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特許7420084有機エレクトロルミネッセンス画像表示装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】有機エレクトロルミネッセンス画像表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/22 20060101AFI20240116BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20240116BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20240116BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20240116BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20240116BHJP
   H10K 59/10 20230101ALI20240116BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
G02B5/22
G02B5/30
B32B7/023
B32B27/18 A
C08J5/18 CES
C08J5/18 CEZ
H10K59/10
G09F9/30 365
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020569514
(86)(22)【出願日】2020-01-17
(86)【国際出願番号】 JP2020001612
(87)【国際公開番号】W WO2020158468
(87)【国際公開日】2020-08-06
【審査請求日】2022-10-07
(31)【優先権主張番号】P 2019016240
(32)【優先日】2019-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中堀 兵太
(72)【発明者】
【氏名】三浦 拓也
【審査官】小久保 州洋
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/133111(WO,A1)
【文献】特開2018-004789(JP,A)
【文献】特開2009-109721(JP,A)
【文献】特開2012-025680(JP,A)
【文献】特開2012-041333(JP,A)
【文献】特開2019-008294(JP,A)
【文献】特開2018-087262(JP,A)
【文献】国際公開第2018/143167(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/096758(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC G02B 5/22
G02B 5/30
B32B 7/023
B32B 27/18
C08J 5/18
H10K 59/10
G09F 9/30
DB名 CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学フィルムと偏光子とを含む偏光板を含む、有機エレクトロルミネッセンス画像表示装置であって、
前記光学フィルムは、樹脂層Aを含み、
前記樹脂層Aは、樹脂Aから形成され、
前記樹脂Aは、脂環式構造含有重合体を50重量%以上と、紫外線吸収剤を4.0重量%以上20重量%以下とを含み、
前記紫外線吸収剤は、セサモール構造及びベンゾトリアゾール構造を含む化合物を含み、
前記光学フィルムは、波長300nm以上410nm以下における光線透過率が10%以下であり、波長430nmにおける光線透過率が80%以上であり、波長410nm以上420nm以下における光線透過率の増加率が、4.0%/nm以上である、
有機エレクトロルミネッセンス画像表示装置。
【請求項2】
前記光学フィルムが、樹脂層B1及び樹脂層B2とを更に含み、
前記樹脂層Aの一方の面上に前記樹脂層B1が設けられており、
前記樹脂層Aの他方の面上に前記樹脂層B2が設けられており、
前記樹脂層B1は、紫外線吸収剤の含有率が3.0重量%以下である熱可塑性樹脂B1から形成され、
前記樹脂層B2は、紫外線吸収剤の含有率が3.0重量%以下である熱可塑性樹脂B2から形成されている、請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス画像表示装置。
【請求項3】
前記光学フィルムが共押出フィルムである、請求項2に記載の有機エレクトロルミネッセンス画像表示装置。
【請求項4】
前記光学フィルムの波長590nmにおける面内方向のレターデーションRe(590)が0.1nm以上である、請求項1~のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス画像表示装置。
【請求項5】
前記偏光板が、波長590nmにおける面内方向のレターデーションRe(590)が70nm以上である位相差層Cを更に含む、請求項1~のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学フィルム、偏光板、及び画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像表示装置は、外光の反射を低減するための円偏光板を備えることがある。画像表示装置は、紫外線強度の大きい屋外などの環境下で使用されうることから、偏光子を紫外線から保護するために、紫外線吸収剤を含有する光学フィルムが画像表示装置に備えられる場合がある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-187619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
画像表示装置に備えられる光学フィルムは、表示される画像の色に与える影響を低減するため、可視光領域の光の光線透過率が高いことが好ましいとされてきた。例えば、可視光領域の光の光線透過率の吸収損失が大きいと、可視光領域においてある特定の波長の光吸収が大きくなることとなり、画面を白表示状態とした際に色味のある画像となることがある。
【0005】
一方、画像表示装置の円偏光板に、λ/4板などの位相差フィルムを用いる場合、位相差フィルムの面内方向におけるレターデーションReの波長分散によっては、画像表示装置を正面方向から観察した場合の色相が、本来の色からずれることがある。例えば、位相差フィルムの面内方向におけるレターデーションReが、順波長分散性である場合、画像表示装置の反射電極などにより反射される紫~青色領域にある波長の光が、偏光子を透過して視認されることにより、画面を黒表示状態とすると、画面が、青味がかる場合がある。ここで、面内方向のレターデーションが順波長分散性を有するとは、波長450nmにおける面内方向のレターデーションRe(450)及び波長550nmにおける面内方向のレターデーションRe(550)が、下記の式を満たすことをいう。
Re(450)/Re(550)≧1
【0006】
そこで、画像表示装置を、紫外線から保護すると共に、画像表示装置を正面方向から観察した場合の色相を改善できる、光学フィルム;画像表示装置を、紫外線から保護すると共に、画像表示装置を正面方向から観察した場合の色相を改善できる、偏光板;正面方向から観察された場合の色相が改善された、画像表示装置が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題を解決するべく、鋭意検討した。その結果、波長300nm以上410nm以下における光線透過率が10%以下であり、波長430nmにおける光線透過率が80%以上であり、波長410nm以上420nm以下における光線透過率の増加率が、4.0%/nm以上である光学フィルムにより、前記課題が解決されることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下を提供する。
【0008】
[1] 樹脂層Aを含む光学フィルムであって、
前記樹脂層Aは、樹脂Aから形成され、
