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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】単結晶製造装置
(51)【国際特許分類】
   C30B 29/06 20060101AFI20240116BHJP
   C30B 15/00 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
C30B29/06 502C
C30B15/00 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020205263
(22)【出願日】2020-12-10
(65)【公開番号】P2022092442
(43)【公開日】2022-06-22
【審査請求日】2022-11-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000190149
【氏名又は名称】信越半導体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(72)【発明者】
【氏名】三原 佳祐
(72)【発明者】
【氏名】柳瀬 和也
【審査官】山本 一郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第01/057293(WO,A1)
【文献】特開2020-152612(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C30B 29/06
C30B 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チョクラルスキー法によって単結晶を育成する単結晶製造装置であって、
天井部を備え、シリコン融液を収容するルツボを格納するメインチャンバと、
前記メインチャンバの前記天井部からゲートバルブを介して上方に連設し、前記シリコン融液から引き上げられたシリコン単結晶を収容する引き上げチャンバと、
前記ルツボに収容された前記シリコン融液と対向するように配置された熱遮蔽部材と、
引き上げ中の前記シリコン単結晶を包囲するように前記熱遮蔽部材上に配置された整流筒と、
引き上げ中の前記シリコン単結晶を取り囲むように配置され、前記メインチャンバの前記天井部から前記シリコン融液に向かって延伸した部分を含み、冷却媒体で強制冷却される冷却筒と、
前記冷却筒の内側に嵌合された冷却補助筒と
を有し、
前記冷却筒の前記延伸した部分は、前記シリコン融液に対面する底面を有し、
前記冷却補助筒は、少なくとも、前記冷却筒の前記底面を囲繞した第1部分と、前記整流筒の上端部を囲繞した第2部分とを有するものであることを特徴とする単結晶製造装置。
【請求項2】
前記整流筒は、合成石英製であることを特徴とする請求項1に記載の単結晶製造装置。
【請求項3】
前記冷却補助筒は、黒鉛部材、炭素複合部材、ステンレス鋼、モリブデン、及びタングステンからなる群より選択される少なくとも1種からなり、
前記冷却補助筒の前記第1部分は、前記冷却筒の前記底面を覆う構造を有し、前記冷却補助筒の前記第1部分と前記冷却筒の前記底面との間隙が1.0mm以下のものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の単結晶製造装置。
【請求項4】
前記冷却補助筒の前記第2部分は、前記整流筒の側面の全面積のうち10%以上35%以下の領域を覆った溝部を含むものであることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項に記載の単結晶製造装置。
【請求項5】
前記整流筒の前記上端部の両側面と前記冷却補助筒の前記第2部分の前記溝部の側面との隙間が5mm以上25mm以下であることを特徴とする請求項4に記載の単結晶製造装置。
【請求項6】
前記整流筒は側面に開口部を有し、該整流筒の開口部の上端の高さが前記整流筒の全高の35%以下の高さの位置に形成されたものであることを特徴とする請求項1から請求項5の何れか1項に記載の単結晶製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単結晶製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話など通信用にRF(高周波)デバイスが用いられている。
【0003】
シリコン単結晶ウェーハを用いたRFデバイスにおいては、基板抵抗率が低いと高導電性のために損失が大きいため、1000Ωcm以上の高抵抗率、すなわち抵抗率に関わるBやPなどのドーパント濃度が非常に低いウェーハが用いられる。
【0004】
SOI(Silicon on Insulator)と呼ばれる、シリコン基板表層部に薄い酸化膜+薄いシリコン層が形成されたウェーハを用いることもあるが、この場合も高抵抗率が望まれる。
【0005】
またパワーデバイス用としても、高耐圧用として比較的高抵抗率ウェーハが望まれている上、IGBTなどでは良好な特性を得るために、炭素濃度が極めて低いシリコン単結晶ウェーハが要求されるようになってきている。つまり最新の半導体デバイスにおいては、重金属などの不純物はもとより、ドーパントや軽元素である炭素など、不純物の低減は必須の課題となっている。
