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特許7420142熱硬化性樹脂組成物、及びその硬化物を含む電気電子部品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】熱硬化性樹脂組成物、及びその硬化物を含む電気電子部品
(51)【国際特許分類】
   C08F 283/01 20060101AFI20240116BHJP
【FI】
C08F283/01
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021546513
(86)(22)【出願日】2020-06-25
(86)【国際出願番号】 JP2020025101
(87)【国際公開番号】W WO2021053922
(87)【国際公開日】2021-03-25
【審査請求日】2022-12-20
(31)【優先権主張番号】P 2019168265
(32)【優先日】2019-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 正俊
(74)【代理人】
【識別番号】100202418
【弁理士】
【氏名又は名称】河原 肇
(72)【発明者】
【氏名】原田 祐輔
【審査官】中村 英司
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-173813(JP,A)
【文献】国際公開第2016/080040(WO,A1)
【文献】特開昭63-041562(JP,A)
【文献】特開2013-091573(JP,A)
【文献】細粒・微粒ハイジライト[オンライン],昭和電工株式会社,2007年05月25日,<sdk.co.jp/assets/files/products/1203/1203_01.pdf>,品質代表特性(H-32)、検索日:2020.09.07
【文献】特殊加工ハイジライト[オンライン],昭和電工株式会社,2010年03月02日,<sdk.co.jp/assets/files/products/1204/1204_01.pdf>,品質代表特性(H-34)、検索日:2020.09.07
【文献】高白色ハイジライト[オンライン],昭和電工株式会社,2009年05月08日,<sdk.co.jp/assets/files/products/1202/1202_01.pdf>,品質代表特性(H-310,H-320)、検索日:2020.09.07
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 283/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)不飽和ポリエステル樹脂、(B)エチレン性不飽和化合物、(C)ガラス繊維、及び(D)無機充填材を含む熱硬化性樹脂組成物であって、
前記(D)無機充填材が、メジアン径が1~5μmの無機充填材及びメジアン径が7μm以上の無機充填材であり、
前記(D)が下記条件を満たす、熱硬化性樹脂組成物。
(1)(D)無機充填材が、水酸化アルミニウム粒子である。
(2)0.2≦Ct×(Da/Db)≦2.0
Ct:熱硬化性樹脂組成物中の、(D)無機充填材含有率(質量比)
Da:BET法によって測定した、(D)無機充填材の比表面積(m/g)
Db:メジアン径から算出した、(D)無機充填材の理想比表面積(m/g)
【請求項2】
前記(B)エチレン性不飽和化合物の含有量は、前記(A)不飽和ポリエステル樹脂と前記(B)エチレン性不飽和化合物との合計に対して25質量%以上70質量%以下であり、
前記(C)ガラス繊維の配合量は、前記(A)不飽和ポリエステル樹脂と前記(B)エチレン性不飽和化合物との合計100質量部に対して20~150質量部であり、
前記(D)無機充填材の含有率Ctが0.2~0.8である、請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
さらに(E)低収縮剤を含む、請求項1又は2に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記(E)低収縮剤の配合量は、前記(A)不飽和ポリエステル樹脂と前記(B)エチレン性不飽和化合物との合計100質量部に対して20~40質量部である、請求項3に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
さらに(F)硬化剤を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
前記(F)硬化剤の配合量は、前記(A)不飽和ポリエステル樹脂及び前記(B)エチレン性不飽和化合物の合計100質量部に対して1~10質量部である、請求項5に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
