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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】位相差フィルム
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20240116BHJP
   C08F 22/14 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
G02B5/30
C08F22/14
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020077290
(22)【出願日】2020-04-24
(65)【公開番号】P2021173861
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2023-03-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】北川 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】小峯 拓也
【審査官】植野 孝郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-107281(JP,A)
【文献】特開2017-179141(JP,A)
【文献】特開2013-49755(JP,A)
【文献】特開2008-176021(JP,A)
【文献】特開2019-26678(JP,A)
【文献】特開2008-129465(JP,A)
【文献】国際公開第2018/110277(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
B32B 1/00-43/00
C08F22/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フマル酸エステル系樹脂を含有し、フィルム面内の進相軸方向の屈折率をnx、それと直交するフィルム面内方向の屈折率をny、フィルム面外の垂直方向の屈折率をnzとした場合に、nx<ny≦nzの関係を満たし、かつnyとnzの差分の絶対値が0.0001以下である位相差フィルム。
【請求項2】
下記式(a)にて示される波長550nmで測定した面内位相差(Re)が50~500nmであり、下記式(b)にて示される波長550nmで測定した面外位相差(Rth)が-20~-300nmである請求項1に記載の位相差フィルム。
Re=(ny-nx)×d (a)
Rth=〔(nx+ny)/2-nz〕×d (b)
(ここで、dはフィルムの厚みを示す。)
【請求項3】
フマル酸エステル系樹脂が、下記式(1)で示されるフマル酸エステル残基単位を50モル%以上含む請求項1又は2に記載の位相差フィルム。
【化1】
(式中、R及びRは、それぞれ独立して炭素数1~12である直鎖状アルキル基、炭素数3~12の分岐状アルキル基、又は炭素数3~6である環状アルキル基からなる群の1種を示す)
【請求項4】
フマル酸エステル系樹脂と、さらに加工性改良剤を含有する請求項1乃至3いずれか一項に記載の位相差フィルム。
【請求項5】
波長450nmで測定した位相差(R450)と波長550nmで測定した位相差(R550)の比(R450/R550)が1.1以下である請求項1乃至4いずれか一項に記載の位相差フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフィルムの厚み方向の屈折率が大きく、位相差特性、波長依存性に優れた位相差フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイは、マルチメディア社会における最も重要な表示デバイスとして、スマートフォン、コンピュータ用モニター、ノートパソコン、テレビまで幅広く使用されている。
液晶ディスプレイには表示特性向上のため多くの光学フィルムが用いられており、特に位相差フィルムは正面や斜めから見た場合のコントラストの向上、色調の補償等大きな役割を果たしている。従来の位相差フィルムとしては、ポリカーボネートや環状ポリオレフィンが使用されており、これらの高分子はいずれも正の複屈折を有する高分子である。ここで、複屈折の正負は以下に示すように定義される。
【0003】
延伸等で分子配向した高分子フィルムの光学異方性は、フィルムを延伸した場合のフィルム面内の進相軸方向の屈折率をnx、それと直交するフィルム面内方向の屈折率をny、フィルムの厚み方向の屈折率をnzとした屈折率楕円体で表すことができる。
つまり、負の複屈折を有する高分子の一軸延伸では延伸軸方向の屈折率が小さく(進相軸:延伸方向)、正の複屈折を有する高分子の一軸延伸では延伸軸方向と直交する軸方向の屈折率が小さい(進相軸:延伸方向と直交方向)。
また、面内位相差(Re)は、進相軸方向と直交方向の屈折率(ny)-進相軸方向の屈折率(nx)にフィルムの厚みを掛けた値として表される。
【0004】
多くの高分子は正の複屈折性を有する。負の複屈折を有する高分子としてはアクリル樹脂やポリスチレンがあるが、アクリル樹脂は位相差の発現性が小さく、光学補償フィルムとしての特性は十分でない。ポリスチレンは、室温領域での光弾性係数が大きくわずかな応力で位相差が変化するなど位相差の安定性の課題、位相差の波長依存性が大きいといった光学特性上の課題、更に耐熱性が低いといった実用上の課題があり現状用いられていない。
ここで位相差の波長依存性とは、位相差が測定波長に依存して変化することを意味し、波長450nmで測定した位相差(R450)と波長550nmで測定した位相差(R550)の比R450/R550として表すことができる。一般に芳香族構造の高分子ではこのR450/R550が大きくなる傾向が強く、低波長領域でのコントラストや視野角特性が低下する。
