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特許7420071熱硬化性樹脂組成物、プリプレグ、積層板、プリント配線板及び半導体パッケージ並びに熱硬化性樹脂組成物の製造方法
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  • 特許-熱硬化性樹脂組成物、プリプレグ、積層板、プリント配線板及び半導体パッケージ並びに熱硬化性樹脂組成物の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】熱硬化性樹脂組成物、プリプレグ、積層板、プリント配線板及び半導体パッケージ並びに熱硬化性樹脂組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/24 20060101AFI20240116BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20240116BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20240116BHJP
   C08K 5/3415 20060101ALI20240116BHJP
   C08L 83/08 20060101ALI20240116BHJP
   C08L 79/00 20060101ALI20240116BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20240116BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20240116BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
C08J5/24 CEZ
C08L101/00
C08K3/013
C08K5/3415
C08L83/08
C08L79/00 B
B32B15/08 U
B32B15/08 105Z
B32B27/20 Z
H05K1/03 630H
H05K1/03 610R
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020525819
(86)(22)【出願日】2019-06-21
(86)【国際出願番号】 JP2019024697
(87)【国際公開番号】W WO2019245026
(87)【国際公開日】2019-12-26
【審査請求日】2022-05-10
(31)【優先権主張番号】P 2018118119
(32)【優先日】2018-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大塚 康平
(72)【発明者】
【氏名】高根沢 伸
(72)【発明者】
【氏名】尾瀬 昌久
(72)【発明者】
【氏名】藤田 広明
(72)【発明者】
【氏名】坂本 徳彦
(72)【発明者】
【氏名】増田 寿代
(72)【発明者】
【氏名】菅野 友
【審査官】中落 臣諭
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-062422(JP,A)
【文献】特開2011-178858(JP,A)
【文献】特開2012-153752(JP,A)
【文献】特開2011-026419(JP,A)
【文献】特開2006-036916(JP,A)
【文献】特表2011-500948(JP,A)
【文献】特開2005-119929(JP,A)
【文献】特開2008-133456(JP,A)
【文献】特開2016-079368(JP,A)
【文献】特開2002-275350(JP,A)
【文献】特表2011-522912(JP,A)
【文献】特開昭63-159422(JP,A)
【文献】特開2000-080285(JP,A)
【文献】特開平04-332754(JP,A)
【文献】特開2006-036915(JP,A)
【文献】特開2015-040260(JP,A)
【文献】特開2009-283905(JP,A)
【文献】特開2018-138634(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L1/00-101/14
C08K3/00-13/08
C08J5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)無機充填材と、(c)少なくとも2個のN-置換マレイミド基を有するマレイミド化合物と(d)少なくとも1個の1級アミノ基を有するシリコーン化合物とから得られる変性イミド樹脂と、を含有してなる熱硬化性樹脂組成物を含有してなるプリプレグであって、前記(a)無機充填材の含有量が、熱硬化性樹脂組成物の樹脂成分に対して60~150体積%であり、
前記(a)無機充填材の粒子径分布のピークの極大が、0.01μm以上0.1μm未満の範囲と0.1μm以上10μm以下の範囲の両方に存在し、0.01μm以上0.1μm未満の粒子径を有する無機充填材と0.1μm以上10μm以下の粒子径を有する無機充填材がいずれもシリカであり、前記(a)無機充填材中における0.01μm以上0.1μm未満の粒子径を有する無機充填材の含有量が0.1~15質量%である、プリプレグ。
【請求項2】
さらに、(b)熱硬化性樹脂及び(e)硬化促進剤からなる群から選択される少なくとも1種を含有してなる、請求項1に記載のプリプレグ
【請求項3】
前記(b)熱硬化性樹脂が、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シアネート樹脂、イソシアネート樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、オキセタン樹脂、アミノ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アリル樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、トリアジン樹脂及びメラミン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項2に記載のプリプレグ
【請求項4】
前記(b)熱硬化性樹脂の150℃におけるICI粘度が1.0Pa・s以下である、請求項2又は3に記載のプリプレグ
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載のプリプレグを含有してなる積層板。
【請求項6】
請求項5に記載の積層板の片面又は両面に金属箔が配置された金属張り積層板。
【請求項7】
請求項6に記載の金属張り積層板に回路加工して得られる、プリント配線板。
【請求項8】
請求項7に記載のプリント配線板に半導体素子を搭載してなる半導体パッケージ。
【請求項9】
(a)無機充填材と、(c)少なくとも2個のN-置換マレイミド基を有するマレイミド化合物と(d)少なくとも1個の1級アミノ基を有するシリコーン化合物とから得られる変性イミド樹脂と、を含有してなる熱硬化性樹脂組成物を繊維基材に含浸し、加熱して半硬化することによるプリプレグの製造方法であって、
前記(a)無機充填材の含有量が、前記熱硬化性樹脂組成物の樹脂成分に対して60~150体積%であり、
(a)無機充填材として、(a1)平均粒子径0.01μm以上0.1μm未満の無機充填材と、(a2)平均粒子径0.1μm以上10μm以下の無機充填材とを配合する工程を有し、前記(a1)成分及び前記(a2)成分がいずれもシリカであり、前記(a)無機充填材中における前記(a1)成分の含有量が0.1~15質量%である、プリプレグの製造方法。
【請求項10】
前記熱硬化性樹脂組成物が、さらに、(b)熱硬化性樹脂、及び(e)硬化促進剤からなる群から選択される少なくとも1種を含有してなるものである、請求項9に記載のプリプレグの製造方法。
【請求項11】
前記(b)熱硬化性樹脂が、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シアネート樹脂、イソシアネート樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、オキセタン樹脂、アミノ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アリル樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、トリアジン樹脂及びメラミン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項10に記載のプリプレグの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化性樹脂組成物、プリプレグ、積層板、プリント配線板及び半導体パッケージ並びに熱硬化性樹脂組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電子機器の小型化及び高性能化の流れに伴い、プリント配線板では配線密度の高度化及び高集積化が進み、これに伴い、実装の高密度化及び高多層化も進展している。当該プリント配線板用の積層板には、優れた低熱膨張性等が要求される。