さらに(G)離型剤を含む、請求項1~のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
前記(G)離型剤の配合量は、前記(A)不飽和ポリエステル樹脂及び前記(B)エチレン性不飽和化合物の合計100質量部に対して5~20質量部である、請求項7に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1~のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物の硬化物を含む電気電子部品。
【請求項10】
電気電子部品の構成部品が請求項1~のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物によって封入される工程、及び前記熱硬化性樹脂組成物を加熱硬化する工程を含む、電気電子部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、熱硬化性樹脂組成物、その硬化物を含む電気電子部品、及び電気電子部品の製造方法に関する。詳細には、本開示は、モーター、コイル等の構成部品を封入するために用いることのできる熱硬化性樹脂組成物、その硬化物を含む電気電子部品、及び電気電子部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
不飽和ポリエステル樹脂に繊維強化材又は無機充填材を配合した熱硬化性樹脂組成物は、流動性が良好であると共に、寸法精度、耐熱性及び機械的強度に優れた硬化物を与えるため、OA機器、事務機器のシャーシ、自動車用ヘッドランプのランプリフレクター、封入モーター等の製造において広く使用されている。
【0003】
中でも、電気電子部品においてモーター、コイル等の構成部品が封入される場合、使用される際の安全性と信頼性のため、熱硬化性樹脂組成物の硬化物は難燃性が求められる。難燃性付与の方法として、一般的に金属水酸化物、中でも水酸化アルミニウムを樹脂に添加することが行われている。これは簡便かつ安価な手法であるが、一方、難燃性を付与するためには大量の金属水酸化物を添加する必要があり、その場合熱硬化性樹脂組成物の流動性が低下する。熱硬化性樹脂組成物の流動性が低いと、封入時に封入部品が樹脂圧力により初期位置から移動してしまい、断線、短絡等の発生により封入部品が損傷する場合がある。
【0004】
特許文献1では、高充填しても低粘度である樹脂を提供する、比表面積の小さい水酸化アルミニウムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平1-275422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1のように金属水酸化物などに代表される無機充填材を充填する場合、その充填材の濡れ状態の変化や吸油の進行、凝集などで熱硬化性樹脂組成物の粘度が変化し、長期保管した場合にその流動性が低下するという問題があった。
【0007】
そこで本発明は、硬化物が難燃性を有し、かつ良好な流動性を長期にわたり保持可能な熱硬化性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記のような問題を解決すべく鋭意研究した結果、熱硬化性樹脂組成物において、金属水酸化物の配合量と形を制御することで、本目的を達成することができると見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の[1]~[6]を含む。
[1]
(A)不飽和ポリエステル樹脂、(B)エチレン性不飽和化合物、(C)ガラス繊維、及び(D)無機充填材を含む熱硬化性樹脂組成物であって、
前記(D)が下記条件を満たす、熱硬化性樹脂組成物。
(1)(D)無機充填材が、水酸化アルミニウム粒子である。
(2)0.2≦Ct×(Da/Db)≦2.0
Ct:熱硬化性樹脂組成物中の、(D)無機充填材含有率(質量比)
Da:BET法によって測定した、(D)無機充填材の比表面積(m/g)
Db:メジアン径から算出した、(D)無機充填材の理想比表面積(m/g)
[2]
さらに(E)低収縮剤を含む、[1]に記載の熱硬化性樹脂組成物。
[3]
さらに(F)硬化剤を含む、[1]又は[2]に記載の熱硬化性樹脂組成物。
[4]
さらに(G)離型剤を含む、[1]~[3]のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
[5]
[1]~[4]のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物の硬化物を含む電気電子部品。
[6]