【0005】
負の複屈折を示す高分子の延伸フィルムはフィルムの厚み方向の屈折率が高く、従来にない光学補償フィルムとなるため、例えばスーパーツイストネマチック型液晶(STN-LCD)や垂直配向型液晶(VA-LCD)、面内配向型液晶(IPS-LCD)、反射型液晶ディスプレイ、半透過型液晶ディスプレイなどのディスプレイの視野角特性の補償用の位相差フィルムや偏光板の視野角を補償するための位相差フィルムとして有用であり、負の複屈折を有する位相差フィルムに対して市場の要求が強い。
【0006】
正の複屈折を有する高分子を用いてフィルムの厚み方向の屈折率を高めたフィルムの製造方法が提案されている。ひとつは高分子フィルムの片面または両面に熱収縮性フィルムを接着し、その積層体を加熱延伸処理して、高分子フィルムの厚み方向に収縮力をかける処理方法(例えば特許文献1~3参照)である。また、高分子フィルムに電場を印加しながら面内に一軸延伸する方法が提案されている(例えば特許文献4参照)。
また、負の光学異方性を有する微粒子と透明性高分子からなる位相差フィルムが提案されている(例えば特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許2818983号公報
【文献】特開平05-297223号公報
【文献】特開平05-323120号公報
【文献】特開平06-088909号公報
【文献】特開2005-156862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1~4において提案された方法は、製造工程が非常に複雑になるため生産性に劣るといった課題がある。また位相差の均一性などの制御も従来の延伸による制御に比べると著しく難しくなる。
また、特許文献5で得られる光学補償フィルムは、負の光学異方性を有する微粒子を添加することにより負の複屈折を有する位相差フィルムであり、微粒子の均一分散性、均一配向制御、フィルム透明性等に課題を有する。
【0009】
従来の液晶に使用されている位相差フィルムは、nx<ny=nzの関係を有するポジティブC型プレートと、nx=ny>nzの関係を有するポジティブA型プレートを組み合わせることでnx<ny≦nzとなる特性を有していた。ただし、このような位相差フィルムはnyとnzの関係はny<nzであるものの、コントラスト向上の観点から、ny≒nzに近い特性を単膜で発現する位相差フィルムが求められていたが、実用化例は知られていなかった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、特定の樹脂を含む原料をフィルム形状に加工する際に延伸を行うことにより、単膜で3次元屈折率が特定の関係を満足する位相差フィルムを得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、本発明は、フマル酸エステル系樹脂を含有し、フィルム面内の進相軸方向の屈折率をnx、
それと直交するフィルム面内方向の屈折率をny、
フィルム面外の垂直方向の屈折率をnzとした場合に、
nx<ny≦nzの関係を満たし、かつ
nyとnzの差分の絶対値が0.0015以下である位相差フィルムに関するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、液晶装置に組み込むことでコントラスト性を向上させることができる位相差フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明の一態様である位相差フィルム(以下、「本発明の位相差フィルム」という。)について詳細に説明する。
【0014】
本発明の位相差フィルムは、フィルム面内の進相軸方向の屈折率をnx、それと垂直方向の屈折率をny、フィルムの厚み方向の屈折率をnzとした場合のそれぞれの関係がnx<ny≦nzであり、かつnyとnzの差分の絶対値が0.0015以下である。これにより、IPS-LCD、反射型LCDや半透過型LCD等の視野角補償性能の優れた位相差フィルムとなるものである。
【0015】
本発明の位相差フィルムがより優れた光学特性を発現するため、本発明の位相差フィルムの面内位相差(Re)は50~500nmであることが好ましく、50~300nmであることがさらに好ましく、100~300nmであることがまたさらに好ましい。ここで、面内位相差(Re)は下記式(a)で示される。また、nx、nyは波長550nmで測定した値である。
【0016】
本発明の位相差フィルムがより優れた光学特性を発現するため、本発明の位相差フィルムの面外位相差(Rth)は-20~-300nmであることが好ましく、-30~-200nmであることがさらに好ましく、-30~-180nmであることがまたさらに好ましい。ここで、面外位相差(Rth)は下記式(b)で示される。また、nx、ny、nzは波長550nmで測定した値である。
Re=(ny-nx)×d (a)
Rth=〔(nx+ny)/2-nz〕×d (b)
(式(a)、(b)中、dはフィルムの厚みを示す。)
【0017】
位相差の波長依存性は、波長450nmで測定した位相差(R450)と波長550nmで測定した位相差(R550)の比R450/R550として表すことができる。本発明の位相差フィルムでは、該R450/R550は、1.1以下が好ましく、特に1.08以下が好ましく、更に1.05以下が好ましい。
【0018】
本発明の位相差フィルムはフマル酸エステル系樹脂を含有する。これにより本発明の位相差フィルムは高い位相差を発現する。
【0019】
フマル酸エステル系樹脂は、フマル酸エステルの重合体が挙げられ、その中でも下記式(1)で示されるフマル酸ジエステル残基単位を含むことが好ましい。
【0020】
【化1】
【0021】
(式中、R及びRは、それぞれ独立して炭素数1~12である直鎖状アルキル基、炭素数3~12の分岐状アルキル基、又は炭素数3~6である環状アルキル基からなる群の1種を示す)
