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特許7420525位置測定装置および位置測定装置を作動する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】位置測定装置および位置測定装置を作動する方法
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/244 20060101AFI20240116BHJP
   G01D 5/245 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
G01D5/244 B
G01D5/245 C
G01D5/245 E
G01D5/245 H
G01D5/245 R
【請求項の数】 7
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019189920
(22)【出願日】2019-10-17
(65)【公開番号】P2020067454
(43)【公開日】2020-04-30
【審査請求日】2022-07-14
(31)【優先権主張番号】10 2018 217 934.4
(32)【優先日】2018-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390014281
【氏名又は名称】ドクトル・ヨハネス・ハイデンハイン・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】DR. JOHANNES HEIDENHAIN GESELLSCHAFT MIT BESCHRANKTER HAFTUNG
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【氏名又は名称】中西 基晴
(72)【発明者】
【氏名】ヴェルナー・シュワイガー
(72)【発明者】
【氏名】グレゴール・ローゼンガー
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス・ミッテラー
(72)【発明者】
【氏名】ルートヴィヒ・シュミット
(72)【発明者】
【氏名】エーリヒ・シュトラッサー
【審査官】榮永 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-51702(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/00 - 5/252
G01D 5/39 - 5/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
位置測定装置において、
回動不能にシャフト(5)に結合可能な目盛キャリア(12)であって、該目盛キャリア(12)が組み立てられた状態でシャフト(5)の回転軸線を中心として半径方向に配置された測定目盛(13)を有する目盛キャリア(12)と、
測定目盛(13)を走査することによって位置信号(PS)を生成するための走査ユニット(14)と、
位置信号(PS)を絶対デジタル位置値(P)として処理するための位置処理ユニット(20)と、
後続電子機器(100)と通信するためのインターフェイスユニット(30)と
を含み、
さらに位置測定装置が、
機械部品(70,70.1,70.2)の測定対象(72,72.1,72.2,172.1,172.2)を走査することによって、機械部品(70,70.1,70.2)の位置に依存する測定信号(MS)を生成するための少なくとも1つの第2の走査ユニット(60,60.1,60.2,160.1,160.2)と、
第2の走査ユニット(60,60.1,60.2,160.1,160.2)に関して測定対象(72,72.1,72.2,172.1,172.2)の位置および/または位置変化を示す少なくとも1つの測定値(M)として測定信号(MS)を処理し、少なくとも1つの測定値(M)をインターフェイスユニット(30)に出力するための評価ユニット(80,180)とを含み、
前記評価ユニット(80,180)で決定された前記測定値(M)が、
方向(Z)における前記測定対象(72,72.1,72.2,172.1,172.2)と前記第2の走査ユニット(60,60.1,60.2,160.1,160.2)との間の距離(D1,D2)および/または
横方向(X)における第2の走査ユニット(60,60.1,60.2,160.1,160.2)に対して平行な測定対象(72,72.1,72.2,172.1,172.2)の変位、および/または
第2の走査ユニット(60,60.1,60.2,160.1,160.2)に対する測定対象(72,72.1,72.2,172.1,172.2)の振動のためのパラメータを示す位置測定装置。
【請求項2】
請求項に記載の位置測定装置において、
前記走査ユニット(14)、前記第2の走査ユニット(60,60.1,60.2,160.1,160.2)、および電子モジュール、例えば前記位置処理ユニット(20)、前記インターフェイスユニット(30)および前記評価ユニット(80,180)を収容するためにケーシング(40)が設けられている位置測定装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の位置測定装置において、
前記走査ユニット(14)および前記第2の走査ユニット(60,60.1,60.2,160.1,160.2)が、共通のキャリア要素(50)に一緒に配置されている位置測定装置。
【請求項4】
位置測定装置において、
回動不能にシャフト(5)に結合可能な目盛キャリア(12)であって、該目盛キャリア(12)が組み立てられた状態でシャフト(5)の回転軸線を中心として半径方向に配置された測定目盛(13)を有する目盛キャリア(12)と、
