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特許7420328うねり予測装置、うねり予測方法、被研磨物の加工方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】うねり予測装置、うねり予測方法、被研磨物の加工方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   B24B 37/005 20120101AFI20240116BHJP
【FI】
B24B37/005 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023570883
(86)(22)【出願日】2022-12-20
(86)【国際出願番号】 JP2022046888
(87)【国際公開番号】W WO2023127601
(87)【国際公開日】2023-07-06
【審査請求日】2023-11-27
(31)【優先権主張番号】P 2021212624
(32)【優先日】2021-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】橋本 崇希
(72)【発明者】
【氏名】都甲 侑祐
(72)【発明者】
【氏名】成澤 基行
(72)【発明者】
【氏名】竹本 真平
(72)【発明者】
【氏名】奥野 好成
【審査官】城野 祐希
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/074091(WO,A1)
【文献】特開平8-90406(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 37/005
B24B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨パッドを遊星歯車機構により回転させることで研磨した被研磨面のうねりを測定したうねりデータの入力を受け付けるように構成されているデータ入力部と、
前記研磨パッドにおける加工枚数及び太陽ギアのトルクを含む特徴量を取得するように構成されている特徴量取得部と、
前記特徴量と前記うねりデータとの関係を学習した予測モデルに、前記特徴量取得部が取得した前記特徴量を入力することで、前記うねりを予測するように構成されているうねり予測部と、
を備えるうねり予測装置。
【請求項2】
請求項1に記載のうねり予測装置であって、
前記被研磨面は、第1研磨パッドを設けられた上定盤と第2研磨パッドを設けられた下定盤とを逆方向に回転させることで、研磨されており、
前記特徴量は、前記上定盤と前記下定盤との回転数差をさらに含む、
うねり予測装置。
【請求項3】
請求項2に記載のうねり予測装置であって、
前記加工枚数より大きい第2加工枚数及び前記第2加工枚数を加工したときの前記太陽ギアのトルクである第2トルクを含む第2特徴量を生成するように構成されている特徴量生成部をさらに備え、
前記うねり予測部は、前記予測モデルに、前記特徴量生成部が生成した前記第2特徴量を入力することで、前記うねりを予測するように構成されている、
うねり予測装置。
【請求項4】
請求項3に記載のうねり予測装置であって、
前記うねり予測部が予測した前記うねりの予測値と所定の閾値とを比較するように構成されている予測値判定部と、
前記うねりの予測値が前記閾値以上であるとき、前記うねりの予測値が前記閾値未満となる加工条件を探索するように構成されている加工条件探索部と、
をさらに備えるうねり予測装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載のうねり予測装置であって、
前記研磨パッドで所定枚数の前記被研磨面を研磨するたびに、前記データ入力部が受け付けた前記うねりデータと前記特徴量取得部が取得した前記特徴量とを用いて、前記予測モデルを学習するように構成されているモデル学習部をさらに備える、
うねり予測装置。
【請求項6】
請求項5に記載のうねり予測装置であって、
前記モデル学習部は、前記研磨パッド毎に、前記予測モデルを学習するように構成されている、
うねり予測装置。
【請求項7】
コンピュータが、
研磨パッドを遊星歯車機構により回転させることで研磨した被研磨面のうねりを測定したうねりデータの入力を受け付けるデータ入力手順と、
前記研磨パッドにおける加工枚数及び太陽ギアのトルクを含む特徴量を取得する特徴量取得手順と、
前記特徴量と前記うねりデータとの関係を学習した予測モデルに、前記特徴量取得手順で取得した前記特徴量を入力することで、前記うねりを予測するうねり予測手順と、
を実行するうねり予測方法。
【請求項8】
コンピュータが、
研磨パッドを遊星歯車機構により回転させることで研磨した被研磨面のうねりを測定したうねりデータの入力を受け付けるデータ入力手順と、
前記研磨パッドにおける加工枚数及び太陽ギアのトルクを含む特徴量を取得する特徴量取得手順と、
前記特徴量と前記うねりデータとの関係を学習した予測モデルに、前記特徴量取得手順で取得した前記特徴量を入力することで、前記うねりを予測するうねり予測手順と、
前記うねり予測手順で予測した前記うねりの予測値と所定の閾値とを比較する予測値判定手順と、
前記うねりの予測値が前記閾値以上であるとき、前記うねりの予測値が前記閾値未満となる加工条件を探索する加工条件探索手順と、
を実行し、
研磨装置が、
前記加工条件探索手順で発見された前記加工条件に基づいて被研磨物の加工を行う加工手順を実行する、
被研磨物の加工方法。
【請求項9】
コンピュータに、
研磨パッドを遊星歯車機構により回転させることで研磨した被研磨面のうねりを測定したうねりデータの入力を受け付けるデータ入力手順と、
前記研磨パッドにおける加工枚数及び太陽ギアのトルクを含む特徴量を取得する特徴量取得手順と、
前記特徴量と前記うねりデータとの関係を学習した予測モデルに、前記特徴量取得手順で取得した前記特徴量を入力することで、前記うねりを予測するうねり予測手順と、
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、うねり予測装置、うねり予測方法、被研磨物の加工方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェハー等の基板の製造工程では、基板の表面に研磨加工を施すポリッシング工程が行われる。ポリッシング工程では、研磨量及び表面粗さ(以下、「うねり」とも呼ぶ)が重要特性とされる。これらの特性が製造規格を満たさない場合、基板は不良品として廃棄される。また、うねり異常が発生した場合、研磨装置では研磨パッドを交換する必要がある。