プリント配線板用の積層板としては、エポキシ樹脂を主剤とした樹脂組成物とガラスクロスとを含むプリプレグを硬化及び一体成形化したものが一般的である。一般的にエポキシ樹脂は、絶縁性、耐熱性、コスト等のバランスに優れるが、近年のプリント配線板の高密度実装及び高多層化構成に伴う高弾性化及び反り低減への要請に対応するには、さらなる改良が必要となる。また、エポキシ樹脂は熱膨張率が大きいため、シリカ等の無機充填材の高充填化によって低熱膨張性化を図っている(例えば、特許文献1参照)。特に近年、半導体用パッケージ基板では、小型化及び薄型化に伴い、部品実装時及びパッケージ組み立て時において、チップと基板との熱膨張係数の差及び基板の弾性率に起因した反りが大きな課題となっており、より一層の基板の低熱膨張化及び高弾性化が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平5-148343号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、低熱膨張化及び高弾性化のために無機充填材の含有量を限界近くまで高めると、圧縮成形によって積層体を製造する際に成形不良を起こし易くなる傾向があるため、通常は、そうならないように含有量を調整する傾向にある。そのため、成形性を維持しながら低熱膨張性化及び高弾性化をさらに向上させる方法が求められる。
【0005】
本発明の課題は、こうした現状に鑑み、優れた低熱膨張性、高い弾性率及び優れた成形性を有する熱硬化性樹脂組成物、これを用いたプリプレグ、積層板及びプリント配線板及び半導体パッケージ並びに前記熱硬化性樹脂組成物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定の範囲の粒子径を有する無機充填材と、それよりも小さい粒子径を有する無機充填材とを併用することによって、前記課題を解決できることを見出した。
すなわち、本発明は、下記[1]~[15]に関する。
【0007】
[1](a)無機充填材を含有してなる熱硬化性樹脂組成物であって、
前記(a)無機充填材の粒子径分布のピークの極大が、0.01μm以上0.1μm未満の範囲と0.1μm以上10μm以下の範囲の両方に存在する、熱硬化性樹脂組成物。
[2]前記(a)無機充填材の含有量が、熱硬化性樹脂組成物の樹脂成分に対して60~150体積%である、上記[1]に記載の熱硬化性樹脂組成物。
[3]前記(a)無機充填材中の0.01μm以上0.1μm未満の粒子径を有する無機充填材の含有割合が0.1~20体積%である、上記[1]又は[2]に記載の熱硬化性樹脂組成物。
[4]前記(a)無機充填材が、シリカ、アルミナ、酸化チタン、マイカ、ベリリア、チタン酸バリウム、チタン酸カリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、炭酸アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、クレー、タルク、ホウ酸アルミニウム、炭化ケイ素、石英粉末及びガラスからなる群から選択される少なくとも1種である、上記[1]~[3]のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
[5]さらに、(b)熱硬化性樹脂、(c)少なくとも2個のN-置換マレイミド基を有するマレイミド化合物、(d)少なくとも1個の1級アミノ基を有するシリコーン化合物及び(e)硬化促進剤からなる群から選択される少なくとも1種を含有してなる、上記[1]~[4]のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
[6]さらに、(b)熱硬化性樹脂、(c)少なくとも2個のN-置換マレイミド基を有するマレイミド化合物と(d)少なくとも1個の1級アミノ基を有するシリコーン化合物とから得られる変性イミド樹脂、及び(e)硬化促進剤からなる群から選択される少なくとも1種を含有してなる、上記[1]~[4]のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
[7]前記(b)熱硬化性樹脂が、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シアネート樹脂、イソシアネート樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、オキセタン樹脂、アミノ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アリル樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、トリアジン樹脂及びメラミン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種である、上記[5]又は[6]に記載の熱硬化性樹脂組成物。
[8]前記(b)熱硬化性樹脂の150℃におけるICI粘度が1.0Pa・s以下である、上記[5]~[7]のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
[9]上記[1]~[8]のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物を含有してなるプリプレグ。
[10]上記[9]に記載のプリプレグを含有してなる積層板。
[11]上記[10]に記載の積層板の片面又は両面に金属箔が配置された金属張り積層板。
[12]上記[11]に記載の金属張り積層板に回路加工して得られる、プリント配線板。
[13]上記[12]に記載のプリント配線板に半導体素子を搭載してなる半導体パッケージ。
[14]熱硬化性樹脂組成物の製造方法であって、
(a)無機充填材として、(a1)平均粒子径0.01μm以上0.1μm未満の無機充填材と、(a2)平均粒子径0.1μm以上10μm以下の無機充填材とを配合する工程を有する、熱硬化性樹脂組成物の製造方法。
[15]前記(a)無機充填材の配合量が、熱硬化性樹脂組成物の樹脂成分に対して60~150体積%である、上記[14]に記載の熱硬化性樹脂組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、優れた低熱膨張性、高い弾性率及び優れた成形性を有する熱硬化性樹脂組成物、これを用いたプリプレグ、積層板及びプリント配線板及び半導体パッケージ並びに前記熱硬化性樹脂組成物の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明で使用する(a)無機充填材の粒子径分布について説明するためのイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。また、数値範囲の下限値及び上限値は、それぞれ他の数値範囲の下限値又は上限値と任意に組み合わせられる。
さらに、本明細書において、熱硬化性樹脂組成物中の各成分の含有量は、各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、熱硬化性樹脂組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有量を意味する。
本明細書における記載事項を任意に組み合わせた態様も本発明に含まれる。
【0011】
[熱硬化性樹脂組成物]
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、(a)無機充填材[以下、(a)成分と称することがある。]を含有してなる熱硬化性樹脂組成物であって、前記(a)無機充填材の粒子径分布のピークの極大が、0.01μm以上0.1μm未満の範囲と0.1μm以上10μm以下の範囲の両方に存在する、熱硬化性樹脂組成物である。ここで、本発明において、粒子径分布は、体積基準の頻度分布である。また、粒子径分布のピークの極大とは、頻度として表した粒子径分布(体積基準)におけるピークにおいて、山になっているピークにおいて頻度が極大値となる位置のことであり、図1を用いて説明すると、極大(A1)及び極大(A2)のことである。前記粒子径分布の測定は、レーザ回折散乱法を用いた粒度分布測定装置で行なう。
熱硬化性樹脂組成物に、粒子径分布のピークの極大が0.01μm以上0.1μm未満(10nm以上100nm未満)の範囲と0.1μm以上10μm以下の範囲の両方に存在する無機充填材を含有させることによって、成形性を良好に維持しながら、より一層優れた低熱膨張性及びより一層高い弾性率が得られる。また、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、耐熱性(はんだ耐熱性)、銅箔接着性及び耐湿性にも優れる。粒子径分布のピークの極大は、0.01μm以上0.1μm未満(10nm以上100nm未満)の範囲と0.1μm以上10μm以下の範囲にそれぞれ1つ以上存在していれば前記効果が発現する。該ピークの極大は、0.01μm以上0.1μm未満(10nm以上100nm未満)の範囲に2つ以上存在していてもよいし、また、0.1μm以上10μm以下の範囲に2つ以上存在していてもよいが、それぞれの範囲に前記ピークの極大が1つずつ存在していれば十分である。前記ピークの極大は、前記それぞれの範囲において5つ以下であってもよく、3つ以下であってもよく、2つ以下であってもよく、1つであってもよい。
本発明の熱硬化性樹脂組成物が含有する(a)成分について以下に詳述する。
【0012】
<(a)無機充填材>
