(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】回転検出装置
(51)【国際特許分類】
G01P 1/02 20060101AFI20240116BHJP
G01D 5/245 20060101ALI20240116BHJP
G01P 3/488 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
G01P1/02
G01D5/245 110A
G01D5/245 B
G01P3/488 D
(21)【出願番号】P 2020145315
(22)【出願日】2020-08-31
【審査請求日】2022-12-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】株式会社プロテリアル
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】冨田 和彦
【審査官】岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-505417(JP,A)
【文献】国際公開第93/012403(WO,A1)
【文献】特開平11-183495(JP,A)
【文献】米国特許第6019086(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01P 1/00- 3/80
G01D 5/00- 5/252
G01D 5/39- 5/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検出体の回転に伴って生じる磁界変化に基づいて被検出体の回転状態を検出する回転検出装置であって、
磁気検出素子及び当該磁気検出素子を覆う被覆部材を備える第1センサ部及び第2センサ部と、
前記第1センサ部と前記第2センサ部との間に配置された1つの永久磁石と、
前記第1センサ部,前記第2センサ部及び前記永久磁石を収容するハウジング部と、を有
し、
前記第1センサ部は、前記永久磁石の第1の主面と隙間を介して対向し、
前記第2センサ部は、前記第1の主面と逆の極性を有する前記永久磁石の第2の主面と隙間を介して対向し、
前記第1センサ部と前記永久磁石の前記第1の主面との対向間隔(D1)と、前記第2センサ部と前記永久磁石の前記第2の主面との対向間隔(D2)と、が異なる、回転検出装置。
【請求項2】
前記ハウジング部は、前記第1センサ部,前記第2センサ部及び前記永久磁石を一括してモールドする樹脂成形体である、請求項1に記載の回転検出装置。
【請求項3】
前記第1センサ部及び前記第2センサ部が備える前記被覆部材は、前記磁気検出素子を挟んで対向する上面及び下面を有し、
前記第1センサ部及び前記第2センサ部が備える前記磁気検出素子は、前記被覆部材の前記上面と前記下面との対向方向において、前記下面よりも前記上面に近接した位置に埋設され、
前記第1センサ部は、前記被覆部材の前記下面が前記永久磁石の前記第1の主面と対向するように配置され、
前記第2センサ部は、前記被覆部材の前記上面が前記永久磁石の前記第2の主面と対向するように配置され、
前記対向間隔(D2)が前記対向間隔(D1)よりも大きい、請求項
1又は2に記載の回転検出装置。
【請求項4】
被検出体の回転に伴って生じる磁界変化に基づいて被検出体の回転状態を検出する回転検出装置であって、
磁気検出素子及び当該磁気検出素子を覆う被覆部材を備える第1センサ部及び第2センサ部と、
前記第1センサ部と前記第2センサ部との間に配置された1つの永久磁石と、
前記第1センサ部,前記第2センサ部及び前記永久磁石を収容するハウジング部と、を有し、
前記ハウジング部は、前記第1センサ部,前記第2センサ部及び前記永久磁石を一括してモールドする樹脂成形体であり、
前記第1センサ部は、前記永久磁石の第1の主面に当接し、
前記第2センサ部は、前記第1の主面と逆の極性を有する前記永久磁石の第2の主面に当接している
、回転検出装置。
【請求項5】
前記永久磁石の中心から前記第1センサ部の前記磁気検出素子までの距離と、前記永久磁石の中心から前記第2センサ部の前記磁気検出素子までの距離とが異なる、請求項
