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特許7420249チューブユニット、脱気モジュール、及びチューブユニットの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】チューブユニット、脱気モジュール、及びチューブユニットの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 19/00 20060101AFI20240116BHJP
   B01D 61/00 20060101ALI20240116BHJP
   B01D 63/06 20060101ALI20240116BHJP
   B01D 71/32 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
B01D19/00 H
B01D61/00
B01D63/06
B01D71/32
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2022530119
(86)(22)【出願日】2021-05-26
(86)【国際出願番号】 JP2021020026
(87)【国際公開番号】W WO2021251144
(87)【国際公開日】2021-12-16
【審査請求日】2022-10-17
(31)【優先権主張番号】P 2020099157
(32)【優先日】2020-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100185591
【弁理士】
【氏名又は名称】中塚 岳
(74)【代理人】
【識別番号】100130052
【弁理士】
【氏名又は名称】大阪 弘一
(72)【発明者】
【氏名】川島 和保
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 明
(72)【発明者】
【氏名】菅沼 洋平
(72)【発明者】
【氏名】大井 和美
【審査官】横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-052024(JP,A)
【文献】特開平01-131392(JP,A)
【文献】特開2008-289977(JP,A)
【文献】特開平01-306226(JP,A)
【文献】特開2018-153715(JP,A)
【文献】特開2005-058950(JP,A)
【文献】特開平06-106037(JP,A)
【文献】特開2010-264405(JP,A)
【文献】特開2007-319854(JP,A)
【文献】特開2001-246232(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 19/00
B01D 53/22
B01D 61/00-71/82
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のチューブと、
前記複数のチューブの端部を結束する結束部と、
前記複数のチューブのそれぞれの前記端部に挿入されて、前記複数のチューブのそれぞれの前記端部を内側から支持する筒体と、を備え
前記結束部は、
前記複数のチューブに外嵌された外筒と、
前記複数のチューブのそれぞれと前記外筒との間に充填された封止部と、を有する、
チューブユニット。
【請求項2】
前記筒体は、円筒状に形成されている、
請求項1に記載のチューブユニット。
【請求項3】
前記筒体は、六角筒状に形成されている、
請求項1に記載のチューブユニット。
【請求項4】
前記チューブは、前記結束部により結束されているチューブ端部と、前記結束部により結束されていないチューブ中央部を有し、
前記筒体の外周長は、前記チューブ中央部の内周長の80%以上110%以下である、
請求項1~3の何れか一項に記載のチューブユニット。
【請求項5】
前記チューブは、前記結束部により結束されているチューブ端部と、前記結束部により結束されていないチューブ中央部を有し、
前記チューブの延在方向において、前記筒体の長さは、前記チューブ端部の長さの1%以上200%以下である、
請求項1~4の何れか一項に記載のチューブユニット。
【請求項6】
前記チューブは、フッ素樹脂を含有する、
請求項1~5の何れか一項に記載のチューブユニット。
【請求項7】
前記筒体は、セラミックで構成されている、
請求項1~6の何れか一項に記載のチューブユニット。
【請求項8】
前記複数のチューブのそれぞれの端部は、互いに離間している、
請求項1~7の何れか一項に記載のチューブユニット。
【請求項9】
前記封止部の融点は、前記チューブの融点よりも低い、
請求項1~8の何れか一項に記載のチューブユニット。
【請求項10】
前記封止部の融点は、前記チューブの分解温度よりも低い、
請求項1~9の何れか一項に記載のチューブユニット。
【請求項11】
前記外筒の融点は、前記チューブの融点よりも低い、
請求項1~10の何れか一項に記載のチューブユニット。
【請求項12】
前記外筒の融点は、前記チューブの分解温度よりも低い、
請求項1~11の何れか一項に記載のチューブユニット。
【請求項13】
液体を脱気するための脱気モジュールであって、
請求項1~12の何れか一項に記載されたチューブユニットと、
前記チューブユニットが収容されて、前記複数のチューブのそれぞれの内部空間と前記複数のチューブの外部空間とを隔てるハウジングと、を備え、
前記複数のチューブのそれぞれは、気体を透過するが前記液体を透過しないチューブ状の膜であり、
前記ハウジングは、前記複数のチューブのそれぞれの前記内部空間に連通された内部空間用開口と、前記複数のチューブの前記外部空間に連通された外部空間用開口と、を有する、
脱気モジュール。
【請求項14】
前記液体は、エステル系である、
請求項13に記載の脱気モジュール。
【請求項15】
複数のチューブのそれぞれの端部に、前記複数のチューブのそれぞれを内側から支持する筒体を挿入する筒体挿入ステップと、
前記複数のチューブの前記端部を結束する結束ステップと、を備え
前記結束ステップは、