【0003】
例えば、特許文献1には、スキャンされたウェハー形状の厚さに応じたプロファイルを研磨時間に反映することで、ウェハー表面の研磨精度を高める発明が開示されている。また、例えば、特許文献2には、研磨パッドの研磨面の巨視的なうねり形状を線状走査レーザ光により測定することで、研磨パッドの寿命到来を検知する発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2019-507027号公報
【文献】特開2014-91190号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、うねり異常は研磨加工後に抜き取り検査を行わなければ検知することができない。また、うねり測定には時間を要する。基板の製造工程は一連であるため、うねり異常を検知したときには、同じロットの基板は後工程に進んでいる。さらに、全工程が完了した基板の中からうねり異常のある不良品のみを抽出することは困難であるため、同じロットの基板は良品も含めて廃棄されることになる。したがって、うねり異常の検知が遅れると、歩留まりを低下させる要因となる。
【0006】
本開示は、上記のような技術的課題に鑑みて、うねり異常の発生を予測することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、以下に示す構成を備える。
【0008】
[1] 研磨パッドを遊星歯車機構により回転させることで研磨した被研磨面のうねりを測定したうねりデータの入力を受け付けるように構成されているデータ入力部と、
前記研磨パッドにおける加工枚数及び太陽ギアのトルクを含む特徴量を取得するように構成されている特徴量取得部と、
前記特徴量と前記うねりデータとの関係を学習した予測モデルに、前記特徴量取得部が取得した前記特徴量を入力することで、前記うねりを予測するように構成されているうねり予測部と、
を備えるうねり予測装置。
【0009】
[2] 前記[1]に記載のうねり予測装置であって、
前記被研磨面は、第1研磨パッドを設けられた上定盤と第2研磨パッドを設けられた下定盤とを逆方向に回転させることで、研磨されており、
前記特徴量は、前記上定盤と前記下定盤との回転数差をさらに含む、
うねり予測装置。
【0010】
[3] 前記[2]に記載のうねり予測装置であって、
前記加工枚数より大きい第2加工枚数及び前記第2加工枚数を加工したときの前記太陽ギアのトルクである第2トルクを含む第2特徴量を生成するように構成されている特徴量生成部をさらに備え、
前記うねり予測部は、前記予測モデルに、前記特徴量生成部が生成した前記第2特徴量を入力することで、前記うねりを予測するように構成されている、
うねり予測装置。
【0011】
[4] 前記[3]に記載のうねり予測装置であって、
前記うねり予測部が予測した前記うねりの予測値と所定の閾値とを比較するように構成されている予測値判定部と、
前記うねりの予測値が前記閾値以上であるとき、前記うねりの予測値が前記閾値未満となる加工条件を探索するように構成されている加工条件探索部と、
をさらに備えるうねり予測装置。
【0012】
[5] 前記[1]から[4]のいずれかに記載のうねり予測装置であって、
前記研磨パッドで所定枚数の前記被研磨面を研磨するたびに、前記データ入力部が受け付けた前記うねりデータと前記特徴量取得部が取得した前記特徴量とを用いて、前記予測モデルを学習するように構成されているモデル学習部をさらに備える、
うねり予測装置。
【0013】
[6] 前記[5]に記載のうねり予測装置であって、
前記モデル学習部は、前記研磨パッド毎に、前記予測モデルを学習するように構成されている、
うねり予測装置。
【0014】
[7] コンピュータが、
研磨パッドを遊星歯車機構により回転させることで研磨した被研磨面のうねりを測定したうねりデータの入力を受け付けるデータ入力手順と、
前記研磨パッドにおける加工枚数及び太陽ギアのトルクを含む特徴量を取得する特徴量取得手順と、
前記特徴量と前記うねりデータとの関係を学習した予測モデルに、前記特徴量取得手順で取得した前記特徴量を入力することで、前記うねりを予測するうねり予測手順と、
を実行するうねり予測方法。
【0015】
[8] コンピュータが、
研磨パッドを遊星歯車機構により回転させることで研磨した被研磨面のうねりを測定したうねりデータの入力を受け付けるデータ入力手順と、
前記研磨パッドにおける加工枚数及び太陽ギアのトルクを含む特徴量を取得する特徴量取得手順と、
前記特徴量と前記うねりデータとの関係を学習した予測モデルに、前記特徴量取得手順で取得した前記特徴量を入力することで、前記うねりを予測するうねり予測手順と、
前記うねり予測手順で予測した前記うねりの予測値と所定の閾値とを比較する予測値判定手順と、
前記うねりの予測値が前記閾値以上であるとき、前記うねりの予測値が前記閾値未満となる加工条件を探索する加工条件探索手順と、
を実行し、
研磨装置が、
前記加工条件探索手順で発見された前記加工条件に基づいて被研磨物の加工を行う加工手順を実行する、
被研磨物の加工方法。
【0016】
[9] コンピュータに、
研磨パッドを遊星歯車機構により回転させることで研磨した被研磨面のうねりを測定したうねりデータの入力を受け付けるデータ入力手順と、
前記研磨パッドにおける加工枚数及び太陽ギアのトルクを含む特徴量を取得する特徴量取得手順と、
前記特徴量と前記うねりデータとの関係を学習した予測モデルに、前記特徴量取得手順で取得した前記特徴量を入力することで、前記うねりを予測するうねり予測手順と、
を実行させるためのプログラム。
【発明の効果】
【0017】
本開示によれば、うねり異常の発生を予測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、研磨システムの全体構成の一例を示すブロック図である。
図2図2は、コンピュータのハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図3図3は、研磨装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
図4図4は、うねり予測システムの機能構成の一例を示す図である。