4に記載の回転検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検出体の回転に伴って生じる磁界変化に基づいて被検出体の回転状態を検出する回転検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような回転検出装置の一例が特許文献1に記載されている。特許文献1に記載されている回転検出装置は、磁気検出素子(MR素子)及び磁石を内蔵する検出部を備えており、検出部は、被検出体としての磁性体からなるギヤに対向して配置される。具体的には、検出部は、磁石がMR素子を挟んでギヤと反対側に位置するように配置される。この結果、ギヤが回転すると、ギヤに設けられている凸部及び凹部がMR素子と交互に対向する。その際、ギヤの凸部がMR素子に近接すると、MR素子の背後に位置する磁石から出ている磁束が凸部に集中する。よって、磁束の広がりが小さくなる。一方、ギヤの凹部がMR素子に近接すると、MR素子の背後に位置する磁石から出ている磁束は、当該凹部の両隣の凸部に集中する。よって、磁束の広がりが大きくなる。このような磁束の変化に応じて、MR素子における磁化自由層の磁化の向きが変化し、MR素子の抵抗が変化する。特許文献1に記載されている回転検出装置は、上記のようにして生じるMR素子の抵抗変化を利用してギヤの回転角や回転速度を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような回転検出装置は、例えば、自動車や自動二輪車等の車両に搭載されるABS装置(アンチロックブレーキ装置)を構成する車輪速センサとして利用されている。近年、自動運転システムや運転支援システム等の開発に伴って、ABS装置の安全性や信頼性をさらに向上させるべく、ABS装置の冗長化が求められている。具体的には、ABS装置を構成する車輪速センサを2つ以上に増やし、1つの車輪速センサが故障した場合であっても、他の車輪速センサによって車輪の回転検出が継続される装置構成が求められている。
【0005】
ここで、特許文献1に記載されている回転検出装置を用いてABS装置の冗長化を実現するためには、磁石の数を増やしたり、磁石の大きさを大きくしたりする必要がある。具体的には、特許文献1に記載されている回転検出装置では、MR素子の背後に磁石が配置されている。したがって、複数のMR素子を設ける場合、それぞれのMR素子の背後に個別に磁石を配置するか、複数のMR素子の背後にそれら複数のMR素子に跨る大きな磁石を配置する必要がある。しかし、磁石の増設や拡大は、回転検出装置の大型化やコストアップを招く一因となる。
【0006】
本発明の目的は、大型化やコストアップを生じさせることなく、回転検出装置の冗長化を実現可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の回転検出装置は、被検出体の回転に伴って生じる磁界変化に基づいて被検出体の回転状態を検出する。本発明の回転検出装置は、磁気検出素子及び当該磁気検出素子を覆う被覆部材を備える第1センサ部及び第2センサ部と、前記第1センサ部と前記第2センサ部との間に配置された1つの永久磁石と、前記第1センサ部,前記第2センサ部及び前記永久磁石を収容するハウジング部と、を有する。
【0008】
本発明の一態様では、前記ハウジング部は、前記第1センサ部,前記第2センサ部及び前記永久磁石を一括してモールドする樹脂成形体である。
【0009】
本発明の他の一態様では、前記第1センサ部は、前記永久磁石の第1の主面と隙間を介して対向し、前記第2センサ部は、前記第1の主面と逆の極性を有する前記永久磁石の第2の主面と隙間を介して対向する。そして、前記第1センサ部と前記永久磁石の前記第1の主面との対向間隔(D1)と、前記第2センサ部と前記永久磁石の前記第2の主面との対向間隔(D2)と、は異なる。
【0010】
