36の両端側に巻回されたコイル37A、37Bとを有する駆動コイル部33と、出力軸31を往復変位方向である軸方向の所定位置に付勢する復帰板ばね38と、出力軸31を軸方向に往復変位可能に案内する軸受39と、インナーコア36の略方形の両端面上に平行に固着されるとともに出力軸31の径方向内外にそれぞれ短冊状の磁極面を有する複数対の永久磁石41、42とを有している。
【0035】
ここで、インナーコア36は、長手方向中央部で出力軸31を貫通させるとともに長手方向両端側でそれぞれコイル37A、37Bを巻回可能なボビン形状をなしており、複数の磁性体プレートを積層したものとなっている。
【0036】
また、ケース32は、駆動コイル部33を出力軸31の径方向両側から挟む略コの字形をなすとともに両端部がインナーコア36に近接するよう互いに対向する一対のアウターコア45と、アウターコア45を出力軸31の先端部31a側から一体的に保持する一方のカバーケース46と、アウターコア45を出力軸31の後端側から一体的に保持するとともに復帰板ばね38を支持する他方のカバーケース47と、復帰板ばね38の背面側を覆うエンドカバー48とを有している。
【0037】
各アウターコア45は、略コの字形の複数の磁性体プレートを積層したものとなっており、その略コの字形の内奥側に対応する一方および他方の永久磁石41、42に所定のギャップを隔てて近接する突条部45aを有している。
【0038】
さらに、複数対の永久磁石41、42のうち一方の永久磁石41は、それぞれ出力軸31の径方向内方側にN極を、出力軸31の径方向外方側にS極を有しており、複数対の永久磁石41、42のうち他方の永久磁石42は、それぞれ出力軸31の径方向外方側にN極を、出力軸31の径方向内方側にS極を有している。永久磁石41、42のいずれも、一対の磁極板を貼り合せたものであってもよい。
【0039】
なお、図2図3中では、図示の便宜上、出力軸31を太く図示しているが、各リニアアクチュエータ30は、具体的には、例えば特開2013-121275号公報に記載のような構成を有しており、インナーコア36側が軽量になっている。
【0040】
このようなリニアアクチュエータ30は、各コイル37A、37Bに通電されない状態では、例えば図3(a)に示すように、出力軸31を復帰板ばね38により軸方向の所定位置である中立位置に付勢するとともに、複数対の永久磁石41、42の磁力が中立位置で釣り合う状態で、ディテントフォースにより、出力軸31がケース32に対し静止し得るものとなる。
【0041】
各コイル37A、37Bに所定方向に通電される状態では、コイル37A、37Bの励磁による磁束によって、複数の永久磁石41、42のうちいずれか片方の永久磁石41または42の磁化方向と同方向の磁力が増大し、例えば図3(b)に示すように、出力軸31および駆動コイル部33が出力軸31の先端部31a側に移動する。
【0042】
各コイル37A、37Bへの通電方向が切り替えられると、コイル37A、37Bの励磁による磁束が反転し、複数の永久磁石41、42のうち他の片方の永久磁石42または41の磁化方向と同方向の磁力が増大し、例えば図3(c)に示すように、出力軸31および駆動コイル部33が出力軸31の後端側に移動する。
【0043】
駆動コイル部33のコイル37A、37Bは、一方および他方のリニアアクチュエータ30A、30Bの出力軸31が互いに同期して逆向きに変位するように、制御手段であるポンピング制御部50によって同期駆動されるようになっている。
【0044】
図2に示すように、このポンピング制御部50は、血圧変動測定器71からの血圧変動信号Pvsおよび心電計測器72からの心電波形信号Pts等の入力信号に基づき、複数のリニアアクチュエータ30A、30Bの駆動コイル部33に駆動制御信号Ms1、Ms2を出力し、一方および他方の出力軸31を同一軸線上で互いに逆方向に駆動し、両出力軸31の接近および離隔によりガス圧力室11内のヘリウムガスに陽圧および陰圧を印加することができるようになっている。
【0045】