前記樹脂Aは、脂環式構造含有重合体を50重量%以上と、紫外線吸収剤とを含み、
前記光学フィルムは、波長300nm以上410nm以下における光線透過率が10%以下であり、波長430nmにおける光線透過率が80%以上であり、波長410nm以上420nm以下における光線透過率の増加率が、4.0%/nm以上である、
光学フィルム。
[2] 樹脂層B1及び樹脂層B2とを更に含み、
前記樹脂層Aの一方の面上に前記樹脂層B1が設けられており、
前記樹脂層Aの他方の面上に前記樹脂層B2が設けられており、
前記樹脂層B1は、紫外線吸収剤の含有率が3.0重量%以下である熱可塑性樹脂B1から形成され、
前記樹脂層B2は、紫外線吸収剤の含有率が3.0重量%以下である熱可塑性樹脂B2から形成されている、[1]に記載の光学フィルム。
[3] 共押出フィルムである、[2]に記載の光学フィルム。
[4] 前記紫外線吸収剤が、セサモール構造及びベンゾトリアゾール構造を含む化合物を含む、[1]~[3]のいずれか1項に記載の光学フィルム。
[5] 波長590nmにおける面内方向のレターデーションRe(590)が0.1nm以上である、[1]~[4]のいずれか1項に記載の光学フィルム。
[6] [1]~[5]のいずれか1項に記載の光学フィルムと、偏光子とを含む、偏光板。
[7] 波長590nmにおける面内方向のレターデーションRe(590)が70nm以上である位相差層Cを更に含む、[6]に記載の偏光板。
[8] [6]又は[7]に記載の偏光板を含む、画像表示装置。
【0009】
本開示は、以下の内容も含む。
[9] [3]に記載の光学フィルムの製造方法であって、
前記熱可塑性樹脂B1、前記樹脂A、及び前記熱可塑性樹脂B2をダイから共押出して、前記熱可塑性樹脂B1の層、前記樹脂Aの層、及び前記熱可塑性樹脂B2の層がこの順で積層された押出フィルムを得る工程を含む、光学フィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、画像表示装置を、紫外線から保護すると共に、画像表示装置を正面方向から観察した場合の色相を改善できる、光学フィルム;画像表示装置を、紫外線から保護すると共に、画像表示装置を正面方向から観察した場合の色相を改善できる、偏光板;正面方向から観察された場合の色相が改善された、画像表示装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、第2実施形態に係る光学フィルムを模式的に示す断面図である。
図2図2は、第3実施形態に係る偏光板を模式的に示す断面図である。
図3図3は、第4実施形態に係る偏光板を模式的に示す断面図である。
図4図4は、第5実施形態に係る画像表示装置を模式的に示す断面図である。
図5図5は、第6実施形態に係る画像表示装置を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について実施形態及び例示物を示して詳細に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施形態及び例示物に限定されるものではなく、本発明の請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。また、すでに説明した要素と同一の要素には同一の符号を付して、その説明を省略することがある。
【0013】
以下の説明において、画像表示装置の正面方向とは、別に断らない限り、当該画像表示装置の画面の法線方向を意味し、具体的には前記画面の極角0°且つ方位角0°の方向を指す。
【0014】
以下の説明において、画像表示装置を正面方向から観察した場合の色相を、単に「正面色相」ということがある。正面色相を改善するとは、画像表示装置を正面方向から観察した場合における青味を帯びた黒表示状態もしくは黄色味を帯びた白表示状態を、意図した本来の黒表示状態もしくは白表示状態に近づけることを意味する。
【0015】
以下の説明において、「板」とは、別に断らない限り、剛直な部材だけでなく、例えば樹脂フィルムのように可撓性を有する部材も含む。
【0016】
以下の説明において、フィルム又は層の遅相軸とは、別に断らない限り、当該フィルム又は層の面内における遅相軸を表す。
【0017】
以下の説明において、複数の層を備える部材における各層の光学軸(遅相軸、透過軸、吸収軸等)がなす角度は、別に断らない限り、前記の層を厚み方向から見たときの角度を表す。
【0018】
以下の説明において、「円偏光板」には、狭義の円偏光板だけでなく、楕円偏光板も含まれる。
【0019】
以下の説明において、「長尺」のフィルムとは、幅に対して、5倍以上の長さを有するフィルムをいい、好ましくは10倍若しくはそれ以上の長さを有し、具体的にはロール状に巻き取られて保管又は運搬される程度の長さを有するフィルムをいう。フィルムの長さの上限は、特に制限は無く、例えば、幅に対して10万倍以下としうる。
【0020】
以下の説明において、層の面内方向におけるレターデーションReは、別に断らない限り、Re=(nx-ny)×dで表される値である。また、層の厚み方向のレターデーションRthは、別に断らない限り、Rth=[{(nx+ny)/2}-nz]×dで表される値である。ここで、nxは、層の厚み方向に垂直な方向(面内方向)であって最大の屈折率を与える方向の屈折率を表す。nyは、層の前記面内方向であってnxの方向に直交する方向の屈折率を表す。nzは層の厚み方向の屈折率を表す。dは、層の厚みを表す。測定波長は、別に断らない限り、590nmである。
【0021】
以下の説明において、要素の方向が「平行」、「垂直」及び「直交」とは、別に断らない限り、本発明の効果を損ねない範囲内、例えば±3°、±2°又は±1°の範囲内での誤差を含んでいてもよい。
【0022】
[1.光学フィルム]
本発明の一実施形態に係る光学フィルムは、樹脂層Aを含む。
樹脂層Aは、樹脂Aから形成されている。樹脂層Aの材料である樹脂Aは、脂環式構造含有重合体を、樹脂Aに対して50重量%以上と、紫外線吸収剤とを含む。
また、光学フィルムは、波長300nm以上410nm以下における光線透過率が10%以下であり、波長430nmにおける光線透過率が80%以上であり、波長410nm以上420nm以下における光線透過率の増加率が、4.0%/nm以上である。
【0023】
[1.1.樹脂A]
樹脂Aは、脂環式構造含有重合体を含む。ここで、脂環式構造含有重合体とは、その重合体の構造単位が脂環式構造を有する重合体である。このような脂環式構造含有重合体を含む樹脂は、通常、透明性、寸法安定性、位相差発現性、及び低温での延伸性等の性能に優れる。
【0024】
脂環式構造含有重合体は、主鎖に脂環式構造を有する重合体、側鎖に脂環式構造を有する重合体、主鎖及び側鎖に脂環式構造を有する重合体、並びに、これらの2以上の任意の比率の混合物としうる。中でも、機械的強度及び耐熱性の観点から、主鎖に脂環式構造を有する重合体が好ましい。
【0025】
脂環式構造の例としては、飽和脂環式炭化水素(シクロアルカン)構造、及び不飽和脂環式炭化水素(シクロアルケン、シクロアルキン)構造が挙げられる。中でも、機械強度及び耐熱性の観点から、シクロアルカン構造及びシクロアルケン構造が好ましく、中でもシクロアルカン構造が特に好ましい。
【0026】
脂環式構造を構成する炭素原子数は、一つの脂環式構造あたり、好ましくは4個以上、より好ましくは5個以上であり、好ましくは30個以下、より好ましくは20個以下、特に好ましくは15個以下である。脂環式構造を構成する炭素原子数がこの範囲であると、樹脂Aの機械強度、耐熱性及び成形性が高度にバランスされる。
【0027】
脂環式構造含有重合体において、脂環式構造を有する構造単位の割合は、光学フィルムの使用目的に応じて選択しうる。脂環式構造含有重合体における脂環式構造を有する構造単位の割合は、好ましくは55重量%以上、更に好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上であり、通常100重量%以下としうる。脂環式構造含有重合体における脂環式構造を有する構造単位の割合がこの範囲にあると、樹脂Aの透明性及び耐熱性が良好となる。
【0028】