(a)無機充填材としては、特に制限されるものではないが、例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、マイカ、ベリリア、チタン酸バリウム、チタン酸カリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、炭酸アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、クレー、タルク、ホウ酸アルミニウム、炭化ケイ素、石英粉末、並びに、ガラス短繊維、ガラス微粉末及び中空ガラス等のガラスなどが挙げられ、これらからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。前記ガラスとしては、Eガラス、Tガラス、Dガラス等が好ましく挙げられる。(a)無機充填材は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、誘電特性、耐熱性及び低熱膨張性の観点から、シリカが好ましい。シリカとしては、例えば、湿式法で製造された含水率の高い沈降シリカと、乾式法で製造された結合水等をほとんど含まない乾式法シリカが挙げられる。乾式法シリカとしては、さらに、製造法の違いにより、破砕シリカ、フュームドシリカ、溶融球状シリカ等に分類される。これらの中でも、低熱膨張性及び樹脂に充填した際の流動性の観点から、溶融球状シリカが好ましい。
【0013】
(a)無機充填材は、カップリング剤で表面処理されたものであってもよい。カップリング剤による表面処理の方式は、配合前の(a)無機充填材に対して乾式又は湿式で表面処理する方式であってもよく、表面未処理の(a)無機充填材を、他の成分に配合して組成物とした後、該組成物にシランカップリング剤を添加する、いわゆるインテグラルブレンド処理方式であってもよい。
カップリング剤としては、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、シリコーンオリゴマー等が挙げられる。これらの中でも、シラン系カップリング剤が好ましい。該シランカップリング剤としては、例えば、エポキシシラン系カップリング剤、アミノシラン系カップリング剤、ビニルシラン系カップリング剤、フェニルシラン系カップリング剤、アルキルシラン系カップリング剤、アルケニルシラン系カップリング剤、アルキニルシラン系カップリング剤、ハロアルキルシラン系カップリング剤、シロキサン系カップリング剤、ヒドロシラン系カップリング剤、シラザン系カップリング剤、アルコキシシラン系カップリング剤、クロロシラン系カップリング剤、(メタ)アクリルシラン系カップリング剤、イソシアヌレートシラン系カップリング剤、ウレイドシラン系カップリング剤、メルカプトシラン系カップリング剤、スルフィドシラン系カップリング剤、イソシアネートシラン系カップリング剤等が挙げられる。これらの中でも、シランカップリング剤としてはアミノシラン系カップリング剤が好ましい。
【0014】
(a)無機充填材としては、前述の通り、粒子径分布のピークの極大が、0.01μm以上0.1μm未満の範囲[以下、粒子径分布範囲(a1)と称することがある。]と0.1μm以上10μm以下の範囲[以下、粒子径分布範囲(a2)と称することがある。]の両方に存在する無機充填材を含有する限り特に制限はない。当該条件は、たとえば、粒子径分布範囲(a1)に粒子径分布のピークの極大を有する無機充填材[以下、(a1)無機充填材と称することがある。]と、粒子径分布範囲(a2)に粒子径分布のピークの極大を有する無機充填材[以下、(a2)無機充填材と称することがある。]とを共に熱硬化性樹脂組成物に含有させることにより、達成される。
(a1)無機充填材及び(a2)無機充填材は、それぞれ、1種を単独で使用してもよいし、本発明の効果を損なわない限りにおいて、それぞれ、2種以上を併用してもよい。
【0015】
粒子径分布範囲(a1)は、低熱膨張性、弾性率及び成形性の観点から、好ましくは0.02μm以上0.08μm以下(20nm以上80nm以下)、より好ましくは0.02μm以上0.05μm以下(20nm以上50nm以下)、さらに好ましくは0.02μm以上0.04μm以下(20nm以上40nm以下)である。
粒子径分布範囲(a2)は、低熱膨張性、弾性率及び成形性の観点から、好ましくは0.3μm以上8μm以下、より好ましくは0.5μm以上5μm以下、さらに好ましくは0.5μm以上3μm以下、特に好ましくは0.5μm以上1.5μm以下である。
【0016】
粒子径分布において、粒子径分布範囲(a1)に存在するピークの極大[極大(A1)と称することがある。]が位置する粒子径と、粒子径分布範囲(a2)に存在するピークの極大[極大(A2)と称することがある。]が位置する粒子径とは、特に制限されるものではないが、低熱膨張性、弾性率及び成形性の観点から、0.2μm以上の差があることが好ましく、0.5μm以上の差があることがより好ましく、0.8μm以上の差があることがさらに好ましい。また、粒子径分布において、極大(A1)が位置する粒子径と、極大(A2)が位置する粒子径との差の上限値に特に制限は無いが、その差は、好ましくは5μm以下、より好ましくは3μm以下、さらに好ましくは1.5μm以下である。
なお、上記の粒子径の「差」は絶対値である。但し、該粒子径の差は、粒子径分布範囲(a1)に存在するピークの極大が2つ以上ある場合、又は粒子径分布範囲(a2)に存在するピークの極大が2つ以上ある場合は、それぞれの範囲において最も大きなピーク同士の差を指す。
【0017】
前記(a1)無機充填材の平均粒子径は、好ましくは0.01~1μm、より好ましくは0.02~0.7μm、さらに好ましくは0.04~0.5μm、特に好ましくは0.04~0.2μmである。また、前記(a2)無機充填材の平均粒子径は、好ましくは0.1~10μm、より好ましくは0.3~8μm、さらに好ましくは0.5~5μm、特に好ましくは0.5~3μm、最も好ましくは0.5~1.5μmである。
前記(a2)無機充填材の平均粒子径を0.1μm以上にすることで、熱硬化性樹脂組成物に(a2)無機充填材を高充填した際の流動性を良好に保ち易い傾向があり、前記(a2)無機充填材の平均粒子径を10μm以下にすることで、粗大粒子の混入確率を減らし、粗大粒子起因の不良の発生を抑制し易い傾向がある。さらに、前記平均粒子径を有する(a1)無機充填材を併用することで、熱硬化性樹脂組成物の流動性の向上及び無機充填材の高充填化が可能となる傾向にある。
ここで、平均粒子径とは、粒子の全体積を100%として粒子径による累積度数分布曲線を求めたとき、体積50%に相当する点の粒子径のことであり、レーザ回折散乱法を用いた粒度分布測定装置で測定する。
【0018】
本発明の熱硬化性樹脂組成物において、(a)無機充填材の含有量は、熱硬化性樹脂組成物の樹脂成分に対して、好ましくは60~150体積%、より好ましくは80~150体積%、さらに好ましくは90~130体積%、特に好ましくは100~130体積%、最も好ましくは105~130体積%である。質量単位で示すと、(a)無機充填材の含有量は、熱硬化性樹脂組成物中の樹脂成分100質量部に対して、好ましくは50~400質量部、より好ましくは100~350質量部、さらに好ましくは200~350質量部、特に好ましくは240~350質量部、最も好ましくは260~350質量部である。(a)無機充填材の含有量が前記範囲内であると、低熱膨張性、弾性率及び成形性が良好となる。
ここで、本明細書における固形分とは、水分、後述する有機溶剤等の揮発する物質以外の組成物中の成分のことをいう。該固形分は、25℃付近の室温で液状、水飴状及びワックス状のものも含み、必ずしも固体である必要性はない。なお、本明細書において、樹脂成分という場合、主に、必要に応じて含有させる(b)~(d)成分及び変性イミド樹脂、並びに必要に応じて含有させるその他の樹脂等を指し、(a)無機充填材は含まれない。
また、(a)無機充填材中の前記(a1)無機充填材の含有率[(a1)無機充填材/(a)無機充填材]は、(a)無機充填材を高充填化する観点から、好ましくは0.1~20体積%、より好ましくは0.3~15.0体積%、さらに好ましくは0.5~12.0体積%、特に好ましくは1.0~10.0体積%である。質量単位で示すと、[(a1)無機充填材/(a)無機充填材]は、好ましくは0.1~15質量%、より好ましくは0.3~10質量%、さらに好ましくは0.5~7質量%、特に好ましくは0.5~5質量%である。
当然のことながら、(a)無機充填材が前述の好ましいもの、つまりシリカ(溶融球状シリカ)であっても、上記同様の含有量が好ましい。
【0019】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、さらに(b)熱硬化性樹脂[以下、(b)成分と称することがある。]、(c)少なくとも2個のN-置換マレイミド基を有するマレイミド化合物[以下、(c)成分と称することがある。]、(d)少なくとも1個の1級アミノ基を有するシリコーン化合物[以下、(d)成分と称することがある。]及び(e)硬化促進剤[以下、(e)成分と称することがある。]からなる群から選択される少なくとも1種を含有してなる熱硬化性樹脂組成物であることが好ましい。なお、本発明では、重複を避ける観点から、(b)成分は、重複し得るその他の成分、例えば(c)成分を含まない。
(d)成分は(c)成分と併用することが好ましく、(c)成分は(e)成分と併用することが好ましい。
以下、(b)~(e)成分について順に詳述する。
【0020】
<(b)熱硬化性樹脂>
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、(b)成分を含有することにより、特に、銅等の金属配線との接着性をより向上させることができる。