また、ポンピング制御部50には、所定の制御プログラムや設定値情報が予め記憶格納された記憶手段50aが付設されており、ポンピング制御部50は、その制御プログラムに従って心電波形や動脈圧波形における所定の信号変化をトリガ(例えば、心電図トリガ)として検出し、そのトリガの検出周期に対応する周期で変動する目標駆動圧を逐次算出し、その目標駆動圧の変化に対応するガス圧力室11の圧力変化、すなわち、可動部22A、22Bの可動板23(以下、可動板23A、23Bともいう)の変位を生じさせるように、一方および他方のリニアアクチュエータ30A、30Bを作動させるようになっている。
【0046】
そして、ポンピング制御部50は、一方および他方のリニアアクチュエータ30A、30Bの作動により、ガス圧力室11内のヘリウムガスに対し所定のタイミングおよび時間の陽圧および陰圧を印加することで、心拡張期開始時における大動脈弁の閉鎖と同時にバルーン1を拡張させてダイアストリックオーグメンテーション効果(冠動脈血流量の増加や平均大動脈圧の維持)を発揮させたり、拡張末期動脈圧が最低値を示すタイミングでバルーン1を収縮させてシストリックアンローディング効果(拡張末期および収縮期の血圧低下による心仕事量の低下や心筋酸素消費量の抑制)を図ったりすることができるようになっている。
【0047】
また、ポンピング制御部50は、位置センサ25Aで検出された可動板23Aの位置に基づいて、リニアアクチュエータ30Aの動作を制御し、位置センサ25Bで検出された可動板23Bの位置に基づいて、リニアアクチュエータ30Bの動作を制御するようになっている。図4は、リニアアクチュエータ30A、30Bの動作を説明するための図であり、同図(a)は、それぞれのポンピング駆動機構13を示す模式図、同図(b)は、それぞれの出力軸31の動作によって往復移動される一対の可動板23A、23Bの位置を示すグラフである。図4(a)に示すように、軸方向におけるガス圧力室11の中心Cnを原点とし、中心Cnから右側を+X方向、中心Cnから左側を-X方向と定義する。
【0048】
ポンピング駆動機構13では、リニアアクチュエータ30A、30Bの出力軸31によって可動板23A、23Bを軸方向に往復移動させることで、ガス圧力室11内のヘリウムガスに陽圧および陰圧を印加する。このとき、可動板23A、23Bおよび出力軸31の往復移動に伴う反力によって振動が生じる。そこで、図4(b)に示すように、可動板23Aの移動量と可動板23Bの移動量が同等、かつ、移動方向が逆になるように、すなわち可動板23A、23Bの移動速度の時間的な変化量が同等でかつ変位方向が逆になるように、リニアアクチュエータ30A、30Bを前述の目標駆動圧の周期に合わせてフィードバック制御することで、可動板23A、23Bおよび出力軸31の往復移動に伴う反力の合成ベクトルが相殺され、振動を低減することができるようにしている。図4(b)中では、可動板23Aの移動量A2と可動板23Bの移動量B2を同等にしつつ周期的に変動させてフィードバック制御する場合を示したが、図5に示すように、ポンピング制御部50からの制御信号等に応じて、移動量を随時変動させてよい。
【0049】
また、本実施形態のバルーンポンピング駆動装置10では、ガス圧力室11の中心Cnを可動板23A、23Bの基準位置として、中心Cnからの可動板23A、23Bの位置情報および前述のトリガ入力周期に基づいてリニアアクチュエータ30A、30Bを制御することで、振動を低減しつつ、ガス圧力室11内の圧力を制御できるようにしている。具体的には、図4(a)に示すガス圧力室11の中心Cnからの可動板23A、23Bの相互に逆向きの変位(+X、-X)を、図4(b)に示すように可動位置A、Bとし、中心Cnから最小位置Amin、Bminまで距離をそれぞれの位置オフセット量A1、B1として、位置オフセット量A1とB1が同等であることに加えて、可動板23Aの移動量A2と可動板23Bの移動量B2が同等、かつ、移動方向が逆になるようにリニアアクチュエータ30A、30Bを同期させつつ前述の目標駆動圧周期に追従させるようにフィードバック制御することで、可動板23A、23Bおよび出力軸31の往復移動に伴う反力を相殺して振動を低減しつつ、可動板23A、23Bの可動位置A、Bに基づいてガス圧力室11内の圧力変動を制御し、それによって、バルーン1の動作を制御することができる。
