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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】ケーブル及びハーネス
(51)【国際特許分類】
   H01B 7/18 20060101AFI20240116BHJP
   H01B 7/00 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
H01B7/18 C
H01B7/18 H
H01B7/00 301
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022128545
(22)【出願日】2022-08-11
(62)【分割の表示】P 2021034017の分割
【原出願日】2018-11-26
(65)【公開番号】P2022161974
(43)【公開日】2022-10-21
【審査請求日】2022-08-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】株式会社プロテリアル
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】弁理士法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】早川 良和
(72)【発明者】
【氏名】村山 知之
【審査官】中嶋 久雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-224434(JP,A)
【文献】特開2009-116018(JP,A)
【文献】特開2013-237428(JP,A)
【文献】特開2000-294048(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 7/18
H01B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体と前記導体の周囲に被覆されている絶縁体とを備える複数の電線と、
記複数の電線の周囲を覆うテープ部材と、
前記テープ部材の外周に被覆されている外部シースと、
を備え、
前記テープ部材の前記外部シースの内周面と接触する面が、複数の第1の繊維と、前記第1の繊維の融点よりも低い融点を有する複数の第2の繊維と、を混合させて形成されており、
前記第1の繊維の融点は、前記外部シースの押出成形温度よりも高く、前記第2の繊維
の融点は、前記押出成形温度よりも低い、
ケーブル。
【請求項2】
前記第2の繊維の含有率は、20質量%以上80質量%以下である、
請求項1に記載のケーブル。
【請求項3】
前記外部シースは、ウレタン樹脂で構成されており、
前記第1の繊維は、ポリエチレンテレフタレートで構成されているとともに、前記第2の繊維は、前記第1の繊維を構成するポリエチレンテレフタレートよりも融点が低いポリエチレンテレフタレートで構成されている、
請求項1または2に記載のケーブル。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のケーブルと、
前記複数の電線の端部に取り付けられたコネクタと、
を備える、ハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブル及びハーネスに関し、特に、車体から車輪に配線されるケーブル及びハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば、車体から車輪への配線に供される複合ケーブルが提供されている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1に記載の複合ケーブルは、それぞれ導体シースにより囲まれる導線を有する少なくとも3つの導体を含んで構成されている。
【0003】
これら少なくとも3つの導体は、分離用スリーブにより囲まれ、前記分離用スリーブは、次いで前記電気リード線の共通のシースにより囲まれている。この分離用スリーブは、合成不織布又はプラスチックフィルムであることを特徴とするものである。また、共通のシースは、熱可塑性ポリウレタンエラストマーから形成されることを特徴とするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6209284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の複合ケーブルでは、複合ケーブルの端部の加工の際に、分離用スリーブを除去するのに手間を要する虞がある。
【0006】
本発明は、ケーブルの端部の加工の際に、分離用スリーブ(以下、「テープ部材」ともいう。)を除去するのに要する手間を抑制することが可能なケーブル及びハーネスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決することを目的として、下記の[1]~[7]のケーブル、及び[8]のハーネスを提供する。