図5図5は、学習処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図6図6は、うねりデータの一例を示す図である。
図7図7は、サンギアトルクの一例を示す図である。
図8図8は、定盤間の回転数差の一例を示す図である。
図9図9は、予測処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図10図10は、予測処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図11図11(A)は、評価指標の一例を示す図である。図11(B)は、評価結果の一例を示す図である。
図12図12は、従来技術における評価結果の一例を示す図である。
図13図13は、一実施形態における評価結果の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の各実施形態について添付の図面を参照しながら説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省略する。
【0020】
[実施形態]
半導体ウェハー等の基板は、一連の工程を経て製造される。例えば、半導体ウェハーであれば、原料として用いられるインゴットをウェハー形状に切断するスライシング工程、ウェハーの厚さを均一化して平坦化するラッピング工程、機械加工により発生したダメージを化学的に除去するエッチング工程、ウェハーの表面を研磨し鏡面化するポリッシング工程、及びウェハーを洗浄して表面に付着した異物を除去するクリーニング工程等を経て製造される。
【0021】
半導体ウェハーの製造工程では、所定枚数からなるロット単位で、上記の一連の工程を連続して実行する。ポリッシング工程においては、基板の研磨量及び被研磨面のうねりを抜き取り検査により評価する。うねりの測定には数時間かかるため、あるロットにおいてうねり異常が検知されたときには、そのロットはすでに後工程に進んでいることになる。また、うねり異常を検知しても、すべての工程が完了するまでは、そのロットを回収することはできない。
【0022】
さらに、うねりの測定には時間を要するため、うねり異常を検知したロットから不良品のみを抽出して廃棄することは工数がかかり、現実的ではない。そのため、うねり異常を検知した場合、そのロットの基板を良品も含めてすべて廃棄することになる。
【0023】
したがって、うねり異常の検知が遅れると、歩留まりが低下する要因となる。逆に言えば、うねり異常を予測することができれば、歩留まりを向上することができる。
【0024】
本実施形態は、半導体ウェハーの製造工程におけるポリッシング工程を実行する研磨システムである。本実施形態における研磨システムは、研磨装置が研磨した被研磨面のうねりを予測する。また、本実施形態における研磨システムは、うねりの予測値に応じて、実行すべき作業を出力する。特に、うねり異常が予測されるときに、うねり異常とならない加工条件がある場合には、加工条件を変更すべき旨を出力する。
【0025】
なお、本実施形態における研磨システムは、半導体ウェハーに限らず、製造工程の中で研磨を行う様々な基板を対象とすることができる。
【0026】
<研磨システムの全体構成>
まず、本実施形態における研磨システムの全体構成を、図1を参照しながら説明する。図1は、本実施形態における研磨システムの全体構成の一例を示すブロック図である。
【0027】
図1に示されているように、本実施形態における研磨システム1は、研磨装置10、うねり測定装置20及びうねり予測装置30を含む。研磨装置10、うねり測定装置20及びうねり予測装置30は、LAN(Local Area Network)又はインターネット等の通信ネットワークN1を介してデータ通信可能に接続されている。
【0028】
研磨装置10は、研磨対象の基板(以下、「被研磨物」とも呼ぶ)を研磨する。本実施形態における研磨装置10は、遊星歯車機構により研磨パッドを回転させることで被研磨物の主面(以下、「被研磨面」とも呼ぶ)を研磨する。
【0029】
研磨装置10は、所定枚数を同時に研磨するバッチを複数回繰り返すことで、1ロットの被研磨物を研磨する。例えば、研磨装置10は、1バッチで50枚の基板を研磨し、40バッチ実行することで、2000枚からなる1ロットの研磨を行う。
【0030】
研磨装置10は、例えば、参考文献1に開示された両面研磨装置を用いることができる。
【0031】
〔参考文献1〕システム精工株式会社,"技術紹介",[令和3年11月16日検索],インターネット<URL: https://www.systemseiko.co.jp/technology/>
【0032】
うねり測定装置20は、研磨装置10が研磨した被研磨面を検査し、うねり測定を行う。本実施形態において測定するうねりは、二乗平均平方根粗さ(RMS:Root Mean Square、Rqとも呼ばれる)と呼ばれる指標である。ただし、本実施形態を適用可能なうねりの指標はこれに限定されず、どのような指標であってもよい。
【0033】
うねり測定装置20は、研磨装置10が所定枚数の研磨を行う毎に、研磨後の被研磨物を抜き取り検査する。例えば、うねり測定装置20は、研磨装置10が1ロットの研磨を完了する毎に、うねり測定を行う。
【0034】
うねり測定装置20は、例えば、参考文献2に開示された表面検査装置を用いることができる。
【0035】
〔参考文献2〕KLA Corporation,"Candela 8520",[令和3年11月16日検索],インターネット<URL: https://www.kla-tencor.com/products/instruments/defect-inspectors/candela-8520>
【0036】
うねり予測装置30は、研磨装置10が研磨した被研磨面のうねりを予測するPC(Personal Computer)、ワークステーション、サーバ等の情報処理装置である。うねり予測装置30は、うねり測定装置20が出力するうねりの測定値及び研磨装置10から取得できる加工条件並びに装置状態に基づいて、予測モデルを学習する。また、うねり予測装置30は、学習済みの予測モデルを用いて、研磨装置10が研磨した被研磨面のうねりを予測する。さらに、うねり予測装置30は、うねりの予測値に応じて、実行すべき作業を出力する。実行すべき作業とは、例えば、研磨の続行、研磨パッドの交換、又は加工条件の変更等である。
【0037】