【0050】
次に、ポンピング制御部50によって実行されるリニアアクチュエータ30A、30Bの駆動方向の切替え制御の手順について、図6に示すフローチャートに基づいて説明する。リニアアクチュエータ30A、30Bに対して行われる制御は略同様であるので、ここでは、リニアアクチュエータ30Aに対する制御についてのみ説明するが、リニアアクチュエータ30Bに対しても可動位置Bを基に同様な駆動方向の切替え制御が実行される。まず、位置センサ25Aによりリニアアクチュエータ30Aの可動位置A(可動板23Aの位置)を検出し(ステップS11)、その検出された位置に基づいて可動位置Aを特定する。次に、リニアアクチュエータ30Aの出力軸31の移動方向が-X方向か+X方向かを判断する(ステップS12)。そして、出力軸31の移動方向が+X方向の場合(ステップS12でYESの場合)、可動位置Aが最小位置Aminに一致しているか否かを判断する(ステップS13)。可動位置Aが最小位置Aminに一致している場合(ステップS13でYESの場合)、出力軸31の移動方向を+X方向から-X方向に切り替えるよう、リニアアクチュエータ30Aを制御する(ステップS14)。可動板23Aの位置が最小位置Aminに一致していない場合(ステップS13でNOの場合)、出力軸31の移動方向を+X方向に維持するようリニアアクチュエータ30Aを制御する(ステップS15)。
【0051】
ステップS12で出力軸31の移動方向が-X方向の場合(ステップS12でNOの場合)、可動位置Aが最大位置Amaxに一致しているか否かを判断する(ステップS16)。可動位置Aが最大位置Amaxに一致している場合(ステップS16でYESの場合)、出力軸31の移動方向を-X方向から+X方向に切り替えるよう、リニアアクチュエータ30Aを制御する(ステップS17)。可動板23Aの位置が最大位置Amaxに一致していない場合(ステップS16でNOの場合)、出力軸31の移動方向を-X方向に維持するようリニアアクチュエータ30Aを制御する(ステップS18)。
【0052】
リニアアクチュエータ30A、30Bのそれぞれに対して、ステップS11~S18に示すような出力制御が実行されることで、図4(b)や図5に示すように、可動位置A、Bは、ガス圧力室11の中心Cnを基準位置とした絶対値が同等な出力軸変位に対応するものになる。そして、例えば前述の目標駆動圧に対応する可動位置A、Bの目標値と位置センサ25A、25Bからフィードバックされる可動位置A、Bの検出値との偏差に応じてリニアアクチュエータ30A、30Bの出力軸変位を制御することで、振動を低減しつつ、ガス圧力室11内の圧力を制御し、それによって、バルーン1の動作を制御することができる。
【0053】
図7に示すように、バルーン1内に連通するガス圧力室11には、ガス供給源51からパイロット付きのリリーフ弁52および第1電磁切換弁53を介してガスタンク54に供給された所定圧力のヘリウムガスが、第2電磁切換弁55の開閉に応じて供給されるようになっている。
【0054】
また、バルーン1を介しガス圧力室11側に連通する二次配管系には、滲入する水分を冷却し結露させる熱電素子、例えばペルチェ素子56が収納されるとともに、その水分をガス圧力室11から排出するよう必要時に開弁するパージバルブ57が接続されている。
【0055】
さらに、圧力容器12にはガス圧力室11内の圧力を検知する圧力センサ58が取り付けられるとともに、図示しない不純物除去フィルタ等を介し二次配管系に漏れ(排気回収のための漏れでもよい)を生じさせる排気バルブ59が接続されている。そして、バルーン1内の圧力が所定圧力を超えると、排気バルブ59が開弁し漏れによる必要量の減圧処理がなされるようになっている。
【0056】