脂環式構造含有重合体の中でも、シクロオレフィン重合体が好ましい。シクロオレフィン重合体とは、シクロオレフィン単量体を重合して得られる構造を有する重合体である。シクロオレフィン単量体は、炭素原子で形成される環構造を有し、かつ該環構造中に重合性の炭素-炭素二重結合を有する化合物である。重合性の炭素-炭素二重結合の例としては、開環重合等の重合が可能な炭素-炭素二重結合が挙げられる。また、シクロオレフィン単量体の環構造の例としては、単環、多環、縮合多環、橋かけ環及びこれらを組み合わせた多環等が挙げられる。中でも、得られる重合体の誘電特性及び耐熱性等の特性を高度にバランスさせる観点から、多環のシクロオレフィン単量体が好ましい。
【0029】
上記のシクロオレフィン重合体の中でも好ましいものとしては、ノルボルネン系重合体、単環の環状オレフィン系重合体、環状共役ジエン系重合体、及び、これらの水素化物等が挙げられる。これらの中でも、ノルボルネン系重合体は、成形性が良好なため、特に好適である。
【0030】
ノルボルネン系重合体の例としては、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体及びその水素化物;ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体及びその水素化物が挙げられる。また、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体の例としては、ノルボルネン構造を有する1種類の単量体の開環単独重合体、ノルボルネン構造を有する2種類以上の単量体の開環共重合体、並びに、ノルボルネン構造を有する単量体及びこれと共重合しうる他の単量体との開環共重合体が挙げられる。さらに、ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体の例としては、ノルボルネン構造を有する1種類の単量体の付加単独重合体、ノルボルネン構造を有する2種類以上の単量体の付加共重合体、並びに、ノルボルネン構造を有する単量体及びこれと共重合しうる他の単量体との付加共重合体が挙げられる。これらの中で、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体の水素化物は、成形性、耐熱性、低吸湿性、寸法安定性、軽量性などの観点から、特に好適である。
【0031】
ノルボルネン構造を有する単量体の例としては、ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン(慣用名:ノルボルネン)、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ-3,7-ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)、7,8-ベンゾトリシクロ[4.3.0.12,5]デカ-3-エン(慣用名:メタノテトラヒドロフルオレン)、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン(慣用名:テトラシクロドデセン)、及びこれらの化合物の誘導体(例えば、環に置換基を有するもの)を挙げることができる。ここで、置換基の例としては、アルキル基、アルキレン基、及び極性基を挙げることができる。また、これらの置換基は、同一又は相異なって、複数個が環に結合していてもよい。ノルボルネン構造を有する単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0032】
極性基の例としては、ヘテロ原子、及びヘテロ原子を有する原子団が挙げられる。ヘテロ原子の例としては、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、及びハロゲン原子が挙げられる。極性基の具体例としては、カルボキシル基、カルボニルオキシカルボニル基、エポキシ基、ヒドロキシル基、オキシ基、エステル基、シラノール基、シリル基、アミノ基、アミド基、イミド基、ニトリル基、及びスルホン酸基が挙げられる。樹脂Aを構成する重合体としては、このような極性基を含むものも、極性基を含まないものも、好ましく用いうる。
【0033】
ノルボルネン構造を有する単量体と開環共重合可能な単量体の例としては、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテンなどのモノ環状オレフィン類及びその誘導体;シクロヘキサジエン、シクロヘプタジエンなどの環状共役ジエン及びその誘導体が挙げられる。ノルボルネン構造を有する単量体と開環共重合可能な単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0034】
ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体は、例えば、単量体を開環重合触媒の存在下に重合又は共重合することにより製造しうる。
【0035】
ノルボルネン構造を有する単量体と付加共重合可能な単量体の例としては、エチレン、プロピレン、1-ブテンなどの炭素原子数2~20のα-オレフィン及びこれらの誘導体;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセンなどのシクロオレフィン及びこれらの誘導体;並びに1,4-ヘキサジエン、4-メチル-1,4-ヘキサジエン、5-メチル-1,4-ヘキサジエンなどの非共役ジエンが挙げられる。これらの中でも、α-オレフィンが好ましく、エチレンがより好ましい。また、ノルボルネン構造を有する単量体と付加共重合可能な単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0036】
ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体は、例えば、単量体を付加重合触媒の存在下に重合又は共重合することにより製造しうる。
【0037】
上述した開環重合体及び付加重合体の水素添加物は、例えば、これらの開環重合体及び付加重合体の溶液において、ニッケル、パラジウム等の遷移金属を含む水素添加触媒の存在下で、炭素-炭素不飽和結合を、好ましくは90%以上水素添加することによって製造しうる。
【0038】
単環の環状オレフィン系重合体の例としては、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン等の単環を有する環状オレフィン系モノマーの付加重合体を挙げることができる。
【0039】
環状共役ジエン系重合体の例としては、1,3-ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等の共役ジエン系モノマーの付加重合体を環化反応して得られる重合体;シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン等の環状共役ジエン系モノマーの1,2-又は1,4-付加重合体;及びこれらの水素化物を挙げることができる。
【0040】
脂環式構造含有重合体及びそれを含む樹脂としては、市販の樹脂を用いうる。市販の樹脂の例としては、ゼオノア(日本ゼオン株式会社製)、アートン(JSR株式会社製)、TOPAS(ポリプラスチック社製)及びアペル(三井化学社製)が挙げられる。
【0041】
樹脂Aにおける、脂環式構造含有重合体の含有率は、通常50重量%以上であり、好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%以上であり、通常100重量%以下である。樹脂Aにおける脂環式構造含有重合体の含有率が、前記下限値以上であることにより、樹脂Aが、脂環式構造含有重合体の優れた特性を備えうる。
樹脂Aは、脂環式構造含有重合体を1種のみ含んでいても、2種以上の任意の比率の組み合わせとして含んでいてもよい。
【0042】
[1.2.紫外線吸収剤]
樹脂Aは、紫外線吸収剤を含む。紫外線吸収剤とは、光吸収スペクトルにおいて、波長250nm以上400nm以下に、1以上の吸収極大を有する剤をいう。ここで、「剤」は、1種の物質から構成されていても、2種以上の物質から構成される組成物であってもよい。紫外線吸収剤は、波長400nm以下に吸収極大を有することに加えて、波長400nmを超えた範囲に、吸収極大を有していてもよい。樹脂Aは、紫外線吸収剤を1種のみ含んでいても、2種以上の任意の比率の組み合わせとして含んでいてもよい。