(b)成分としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和イミド樹脂(但し、(c)成分を除く。)、シアネート樹脂、イソシアネート樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、オキセタン樹脂、アミノ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アリル樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、シリコーン樹脂、トリアジン樹脂、メラミン樹脂等が挙げられ、これらからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。これらの中でも、成形性及び電気絶縁性の観点、並びに金属配線との接着性を向上させる観点から、エポキシ樹脂が好ましい。
また、(b)熱硬化性樹脂としては、成形性の観点から、150℃におけるICI粘度が、好ましくは1.0Pa・s以下、より好ましくは0.5Pa・s以下、さらに好ましくは0.3Pa・s以下、特に好ましくは0.2Pa・s以下の熱硬化性樹脂を選択するのがよい。ここで、ICI粘度は、ICI粘度計として知られる高せん断速度を測定するもので、コーンプレート型粘度計で測定される粘度である。
【0021】
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格含有ノボラック型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、トリアジン骨格含有エポキシ樹脂、フルオレン骨格含有エポキシ樹脂、トリフェノールフェノールメタン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、キシリレン型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、多官能フェノール類、アントラセン等の多環芳香族類のジグリシジルエーテル化合物、これらにリン化合物を導入したリン含有エポキシ樹脂などが挙げられる。
これらの中でも、成形性の観点から、150℃におけるICI粘度が1.0Pa・s以下(より好ましくは前述のとおりである。)のエポキシ樹脂が好ましく、ナフタレン骨格含有ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂がより好ましく、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂がさらに好ましい。
【0022】
エポキシ樹脂は、市販品を使用することができる。市販品としては、例えば、ナフタレン骨格含有ノボラック型エポキシ樹脂〔日本化薬(株)製、商品名:NC-7000L、150℃におけるICI粘度:0.50~1.00Pa・s〕、ナフタレン型エポキシ樹脂〔DIC(株)製、商品名:HP-4032SS、150℃におけるICI粘度:0.1Pa・s以下〕〔DIC(株)製、商品名:EXA-7311-G4、150℃におけるICI粘度:0.05Pa・s〕〔DIC(株)製、商品名:EPICLON HP-5000L、EPICLON HP-5000、150℃におけるICI粘度:0.06Pa・s〕〔DIC(株)製、商品名:EPICLON HP-6000、150℃におけるICI粘度:0.25Pa・s〕、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂〔DIC(株)製、商品名:HP-7200L、150℃におけるICI粘度:0.03Pa・s〕〔DIC(株)製、商品名:HP-7200、150℃におけるICI粘度:0.06Pa・s〕〔日本化薬(株)製、商品名:XD-1000-2L、150℃におけるICI粘度:0.15~0.30Pa・s〕、BPS型エポキシ樹脂〔DIC(株)製、商品名:EXA-1514、150℃におけるICI粘度:0.08Pa・s〕、ビスフェノールF型エポキシ樹脂〔日鉄ケミカル&マテリアル(株)製、商品名:YSLV-70XY、150℃におけるICI粘度:0.01Pa・s〕等が挙げられる。
【0023】
本発明の熱硬化性樹脂組成物が(b)熱硬化性樹脂を含有する場合、その含有量は、耐熱性を維持しつつ、熱膨張率を低減する観点、並びに金属配線との接着性を向上させる観点から、熱硬化性樹脂組成物の樹脂成分100質量部に対して、5~50質量部が好ましく、10~40質量部がより好ましく、15~40質量部がさらに好ましい。
【0024】
<(c)少なくとも2個のN-置換マレイミド基を有するマレイミド化合物>
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、(c)成分を含有することにより、特に、耐熱性を向上させることができる。
(c)成分としては、2個のN-置換マレイミド基を有するマレイミド化合物が好ましく、下記一般式(c-1)で表される化合物がより好ましい。
【0025】
【化1】

(式中、Xc1は、下記一般式(c-2)、(c-3)、(c-4)又は(c-5)で表される基である。)
【0026】
【化2】

(式中、Rc1は、各々独立に、炭素数1~5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子である。p1は、0~4の整数である。)
【0027】
【化3】

(式中、Rc2は、各々独立に、炭素数1~5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子である。Xc2は、炭素数1~5のアルキレン基、炭素数2~5のアルキリデン基、-O-、スルフィド基、スルホニル基、カルボニルオキシ基、-C(=O)-、単結合又は下記一般式(c-3’)で表される基である。q1は、各々独立に、0~4の整数である。)
【0028】
【化4】

(式中、Rc3は、各々独立に、炭素数1~5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子である。Xc3は、炭素数1~5のアルキレン基、炭素数2~5のアルキリデン基、-O-、スルフィド基、スルホニル基、カルボニルオキシ基、-C(=O)-、又は単結合である。r1は、各々独立に、0~4の整数である。)
【0029】
【化5】

(式中、n1は、1~10の整数である。)
【0030】
【化6】

(式中、Rc4は、各々独立に、水素原子又は炭素数1~5の脂肪族炭化水素基である。u1は、1~8の整数である。)
【0031】
前記一般式(c-1)中、Xc1としては、特に制限されるものではないが、前記一般式(c-2)で表される基、前記一般式(c-3)で表される基、前記一般式(c-4)で表される基、及び前記一般式(c-5)で表される基の中でも、前記一般式(c-4)で表される基、前記一般式(c-5)で表される基であることが好ましい。
【0032】
前記一般式(c-2)中、Rc1が表す脂肪族炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基等が挙げられる。また、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
p1は、0~4の整数であり、入手容易性の観点から、好ましくは0~2の整数、より好ましくは0である。
【0033】
前記一般式(c-3)中、Rc2が表す炭素数1~5の脂肪族炭化水素基、ハロゲン原子としては、Rc1の場合と同じものが挙げられる。該脂肪族炭化水素基としては、好ましくは炭素数1~3の脂肪族炭化水素基、より好ましくはメチル基及びエチル基、さらに好ましくはエチル基である。
c2が表す炭素数1~5のアルキレン基としては、メチレン基、1,2-ジメチレン基、1,3-トリメチレン基、1,4-テトラメチレン基、1,5-ペンタメチレン基等が挙げられる。該アルキレン基としては、好ましくは炭素数1~3のアルキレン基、より好ましくはメチレン基である。
c2が表す炭素数2~5のアルキリデン基としては、エチリデン基、プロピリデン基、イソプロピリデン基、ブチリデン基、イソブチリデン基、ペンチリデン基、イソペンチリデン基等が挙げられる。これらの中でも、イソプロピリデン基が好ましい。
c2としては、上記選択肢の中でも、炭素数1~5のアルキレン基、炭素数2~5のアルキリデン基、一般式(c-3’)で表される基であることが好ましく、一般式(c-3’)で表される基であることがより好ましい。
q1は、各々独立に、0~4の整数であり、入手容易性の観点から、好ましくは0~2の整数、より好ましくは0又は2である。
【0034】
前記一般式(c-3’)中、Rc3が表す炭素数1~5の脂肪族炭化水素基、ハロゲン原子としては、Rc2の場合と同じものが挙げられる。
c3が表す炭素数1~5のアルキレン基、炭素数2~5のアルキリデン基としては、Xc2が表す炭素数1~5のアルキレン基、炭素数2~5のアルキリデン基と同じものが挙げられる。
c3としては、上記選択肢の中でも、好ましくは炭素数2~5のアルキリデン基、より好ましくはイソプロピリデン基である。
r1は、0~4の整数であり、入手容易性の観点から、好ましくは0~2の整数、より好ましくは0である。
【0035】
前記一般式(c-4)中、n1は、1~10の整数であり、入手容易性の観点から、好ましくは1~5の整数、より好ましくは1~3の整数である。
前記一般式(c-5)中、Rc4が表す炭素数1~5の脂肪族炭化水素基、ハロゲン原子としては、前記一般式(c-2)中のRc1の場合と同じものが挙げられ、好ましいものも同じである。