測定目盛(13)を走査することによって位置信号(PS)を生成するための走査ユニット(14)と、
位置信号(PS)を絶対デジタル位置値(P)として処理するための位置処理ユニット(20)と、
後続電子機器(100)と通信するためのインターフェイスユニット(30)と
を含み、
さらに位置測定装置が、
機械部品(70,70.1,70.2)の測定対象(72,72.1,72.2,172.1,172.2)を走査することによって、機械部品(70,70.1,70.2)の位置に依存する測定信号(MS)を生成するための少なくとも1つの第2の走査ユニット(60,60.1,60.2,160.1,160.2)と、
第2の走査ユニット(60,60.1,60.2,160.1,160.2)に関して測定対象(72,72.1,72.2,172.1,172.2)の位置および/または位置変化を示す少なくとも1つの測定値(M)として測定信号(MS)を処理し、少なくとも1つの測定値(M)をインターフェイスユニット(30)に出力するための評価ユニット(80,180)とを含み、
前記走査ユニット(14)および前記第2の走査ユニット(60,60.1,60.2,160.1,160.2)が、共通のキャリア要素(50)に一緒に配置されており、
前記走査ユニット(14)および少なくとも1つの前記第2の走査ユニット(60,60.1,60.2,160.1,160.2)が誘導的な測定原理にしたがって構成されており、交流電磁場を検出するための受信コイルの形式のセンサ素子(15,62,62.1,62.2,162.1,162.2)を備え、それぞれの測定対象(72,72.1,72.2,172.1,172.2)が弱め界磁特性を有する位置測定装置。
【請求項5】
請求項に記載の位置測定装置において、
前記測定対象(72,72.1,72.2,172.1,172.2)がキャリア要素(78)を含み、該キャリア要素(78)に少なくとも1つの導電性領域(76,176)配置されている位置測定装置。
【請求項6】
請求項に記載の位置測定装置において、
測定対象(172.1,172.2)が測定目盛セグメントとして構成されており、キャリア要素(78)に複数の導電性領域(76,176)がピッチ周期(T)に対応して横方向(X)に配置されており、第2の走査ユニット(160.1,160.2)のセンサ素子(162.1,162.2)がそれぞれ2つの受信コイルを含み、該受信コイルの導体ループが同様にピッチ周期(T)に対応して横方向(X)に配置されており、2つの受信コイルが横方向(X)に4分の1ピッチ周期(T)だけ互いにずらしてして配置されている位置測定装置。
【請求項7】
位置測定装置を作動する方法であって、
シャフト(5)に回動不能に結合された目盛キャリア(12)であって、該目盛キャリア(12)が組み立てられた状態でシャフト(5)の回転軸線を中心として半径方向に配置された測定目盛(13)を有する目盛キャリア(12)と、
測定目盛(13)を走査することによって位置信号(PS)を生成する走査ユニット(14)と、
位置信号(PS)を絶対デジタル位置値(P)として処理する位置処理ユニット(20)と、
後続電子機器(100)と通信するためのインターフェイスユニット(30)とを含み、
さらに位置測定装置が、
機械部品(70,70.1,70.2)の測定対象(72,72.1,72.2,172.1,172.2)を走査することによって機械部品(70,70.1,70.2)の位置に依存する測定信号(MS)を生成する少なくとも1つの第2の走査ユニット(60,60.1,60.2,160.1,160.2)と、
第2の走査ユニット(60,60.1,60.2,160.1,160.2)に対する測定対象(72,72.1,72.2,172.1,172.2)の位置および/または位置変化を示す少なくとも1つの測定値(M)として測定信号(MS)を処理し、少なくとも1つの測定値(M)をインターフェイスユニット(30)に出力する評価ユニット(80,180)とを含み、
前記評価ユニット(80,180)が前記測定値(M)として
方向(Z)における前記測定対象(72,72.1,72.2,172.1,172.2)と前記第2の走査ユニット(60,60.1,60.2,160.1,160.2)との間の距離(D1,D2)および/または
横方向(X)における第2の走査ユニット(60,60.1,60.2,160.1,160.2)に対して平行な測定対象(72,72.1,72.2,172.1,172.2)の変位、および/または
第2の走査ユニット(60,60.1,60.2,160.1,160.2)に対する測定対象(72,72.1,72.2,172.1,172.2)の振動のためのパラメータを決定する、位置測定装置を作動する方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1に記載の位置測定装置および請求項8に記載の位置測定装置を作動する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動化技術では、シャフトの角度位置および/または回転数を測定する位置測定装置がしばしば使用される。このような位置測定装置は、ロータリエンコーダまたは角度測定器とも呼ばれる。測定されるシャフトは、電気モータのモータシャフトまたは他の回転する機械構成要素のシャフトであってもよい。測定のために、ロータリエンコーダは、測定目盛を有する目盛キャリアと、測定目盛の回転運動を検出し、評価する走査装置とを備える。目盛キャリアはディスク状またはリング状であり、測定されるべきシャフトに回動不能に結合されており、したがって目盛キャリアはシャフトと共に回転する。これに対して、走査装置は、目盛キャリアに向かい合って、機械構成要素、例えばケーシングに堅固に結合されている。位置測定は、様々な物理的走査原理、例えば、光学的、磁気的、誘導的、または容量的な走査原理に基づいていてもよい。ドイツ連邦共和国特許出願公開第19751853号明細書は、例えば、誘導的な測定原理にしたがって動作する位置測定装置を記載している。