前記複数のチューブのそれぞれの前記端部の少なくとも一つに、熱溶融性樹脂からなる内スリーブを外嵌する内スリーブ外嵌ステップと、
前記複数のチューブの前記端部に、熱収縮性樹脂からなる外スリーブを外嵌する外スリーブ外嵌ステップと、
前記内スリーブ外嵌ステップ及び前記外スリーブ外嵌ステップの後に、前記複数のチューブの前記端部を加熱して、前記外スリーブを収縮させるとともに前記内スリーブを溶融させる加熱ステップと、を有する、
チューブユニットの製造方法。
【請求項16】
前記加熱ステップは、前記筒体挿入ステップの後に行う、
請求項15に記載のチューブユニットの製造方法。
【請求項17】
前記内スリーブの融点は、前記チューブの融点よりも低い、
請求項15又は16に記載のチューブユニットの製造方法。
【請求項18】
前記内スリーブの融点は、前記チューブの分解温度よりも低い、
請求項15~17の何れか一項に記載のチューブユニットの製造方法。
【請求項19】
前記外スリーブの融点は、前記チューブの融点よりも低い、
請求項15~18の何れか一項に記載のチューブユニットの製造方法。
【請求項20】
前記外スリーブの融点は、前記チューブの分解温度よりも低い、
請求項15~19の何れか一項に記載のチューブユニットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のチューブの端部が結束されたチューブユニット、このチューブユニットを備えた脱気モジュール、及びこのチューブユニットの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、複数本のフッ素樹脂チューブの端部が結束されたフッ素樹脂チューブ束が記載されている。このフッ素樹脂チューブ束は、束ねられた複数本のフッ素樹脂チューブと、これらフッ素樹脂チューブの束の端部に外嵌されたフッ素樹脂スリーブと、複数本のフッ素樹脂チューブとフッ素樹脂スリーブとを接合一体化する熱流動性フッ素樹脂からなる結合部と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平01-131392号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、特許文献1に記載されたフッ素樹脂チューブ束と同様の構成のチューブユニットを作成して、液体の脱気試験を行った。実験に用いたチューブユニットは、複数のチューブの端部が結束部で結束されたものとした。実験の結果、一部のチューブが結束部から剥がれてしまい、そこから液体の漏れが発生した。
【0005】
そこで、本発明の一側面は、チューブが結束部から剥がれるのを抑制できるチューブユニット、このチューブユニットを備えた脱気モジュール、及びこのチューブユニットの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題について研究した結果、下記のような要因によりチューブが結束部から剥がれるとの知見を得た。本発明の一側面は、このような知見に基づいてなされたものである。
【0007】
チューブの内側又は外側に液体を供給すると、チューブは液体により膨潤するが、その後に液体の供給を停止すると、チューブは乾燥して収縮した。このため、供給される液体に起因するチューブの膨潤及び収縮が、チューブが結束部から剥がれる要因の一つであると考えられる。なお、このチューブの膨潤及び収縮は、チューブとしてアモルファスフロロポリマ(非晶性弗素樹脂;AF)等のフッ素樹脂を用いた場合や、液体として酢酸エチル等のエステル系を用いた場合に、特に顕著に表れた。
【0008】
また、チューブの外側に液体を流し、チューブの内側を吸気することで液体を脱気する外部潅流型の場合、チューブの内側の負圧により、チューブが収縮したり部分的に内側に撓んだりした。このため、チューブ内の負圧に起因するチューブの収縮又は撓みも、チューブが結束部から剥がれる要因の一つであると考えられる。
【0009】
本発明の一側面に係るチューブユニットは、複数のチューブと、複数のチューブの端部を結束する結束部と、複数のチューブのそれぞれの端部に挿入されて、複数のチューブのそれぞれの端部を内側から支持する筒体と、を備える。
【0010】
このチューブユニットでは、結束部により結束された複数のチューブのそれぞれの端部に筒体が挿入されており、この筒体により複数のチューブのそれぞれが内側から支持されている。このため、チューブの内側又は外側に供給する液体に起因するチューブの膨潤及び収縮や、チューブの内側の負圧に起因するチューブの収縮又は撓み等が発生したとしても、筒体が挿入された位置においては、チューブの形状が保持される。これにより、チューブが結束部から剥がれるのを抑制することができる。
【0011】
筒体は、円筒状に形成されていてもよい。このチューブユニットでは、筒体が円筒状に形成されていることで、筒体を容易且つ安価に製造することができるとともに、複数のチューブの端部を密に配置することができる。
【0012】
筒体は、六角筒状に形成されていてもよい。このチューブユニットでは、筒体が六角筒状に形成されていることで、複数のチューブの端部を細密構造であるハニカム構造に配置することができる。
【0013】
チューブは、結束部により結束されているチューブ端部と、結束部により結束されていないチューブ中央部を有し、筒体の外周長は、チューブ中央部の内周長の80%以上110%以下であってもよい。結束部が熱収縮により形成される場合、チューブ中央部は結束部の熱収縮の影響を受けないが、チューブ端部は結束部の熱収縮により縮径される。この場合、筒体の外周長がチューブ中央部の内周長の80%以上であることで、結束部の熱収縮により、チューブ端部と筒体との間に隙間が生じるのを抑制することができる。一方、筒体の外周長がチューブ中央部の内周長の110%以下であることで、結束部を熱収縮する前に、チューブ端部に筒体を容易に挿入することができる。
【0014】
チューブは、結束部により結束されているチューブ端部と、結束部により結束されていないチューブ中央部を有し、チューブの延在方向Aにおいて、筒体の長さは、チューブ端部の長さの1%以上200%以下であってもよい。