u1は、1~8の整数であり、好ましくは1~3の整数、より好ましくは1である。
(c)成分としては、前記Xc1が前記一般式(c-3)で表されるマレイミド化合物、前記Xc1が前記一般式(c-4)で表されるマレイミド化合物が好ましく、前記Xc1が前記一般式(c-4)で表されるマレイミド化合物がより好ましい。
【0036】
(c)成分としては、N,N’-エチレンビスマレイミド、N,N’-ヘキサメチレンビスマレイミド、N,N’-(1,3-フェニレン)ビスマレイミド、N,N’-[1,3-(2-メチルフェニレン)]ビスマレイミド、N,N’-[1,3-(4-メチルフェニレン)]ビスマレイミド、N,N’-(1,4-フェニレン)ビスマレイミド、ビス(4-マレイミドフェニル)メタン、ビス(3-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン、3,3-ジメチル-5,5-ジエチル-4,4-ジフェニルメタンビスマレイミド、ビス(4-マレイミドフェニル)エーテル、ビス(4-マレイミドフェニル)スルホン、ビス(4-マレイミドフェニル)スルフィド、ビス(4-マレイミドフェニル)ケトン、ビス(4-マレイミドシクロヘキシル)メタン、1,4-ビス(4-マレイミドフェニル)シクロヘキサン、1,4-ビス(マレイミドメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(マレイミドメチル)ベンゼン、1,3-ビス(4-マレイミドフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-マレイミドフェノキシ)ベンゼン、ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]メタン、1,1-ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル]エタン、1,1-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]エタン、1,2-ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル]エタン、1,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]エタン、2,2-ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2-ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル]-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、4,4’-ビス(3-マレイミドフェノキシ)ビフェニル、4,4’-ビス(4-マレイミドフェノキシ)ビフェニル、ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]ケトン、2,2’-ビス(4-マレイミドフェニル)ジスルフィド、ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル]スルホキシド、ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]スルホキシド、ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]エーテル、1,4-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4-ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)-3,5-ジメチル-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)-3,5-ジメチル-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4-ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)-3,5-ジメチル-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)-3,5-ジメチル-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、ポリフェニルメタンマレイミド(例えば、大和化成(株)製、商品名:BMI-2300等)などが挙げられる。(c)成分は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0037】
これらの中でも、反応率が高く、より高耐熱性化できる観点から、ビス(4-マレイミドフェニル)メタン、ビス(4-マレイミドフェニル)スルホン、3,3’-ジメチル-5,5’-ジエチル-4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、2,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、ポリフェニルメタンマレイミドが好ましく、ポリフェニルメタンマレイミドがより好ましい。また、溶剤への溶解性の点から、3,3’-ジメチル-5,5’-ジエチル-4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、ビス(4-マレイミドフェニル)メタンであってもよく、安価である点から、ビス(4-マレイミドフェニル)メタンであってもよい。
【0038】
本発明の熱硬化性樹脂組成物が(c)成分を含有する場合、その含有量は、耐熱性を維持しつつ、熱膨張率を低減する観点から、(b)成分100質量部に対して、30~1,000質量部が好ましく、50~800質量部がより好ましく、100~800質量部がさらに好ましく、100~400質量部が特に好ましく、100~200質量部が最も好ましい。
【0039】
<(d)少なくとも1個の1級アミノ基を有するシリコーン化合物>
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、(d)成分を含有することにより、特に、低吸水性及び低熱膨張性がより向上する。
(d)成分としては、特に制限されるものではないが、少なくとも2個のアミノ基を有するシリコーン化合物が好ましい。また、少なくとも一方の分子末端にアミノ基を有するシリコーン化合物が好ましく、分子両末端にアミノ基を有するシリコーン化合物がより好ましい。さらに、側鎖にアミノ基を有するシリコーン化合物であってもよく、側鎖及び少なくとも一方の分子末端にアミノ基を有するシリコーン化合物であってもよい。これらの中でも、分子両末端にアミノ基を有するシリコーン化合物が好ましく、このようなシリコーン化合物としては、下記一般式(d)で表されるアミノ変性シリコーン化合物が好ましく挙げられる。
【0040】
【化7】
【0041】
一般式(d)中、複数のRd1は、それぞれ独立にアルキル基、フェニル基又は置換フェニル基を示し、互いに同一であっても異なっていてもよい。Rd2及びRd3はそれぞれ独立に有機基を示す。nは2~50の整数を示す。
【0042】
一般式(d)中、Rd1で表されるアルキル基としては、炭素数1~5のアルキル基が好ましく、炭素数1~3のアルキル基がより好ましく、炭素数1又は2のアルキル基がさらに好ましい。Rd1の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基等が挙げられ、これらの中でも、メチル基が好ましい。
d1で表される置換フェニル基における置換基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基等が挙げられ、これらの中でも、アルキル基が好ましい。アルキル基としては、前記と同様のものが好ましく挙げられる。
d1で表される基の中でも、他の樹脂との溶解性の観点から、フェニル基又はメチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
d2又はRd3で表される有機基としては、例えば、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基、-O-又はこれらが組み合わされた連結基が挙げられる。これらの中でも、置換又は無置換のアルキレン基、置換又は無置換のアリーレン基が好ましい。前記アルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基等の炭素数1~6のアルキレン基等が挙げられ、該アルキレン基の置換基としては、例えば、炭素数6~10のアリール基等が挙げられる。前記アリーレン基としては、例えば、フェニレン基、ナフチレン基等の環形成炭素数6~12のアリーレン基が挙げられ、該アリーレン基の置換基としては、例えば、炭素数1~5のアルキル基等が挙げられる。
【0043】
(d)成分の官能基当量は、特に制限されるものではないが、好ましくは400~6,000g/eq、低熱膨張性の観点から、より好ましくは400~5,000g/eq、さらに好ましくは400~3,500g/eq、特に好ましくは800~1,500g/eq、最も好ましくは1,000~1,500g/eqである。
(d)成分は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0044】