【0043】
紫外線吸収剤としては、波長250nm以上波長450nm以下の光吸収スペクトルにおいて、波長400nm以下に最大極大吸収を有する剤を用いることが好ましい。これにより、光学フィルムが効果的に紫外線を吸収して、偏光子などの画像表示装置の構成要素を紫外線から保護できる。
【0044】
紫外線吸収剤の光吸収スペクトルは、紫外・可視分光計(例、島津製作所社製「UV-2450」)により、測定波長:250nm~450nm、溶媒:クロロホルム又はメタノール、濃度:10ppm、セル:光路長1cmの石英セルの条件で測定しうる。
【0045】
紫外線吸収剤としては、波長250nm以上波長450nm以下における光吸収スペクトルにおいて、最大の吸光度を示す光の波長が、350nm以上400nm以下の範囲にある紫外線吸収剤を用いることが好ましい。以下、波長250nm以上波長450nm以下における光吸収スペクトルにおいて、最大の吸光度を示す光の波長が、350nm以上400nm以下の範囲にある特定の紫外線吸収剤を、紫外線吸収剤U1という場合がある。最大の吸光度を示す光の波長が、前記範囲にある紫外線吸収剤を用いることにより、光学フィルムにおいて、波長300nm以上410nm以下の光線透過率を効果的に低く抑えることができる。その結果、画像表示装置から出射される波長300nm以上410nm以下の光量を効果的に抑えることができ、画像表示装置を正面から観察した場合の色相を効果的に改善できる。
【0046】
紫外線吸収剤U1としては、セサモール構造及びベンゾトリアゾール構造を含む化合物を含む紫外線吸収剤を用いうる。セサモール構造及びベンゾトリアゾール構造を含む化合物の例としては、下記の一般式(1)で表される化合物Iが挙げられ、化合物Iが好ましい。
【0047】
【化1】
【0048】
前記一般式(1)において、
は、水素原子、ハロゲン原子、(C1~C8)アルキル基、(C1~C8)アルキルオキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基、炭素数1~4の直鎖又は分岐のモノ置換アミノ基、炭素数1~4の直鎖又は分岐のジ置換アミノ基、ニトロ基、カルボキシ基、(C1~C8)アルキルオキシカルボニル基、ヒドロキシ(C1~C8)アルキル基、(C1~C8)アルキルカルボニルオキシ(C1~C8)アルキル基、カルボキシ(C1~C3)アルキル基、(Cx)アルキルオキシカルボニル(Cy)アルキル基、アリール基、アシル基、スルホ基又はシアノ基を表す。ここで、「アルキル」の直前にある(Cm~Cn)の記載は、該アルキルの炭素数がm個以上n個以下であることを意味し、「アルキル」の直前にある(Cm)の記載は、該アルキルの炭素数がm個であることを意味する。x及びyは、それぞれ1以上の整数であり且つx+yは2以上10以下である。
【0049】
は、好ましくは、水素原子又は(Cx)アルキルカルボニル(Cy)オキシアルキル基である。
【0050】
化合物Iの具体例としては、特許第5416171号公報に挙げられた化合物が挙げられる。化合物Iは、特許第5416171号公報に記載された方法により製造されうる。
【0051】
紫外線吸収剤におけるセサモール構造及びベンゾトリアゾール構造を含む化合物の含有率は、好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%以上、更に好ましくは90重量%以上であり、100重量%以下としうる。
【0052】
樹脂Aにおける紫外線吸収剤の含有率は、好ましくは2.0重量%以上、より好ましくは4.0重量%以上、更に好ましくは6.0重量%以上であり、好ましくは30重量%以下、より好ましくは25重量%以下、更に好ましくは20重量%以下である。樹脂Aにおける紫外線吸収剤の含有率を、前記範囲に収めることにより、紫外線吸収剤が樹脂層Aからブリードアウトすることを抑制すると共に、効果的に画像表示装置を紫外線から保護し、更に画像表示装置の正面色相を改善できる。
【0053】
[1.3.樹脂Aに含まれる任意成分]
樹脂Aは、前記の紫外線吸収剤の他に、任意の成分を含んでいてもよい。かかる任意の成分の例としては、酸化防止剤;光安定剤;ワックス;核剤;蛍光増白剤;無機充填材;着色剤;難燃剤;難燃助剤;帯電防止剤;可塑剤;近赤外線吸収剤;滑剤;フィラー;及び、脂環式構造含有重合体以外の任意の重合体;などが挙げられる。また、任意の成分として、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0054】
[1.4.光学フィルムに含まれうる任意の層]
光学フィルムは、前記樹脂層Aの他に、任意の層を含んでいてもよい。かかる任意の層としては、接着層、位相差を有する層、ハードコート層などが挙げられる。
【0055】
[1.5.光学フィルムの特性]
(波長300nm以上410nm以下における光線透過率)
光学フィルムは、波長300nm以上410nm以下における光線透過率が通常10%以下である。波長300nm以上410nm以下における光線透過率が10%以下であるとは、波長300nm以上410nm以下の範囲における光線透過率の最大値が、10%以下であることを意味する。光学フィルムの波長300nm以上410nm以下における光線透過率は、通常10%以下、好ましくは8%以下、より好ましくは5%以下であり、理想的には0%であるが、0%以上又は0.01%以上としうる。
光学フィルムの波長300nm以上410nm以下における光線透過率が、前記上限値以下であることにより、効果的に画像表示装置を紫外線から保護し、更に、画像表示装置の正面色相を改善できる。特に、有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)に含まれる有機成分は、長波長の紫外線によって特に劣化しやすい。そのため、有機EL素子に含まれる有機成分の劣化を効果的に抑制し、有機EL表示装置の寿命を延長できる。
光学フィルムの光線透過率は、紫外可視近赤外分光光度計(例、日本分光社製「V-7200」)を用いて測定できる。
【0056】
(波長430nmにおける光線透過率)
光学フィルムは、波長430nmにおける光線透過率が通常80%以上、好ましくは82%以上、より好ましくは85%以上であり、高いほど好ましいが、通常100%以下である。光学フィルムの波長430nmにおける光線透過率が前記下限値以上であることにより、画像表示装置の色味に大きな影響を与えることなく、画像表示装置の正面色相を改善できる。この効果は、特に画像表示装置に含まれる発光素子が、有機EL素子である場合に顕著である。画像表示装置に用いられる有機EL素子は、発光強度が波長430nm付近から長波長側へ急激に上昇する素子が多い。そのため、光学フィルムの波長430nmにおける光線透過率を前記下限値以上とすることによって、有機EL素子から放たれた波長430nm付近の光が光学フィルムに吸収されにくくなる。その結果、画像表示装置の色味に与える影響を小さくできる。
【0057】
(波長410nm以上420nm以下における光線透過率の増加率)
光学フィルムは、波長410nm以上420nm以下における光線透過率の増加率Rが、通常4.0%/nm以上、好ましくは4.2%/nm以上、より好ましくは4.5%/nm以上、特に好ましくは4.7%/nm以上であり、大きいことが好ましいが、7.0%/nm以下としうる。
増加率R(%/nm)は、下記式により算出される。
R(%/nm)=(T(420)-T(410))/(420-410)
前記式において、T(420)は、光学フィルムの波長420nmにおける光線透過率(%)であり、T(410)は、光学フィルムの波長410nmにおける光線透過率(%)であり、分母の単位はnmである。
【0058】
光学フィルムの増加率Rが、前記下限値以上であることにより、光学フィルムが、波長300nm以上410nm以下の光を効果的に吸収しながら、波長430nmの光を高い率で透過させうる。その結果、効果的に画像表示装置を紫外線から保護し、更に、画像表示装置の色味に大きな影響を与えることなく、画像表示装置の正面色相を改善できる。
【0059】
(光学フィルムの面内方向レターデーション)