【0015】
このチューブユニットでは、チューブの延在方向Aにおいて、筒体の長さがチューブ端部の長さの1%以上であることで、チューブが結束部から完全に剥がれるのを抑制することができる。一方、チューブの延在方向Aにおいて、筒体の長さがチューブ端部の長さの200%以下であることで、筒体の一部がチューブ端部から出た状態となる。このため、結束部により結束されていないチューブ中央部において、チューブの内側又は外側に供給する液体に起因するチューブの膨潤及び収縮や、チューブの内側の負圧に起因するチューブの収縮又は撓み等が発生したとしても、これらのチューブの変形がチューブ端部に影響するのを抑制することができる。
【0016】
チューブは、フッ素樹脂を含有してもよい。このチューブユニットでは、チューブがフッ素樹脂を含有することで、耐薬品性を向上することができる。
【0017】
筒体は、セラミックで構成されていてもよい。このチューブユニットでは、筒体がセラミックで構成されていることで、チューブの内側又は外側に液体を供給した際に、筒体の成分が液体に溶出するのを抑制することができる。このため、例えば、液体クロマトグラフィーのような異物の溶出が問題となる装置にも、このチューブユニットを適用することができる。
【0018】
結束部は、複数のチューブに外嵌された外筒と、複数のチューブのそれぞれと外筒との間に充填された封止部と、を有してもよい。このチューブユニットでは、複数のチューブのそれぞれと外筒との間に封止部が充填されていることで、結束部の端面から液体や気体等の流体を供給した際に、当該液体が複数のチューブの間に漏れ出すのを抑制できる。
【0019】
複数のチューブのそれぞれの端部は、互いに離間していてもよい。このチューブユニットでは、複数のチューブのそれぞれの端部が互いに離間していることで、複数のチューブのそれぞれの端部が封止部で覆われた状態となる。これにより、複数のチューブのそれぞれの端部の界面から流体が漏れ出すのを抑制することができる。
【0020】
本発明の一側面に係る脱気モジュールは、液体を脱気するための脱気モジュールであって、上述した何れかのチューブユニットと、チューブユニットが収容されて、複数のチューブのそれぞれの内部空間と複数のチューブの外部空間とを隔てるハウジングと、を備え、複数のチューブのそれぞれは、気体を透過するが液体を透過しないチューブ状の膜であり、ハウジングは、複数のチューブのそれぞれの内部空間に連通された内部空間用開口と、複数のチューブの外部空間に連通された外部空間用開口と、を有する。
【0021】
この脱気モジュールでは、内部空間用開口又は外部空間用開口の何れか一方から吸気しながら内部空間用開口又は外部空間用開口の何れか他方に液体を供給することで、脱気モジュールに供給された液体は、複数のチューブを通過する際に脱気される。そして、上記のチューブユニットを備えるため、チューブが結束部から剥がれるのを抑制することができる。これにより、脱気モジュールの長寿命化を図ることができる。
【0022】
液体は、エステル系であってもよい。エステル系の液体をチューブの内側又は外側に供給すると、チューブの膨潤及び収縮が顕著に表れる。この脱気モジュールでは、上述したチューブユニットを備えるため、エステル系の液体をチューブの内側又は外側に供給しても、チューブが結束部から剥がれるのを抑制することができる。
【0023】
本発明の一側面に係るチューブユニットの製造方法は、複数のチューブのそれぞれの端部に、複数のチューブのそれぞれを内側から支持する筒体を挿入する筒体挿入ステップと、複数のチューブの端部を結束する結束ステップと、を備えてもよい。このチューブユニットの製造方法では、複数のチューブのそれぞれの端部に筒体を挿入し、この筒体により複数のチューブのそれぞれを内側から支持する。また、複数のチューブの端部において複数のチューブを結束する。このため、チューブの内側又は外側に供給する液体に起因するチューブの膨潤及び収縮や、チューブの内側の負圧に起因するチューブの収縮又は撓み等が発生したとしても、筒体が挿入された位置においては、チューブの形状が保持される。これにより、チューブが結束部から剥がれるのを抑制することができる。
【0024】
結束ステップは、複数のチューブのそれぞれの端部の少なくとも一つに、熱溶融性樹脂からなる内スリーブを外嵌する内スリーブ外嵌ステップと、複数のチューブの端部に、熱収縮性樹脂からなる外スリーブを外嵌する外スリーブ外嵌ステップと、内スリーブ外嵌ステップ及び外スリーブ外嵌ステップの後に、複数のチューブの端部を加熱して、外スリーブを収縮させるとともに内スリーブを溶融させる加熱ステップと、を有してもよい。このチューブユニットの製造方法では、複数のチューブのそれぞれの端部の少なくとも一つに内スリーブを外嵌し、複数のチューブの端部に外スリーブを外嵌し、複数のチューブの端部を加熱して、外スリーブを収縮させるとともに内スリーブを溶融させる。これにより、複数のチューブのそれぞれの端部は、収縮する外スリーブにより集められて、内スリーブの熱溶融性樹脂により結束される。これにより、複数のチューブの端部を容易に結束することができる。
【0025】
加熱ステップは、筒体挿入ステップの後に行ってもよい。このチューブユニットの製造方法では、複数のチューブのそれぞれの端部に筒体を挿入してから、複数のチューブの端部を加熱して、外スリーブを収縮させるとともに内スリーブを溶融させる。これにより、外スリーブが収縮した際に、複数のチューブのそれぞれの端部は、筒体に当接する。これにより、複数のチューブのそれぞれの端部が小さくなり過ぎるのを抑制することができるとともに、複数のチューブのそれぞれの端部の形状を筒体の外形に形成することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の一側面によれば、チューブが結束部から剥がれるのを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】脱気モジュールの一例を示す概略断面図である。
図2】チューブユニットの一例を示す概略斜視図である。
図3図2に示すIII-III線における概略断面図である。