【0022】
フマル酸エステル系樹脂が式(1)で示されるフマル酸ジエステル残基単位を含む場合、該残基単位を50モル%以上含有することが好ましい。
【0023】
式(1)中、R、Rは、それぞれ独立して、炭素数1~12である直鎖状アルキル基、炭素数3~12の分岐状アルキル基、又は炭素数3~6環状アルキル基である。該アルキル基は、フッ素原子,塩素原子などのハロゲン基;エーテル基;エステル基若しくはアミノ基で置換されていてもよい。
具体的なR、Rはとして、例えば、エチル基、イソプロピル基、s-ブチル基、t-ブチル基、s-ペンチル基、t-ペンチル基、s-ヘキシル基、t-ヘキシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられ、その中でも耐熱性、機械特性に優れた位相差フィルムとなることからエチル基、イソプロピル基、s-ブチル基、t-ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基からなる群の一種であることが好ましく、特に耐熱性、機械特性のバランスに優れた位相差フィルムとなることからイソプロピル基が好ましい。
【0024】
ここで、式(1)で示されるフマル酸ジエステル残基単位としては、具体的には、フマル酸ジエチル残基、フマル酸ジイソプロピル残基、フマル酸ジ-s-ブチル残基、フマル酸ジ-t-ブチル残基、フマル酸ジ-s-ペンチル残基、フマル酸ジ-t-ペンチル残基、フマル酸ジ-s-ヘキシル残基、フマル酸ジ-t-ヘキシル残基、フマル酸ジシクロプロピル残基、フマル酸ジシクロペンチル残基、フマル酸ジシクロヘキシル残基等が挙げられ、フマル酸ジイソプロピル残基、フマル酸ジ-s-ブチル残基、フマル酸ジ-t-ブチル残基、フマル酸ジシクロペンチル残基、フマル酸ジシクロヘキシル残基からなる群の1種が好ましく、特にフマル酸ジイソプロピル残基が好ましい。
【0025】
フマル酸ジエステル系樹脂は、式(1)で示される残基単位を一成分含んでいてもよく、また、2種類以上の式(1)で示される残基単位を含む、すなわち二成分以上含んでいてもよい。
【0026】
本発明に用いるフマル酸エステル系樹脂として式(1)に示されるフマル酸ジエステル残基単位を50モル%以上、フマル酸ジエステル類と共重合可能な単量体からなる残基単位を50モル%以下含む樹脂であることが好ましい。ここで、フマル酸ジエステル類と共重合可能な単量体からなる残基単位としては、例えばスチレン残基、α-メチルスチレン残基等のスチレン類残基;アクリル酸残基;アクリル酸メチル残基、アクリル酸エチル残基、アクリル酸ブチル残基等のアクリル酸エステル類残基;メタクリル酸残基;メタクリル酸メチル残基、メタクリル酸エチル残基、メタクリル酸ブチル残基、3-エチル-3-オキセタニルメチルアクリレート等のメタクリル酸エステル類残基;酢酸ビニル残基、プロピオン酸ビニル残基等のビニルエステル類残基;アクリロニトリル残基;メタクリロニトリル残基;エチレン残基、プロピレン残基等のオレフィン類残基;等の1種又は2種以上を挙げることができ、好ましくはメタクリル酸エステル類残基を挙げることができる。
【0027】
その中でも、式(1)に示されるフマル酸ジエステル残基単位が70モル%以上であることが好ましく、特に耐熱性及び機械特性に優れた位相差フィルムとなることからフマル酸ジエステル残基単位が80モル%以上であることが好ましく、さらに90モル%以上であることが好ましい。
【0028】
本発明で用いるフマル酸エステル系樹脂としては、ゲル・パーミエイション・クロマトグラフィー(以下、GPCと記す。)により測定した溶出曲線より得られる標準ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)が1×10以上のものであることが好ましく、特に機械特性に優れ、製膜時の成形加工性に優れた位相差フィルムとなることから2×10以上2×10以下であることが好ましい。
【0029】
本発明の位相差フィルムを構成するフマル酸エステル系樹脂の製造方法としては、該フマル酸エステル系樹脂が得られる限りにおいて如何なる方法により製造してもよく、例えばフマル酸ジエステル類、場合によってはフマル酸ジエステル類と共重合可能な単量体を併用しラジカル重合あるいはラジカル共重合を行うことにより製造することができる。この際のフマル酸ジエステル類としては、例えばフマル酸ジイソプロピル、フマル酸ジ-s-ブチル、フマル酸ジ-t-ブチル、フマル酸ジ-s-ペンチル、フマル酸ジ-t-ペンチル、フマル酸ジ-s-ヘキシル、フマル酸ジ-t-ヘキシル、フマル酸ジシクロプロピル、フマル酸ジシクロペンチル、フマル酸ジシクロヘキシル等が挙げられ、フマル酸ジエステルと共重合可能な単量体としては、例えばスチレン、α-メチルスチレン等のスチレン類;アクリル酸;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル等のアクリル酸エステル類;メタクリル酸;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、3-エチル-3-オキセタニルメチルアクリレート等のメタクリル酸エステル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;アクリロニトリル;メタクリロニトリル;エチレン、プロピレン等のオレフィン類;等の1種又は2種以上を挙げることができる。
【0030】
また、用いるラジカル重合法としては、公知の重合方法で行うことが可能であり、例えば塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、沈殿重合法、乳化重合法等のいずれもが採用可能である。
【0031】