電気電子部品の構成部品が[1]~[4]のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物によって封入される工程、及び前記熱硬化性樹脂組成物を加熱硬化する工程を含む、電気電子部品の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、硬化物が難燃性を有し、かつ良好な流動性を長期にわたり保持可能な熱硬化性樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の熱硬化性樹脂組成物について詳細に説明する。なお、本発明は、以下に示す実施形態のみに限定されるものではない。
【0012】
以下の説明において、「エチレン性不飽和結合」とは、芳香環を形成する炭素原子を除く炭素原子間で形成される二重結合を意味し、「エチレン性不飽和化合物」とは、エチレン性不飽和結合を有する化合物を意味する。
【0013】
「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート又はメタクリレートを意味し、「(メタ)アクリル」とは、アクリル又はメタクリルを意味し、「(メタ)アクリロイル」とは、アクリロイル又はメタクリロイルを意味する。
【0014】
<1.熱硬化性樹脂組成物>
一実施態様の熱硬化性樹脂組成物は、(A)不飽和ポリエステル樹脂、(B)エチレン性不飽和化合物、(C)ガラス繊維、及び(D)無機充填材を含む。
【0015】
[(A)不飽和ポリエステル樹脂]
(A)不飽和ポリエステル樹脂は、多価アルコールと不飽和多塩基酸と、必要に応じて飽和多塩基酸とを重縮合させて得られるものであり、特に限定されない。不飽和多塩基酸とは、エチレン性不飽和結合を有する多塩基酸であり、飽和多塩基酸とは、エチレン性不飽和結合を有さない多塩基酸である。(A)不飽和ポリエステル樹脂は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、本開示では一般の不飽和ポリエステル樹脂に含有されるスチレンモノマー等は(B)エチレン性不飽和化合物に分類される。
【0016】
多価アルコールは、2個以上の水酸基を有する化合物であれば特に制限はない。多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンタンジオール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,4-シクロヘキサン-ジメタノール、水素化ビスフェノールA等のアルキレングリコール;ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物等のアルキレンオキサイド変性ビスフェノールA;ビスフェノールA及びグリセリン等が挙げられる。これらの中でも、硬化物の耐熱性、機械的強度及び成形時の樹脂流動性の観点から、プロピレングリコール、ネオペンタンジオール、水素化ビスフェノールA及びビスフェノールAが好ましく、プロピレングリコールがより好ましい。多価アルコールは、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0017】
不飽和多塩基酸は、エチレン性不飽和結合を有し、かつ、2個以上のカルボキシ基を有する化合物又はその酸無水物であれば特に制限はない。不飽和多塩基酸としては、例えば、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、クロロマレイン酸等が挙げられる。これらの中でも、硬化物の耐熱性、機械的強度及び成形時の樹脂流動性等の観点から、無水マレイン酸及びフマル酸が好ましい。不飽和多塩基酸は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0018】
飽和多塩基酸は、エチレン性不飽和結合を有さず、かつ、2個以上のカルボキシ基を有する化合物又はその酸無水物であれば特に制限はない。飽和多塩基酸としては、例えば、フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、テトラクロロ無水フタル酸、テトラブロモ無水フタル酸、ニトロフタル酸、ハロゲン化無水フタル酸、シュウ酸、マロン酸、アゼライン酸、グルタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸及びヘキサヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。これらの中でも、硬化物の耐熱性、機械的強度及び成形時の樹脂流動性等の観点から、フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸及びアジピン酸が好ましく、無水フタル酸及びイソフタル酸がより好ましい。飽和多塩基酸は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0019】