図4図3に示すIV-IV線における概略断面図である。
図5図5(a)、図5(b)、図5(c)及び図5(d)は、筒体の一例を示す概略斜視図である。
図6図5(c)の筒体を用いた場合の、図2に示すIII-III線における概略断面図である。
図7図7(a)、図7(b)、図7(c)及び図7(d)は、筒体と封止部との関係の一例を示す概略断面図である。
図8図8(a)及び図8(b)は、チューブ結束方法を説明するための図である。
図9図9(a)及び図9(b)は、チューブ結束方法を説明するための図である。
図10図10(a)及び図10(b)は、チューブ結束方法を説明するための図である。
図11図2に示すIII-III線における変形例の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照して、実施形態のチューブユニット、脱気モジュール及びチューブユニットの製造方法について詳細に説明する。なお、全図中、同一または相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0029】
図1は、脱気モジュールの一例を示す概略断面図である。図1に示すように、脱気モジュール1は、液体を脱気するためのモジュールである。脱気モジュール1は、複数のチューブ2が両端部において結束されたチューブユニット3と、チューブユニット3を収容するハウジング4と、を備えている。脱気モジュール1は、複数のチューブ2により、ハウジング4内が、複数のチューブ2のそれぞれの内部空間A1と、複数のチューブ2の外部空間A2と、の二つの領域に分けられている(図4参照)。本実施形態の脱気モジュール1は、内部潅流型の脱気モジュールであって、内部空間A1は、液体が供給される領域であり、外部空間A2は、吸気される領域である。そして、脱気モジュール1は、複数のチューブ2のそれぞれの内部空間A1に液体が供給されるとともに、複数のチューブ2の外部空間A2から吸気されることで、液体を脱気する。但し、脱気モジュール1は、外部潅流型の脱気モジュールであってもよい。つまり、内部空間A1は、吸気される領域であり、外部空間A2は、液体が供給される領域であってもよい。脱気モジュール1が外部潅流型の脱気モジュールである場合、脱気モジュール1は、複数のチューブ2の外部空間A2に液体が供給されるとともに、複数のチューブ2のそれぞれの内部空間A1から吸気されることで、液体を脱気する。
【0030】
脱気モジュール1を液体クロマトグラフィーにおける液体の脱気に用いる場合は、脱気モジュール1で脱気する液体は、例えば、関東化学株式会社の高速液体クロマトグラフィー用溶媒「HIL-SOL」、大量分取液体クロマトグラフィー用溶媒「Presol」等として使われる、アセトニトリル等のニトリル系、アセトン等のケトン系、酢酸エチル等のエステル系、などの溶媒が用いられる。
【0031】
チューブ2は、気体を透過するが液体を透過しないチューブ状の膜である。チューブ2の素材、膜形状、膜形態等は、特に制限されない。チューブ2の素材としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体(エチレン共重合樹脂)(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、アモルファスフロロポリマ(非晶性弗素樹脂;AF)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等のフッ素樹脂、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)、シリコン、ポリイミド、ポリアミドが挙げられる。アモルファスフロロポリマとしては、例えば、テフロン(登録商標)AFが挙げられる。
【0032】
図2は、チューブユニットの一例を示す概略斜視図であり、図3は、図2に示すIII-III線における概略断面図である。図4は、図3に示すIV-IV線における概略断面図である。なお、図面では、一例として、チューブユニット3が7本のチューブ2で構成されている場合を図示しているが、チューブ2の本数は、特に限定されない。図2図4に示すように、チューブユニット3は、複数のチューブ2と、複数のチューブ2の一方側の端部及び他方側の端部をそれぞれ結束する一対の結束部5,5と、複数のチューブ2のそれぞれに挿入された筒体6と、を備える。一対の結束部5,5は、ハウジング4に取り付けられる部位でもある。一対の結束部5,5は、互いに同じ構成であるため、以下では、一方の結束部5を代表して説明する。但し、一対の結束部5,5は、互いに異なる構成であってもよい。
【0033】
結束部5は、複数のチューブ2の両端部を結束し、複数のチューブ2の中央部を結束しない。複数のチューブ2のそれぞれにおいて、結束部5により結束される部分をチューブ端部2Aといい、結束部5により結束されない部分をチューブ中央部2Bという。結束部5は、複数のチューブ2の端部に外嵌された外筒7と、複数のチューブ2のそれぞれの端部と外筒7との間に充填された封止部8と、を備える。
【0034】
外筒7は、略円筒状に形成されて、結束部5の最外層を成す。外筒7は、ハウジング4に取り付けられる部位である。外筒7の素材としては、例えば、PFA、PTFE等のフッ素樹脂が挙げられる。
【0035】
封止部8は、複数のチューブ2の端部(チューブ端部2A)と外筒7との間に充填されて、複数のチューブ2の端部を結束するとともに複数のチューブ2の端部と外筒7との間を封止する。つまり、封止部8は、複数のチューブ2のそれぞれの内部空間A1には充填されておらず、複数のチューブ2の間と、複数のチューブ2と外筒7との間と、に充填されている。また、複数のチューブ2の間に封止部8が充填されていることで、複数のチューブ2のそれぞれの端部が互いに離間している。このため、封止部8の端面からは、複数のチューブ2のそれぞれの内部空間A1のみが開放されている。封止部8の素材としては、例えば、FEP、PFA等のフッ素樹脂が挙げられる。
【0036】