[1]複数の電線(5、6)と、前記複数の電線(5、6)の周囲を覆うテープ部材(3)と、前記テープ部材(3)の外周に被覆されている外部シース(4)と、を備え、前記テープ部材(3)は、第1の繊維と、前記第1の繊維の融点よりも低い融点を有する第2の繊維と、を混合させて形成されたものである、ケーブル(1)。
[2]前記テープ部材(3)は、前記外部シース(4)の内周面(4a)に貼り付けられて前記外部シース(4)と一体化されている、前記[1]に記載のケーブル(1)。
[3]前記第1の繊維の融点は、前記外部シースの押出形成温度よりも高く、前記第2の繊維の融点は、前記押出形成の温度よりも低い、前記[1]又は[2]に記載のケーブル(1)。
[4]前記押出形成温度は、約230度であり、前記第1の繊維の融点は、約250度であり、前記第2の繊維の融点は、約220度である、前記[3]に記載のケーブル(1)。
[5]前記第1の繊維は、高融点PET繊維を含み、前記第2の繊維は、高融点PET繊維よりも融点が低い低融点PET繊維を含む、前記[1]から[4]のいずれか1つに記載のケーブル(1)。
[6]前記第1の繊維及び前記第2の繊維の長さは、約5mm以下である、前記[1]から[5]のいずれか1つに記載のケーブル(1)。
[7]前記第2の繊維の含有率は、10質量%以上90質量%以下である、前記[1]から[6]のいずれか1つに記載のケーブル。
[8]前記[1]から[7]のいずれか1つに記載のケーブル(1)と、前記複数の電線(5、6)の端部に取り付けられたコネクタ(21a、21b)と、を備える、ハーネス(20)。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、ケーブルの端部の加工の際に、テープ部材を除去する手間を抑制することが可能なケーブル及びハーネスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施の形態に係るケーブルを用いた車両の構成の一例を示すブロック図である。
図2】本発明の一実施の形態に係るケーブルの構成の一例を示す横断面図である。
図3】本発明の一実施の形態に係るハーネスの構成の一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[実施の形態]
本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、本発明を実施する上での好適な具体例として示すものであり、技術的に好ましい種々の技術的事項を具体的に例示している部分もあるが、本発明の技術的範囲は、この具体的態様に限定されるものではない。また、各図面における各構成要素の寸法比は、必ずしも実際のケーブル及びハーネスの寸法比と一致するものではない。
【0011】
(ケーブルを適用する車両の説明)
図1は、本実施の形態に係るケーブルを用いた車両の構成を示すブロック図である。図1に示すように、車両100には、電動式の制動装置として、電動パーキングブレーキ(以下、「EPB」ともいう。)101が備えられている。EPB101は、EPB用電気モータ101aと、EPB制御部101bと、を備えている。
【0012】
EPB用電気モータ101aは、車両100の車輪102に搭載されている。EPB制御部101bは、車両100のECU(電子制御ユニット)103に搭載されている。なお、EPB制御部101bは、ECU103以外のコントロールユニットに搭載されていてもよく、専用のハードウェアユニットに搭載されていてもよい。
【0013】
図示していないが、EPB用電気モータ101aには、ブレーキパッドが取り付けられたピストンが設けられており、当該ピストンをEPB用電気モータ101aの回転駆動により移動させることで、ブレーキパッドを車輪102の車輪のディスクロータに押し付け、制動力を発生させるように構成されている。EPB用電気モータ101aには、EPB用電気モータ101aに駆動電流を供給するための電源線として一対の第1の電線5(図2参照)が接続されている。
【0014】
EPB制御部101bは、車両100の停止時に、パーキングブレーキ作動スイッチ101cがオフ状態からオン状態に操作されたとき、所定時間(例えば1秒間)にわたってEPB用電気モータ101aに駆動電流を出力することにより、ブレーキパッドを車輪102のディスクロータに押し付けた状態とし、車輪102に制動力を発生させるように構成されている。
【0015】
また、EPB制御部101bは、パーキングブレーキ作動スイッチ101cがオン状態からオフ状態に操作されたとき、あるいは、アクセルペダルが踏込操作されたときに、EPB用電気モータ101aに駆動電流を出力し、ブレーキパッドを車輪のディスクロータから離間させて、車輪102への制動力を解除するように構成される。
【0016】