(d)成分としては、市販品を用いることができる。市販品としては、例えば、両末端にアミノ基を有する、「KF-8010」(官能基当量:430g/eq)、「X-22-161A」(官能基当量:800g/eq)、「X-22-161B」(官能基当量:1,500g/eq)、「KF-8012」(官能基当量:2,200g/eq)、「KF-8008」(官能基当量:5,700g/eq)、「X-22-9409」(官能基当量:700g/eq)、「X-22-1660B-3」(官能基当量:2,200g/eq)(以上、信越化学工業(株)製)、「BY-16-853U」(官能基当量:460g/eq)、「BY-16-853」(官能基当量:650g/eq)、「BY-16-853B」(官能基当量:2,200g/eq)(以上、東レ・ダウコーニング(株)製);側鎖にアミノ基を有する、「KF-868」(官能基当量:8,800g/eq)、「KF-865」(官能基当量:5,000g/eq)、「KF-864」(官能基当量:3,800g/eq)、「KF-880」(官能基当量:1,800g/eq)、「KF-8004」(官能基当量:1,500g/eq)(以上、信越化学工業(株)製)が挙げられる。
市販品の中でも、低吸水率の観点から、X-22-161A、X-22-161B、KF-8012、KF-8008、X-22-1660B-3、BY-16-853Bが好ましく、低熱膨張性の点観点から、X-22-161A、X-22-161B、KF-8012が好ましい。
【0045】
(d)成分の使用量は、(c)成分100質量部に対して5~100質量部が好ましく、10~60質量部がより好ましく、10~40質量部がさらに好ましく、10~30質量部が特に好ましい。(c)成分100質量部に対して5質量部以上とすることにより、低熱膨張性がより向上する傾向にある。(c)成分100質量部に対して100質量部以下とすることにより、成形性がより向上する傾向にある。
【0046】
本発明の熱硬化性樹脂組成物が「(c)成分及び(d)成分も含有してなる」ものである場合、(c)成分及び(d)成分は、他の成分と共に混合する態様であってもよいし、他の成分と混合する前に、(c)成分と(d)成分とを予め反応(プレ反応と称する。)させておき、そうして得られる変性イミド樹脂を他の成分と共に混合する態様であってもよい。いずれの態様も、前記「熱硬化性樹脂組成物が(c)成分及び(d)成分も含有してなるもの」に含まれる。
プレ反応を行なうことにより、(c)成分と(d)成分との反応によって生じる変性イミド樹脂の分子量を制御し易くなり、低熱膨張性及び弾性率を向上させ易くなる。なお、後述する(f)モノアミン化合物を一緒にプレ反応させて変性イミド樹脂を製造してもよいし、後述する(f)モノアミン化合物を使用しなくてもよい。
前記プレ反応は、有機溶媒中で加熱保温しながら行なうことが好ましい。プレ反応の反応温度は、70~200℃が好ましく、70~150℃がより好ましく、100~130℃がさらに好ましい。プレ反応の反応時間は、0.1~10時間が好ましく、1~6時間がより好ましい。
【0047】
前記プレ反応における、(c)成分のマレイミド基数〔(c)成分の使用量(g)/(c)成分のマレイミド基の官能基当量(g/eq)〕は、(d)成分のアミノ基数〔(d)成分の使用量(g)/(d)成分のアミノ基の官能基当量(g/eq)〕の、0.1~10倍が好ましく、1~9倍がより好ましく、2~8倍がさらに好ましい。0.1倍以上、特に2倍以上であると、ゲル化が抑制されると共に耐熱性が良好となる傾向にあり、10倍以下であると、有機溶媒への溶解性及び耐熱性が良好となる傾向にある。
【0048】
前記プレ反応は、有機溶媒の存在下で実施することが好ましい。有機溶媒に特に制限はないが、例えば、エタノール、プロパノール、ブタノール、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤;トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族系溶剤;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等の窒素原子含有溶剤;ジメチルスルホキシド等の硫黄原子含有溶剤等が挙げられる。有機溶媒は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、溶解性の観点から、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メチルセロソルブが好ましく、低毒性という観点から、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルがより好ましく、揮発性が高くプリプレグの製造時に残溶剤として残りにくいことから、プロピレングリコールモノメチルエーテルがさらに好ましい。
また、プレ反応には、必要により反応触媒を使用することができる。反応触媒に特に制限はないが、例えば、トリエチルアミン、ピリジン、トリブチルアミン等のアミン類;メチルイミダゾール、フェニルイミダゾール等のイミダゾール類;トリフェニルホスフィン等のリン系触媒等が挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0049】
<(e)硬化促進剤>
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、(e)成分を含有させることによって、耐熱性、難燃性及び銅箔接着強度等がより向上する。
(e)成分としては、例えば、イミダゾール類及びその誘導体;ホスフィン類及びホスホニウム塩、第三級ホスフィンとキノン類との付加物等の有機リン系化合物;第二級アミン、第三級アミン、及び第四級アンモニウム塩などが挙げられる。(e)成分は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
(e)成分としては、耐熱性、難燃性及び銅箔接着強度等の観点からは、イミダゾール類及びその誘導体が好ましく、その中でも、200℃以下での比較的低温での硬化成形性、及びワニス又はプリプレグの経日安定性の観点から、下記一般式(1)で表される、イソシアネート樹脂との反応により得られるイミダゾール誘導体、又は、下記一般式(2)で表される、イミダゾール基がエポキシ樹脂と反応することにより得られるイミダゾール誘導体がより好ましい。
【0050】
【化8】

(一般式(1)中、Re1~Re4は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~5の脂肪族炭化水素基又はフェニル基である。Dは、炭素数1~10のアルキレン基又は炭素数6~12の芳香族炭化水素基である。)
【化9】

(一般式(2)中、Re1~Re4は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~5の脂肪族炭化水素基又はフェニル基である。Bは、単結合、炭素数1~10のアルキレン基、炭素数2~5のアルキリデン基、エーテル基又はスルホニル基である。)
【0051】
前記一般式(1)及び(2)中、Re1~Re4が表す炭素数1~5の脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基等が挙げられる。これらの中でも、メチル基、エチル基が好ましい。特に一般式(1)においては、Re1及びRe3がメチル基で、且つRe2及びRe4がエチル基であることが好ましい。
前記一般式(1)中のD及び前記一般式(2)中のBが表す炭素数1~10のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基、デカメチレン基等が挙げられる。これらの中でも、炭素数1~6のアルキレン基が好ましく、炭素数2~6のアルキレン基がより好ましく、ヘキサメチレン基がさらに好ましい。
Dが表す炭素数6~12の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニレン基、ビフェニリレン基、ナフチレン基等が挙げられる。
前記一般式(2)中のBが表す炭素数2~5のアルキリデン基としては、例えば、エチリデン基、イソプロピリデン基等が挙げられる。これらの中でも、イソプロピリデン基が好ましい。
【0052】
一般式(1)中のRe1~Re4としては、炭素数1~5の脂肪族炭化水素基が好ましく、より好ましい基は前述の通りである。
一般式(1)中のDとしては、炭素数1~10のアルキレン基が好ましく、より好ましい基は前述の通りである。
一般式(2)中のRe1~Re4としては、水素原子、フェニル基が好ましく、特にRe1及びRe3が水素原子で、且つRe2及びRe4がフェニル基であることが好ましい。
一般式(2)中のBとしては、炭素数2~5のアルキリデン基が好ましく、より好ましい基は前述の通りである。
【0053】
(e)成分としては、より具体的には、製造コストも考慮すると、下記式(3)又は(4)で表される化合物がより好ましく、下記式(3)で表される化合物がさらに好ましい。
【化10】
【0054】
熱硬化性樹脂組成物が(e)成分を含有する場合、その含有量は、前記(b)成分~(d)成分の総和100質量部に対して、0.1~10質量部が好ましく、0.1~5質量部がより好ましく、0.1~2質量部がさらに好ましい。0.1質量部以上とすることにより、優れた耐熱性、難燃性及び銅箔接着強度が得られる傾向があり、また、10質量部以下とすることにより、耐熱性、経日安定性及びプレス成形性が低下し難い傾向がある。
【0055】
<(f)モノアミン化合物>