光学フィルムの波長590nmにおける面内方向のレターデーションRe(590)は、好ましくは0.1nm以上、より好ましくは1nm以上、更に好ましくは2nm以上であり、好ましくは300nm以下、より好ましくは270nm以下、更に好ましくは250nm以下である。これにより、光学フィルムが、λ/4板などの位相差フィルムとしての機能を有しうる。
【0060】
光学フィルムの面内方向レターデーションは、順波長分散性を有することが好ましい。具体的には、Re(450)/Re(550)が、好ましくは1以上であり、より好ましくは1より大きい。
光学フィルムの面内方向レターデーションが順波長分散性を有する場合に、特に画像表示装置の正面色相を改善できる。
【0061】
[1.6.樹脂層Aの厚み]
樹脂層Aの厚みは、好ましくは3μm以上、より好ましくは5μm以上、更に好ましくは7μm以上であり、好ましくは50μm以下、より好ましくは40μm以下、更に好ましくは30μm以下である。樹脂層Aの厚みが、前記下限値以上であることにより、効果的に画像表示装置を紫外線から保護できる。更に、画像表示装置の色味に大きな影響を与えることなく、画像表示装置の正面色相を効果的に改善できる。樹脂層Aの厚みが、前記上限値以下であることにより、樹脂層Aを含む光学フィルムを薄型化できる。
【0062】
[1.7.第1実施形態の光学フィルム]
第1実施形態に係る光学フィルムは、樹脂層Aからなる光学フィルムである。樹脂層Aは、前記樹脂Aから形成されている。本実施形態の光学フィルムも、前記[1.5.光学フィルムの特性]において述べた特性を備えうる。
本実施形態の光学フィルムは、従前公知の方法により製造できる。例えば、光学フィルムは、溶融成形法又は溶液流延法により製造でき、溶融成形法が好ましい。光学フィルムは、更に延伸、トリミングなどの処理が行われてもよい。
【0063】
[1.8.第2実施形態の光学フィルム]
第2実施形態に係る光学フィルムは、樹脂層Aに、樹脂層B1及び樹脂層B2とを更に含み、樹脂層Aの一方の面上に樹脂層B1が設けられており、樹脂層Aの他方の面上に樹脂層B2が設けられている。樹脂層B1は、紫外線吸収剤の含有率が3.0重量%以下である熱可塑性樹脂B1から形成されている。樹脂層B2は、紫外線吸収剤の含有率が3.0重量%以下である熱可塑性樹脂B2から形成されている。
【0064】
図1は、第2実施形態に係る光学フィルムを模式的に示す断面図である。図1に示すように、光学フィルム100は、樹脂層Aとしての樹脂層101の一方の面101Uの上に、樹脂層101と接するように、樹脂層B1としての樹脂層102が設けられている。また、樹脂層101の他方の面102Dの上に、樹脂層101と接するように、樹脂層B2としての樹脂層103が設けられている。
【0065】
熱可塑性樹脂B1は、通常熱可塑性の重合体を含む。熱可塑性の重合体としては、特に限定がないが、脂環式構造含有重合体が好ましい。脂環式構造重合体としては、前記樹脂Aに含まれる脂環式構造重合体と同様の重合体を選択しうる。
【0066】
熱可塑性樹脂B1における脂環式構造重合体の含有率は、好ましくは97.0重量%以上であり、より好ましくは98.0重量%以上であり、更に好ましくは98.5重量%以上である。熱可塑性樹脂B1における脂環式構造重合体の含有率が、前記下限値以上であることにより、熱可塑性樹脂B1が脂環式構造含有重合体の優れた特性を備えうる。
【0067】
熱可塑性樹脂B1は、紫外線吸収剤の含有率が、通常3.0重量%以下であり、好ましくは2.0重量%以下であり、より好ましくは1.5重量%以下であり、更に好ましくは1.0重量%以下であり、特に好ましくは、実質的に0重量%であり、最も好ましくは紫外線吸収剤を含まない。熱可塑性樹脂B1の紫外線吸収剤の含有率が、前記上限値以下であることにより、光学フィルムの表面に紫外線吸収剤がブリードアウトすることを抑制しうる。
【0068】
熱可塑性樹脂B1は、前記の重合体の他に、任意成分を含みうる。任意成分としては、樹脂Aが含みうる任意成分と同様の成分を用いうる。
【0069】
熱可塑性樹脂B2は、通常熱可塑性の重合体を含む。熱可塑性の重合体としては、特に限定がないが、脂環式構造含有重合体が好ましい。脂環式構造重合体としては、前記樹脂Aに含まれる脂環式構造重合体と同様の重合体を選択しうる。
【0070】
熱可塑性樹脂B2における脂環式構造重合体の含有率は、好ましくは97.0重量%以上であり、より好ましくは98.0重量%以上であり、更に好ましくは98.5重量%以上である。熱可塑性樹脂B2における脂環式構造重合体の含有率が、前記下限値以上であることにより、熱可塑性樹脂B2が脂環式構造含有重合体の優れた特性を備えうる。
【0071】
熱可塑性樹脂B2は、紫外線吸収剤の含有率が、通常3.0重量%以下であり、好ましくは2.0重量%以下であり、より好ましくは1.5重量%以下であり、更に好ましくは1.0重量%以下であり、特に好ましくは、実質的に0重量%であり、最も好ましくは紫外線吸収剤を含まない。熱可塑性樹脂B2の紫外線吸収剤の含有率が、前記上限値以下であることにより、光学フィルムの表面に紫外線吸収剤がブリードアウトすることを抑制しうる。
【0072】
熱可塑性樹脂B2は、前記の重合体の他に、任意成分を含みうる。任意成分としては、樹脂Aが含みうる任意成分と同様の成分を用いうる。
【0073】
熱可塑性樹脂B1と熱可塑性樹脂B2とは、含まれる重合体、成分比、物性などが異なる、互いに異種の樹脂であってよい。しかし、光学フィルムのカールを抑制する観点及び光学フィルムの製造を容易にする観点から、熱可塑性樹脂B1と熱可塑性樹脂B2とは、同一の樹脂であることが好ましい。
【0074】
樹脂層B1の厚みは、好ましくは1μm以上、より好ましくは2μm以上であり、好ましくは15μm以下、より好ましくは10μm以下である。
【0075】
樹脂層B2の厚みの範囲は、樹脂層B1の厚みの範囲と同様としうる。光学フィルムのカールを抑制する観点から、樹脂層B1と樹脂層B2とは、互いに同一の厚みを有することが好ましい。
【0076】
樹脂層B1と樹脂層B2との総厚みの、樹脂層A1の厚みに対する割合((B1+B2)/A1)は、好ましくは1/25以上、より好ましくは1/10以上、更に好ましくは1/5以上であり、好ましくは10/1以下、より好ましくは6/1以下、更に好ましくは4/1以下である。
【0077】
本実施形態の光学フィルムも、前記[1.5.光学フィルムの特性]において述べた特性を備えうる。
【0078】
本実施形態の光学フィルムは、従前公知の製造方法により製造できる。例えば、本実施形態の光学フィルムは、溶融成形法又は溶液流延法により製造できる。
本実施形態の光学フィルムは、溶融成形法で製造されることが好ましく、共押出法で製造されることがより好ましい。共押出法としては、例えば、共押出Tダイ法、共押出インフレーション法、共押出ラミネーション法等が挙げられる。中でも、共押出Tダイ法が好ましい。
【0079】
共押出Tダイ法による光学フィルムの製造方法を以下に説明する。
熱可塑性樹脂B1、樹脂A、及び熱可塑性樹脂B2を溶融し、それぞれをTダイに供給し、共押出する。共押出により、熱可塑性樹脂B1の層、樹脂Aの層、及び熱可塑性樹脂B2の層がこの順で積層された押出フィルムが得られる。押出フィルムを通常冷却ロール上で冷却して、次いで巻き取りロールに巻き取ることにより、長尺の光学フィルムが得られる。
【0080】
前記共押出法により得られた光学フィルムに対して、必要に応じて更に延伸、トリミングなど処理が行われてもよい。
【0081】
[1.9.光学フィルムの用途]
光学フィルムは、偏光板保護フィルム、λ/4板などの、偏光板の要素として好適に用いられうる。光学フィルムを含む偏光板は、液晶表示装置、有機EL表示装置などの画像表示装置に組み込む偏光板として、好適に用いられうる。
【0082】
[2.偏光板]
本発明の一実施形態に係る偏光板は、前記開示された光学フィルムと、偏光子とを含む。
【0083】
[2.1.偏光子]
偏光子としては、例えば、ポリビニルアルコール、部分ホルマール化ポリビニルアルコール等の適切なビニルアルコール系重合体のフィルムに、ヨウ素及び二色性染料等の二色性物質による染色処理、延伸処理、架橋処理等の適切な処理を適切な順序及び方式で施したフィルムが挙げられる。また、偏光子の他の例としては、グリッド偏光子、多層偏光子、コレステリック液晶偏光子などの、偏光を反射光と透過光に分離する機能を有する偏光子が挙げられる。中でも、ポリビニルアルコールを含むポリビニルアルコール樹脂フィルムからなる偏光子が好ましい。このような偏光子は、自然光を入射させると直線偏光を透過させうるものであり、特に、光透過率及び偏光度に優れるものが好ましい。偏光子の厚さは、5μm~80μmが一般的であるが、これに限定されない。