(A)不飽和ポリエステル樹脂は、上記のような原料を用いて公知の方法で合成することができる。(A)不飽和ポリエステル樹脂の合成における各種条件は、使用する原料及びその量に応じて適宜設定することができるが、一般的に、窒素ガス等の不活性ガス気流中、140~230℃の温度にて加圧又は減圧下でのエステル化反応を用いることができる。エステル化反応では、必要に応じてエステル化触媒を使用することができる。エステル化触媒の例としては、酢酸マンガン、ジブチル錫オキサイド、シュウ酸第一錫、酢酸亜鉛、及び酢酸コバルト等の公知の触媒が挙げられる。エステル化触媒は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0020】
(A)不飽和ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、特に限定されない。(A)不飽和ポリエステル樹脂の重量平均分子量は、好ましくは3,000~25,000であり、より好ましくは5,000~20,000であり、さらに好ましくは7,000~18,000である。重量平均分子量が3,000~25,000であれば、熱硬化性樹脂組成物の成形性がより一層良好となる。なお、本開示において「重量平均分子量」とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC:gel permeation chromatography)を用いて下記条件にて常温(23℃)で測定し、標準ポリスチレン検量線を用いて求めた値のことを意味する。
装置:昭和電工株式会社製Shodex(登録商標)GPC-101
カラム:昭和電工株式会社製LF-804
カラム温度:40℃
試料:(A)不飽和ポリエステル樹脂の0.2質量%テトラヒドロフラン溶液
流量:1mL/分
溶離液:テトラヒドロフラン
検出器:RI-71S
【0021】
(A)不飽和ポリエステル樹脂の不飽和度は50~100モル%であることが好ましく、より好ましくは60~100モル%であり、さらに好ましくは70~100モル%である。不飽和度が上記範囲であると、熱硬化性樹脂組成物の成形性がより良好である。(A)不飽和ポリエステル樹脂の不飽和度は、原料として用いた不飽和多塩基酸及び飽和多塩基酸のモル数を用いて、以下の式により算出可能である。
不飽和度(モル%)={(不飽和多塩基酸のモル数×不飽和多塩基酸1分子当たりのエチレン性不飽和結合の数)/(不飽和多塩基酸のモル数+飽和多塩基酸のモル数)}×100
【0022】
[(B)エチレン性不飽和化合物]
(B)エチレン性不飽和化合物は、(A)不飽和ポリエステル樹脂と共重合可能なエチレン性不飽和結合を有するものであれば、特に制限されることなく使用することができる。(B)エチレン性不飽和化合物のエチレン性不飽和結合は1つでも複数でもよい。(B)エチレン性不飽和化合物としては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン、ジビニルベンゼンなどの芳香族モノマー;2-ヒドロキシエチルメタクリレート、ポリアルキレンオキサイドのジアクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸メチルなどの(メタ)アクリロイル基を有するモノマー;ジアリルフタレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルフタレートプレポリマー等のアルケニル基を有するモノマー;及び上記モノマーが複数個結合したオリゴマー等などが挙げられる。これらの中でも、(A)不飽和ポリエステル樹脂との反応性の観点から、スチレン及び(メタ)アクリル酸メチルが好ましく、特にスチレンが好ましい。(B)エチレン性不飽和化合物は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0023】
(B)エチレン性不飽和化合物の含有量は、(A)不飽和ポリエステル樹脂と(B)エチレン性不飽和化合物との合計に対して25質量%以上であることが好ましい。これにより、熱硬化性樹脂組成物を取り扱いやすい粘度とすることができる。この観点から、(B)エチレン性不飽和化合物の含有量は30質量%以上であることがより好ましく、35質量%以上であることがさらに好ましい。
【0024】
(B)エチレン性不飽和化合物の含有量は、(A)不飽和ポリエステル樹脂と(B)エチレン性不飽和化合物との合計に対して70質量%以下であることが好ましい。これにより、熱硬化性樹脂組成物の硬化物の機械的強度を高くすることができる。この観点から、(B)エチレン性不飽和化合物の含有量は68質量%以下であることがより好ましく、65質量%以下であることがさらに好ましい。
【0025】
[(C)ガラス繊維]
(C)ガラス繊維は、アスペクト比が3以上の繊維状物質である。ガラス繊維としては、チョップドストランドガラスが挙げられる。(C)ガラス繊維の繊維長については、好ましくは20mm以下であり、より好ましくは6mm以下であり、さらに好ましくは2mm以下である。
【0026】