本発明の他の一態様では、前記第1センサ部及び前記第2センサ部が備える前記被覆部材は、前記磁気検出素子を挟んで対向する上面及び下面を有する。前記第1センサ部及び前記第2センサ部が備える前記磁気検出素子は、前記被覆部材の前記上面と前記下面との対向方向において、前記下面よりも前記上面に近接した位置に埋設される。前記第1センサ部は、前記被覆部材の前記下面が前記永久磁石の前記第1の主面と対向するように配置され、前記第2センサ部は、前記被覆部材の前記上面が前記永久磁石の前記第2の主面と対向するように配置される。そして、前記対向間隔(D2)は、前記対向間隔(D1)よりも大きい。
【0011】
本発明の他の一態様では、前記第1センサ部は、前記永久磁石の第1の主面に当接し、前記第2センサ部は、前記第1の主面と逆の極性を有する前記永久磁石の第2の主面に当接する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、回転検出装置の大型化やコストアップを生じさせることなく、回転検出装置の冗長化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】(A)は回転検出装置の使用状態の一例を示す平面図であり、(B)は回転検出装置の使用状態の一例を示す正面図である。
【
図2】回転検出装置の構造の一例を模式的に示す説明図である。
【
図3】(A)はセンサ部の構造の一例を模式的に示す平面図であり、(B)はセンサ部の構造の一例を模式的に示す側面図ある。
【
図4】回転検出装置の構造の他の一例を模式的に示す説明図である。
【
図5】(A)は回転検出装置の使用状態の他の一例を示す正面図であり、(B)は回転検出装置の使用状態の他の一例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の回転検出装置の実施形態の一例について図面を参照しながら詳細に説明する。本発明の回転検出装置の用途は特に限定されないが、本実施形態に係る回転検出装置は、自動車等の車両に搭載されるABS装置(アンチロックブレーキ装置)やトラクションコントロール装置を構成する車輪速センサとしての利用に適している。
【0015】
図1(A),(B)に示されるように、本実施形態に係る回転検出装置1は、車輪と一緒に回転するギヤ10の近傍に配置され、ギヤ10の回転に伴って生じる磁界変化に基づいてギヤ10の回転状態を検出する。つまり、ギヤ10は、本発明の被検出体に相当する。
【0016】
被検出体としてのギヤ10は、磁性材料によって円盤形に形成されている。また、ギヤ10の周縁部には、凸部11及び凹部12が周方向に沿って一定間隔で交互に形成されている。ギヤ10は、不図示の車輪の回転に伴って回転軸X(
図1(A))を中心として回転する。よって、回転検出装置1によってギヤ10の回転状態(回転の有無,回転速度,回転角等)を検出することにより、車輪の回転状態(回転の有無,回転速度,回転角等)を検出することができる。
【0017】
回転検出装置1は、磁性体であるギヤ10との位置関係が所定の位置関係となるように、車体(ハブ,ナックル,サスペンション等)に固定される。具体的には、回転検出装置1は、その先端面20aがギヤ10の凸部11及び凹部12と対向するように、車体に固定される。したがって、車輪の回転に伴ってギヤ10が
図1(B)に示されている矢印Rの方向に回転すると、ギヤ10に設けられている凸部11と凹部12とが回転検出装置1の先端面20aの前を交互に通過する。
【0018】
図2は、回転検出装置1の先端部の内部構造を模式的に示す説明図である。
図2に示されている回転検出装置1の先端部は、
図1中で一点鎖線の楕円で囲まれているA部分に概ね相当する。
【0019】
図2に示されるように、回転検出装置1は、先端面20aを形成するハウジング部20と、ハウジング部20に収容された2つのセンサ部(第1センサ部31,第2センサ部32)と、1つの永久磁石40と、を有する。第1センサ部31,第2センサ部32及び永久磁石40は、ハウジング部20の先端に埋設されている。また、第1センサ部31,第2センサ部32及び永久磁石40は、ギヤ10の回転軸X(