【0084】
[2.2.光学フィルム]
偏光板に含まれる光学フィルムは、[1.光学フィルム]において説明した光学フィルムと同様である。
光学フィルムは、波長590nmにおける面内方向のレターデーションRe(590)が、0.1nm以上であるフィルムであってもよいし、Re(590)が300nm以下であるフィルムであってもよい。
例えば、光学フィルムとして、λ/4板として機能するフィルムを選択することにより、偏光板を円偏光板として機能させうる。
偏光子は、光学フィルムの一の側及び他の側の、どちら側に設けられていてもよい。例えば、光学フィルムが、第2実施形態に係る光学フィルムのように、樹脂層Aの他に樹脂層B1及び樹脂層B2を更に備える場合、光学フィルムは、偏光子、樹脂層B1、樹脂層A、及び樹脂層B2をこの順で備えていてもよいし、偏光子、樹脂層B2、樹脂層A、及び樹脂層B1をこの順で備えていてもよい。
【0085】
[2.3.第3実施形態の偏光板]
第3実施形態に係る偏光板では、偏光子の一方の面上に、光学フィルムが設けられている。図2は、第3実施形態に係る偏光板を模式的に示す断面図である。図2に示すとおり、偏光板210は、光学フィルム211と、偏光子214とを含む。偏光子214の一方の面214U上に、偏光子214に接するように、光学フィルム211が設けられている。
【0086】
光学フィルム211は、λ/4板として機能するフィルムであることが好ましい。
光学フィルム211が、λ/4板として機能するフィルムである場合、光学フィルム211の遅相軸と、偏光子の透過軸とのなす角度は、45°又はそれに近い角度であることが好ましく、具体的には、好ましくは45°±5°、より好ましくは45°±3°、更に好ましくは45°±1°である。これにより、偏光板が円偏光板として機能しうる。
【0087】
別の実施形態では、偏光子と光学フィルムとの間に、接着層などの他の層が設けられていてもよい。
また別の実施形態では、偏光子と光学フィルムとの間に、λ/2板などの、位相差を有する層が設けられていてもよい。
【0088】
[2.4.第4実施形態の偏光板]
第4実施形態に係る偏光板は、光学フィルムと、偏光子と、更に位相差層Cとを含む。位相差層Cは、波長590nmにおける面内方向のレターデーションRe(590)が、通常70nm以上、好ましくは80nm以上、より好ましくは90nm以上であり、好ましくは300nm以下である。位相差層Cは、例えば、λ/4板としての機能を有する層又はλ/2板としての機能を有する層であってもよい。
【0089】
図3は、第4実施形態に係る偏光板を模式的に示す断面図である。図3に示すとおり、偏光板220は、光学フィルム221と、偏光子224と、位相差層Cとしての位相差層225とを含む。偏光子224の一方の面224U上に、偏光子224に接するように光学フィルム221が設けられている。偏光子224の他方の面224D上に、偏光子224に接するように位相差層225が設けられている。
【0090】
光学フィルム221は、波長590nmにおける面内方向のレターデーションRe(590)が、0nm又はそれに近い値であることが好ましく、具体的には、好ましくは10nm未満、より好ましくは5nm以下である。これにより、偏光子224を通過した直線偏光の偏光状態が変化することを抑制できる。
【0091】
別の実施形態では、偏光子と光学フィルムとの間に、接着層などの他の層が設けられていてもよい。また別の実施形態では、偏光子と位相差層との間に、接着層などの他の層が設けられていてもよい。
【0092】
[3.画像表示装置]
本発明の一実施形態に係る画像表示装置は、前記開示された偏光板と、画像表示装置とを含む。画像表示装置としては、任意の方式の画像表示装置を用いうる。画像表示装置の例としては、液晶セルを備える液晶表示装置及び有機EL素子を備える有機EL表示装置が挙げられる。以下、画像表示装置の好ましい実施形態について説明する。
【0093】
[3.1.第5実施形態の画像表示装置]
第5実施形態の画像表示装置は、光学フィルムと、偏光子と、画像表示素子とを含む。図4は、第5実施形態に係る画像表示装置を模式的に示す断面図である。本実施形態に係る画像表示装置310は、偏光子214、光学フィルム211、及び画像表示素子316をこの順で含む。光学フィルム211は、前記のように、λ/4板としての機能を有することが好ましい。これにより、偏光子214及び光学フィルム211を備える偏光板210が、外光の反射を抑制することができる。
【0094】
画像表示装置310は、偏光子214を透過した紫外線の少なくとも一部を、光学フィルム211が吸収することにより、画像表示素子316に到達する紫外線の量を低減できる。そのため、画像表示装置310の寿命を延長することができる。
【0095】
また、画像表示装置310に含まれる光学フィルム211は、画像表示素子316により反射された光のうち、波長300nm以上410nm以下の光を効果的に吸収する。その結果、波長300nm以上410nm以下の光が、偏光子214から外部へ透過して視認されることを抑制することにより、画像表示装置310の正面色相を改善できる。また、光学フィルム211は、波長430nmの光を高い率で透過させうる。その結果、画像表示装置310の色味に大きな影響を与えることなく、画像表示装置の正面色相を改善できる。
【0096】
[3.2.第6実施形態の画像表示装置]
第6実施形態の画像表示装置は、光学フィルムと、偏光子と、位相差層Cと、画像表示素子とを含む。図5は、第6実施形態に係る画像表示装置を模式的に示す断面図である。図5に示すとおり、本実施形態に係る画像表示装置320は、光学フィルム221、偏光子224、位相差層Cとしての位相差層225、及び画像表示素子326をこの順で含む。画像表示装置320が備える光学フィルム221は、外部からの紫外線の少なくとも一部を吸収する。これにより、偏光子224に到達する紫外線を低減して偏光子224を紫外線から保護できる。また、光学フィルム221は、画像表示素子326で反射された光のうち、波長300nm以上410nm以下の光を効果的に吸収する。その結果、波長300nm以上410nm以下の光が、位相差層225を透過しさらに偏光子224を透過して視認されることを抑制することにより、画像表示装置320の正面色相を改善できる。更に、光学フィルム221は、波長430nmの光を高い率で透過させうる。その結果、画像表示装置320の色味に大きな影響を与えることなく、画像表示装置の正面色相を改善できる。
【実施例
【0097】
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施例に限定されるものではなく、本発明の請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
【0098】
以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、別に断らない限り、重量基準である。また、以下に説明する操作は、別に断らない限り、常温及び常圧の条件において行った。
【0099】
[評価方法]
(紫外線吸収剤の最大吸収波長)
紫外線吸収剤について、波長250nm以上波長450nm以下における光吸収スペクトルを、下記条件で測定した。
・装置:紫外可視分光光度計(島津製作所社製「UV-2450」)
・溶媒:クロロホルム
・濃度:10ppm
・セル:1cm石英
得られた光吸収スペクトルから、最大吸収波長を読み取った。
【0100】
(ガラス転移温度)
樹脂のガラス転移温度を、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定した。昇温速度は、10℃/分とした。
【0101】
(フィルムの光線透過率)
波長300nm~450nmにおける光学フィルムの光線透過率を、紫外可視近赤外分光光度計(日本分光社製「V-7200」)を用いて測定した。測定の際のデータ取り込み間隔は、1nmとした。
【0102】