(C)ガラス繊維の配合量は、(A)不飽和ポリエステル樹脂と(B)エチレン性不飽和化合物との合計100質量部に対して20~150質量部であることが好ましく、より好ましくは30~100質量部であり、さらに好ましくは50~90質量部である。(C)ガラス繊維の配合量が20質量部以上であれば、熱硬化性樹脂組成物により得られる成形体の機械的特性がより良好である。一方、(C)ガラス繊維の配合量が150質量部以下であれば、熱硬化性樹脂組成物中でガラス繊維がより均一に分散し、均質な成形体を製造することができる。
【0027】
[(D)無機充填材]
(D)無機充填材として水酸化アルミニウム粒子を使用することで、熱硬化性樹脂組成物の硬化物に難燃性を付与することができる。無機充填材の含有率Ctは、下記の条件式を充足する必要がある。
0.2≦Ct×(Da/Db)≦2.0
Ct:熱硬化性樹脂組成物中の、(D)無機充填材含有率(質量比)
Da:BET法によって測定した、(D)無機充填材の比表面積(m/g)
Db:メジアン径から算出した、(D)無機充填材の理想比表面積(m/g)
【0028】
(D)無機充填材を複数種用いる場合には、BET比表面積Daと理想比表面積Dbの比Da/Dbは、熱硬化性樹脂組成物に含まれる(D)無機充填材の総表面積をその総理想表面積で除することにより得られる。例えば、2種類の(D)無機充填材α及びβを用いる場合、Da/Dbは以下のように算出できる。
Da/Db=(W(α)×Da(α)+W(β)×Da(β))
/(W(α)×Db(α)+W(β)×Db(β))
W(α)及びW(β)は、熱硬化性樹脂組成物中のα、βそれぞれの(D)無機充填材の含有量(g)である。Da(α)、Da(β)等も同様である。
【0029】
(D)無機充填材の比表面積はその製法から、完全球形と仮定して計算される理論値と、BET法により計測される実際の値には乖離がある。本発明者は、同じメジアン径を持つ粒子同士で比較した場合に、比表面積の実測値(Da)が理論値(Db)から離れるほど、樹脂の(D)無機充填材に対する濡れにくさが増大し、(D)無機充填材の表面積に対し、初期に樹脂で濡れている表面積の比率は相対的に減少することを見出した。さらに、(D)無機充填材表面に存在する樹脂量(樹脂と(D)無機充填材との接触面積)を初期から多く保つことで、熱硬化性樹脂組成物を長期保管した場合の粘度の変化(流動性保持率の低下)を抑制することができることを見出した。この粘度変化の抑制は、樹脂の(D)無機充填材に対する濡れやすさに関連すると考えられる。すなわち、長期間にわたり、(D)無機充填材表面に存在する樹脂量が一定に保たれると、粘度変化が抑制されるものと考えられる。一方、(D)無機充填材表面に存在する樹脂量が少ないと、すなわち熱硬化性樹脂組成物の調製直後に(D)無機充填材の表面全体が樹脂で完全に濡れていないと、時間経過とともに樹脂と(D)無機充填材との接触面積が変化し、このことが熱硬化性樹脂組成物の流動性保持率の低下につながると考えられる。一般的に、熱硬化性樹脂組成物の流動性は、(D)無機充填材のメジアン径に依存するという従来の考えに対し、上記流動性保持率と(D)無機充填材の比表面積との関係に関する本発明者の知見は新規なものである。
【0030】
Ct×(Da/Db)は、0.2以上であり、好ましくは0.5以上であり、より好ましくは1.0以上であり、さらに好ましくは1.2以上である。Ct×(Da/Db)は、2.0以下であり、1.9以下、又は1.8以下とすることができる。
【0031】
(D)無機充填材の含有率Ctは、熱硬化性樹脂組成物全量に対する(D)無機充填材の配合量の質量比で求められる。Ctは0.2~0.8であることが好ましく、より好ましくは0.3~0.7である。Ctが0.2以上であれば、硬化物の難燃性がより良好である。一方、Ctが0.8以下であれば、熱硬化性樹脂組成物中で(D)無機充填材がより均一に分散し、均質で流動性が良好な熱硬化性樹脂組成物を製造することができる。
【0032】
比表面積Da(m/g)は、BET法によって測定した(D)無機充填材の比表面積である。本開示において「BET法によって測定した比表面積」とは、全自動比表面積測定装置(株式会社マウンテック製 Macsorb(登録商標)HM model-1200)を用い、窒素の吸着量によって測定される、測定対象の質量当たりの表面積を意味する。
【0033】
理想比表面積Db(m/g)は後述するメジアン径を用いて下記式により計算された値である。
Db=(メジアン径から求める球の表面積(m))
/(メジアン径から求める球の体積(m))×((D)無機充填材密度(g/m))
【0034】
本開示において「メジアン径」とは、レーザ回折・散乱式粒子径分布測定装置(マイクロトラック・ベル株式会社製 マイクロトラック(登録商標)MT3000II)を用い、レーザ回折・散乱法によって求めた体積基準の粒径分布における累積50%となる粒子径を意味する。
【0035】