ラジカル重合法を行う際の重合開始剤としては、例えばベンゾイルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシベンゾエート等の有機過酸化物;2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-ブチロニトリル)、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル-2,2’-アゾビスイソブチレート、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)等のアゾ系開始剤が挙げられる。
【0032】
そして、溶液重合法、懸濁重合法、沈殿重合法、乳化重合法において使用可能な溶媒として特に制限はなく、例えばベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族溶媒;メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコール等のアルコール系溶媒;シクロヘキサン;ジオキサン;テトラヒドロフラン(THF);アセトン;メチルエチルケトン;ジメチルホルムアミド;酢酸イソプロピル;水等が挙げられ、これらの混合溶媒も挙げられる。
【0033】
また、ラジカル重合を行う際の重合温度は、重合開始剤の分解温度に応じて適宜設定することができ、一般的には40~150℃の範囲で行うことが好ましい。
【0034】
本発明の位相差フィルムには加工性改良剤として、可塑剤、紫外吸収剤、酸化防止剤、難燃剤、界面活性剤、レベリング剤、その他高分子化合物等を用いることができる。加工性改良剤は、フマル酸エステル系樹脂との相溶性、耐熱性及びフィルムの表面性、フィルム伸度等の延伸加工性等に優れることから分子量が100~10,000であることが好ましく、100~5,000であることがさらに好ましい。
【0035】
本発明に用いる加工性改良剤としては例えば、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジヘキシルフタレート、ジノルマルオクチルフタレート、2-エチルヘキシルフタレート、ジイソオクチルフタレート、ジカプリルフタレート、ジノニルフタレート、ジイソノニルフタレート、ジデシルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジウンデシルフタレート、ジラウリルフタレート、ジトリデシルフタレート、ジベンジルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ブチルベンジルフタレート、オクチルデシルフタレート、ブチルオクチルフタレート、オクチルベンジルフタレート、ノルマルヘキシルノルマルデシルフタレート、ノルマルオクチルノルマルデシルフタレート、ジ-2-エチルヘキシルイソフタレート、ジ-2-エチルヘキシルテレフタレート等のフタル酸エステル系化合物;トリクレジルホスフェート、トリ(2-エチルヘキシルホスフェート)、トリキシレニルホスフェート、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)、トリフェニルホスフェート、2-エチルヘキシルジフェニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリス(ブトキシエチル)ホスフェート、3,9-ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、亜りん酸トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニルジホスホナイト等のリン酸エステル系化合物;ジ-2-エチルヘキシルアジペート、ジイソデシルアジペート、ノルマルオクチル-ノルマルデシルアジペート、ノルマルヘプチル-ノルマルノニルアジペート、ジイソオクチルアジペート、ジイソノルマルオクチルアジペート、ジノルマルオクチルアジペート、ジデシルアジペート、ジイソデシルアジペート等のアジピン酸エステル系化合物;ジブチルセバケート、ジ-2-エチルヘキシルセバケート、ジイソオクチルセバケート、ブチルベンジルセバケート等のセバチン酸エステル系化合物;ジ-2-エチルヘキシルアゼレート、ジヘキシルアゼレート、ジイソオクチルアゼレート等のアゼライン酸エステル系化合物;クエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、アセチルクエン酸トリブチル、アセチルクエン酸トリ(2-エチルヘキシル)等のクエン酸エステル系化合物;メチルフタリルエチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート等のグリコール酸エステル系化合物;トリブチルトリメリテート、トリ-ノルマルヘキシルトリメリテート、トリ(2-エチルヘキシル)トリメリテート、トリ-ノルマルオクチルトリメリテート、トリ-イソクチルトリメリテート、トリ-イソデシルトリメリテート等のトリメリット酸エステル系化合物;トリ(2-エチルヘキシル)ピロメリテート、テトラブチルピロメリテート、テトラ-ノルマルヘキシルピロメリテート、テトラ(2-エチルヘキシル)ピロメリテート、テトラ-ノルマルオクチルピロメリテート、テトラ-イソクチルピロメリテート、テトラ-イソデシルピロメリテート等のピロメリット酸エステル系化合物;メチルアセチルリシノレート、ブチルアセチルリシノレート等のリシリノール酸エステル系化合物;ポリプロピレンアジペート、ポリプロピレンセバケートおよびこれらの変型ポリエステル等のポリエステル系化合物;エポキシ化大豆油、エポキシブチルステアレート、エポキシ(2-エチルヘキシル)ステアレート、エポキシ化あまに油、2-エチルヘキシルエポキシトーレート等のエポキシ系化合物;グリセリルトリアセテート、2-エチルヘキシルアセテート等の酢酸エステル系化合物;2-(2’-ヒドロキシ-5’-t-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-[2-ヒドロキシ-3,5-ビス(α,