うねり予測装置30は、うねり測定装置20がうねり測定を行う毎(すなわち、研磨装置10が1ロットの研磨を完了する毎)に、予測モデルの学習を行う。また、うねり予測装置30は、研磨装置10が所定枚数の研磨を行う毎に、研磨後の被研磨面のうねりを予測する。例えば、うねり予測装置30は、研磨装置10が1バッチの研磨を完了する毎に、うねり予測を行う。
【0038】
うねり予測装置30は、研磨パッド毎に予測モデルを学習する。研磨パッドを交換した場合、うねり予測装置30は、予測モデルは初期化し、再度学習を開始する。研磨パッドと被研磨面のうねりとの関係は、個体差が大きいことが判明しているためである。したがって、ある研磨パッドに関して学習した予測モデルを、他の研磨パッドで研磨した被研磨面のうねり予測に用いることはできない。
【0039】
なお、図1に示した研磨システム1の全体構成は一例であって、用途や目的に応じて様々なシステム構成例があり得る。例えば、うねり予測装置30は、複数台のコンピュータにより実現してもよいし、クラウドコンピューティングのサービスとして実現してもよい。
【0040】
<研磨システムのハードウェア構成>
次に、本実施形態における研磨システム1のハードウェア構成を、図2から図4を参照しながら説明する。
【0041】
≪コンピュータのハードウェア構成≫
本実施形態におけるうねり予測装置30は、例えばコンピュータにより実現される。図2は、本実施形態におけるコンピュータ500のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【0042】
図2に示されているように、コンピュータ500は、CPU(Central Processing Unit)501、ROM(Read Only Memory)502、RAM(Random Access Memory)503、HDD(Hard Disk Drive)504、入力装置505、表示装置506、通信I/F(Interface)507及び外部I/F508を有する。CPU501、ROM502及びRAM503は、いわゆるコンピュータを形成する。コンピュータ500の各ハードウェアは、バスライン509を介して相互に接続されている。なお、入力装置505及び表示装置506は外部I/F508に接続して利用する形態であってもよい。
【0043】
CPU501は、ROM502又はHDD504等の記憶装置からプログラムやデータをRAM503上に読み出し、処理を実行することで、コンピュータ500全体の制御や機能を実現する演算装置である。
【0044】
ROM502は、電源を切ってもプログラムやデータを保持することができる不揮発性の半導体メモリ(記憶装置)の一例である。ROM502は、HDD504にインストールされている各種プログラムをCPU501が実行するために必要な各種プログラム、データ等を格納する主記憶装置として機能する。具体的には、ROM502には、コンピュータ500の起動時に実行されるBIOS(Basic Input/Output System)、EFI(Extensible Firmware Interface)等のブートプログラムや、OS(Operating System)設定、ネットワーク設定等のデータが格納されている。
【0045】
RAM503は、電源を切るとプログラムやデータが消去される揮発性の半導体メモリ(記憶装置)の一例である。RAM503は、例えば、DRAM(Dynamic Random Access Memory)やSRAM(Static Random Access Memory)等である。RAM503は、HDD504にインストールされている各種プログラムがCPU501によって実行される際に展開される作業領域を提供する。
【0046】
HDD504は、プログラムやデータを格納している不揮発性の記憶装置の一例である。HDD504に格納されるプログラムやデータには、コンピュータ500全体を制御する基本ソフトウェアであるOS、及びOS上において各種機能を提供するアプリケーション等がある。なお、コンピュータ500はHDD504に替えて、記憶媒体としてフラッシュメモリを用いる記憶装置(例えばSSD:Solid State Drive等)を利用するものであってもよい。
【0047】
入力装置505は、ユーザが各種信号を入力するために用いるタッチパネル、操作キーやボタン、キーボードやマウス、音声等の音データを入力するマイクロホン等である。
【0048】
表示装置506は、画面を表示する液晶や有機EL(Electro-Luminescence)等のディスプレイ、音声等の音データを出力するスピーカ等で構成されている。
【0049】
通信I/F507は、通信ネットワークに接続し、コンピュータ500がデータ通信を行うためのインタフェースである。
【0050】
外部I/F508は、外部装置とのインタフェースである。外部装置には、ドライブ装置510等がある。
【0051】
ドライブ装置510は、記録媒体511をセットするためのデバイスである。ここでいう記録媒体511には、CD-ROM、フレキシブルディスク、光磁気ディスク等のように情報を光学的、電気的あるいは磁気的に記録する媒体が含まれる。また、記録媒体511には、ROM、フラッシュメモリ等のように情報を電気的に記録する半導体メモリ等が含まれていてもよい。これにより、コンピュータ500は外部I/F508を介して記録媒体511の読み取り及び/又は書き込みを行うことができる。
【0052】
なお、HDD504にインストールされる各種プログラムは、例えば、配布された記録媒体511が外部I/F508に接続されたドライブ装置510にセットされ、記録媒体511に記録された各種プログラムがドライブ装置510により読み出されることでインストールされる。あるいは、HDD504にインストールされる各種プログラムは、通信I/F507を介して、通信ネットワークとは異なる他のネットワークよりダウンロードされることでインストールされてもよい。
【0053】
≪研磨装置のハードウェア構成≫
図3は、本実施形態における研磨装置10のハードウェア構成の一例を示す図である。図3に示されているように、本実施形態における研磨装置10は、上下一対の下定盤11及び上定盤12と、下定盤11の上定盤12と対向する面に配置された複数のキャリア13とを備え、各キャリア13に設けられた複数の開口部14に半導体ウェハー(図示せず)をセットし、これら複数の半導体ウェハーの両主面を下定盤11及び上定盤12に設けられた研磨パッドにより研磨する構成とする。
【0054】