つまり、EPB101の作動状態は、パーキングブレーキ作動スイッチ101cがオンされてから、パーキングブレーキ作動スイッチ101cがオフされるかアクセルペダルが踏み込まれるまで維持されるように構成されている。なお、パーキングブレーキ作動スイッチ101cは、レバー式又はペダル式のスイッチであってもよい。
【0017】
また、車両100には、ABS装置104が搭載されている。ABS装置104は、ABSセンサ104aと、ABS制御部104bと、を備えている。
【0018】
ABSセンサ104aは、走行中の車輪102の回転速度を検出するものであり、車輪102に搭載されている。ABS制御部104bは、急停止時に車輪102がロックされないように、ABSセンサ104aの出力に基づいてEPB101を制御し、車輪102の制動力を制御するものであり、ECU103に搭載されている。ABSセンサ104aには、信号線として第2の電線6(図2参照)が接続されている。
【0019】
2本の第1の電線5と2本の第2の電線6を含む1本の多芯電線8との周囲にテープ部材3を巻き付けて一括して外部シース4(図2参照)で被覆したものが、本実施の形態に係るケーブル1である。車輪102側から延出されたケーブル1は、車体105に設けられた中継ボックス106内にて電線群107に接続され、電線群107を介してECU103やバッテリ(不図示)に接続されている。
【0020】
図1では、図の簡略化のために1つの車輪102のみを示しているが、EPB用電気モータ101a、及びABSセンサ104aは、車両100の各車輪102に搭載されていてもよく、例えば、車両100の前輪のみ、あるいは後輪のみに搭載されていてもよい。
【0021】
(ケーブル1の説明)
本実施の形態に係るケーブル1について、図2を参照して説明する。図2は、本発明の一実施の形態に係るケーブル1の構成の一例を示す横断面図である。図2に示すように、ケーブル1は、2本の第1の電線5と、一対(2本)の第2の電線6が撚り合わされた状態で内部シース7に被覆されて構成された多芯電線8と、これら2本の第1の電線5と1本の多芯電線8とが撚り合わされてなる集合体9の周囲を覆うテープ部材3と、このテープ部材3の外周に被覆されている外部シース4と、を備えている。
【0022】
ここでは、ケーブル1が、2本の第1の電線5及び2本の第2の電線6(1本の多芯電線8)の合計3本の電線を有している構成を例に挙げて説明するが、電線の本数は、3本に限定されるものではない。また、例えば、多数の電線を有する場合、複数の電線を撚り合わせた内層部の周囲に複数の電線を螺旋状に巻き付けて外層部を形成した多層撚りの構成となっていてもよい。
【0023】
〔第1の電線5〕
本実施の形態では、第1の電線5は、車両100の車輪102に搭載されたEPB用電気モータ101aに駆動電流を供給するための電源線として用いられる。第1の電線5は、銅等の良導電性の素線が撚り合わされてなる第1の導体51の周囲に、例えば、架橋ポリエチレン等の絶縁性の樹脂からなる第1の絶縁体52を被覆して構成される。
【0024】
第1の導体51に用いる素線としては、直径0.05mm以上0.30mm以下のものを用いることができる。直径0.05mm未満の素線を用いた場合、十分な機械的強度が得られず耐屈曲性が低下する虞があり、直径0.30mmより大きい素線を用いた場合、ケーブル1の可撓性が低下する虞がある。
【0025】
第1の導体51の外径、及び第1の絶縁体52の厚さは、要求される駆動電流の大きさに応じて適宜設定すればよい。例えば、第1の電線5がEPB用電気モータ101aに駆動電流を供給するための電源線であることを考慮すると、第1の導体51の外径を1.5mm以上3.0mm以下に設定することが好ましい。
【0026】
〔第2の電線6〕
本実施の形態では、第2の電線6は、車輪102に搭載されたABSセンサ104a用の信号線として用いられる。第2の電線6は、銅等の良導電性の素線が撚り合わされてなる第2の導体61の周囲に、架橋ポリエチレン等の絶縁性の樹脂からなる第2の絶縁体62を被覆して構成される。第2の導体61に用いる素線としては、第1の導体51に用いる素線と同様に、直径0.05mm以上0.30mm以下のものを用いることができる。
【0027】
第2の電線6の外径は、第1の電線5の外径よりも小さい。具体的には、第2の電線6は、1.0mm以上1.8mm以下の外径を有する。また、第2の導体61は、0.4mm以上1.0mm以下の外径を有する。
【0028】
〔多芯電線8〕
多芯電線8は、一対(すなわち、2本)の第2の電線6が互いに接触して撚り合わされた状態で一括して内部シース7に被覆されている。内部シース7は、例えば、熱可塑性ポリウレタン等のウレタン系の樹脂により形成されている。なお、多芯電線8の外径は、第1の電線5の外径よりも大きい。
【0029】
一対の第2の電線6の撚りピッチ(以下、「第1の撚りピッチ」ともいう。)は、第2の電線6の外径を考慮し、第2の電線6に不要な負荷がかからない程度に設定するとよい。ここでは、第1の撚りピッチを約30mmとしたが、第1の撚りピッチは、この値に限定されるものではない。なお、第1の撚りピッチとは、任意の第2の電線6が多芯電線8の周方向において同じ位置となる多芯電線8の長手方向に沿った間隔である。