α-ジメチルベンジル)フェニル]ベンゾトリアゾール、2,2’-メチレンビス[6-(ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-t-オクチルフェノール]等のベンゾトリアゾール系化合物;2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2′-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2′-ジヒドロキシ-4,4′-メトキシベンゾフェノン、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2′,4,4′-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-5-スルホベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;N-ベンゼンスルホンアミド等のスルホンアミド系化合物;2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-エトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-(2-ヒドロキシ-4-プロポキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-(2-ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン等のトリアジン系化合物;2,4-ジ-t-ブチルフェニル-3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート、2,4-ジ-t-ペンチルフェニル-3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート、ヘキサデシル-3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート等のベンゾエート系化合物、ビス[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオン酸][エチレンビス(オキシエチレン)]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート、ペンタエリトリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート)等のフェノール系化合物; N,N,N’,N’-テトラフェニルベンジジン、N,N’-ジフェニル-N,N’-ジ(o-トリル)ベンジジン、N,N’-ジフェニル-N,N’-ジ(m-トリル)ベンジジン、N,N’-ジフェニル-N,N’-ジ(p-トリル)ベンジジン、N,N’-ビス(4-ホルミルフェニル)-N,N’-ジフェニルベンジジン、N,N’-ジ(4-ビフェニリル)-N,N’-ジフェニルベンジジン、N,N’-ビス(4-メトキシ-2-メチルフェニル)-N,N’-ジフェニルベンジジン、4-シアノ-4’’-プロピル-p-テルフェニル、4-シアノ-4’’-ペンチル-p-テルフェニル、4-アミノ-p-テルフェニル、4,4’’-ジアミノ-p-テルフェニル、4,4’’’-ジヒドロキシ-p-クォーターフェニル等のポリフェニル系化合物;9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-グリシジルオキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-アミノ-3-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(2-シアノエチル)フルオレン等のフルオレン系化合物;アクリル系レベリング剤ポリフローNo.75、ポリフローNo.77(共栄社化学株式会社製)等のアクリル系樹脂、Si結合したメチル及びフェニル基を有するシリコーン樹脂RSN-249(ダウコーニング社製)、Si結合したフェニル基を有する液体ヒドロキシル機能性シリコーン樹脂RSN-217(ダウコーニング社製)、Si結合したメチル基を有する固体フレークヒドロキシル機能性シリコーン樹脂YR-3370(モメンティブパフォーマンスマテリアルズホールディングス社製、Si結合したメチル基を有する固体フレークヒドロキシル機能性シリコーン樹脂KR-220L(信越化学工業株式会社製)等のシリコーン樹脂等が挙げられる。
【0036】
これらの中でもフマル酸エステル系樹脂との相溶性、フィルムの表面性等から、フタル酸エステル系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、フルオレン系化合物を用いることが好ましく、特にジイソデシルフタレート、2-[2-ヒドロキシ-3,5-ビス(α,α-ジメチルベンジル)フェニル]ベンゾトリアゾール、2,2’-メチレンビス[6-(ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-t-オクチルフェノール]、N’-ジフェニル-N,N’-ジ(m-トリル)ベンジジン、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンが好ましい。これらは必要に応じて1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0037】
本発明の位相差フィルムにおけるフマル酸エステル系樹脂と加工性改良剤の配合割合は、フィルム伸度等の機械特性を向上できることからフマル酸エステル系樹脂100重量部に対して加工性改良剤が0.1~40重量部が好ましく、特に0.5~20重量部が好ましく、更に1~10重量部が好ましい。
【0038】