図1(A))と平行に一列に並んでおり、永久磁石40は、第1センサ部31と第2センサ部32との間に配置されている。言い換えれば、第1センサ部31と第2センサ部32とは、永久磁石40を挟んで対向している。さらに言い換えれば、永久磁石40は、第1センサ部31と第2センサ部32とによって挟まれている。尚、以下の説明では、第1センサ部31及び第2センサ部32を「センサ部30」と総称する場合がある。
【0020】
図1(A),(B)及び
図2に示されているハウジング部20は、ポリアミド(PA612やPA610)からなる樹脂成形体であって、全体として円柱状の外観を呈する。
図2に示されるように、ハウジング部20は、センサ部30及び永久磁石40を一括してモールドしている。
図1(A)に示されるように、ハウジング部20の後部には、回転検出装置1を車両に固定するための固定部材(例えば、ボルト)が挿通される貫通孔が設けられたフランジ21が一体成形されている。例えば、ハウジング部20のフランジ21よりも前方の部分は、ハブ,ナックル等の所定の被固定部材に設けられている取り付け穴に挿入される。この際、フランジ21の前面は被固定部材にあてがわれ、フランジ21の貫通孔に挿通されたボルトは、被固定部材に設けられているねじ穴に結合される。
【0021】
図2に示されている第1センサ部31及び第2センサ部32は、同一のセンサICである。
図3(A),(B)に示されるように、第1センサ部31及び第2センサ部32のそれぞれは、2つの磁気検出素子33a,33bと、それら磁気検出素子33a,33bを覆う被覆部材34と、一端が磁気検出素子33aに接続されたリード端子35aと、一端が磁気検出素子33bに接続されたリード端子35bと、を有する。つまり、第1センサ部31及び第2センサ部32の磁気検出素子33a,33bは、被覆部材34に埋設されている。尚、
図2では、便宜上の理由により、
図3(A),(B)に示されているリード端子35a,35bは省略されている。また、
図3(A),(B)に示されているリード端子35a,35b上にコンデンサが設けられることもある。
【0022】
センサ部30が備える磁気検出素子33a,33bは、磁気抵抗効果素子(MR素子)である。
図1(A),(B)に示されているギヤ10の凸部11及び凹部12がセンサ部30及び永久磁石40を含む回転検出装置1の先端面20aの前を交互に通過すると、センサ部30が備える磁気検出素子33a,33bの周囲の磁界が変化し、これら磁気検出素子33a,33bの出力が変化する。つまり、センサ部30からギヤ10の回転に伴って生じる磁界変化に応じた出力が得られる。よって、センサ部30の出力に基づいてギヤ10の回転状態を検出することができ、ひいては車輪の回転状態を検出することができる。尚、ギヤ10の回転に伴って、磁性体であるギヤ10と永久磁石40との最短距離が変化し、これによって磁気検出素子33a,33bの周囲の磁界が変化することは明らかである。
【0023】
図3(A),(B)に示されるように、第1センサ部31及び第2センサ部32の被覆部材34は、磁気検出素子33a,33bを挟んで対向する上面34a及び下面34bを有する。そして、第1センサ部31及び第2センサ部32における磁気検出素子33a,33bは、被覆部材34の上面34aと下面34bとの対向方向において、下面34bよりも上面34aに近接した位置に埋設されている。つまり、被覆部材34の下面34bから磁気検出素子33a,33bまでの距離(d1)は、被覆部材34の上面34aから磁気検出素子33a,33bまでの距離(d2)よりも大きい(d1>d2)。
【0024】
再び
図2を参照する。永久磁石40は、厚み方向に着磁された2極の永久磁石であり、厚み方向一側と厚み方向他側とは、互いに逆の極性を有する。具体的には、第1の主面40aを含む永久磁石40の厚み方向一側はN極に着磁され、第1の主面40aと反対側の第2の主面40bを含む永久磁石40の厚み方向他側はS極に着磁されている。以下の説明では、N極に着磁されている永久磁石40の第1の主面40aを「上面40a」と呼び、S極に着磁されている永久磁石40の第2の主面40bを「下面40b」と呼ぶ場合がある。
【0025】