結束部5は、例えば、後述するように、封止部8となる内スリーブ32(図9参照)を加熱溶融するとともに、外筒7となる外スリーブ33(図10参照)を加熱収縮することにより形成される。このため、複数のチューブ2のそれぞれにおいて、チューブ中央部2Bは結束部5の形成により収縮されないが、チューブ端部2Aは結束部5の形成により収縮される。
【0037】
筒体6は、複数のチューブ2のそれぞれの端部に挿入されて、複数のチューブ2のそれぞれの端部を内側から支持する。筒体6は、筒状に形成されている。筒体6の筒形状としては、例えば、図5(a)に示すような真円、図5(b)に示すような楕円等の円筒状、図5(c)に示すような六角、図5(d)に示すような四角等の角筒状とすることができる。本実施形態では、筒体6は、図5(a)に示すような真円の円筒状に形成されている筒体6が、図5(c)に示すような六角の角筒状に形成されている場合は、図6に示すように、複数のチューブ2の端部を細密構造であるハニカム構造に配置することができる。
【0038】
筒体6の外周長は、複数のチューブ2のそれぞれの端部に挿入されて、複数のチューブ2のそれぞれの端部を内側から支持することができれば、特に限定されない。例えば、筒体6の外周長は、チューブ中央部2Bの内周長の80%以上110%以下としてもよい。この場合、筒体6の外周長は、チューブ中央部2Bの内周長の95%以上105%以下としてもよく、98%以上100%以下としてもよい。筒体6の外周長とは、筒体6の中心軸線と直交する断面における、筒体6の外周の長さである。チューブ中央部2Bの内周長とは、チューブ中央部2Bの中心軸線と直交する断面における、チューブ中央部2Bの内周の長さである。
【0039】
複数のチューブ2のそれぞれの端部に挿入されて、複数のチューブ2のそれぞれの端部を内側から支持することができれば、チューブ2の延在方向Aにおける筒体6の長さL1とチューブ端部2Aの長さL2との関係は、特に限定されるものではない。例えば、図4に示すように、チューブ2の延在方向Aにおいて、筒体6の両端とチューブ端部2Aの両端とは同じ位置であってもよい。また、図7(a)に示すように、チューブ端部2Aに対するチューブ中央部2Bとは反対側(図面左側)では、筒体6の先端とチューブ端部2Aの先端とは同じ位置であるが、チューブ端部2Aに対するチューブ中央部2B側(図面右側)では、筒体6の先端がチューブ端部2Aの先端から引っ込んだ位置であってもよい。また、図7(b)に示すように、チューブ端部2Aに対するチューブ中央部2B側(図面右側)では、筒体6の先端とチューブ端部2Aの先端とは同じ位置であるが、チューブ端部2Aに対するチューブ中央部2Bとは反対側(図面左側)では、筒体6の先端がチューブ端部2Aの先端から引っ込んだ位置であってもよい。また、図7(c)に示すように、チューブ端部2Aに対するチューブ中央部2Bとは反対側(図面左側)とチューブ端部2Aに対するチューブ中央部2B側(図面右側)の両側において、筒体6の先端がチューブ端部2Aの先端から引っ込んだ位置であってもよい。また、図7(d)に示すように、チューブ端部2Aに対するチューブ中央部2B側(図面右側)では、筒体6の先端がチューブ端部2Aの先端から出た位置であってもよい。
【0040】
また、チューブ2の延在方向Aにおいて、筒体6の長さL1は、複数のチューブ2のそれぞれの端部に挿入されて、複数のチューブ2のそれぞれの端部を内側から支持することができれば、特に限定されない。例えば、チューブ2の延在方向Aにおいて、筒体6の長さL1は、チューブ端部2Aの長さL2の1%以上200%以下としてもよい。この場合、チューブ2の延在方向Aにおいて、筒体6の長さL1は、チューブ端部2Aの長さL2の10%以上100%以下としてもよく、5%以上50%以下としてもよい。
【0041】
筒体6の素材は、特に限定されるものではない。例えば、筒体6の素材としては、ジルコニア、アルミナ等のセラミック、ステンレス鋼等の金属、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)等のフッ素樹脂が挙げられる。脱気モジュール1で脱気する液体に筒体6の成分が溶出するのを抑制する観点及び加工性の観点からは、筒体6をセラミックで構成することが好ましい。
【0042】
図1に示すように、ハウジング4は、ハウジング本体11と、蓋部12と、第一コネクタ13と、第二コネクタ14と、を備えている。
【0043】
ハウジング本体11は、チューブユニット3が収容される部位である。ハウジング本体11は、一方の端面に開口を有する円筒状の容器である。蓋部12は、ハウジング本体11に気密に接合されてハウジング本体11の開口を塞ぐ蓋である。ハウジング本体11に対する蓋部12の接合は、例えば、溶着、螺合、嵌合等により行うことができる。なお、製造上の問題が無ければ、ハウジング4は、ハウジング本体11と蓋部12とに分けられておらず、一体的に形成されていてもよい。
【0044】
蓋部12には、第一コネクタ13及び第二コネクタ14が気密に接合されている。第一コネクタ13には、ハウジング4の内外を貫通する内部空間用第一開口15が形成されており、第二コネクタ14には、ハウジング4の内外を貫通する内部空間用第二開口16が形成されている。蓋部12に対する第一コネクタ13及び第二コネクタ14の接合は、例えば、溶着、螺合、嵌合等により行うことができる。
【0045】
第一コネクタ13は、チューブユニット3の一方の結束部5と気密に接合されて、チューブユニット3の一方の結束部5とハウジング4とを気密に接続する。第一コネクタ13は、例えば、段付きの円筒状に形成されて、チューブユニット3の一方の結束部5とハウジング4との間に配置されている。第一コネクタ13には、複数のチューブ2のそれぞれの内部空間A1と連通される第一管18が接合されている。チューブユニット3の一方の結束部5に対する第一コネクタ13の接合は、例えば、溶着、螺合、嵌合等により行うことができる。また、第一管18に対する第一コネクタ13の接合は、例えば、溶着、螺合、嵌合等により行うことができる。
【0046】