【0006】
シリコン単結晶中に混入する炭素は、原料からの持ち込みに起因するものと、結晶製造プロセス中の炉内反応に起因したものとの2つが挙げられ、これらの各導入過程別に炭素濃度低減を試みた技術が報告されている。
【0007】
原料からの持ち込みについては、原料シリコンの表面に付着した有機物の中には高温で気化せず炭化するものがあり、これが結晶中に取り込まれることで結晶中の炭素濃度が上昇するという問題がある。
【0008】
これを改善するために、例えば、特許文献1のパラフィン系炭化水素をはじめとする有機物汚染が少ないポリエチレン製収容袋に保管した多結晶原料を用いてCZ法で単結晶育成を行う方法、特許文献2の多結晶表面の有機物を同定して定量分析し、原料選別した後に、CZ法で単結晶育成を行う方法が挙げられる。
【0009】
他方、結晶製造プロセスに起因した炭素の混入については、結晶育成中に引上げ機炉内の炭素部材とシリコン融液から蒸発するSiOの反応によって炉内に炭素含有ガスが生成され、この炭素含有ガスが融液中に混入することで炭素濃度が上昇するという問題がある。
【0010】
この問題を解決するために、例えば、特許文献3の黒鉛ルツボの上に円筒形状の整流部材を搭載し、炭素含有ガスの融液側への逆流を防ぐ方法がある。また、整流部材を搭載して単結晶育成を行う他の例として、特許文献4のルツボの上方に石英製の整流筒とカーボン製の整流筒を搭載する方法や、特許文献5のルツボの上方に石英製の整流筒のみを搭載する方法がある。
【0011】
上記の整流部材を用いて単結晶育成を行うことで、シリコン原料融液直上から石英ルツボ上端の方向に流れる不活性ガスの線速を上昇させることができ、これにより炉内の炭素部材とシリコン融液から蒸発するSiOの反応によって生じた炭素含有ガスが原料融液側に逆流することを防ぐことができ、その結果として、整流部材なしの場合に比べて低い炭素濃度の単結晶を育成することが可能となる。
【0012】
しかし、上記整流部材を搭載することによって不活性ガスの線速を上昇させるだけでは、引上げ機炉内の炭素部材とシリコン融液から蒸発するSiOの反応によって生じる炭素含有ガスの生成量を抑制することはできないため、上記整流部材を搭載することのみによって得られる低炭素化効果には限界がある。このため、より低い炭素濃度の製品を製造できないことが問題となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】特開2016-113198号公報
【文献】特開2016-210637号公報
【文献】特開2012-201564号公報
【文献】特開2010-143776号公報
【文献】特開2010-184839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、従来技術に比べて炭素濃度がより低い単結晶を製造できる装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を達成するために、本発明では、チョクラルスキー法によって単結晶を育成する単結晶製造装置であって、
天井部を備え、シリコン融液を収容するルツボを格納するメインチャンバと、
前記メインチャンバの前記天井部からゲートバルブを介して上方に連設し、前記シリコン融液から引き上げられたシリコン単結晶を収容する引き上げチャンバと、
前記ルツボに収容された前記シリコン融液と対向するように配置された熱遮蔽部材と、
引き上げ中の前記シリコン単結晶を包囲するように前記熱遮蔽部材上に配置された整流筒と、
引き上げ中の前記シリコン単結晶を取り囲むように配置され、前記メインチャンバの前記天井部から前記シリコン融液に向かって延伸した部分を含み、冷却媒体で強制冷却される冷却筒と、
前記冷却筒の内側に嵌合された冷却補助筒と
を有し、
前記冷却筒の前記延伸した部分は、前記シリコン融液に対面する底面を有し、
前記冷却補助筒は、少なくとも、前記冷却筒の前記底面を囲繞した第1部分と、前記整流筒の上端部を囲繞した第2部分とを有するものであることを特徴とする単結晶製造装置を提供する。
【0016】
本発明の単結晶製造装置を用いることで、冷却補助筒の周りの空間の温度を低下させることができ、単結晶製造装置の炉内の炭素部材とシリコン融液から蒸発するSiOの反応によって生じる炭素含有ガスの発生を抑制することができる。加えて、熱遮蔽部材の上に整流筒を配置し、冷却補助筒の第2部分が前記整流筒の上端部を囲繞する構造とすることで、上記反応によって生じた炭素含有ガスがシリコン融液側に拡散することを抑制することもできる。これらの効果が組み合わさった結果として、従来技術に比べて炭素濃度が低い単結晶を効率よく製造することが可能となる。
【0017】
前記整流筒は、合成石英製であることが好ましい。
【0018】
合成石英製の整流筒を用いることで、炭素濃度がより低い単結晶を製造することができる。
【0019】
前記冷却補助筒は、黒鉛部材、炭素複合部材、ステンレス鋼、モリブデン、及びタングステンからなる群より選択される少なくとも1種からなり、