図2に示されるように、第1センサ部31は、永久磁石40の上面40aと隙間を介して対向しており、第2センサ部32は、永久磁石40の下面40bと隙間を介して対向している。より詳細には、第1センサ部31の被覆部材34の下面34bと、永久磁石40の上面40aと、が隙間を介して対向している。また、第2センサ部32の被覆部材34の上面34aと、永久磁石40の下面40bと、が隙間を介して対向している。
【0026】
但し、第1センサ部31の被覆部材34の下面34bと永久磁石40の上面40aとの対向間隔(D1)と、第2センサ部32の被覆部材34の上面34aと永久磁石40の下面40bとの対向間隔(D2)と、は異なっている。具体的には、対向間隔(D1)は、対向間隔(D2)よりも小さい(D1<D2)。つまり、第1センサ部31は、第2センサ部32に比べて永久磁石40に近接している。言い換えれば、第2センサ部32は、第1センサ部31に比べて永久磁石40から離間している。
【0027】
次に、永久磁石40に対する第1センサ部31の位置と第2センサ部32の位置とを敢えて異ならせた理由及びその利点について説明する。
【0028】
既述のとおり、第1センサ部31及び第2センサ部32では、被覆部材34の下面34bから磁気検出素子33a,33bまでの距離(d1)が被覆部材34の上面34aから磁気検出素子33a,33bまでの距離(d2)よりも大きい(
図3(B))。
【0029】
したがって、
図2に示されている第1センサ部31と第2センサ部32との中間に永久磁石40を配置すると(D1=D2)、第1センサ部31が備える磁気検出素子33a,33bは、第2センサ部32が備える磁気検出素子33a,33bよりも永久磁石40の中心から遠ざかることになる。この場合、同等の磁界変化に対する第1センサ部31の出力と第2センサ部32の出力との間にずれが生じる虞がある。
【0030】
そこで、本実施形態では、
図2に示されている対向間隔(D1)と対向間隔(D2)との関係を(D1<D2)とすることにより、永久磁石40の中心から第1センサ部31が備える磁気検出素子33a,33bまでの距離(L1)と、永久磁石40の中心から第2センサ部32が備える磁気検出素子33a,33bまでの距離(L2)と、を同一又は実質的に同一としてある。よって、本実施形態に係る回転検出装置1では、同等の磁界変化に対する第1センサ部31の出力と第2センサ部32の出力との間にずれが生じる虞を低減できる。つまり、本実施形態に係る回転検出装置1では、第1センサ部31の出力と第2センサ部32の出力との同等化が図られている。
【0031】
もっとも、第1センサ部31の出力と第2センサ部32の出力とのずれが許容可能な場合や補正処理によって対処可能な場合等には、
図2に示されている対向間隔(D1)と対向間隔(D2)との関係を(D1=D2)としてもよい。例えば、第1センサ部31及び第2センサ部32を永久磁石40に当接させてもよい。具体的には、
図4に示されるように、第1センサ部31の被覆部材34の下面34bを永久磁石40の上面40aに当接させ、第2センサ部32の被覆部材34の上面34aを永久磁石40の下面40bに当接させてもよい。この場合、永久磁石40の中心から第1センサ部31の磁気検出素子33a,33bまでの距離(L1)は、永久磁石40の中心から第2センサ部32の磁気検出素子33a,33bまでの距離(L2)よりも長くなる(L1>L2)。
【0032】
第1センサ部31及び第2センサ部32を永久磁石40に当接させることにより、これらをモールドする際の位置ずれが防止又は抑制される。ハウジング部20は、第1センサ部31,第2センサ部32及び永久磁石40が配置されている金型内に溶融樹脂を射出して成形される。このとき、第1センサ部31,第2センサ部32及び永久磁石40が互いに当接していることにより、これらが射出圧等によって移動することが防止又は抑制される。特に、永久磁石40に比べて小型かつ軽量な第1センサ部31や第2センサ部32の移動が防止又は抑制される。
【0033】
尚、
図2,
図4に示されている第1センサ部31や第2センサ部32の出力は、