具体的に、下定盤11及び上定盤12は、それぞれの中心部に設けられた回転軸11a,12aを駆動モータ(図示せず)により回転駆動することで、互いの中心軸を一致させた状態で互いに逆向きに回転可能となっている。また、下定盤11の上定盤12と対向する面には、複数のキャリア13を配置するための凹部15が設けられている。
【0055】
複数のキャリア13は、例えばアラミド繊維やガラス繊維を混入することで強化されたエポキシ樹脂などを円盤状に形成したものからなる。そして、これら複数のキャリア13は、凹部15の内側において回転軸11aの周囲に並んで配置されている。また、各キャリア13の外周部には、全周に亘って遊星ギア16が設けられている。一方、凹部15の内周部には、各キャリア13の遊星ギア16と噛合された状態で、回転軸11aと共に回転する太陽ギア17と、凹部15の外周部には、各キャリア13の遊星ギア16と噛合される固定ギア18とが、それぞれ設けられている。
【0056】
これにより、複数のキャリア13は、回転軸11aと共に太陽ギア17が回転すると、太陽ギア17及び固定ギア18と遊星ギア16との噛合によって、凹部15内で回転軸11aの周囲を当該回転軸11aと同一方向に回転(公転)しながら、互いの中心軸回りに回転軸11aとは逆方向に回転(自転)する、いわゆる遊星運動を行う。
【0057】
したがって、上記構成を採用することにより、各キャリア13の開口部14に保持された複数の半導体ウェハーを遊星運動させながら、その両主面を下定盤11及び上定盤12に設けられた研磨パッドにより研磨することが可能である。また、この構成の場合、半導体ウェハーに対する研磨をより精度良く、また迅速に行うことが可能である。
【0058】
研磨パッドには、例えばウレタンにより形成された硬質研磨布を用いることができる。そして、この研磨パッドにより半導体ウェハーの両主面を研磨する際は、半導体ウェハーに研磨液を滴下する。研磨液については、例えばセリア、シリカ、ダイヤモンド、又はこれらの混合物の砥粒等を水に分散してスラリー化したものなどを用いることができる。
【0059】
<研磨システムの機能構成>
続いて、本実施形態における研磨システムの機能構成を、図4を参照しながら説明する。図4は本実施形態における研磨システム1の機能構成の一例を示すブロック図である。
【0060】
≪うねり予測装置の機能構成≫
図4に示されているように、本実施形態におけるうねり予測装置30は、データ入力部31、状態取得部32、特徴量取得部33、モデル学習部34、うねり予測部35、予測値判定部36、特徴量生成部37、加工条件探索部38、結果出力部39、及びモデル記憶部300を備える。
【0061】
うねり予測装置30が備える各処理部(モデル記憶部300を除く)は、図2に示されているHDD504からRAM503上に展開されたプログラムがCPU501に実行させる処理によって実現される。うねり予測装置30が備えるモデル記憶部300は、例えば、図2に示されているHDD504を用いて実現される。
【0062】
データ入力部31は、うねり測定装置20が出力するうねりの測定値(以下、「うねりデータ」とも呼ぶ)の入力を受け付ける。うねりデータの入力は、うねり測定装置20がディスプレイ等に出力したうねりデータを、ユーザが入力装置505を用いて入力してもよいし、うねり測定装置20が通信ネットワークN1を介してうねり予測装置30に送信したうねりデータをオンラインで入力してもよい。
【0063】
状態取得部32は、データ入力部31がうねりデータの入力を受け付けたことに応じて、研磨装置10から研磨に関する状態情報を取得する。本実施形態における状態情報は、研磨パッドの状態、加工条件、及び装置状態を含む。研磨パッドの状態は、例えば、その研磨パッドで研磨した被研磨物の通算枚数を示す加工枚数等である。加工条件は、例えば、1回当たりの研磨時間及び各定盤の回転速度等である。装置状態は、例えば、各ギアのトルク等である。
【0064】
特徴量取得部33は、状態取得部32が取得した状態情報から所定の特徴量を取得する。本実施形態における特徴量は、研磨パッドの加工枚数及び太陽ギアのトルク(以下、「サンギアトルク」とも呼ぶ)を含む。また、本実施形態における特徴量は、上定盤と下定盤の間の回転数差を含んでもよい。
【0065】
モデル学習部34は、特徴量取得部33が取得した特徴量と、データ入力部31が受け付けたうねりデータとの関係を学習することで、予測モデルを生成する。本実施形態における予測モデルは、加工枚数及びサンギアトルクを説明変数とし、うねりデータを目的変数とするモデルである。また、特徴量が回転数差を含む場合には、本実施形態における予測モデルは、加工枚数、サンギアトルク及び回転数差を説明変数とし、うねりデータを目的変数とするモデルである。
【0066】
モデル記憶部300は、モデル学習部34が生成した予測モデルを記憶する。
【0067】
うねり予測部35は、モデル記憶部300が記憶する予測モデルに、特徴量取得部33が取得した特徴量を入力することで、うねりの予測値を計算する。また、うねり予測部35は、モデル記憶部300が記憶する予測モデルに、特徴量生成部37が生成した特徴量を入力することで、うねりの予測値を計算する。
【0068】
予測値判定部36は、うねり予測部35が計算したうねりの予測値を所定の閾値と比較することで、うねりの予測値が所定の閾値以上であるか否かを判定する。
【0069】
特徴量生成部37は、特徴量取得部33が取得した特徴量に基づいて、所定の特徴量を生成する。特徴量生成部37が生成する特徴量は、次にうねり予測を行う際に取得されることが推定される特徴量である。
【0070】
加工条件探索部38は、予測値判定部36によりうねりの予測値が所定の閾値以上であると判定されたとき、うねりの予測値が所定の閾値未満となる加工条件を探索する。
【0071】
結果出力部39は、うねりの予測結果を表示装置506等に出力する。本実施形態における予測結果は、うねり予測部35が予測したうねりの予測値を含む。また、本実施形態における予測結果は、実行すべき作業を示す情報を含んでもよい。
【0072】
<研磨システムの処理手順>
次に、本実施形態における研磨システム1が実行するうねり予測方法の処理手順を、図5から図10を参照しながら説明する。本実施形態におけるうねり予測方法は、予測モデルを学習する学習処理(図5参照)、及び学習済みの予測モデルを用いてうねりを予測する予測処理(図9から図10参照)からなる。
【0073】
≪学習処理≫