ガス圧力室11内へのヘリウムガスの供給を制御する第1電磁切換弁53および第2電磁切換弁55は、ガスタンク54内の圧力を検知する圧力センサ61からの圧力情報に基づき、補充制御部60によって開閉制御されるようになっている。
【0057】
この補充制御部60は、内蔵する記憶手段に格納された補充制御プログラムに従い、圧力センサ58、61からの圧力情報に基づいて第1電磁切換弁53、第2電磁切換弁55および排気バルブ59の開閉を制御することで、二次配管系内のヘリウムガスの初期の充填作業や所定期間経過後のヘリウムガスの入れ替え作業を行うことができるようになっている。
【0058】
このように、本実施形態においては、バルーン1に接続されるガス圧力室11を形成するとともに少なくとも一部の可動部22が残部の固定部21に対し相対変位可能な容積可変の圧力容器12と、ガス圧力室11内のヘリウムガスに可動部22を介して陽圧および陰圧を印加するポンピング駆動機構13とを備えたバルーンポンピング駆動装置が構成されている。そして、そのポンピング駆動機構13が、圧力容器12を挟んで互いに接近および離隔可能に対向配置された一方および他方の出力軸31を有する複数のリニアアクチュエータ30A、30Bと、一方および他方の出力軸31の変位に応じた駆動操作力を可動部22に伝達してガス圧力室11内に陽圧および陰圧を発生させる圧力伝達要素としての先端部31aおよび可動板23とを有している。
【0059】
また、出力軸31の先端部31aおよびそれと一体の可動板23は、一方および他方の出力軸31の変位に応じた駆動操作力可動部22に伝達することができる圧力伝達要素となっており、その圧力伝達要素が、圧力容器12と一方および他方の出力軸31との間に介装されるとともに、所定の流体、例えばヘリウムガスを収容するガス圧力室11内と同じ1つの操作圧力室を画成する一方および他方のベローズ24を有している。そして、各ベローズ24の一端部がそれぞれ圧力容器12の固定部21に結合されて圧力容器により閉止される一方、両ベローズ24の他端部がそれぞれ閉止されつつ一方および他方の出力軸31により可動に支持されている。
【0060】
さらに、本実施形態においては、圧力容器12の固定部21が、ベローズ24を介して可動板23を往復動可能に支持する可動部22を有するとともに、その可動部22が、一方および他方の出力軸31の変位に応じたガス圧力室11内のヘリウムガス(流体)の圧力を受圧する可動板23の受圧面23aを有している。
【0061】
次に、作用について説明する。
【0062】
上述のように構成された本実施形態のバルーンポンピング駆動装置では、圧力容器12を挟んで配置されたリニアアクチュエータ30A、30Bの一方および他方の出力軸31の変位に応じて、圧力伝達要素である先端部31aおよび可動板23を介し、両出力軸31の接近および離隔方向の駆動操作力が交互に圧力容器12の可動部22に伝達され、ガス圧力室11内に陽圧および陰圧が交互に発生する。したがって、リニアアクチュエータ30A、30Bの出力軸31からの往復方向の推力や両出力軸31の相対変位に基づくバルーンポンピングのための駆動操作力が迅速・的確に得られ、バルーンポンピングのための十分な推力と高応答性を有する装置となる。
【0063】
また、本実施形態では、一方および他方のベローズ24が、圧力容器12と一方および他方の出力軸31との間に介装されるとともに、操作用の流体を収容する少なくとも1つの操作圧力室がガス圧力室11と一体に形成されているので、構成が非常に簡素となる。
【0064】
さらに、本実施形態では、一方および他方のベローズ24の一端部がそれぞれ圧力容器12の固定部21に結合されて圧力容器12により閉止される一方、一方および他方のベローズ24の他端部がそれぞれ閉止されつつ一方および他方の出力軸31によって可動に支持され、可動部22がベローズ24と一体化されている。したがって、ガス圧力室11の容積や圧力を迅速・的確に変化させる多様な操作が可能となる。
【0065】