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、さらに、(f)モノアミン化合物[以下、(f)成分と称することがある。]を含有してなるものであってもよいし、含有していなくてもよい。本発明の熱硬化性樹脂組成物は、(f)成分を含有することにより、耐熱性をより向上させることができる。
(f)成分としては、下記一般式(f)で表される化合物が好ましい。
【化11】

(式中、Rf1は、各々独立に、酸性置換基である、水酸基、カルボキシ基又はスルホン酸基であり、Rf2は、各々独立に、炭素数1~5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子である。xは1~5の整数、yは0~4の整数である。)
【0056】
前記式(f)中、Rf1が示す酸性置換基としては、溶解性及び反応性の観点から、好ましくは水酸基、カルボキシ基であり、耐熱性も考慮すると、より好ましくは水酸基である。
xは1~5の整数であり、高耐熱性、低比誘電率、高ガラス転移温度、低熱膨張性及び成形性の観点から、好ましくは1~3の整数、より好ましくは1又は2、さらに好ましくは1である。
f2が示す炭素数1~5のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基等が挙げられる。該アルキル基としては、好ましくは炭素数1~3のアルキル基である。
f2が示すハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
yは0~4の整数であり、高耐熱性、低比誘電率、高ガラス転移温度、低熱膨張性及び成形性の観点から、好ましくは0~3の整数、より好ましくは0~2の整数、さらに好ましくは0又は1、特に好ましくは0である。
なお、xが2~5の整数の場合、複数のRf1は同一であってもよいし、異なっていてもよい。また、yが2~4の整数の場合、複数のRf2は同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0057】
(f)成分としては、m-アミノフェノール、p-アミノフェノール、o-アミノフェノール、p-アミノ安息香酸、m-アミノ安息香酸、o-アミノ安息香酸、o-アミノベンゼンスルホン酸、m-アミノベンゼンスルホン酸、p-アミノベンゼンスルホン酸、3,5-ジヒドロキシアニリン、3,5-ジカルボキシアニリン等が挙げられる。これらの中でも、溶解性及び合成収率の観点から、m-アミノフェノール、p-アミノフェノール、o-アミノフェノール、p-アミノ安息香酸、m-アミノ安息香酸、3,5-ジヒドロキシアニリンが好ましく、耐熱性の観点から、m-アミノフェノール、p-アミノフェノールがより好ましく、低熱膨張性の観点から、p-アミノフェノールがさらに好ましい。
【0058】
本発明の熱硬化性樹脂組成物が(f)成分を含有する場合、その含有量は、耐熱性を維持しつつ、熱膨張率を低減する観点から、熱硬化性樹脂組成物の樹脂成分100質量部に対して、0.2~5質量部が好ましい。
【0059】
<その他の成分>
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、熱硬化性の性質を損なわない程度に、任意に公知の熱可塑性樹脂、有機充填材、難燃剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光重合開始剤、蛍光増白剤、接着性向上剤等を含有していてもよい。また、前述したように、無機充填材の表面処理に使用し得る前記シランカップリング剤をインテグラルブレンド方式で熱硬化性樹脂組成物へ添加してもよい。
【0060】
前記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリフェニレンエーテル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、キシレン樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、シリコーン樹脂、テトラフルオロエチレン樹脂等が挙げられる。
【0061】
前記有機充填材としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリフェニレンエーテル樹脂、シリコーン樹脂、テトラフルオロエチレン樹脂等からなる樹脂フィラー、コアシェル構造の樹脂フィラーなどが挙げられる。
前記難燃剤としては、例えば、芳香族リン酸エステル化合物、ホスファゼン化合物、ホスフィン酸エステル、ホスフィン酸化合物の金属塩、赤リン、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド及びその誘導体等のリン系難燃剤;スルファミン酸グアニジン、硫酸メラミン、ポリリン酸メラミン、メラミンシアヌレート等の窒素系難燃剤;臭素、塩素等を含有する含ハロゲン系難燃剤;三酸化アンチモン等の無機系難燃剤などが挙げられる。
【0062】
前記紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が挙げられる。
前記酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、ヒンダードアミン系酸化防止剤等が挙げられる。
前記光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン類、ベンジルケタール類、チオキサントン系等の光重合開始剤が挙げられる。
前記蛍光増白剤としては、例えば、スチルベン誘導体の蛍光増白剤等が挙げられる。
前記接着性向上剤としては、例えば、尿素シラン等の尿素化合物、前記カップリング剤などが挙げられる。
【0063】
(ワニス)
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、プリプレグ等の製造に用いるために、各成分が有機溶媒中に溶解又は分散されたワニスの状態としてもよい。つまり、ワニスも本発明の熱硬化性樹脂組成物に含まれる。
ワニスに用いる有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル系溶媒;テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒;トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等の窒素原子含有溶媒;ジメチルスルホキシド等の硫黄原子含有溶媒などが挙げられる。有機溶媒は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、溶解性の観点から、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテルが好ましく、低毒性である点から、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルがより好ましい。
ワニスの固形分濃度は、40~90質量%が好ましく、50~80質量%がより好ましい。ワニスの固形分濃度が前記範囲内であると、塗工性を良好に保ち、適切な樹脂組成物付着量のプリプレグを得ることができる。
【0064】
[熱硬化性樹脂組成物の製造方法]
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、特に制限されるものではないが、例えば、下記製造方法によって得ることができる。
つまり、(a)無機充填材として、(a1)平均粒子径0.01μm以上0.1μm未満の無機充填材と、(a2)平均粒子径0.1μm以上10μm以下の無機充填材とを配合する工程を有する熱硬化性樹脂組成物の製造方法によって得ることができる。
(a1)平均粒子径0.01μm以上0.1μm未満の無機充填材と、(a2)平均粒子径0.1μm以上10μm以下の無機充填材とを配合することによって、(a)無機充填材の粒子径分布のピークの極大が、0.01μm以上0.1μm未満の範囲と0.1μm以上10μm以下の範囲の両方に存在する熱硬化性樹脂組成物を得ることができ、且つ、(a)無機充填材の含有量を高めること、具体的には60~150体積%にまで高めることが可能となる。
好ましい態様の工程としては、予め(c)成分と(d)成分とをプレ反応させて変性イミド樹脂を得、該変性イミド樹脂と(a1)無機充填材と(a2)無機充填材と(b)成分と(e)成分とを配合する工程が挙げられる。但し、(a1)無機充填材と(a2)無機充填材と(b)成分と(c)成分と(d)成分と(e)成分とを配合する工程であってもよい。
熱硬化性樹脂組成物に関する詳細な説明は前述の通りである。
【0065】
[プリプレグ]
本発明のプリプレグは、本発明の熱硬化性樹脂組成物を含有してなるものであり、より詳細には、Bステージ化した熱硬化性樹脂組成物を含有するものである。
本発明のプリプレグは、例えば、本発明の熱硬化性樹脂組成物を、繊維基材に含浸し、加熱等により半硬化(Bステージ化)して製造することができる。
前記繊維基材としては、各種の電気絶縁材料用積層板に用いられている周知のものが使用できる。その材質の例としては、Eガラス、Sガラス、低誘電ガラス、Qガラス等の無機物繊維;低誘電ガラスポリイミド、ポリエステル、テトラフルオロエチレン等の有機繊維;並びにそれらの混合物などが挙げられる。特に、誘電特性が優れる基材を得る観点から、低誘電ガラス、Qガラスが好ましい。
【0066】