また、フマル酸エステル系樹脂と加工性改良剤の配合方法としては、特に制限はなく、例えばフマル酸エステル系樹脂を可溶な溶媒に溶解した溶液に加工性改良剤を添加することにより行なうことができる。その際のフマル酸エステル系樹脂の可溶な溶媒としては、特に制限はなく、例えば芳香族溶媒としてベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、キュメン、クロロベンゼン等、非芳香族溶媒としてアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソプロピルケトン、ジイソブチルケトン等のケトン系溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル等のエステル系溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサン、1,3-ジオキソラン等のエーテル系溶媒等が挙げられる。
【0039】
本発明の位相差フィルムの製造方法としては、特に制限はなく、例えば、溶液キャスト法、溶融キャスト法等の方法によりフィルム化し、該フィルムを一軸又は二軸以上に延伸することにより製造することができる。
【0040】
溶液キャスト法は、例えばフマル酸エステル系樹脂を溶媒に溶解した溶液(以下、ドープと称する。)を支持基板上に流延した後、加熱等により溶媒を除去しフィルムを得る方法である。その際ドープを支持基板上に流延する方法としては、例えばTダイ法、ドクターブレード法、バーコーター法、ロールコーター法、リップコーター法等が用いられる。
特に、工業的にはダイからドープをベルト状又はドラム状の支持基板に連続的に押し出す方法が最も一般的である。用いられる支持基板としては、例えばガラス基板;ステンレスやフェロタイプ等の金属基板;ポリエチレンテレフタレート等のプラスチック基板などがある。溶液キャスト法において、高い透明性を有し、且つ厚み精度、表面平滑性に優れたフィルムを製膜する際には、ドープの溶液粘度は極めて重要な因子であり、700~30000cpsが好ましく、特に1000~10000cpsであることが好ましい。また、溶融キャスト法は、フマル酸エステル系樹脂を押出機内で溶融し、Tダイのスリットからフィルム状に押出した後、ロールやエアーなどで冷却しつつ引き取る成形法である。
【0041】
そして、得られたフィルムは、一軸又は二軸に延伸することにより位相差が制御され本発明の位相差フィルムに用いることが可能である。一軸延伸方法としては、例えば自由幅一軸延伸、テンターにより延伸する方法、ロール間で延伸する方法などが挙げられ、ニ軸延伸方法としては、例えばテンターにより延伸する方法、チューブ状に膨らませて延伸する方法などがある。その際の延伸条件としては、厚みむらが発生し難く、機械的特性、光学的特性に優れる位相差フィルムとなることから、延伸温度は80~250℃が好ましく、特に好ましくは100~220℃であり、延伸倍率は1.01~5倍が好ましく、特に好ましくは1.01~3倍である。
【0042】
延伸する際のフィルムの厚みは、光学部材の薄膜化への適合性および延伸処理のし易さの観点から、10μm以上200μm以下が好ましく、10μm以上150μm以下がさらに好ましく、20μm以上100μm以下が特に好ましい。
【0043】
また、延伸によって得られる光学フィルムの厚みは、5μm以上100μm以下であることが好ましく、さらに好ましくは10μm以上80μm以下であり、特に好ましくは10μm以上70μm以下の範囲である。
【0044】
本発明の位相差フィルムは、紫外線吸収剤として、例えばベンゾトリアゾール、ベンゾフェノン、トリアジン、ベンゾエートなどの紫外線吸収剤を必要に応じて配合していてもよい。
【0045】
本発明の位相差フィルムは、発明の主旨を越えない範囲で、その他ポリマー、界面活性剤、高分子電解質、導電性錯体、無機フィラー、顔料、染料、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、滑剤等が配合されたものであってもよい。
【0046】
本発明の位相差フィルムは、偏光板と積層して円あるいは楕円偏光板として用いることもできるし、さらに、ポリビニルアルコール/沃素等からなる偏光子と積層し偏光板とすることもできる。また、本発明の光学フィルム同士又は他の光学フィルムと積層することもできる。
【0047】
本発明の位相差フィルムは、液晶表示素子の視野角改良フィルムや色補償フィルムなどの位相差補償フィルムとして有用であり、円偏光板は有機ELディスプレイの反射防止フィルムとして用いることも可能である。
【実施例
【0048】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、断りのない限り用いた試薬は市販品を用いた。
【0049】
なお、実施例により示す諸物性は、以下の方法により測定した。
<数平均分子量の測定>
ゲル・パーミエイション・クロマトグラフィー(GPC)装置(東ソー製、商品名:C0-8011(カラムGMHHR―Hを装着))を用い、テトラヒドロフランを溶媒として、40℃で測定し、標準ポリスチレン換算値として求めた。
<重合体の解析>
重合体の構造解析は核磁気共鳴測定装置(日本電子製、商品名:JNM-GX270)を用い、プロトン核磁気共鳴分光(H-NMR)スペクトル分析より求めた。
【0050】
<光学フィルムの光線透過率およびヘーズの測定>
作成したフィルムの光線透過率およびヘーズの測定は、ヘーズメーター(日本電色工業製、商品名:NDH2000)を使用し、光線透過率の測定はJIS K 7361-1(1997版)に、ヘーズの測定はJIS-K 7136(2000年版)に、それぞれ準拠して測定した。
<位相差特性の測定>
試料傾斜型自動複屈折計(王子計測機器製、商品名:KOBRA-WR)を用いて波長589nmの光を用いて光学補償フィルムの位相差特性を測定した。
<波長分散特性の測定>