【0030】
〔集合体9〕
集合体9とは、2本の第1の電線5と多芯電線8とを撚り合わせて構成した電線の束をいう。本実施の形態では、2本の第1の電線5と多芯電線8とは、互いに接触しており、2本の第1の電線5同士も互いに接触している。
【0031】
集合体9の外径は、例えば、5mm~9mm程度である。集合体9における2本の第1の電線5及び多芯電線8の撚りピッチ(以下、「第2の撚りピッチ」ともいう。)は、集合体9の外径を考慮し、第1の電線5及び多芯電線8に不要な負荷がかからない程度に設定するとよい。例えば、第2の撚りピッチは、約50mmに設定してよい。なお、第2の撚りピッチとは、集合体9を構成する任意の電線(第1の電線5又は多芯電線8)が集合体9の周方向において同じ位置となる集合体9の長手方向に沿った間隔である。
【0032】
〔テープ部材3〕
集合体9の周囲には、テープ部材3が螺旋状に巻き付けられている。テープ部材3は、2本の第1の電線5と、多芯電線8とに接触している。テープ部材3は、外部シース4が集合体9側に入り込まないようにするために設けられるものであり、ケーブル1の加工性を高める役割を果たしている。テープ部材3は、例えば、不織布からなる。
【0033】
テープ部材3は、外部シース4の内周面4aに貼り付きやすい性質を有する材料を含んで形成されている。例えば、テープ部材3は、高融点PET(ポリエチレンテレフタレート)繊維と、所定の含有率(100%よりも小さい値)の低融点PET(ポリエチレンテレフタレート)繊維と、を混合させて形成されている。高融点PET繊維は、第1の繊維の一例である。低融点PET繊維は、第2の繊維の一例である。
【0034】
低融点PET繊維の融点は、高融点PET繊維の融点よりも低い。また、低融点PET繊維の融点は、外部シース4の押出成形温度よりも低い。また、高融点PET繊維の融点は、外部シース4の押出成形温度よりも高い。なお、外部シース4の押出成形温度とは、外部シース4を押出成形による被覆成形によってテープ部材3の周囲に被覆するときの温度をいう。
【0035】
例えば、高融点PET繊維として融点が約250度のPETを用いるとともに、外部シース4として押出成形温度が約230度のウレタン樹脂を用いる場合、低融点PET繊維としては、約220度の融点を有するPET繊維を用いることが好ましい。
【0036】
テープ部材3の材料に低融点PET繊維を含めることにより、押出成形による被覆成形によって外部シース4をテープ部材3に被覆する際に、テープ部材3の一部の成分である低融点PET繊維が押出形成の際の温度によって軟化又は溶融して外部シース4の内周面4aに貼り付く。このため、別途テープ部材3に接着剤を塗布せずとも、テープ部材3を外部シース4と一体化させることができる。
【0037】
但し、低融点PET繊維の含有率を100%とすると、すなわち、高融点PET繊維を含めずテープ部材3の全てを低融点PET繊維からなるものとすると、外部シース4の被覆形成時に押出形成温度によってテープ部材3の全体が軟化又は溶融してしまう。このため、テープ部材3と外部シース4との結びつきが強くなりすぎてケーブル1の可とう性の低下を招く等の不都合が生じる虞がある。したがって、テープ部材3として、低融点PET繊維のみならず、高融点PET繊維を混合させたものを用いる。なお、好ましくは、低融点PET繊維の含有率(テープ部材3内の低融点PET繊維の総重量/テープ部材3の重量)は、10質量%以上90質量%以下である。低融点PET繊維の含有率が、10質量%より小さいと、テープ部材3が外部シース4の内周面4aに貼り付きにくくなる虞がある。また、低融点PET繊維の含有率が、90質量%より大きいと、ケーブル1の可とう性が低下する虞がある。なお、これら虞をより抑制するという観点からいえば、低融点PET繊維の含有率は、20質量%以上80質量%以下であることがより好ましい。
【0038】
また、上記の高融点PET繊維及び低融点PET繊維の長さは、短い方が好ましい。これら繊維を短くすることにより、テープ部材3を除去する際の毛羽立ちの発生を抑制することができる。高融点PET繊維及び低融点PET繊維の長さは、好ましくは、約5mm以下である。
【0039】
なお、テープ部材3に混合させる低融点繊維の材料は、かならずしも低融点PET繊維に限定されるものではなく、押出形成温度によって軟化又は溶融して外部シース4の素材に貼り付き、外部シース4と一体化できるものであれば他のものでもよい。また、テープ部材3は、集合体9に必ずしも螺旋状に巻き付けなくてもよく、例えば、縦添えで巻き付けてもよい。なお、本実施の形態では、テープ部材3は、融点の異なる2種類の繊維を混合させて形成されたものであるが、テープ部材3は、融点のそれぞれ異なる3種類以上の繊維を混合させて形成されたものであってもよい。