粒径分布の測定は、溶媒として水を用い、前処理として、2分間、ホモジナイザーを用いて40Wの出力をかけて粉末の分散処理をした後に、分散液のヘキサメタリン酸ナトリウム濃度を0.03質量%になるように調整して行う。水の屈折率値には1.33を用い、粉末の屈折率値については粉末の材質の屈折率を考慮する。例えば、水酸化アルミニウムについては屈折率値を1.57として測定する。
【0036】
(D)無機充填材のメジアン径は、成形時における熱硬化性樹脂組成物の粘度の観点から、1~100μmであることが好ましく、1~60μmであることがより好ましく、1~50μmであることがさらに好ましく、1~30μmが特に好ましい。(D)無機充填材のメジアン径が1μm以上であれば、粒子の凝集を抑制することができる。一方、(D)無機充填材のメジアン径が100μm以下であれば、熱硬化性樹脂組成物の成形性が良好である。中でも、熱硬化性樹脂組成物の流動性向上の観点から、メジアン径の範囲が異なる2種類以上の(D)無機充填材を混合して用いることが好ましく、メジアン径が1~5μmの(D)無機充填材と、メジアン径が7μm以上の(D)無機充填材とを混合して用いることが特に好ましい。
【0037】
(D)無機充填材の形状は、特に制限されない。(D)無機充填材の形状としては、例えば、球状、略真球、楕円体、鱗片状、無定形等が挙げられる。BET比表面積Daを小さくする観点より、球状に近いものが好ましい。
【0038】
[(E)低収縮剤]
熱硬化性樹脂組成物には(E)低収縮剤を配合してもよい。(E)低収縮剤としては、特に限定されず、本発明の技術分野において公知のものを用いることができる。中でも熱可塑性樹脂が好ましい。(E)低収縮剤としては、例えば、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリ酢酸ビニル、飽和ポリエステル、ポリカプロラクトン、スチレン-ブタジエンゴム等が挙げられる。(E)低収縮剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0039】
(E)低収縮剤の配合量は、(A)不飽和ポリエステル樹脂と(B)エチレン性不飽和化合物との合計100質量部に対して20~40質量部であることが好ましい。(E)低収縮剤の配合量が20質量部以上であれば、硬化物の収縮率が小さくなり、成形体において所望の寸法精度を得ることができる。一方、(E)低収縮剤の配合量が40質量部以下であれば、硬化物の機械的特性がより良好である。
【0040】
[(F)硬化剤]
熱硬化性樹脂組成物には(F)硬化剤を配合してもよい。(F)硬化剤としては、エチレン性不飽和結合を重合できるラジカル開始剤であれば特に限定されず、本発明の技術分野において公知のものを用いることができる。(F)硬化剤としては、例えばジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、アルキルパーエステル、パーカーボネート等の過酸化物が挙げられる。これらの過酸化物の中でも、1,1-ジ-t-ヘキシルパーオキシ-シクロヘキサン、t-ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシオクトエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、ベンゾイルパーオキサイド、1,1-ジ-t-ブチルパーオキシ-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、ジクミルパーオキサイド、及びジ-t-ブチルパーオキサイドが好ましい。(F)硬化剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0041】
(F)硬化剤の配合量は、(A)不飽和ポリエステル樹脂及び(B)エチレン性不飽和化合物の合計100質量部に対して1~10質量部であることが好ましく、2~9質量部であることがより好ましく、3~8質量部であることがさらに好ましい。(F)硬化剤の配合量が1質量部以上であれば、成形時の硬化反応が均一に起こり、硬化物の物性及び外観が良好となる。一方、(F)硬化剤の配合量が10質量部以下であれば、熱硬化性樹脂組成物の保存安定性がより良好となり、取扱い性が向上する。
【0042】
[(G)離型剤]
熱硬化性樹脂組成物には(G)離型剤を配合してもよい。(G)離型剤としては、特に限定されず、本発明の技術分野において公知のものを用いることができる。(G)離型剤としては、例えば、ステアリン酸、オレイン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、シリコーンオイル、合成ワックス等が挙げられる。(G)離型剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0043】