加えて、本実施形態では、ポンピング制御部50によってポンピング駆動機構13の複数のリニアアクチュエータ30A、30Bを制御し、一方および他方の出力軸31を同一軸線上で互いに逆方向に駆動し、両出力軸31の接近および離隔によりガス圧力室11内のヘリウムガスに陽圧および陰圧を印加する構成とすることで、心電図波形や動脈圧波形等に対応する所定の入力信号に従ってバルーン1の拡張・収縮タイミングが的確に制御可能となる。
【0066】
さらに加えて、本実施形態では、可動部22A、22Bの軸方向の位置を検出する位置センサ25A、25Bを備え、ポンピング制御部50が、前述のトリガ入力信号に基づく目標駆動圧変化に追従させるよう、位置センサ25A、25Bで検出された位置に基づいて、複数のリニアアクチュエータ30A、30Bをフィードバック制御する構成とすることで、振動を低減しつつ、バルーン1の動作を制御することができる。
【0067】
(第2実施形態)
図8は、本発明の第2実施形態に係るバルーンポンピング駆動装置の要部構成を示している。なお、以下の各実施形態は、ガス供給系や補充制御系等の構成が第1実施形態と同様のものであるので、以下、主に各実施形態の第1実施形態との相違点について説明する。
【0068】
図8に示すように、本実施形態のバルーンポンピング駆動装置80は、所定容積のバルーン1に接続されるガス圧力室81を形成する圧力容器82と、ガス圧力室81内のガス、例えばヘリウムガスに外部気圧より高圧な陽圧および外部気圧より低圧な陰圧を交互に印加することができるポンピング駆動機構13と、を具備している。
【0069】
同図に示すように、第2実施形態では、第1実施形態のように可動部をベローズ24と一体化して操作圧力室とガス圧力室11を一体化するのではなく、ダイアフラム状の可動部の内外にガス圧力室と操作流体の圧力室とを別々に画成している。
【0070】
すなわち、圧力容器82は、まず、内周部が円環板状をなす環状の固定部91と、その固定部91の両面側に結合されたそれぞれの弾性膜材からなる一方および他方のダイアフラム92A、92B(可動部)とによって、ポンピング駆動機構13の作動停止状態で固定部91の内径および厚さに対応する所定容積の略円板状のガス圧力室81が画成されるようになっている。
【0071】
また、固定部91の両面側には、第1実施形態の一方および他方の可動部22A、22Bと同様の操作用可動部96A、96B(圧力伝達要素)が装着されており、一方および他方のダイアフラム92A、92Bと、一方および他方の操作用可動部96A、96B(以下、単に操作用可動部96ともいう)とによって、ガス圧力室81の両側に一対の容積可変の操作圧力室83A、83Bが画成されている。
【0072】
その他の構成は、第1実施形態と同様である。
【0073】
本実施形態においても、第1実施形態と同様に、バルーンポンピングのための十分な推力と高応答性を有する構成の簡素なバルーンポンピング駆動装置を提供することができる。
【0074】
また、本実施形態では、操作用可動部96A、96Bが一方および他方の出力軸31の変位に応じた流体の圧力を駆動操作力としてダイアフラム92A、92Bに受圧させる構成となっているので、圧力容器82の可動部を可撓性もしくは弾性変形可能な膜体であるダイアフラム92A、92Bで構成しつつ、その可動部にポンピング駆動機構13からの所要の駆動操作力を迅速・的確に伝達できることになる。
【0075】
さらに、ガス圧力室81の容積を小さく抑えることができるとともに、ダイアフラム92A、92Bを装着した固定部91の形状によりガス圧力室81の容積を容易に変更可能となり、ガス充填や入れ替えの容易化も図ることができる。
【0076】
加えて、本実施形態においては、圧力容器82の固定部91が可動部であるダイアフラム92A、92Bを往復動可能に支持するとともに、各ダイアフラム92Aまたは92Bが、一方および他方の出力軸31の変位に応じた流体の圧力を受圧する可動の受圧面92eを有している。したがって、各ダイアフラム92A、92Bは、操作圧力室83A、83B内の操作圧力とガス圧力室81の内圧との差圧に応じて変形させることができる。その結果、圧力容器82の固定部91(円環板状部分)の内径や板厚に応じてバルーン1に連通する二次側のガス圧力室81の容積を必要十分に抑えつつ、一次側の駆動操作用の操作圧力室83A、83B内の陽圧や陰圧をガス圧力室81に迅速・的確に伝達し、かつ、心臓の拍動等に対応する所要の収縮時間や膨張時間に亘って十分な陽圧や陰圧を印加し続けることができる。