【0040】
〔外部シース4〕
テープ部材3の外周には、外部シース4が設けられている。外部シース4は、上述したように、例えば、押出方式等の被覆成形によって所定の押出成形温度下においてテープ部材3に被覆される。外部シース4は、例えば、熱可塑性ポリウレタン等のウレタン樹脂からなる。
【0041】
〔シールド層〕
第1の電線5の用途等に応じて、テープ部材3と外部シース4の間、あるいは外部シース4の外周にシールド層(不図示)を設けてもよい。シールド層は、例えば、導線を編組して形成される。
【0042】
〔介在〕
2本の第1の電線5と、多芯電線8との間に形成された隙間に、ケーブル1の長手方向に延びる糸状(繊維状)の複数の介在を配置し(図示せず)、これらの介在を第1の電線5と多芯電線8と共に撚り合わせることによって集合体9を構成してもよい。複数の介在を設けることにより、集合体9の外周にテープ部材3を巻き付けた際の断面形状をより円形状に近づけることができる。なお、介在は、2本の第1の電線5と多芯電線8とで囲まれる谷間にさらに配置してもよい。
【0043】
介在としては、ポリプロピレンヤーンや、スフ糸(レーヨンステープルファイバー)、アラミド繊維、ナイロン繊維、あるいは繊維系プラスチック等の繊維状体や、紙もしくは綿糸を用いることができる。
【0044】
(ケーブル1を用いたハーネスの説明)
図3は、本実施の形態に係るハーネスの概略構成図である。図3に示すように、ハーネス20は、本実施の形態に係るケーブル1と、2本の第1の電線5及び多芯電線8のうち少なくとも何れかの端部に取り付けられたコネクタと、を備えて構成される。
【0045】
図3では、図示左側が車輪102側の端部を示し、図示右側が車体105側(中継ボックス106側)の端部を示している。以下の説明では、ハーネス20の車輪102側の端部を「一端部」、車体105側(中継ボックス106側)の端部を「他端部」という。
【0046】
2本の第1の電線5及び多芯電線8のうち、2本の第1電線5の一端部には、EPB用電気モータ101aとの接続のための車輪側電源コネクタ21aが取り付けられ、1対の第1電線5の他端部には、中継ボックス106内における電線群107との接続のための車体側電源コネクタ21bが取り付けられている。
【0047】
多芯電線8の一端部、具体的には、1対の第2の電線6の一端部には、内部シース7を覆うように樹脂モールドにより形成されたABSセンサ104aが取り付けられ、多芯電線8の他端部、具体的には、1対の第2の電線6の他端部には、中継ボックス106内における電線群107との接続のための車体側ABS用コネクタ22が取り付けられている。
【0048】
なお、ここでは、第1の電線5と多芯電線8(すなわち、第2の電線6)とに個別にコネクタを設ける場合を説明したが、2本の第1の電線5及び一対の第2の電線6を一括して接続する専用のコネクタを備えるようにしてもよい。
【0049】
(実施の形態の作用及び効果)
以上のように、本発明の実施の形態によれば、テープ部材3を第1の繊維と、第1の繊維の融点よりも低い融点を有する第2の繊維とを混合させて形成することにより、テープ部材3を外部シース4の内周面4aに貼り付けやすくすることができる。これにより、ケーブル1の端部の加工の際に、外部シース4を剥ぐ際、テープ部材3が外部シース4とともに剥がれやすくなるため、テープ部材3が集合体9側に残ることを抑制することが可能となる。これにより、ケーブルの端部の加工の際に、テープ部材を除去する手間を抑制することが可能となる。
【0050】
例えば、テープ部材3を1種類のPET繊維(例えば、高融点PET繊維)のみで形成すると、テープ部材3が外部シース4に貼り付きにくくなる虞がある。そのため、ケーブル1の端部の加工における外部シース4を剥ぐ際に、テープ部材3が外部シース4とともに剥がれず集合体9側に残り、この残ったテープ部材3を集合体9から除去するのに手間を要する場合があった。本発明によれば、上記のような構成と比較してケーブル1の加工の際にテープ部材3が集合体9側に残ることが抑制されるため、テープ部材3を除去する手間を省くことができる。
【0051】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【符号の説明】
【0052】
1:ケーブル、3:テープ部材、4:外部シース、4a:内周面、5:第1の電線、51:第1の導体、52:第1の絶縁体、6:第2の電線、61:第2の導体、62:第2の絶縁体、7:内部シース、8:多芯電線、9:集合体、20:ハーネス、21a:車輪側電源コネクタ、21b:車体側電源コネクタ、22:車体側ABS用コネクタ、100:車両、101:電動パーキングブレーキ(EPB)、101a:EPB用電気モータ、101b:EPB制御部、101c:パーキングブレーキ作動スイッチ、102:車輪、104:ABS装置、104a:ABSセンサ、104b:ABS制御部、105:車体、106:中継ボックス、107:電線群

図1
図2
図3