図1に示されているケーブル50を介してABS装置やトラクションコントロール装置の制御部等に伝送される。ケーブル50は、第1センサ部31のリード端子35a,35bに接続された2芯ケーブルと、第2センサ部32のリード端子35a,35bに接続された2芯ケーブルと、それら2本の2芯ケーブルを一括して被覆するシースと、を含む多芯ケーブルである。
【0034】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、第1センサ部31や第2センサ部32が備える磁気検出素子33a,33bは、巨大磁気抵抗効果素子(GMR素子),異方性磁気抵抗効果素子(AMR素子)又はトンネル磁気抵抗効果素子(TMR素子)のいずれであってもよく、その他の磁気抵抗効果素子であってもよい。さらに、第1センサ部31や第2センサ部32が備える磁気検出素子33a,33bは、ホール素子等の磁気抵抗効果素子以外の磁気検出素子であってもよい。なお、第1センサ部31が備える磁気検出素子と第2センサ部32が備える磁気検出素子とを異ならせてもよい。例えば、第1センサ部31が備える磁気検出素子をMR素子とし、第2センサ部32が備える磁気検出素子をGMR素子としてもよい。
【0035】
ハウジング部20を形成する樹脂(モールド樹脂)は、ポリアミドに限られない。ハウジング部20を形成する樹脂の一例としては、ポリブチレンテレフタレート(PBT)が挙げられる。
【0036】
本発明の回転検出装置によって回転状態が検出される被検出体は、
図1(A),(B)に示されているギヤ10に限られない。被検出体の一例を
図5に示す。
図5に示されているリング13は、
図1(A),(B)に示されているギヤ10と同じく、車両の車輪と一緒に回転する。
【0037】
リング13は、磁性体によって形成されている。リング13には、矩形の開口部14が周方向に沿って一定間隔で形成されている。被検出体がリング13である場合、回転検出装置1は、リング13の前方又は後方に配置される。
図5に示されている例では、リング13の前方に回転検出装置1が配置され、回転検出装置1の先端面20aは、リング13の前面13aと対向している。さらに、回転検出装置1は、リング13の内周と外周との中間を通る仮想円Cの円周上に永久磁石40が位置するように配置されている。尚、仮想円Cは、それぞれの開口部14を長手方向において二分又は略二分する。
【0038】
車輪の回転に伴ってリング13が
図5(A)に示されている矢印Rの方向に回転すると、リング13に設けられている複数の開口部14が回転検出装置1の先端面20aの前を次々と通過する。この結果、第1センサ部31及び第2センサ部32の周囲の磁界が変化する。
【0039】
尚、回転検出装置1をリング13の後方に配置する場合には、回転検出装置1の先端面20aをリング13の背面13bと対向させる。また、リング13の開口部14は、回転検出装置1の先端面20aに向かって突出する凸部に置換してもよい。この場合、リング13の前面13a又は背面13bに、ギヤ10(
図1(A),(B))の周縁部に設けられている凹凸と実質的に同一の凹凸が形成されることになる。
【0040】
図3に示されている2つの磁気検出素子33a,33bの間に磁気検出素子を追加すれば、被検出体の回転方向の検出も可能となる。
図2や
図4に示されている永久磁石40の向きを反転させてもよい。つまり、永久磁石40のS極を第1センサ部31に対向させ、永久磁石40のN極を第2センサ部32に対向させてもよい。
【0041】
なお、図面では図示していないが、回転検出装置1は、第1センサ部31,第2センサ部32及び永久磁石40を保持し、ハウジング部20に覆われるホルダを備えていてもよい。
【符号の説明】
【0042】
1:回転検出装置
10:ギヤ
11:凸部
12:凹部
13:リング
13a:前面
13b:背面
14:開口部
20:ハウジング部
20a:先端面
21:フランジ
30:センサ部
31:第1センサ部
32:第2センサ部
33a,33b:磁気検出素子
34:被覆部材
34a:上面
34b:下面
35a,35b:リード端子
40:永久磁石
40a:第1の主面(上面)
40b:第2の主面(下面)
50:ケーブル