第二コネクタ14は、チューブユニット3の他方の結束部5と気密に接合されて、チューブユニット3の他方の結束部5とハウジング4とを気密に接続する。第二コネクタ14は、例えば、段付きの円筒状に形成されて、チューブユニット3の他方の結束部5とハウジング4との間に配置されている。第二コネクタ14には、複数のチューブ2のそれぞれの内部空間A1と連通される第二管19が接合されている。チューブユニット3の他方の結束部5に対する第二コネクタ14の接合は、例えば、溶着、螺合、嵌合等により行うことができる。また、第二管19に対する第二コネクタ14の接合は、例えば、溶着、螺合、嵌合等により行うことができる。
【0047】
ハウジング本体11には、外部空間用開口20が形成されている。外部空間用開口20は、ハウジング4内における複数のチューブ2の外部空間A2から吸気するために、ハウジング本体11に形成された開口である。外部空間用開口20には、ハウジング4内における複数のチューブ2の外部空間A2と連通される第三管21が接合されている。このため、第三管21に吸引ポンプ(不図示)を接続し、吸引ポンプにより外部空間用開口20から吸気することで、ハウジング4内における複数のチューブ2の外部空間A2を減圧できる。外部空間用開口20に対する第三管21の接合は、例えば、溶着、螺合、嵌合等により行うことができる。
【0048】
このように構成される脱気モジュール1を用いて液体を脱気する場合は、第三管21に接続された吸引ポンプによりハウジング4内における複数のチューブ2の外部空間A2を吸気しながら、第一管18に液体を供給するとともに、第二管19から液体を排出する。すると、第一管18に供給された液体は、第一コネクタ13の内部空間用第一開口15を介して複数のチューブ2のそれぞれの内部空間A1に供給される。このとき、ハウジング4内における複数のチューブ2の外部空間A2は減圧された状態となっているため、液体が複数のチューブ2のそれぞれの内部空間A1を通過する際に、液体の溶存気体及び気泡が、複数のチューブ2のそれぞれを透過して、ハウジング4内における複数のチューブ2の外部空間A2に引き込まれる。これにより、液体の脱気が行われる。そして、脱気された液体は、第二コネクタ14の内部空間用第二開口16を介して第二管19に排出される。なお、液体は、第二管19から供給し、第一管18から排出してもよい。
【0049】
次に、チューブユニット3の製造方法の一例について説明する。
【0050】
本実施形態に係るチューブユニット3の製造方法では、筒体挿入ステップ、内スリーブ外嵌ステップ、外スリーブ外嵌ステップ、及び加熱ステップを行う。内スリーブ外嵌ステップ、外スリーブ外嵌ステップ、及び加熱ステップは、複数のチューブ2の端部を結束する結束ステップである。以下では、筒体挿入ステップ、内スリーブ外嵌ステップ、外スリーブ外嵌ステップ、及び加熱ステップの順に行うものとして説明するが、これらのステップは、どのような順により行ってもよい。
【0051】
図8(a)及び図8(b)に示すように、筒体挿入ステップでは、複数のチューブ2のそれぞれの端部に筒体6を挿入する。複数のチューブ2の数は、チューブユニット3を構成するチューブ2の数である。このとき、複数のチューブ2を束ねてチューブ束31とした後に、複数のチューブ2のそれぞれの端部に筒体6を挿入することで、作業性を向上することができる。チューブ束31は、例えば、フッ素樹脂などの作業用テープにより複数のチューブ2を束ねたものとしてもよい。
【0052】
図9(a)に示すように、内スリーブ外嵌ステップでは、複数のチューブ2のそれぞれの端部に、熱溶融性樹脂からなる内スリーブ32を外嵌する。内スリーブ32は、加熱溶融されることで封止部8となる。内スリーブ32を形成する熱溶融性樹脂は、融点以上に加熱されると溶融して流動性を有する樹脂である。この熱溶融性樹脂は、融点近傍まで加熱されると収縮し、融点以上に加熱されると溶融する樹脂であることが好ましい。この熱溶融性樹脂の融点は、複数のチューブ2の融点よりも低いことが好ましく、また、複数のチューブ2の分解温度よりも低いことが好ましい。この熱溶融性樹脂としては、例えば、FEP、PFA等のフッ素樹脂が挙げられる。内スリーブ32の内周長は、複数のチューブ2のそれぞれの外周長以上であり、複数のチューブ2のそれぞれの外周長よりも大きいことが好ましい。
【0053】
図9(b)に示すように、内スリーブ外嵌ステップでは、次に、内スリーブ32を加熱して収縮させて、複数のチューブ2のそれぞれの端部に内スリーブ32を仮固定する。内スリーブ32の仮固定のための加熱温度は、内スリーブ32の融点以下であり、内スリーブ32の融点未満であることが好ましい。これにより、内スリーブ32が複数のチューブ2のそれぞれの端部から脱落するのを抑制することができる。但し、内スリーブ32の脱落が問題にならない場合は、内スリーブ32の仮固定のために内スリーブ32を加熱収縮しなくてもよい。
【0054】
図10(a)に示すように、外スリーブ外嵌ステップでは、複数のチューブ2を束ねたチューブ束31の端部に熱収縮性樹脂からなる外スリーブ33を外嵌する。外スリーブ33は、加熱収縮されることで外筒7となる。外スリーブ33を形成する熱収縮性樹脂は、融点近傍まで加熱されると収縮し、融点以上に加熱されると溶融して流動性を有する樹脂である。この熱収縮性樹脂の融点は、内スリーブ32を形成する熱溶融性樹脂の融点よりも高い。また、この熱収縮性樹脂の融点は、複数のチューブ2の融点よりも低いことが好ましく、また、複数のチューブ2の分解温度よりも低いことが好ましい。この熱収縮性樹脂としては、例えば、PFA、PTFE等のフッ素樹脂が挙げられる。外スリーブ33の内周長は、チューブ束31の外周長以上であり、チューブ束31の外周長よりも大きいことが好ましい。
【0055】
図10(b)に示すように、加熱ステップでは、チューブ束31の端部を加熱して、外スリーブ33を収縮させるとともに内スリーブ32を溶融させる。加熱ステップでは、内スリーブ32の熱溶融性樹脂の融点よりも高く外スリーブ33の熱収縮性樹脂の融点よりも低い温度で、チューブ束31の端部を加熱する。すると、外スリーブ33は、収縮することにより、外スリーブ33と複数のチューブ2との間隔を狭めるとともに、複数のチューブ2の間隔を狭める。また、内スリーブ32の熱溶融性樹脂は、溶融して流動し、外スリーブ33と複数のチューブ2との間と、複数のチューブ2の間と、を封止する。このとき、内スリーブ32の肉厚等を調整することで、外スリーブ33と複数のチューブ2との間と、複数のチューブ2の間と、を適切に封止することができる。つまり、これらの間の領域が大きい場合は、内スリーブ32の肉厚を厚くする。また、内スリーブ32の熱溶融性樹脂だけでは、樹脂量が不足してこれらの間を封止できない場合は、内スリーブ32を多重に配置したり、内スリーブ32と同じ熱溶融性樹脂の部材を追加配置したりすることで、これらの間を封止することができる。