試料傾斜型自動複屈折計(王子計測機器製、商品名:KOBRA-WR)を用い、波長450nmの光による位相差Re(450)と波長550nmの光による位相差Re(550)の比として光学フィルムの波長分散特性を測定した。
【0051】
合成例1
攪拌機、冷却管、窒素導入管及び温度計を備えた1リットル反応器に、蒸留水600g、分散剤であるヒドロキシプロピルメチルセルロース(信越化学製、商品名メトローズ60SH-50)3.4g、フマル酸ジイソプロピル400.0g及び油溶性ラジカル開始剤であるt-ブチルパーオキシピバレート8.3gを入れ、窒素バブリングを1時間行なった後、400rpmで攪拌しながら50℃で24時間保持することによりラジカル懸濁重合を行なった。重合反応の終了後、反応器より内容物を回収し、重合物をろ別し、蒸留水で2回洗浄およびメタノールで2回洗浄後、80℃で減圧乾燥した(収率:77%)。 得られたフマル酸ジイソプロピル重合体の数平均分子量は129,000であった。
【0052】
合成例2
攪拌機、冷却管、窒素導入管及び温度計を備えた1リットル反応器に、蒸留水600g、分散剤であるヒドロキシプロピルメチルセルロース(信越化学製、商品名メトローズ60SH-50)3.4g、フマル酸ジイソプロピル350.9g、フマル酸ジエチル49.1g(フマル酸ジイソプロピル100重量部に対し、14.0重量部)及び油溶性ラジカル開始剤であるt-ブチルパーオキシピバレート8.3gを入れ、窒素バブリングを1時間行なった後、400rpmで攪拌しながら50℃で28時間保持することによりラジカル懸濁重合を行なった。重合反応の終了後、反応器より内容物を回収し、重合物をろ別し、蒸留水で2回洗浄およびメタノールで2回洗浄後、80℃で減圧乾燥した(収率:75%)。
得られたフマル酸エステル系重合体の数平均分子量は138,000であった。
H-NMR測定により、ポリマー粒子はフマル酸ジイソプロピル残基単位/フマル酸ジエチル残基単位=86.7/13.3(モル%)であるフマル酸ジイソプロピル・フマル酸ジエチル共重合体であることを確認した。
【0053】
合成例3
攪拌機、冷却管、窒素導入管及び温度計を備えた1リットル反応器に、蒸留水600g、分散剤であるヒドロキシプロピルメチルセルロース(信越化学製、商品名メトローズ60SH-50)3.4g、フマル酸ジイソプロピル387.5g、3-エチル-3-オキセタニルメチルアクリレート12.5g(フマル酸ジイソプロピル100重量部に対し、3.2重量部)及び油溶性ラジカル開始剤であるt-ブチルパーオキシピバレート8.3gを入れ、窒素バブリングを1時間行なった後、400rpmで攪拌しながら50℃で24時間保持することによりラジカル懸濁重合を行なった。重合反応の終了後、反応器より内容物を回収し、重合物をろ別し、蒸留水で2回洗浄およびメタノールで2回洗浄後、80℃で減圧乾燥した(収率:73%)。
得られたフマル酸エステル系重合体の数平均分子量は147,000であった。H-NMR測定により、ポリマー粒子はフマル酸ジイソプロピル残基単位/3-エチル-3-オキセタニルメチルアクリレート残基単位=96.1/3.9(モル%)であるフマル酸ジイソプロピル・3-エチル-3-オキセタニルメチルアクリレート共重合体であることを確認した。
【0054】
フィルム作成例1
合成例1で得られたフマル酸ジイソプロピル重合体をトルエン・メチルエチルケトン混合溶液(トルエン/メチルエチルケトン=50重量%/50重量%)に溶解して20%溶液とし、Tダイ法により溶液流延装置の支持基板に流延し、80℃および130℃で各々4分乾燥し、幅250mm、厚み25μmのフィルムを得た。
得られたフィルムは、光線透過率92%、ヘーズ0.3%であった。
【0055】
フィルム作成例2
合成例2で得られたフマル酸ジイソプロピル/フマル酸ジエチル共重合体をトルエン・メチルエチルケトン混合溶液(トルエン/メチルエチルケトン=50重量%/50重量%)に溶解して20%溶液とし、Tダイ法により溶液流延装置の支持基板に流延し、80℃および130℃で各々4分乾燥し、幅250mm、厚み25μmのフィルムを得た。
得られたフィルムは、光線透過率93%、ヘーズ0.3%であった。
【0056】
フィルム作成例3
合成例3で得られたフマル酸ジイソプロピル・3-エチル-3-オキセタニルメチルアクリレート共重合体100重量部に対し2,2’-メチレンビス[6-(ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-t-オクチルフェノール]を2重量部配合し、トルエン・メチルエチルケトン混合溶液(トルエン/メチルエチルケトン=50重量%/50重量%)に溶解して20%溶液とし、Tダイ法により溶液流延装置の支持基板に流延し、80℃および130℃で各々4分乾燥し、幅250mm、厚み25μmのフィルムを得た。
得られたフィルムは、光線透過率92%、ヘーズ0.4%であった。
【0057】
フィルム作成例4
合成例3で得られたフマル酸ジイソプロピル・3-エチル-3-オキセタニルメチルアクリレート共重合体100重量部に対し2,2’-メチレンビス[6-(ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-t-オクチルフェノール]を2重量部配合し、トルエン・メチルエチルケトン混合溶液(トルエン/メチルエチルケトン=50重量%/50重量%)に溶解して20%溶液とし、Tダイ法により溶液流延装置の支持基板に流延し、80℃および130℃で各々4分乾燥し、幅250mm、厚み50μmのフィルムを得た。
得られたフィルムは、光線透過率92%、ヘーズ0.5%であった。
【0058】
フィルム作成例5
合成例3で得られたフマル酸ジイソプロピル・3-エチル-3-オキセタニルメチルアクリレート共重合体100重量部に対しN,N’-ジフェニル-N,N’-ジ(m-トリル)ベンジジンを2重量部配合し、トルエン・メチルエチルケトン混合溶液(トルエン/メチルエチルケトン=50重量%/50重量%)に溶解して20%溶液とし、Tダイ法により溶液流延装置の支持基板に流延し、80℃および130℃で各々4分乾燥し、幅250mm、厚み25μmのフィルムを得た。