前記冷却補助筒の前記第1部分は、前記冷却筒の前記底面を覆う構造を有し、前記冷却補助筒の前記第1部分と前記冷却筒の前記底面との間隙が1.0mm以下のものであることが好ましい。
【0020】
このような冷却補助筒を用いることにより、より効率よく、炭素濃度がより低い単結晶を製造することができる。
【0021】
前記冷却補助筒の前記第2部分は、前記整流筒の側面の全面積のうち10%以上35%以下の領域を覆った溝部を含むことが好ましい。
【0022】
このような構造を用いることで、シリコン融液直上の領域に存在している炭素含有ガスがシリコン融液側に逆流しにくくなる効果をより確実に得ることができる。
【0023】
この場合、前記整流筒の前記上端部の両側面と前記冷却補助筒の前記第2部分の前記溝部の側面との隙間が5mm以上25mm以下であることがより好ましい。
【0024】
このような構造を用いることで、炭素含有ガスがシリコン融液側に逆流することをより確実に防ぐことができる。
【0025】
前記整流筒は側面に開口部を有し、該整流筒の開口部の上端の高さが前記整流筒の全高の35%以下の高さの位置に形成されたものであることが好ましい。
【0026】
このような側面に開口部を有する整流筒を用いることで、炭素含有ガスが原料融液側により逆流しにくくなる効果が得られる。
【発明の効果】
【0027】
以上のように、本発明の単結晶製造装置であれば、従来技術に比べて炭素濃度が低い単結晶を効率よく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の単結晶製造装置の一例を示す概略断面図である。
図2図1に示した単結晶製造装置の一例における、冷却補助筒周辺部の拡大概略断面図である。
図3】本発明の単結晶製造装置の他の例における、冷却補助筒周辺部の拡大概略断面図である。
図4】実施例1及び比較例1における単結晶中炭素濃度の固化率依存性を示すグラフである。
図5】実施例2、比較例1及び比較例2における単結晶中炭素濃度の固化率依存性を示すグラフである。
図6】実施例3及び比較例1における単結晶中炭素濃度の固化率依存性を示すグラフである。
図7】実施例4及び比較例1における単結晶中炭素濃度の固化率依存性を示すグラフである。
図8】比較例1で用いたCZ法による単結晶製造装置の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明は、チョクラルスキー法(CZ法)や磁場印加CZ法(MCZ法)によって育成される単結晶、例えばシリコン単結晶等の製造装置に関するものである。
【0030】
上述のように、従来技術に比べて炭素濃度がより低い単結晶を製造できる装置の開発が求められていた。
【0031】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討を重ねた結果、引き上げ中のシリコン単結晶を包囲するように熱遮蔽部材上に整流筒を配置し、冷却筒の内側に冷却補助筒を嵌合させ、冷却補助筒の第1部分で冷却筒のうちシリコン融液(シリコンメルト)に対面する底面を囲繞させ、更に冷却補助筒の第2部分で整流筒の上端部を囲繞させることにより、炉内の炭素部材とシリコン融液から蒸発するSiOとの反応によって生じる炭素含有ガスの発生を抑制することができ、更に、上記反応によって生じた炭素含有ガスがシリコン融液側に拡散することを抑制することができることを見出し、本発明を完成させた。
【0032】
即ち、本発明は、チョクラルスキー法によって単結晶を育成する単結晶製造装置であって、
天井部を備え、シリコン融液を収容するルツボを格納するメインチャンバと、
前記メインチャンバの前記天井部からゲートバルブを介して上方に連設し、前記シリコン融液から引き上げられたシリコン単結晶を収容する引き上げチャンバと、
前記ルツボに収容された前記シリコン融液と対向するように配置された熱遮蔽部材と、
引き上げ中の前記シリコン単結晶を包囲するように前記熱遮蔽部材上に配置された整流筒と、
引き上げ中の前記シリコン単結晶を取り囲むように配置され、前記メインチャンバの前記天井部から前記シリコン融液に向かって延伸した部分を含み、冷却媒体で強制冷却される冷却筒と、
前記冷却筒の内側に嵌合された冷却補助筒と
を有し、
前記冷却筒の前記延伸した部分は、前記シリコン融液に対面する底面を有し、
前記冷却補助筒は、少なくとも、前記冷却筒の前記底面を囲繞した第1部分と、前記整流筒の上端部を囲繞した第2部分とを有するものであることを特徴とする単結晶製造装置である。
【0033】
なお、先に示した特許文献1及び2は単結晶中の炭素濃度に注目しているという点では本技術と関連性はあるものの、いずれも原料シリコンから持ち込まれる炭素汚染に注目した技術であり、結晶製造プロセスに起因した炭素汚染に注目した本発明とは異なる技術である。
【0034】
また、特許文献3~5では、整流筒もしくは整流部材を用いて原料融液直上から石英ルツボ上端の方向に流れる不活性ガスの線速を上昇させ、炉内の炭素部材とシリコンメルトから蒸発するSiOの反応によって生じた炭素含有ガスが原料融液側に逆流しにくくなることを示唆しているが、特許文献3~5の何れも、本発明の単結晶製造装置が具備する、第1部分及び第2部分の両方を含む冷却補助筒を記載も示唆もしていない。
【0035】