【0056】
このとき、外スリーブ33は、収縮することにより複数のチューブ2のそれぞれの端部を押し潰そうとするが、複数のチューブ2のそれぞれの端部は、筒体6に当接されることで筒体6の外形に合致するように変形する。例えば、複数のチューブ2のそれぞれの内周長に対する筒体6の外周長を変えることで、図3又は図6に示すように、複数のチューブ2のそれぞれの端部を、筒体6の外形に合致した筒状に収縮させることもでき、図11に示すように、複数のチューブ2のそれぞれの端部に、1又は複数の突出部を生じさせて収縮させることもできる。
【0057】
具体的には、筒体6の外周長を、複数のチューブ2のそれぞれの内周長の96%以上99.9%以下とすることで、複数のチューブ2のそれぞれの端部に対する筒体6の挿入容易性を確保しつつ、内スリーブ32及び外スリーブ33が収縮した際の複数のチューブ2のそれぞれの端部の変形を抑制することができる。つまり、筒体6の外周長を、複数のチューブ2のそれぞれの内周長の99.9%以下とすることで、複数のチューブ2のそれぞれの端部に対する筒体6の挿入容易性を確保することができる。なお、筒体6の外周長が複数のチューブ2のそれぞれの内周長の99.9%より大きくても、複数のチューブ2のそれぞれに筒体6を圧入することで、複数のチューブ2のそれぞれの端部に筒体6を挿入することができる。一方、筒体6の外周長を、複数のチューブ2のそれぞれの内周長の96%以上とすることで、内スリーブ32及び外スリーブ33が収縮した際に、複数のチューブ2のそれぞれの端部がだぶつく(たるむ)のを抑制して、複数のチューブ2のそれぞれの端部が変形するのを抑制できる。これにより、図3又は図6に示すように、複数のチューブ2のそれぞれの端部を、筒体6の外形に合致した筒状にすることができる。
【0058】
一方、筒体6の外周長を、複数のチューブ2のそれぞれの内周長の80%以上96%未満とすることで、複数のチューブ2のそれぞれの端部の内部空間A1を確保しつつ、複数のチューブ2のそれぞれの端部に、1又は複数の突出部を生じさせることができる。つまり、筒体6の外周長を、複数のチューブ2のそれぞれの内周長の80%以上とすることで、複数のチューブ2のそれぞれの端部の内部空間A1を確保することができる。一方、筒体6の外周長を、複数のチューブ2のそれぞれの内周長の96%未満とすることで、内スリーブ32及び外スリーブ33が収縮した際に、複数のチューブ2のそれぞれの端部を積極的にだぶつかせて(たるませて)、複数のチューブ2のそれぞれの端部に、チューブ2の延在方向Aに筒状に延びる筒部と、この筒部から半径方向外側に突出する突出部と、を形成することができる。突出部は、複数のチューブ2のそれぞれの端部のだぶついた部分(たるんだ部分)により形成される。
【0059】
なお、チューブ束31から外スリーブ33が脱落するのを抑制する観点から、加熱ステップを行う前に、外スリーブ33を加熱して少し収縮させ、チューブ束31に外スリーブ33を仮固定してもよい。この場合、外スリーブ33の加熱温度は、外スリーブ33の融点以下であり、外スリーブ33の融点未満であることが好ましい。但し、外スリーブ33の脱落が問題にならない場合は、外スリーブ33の仮固定のために外スリーブ33を加熱収縮しなくてもよい。
【0060】
これにより、複数のチューブ2の端部が結束されたチューブユニット3が完成する。
【0061】
以上説明したように、本実施形態に係るチューブユニット3では、結束部5により結束された複数のチューブ2のそれぞれの端部に筒体6が挿入されており、この筒体6により複数のチューブ2のそれぞれが内側から支持されている。このため、チューブ2の内側又は外側に供給する液体に起因するチューブ2の膨潤及び収縮や、チューブ2の内側の負圧に起因するチューブ2の収縮又は撓み等が発生したとしても、筒体6が挿入された位置においては、チューブ2の形状が保持される。これにより、チューブ2が結束部5から剥がれるのを抑制することができる。
【0062】
また、このチューブユニット3では、筒体6が円筒状に形成されていることで、筒体6を容易且つ安価に製造することができるとともに、複数のチューブ2の端部を密に配置することができる。
【0063】
また、このチューブユニット3では、筒体6が六角筒状に形成されていることで、複数のチューブ2の端部を細密構造であるハニカム構造に配置することができる。
【0064】
ところで、結束部5が熱収縮により形成される場合、チューブ中央部2Bは結束部5の熱収縮の影響を受けないが、チューブ端部2Aは結束部5の熱収縮により縮径される。この場合、筒体6の外周長がチューブ中央部2Bの内周長の80%以上であることで、結束部5の熱収縮により、チューブ端部2Aと筒体6との間に隙間が生じるのを抑制することができる。この場合、筒体6の外周長がチューブ中央部2Bの内周長の95%以上とすることで、更には98%以上とすることで、この効果が高まる。一方、筒体6の外周長がチューブ中央部2Bの内周長の110%以下であることで、結束部5を熱収縮する前に、チューブ端部2Aに筒体6を容易に挿入することができる。この場合、筒体6の外周長がチューブ中央部2Bの内周長の105%以下とすることで、更には100%以下とすることで、この効果が高まる。
【0065】