得られたフィルムは、光線透過率92%、ヘーズ0.3%であった。
【0059】
フィルム作成例6
ポリカーボネート樹脂(アルドリッチ製)を塩化メチレン溶液に溶解し25%溶液とし、さらにポリカーボネート樹脂100重量部に対し、酸化防止剤としてトリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)フォスファイト0.35重量部およびペンタエリスリトール-テトラキス(3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)0.15重量部を添加した後、Tダイ法により溶液流延装置の支持基板に流延し、40℃、80℃および120℃で各々15分乾燥した後、幅250mm、厚み100μmのフィルムを得た。
【0060】
実施例1
フィルム作成例1で得られたフマル酸ジイソプロピル重合体からなるフィルムを一片50mmの正方形に裁断し、二軸延伸装置(井元製作所製)により温度140℃、延伸速度10mm/min.の条件にて自由一軸延伸を施し1.55倍延伸した。得られたフィルムの膜厚は20μm、フィルムの3次元屈折率測定の結果(nx=1.4661、ny=1.4731、nz=1.4731)から、得られたフィルムはnx<ny=nz、nyとnzの差分の絶対値が0.0001の関係にあった。面内位相差Re=(ny-nx)×dは140nm、面外位相差Rth=〔(nx+ny)/2-nz〕×dは-72nm、位相差の比(R450/R550)(波長依存性)は1.02であり、位相差特性に優れるものであった。
【0061】
実施例2
フィルム作成例2で得られたフマル酸ジイソプロピル/フマル酸ジエチル共重合体からなるフィルムを一片50mmの正方形に裁断し、二軸延伸装置(井元製作所製)により温度140℃、延伸速度10mm/min.の条件にて自由一軸延伸を施し1.55倍延伸した。得られたフィルムの膜厚は20μm、フィルムの3次元屈折率測定の結果(nx=1.4667、ny=1.4735、nz=1.4735)から、得られたフィルムはnx<ny=nz、nz-ny=0の関係にあった。面内位相差Re=(ny-nx)×dは136nm、面外位相差Rth=〔(nx+ny)/2-nz〕×dは-70nm、位相差の比(R450/R550)(波長依存性)は1.02であり、位相差特性に優れるものであった。
【0062】
実施例3
フィルム作成例3で得られたフマル酸ジイソプロピル・3-エチル-3-オキセタニルメチルアクリレート共重合体および2,2’-メチレンビス[6-(ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-t-オクチルフェノール]からなるフィルムを一片50mmの正方形に裁断し、二軸延伸装置(井元製作所製)により温度140℃、延伸速度10mm/min.の条件にて自由一軸延伸を施し1.55倍延伸した。得られたフィルムの膜厚は20μm、フィルムの3次元屈折率測定の結果(nx=1.4662、ny=1.4731、nz=1.4732)から、得られたフィルムはnx<ny=nz、nyとnzの差分の絶対値が0.0001の関係にあった。面内位相差Re=(ny-nx)×dは138nm、面外位相差Rth=〔(nx+ny)/2-nz〕×dは-71nm、位相差の比(R450/R550)(波長依存性)は1.01であり、位相差特性に優れるものであった。
【0063】
実施例4
フィルム作成例4で得られたフマル酸ジイソプロピル・3-エチル-3-オキセタニルメチルアクリレート共重合体および2,2’-メチレンビス[6-(ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-t-オクチルフェノール]からなるフィルムを一片50mmの正方形に裁断し、二軸延伸装置(井元製作所製)により温度140℃、延伸速度10mm/min.の条件にて自由一軸延伸を施し1.55倍延伸した。得られたフィルムの膜厚は43μm、フィルムの3次元屈折率測定の結果(nx=1.4668、ny=1.4735、nz=1.4736)から、得られたフィルムはnx<ny=nz、nyとnzの差分の絶対値が0.0001の関係にあった。面内位相差Re=(ny-nx)×dは287nm、面外位相差Rth=〔(nx+ny)/2-nz〕×dは-148nm、位相差の比(R450/R550)(波長依存性)は1.01であり、位相差特性に優れるものであった。
【0064】
実施例5
フィルム作成例5で得られたフマル酸ジイソプロピル・3-エチル-3-オキセタニルメチルアクリレート共重合体およびN,N’-ジフェニル-N,N’-ジ(m-トリル)ベンジジンからなるフィルムを一片50mmの正方形に裁断し、二軸延伸装置(井元製作所製)により温度140℃、延伸速度10mm/min.の条件にて自由一軸延伸を施し1.55倍延伸した。得られたフィルムの膜厚は20μm、フィルムの3次元屈折率測定の結果(nx=1.4665、ny=1.4735、nz=1.4736)から、得られたフィルムはnx<ny=nz、nyとnzの差分の絶対値が0.0001の関係にあった。面内位相差Re=(ny-nx)×dは136nm、面外位相差Rth=〔(nx+ny)/2-nz〕×dは-68nm、位相差の比(R450/R550)(波長依存性)は0.99であり、位相差特性に優れるものであった。
【0065】
比較例1
フィルム作成例6で得られたポリカーボネート樹脂からなるフィルムを一片50mmの正方形に裁断し、二軸延伸装置(井元製作所製)により温度180℃、延伸速度10mm/min.の条件にて自由一軸延伸を施し1.3倍延伸した。得られたフィルムの膜厚は60μmとフィルムの3次元屈折率はnx=1.5822、ny=1.5845、nz=1.5823とny>nx>nz、ny-nz=0.0022で正の複屈折を有するものであった。