以下、本発明について図面を参照しながら詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0036】
先に示した構成を有する本発明の単結晶製造装置を用いることで、冷却補助筒の周りの空間の温度を低下させることができ、単結晶製造装置の炉内の炭素部材とシリコン融液から蒸発するSiOの反応によって生じる炭素含有ガスの発生を抑制することができる。加えて、熱遮蔽部材の上に整流筒を配置し、冷却補助筒の第2部分が前記整流筒の上端部を囲繞する構造とすることで、上記反応によって生じた炭素含有ガスがシリコン融液側に拡散することを抑制することもできる。これらの効果が組み合わさった結果として、従来技術に比べて炭素濃度が低い単結晶を効率よく製造することが可能となる。
【0037】
以下、本発明の単結晶製造装置の各部材をより詳細に説明する。
【0038】
(1)メインチャンバ
メインチャンバは、天井部を備え、シリコン融液を収容するルツボを格納するものである。
【0039】
ルツボは、例えば、シリコン融液を収容する石英ルツボと、この石英ルツボを支持する黒鉛ルツボとから構成されていても良い。
【0040】
上記を含め、メインチャンバは、一般的なCZシリコンの単結晶製造装置のメインチャンバと同様の構造を有することができる。
【0041】
例えば、メインチャンバは、ヒーターを格納することもできる。ヒーターは、例えば、ルツボの周りを取り囲むように配置され、ルツボ内に収容される原料シリコンを溶融して、シリコン融液とすることができる。
【0042】
メインチャンバがヒーターを具備する場合、メインチャンバは、ヒーターを取り囲む断熱材を格納することができる。
【0043】
ルツボは、ルツボサポートに支持され得る。ルツボサポートには、ルツボ軸が取り付けられていてもよい。ルツボ軸は、ルツボサポートと、これに支持されたルツボを回転及び昇降させることができる。
【0044】
(2)引き上げチャンバ
引き上げチャンバは、メインチャンバの天井部からゲートバルブを介して上方に連設し、シリコン融液から引き上げられたシリコン単結晶を収容するものである。
【0045】
上記を含め、引き上げチャンバは、一般的なCZシリコンの単結晶製造装置の引き上げチャンバと同様の構造を有することができる。
【0046】
(3)熱遮蔽部材
熱遮蔽部材は、ルツボに収容されたシリコン融液と対向するように配置されたものである。熱遮蔽部材は、シリコン融液の表面からの輻射をカットするとともにシリコン融液の表面を保温することができる。熱遮蔽部材は、例えば、内径が下方に向かって徐々に小さくなる形状でシリコン融液と対向するように配置させることができる。
【0047】
熱遮蔽部材は、例えば、メインチャンバ内に格納することができる。
【0048】
熱遮蔽部材の材質は特に限定されないが、熱遮蔽部材は、例えば、黒鉛製とすることができる。
【0049】
(4)整流筒
整流筒は、引き上げ中のシリコン単結晶を包囲するように熱遮蔽部材上に配置されたものである。整流筒は、引き上げ中のシリコン単結晶を、熱遮蔽部材と同芯として包囲することができる。
【0050】
炉内の炭素部材とシリコン融液から蒸発するSiOの反応によって生じる炭素含有ガスの発生量は炉内の黒鉛部材の表面積に比例して増加するため、整流筒は、石英製やセラミック製とすることが好ましく、合成石英製とすることが特に好ましい。
【0051】
また、このとき用いる整流筒は、その側面に、開口部が形成されていることが好ましい。
【0052】
このような側面に開口部を有する整流筒を用いることで、整流筒開口部から整流筒の外側、例えば後述する筒部にある炉内監視用窓の方向に流れる不活性ガスの流速が上昇し、その結果として、筒部の内部や筒部の外側から炭素含有ガスが原料融液側により逆流しにくくなる効果が得られる。
【0053】
加えて、前記整流筒の開口部は、開口部上端の高さが整流筒の全高の35%以下の高さに位置し、かつ、開口部の中心を整流筒の下端部からの高さ30mm以上40mm以下の位置に設けた構造とすることが好ましい。また、開口部は、整流筒の側面に、円周方向に等間隔で形成されていることがより好ましく、例えば角度0°、120°及び240°の3つの軸上に開口部を設けた構造とすることができる。さらに、前記開口部は、開口部上端から下端までの長さを50mm以下とし、かつ、該整流筒の全側面積の15%以下の領域を開口した構造とすることが好ましい。
【0054】
このような側面に開口部を有する整流筒を用いることで、整流筒開口部から整流筒の外側、例えば後述する筒部にある炉内監視用窓の方向に流れる不活性ガスの流速が更に上昇し、その結果として、筒部の内部や筒部の外側から炭素含有ガスが原料融液側により一層逆流しにくくなる効果が得られる。
【0055】
(5)冷却筒
冷却筒は、引き上げ中のシリコン単結晶を取り囲むように配置され、メインチャンバの天井部からシリコン融液に向かって延伸した部分を含み、冷却媒体で強制冷却されるものである。シリコン融液に向かって延伸した部分は、シリコン融液に対面する底面を有する。
【0056】
冷却筒は、シリコン融液に向かって延伸し、ゲートバルブの下部のメインチャンバ内に配置され得る。
【0057】
冷却筒を強制冷却する冷却媒体は、特に限定されない。
【0058】
(6)冷却補助筒