(G)離型剤の配合量は、(A)不飽和ポリエステル樹脂及び(B)エチレン性不飽和化合物の合計100質量部に対して5~20質量部であることが好ましい。(G)離型剤の配合量が5質量部以上であれば、型成形をした際の成形体の離型性が良好で製品の生産性が良好となる。一方、(G)離型剤の配合量が20質量部以下であれば、過剰な離型剤が成形体の表面を汚染することなく、外観が良好な成形体を得ることができる。
【0044】
[その他の添加剤]
熱硬化性樹脂組成物は、上記の成分に加えて、増粘剤、着色剤、重合禁止剤、減粘剤等の本発明の技術分野において公知の成分を、本発明の効果を阻害しない範囲において含むことができる。
【0045】
増粘剤は増粘効果を示す(D)無機充填材以外の化合物であり、例えばイソシアネート化合物が挙げられる。増粘剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。増粘剤の添加量は、熱硬化性樹脂組成物に要求される取り扱い性、流動性等に応じて適宜調整することができる。
【0046】
着色剤は、硬化物を着色する場合等に用いられる。着色剤として、各種の染料、無機顔料又は有機顔料を使用することができる。着色剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。着色剤の添加量は、硬化物に所望される着色度合いによって適宜調整することができる。
【0047】
重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、トリメチルハイドロキノン、p-ベンゾキノン、ナフトキノン、t-ブチルハイドロキノン、カテコール、p-t-ブチルカテコール、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノールなどが挙げられる。重合禁止剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。重合禁止剤の添加量は、熱硬化性樹脂組成物の保管環境及び期間、硬化条件等に応じて適宜調整することができる。
【0048】
<2.熱硬化性樹脂組成物の製造方法>
熱硬化性樹脂組成物は、(A)不飽和ポリエステル樹脂と、(B)エチレン性不飽和化合物と、(C)ガラス繊維と、(D)無機充填材と、必要に応じて、任意成分である(E)低収縮剤、(F)硬化剤、(G)離型剤、若しくは添加剤、又はこれらの2種以上の組み合わせと、を混合することにより製造することができる。混合方法としては、例えば混練が挙げられる。混練方法としては特に制限はなく、例えば、ニーダー、ディスパー、プラネタリーミキサー等を用いることができる。混練温度は、好ましくは5℃~50℃であり、より好ましくは10~40℃である。
【0049】
熱硬化性樹脂組成物を製造する際の各成分を混合する順番については特に制限はない。例えば、(A)不飽和ポリエステル樹脂と、(B)エチレン性不飽和化合物の一部又は全部を混合してから他の成分を混合すると、各成分が十分に分散、あるいは均一に混合された熱硬化性樹脂組成物が得られやすいため好ましい。(B)エチレン性不飽和化合物の少なくとも一部が、溶媒、分散媒等として作用するように、(A)不飽和ポリエステル樹脂と予め混合されていてもよい。
【0050】
(C)ガラス繊維の混合方法としては、あらかじめ所定の繊維長分布を有するガラス繊維を用意し、(C)ガラス繊維以外の各成分を含む組成物に(C)ガラス繊維を混合する方法が挙げられる。この方法によれば、(C)ガラス繊維の繊維長分布を微調整することができる。他に、(C)ガラス繊維を含む熱硬化性樹脂組成物を調製した後、混練によりガラス繊維を折損させて所定の繊維長分布を実現する方法が挙げられる。(C)ガラス繊維の繊維長分布は、混練する他の成分の種類及び量、撹拌機の種類、撹拌速度、撹拌温度、撹拌時間などの条件で制御可能である。この方法はガラス繊維の折損を予め行う必要がないため、工程が簡易である。
【0051】
<3.硬化物の製造方法>
熱硬化性樹脂組成物は、必要に応じて加熱することにより硬化させることができる。熱硬化性樹脂組成物を硬化させる条件は、用いる材料によって適宜設定することができ、好ましい条件の一例としては、温度120~180℃、及び硬化時間1~30分である。
【0052】
<4.成形体の製造方法>
熱硬化性樹脂組成物を、所望の形状に成形して硬化することによって、熱硬化性樹脂組成物の硬化物を含む成形体を製造することができる。成形及び硬化方法としては、特に限定されず、本発明の技術分野において通常行われる方法、例えば、圧縮成形、トランスファー成形、射出成形等を用いることができる。
【0053】
熱硬化性樹脂組成物の成形及び硬化方法としては、特に制限されないが、例えば、金型を開き、金型内に熱硬化性樹脂組成物を注ぎ込み、硬化させる方法、金型内を減圧下、又は射出成形に代表されるような、金型の外側から圧力をかけた状態で、スプルー等の金型に設けられた穴を通じて、閉じた金型内に外部から熱硬化性樹脂組成物を注入し、硬化させる方法等がある。金型内で熱硬化性樹脂組成物を硬化させる条件は、用いる材料によって適宜設定することができ、好ましい条件の一例としては、温度120~180℃、及び硬化時間1~30分である。