また、このチューブユニット3では、チューブ2の延在方向Aにおいて、筒体6の長さL1がチューブ端部2Aの長さL2の1%以上であることで、チューブ2が結束部5から完全に剥がれるのを抑制することができる。この場合、筒体6の長さL1がチューブ端部2Aの長さL2の10%以上とすることで、更には50%以上とすることで、この効果が高まる。一方、チューブ2の延在方向Aにおいて、筒体6の長さL1がチューブ端部2Aの長さL2の200%以下であることで、筒体6の一部がチューブ端部2Aから出た状態となる。このため、結束部5により結束されていないチューブ中央部2Bにおいて、チューブ2の内側又は外側に供給する液体に起因するチューブ2の膨潤及び収縮や、チューブ2の内側の負圧に起因するチューブ2の収縮又は撓み等が発生したとしても、これらのチューブ2の変形がチューブ端部2Aに影響するのを抑制することができる。この場合、筒体6の長さL1がチューブ端部2Aの長さL2の100%以下とすることで、更には50%以下とすることで、この効果が高まる。
【0066】
また、このチューブユニット3では、チューブ2がフッ素樹脂を含有することで、耐薬品性を向上することができる。
【0067】
また、このチューブユニット3では、筒体6がセラミックで構成されていることで、チューブ2の内側又は外側に液体を供給した際に、筒体6の成分が液体に溶出するのを抑制することができる。このため、例えば、液体クロマトグラフィーのような異物の溶出が問題となる装置にも、このチューブユニット3を適用することができる。
【0068】
また、このチューブユニット3では、複数のチューブ2のそれぞれと外筒7との間に封止部8が充填されていることで、結束部5の端面から液体や気体等の流体を供給した際に、当該液体が複数のチューブ2の間に漏れ出すのを抑制できる。
【0069】
また、このチューブユニット3では、複数のチューブ2のそれぞれの端部が互いに離間していることで、複数のチューブ2のそれぞれの端部が封止部8で覆われた状態となる。これにより、複数のチューブ2のそれぞれの端部の界面から流体が漏れ出すのを抑制することができる。
【0070】
本実施形態に係る脱気モジュール1では、外部空間用開口20から吸気しながら内部空間用第一開口15に液体を供給することで、脱気モジュール1に供給された液体は、複数のチューブ2を通過する際に脱気される。そして、上記のチューブユニット3を備えるため、チューブ2が結束部5から剥がれるのを抑制することができる。これにより、脱気モジュール1の長寿命化を図ることができる。
【0071】
ところで、エステル系の液体をチューブ2の内側又は外側に供給すると、チューブ2の膨潤及び収縮が顕著に表れる。この脱気モジュール1では、上述したチューブユニット3を備えるため、エステル系の液体をチューブ2の内側又は外側に供給しても、チューブ2が結束部5から剥がれるのを抑制することができる。
【0072】
本実施形態に係るチューブユニット3の製造方法では、複数のチューブ2のそれぞれの端部に筒体6を挿入し、この筒体6により複数のチューブ2のそれぞれを内側から支持する。また、複数のチューブ2の端部において複数のチューブ2を結束する。このため、チューブ2の内側又は外側に供給する液体に起因するチューブ2の膨潤及び収縮や、チューブ2の内側の負圧に起因するチューブ2の収縮又は撓み等が発生したとしても、筒体6が挿入された位置においては、チューブ2の形状が保持される。これにより、チューブ2が結束部5から剥がれるのを抑制することができる。
【0073】
また、このチューブユニット3の製造方法では、複数のチューブ2のそれぞれの端部の少なくとも一つに内スリーブ32を外嵌し、複数のチューブ2の端部に外スリーブ33を外嵌し、複数のチューブ2の端部を加熱して、外スリーブ33を収縮させるとともに内スリーブ32を溶融させる。これにより、複数のチューブ2のそれぞれの端部は、収縮する外スリーブ33により集められて、内スリーブ32の熱溶融性樹脂により結束される。これにより、複数のチューブ2の端部を容易に結束することができる。
【0074】
また、このチューブユニット3の製造方法では、複数のチューブ2のそれぞれの端部に筒体6を挿入してから、複数のチューブ2の端部を加熱して、外スリーブ33を収縮させるとともに内スリーブ32を溶融させる。これにより、外スリーブ33が収縮した際に、複数のチューブ2のそれぞれの端部は、筒体6に当接する。これにより、複数のチューブ2のそれぞれの端部が小さくなり過ぎるのを抑制することができるとともに、複数のチューブ2のそれぞれの端部の形状を筒体の外形に形成することができる。
【0075】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0076】
例えば、上記本実施形態では、脱気モジュール1は、内部潅流型とするものとし、外部空間用開口20から吸気しながら、内部空間用第一開口15から内部空間用第二開口16に液体を流すことで、液体を脱気するものとした。しかしながら、脱気モジュールを外部潅流型としてもよい。この場合、例えば、外部空間用開口として、外部空間用第一開口及び外部空間用第二開口の二つの開口を形成し、内部空間用開口として一つの開口を形成し、内部空間用開口から吸気しながら、外部空間用第一開口から内部空間用第二開口に液体を流すことで、液体を脱気するものとしてもよい。
【0077】
また、上記実施形態では、チューブユニットを構成するチューブの数が7本であるものとして説明したが、チューブユニットを構成するチューブの数は特に限定されるものではなく、例えば、数十本、数百本としてもよい。
【0078】
また、上記実施形態では、複数のチューブ2のそれぞれの端部に内スリーブ32を外嵌するものとして説明したが、複数のチューブ2のそれぞれの端部の少なくとも一つに内スリーブ32を外嵌するものとしてもよい。
【符号の説明】
【0079】
1…脱気モジュール、2…チューブ、2A…チューブ端部、2B…チューブ中央部、3…チューブユニット、4…ハウジング、5…結束部、6…筒体、7…外筒、8…封止部、12…蓋部、13…第一コネクタ、14…第二コネクタ、15…内部空間用第一開口(内部空間用開口)、16…内部空間用第二開口(内部空間用開口)、18…第一管、19…第二管、20…外部空間用開口、21…第三管、31…チューブ束、32…内スリーブ、33…外スリーブ、A1…内部空間、A2…外部空間、L1…筒体の長さ、L2…チューブ端部の長さ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11