得られたスペクトルから、波長300nm以上410nm以下における最大光線透過率(%)、波長430nmにおける光線透過率を読み取った。
【0103】
波長410nm以上420nm以下における光線透過率の増加率Rを、波長420nmにおける光線透過率T(420)(%)及び波長410nmにおける光線透過率(%)T(410)から、下記の式より算出した。
R(%/nm)=(T(420)-T(410))/(420-410)
【0104】
(樹脂層Aの厚み)
実施例1~3、比較例1~3においては、フィルムの厚みを、接触式膜厚計により測定し、樹脂層Aの厚みとした。
実施例4~8、比較例4においては、フィルムを厚み方向に切断し、断面を光学顕微鏡により観察することにより樹脂層Aの厚みを測定した。
【0105】
(フィルムの面内レターデーションRe(590)の測定方法)
フィルムの波長590nmにおける面内レターデーションRe(590)は、測定波長590nmで、AXOMETRICS社製「AxoScan」により測定した。
【0106】
(耐光性試験)
実施例1~8、比較例1~4の光学フィルムを用いて、紫外線の照射による耐光性試験を行った。照射は、スーパーキセノンウェザーメーター(SX75:スガ試験機社製)を用いて、72W/m、ブラックパネル温度63℃、湿度50%RHの条件で行った。照射300時間後に光学フィルムを取り出し、波長410nmにおける吸光度の保持率を下記式に従って求めた。
保持率(%)=(A/A)×100
ここで、Aは耐光性試験前の光学フィルムの波長410nmにおける吸光度であり、Aは耐光性試験後の光学フィルムの波長410nmにおける吸光度であり、A及びAは、前記の紫外可視近赤外分光光度計(日本分光社製「V-7200」)を用いて測定した。
得られた吸光度の保持率の値から、耐光性を下記の基準で判定した。
A:吸光度の保持率が80%以上。
B:吸光度の保持率が80%未満。
【0107】
(色相表示性能)
色相表示性能の評価は、下記のとおりに行った。
市販の有機EL画像表示装置(Galaxy-S、Samsung社製)の視認側に評価対象の光学フィルムを貼り合わせた。
有機EL画像表示装置を白表示状態にし、視野角測定評価装置(Autronic-MELCHERS社製「ErgoScope」)を用いて、表示面の正面方向から色相を観察した。下記基準により色相表示性能を評価した。
A:全体的に均一であり色相の変化は見られなかった。
B:全体的にほぼ均一であり色相の変化はほぼ見られなかった。
C:画像上に色相の変化が見られた。
【0108】
[製造例1 化合物(a1):6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)ベンゾ[1,3]ジオキソール-5-オールの合成]
【0109】
【化2】
【0110】
200mlの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌装置を取り付け、オルトニトロアニリン15.2g(0.110モル)、62.5%硫酸25.4g(0.162モル)を入れて溶解させ、撹拌させながら85mlの水を加えた。これに36%亜硝酸ナトリウム水溶液21.7g(0.113モル)を3~7℃で滴下し、同温度で2時間撹拌してジアゾニウム塩水溶液を147g得た。500mlの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌装置を取り付け、メタノール120ml、水酸化ナトリウム4.6g(0.115モル)、炭酸ナトリウム6.2g(0.058モル)、セサモール15.2g(0.110モル)を入れて混合し、ジアゾニウム塩水溶液を3~7℃で滴下し、同温度で4時間撹拌した。62.5%硫酸でpH4に調整し、生成した沈殿物をろ過、水洗、乾燥し、赤色結晶を40.3g得た。この40.3gをイソプロピルアルコール水溶液でリパルプ洗浄し、6-(2-ニトロフェニルアゾ)ベンゾ[1,3]ジオキソール-5-オールを22.0g、赤色結晶として得た。
【0111】
300mlの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌装置を取り付け、この赤色結晶22.0g(0.077モル)、イソプロピルアルコール100ml、水50ml、水酸化ナトリウム3.7g(0.093モル)、ハイドロキノン0.2g、60%ヒドラジン水和物3.6g(0.043モル)を入れて50~55℃で1時間撹拌し、62.5%硫酸でpH7に調整し、生成した沈殿物をろ過、水洗、乾燥し、6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)ベンゾ[1,3]ジオキソール-5-オール-N-オキシドを18.4g得た。
【0112】
1000mlの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌装置を取り付け、N-オキシド体18.4g(0.068モル)、トルエン360ml、水120ml、亜鉛末8.9g(0.136モル)を入れて混合し、62.5%硫酸31.9g(0.203モル)を70~75℃を保って1時間で滴下し、同温度で1時間撹拌した。静置して下層部の水層を分離して除去し、温水100mlで洗浄し、活性炭0.6gを加え、還流撹拌して脱色させた。熱時ろ過し、ろ液からトルエン180mlを回収した後に5℃まで冷却し、析出する結晶をろ過し、トルエン30mlで洗浄した後、60℃で乾燥し、黄色結晶(融点 195℃)である化合物(a1)を9.9g得た。化合物(a1)のオルトニトロアニリンからの収率は35%であった。
【0113】
また、化合物(a1)の紫外~可視吸収スペクトルを測定したところ、最大吸収波長は367nmであり、波長367nmにおける吸光度は20900であった。
【0114】
[製造例2 化合物(a2):6-(5-メチルカルボニルオキシエチル-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)ベンゾ[1,3]ジオキソール-5-オールの合成]
【0115】
【化3】
【0116】
200mlの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌装置を取り付け、6-(5-ヒドロキシエチル-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)ベンゾ[1,3]ジオキソール-5-オール2.0g(0.0067モル)、トルエン50ml、酢酸1.6g(0.0266モル)、メタンスルホン酸0.1g(0.0010モル)を入れて、110~115℃で4時間還流脱水した。温水50mlで3回洗浄し、活性炭0.1gを加え、還流撹拌して脱色させた。熱時にろ過し、析出した結晶をろ過し、トルエン10mlで洗浄した後、60℃で乾燥し、化合物(a2)を2.2g得た。6-(5-ヒドロキシエチル-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)ベンゾ[1,3]ジオキソール-5-オールからの収率は96%であった。
【0117】
また、化合物(a2)の紫外~可視吸収スペクトルを測定したところ、最大吸収波長は368nmであり、波長368nmにおける吸光度は22500であった。
【0118】
[実施例1]
(樹脂Aの製造)
脂環式構造含有重合体としてのシクロオレフィン重合体を99重量%以上含む、シクロオレフィン樹脂C1(日本ゼオン社製「ゼオノア」、ガラス転移温度Tg=126℃)を乾燥した。乾燥させたシクロオレフィン樹脂C1を92部と、前記製造例1において製造された、紫外線吸収剤としての化合物(a1)(セサモール構造及びベンゾトリアゾール構造を含む化合物であって、前記式(1)において、Rが水素原子である化合物)8部とを、二軸押出機を用いて混合して、樹脂A1を得た。
【0119】
(フィルムの製造)
ギアポンプ及びフィルタを備えた単軸押出機を用意した。この単軸押出機に、樹脂A1を投入し、溶融させた。溶融した樹脂A1を、ギアポンプ次いでフィルタを通過させ、Tダイから押し出して、冷却ロールを通過させて厚み20μmの光学フィルムを得た。得られた光学フィルムを前記方法により評価した。
【0120】
[実施例2]
樹脂Aの製造において下記事項を変更した以外は、実施例1と同様にして、厚み20μmの光学フィルムを得て、これを評価した。