【0054】
一実施態様では、熱硬化性樹脂組成物の硬化物を含む電気電子部品が提供される。電気電子部品は、例えば、電気電子部品の構成部品を熱硬化性樹脂組成物によって封入し、該熱硬化性樹脂組成物を加熱硬化することによって製造することができる。電気電子部品の構成部品の封入は、例えば、内部に構成部品を有する筐体内に熱硬化性樹脂組成物を注入することによって行うことができる。
【実施例
【0055】
以下、実施例及び比較例によって本発明を詳細に説明する。ただし、これらによって本発明は限定されない。
【0056】
<1.成分>
(B)エチレン性不飽和化合物:スチレン
(C)ガラス繊維:日東紡績株式会社製
チョップドストランドガラス CS2HB-406S(繊維長1.5mm)
(D’)酸化アルミニウム:昭和電工株式会社製 AL-47-1(球状)
(E)低収縮剤:積水化成品工業株式会社製 ポリスチレン MS-200
(F)硬化剤:日油株式会社製 パーヘキシルO(t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート)
(G)離型剤:日油株式会社製 ステアリン酸カルシウム
【0057】
<2.(A)不飽和ポリエステル樹脂の合成>
温度計、撹拌機、不活性ガス導入口及び還流冷却器を備えた4つ口フラスコに、無水マレイン酸0.93kg(9.5モル)と、無水フタル酸0.07kg(0.5モル)と、プロピレングリコール0.76kg(10モル)とを仕込んだ。そして、窒素ガス気流下で加熱撹拌しながら200℃まで昇温してエステル化反応を行い、不飽和ポリエステル樹脂A-1を得た。その後スチレンモノマーを、不飽和ポリエステル樹脂A-1とスチレンモノマーの合計に対して30質量%となるように添加し、不飽和ポリエステル樹脂A-1とスチレンの混合物を得た。得られた不飽和ポリエステル樹脂A-1は、不飽和度95モル%、重量平均分子量8,000であった。
【0058】
<3.(D)無機充填材の製造>
水酸化ナトリウムを精製水に溶解し、NaOH濃度150g/Lの溶液を作製した。この溶液に水酸化アルミニウムを加熱溶解し、過飽和のアルミン酸ナトリウム溶液を調製した。上記のアルミン酸ナトリウム溶液に水酸化アルミニウム種子結晶を添加し、溶液の温度を70℃以上に保ったまま析出を行い、析出水酸化アルミニウムを得た。析出水酸化アルミニウムを溶液から真空濾過により分離し、精製水で洗浄した後、100℃で乾燥させた。その後、ビーズ・ミルによって粉砕し、表1に記載の無機充填材a~fの水酸化アルミニウム粒子(密度 2.4g/cm)を得た。
【0059】
<4.熱硬化性樹脂組成物の作製>
実施例1~6及び比較例1~5
表1に示す配合でガラス繊維を除く成分を双腕式ニーダーに投入し、30分間40℃にて混練した。なお、スチレンは、表1に示す配合となるようこの段階でさらに追加した。その後、ガラス繊維を添加し、20分間混練して、実施例1~6及び比較例1~5の熱硬化性樹脂組成物を得た。
【0060】
<5.熱硬化性樹脂組成物の評価方法>
実施例1~6及び比較例1~5で得られた熱硬化性樹脂組成物及び成形品について、以下の試験方法により各種物性評価を行った。これらの評価結果を表1に示す。
【0061】
(1)流動性
作製から24時間後の熱硬化性樹脂組成物を用い、流動性を評価した。熱硬化性樹脂組成物のスパイラルフロー試験による流動長(cm)(スパイラルフロー値)を流動性の指標とした。スパイラルフロー試験は、流路断面形状が台形(上底a=6mm、下底b=8mm、高さh=2mm(いずれも内径))のスパイラルフロー金型を70tトランスファー成形機に取り付け、原料チャージ量50g、成形温度140℃、成形圧力5MPaの条件下で行い、スパイラルフロー値を測定した。スパイラルフロー値が大きいほど、流動性が高いことを示す。
【0062】
(2)流動性保持率
熱硬化性樹脂組成物を20℃の環境下に静置し、熱硬化性樹脂組成物の作製から30日後にスパイラルフロー値を測定した。熱硬化性樹脂組成物作製当日に測定した値と、作製から30日後に測定した値の比より、流動性保持率を求めた。流動性保持率が高いほど、長期保管後も流動性が保たれていることを示す。
【0063】
(3)難燃性試験
熱硬化性樹脂組成物340gを用いて、160℃に加熱した圧縮成形用金型で、加圧時間5分、成形圧力10MPaの条件で320mm×220mm×3mmの平板を成形した。硬化後、成形品を金型から取り出し、(125±5)mm×(13±0.5)mm×3mmの試験片を切り出した。UL94 V-0規格に則した垂直燃焼試験にて評価を行い、下記表1においては、V-0規格を満たすものを可、満たさないものを不可として表した。
【0064】
【表1】
【0065】
表1より、下記式を満たす熱硬化性樹脂組成物については、30日後の流動性が十分保持され、さらに難燃性も良好であった。
0.2≦Ct×(Da/Db)≦2.0