これらの繊維基材は、例えば、織布、不織布、ロービンク、チョップドストランドマット、サーフェシングマット等の形状を有するが、材質及び形状は、目的とする成形物の用途、性能等により選択され、必要により、単独又は2種類以上の材質及び形状を組み合わせることができる。繊維基材の厚さは、例えば、約0.03~0.5mmのものを使用することができる。これらの繊維基材は、シランカップリング剤等で表面処理したもの又は機械的に開繊処理を施したものが、耐熱性、耐湿性、加工性等の面から好適である。
【0067】
本発明のプリプレグは、例えば、繊維基材に対する熱硬化性樹脂組成物の付着量(プリプレグ中の熱硬化性樹脂組成物の含有量)が、好ましくは20~90質量%となるように、繊維基材に含浸した後、通常、100~200℃の温度で1~30分間加熱乾燥し、半硬化(Bステージ化)させて得ることができる。
【0068】
[積層板、金属張り積層板]
本発明の積層板は、本発明のプリプレグを含有してなる積層板である。
本発明の積層板は、本発明のプリプレグを積層成形することで得られる。具体的には、本発明のプリプレグ1枚について又は2~20枚重ねたものについて、その片面又は両面に銅、アルミニウム等の金属箔を配置した構成で積層成形することにより製造することができる。該製造方法により、本発明のプリプレグを用いて形成された絶縁層と、その片面又は両面に配置された金属箔と、を有する積層板が得られる。金属箔は、電気絶縁材料用途で用いるものであれば特に制限されない。なお、積層板の片面又は両面に金属箔が配置された構成の積層板を、特に、金属張り積層板と称する。
積層板及び金属張り積層板を製造する際の成形条件は、例えば、電気絶縁材料用積層板及び多層板の手法が適用でき、多段プレス、多段真空プレス、連続成形、オートクレーブ成形機等を使用し、温度100~250℃、圧力0.2~10MPa、加熱時間0.1~5時間の範囲で成形することができる。また、本発明のプリプレグと内層用配線板とを組合せ、積層成形して、積層板を製造することもできる。
【0069】
[プリント配線板]
本発明のプリント配線板は、本発明の金属張り積層板に回路加工して得られる、プリント配線板である。
回路加工方法としては、サブトラクティブ法、フルアディティブ法、セミアディティブ法(SAP:Semi Additive Process)、モディファイドセミアディティブ法(m-SAP:modified Semi Additive Process)等の公知の方法が挙げられる。また、本発明のプリプレグを介して配線加工した積層板を複数積層し、加熱プレス加工することによって一括して多層化することもできる。その後、ドリル加工又はレーザ加工によるスルーホール又はブラインドビアホールの形成と、めっき又は導電性ペーストによる層間配線の形成を経て多層プリント配線板を製造することができる。
【0070】
[半導体パッケージ]
本発明は、本発明のプリント配線板に半導体素子を搭載してなる半導体パッケージも提供する。半導体パッケージは、前記多層プリント配線板の所定の位置に半導体チップ、メモリ等の半導体素子を搭載し、封止樹脂等によって半導体素子を封止することによって製造できる。
【実施例
【0071】
次に、下記の実施例により本発明を更に詳しく説明するが、これらの実施例は本発明を制限するものではない。
なお、各例で得られた銅張積層板は、以下の方法で性能を測定及び評価した。
【0072】
(1)熱膨張率の測定
各例で製造した銅張積層板を銅エッチング液に浸漬することにより銅箔を取り除いた5mm×5mm角の評価基板を作製し、TMA試験装置(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製、TMAQ400EM)を用いて圧縮法で熱機械分析を行った。評価基板を前記装置に装着後、昇温速度10℃/分の測定条件にて連続して2回測定した。2回目の測定における30℃から100℃までの平均熱膨張率を算出し、これを熱膨張率の値とした。
【0073】
(2)曲げ弾性率の測定
各例で製造した銅張積層板を銅エッチング液に浸漬することにより銅箔を取り除いた25mm×40mm角の評価基板を作製し、曲げ弾性率試験装置((株)オリエンテック製、5トンテンシロン)を用いて、クロスヘッド速度1mm/min、スパン間距離20mmの条件で測定した。
【0074】
(3)成形性の評価
各例で製造した銅張積層板を銅エッチング液に浸漬することにより銅箔を取り除いた250mm×250mm角の評価基板の基材表面を目視で観察し、下記評価基準に従って評価した。
A:基材表面にカスレを確認できない。
C:基材表面にカスレが観察される。
【0075】
[実施例1~6、比較例1~2]
(プレ反応)
温度計、攪拌装置、及び還流冷却管付き水分定量器の付いた内容積2Lの反応容器にプロピレングリコールモノメチルエーテル(有機溶媒)を入れ、表1に記載された配合量のBMI-2300(c-1成分)とX-22-161B(d-1成分)とを入れ、115℃で4時間プレ反応させて変性イミド樹脂を製造した。該変性イミド樹脂を、(c)成分及び(d)成分の代わりに用いた。
(熱硬化性樹脂組成物(ワニス)の調製)
希釈溶剤としてメチルエチルケトンを使用し、上記で得た変性イミド樹脂と共に、表1に記載された配合量にて残りの成分[(a)成分、(b)成分及び(e)成分]を混合して2時間攪拌し、樹脂分70質量%のワニスを調製した。
次に、得られたワニスを厚さ0.1mmのSガラスクロスに含浸塗工し、110℃で3分加熱乾燥することにより、樹脂含有量47質量%のプリプレグを得た。
このプリプレグを4枚重ね、12μmの電解銅箔を上下に配置し、圧力2.5MPa、成型温度240℃、昇温速度4.0℃/分条件で60分間プレスを行って銅張積層板を得た。得られた銅張積層板を用いて、前記測定及び評価を行った。結果を表1に示す。
【0076】
表1に記載の各成分について以下に示す。
[(a)無機充填材]
a-1:溶融球状シリカ(小)(商品名:YA-050C、アドマテックス(株)製、平均粒子径:50nm、頻度分布におけるピークの極大は粒子径30nmに存在する。)
a-2:溶融球状シリカ(大)(商品名:SO-C4、アドマテックス(株)製、平均粒子径:0.9~1.2μm、頻度分布におけるピークの極大は粒子径1.0μmに存在する。)700gを、KBM-903(商品名、信越化学工業(株)製、3-アミノプロピルトリメトキシシラン)7gを加えたメチルイソブチルケトン溶液300gに攪拌しながら加え、溶融球状シリカのメチルイソブチル溶液を作製し、これをa-2成分として使用した。
なお、上記平均粒子径は、粒子の全体積を100%として粒子径による累積度数分布曲線を求めたとき、体積50%に相当する点の粒子径のことであり、レーザ回折散乱法を用いた粒度分布測定装置「UPA-UT151」(マイクロトラック・ベル(株)製)で測定した値である。
また、上記の頻度分布における極大が存在する位置は、粒子の全体積を100%として粒子径による頻度分布曲線において、山になっているピークにおいて頻度が極大値となる位置とした。当該測定は、レーザ回折散乱法を用いた粒度分布測定装置「UPA-UT151」(マイクロトラック・ベル(株)製)で行なった。
【0077】
[(b)熱硬化性樹脂]
b-1:ナフタレン骨格含有ノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬(株)製、商品名:NC-7000L)
b-2:ナフタレン型エポキシ樹脂〔DIC(株)製、商品名:EPICLON HP-6000〕
b-3:ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂〔日本化薬(株)製、商品名:XD-1000-2L〕
b-4:ナフタレン型エポキシ樹脂〔DIC(株)製、商品名:EPICLON HP-4032SS〕
【0078】
[(c)少なくとも2個のN-置換マレイミド基を有するマレイミド化合物]
c-1:ポリフェニルメタンマレイミド〔大和化成工業(株)製、商品名BMI-2300〕
【0079】
[(d)少なくとも1個の1級アミノ基を有するシリコーン化合物]
d-1:両末端アミノ変性シリコーン(信越化学工業(株)製、商品名:X-22-161B、官能基当量:1,500g/eq)
【0080】
[(e)硬化促進剤]
e-1:イソシアネートマスクイミダゾール〔下記に示す構造の、ヘキサメチレンジイソシアネート樹脂と2-エチル-4-メチルイミダゾールとの付加反応物〕
【化12】
【0081】
【表1】
【0082】
表1より、実施例では、成形性を維持しながら低熱膨張性化及び高弾性化をさらに向上させることができている。
一方、(a1)無機充填材を用いておらず、成形性を維持するために(a2)無機充填材の含有量を減らした比較例1では、熱膨張率は実施例より大きくなってしまい、且つ曲げ弾性率は実施例より低くなってしまった。また、(a1)無機充填材を用いずに(a2)無機充填材の含有量を実施例で使用した無機充填材の総量と同じにした比較例2では、無機充填材の含有量が同じであるにも関わらず、成形性が低下した。なお、比較例2では成形性が低下したため、熱膨張率及び曲げ弾性率の測定は行わなかった。比較例の結果から、優れた低熱膨張性及び高い弾性率と共に、優れた成形性を得ることは容易ではないことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、優れた低熱膨張性、高い弾性率及び優れた成形性を有することから、高密度化及び高多層化されたプリント配線板を製造することができ、大量のデータを高速で処理するコンピュータ、情報機器端末等の用いられる電子機器のプリント配線板に好適に用いられる。
図1