冷却補助筒は、冷却筒の内側に嵌合されたものである。冷却補助筒は、少なくとも、冷却筒の底面を囲繞した第1部分と、整流筒の上端部を囲繞した第2部分とを有するものである。
【0059】
冷却補助筒は、黒鉛部材、炭素複合部材、ステンレス鋼、モリブデン、及びタングステンからなる群より選択される少なくとも1種からなることが好ましい。また、冷却補助筒の第1部分は、冷却筒のうちシリコン融液に対面する底面を覆う構造を有し、冷却補助筒の第1部分と冷却筒の底面との間隙が1.0mm以下のものであることが好ましい。
【0060】
このような構造の冷却補助筒を用いることによって、冷却筒の底面を覆う冷却補助筒の第1部分が受ける高温部からの輻射熱量が増えるだけでなく、冷却補助筒の第1部分がより高温化することで冷却補助筒が熱膨張し、冷却筒の底面との間隙を小さくすることができ、冷却筒に熱を伝えやすくなる。また、冷却筒の底面を覆う冷却補助筒の第1部分がシリコン融液や高温部からの輻射熱を受けることで高温化し、冷却補助筒自体が発する冷却筒の底面への輻射熱が大きくなるため、冷却筒の底面との間に間隙があっても、冷却筒に熱を伝えることができるようになる。これにより、ヒーター周りや熱遮蔽部材周りの高温部からの輻射熱を冷却筒に効率よく伝えることができ、その結果として、熱遮蔽部材から育成結晶への輻射熱が減って結晶成長速度が高速化すると同時に、炉内の炭素部材とシリコンメルトから蒸発するSiOの反応によって生じる炭素含有ガスの発生が抑制される効果がより確実に得られる。
【0061】
冷却補助筒の第2部分は、整流筒の側面の全面積のうち10%以上35%以下の領域を覆った溝部を含むことが好ましい。
【0062】
このような構造を用いることで、シリコン融液直上の領域に存在している炭素含有ガスがシリコン融液側に逆流しにくくなる効果をより確実に得ることができる。
【0063】
この場合、整流筒の上端部の両側面と冷却補助筒の第2部分の溝部の側面との隙間が5mm以上25mm以下であることがより好ましい。
【0064】
このような構造を用いることで、炭素含有ガスがシリコン融液側に逆流することをより確実に防ぐことができる。
【0065】
(7)その他
上記以外のHZ(ホットゾーン)の構造は、一般的なCZシリコン単結晶製造装置と同じ構造とすることができる。
【0066】
例えば、磁場印加CZ法(MCZ法)を行う単結晶製造装置であれば、シリコン融液に磁場を印加する磁場印加装置を更に含むことができる。
【0067】
次に、図面を参照しながら、本発明の単結晶製造装置の具体例を説明する。なお、従来装置と同じものについては説明を適宜省略することがある。
【0068】
図1は、本発明の単結晶製造装置の一例を示す概略断面図である。図2は、図1に示した単結晶製造装置の一例における、冷却補助筒周辺部の拡大概略断面図である。
【0069】
図1及び図2に示す単結晶製造装置1は、天井部21を備え、シリコン融液6を収容する石英ルツボ7及びこれを支持する黒鉛ルツボ8を格納するメインチャンバ2と、メインチャンバ2の上部に不図示のゲートバルブを介して連設された引き上げチャンバ3と、シリコン融液6と対向するように配置された熱遮蔽部材12と、熱遮蔽部材12上に配置された整流筒14と、メインチャンバ2の天井部21からシリコン融液6に向かって延伸した部分131を含む冷却筒13と、冷却筒13の内側に嵌合された冷却補助筒15とを有する。
【0070】
メインチャンバ2は、黒鉛ルツボ8を支持するルツボサポート16と、ルツボサポート16を支持したルツボ軸17と、黒鉛ルツボ8を取り囲むように配置されたヒーター9と、ヒーター9を取り囲むように配置された断熱材10とを更に格納している。ルツボ軸17は、シリコン融液6、石英ルツボ7、黒鉛ルツボ8及びルツボサポート16を、回転軸18を中心として自転させることができると共に、これらを昇降させることができる。
【0071】
メインチャンバ2の天井部21には、筒部11が配置されている。筒部11は、天井部21からシリコン融液6に向けて延伸しており、端部に熱遮蔽部材12が取り付けられている。
【0072】
引き上げチャンバ3は、シリコン融液6から引き上げられたシリコン単結晶5を収容するものである。
【0073】
整流筒14は、熱遮蔽部材12とは逆側の上端部141を含む。整流筒14は、引き上げ中のシリコン単結晶5を包囲するように、熱遮蔽部材12上に配置されている。図1及び図2に示した例では、整流筒14は、メインチャンバ2内に配置されている。
【0074】
冷却筒13は、引き上げ中のシリコン単結晶5を取り囲むように配置されている。また、冷却筒13のうちの一部131は、メインチャンバ2の天井部21からシリコン融液6に向かって延伸している。この部分131は、メインチャンバ2内に配置されており、シリコン融液6に対面する底面132を有している。また、冷却筒13は、不図示のゲートバルブ直下に位置するメインチャンバ2の天井部21から上方に延出したメインチャンバ上端部の内側に嵌合された部分133を更に含んでいる。冷却筒13は、不図示の冷却媒体循環機構によって供給される冷却媒体により、強制冷却されるものである。
【0075】