・シクロオレフィン樹脂C1の量を94部に変更した。
・化合物(a1)8部の代わりに、前記製造例2において製造された、紫外線吸収剤としての化合物(a2)(セサモール構造及びベンゾトリアゾール構造を含む化合物であって、前記式(1)において、Rがメチルカルボニルオキシエチル基である化合物)を6部用いた。
【0121】
[実施例3]
樹脂Aの製造において下記事項を変更し、フィルムの製造条件を調整した以外は、実施例1と同様にして、厚み15μmの光学フィルムを得て、これを評価した。
・シクロオレフィン樹脂C1を92部の代わりに、脂環式構造含有重合体としてのシクロオレフィン重合体を99重量%以上含む、シクロオレフィン樹脂C2(JSR社製「アートン」)を93部用いた。
・化合物(a1)の量を7部に変更した。
【0122】
[実施例4]
熱可塑性樹脂B1及び熱可塑性樹脂B2として、前記シクロオレフィン樹脂C1を用意した。樹脂Aとして、前記樹脂A1を用意した。ギアポンプ及びフィルタを備えた単軸押出機を3台用意した。3台の単軸押出機に、前記樹脂C1、樹脂A1、及び樹脂C1をそれぞれ投入し、溶融させ、ギアポンプ次いでフィルタを通過させた。次いで、溶融した前記樹脂C1、樹脂A1、及び樹脂C1を、三層の流路を有するTダイより共押出して、冷却ロールを通過させ、(樹脂C1の層/樹脂A1の層/樹脂C1の層)の層構成を有する厚み34μmの光学フィルムを得て、これを評価した。樹脂A1の層の厚みは、20μmであった。
【0123】
[実施例5]
熱可塑性樹脂B1及び熱可塑性樹脂B2として、乾燥させたシクロオレフィン樹脂C1を98.5部と、前記製造例1において製造された、紫外線吸収剤としての化合物(a1)(前記式(1)において、Rが水素原子である化合物)1.5部とを、二軸押出機を用いて混合して得た樹脂を用意した。樹脂Aとして、前記樹脂A1の製造方法において下記事項を変更した樹脂A2を用意した。
・シクロオレフィン樹脂C1の量を93部に変更した。
・化合物(a1)の量を7部に変更した。
これらの樹脂を用いて、フィルムの製造条件を調整した以外は、実施例4と同様にして厚み34μmの光学フィルムを得て、これを評価した。樹脂A2の層の厚みは、20μmであった。
【0124】
[実施例6]
樹脂Aとして、下記事項を変更した以外は前記樹脂A1の製造と同様にして樹脂A3を製造した。
・シクロオレフィン樹脂C1の量を95部に変更した。
・化合物(a1)の量を5部に変更した。
樹脂A1の代わりに樹脂A3を用い、フィルムの製造条件を調整した以外は、実施例4と同様にして、厚み90μmの光学フィルムを得て、次いでこの光学フィルムを、二軸延伸装置(東洋精機製作所社製EX10-B)を用いて延伸し、厚み58μmの光学フィルムを得て、これを評価した。樹脂A3の層の厚みは、30μmであった。
【0125】
[実施例7]
樹脂Aとして、下記事項を変更した以外は前記樹脂A1の製造と同様にして樹脂A4を製造した。
・シクロオレフィン樹脂C1の量を89部に変更した。
・化合物(a1)の量を11部に変更した。
樹脂A1の代わりに樹脂A4を用い、フィルムの製造条件を調整した以外は、実施例4と同様にして、厚み35μmの光学フィルムを得て、次いでこの光学フィルムを、二軸延伸装置(東洋精機製作所社製EX10-B)を用いて延伸し、厚み24μmの光学フィルムを得て、これを評価した。樹脂A4の層の厚みは、10μmであった。
【0126】
[実施例8]
フィルムの製造条件を調整した以外は、実施例4と同様にして、厚み40μmの光学フィルムを得て、次いでこの光学フィルムを、二軸延伸装置(東洋精機製作所社製EX10-B)を用いて延伸し、厚み27μmの光学フィルムを得て、これを評価した。樹脂A1の層の厚みは、13μmであった。
【0127】
[比較例1]
樹脂Aの製造において下記事項を変更し、フィルムの製造条件を調整した以外は、実施例1と同様にして、厚み20μmの光学フィルムを得て、これを評価した。
・シクロオレフィン樹脂C1の代わりに、ポリエチレンテレフタレート(ユニチカ社製「SA-8339P」)を用いた。
・化合物(a1)の代わりに、トリアジン系紫外線吸収剤(ADEKA社製「アデカスタブ(登録商標) LA-F70」)を用いた。
【0128】
[比較例2]
樹脂Aの製造において下記事項を変更した以外は、実施例1と同様にして、厚み20μmの光学フィルムを得て、これを評価した。
・シクロオレフィン樹脂C1を92部の代わりに、ポリエチレンテレフタレート(ユニチカ社製「SA-8339P」)90.5部を用いた。
・化合物(a1)8部の代わりに、トリアジン系紫外線吸収剤(ADEKA社製「アデカスタブ(登録商標) LA-F70」)8部及びインドール系化合物(オリエント化学工業株式会社製「BONASORB(登録商標) UA-3911」)1.5部を、用いた。
【0129】
[比較例3]
樹脂Aの製造において下記事項を変更し、フィルムの製造条件を調整した以外は、実施例1と同様にして、厚み20μmの光学フィルムを得て、これを評価した。
・シクロオレフィン樹脂C1の量を98.5部に変更した。
・化合物(a1)8部の代わりに、インドール系化合物(オリエント化学工業株式会社製「BONASORB(登録商標) UA-3911」)1.5部を用いた。
【0130】
[比較例4]
樹脂Aとして、下記事項を変更した以外は前記樹脂A1の製造と同様にして樹脂A5を製造した。
・シクロオレフィン樹脂C1の量を98.5部に変更した。
・化合物(a1)8部の代わりに、インドール系化合物(オリエント化学工業株式会社製「BONASORB(登録商標) UA-3911」)1.5部を用いた。
樹脂A1の代わりに樹脂A5を用い、フィルムの製造条件を調整した以外は、実施例4と同様にして、厚み34μmの光学フィルムを得て、これを評価した。樹脂A5の層の厚みは、20μmであった。
【0131】
実施例及び比較例の結果を下表に示す。下表における略号は、下記意味を表す。
C1:シクロオレフィン樹脂(日本ゼオン社製「ゼオノア」)
C2:シクロオレフィン樹脂(JSR社製「アートン」)
a1:製造例1で製造された化合物(a1)
a2:製造例2で製造された化合物(a2)
LA-F70:ADEKA社製「アデカスタブ(登録商標) LA-F70」
UA-3911:オリエント化学工業株式会社製「BONASORB(登録商標) UA-3911」
Tmax(300-410):波長300nm以上410nm以下における最大光線透過率(%)
T(430):波長430nmにおける光線透過率(%)
増加率R:波長410nm以上420nm以下における光線透過率の増加率R(%/nm)
【0132】
【表1】
【0133】
【表2】
【0134】
波長300nm以上410nm以下における光線透過率が10%以下であり、波長430nmにおける光線透過率が80%以上であり、波長410nm以上420nm以下における光線透過率の増加率が、4.0%/nm以上である、実施例1、2、及び3の単層の光学フィルムは、有機EL画像表示装置からの光を阻害することなく、外光に含まれる紫外線の光を効率良くカットできる。これによって、有機EL画像表示装置の表示素子等を紫外線から保護するとともに、画像表示装置が表示色相をほぼ変化させずに明瞭な表示ができることが分かる。
また、波長300nm以上410nm以下における光線透過率が10%以下であり、波長430nmにおける光線透過率が80%以上であり、波長410nm以上420nm以下における光線透過率の増加率が、4.0%/nm以上である、実施例4、5、6、7、及び8の多層の光学フィルムは、有機EL画像表示装置からの光を阻害することなく、外光に含まれる紫外線の光を効率良くカットできる。これによって、有機EL画像表示装置の表示素子等を紫外線から保護するとともに、画像表示装置が表示色相をほぼ変化させずに明瞭な表示ができることが分かる。
【符号の説明】
【0135】
100 :光学フィルム
101 :樹脂層
101U :面
102 :樹脂層
102D :面
103 :樹脂層
210 :偏光板
211 :光学フィルム
214 :偏光子
214U :面
220 :偏光板
221 :光学フィルム
224 :偏光子
224D :面
224U :面
225 :位相差層
310 :画像表示装置
316 :画像表示素子
320 :画像表示装置
326 :画像表示素子
図1
図2
図3
図4
図5