図5は本実施形態における学習処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【0074】
ステップS11において、研磨装置10は、1ロット分の研磨加工を完了する。次に、研磨装置10は、1ロット分の研磨加工が完了したことを示す通知を出力する。
【0075】
ステップS12において、うねり測定装置20は、研磨装置10が通知を出力したことに応じて、研磨加工が完了したロットから被研磨物をサンプリングし、被研磨面のうねりを測定する。次に、うねり測定装置20は、測定したうねりデータを出力する。
【0076】
ここで、うねりデータについて、図6を参照しながら説明する。図6は、うねりデータの一例を示す図であり、加工枚数を横軸に、うねり(RMS)を縦軸にし、1ロット(=2000枚)毎に測定されたRMSをプロットしたグラフである。なお、うねりを測定する被研磨物は、各ロットの先頭バッチからサンプリングしている。また、新規の研磨パッドがセットされると最初にダミー品の研磨を行うため、加工枚数は、2000枚毎のちょうどの枚数からダミー研磨の加工枚数分だけ上乗せされてプロットされている。
【0077】
図6に示された一点鎖線(RMS=0.160)は、製造規格を表しており、この線を超えるとうねり異常と判定される。図6に示されているように、全体的にRMSの値はばらつきが大きいが、加工枚数が一定数を超えると急激に上昇することがわかる。
【0078】
図5に戻って説明する。ステップS13において、うねり予測装置30が備えるデータ入力部31は、うねり測定装置20が出力したうねりデータの入力を受け付ける。次に、データ入力部31は、受け付けたうねりデータをモデル学習部34に送る。また、データ入力部31は、うねりデータの入力を受け付けたことを状態取得部32に通知する。
【0079】
ステップS14において、うねり予測装置30が備える状態取得部32は、データ入力部31からの通知に応じて、研磨装置10から研磨パッドの状態、加工条件、及び装置状態を含む研磨に関する状態情報を取得する。次に、状態取得部32は、取得した状態情報を特徴量取得部33に送る。
【0080】
ステップS15において、うねり予測装置30が備える特徴量取得部33は、状態取得部32から状態情報を受け取る。次に、特徴量取得部33は、受け取った状態情報に基づいて、現在のサンギアトルクを計算する。
【0081】
ここで、サンギアトルクについて、図7を参照しながら説明する。図7は、サンギアトルクの一例を示す図であり、加工枚数を横軸に、サンギアトルク(N・m:newton metre)を縦軸にし、1バッチ(=50枚)毎に取得されたサンギアトルクをプロットしたグラフである。図7において、濃い点はうねりを測定したバッチ(すなわち、ロットの先頭バッチ)、薄い点はその他のバッチで取得されたサンギアトルクを表している。
【0082】
図7に示されているように、全体的にサンギアトルクの値はばらつきが大きい。特に、うねり測定はロットの先頭バッチで行うため、うねりデータはトルクの値のばらつきを反映しない傾向がある。そのため、本実施形態において、サンギアトルクは、研磨装置10から取得したサンギアトルクそのものではなく、破線で示したトレンドラインへの代入値を用いるものとする。なお、所定のバッチ数ごとにトレンドラインを更新することができる。
【0083】
サンギアトルクのトレンドラインは、例えば、RBFカーネルを用いたガウス過程回帰により計算することができる。なお、本実施形態において適用可能な回帰はガウス過程回帰に限定されず、回帰であればどのようなものであってもよい。
【0084】
図5に戻って説明する。ステップS16において、特徴量取得部33は、受け取った状態情報に基づいて、現在の回転数差を計算する。回転数差とは、下定盤11の回転数と上定盤12の回転数との差である。
【0085】
ここで、回転数差について、図8を参照しながら説明する。図8は、回転数差の一例を示す図であり、加工枚数を横軸に、回転数差(rpm:rotations per minute)を縦軸にし、1バッチ(=50枚)毎に取得された回転数差(=上定盤12の回転数-下定盤11の回転数)をプロットしたグラフである。図8において、濃い点はうねりを測定したバッチ(すなわち、ロットの先頭バッチ)、薄い点はその他のバッチで取得された回転数差を表している。
【0086】
図8に示されているように、回転数差は大きく変動することがない。これは、各定盤の回転数は制御可能であることによる。そのため、本実施形態における回転数差は、研磨装置10から取得した各定盤の回転数の差をそのまま用いる。
【0087】
図5に戻って説明する。ステップS17において、特徴量取得部33は、所定の特徴量(以下、「学習特徴量」とも呼ぶ)を生成する。学習特徴量は、加工枚数及びサンギアトルクを含む。また、学習特徴量は、回転数差を含んでもよい。次に、特徴量取得部33は、生成した学習特徴量をモデル学習部34に送る。
【0088】
ステップS18において、うねり予測装置30が備えるモデル学習部34は、データ入力部31からうねりデータを受け取る。また、モデル学習部34は、特徴量取得部33から学習特徴量を受け取る。次に、モデル学習部34は、受け取ったうねりデータ及び学習特徴量に基づいて、学習特徴量とうねりデータとの関係を学習することで、予測モデルを生成する。予測モデルは、例えば、二次関数となるカーネルを用いたガウス過程回帰により計算することができる。なお、本実施形態において適用可能な回帰はガウス過程回帰に限定されず、出力が確率となる回帰であればどのようなものであってもよい。
【0089】
ステップS19において、モデル学習部34は、学習済みの予測モデルをモデル記憶部300に記憶する。
【0090】
≪予測処理≫
図9及び図10は本実施形態における予測処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【0091】
ステップS21において、研磨装置10は、1バッチ分の研磨加工を完了する。次に、研磨装置10は、1バッチ分の研磨加工が完了したことを示す通知を出力する。
【0092】
ステップS22において、うねり予測装置30が備える状態取得部32は、研磨装置10が通知を出力したことに応じて、研磨装置10から研磨パッドの状態、加工条件、及び装置状態を含む研磨に関する状態情報を取得する。次に、状態取得部32は、取得した状態情報を特徴量取得部33に送る。
【0093】