冷却補助筒15は、第1部分151と、第2部分152とを有している。冷却補助筒15の第1部分151は、図1及び図2に示すように、冷却筒13の底面132を囲繞している。より詳細には、冷却補助筒15の第1部分151は、冷却筒13の底面132を含む一部131を上下方向及び一方の側面から囲繞している。冷却補助筒15の第1部分151は、図2に示す、シリコン単結晶5の引き上げ方向に対して略垂直な方向に延伸する鍔部153を含む。
【0076】
一方、冷却補助筒15の第2部分152は、図1及び図2に示すように、メインチャンバ2内で、整流筒14の上端部141を囲繞している。より詳細には、冷却補助筒15の第2部分152は、図2に示した溝部154を含む。溝部154は、整流筒14の上端部141を収容し、それにより、整流筒14の側面142の一部を覆っている。また、冷却補助筒15の第1部分151の鍔153も、第2部分152の一部である溝部154の底部として、整流筒14の上端部141を囲繞している。
【0077】
冷却補助筒15の第1部分151(より具体的には鍔部153)と、冷却筒13の底面132との間隙は、図2に示す「d」で表される。間隙dは、1.0mm以下であることが好ましい。また、整流筒14の側面142の全面積のうち冷却補助筒15の溝部154で覆われた領域の割合は、図2に示す「a」及び「b」を用いると、「(a/b)×100」で表される。比a/bは、10%以上35%以下であることが好ましい。そして、冷却補助筒15の第2部分152の溝部154における冷却補助筒15と整流筒14の側面142との間隙は、図2に示す「c」で表される。間隙cは、5mm以上25mm以下であることが好ましい。なお、上記aは周方向の平均値である。一方、上記b~dは、全周方向にわたってほぼ一定の値であることが好ましい。そのため、比a/bは、周方向の平均値であることが好ましい。
【0078】
以上では、整流筒14の側面142に開口部がない場合を説明したが、例えば図3に示すように、整流筒14の側面142には開口部143が設けられていてもよい。
【0079】
図3に示すような側面142に開口部143を有する整流筒14を用いることで、整流筒14の開口部143から筒部11にある炉内監視用窓の方向に流れる不活性ガスの流速が上昇し、その結果として、筒部11の内部や筒部11の外側から炭素含有ガスがシリコン融液6側により逆流しにくくなる効果が得られる。
【0080】
図3に示す開口部143は、整流筒14の側面142の円周方向に等間隔で形成されている。
【0081】
開口部143は、例えば角度0°、120°及び240°の3つの軸上に設けることができる。さらに、開口部143は、開口部143上端から下端までの長さを50mm以下とし、かつ、整流筒14の側面142の全面積の15%以下の領域を開口した構造とすることが好ましい。開口部143の開口した領域の、整流筒14の側面142の全面積に対する割合は、図3に示す開口部面積eの全面積fに対する割合、すなわち比e/fに対応する。
【0082】
加えて、前記整流筒14の開口部143は、開口部上端の高さが整流筒14の全高の35%以下の高さに位置し、かつ、開口部の中心は整流筒14の下端部からの高さ30mm以上40mm以下の位置に設けた構造とすることが好ましい。
【0083】
このような側面142に開口部143を有する整流筒14を用いることで、整流筒14の開口部143から筒部11にある炉内監視用窓の方向に流れる不活性ガスの流速が上昇し、その結果として、筒部11の内部や筒部11の外側から炭素含有ガスがシリコン融液6側に更に逆流しにくくなる効果が得られる。
【0084】
次に、本発明の単結晶製造装置を用いた単結晶製造方法の例を、図1及び図2を参照しながら説明する。ただし、本発明の単結晶製造装置は、図1及び図2に示した単結晶製造装置には限定されないし、本発明の単結晶製造装置を用いた単結晶製造方法は、以下に例示するものに限定されない。
【0085】
まず、種結晶4をシリコン融液6に浸漬し、種結晶4と石英ルツボ7及び黒鉛ルツボ8とを回転軸18を中心に自転させながら種結晶4を静かに上方に引上げて棒状のシリコン単結晶5を成長させる一方、所望の直径と結晶品質を得るため融液面の高さが常に一定に保たれるように結晶の成長に合わせて石英ルツボ7及び黒鉛ルツボ8を上昇させる。石英ルツボ7及び黒鉛ルツボ8の上昇、並びに石英ルツボ7及び黒鉛ルツボ8の回転は、ルツボ軸17を用いて行うことができる。
【0086】
シリコン融液6は、石英ルツボ7内に原料シリコンを投入し、この原料シリコンをヒーター9を用いて溶融させることによって得ることができる。
【0087】
このとき使用する原料シリコンは、半導体グレードの高純度原料であることが好ましい。本発明は、冷却補助筒15の第1部分151によって冷却筒13の底面132を囲繞し且つ第2部分152によって整流筒14の上端部141を覆う構造を採用することで結晶製造プロセスに起因した炭素の汚染を低減する技術であるが、高純度の原料を使用することにより、原料からの持ち込みによる汚染量を低減でき、それにより、炭素濃度が低い単結晶をより確実に製造することができる。よって、使用する原料シリコンは半導体グレードの高純度原料であることが好ましい。
【0088】
図1及び図2に示す単結晶製造装置1の一例を用いることにより、冷却筒13に、シリコン単結晶5からの輻射熱やヒーター9等の高温部からの輻射熱を十分に伝えることができ、伝わった熱を、冷却媒体による強制冷却で除去できる。それにより、シリコン単結晶をより効率的に製造できる。