【0077】
(第3実施形態)
図9は、本発明の第3実施形態に係るバルーンポンピング駆動装置の要部構成を示している。
【0078】
図9に示すように、本実施形態のバルーンポンピング駆動装置110は、所定容積のバルーン1に接続されるガス圧力室111を形成する容積可変の圧力容器112と、ガス圧力室111内のガスに陽圧および陰圧を交互に印加することができるポンピング駆動機構13と、を具備している。
【0079】
同図に示すように、第3実施形態では、圧力容器112が、円環板状の固定部121と、これと一体のシリンダ122と、シリンダ122内に摺動可能に収納されつつ互いに対向する一対のピストン123A、123Bとによって構成されている。
【0080】
また、一対のピストン123A、123Bは、図9中の下半部に示すピストン123Bのように平坦な固定の受圧面123eを有するものであってもよいし、図9中の上半部に示すピストン123Aのように凹状のピストンヘッド本体部123hの開口縁部分にダイアフラム123dを装着し、ガス圧力室111の一定以上の内圧変化に応じてダイアフラム123dが変形し得るようにしてもよい。
【0081】
前者の場合、ピストン123Bが本発明にいう可動部となり、後者の場合、ピストン123Aおよびそのダイアフラム123dが可動部となる。
【0082】
本実施形態においても、第1実施形態と同様に、バルーンポンピングのための十分な推力と高応答性を有する構成の簡素なバルーンポンピング駆動装置を提供することができる。
【0083】
また、本実施形態では、圧力容器112の固定部121がシリンダ状に形成されるとともに、圧力容器112の可動部がピストン123A、123Bで構成されているので、操作用圧力の応答性を高めることができる。
【0084】
(第4実施形態)
図10は、本発明の第4実施形態に係るバルーンポンピング駆動装置の要部構成を示している。
【0085】
図10に示すように、本実施形態のバルーンポンピング駆動装置130は、所定容積のバルーン1に接続されるガス圧力室131を形成する容積可変の圧力容器132と、ガス圧力室131内のガスに陽圧および陰圧を交互に印加することができるポンピング駆動機構13と、を具備している。
【0086】
同図に示すように、本実施形態では、圧力容器132が、内周部が円環板状をなす円環板状の固定部141と、その固定部141の両面側に結合されたそれぞれの弾性膜材からなる一方および他方のダイアフラム142A、142B(可動部)とによって、ポンピング駆動機構13の作動停止状態で固定部141の内径および厚さに対応する所定容積の略円板状のガス圧力室131が画成されるようになっている。
【0087】
また、固定部141の両面側には、一方および他方の操作用可動部146A、146B(圧力伝達要素)が装着されており、一方および他方のダイアフラム142A、142B(可動部)と、一方および他方の操作用可動部146A、146Bとによって、ガス圧力室131の両側に一対の容積可変の操作圧力室133A、133Bが画成されている。
【0088】
ここで、操作用可動部146A、146Bは、固定部141と一体のシリンダ147と、シリンダ147内に摺動可能に収納されつつ互いに対向する一対のピストン143A、143Bと、によって構成されている。
【0089】
本実施形態においても、第1実施形態と同様に、バルーンポンピングのための十分な推力と高応答性を有する構成の簡素なバルーンポンピング駆動装置を提供することができる。
【0090】