ステップS23において、うねり予測装置30が備える特徴量取得部33は、状態取得部32から状態情報を受け取る。次に、特徴量取得部33は、受け取った状態情報に基づいて、現在のサンギアトルクを計算する。なお、所定のバッチ数ごとにサンギアトルクのトレンドラインを更新することができる。
【0094】
ステップS24において、特徴量取得部33は、受け取った状態情報に基づいて、現在の回転数差を計算する。
【0095】
ステップS25において、特徴量取得部33は、所定の特徴量(以下、「第1特徴量」とも呼ぶ)を生成する。第1特徴量が含む項目は、上述した学習特徴量と同様である。次に、特徴量取得部33は、生成した第1特徴量をうねり予測部35及び特徴量生成部37に送る。
【0096】
ステップS26において、うねり予測装置30が備えるうねり予測部35は、特徴量取得部33から第1特徴量を受け取る。次に、うねり予測部35は、受け取った第1特徴量をモデル記憶部300に記憶されている予測モデルに入力することで、うねりの予測値(以下、「第1予測値」とも呼ぶ)を計算する。続いて、うねり予測部35は、計算した第1予測値を予測値判定部36及び結果出力部39に送る。
【0097】
ステップS27において、うねり予測装置30が備える予測値判定部36は、うねり予測部35から第1予測値を受け取る。次に、予測値判定部36は、第1予測値を所定の閾値と比較することで、第1予測値が所定の閾値以上であるか否かを判定する。
【0098】
予測値判定部36は、第1予測値が所定の閾値以上であると判定した場合(YES)、図10に示されているステップS37に処理を進める。一方、予測値判定部36は、第1予測値が所定の閾値未満であると判定した場合(NO)、ステップS28に処理を進める。
【0099】
ステップS28において、うねり予測装置30が備える特徴量生成部37は、特徴量取得部33から第1特徴量を受け取る。次に、特徴量生成部37は、第1特徴量に含まれる加工枚数に基づいて、第2加工枚数を計算する。具体的には、特徴量生成部37は、第1特徴量に含まれる加工枚数に1バッチ分の枚数を加算した結果を第2加工枚数とする。
【0100】
ステップS29において、特徴量生成部37は、第1特徴量に含まれるサンギアトルクに基づいて、第2サンギアトルクを計算する。具体的には、特徴量生成部37は、過去のサンギアトルクのトレンドラインに第2加工枚数を代入した値を第2サンギアトルクとする。
【0101】
ステップS30において、特徴量生成部37は、第1特徴量に含まれる回転数差に基づいて、第2回転数差を計算する。具体的には、特徴量生成部37は、第1特徴量に含まれる回転数差を、第2回転数差とする。各定盤の回転数は頻繁に変化するものではなく、次の予測時にも同様の値が取得されることが推定されるためである。
【0102】
図10に進んで説明する。ステップS31において、特徴量生成部37は、所定の特徴量(以下、「第2特徴量」とも呼ぶ)を生成する。第2特徴量が含む項目は、上述した学習特徴量と同様である。すなわち、学習特徴量が加工枚数及びサンギアトルクを含む場合、第2特徴量は、第2加工枚数及び第2サンギアトルクを含む。また、学習特徴量が回転数差をさらに含む場合、第2特徴量は、第2加工枚数、第2サンギアトルク及び第2回転数差を含む。次に、特徴量生成部37は、生成した第2特徴量をうねり予測部35に送る。
【0103】
ステップS32において、うねり予測部35は、特徴量生成部37から第2特徴量を受け取る。次に、うねり予測部35は、受け取った第2特徴量をモデル記憶部300に記憶されている予測モデルに入力することで、うねりの予測値(以下、「第2予測値」とも呼ぶ)を計算する。続いて、うねり予測部35は、計算した第2予測値を予測値判定部36及び結果出力部39に送る。
【0104】
ステップS33において、予測値判定部36は、うねり予測部35から第2予測値を受け取る。次に、予測値判定部36は、第2予測値を所定の閾値と比較することで、第2予測値が所定の閾値以上であるか否かを判定する。
【0105】
予測値判定部36は、第2予測値が所定の閾値以上であると判定した場合(YES)、ステップS34に処理を進める。一方、予測値判定部36は、第2予測値が所定の閾値未満であると判定した場合(NO)、ステップS38に処理を進める。
【0106】
ステップS34において、うねり予測装置30が備える加工条件探索部38は、うねりの予測値が所定の閾値未満となる加工条件を探索する。具体的には、加工条件探索部38は、第2予測値に含まれる第2回転数差を所定数だけ変更し、変更後の第2特徴量を予測モデルに入力することで得られた予測値が所定の閾値未満となるか否かを判定することを繰り返す。加工条件探索部38は、得られた予測値が閾値未満となった場合、又は、変更後の第2回転数差が所定の範囲外となった場合、探索を終了する。
【0107】
続いて、加工条件探索部38は、探索結果を結果出力部39に送る。探索結果には、発見した加工条件(すなわち、予測値が所定の閾値未満となる回転数差を実現する各定盤の回転数)が含まれる。
【0108】
ステップS35において、加工条件探索部38は、予測値が所定の閾値未満となる加工条件を発見したか否かを判定する。加工条件探索部38は、加工条件を発見した場合(YES)、ステップS36へ処理を進める。一方、加工条件探索部38は、加工条件を発見しなかった場合(NO)、ステップS37へ処理を進める。
【0109】
ステップS36において、うねり予測装置30が備える結果出力部39は、加工条件探索部38から探索結果を受け取る。次に、結果出力部39は、探索結果に含まれる加工条件に変更すべき旨を示す情報を表示装置506等に出力する。
【0110】
研磨装置10では、ユーザの操作に応じて、加工条件の変更が行われる。すなわち、研磨装置10が備える上定盤12及び下定盤11の回転数が、発見された加工条件に含まれる回転数に設定される。そして、研磨装置10は、変更後の加工条件に従って、被研磨物の研磨加工を実行する。
【0111】
ステップS37において、結果出力部39は、研磨パッドの交換が必要である旨を示す情報を表示装置506等に出力する。
【0112】
ステップS38において、結果出力部39は、次のバッチの研磨に進むことを示す情報を表示装置506等に出力する。
【0113】
ステップS39において、結果出力部39は、うねり予測部35から第1予測値及び第2予測値を受け取る。次に、結果出力部39は、第1予測値及び第2予測値を示す情報を表示装置506等に出力する。
【0114】