【0089】
そして、図1及び図2に示す単結晶製造装置1の一例では、冷却補助筒15の周りの、例えばシリコン融液直上のシリコン単結晶5の周りの空間や、冷却補助筒15と筒部11とで囲まれた空間の温度を低下させることができる。それにより、製造装置1内の炭素部材とシリコン融液6から蒸発するSiOとの反応を抑制でき、ひいては炭素含有ガスの発生を抑制できる。加えて、上記反応が起きて炭素含有ガスが生じても、上端部141が冷却補助筒15の第2部分152に囲繞された整流筒14により、この炭素含有ガスがシリコン融液に逆流するのを防ぐことができる。
【0090】
すなわち、図1及び図2に示す単結晶製造装置1の一例を用いれば、炭素濃度が低い単結晶を効率よく製造することができる。
【0091】
また、図1及び図2に示す単結晶製造装置1の一例において、整流筒14を、図3に示すような側面142に開口部143を有するものとすることで、先に説明したように、炭素含有ガスがシリコン融液6側に逆流するのを更に防ぐことができる。
【実施例
【0092】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0093】
各実施例及び比較例では、以下に説明する単結晶製造装置を用いて、以下の共通条件で、単結晶の製造を行なった。ルツボとして、口径81.28cm(32インチ)を用いた。このルツボに360kgの原料シリコンを入れて、これをヒーターで溶融して、シリコン融液を得た。シリコン融液に水平磁場を印加しながら、結晶直径300mmの結晶の引き上げを行った。引き上げ後の直径300mmの結晶について、各直胴位置からサンプルを切り出し、PL法を用いて炭素濃度の定量を実施した。
【0094】
(実施例1)
実施例1では、図1及び図2を参照しながら説明した単結晶製造装置1と同様の構造を有する単結晶製造装置を用いた。すなわち、実施例1では、引き上げ中のシリコン単結晶5を同芯に包囲するように、熱遮蔽部材12上に整流筒14を配置し、冷却補助筒15の下部である第2部分152によって整流筒14の上端部141を覆う構造の冷却補助筒15を用いて単結晶の製造を行った。なお、このときの整流筒14の材質は合成石英とし、冷却補助筒15の材質は、熱伝導率が金属と比較して同等以上であり、かつ輻射率が金属より高い黒鉛材を使用した。また、用いた整流筒14は、図1及び図2に示すように、側面に開口部のない(図3における比e/f=0%)、全閉構造の整流筒であった。
【0095】
図2に示す通り、整流筒上部の冷却補助筒で覆われている部分の面積と整流筒側面の全面積の比をa/b、冷却補助筒下部にある溝部の側面と整流筒側面の間隔をc、冷却補助筒と前記冷却筒の底面の間隙をdとし、実施例1では、a/b=35%、c=5mmに固定して、d=0mm(完全接触)、d=1.0mm、d=3.0mmの3水準を用意して単結晶の製造を行った。
【0096】
(比較例1)
比較例1では、図8に示すような構造を有する単結晶製造装置を用いた。すなわち、比較例1では、熱遮蔽部材12の上に整流筒を搭載せずに、冷却筒13のシリコン融液6に対面する底面132を覆う構造を有していない冷却補助筒115を用いる点で実施例1の単結晶製造装置と異なる単結晶製造装置を用いて単結晶の製造を行った。
【0097】
実施例1及び比較例1の結果を図4に示す。本発明に係る単結晶製造装置を用いた実施例1では、図8のような比較例1の製造装置を用いて製造を行った場合に比べて、いずれの固化率においても炭素濃度の低い単結晶を得ることができたことが分かる。特に、実施例1において冷却補助筒と冷却筒底面との間隙dが0mm(完全接触)の場合では、比較例1の製造装置を用いて製造を行った場合に比べて、単結晶中の炭素濃度が89%程度減少するという結果が得られた。また、図4から判るように、実施例1の冷却補助筒と冷却筒底面の間隙dが1mm以下であれば比較例1に比べて単結晶中の炭素濃度を顕著に減少できることが確認できている。このため、本発明で用いる製造装置の冷却補助筒と冷却筒底面の間隙dは1mm以下とすることが好ましい。一方で、実施例1の冷却補助筒と冷却筒の底面の間隙dを3mmとしても、比較例1の場合と比べて単結晶中の炭素濃度が77%程度減少するという結果が得られた。
【0098】
(実施例2)
実施例2では、図2のc=5mm、d=1.0mmに固定して、a/b=10%、a/b=35%の2水準のそれぞれを満たす単結晶製造装置を用意して単結晶の製作を行った。なお、実施例2でも、実施例1と同様、用いた整流筒14は、図1及び図2に示すように、側面に開口部のない(図3における比e/f=0%)、全閉構造の整流筒であった。
【0099】
(比較例2)
比較例2では、a/b=0%とした、すなわち整流筒14の上端部141が冷却補助筒15の第2部分152で囲繞されていない点以外は実施例2で用いたのと同様の単結晶製造装置を用いて単結晶の製作を行なった。
【0100】