また、本実施形態では、圧力容器132の固定部141およびシリンダ147がシリンダ状に形成されるとともに、圧力容器132の可動部がダイアフラム142A、142Bで構成されているので、各ダイアフラム142A、142Bは、一対の操作圧力室133A、133B内の操作圧力とガス圧力室131の内圧との差圧に応じて変形させることができる。その結果、圧力容器132の固定部141(円環板状部分)の内径や板厚に応じてバルーン1に連通する二次側のガス圧力室131の容積を必要十分に抑えつつ、一次側の駆動操作用の操作圧力室133A、133B内の陽圧や陰圧をガス圧力室131に迅速・的確に伝達し、かつ、心臓の拍動等に対応する所要の収縮時間や膨張時間に亘って十分な陽圧や陰圧を印加し続けることができる。
【0091】
なお、リニアアクチュエータの構成は、前述の各実施形態において例示した具体的な構成に限定されるものでない。たとえば、運動変換機構(例えばラックピニオン)と回転アクチュエータの組み合わせで、出力軸を直動させるようなことも考えられる。すなわち、ここにいうリニアアクチュエータは、出力軸が軸方向に往復直線運動するものであればよい。ただし、小型化に好適なものが好ましい。
【0092】
また、前述の各実施形態においては、2つの位置センサ25A、25Bは、2つの可動部22A、22Bの可動板23A、23Bの位置を検出するものとしたが、位置センサとして、出力軸31の位置を検出するものを設け、それによって検出された位置に基づいて、リニアアクチュエータ30A、30Bをフィードバック制御するようにしてもよい。
【0093】
さらに、前述の各実施形態では、一対のリニアアクチュエータ30A、30Bのそれぞれの駆動コイル部33におけるインナーコア36の両端面に各一対の短冊状の磁極面を有する永久磁石を2個1組で配置していたが、往復動方向に隣り合う磁極面を、N極とS極の2つでなく、N、S、N極の3極面、あるいはS、N、S極の3極面か、それ以上の磁極面が往復方向に並列するものとしてもよい。
【0094】
また、さらに、前述の各実施形態では、一対のリニアアクチュエータ30A、30Bは、いわゆる可動コイル型のリニアアクチュエータとして構成していたが、他のタイプのリニアアクチュエータで構成してもよく、たとえば、いわゆる可動磁石型のリニアアクチュエータやいわゆる可動鉄心型のリニアアクチュエータを用いることができる。
【0095】
復帰板ばね38や軸受39等の有無、形状および配置数等が任意であることはいうまでもない。また、べローズに代えて筒状や球状の中空ゴム様弾性体を採用できるのも勿論である。
【0096】
以上説明したように、本発明は、バルーンポンピングのための十分な推力と高応答性を有する構成の簡素なバルーンポンピング駆動装置を提供することができるものであり、補助循環法による循環器系の機能補助装置の駆動に好適な医療用のバルーンポンピング駆動装置全般に有用である。
【符号の説明】
【0097】
1 バルーン
10、80、110、130 バルーンポンピング駆動装置
11、81、111、131 ガス圧力室
12、82、112、132 圧力容器
13 ポンピング駆動機構
21、91、121、141 固定部
22、22A、22B 可動部
23 可動板
23a、92e、123e 受圧面
24 ベローズ
25A、25B 位置センサ
30、30A、30B リニアアクチュエータ
31 出力軸
31a 先端部(圧力伝達要素)
33 駆動コイル部
36 インナーコア
37A、37B コイル
41、42 永久磁石
45 アウターコア
45a 突条部
50 ポンピング制御部
51 ガス供給源
53 第1電磁切換弁
55 第2電磁切換弁
56 ペルチェ素子(熱電素子)
58、61 圧力センサ
60 補充制御部
71 血圧変動測定器
72 心電計測器
83A、83B、133A、133B 操作圧力室
92A、92B、123d、142A、142B ダイアフラム
96、96A、96B、146A、146B 操作用可動部
122、147 シリンダ
123A、123B、143A、143B ピストン
Ms1、Ms2 駆動制御信号
Pvs 血圧変動信号
Pts 心電波形信号
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11