<評価結果>
続いて、本実施形態におけるうねりの予測値の精度を評価した結果を、図11から図13を参照しながら説明する。図11は、本実施形態における評価指標及び評価結果の一例を示す図である。
【0115】
図11(A)は、評価指標の一例を示す図である。評価では、うねりの予測値(確率)が50%以上となったバッチをうねり異常を予測したバッチ(以下、「異常予測バッチ」とも呼ぶ)とし、実際にうねりの測定値が製造規格を超えたバッチ(以下、「異常発生バッチ」とも呼ぶ)とのずれを求めた。
【0116】
図11(A)に示されているように、うねり異常発生時の加工枚数が3万枚未満の場合、異常予測バッチが、異常発生バッチと一致した場合を100点満点、異常発生バッチより1~2ロット前の場合を60点、異常発生バッチより3ロット以上前の場合を40点とした。また、うねり異常発生時の加工枚数が3万枚以上の場合、異常予測バッチが、異常発生バッチと一致した場合を100点満点、異常発生バッチより1~2ロット前の場合を80点、異常発生バッチより3ロット以上前の場合を60点とした。異常予測バッチが異常発生バッチよりも後の場合には、うねり異常を見逃したことを表しているため、0点とした。
【0117】
図11(B)は、評価結果の一例を示す図である。図11(B)に示されているように、特徴量が異なる3つのモデルを用意し、各モデルによる予測結果について、図11(A)に示した評価指標に従ってスコアを計算した。なお、スコアは26枚の研磨パッドそれぞれについて計算したスコアの平均である。
【0118】
説明変数として、モデルAは、加工枚数のみを特徴量として学習したモデルである。モデルBは、加工枚数及びサンギアトルクを特徴量として学習したモデルである。モデルCは、加工枚数、サンギアトルク及び回転数差を特徴量として学習したモデルである。
【0119】
図11(B)に示されているように、加工枚数のみを特徴量としたモデルAよりも、特徴量にサンギアトルクを追加したモデルBの方が、大幅にスコアが向上した。また、特徴量に回転数差をさらに追加したモデルCは、モデルBよりもスコアが向上した。したがって、加工枚数のみを特徴量として予測する場合と比べて、サンギアトルクを特徴量に追加することで大幅に予測精度が向上することが示された。また、特徴量に回転数差を追加することで、さらに予測精度が向上することが示された。
【0120】
図12は、説明変数として加工枚数のみを特徴量としたモデルAにおいて、ある研磨パッドで得たうねりの実測結果(黒丸、黒四角形、白丸)について評価した様子を示した図である。各グラフには、加工枚数を横軸に、うねりを縦軸にし、ロット毎のうねりの実測値がプロットされている。iはロットのインデックスを示しており、この実測データではi=18でうねり異常が発生していることがわかる。
【0121】
各グラフは、i-1番目のロットまでの測定値(黒四角形でプロットした実測値)を用いて学習したモデルを用いて、i番目のロットでの想定値(白三角形でプロットした実測値)のうねり予測を行った結果(点線)を表している。各グラフ右下の「NG」が予測されたうねり異常の確率であり、この値が50%以上のときうねり異常と判定される。
【0122】
図12に示されているように、モデルAを用いた評価結果では、i=18の段階でうねり異常を検知しておらず(NG:48%)、うねり異常の見逃しが発生している。したがって、図12の例では、スコアは0点となる。
【0123】
図13は、説明変数として加工枚数及びサンギアトルクを特徴量としたモデルBにおいて、図12と同じうねりの実測結果(黒丸、黒四角形、白丸)について評価した様子を示した図である。
【0124】
図13に示されているように、モデルBを用いた評価結果では、i=17でうねり異常を検知している(NG:50%)。1ロット前にうねり異常を検知しており誤検知とも言えるが、うねり異常が発生する前に検知しているため、廃棄品の発生を予防することは可能である。したがって、図13の例では、スコアは80点となる。
【0125】
なお、図12及び図13では、i=8以降でうねりの予測を開始している。研磨加工を開始した直後は動作が不安定であり、また、研磨パッドの寿命の観点からはうねり異常を検知する対象外としても影響が小さいことによる。予測を開始するバッチを何番目とするか(すなわち、最初に予測モデルを学習するためにどれだけの学習データを収集するか)は、ハイパーパラメータとしてチューニングの対象となる。ここでは、ハイパーパラメータチューニングの指標は、検証データの予測残差の絶対値とした。
【0126】
<実施形態の効果>
本実施形態における研磨システムは、研磨装置から取得した状態情報に基づく特徴量とうねりデータとの関係を学習した予測モデルを用いて、被研磨面のうねりを実測することなく、うねりを予測する。これにより、本実施形態における研磨システムによれば、早期にうねり異常を検知することができる。早期にうねり異常を検知できれば、早期に研磨パッドを交換することができ、うねり異常となったときに発生する廃棄品を少なくすることができる。
【0127】
また、本実施形態における研磨システムは、うねりの予測値に応じて、実行すべき作業を提案することができる。特に、うねり異常が予測されるときに、うねり異常とならない加工条件が発見された場合には、その加工条件に変更することを提案することができる。これにより、本実施形態における研磨システムは、研磨パッドをより長く利用することができる。そのため、本実施形態における研磨システムによれば、研磨パッドに係るコストを低減し、研磨パッド交換による稼働率の低下を軽減することができる。
【0128】
[補足]
以上、本発明の実施の形態について詳述したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形又は変更が可能である。
【0129】
本願は、日本国特許庁に2021年12月27日に出願された日本国特許出願2021-212624号の優先権を主張するものであり、その全内容を参照することにより本願に援用する。
【符号の説明】
【0130】
1 研磨システム
10 研磨装置
20 うねり測定装置
30 うねり予測装置
31 データ入力部
32 状態取得部
33 特徴量取得部
34 モデル学習部
35 うねり予測部
36 予測値判定部
37 特徴量生成部
38 加工条件探索部
39 結果出力部
300 モデル記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13