実施例2、比較例1及び比較例2の結果を図5に示す。本発明に係る単結晶製造装置を用いた実施例2では、図8のような比較例1の製造装置を用いて製造を行った場合に比べて、いずれの固化率においても炭素濃度の低い単結晶を得ることができたことが分かる。特に、実施例2において整流筒14の上端部141の冷却補助筒で覆われている部分の面積と整流筒141の側面142の全面積の比a/bを35%とした場合、比較例1の製造装置を用いて製造を行った場合に比べて、単結晶中の炭素濃度が85%程度減少するという結果が得られた。また、図5から判るように、実施例2のa/bが10%以上であれば比較例1及び2に比べて単結晶中の炭素濃度が顕著に減少することが確認できている。このため、本発明で用いる製造装置の整流筒14の上端部141の冷却補助筒15で覆われている部分の面積と整流筒14の側面142の全面積の比の下限値は10%とすることが好ましい。一方で、a/b=0%とした比較例2では、比較例1の場合と比べて単結晶中の炭素濃度が67%程度減少するという結果が得られているが、実施例2の結果に比べると不十分であった。
【0101】
なお、実施例2とは別に、a/b=40%となるような構造の冷却補助筒15を用いて単結晶の製造を行った。a/bを35%以下とした実施例2では、a/bを40%とした場合に比べ、直径測定用のカメラのための視野が確保しやすかった。この点を踏まえると、整流筒14の上端部141の冷却補助筒15で覆われている部分の面積の整流筒14の側面142の全面積に対する比の上限を35%とすることが好ましいことが分かる。
【0102】
(実施例3)
実施例3では、a/b=35%、d=1.0mmに固定して、c=5mm、c=25mmの2水準のそれぞれを満たす単結晶製造装置を用意して単結晶の製作を行った。なお、実施例3でも、実施例1と同様、用いた整流筒14は、図1及び図2に示すように、側面に開口部のない(図3における比e/f=0%)、全閉構造の整流筒であった。
【0103】
実施例3及び比較例1の結果を図6に示す。本発明に係る単結晶製造装置を用いた実施例3では、図8のような比較例1の製造装置を用いて製造を行った場合に比べて、いずれの固化率においても炭素濃度の低い単結晶を得ることができたことが分かる。特に、実施例3において、冷却補助筒15の溝部154側面と整流筒14側面142との間隔cを5mmとした場合は、比較例1の単結晶製造装置を用いて単結晶の製造を行った場合に比べて、単結晶中の炭素濃度が85%程度減少するという結果が得られた。また、図6から判るように、実施例3のcが25mm以下であれば比較例1に比べて単結晶中の炭素濃度が減少することが確認できている。
【0104】
(実施例4)
整流筒14の側面142の開口部143の開口部面積eと整流筒14の側面142の全面積fの比をe/f(図3に示す)とし、実施例4では、a/b=35%、d=1.0mm、c=5mmに固定して、e/f=0%(全閉構造の整流筒)、e/f=9%、e/f=15%の3水準のそれぞれを満たす単結晶製造装置を用意して単結晶の製造を行った。なお、e/f=9%、e/f=15%の整流筒14は角度0°,120°,240°の3つの軸上に開口部143を設けた構造となっている。
【0105】
上記の条件に加えて、e/f=9%の整流筒14では、開口部143の上端の高さが整流筒14の全高の24%の高さに位置しており、前記開口部143は開口部143の上端から下端までの長さ30mmの領域を開口した構造とした。
【0106】
上記の条件に加えて、e/f=15%の整流筒14では、開口部143の上端の高さが整流筒14の全高の35%の高さに位置しており、前記開口部143は開口部143の上端から下端までの長さ50mmの領域を開口した構造とした。
【0107】
実施例4及び比較例1の結果を図7に示す。本発明に係る単結晶製造装置を用いた実施例4のうち、整流筒14の側面142の開口部143の開口部面積eと整流筒14側面142の全面積fとの比e/fを9%とした場合は、図8のような従来構造の製造装置を用いて単結晶の製造を行った比較例1と比べて、単結晶中の炭素濃度が93%程度減少するという結果が得られた。また、図7から判るように、実施例4のe/fが0%を超え15%以下であれば比較例1に比べて単結晶中の炭素濃度が顕著に減少することが確認できている。
【0108】
また、図7から、比e/fを9%又は15%とした場合は、e/f=0%(全閉構造の整流筒)とした場合に比べて単結晶中の炭素濃度が減少しており、整流筒14の側面142を開口したことによる効果で単結晶中の炭素濃度が更に減少することが確認できている。
【0109】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0110】
1、200…単結晶製造装置、 2…メインチャンバ、 21…天井部、 3…引き上げチャンバ、 4…種結晶、 5…シリコン単結晶、 6…シリコン融液、 7…石英ルツボ、 8…黒鉛ルツボ、 9…ヒーター、 10…断熱材、 11…筒部、12…熱遮蔽部材、 13…冷却筒、 131、133…冷却筒の一部、 132…底面、 14…整流筒、 141…上端部、 142…側面、 143…開口部、 15、115…冷却補助筒、 151…第1部分、 152…第2部分、 153…鍔部、 154…溝部、 16…ルツボサポート、 17…ルツボ軸、 18…回転軸。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8