【0003】
走査装置によって測定される走査信号ができるだけ回転運動にしか依存しないようにするために、同様に走査信号に影響を及ぼす走査装置と測定目盛との間の走査距離を一定に保つ試みがなされている。
【0004】
一般に、位置測定装置の設置位置のすぐ近くには可動の機械的構成要素が配置され、この機械的構成要素の位置は付加的なセンサによって監視される。センサは、線形の変位を測定するための線形の位置測定装置、または2つの機械構成要素の間の距離を決定するための近接センサであってもよい。これについての一般的な例は、電気駆動装置で回転運動を機械的に遅らせるか、もしくは防止する役割を果たすエンジンブレーキである。この場合、ブレーキプロセスでは可動の機械部品(アーマチュアディスク)が、減速したいシャフトに同様に回動不能に結合されているブレーキディスクに対して力によって押圧される。制動作用は、この場合に生じる摩擦により実現する。摩擦面にはブレーキパッドが配置されており、ブレーキパッドは経時的に摩耗する。アーマチャディスクの位置を決定することにより、ブレーキが操作された状態にあるか、または操作されていない(解除された)状態にあるかを確認することができ、ブレーキパッドの厚さについての推論することもできる。後者は、機械の保守の過程で早期にブレーキパッドを交換するために重要である。
【0005】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第102016224012号明細書には、位置測定装置を用いてブレーキの状態およびブレーキパッドの厚さを決定するための解決策が記載されている。この場合、位置測定装置はアーマチャディスクと一緒に移動され、したがって制動プロセスでは、走査距離、すなわち走査装置と目盛キャリアとの間の距離が変化する。これは、位置信号の振幅の変化をもたらし、この変化からブレーキの状態を推論することができる。しかしながら、上述したように、走査信号の振幅は一定に保たれることが望ましいので、位置測定装置を可動であるように配置することは不都合である場合が多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】ドイツ連邦共和国特許出願公開第19751853号明細書
【文献】ドイツ連邦共和国特許出願公開第102016224012号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、位置測定装置の周辺における機械部品の位置を、小さい付加的労力により測定することができる装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は請求項1に記載の位置測定装置によって解決される。
このために、位置測定装置において、
シャフトに回動不能に結合可能な目盛キャリアであって、目盛キャリアが組み立てられた状態でシャフトの回転軸線を中心として半径方向に配置された測定目盛を有する目盛キャリアと、
測定目盛を走査することによって位置信号を生成するための走査ユニットと、
位置信号を絶対デジタル位置値として処理するための位置処理ユニットと、
後続電子機器と通信するためのインターフェイスユニットと
を含み、
さらに位置測定装置は、
機械部品の測定対象を走査することによって、機械部品の位置に依存する測定信号を生成するための少なくとも1つの第2の走査ユニットと、
第2の走査ユニットに関して測定対象の位置および/または位置変化を示す少なくとも1つの測定値として測定信号を処理し、少なくとも1つの測定値をインターフェイスユニットに出力するための評価ユニットとを含む
位置測定装置が提案される。
【0009】
さらに本発明の課題は、位置測定装置の周辺における機械部品の位置を、小さい付加的な労力によって測定することができる方法を提案することである。
【0010】
この課題は請求項8に記載の方法によって解決される。
【0011】
このために、位置測定装置を作動する方法であって、
シャフトに回動不能に結合されており、目盛キャリアが組み立てられた状態でシャフトの回転軸線を中心として半径方向に配置された測定目盛を有する目盛キャリアと、
測定目盛を走査することによって位置信号を生成する走査ユニットと、
位置信号を絶対デジタル位置値として処理する位置処理ユニットと、
後続電子機器と通信するためのインターフェイスユニットとを含み、
さらに位置測定装置は、
機械部品の測定対象を走査することによって機械部品の位置に依存する測定信号を生成する少なくとも1つの第2の走査ユニットと、
第2の走査ユニットに対する測定対象の位置および/または位置変化を示す少なくとも1つの測定値として測定信号を処理し、少なくとも1つの測定値をインターフェイスユニットに出力する評価ユニットとを含む位置測定装置を作動する方法が提案される。
【0012】
本発明の有利な実施形態が、請求項1および請求項8に従属する請求項、および以下の実施形態の説明により明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明による位置測定装置を示すブロック図である。
図2】本発明による位置測定装置の第1の実施形態を示す図である。
図3】本発明による位置測定装置の別の実施形態を示す図である。
図4】有利な実施形態の走査ユニットのためのキャリア要素を示す図である。
図5図4に示したキャリア要素を備える本発明による位置測定装置を示すブロック図である。
図6】有利な実施形態の走査ユニットのための代替的なキャリア要素を示す図である。
図7図6に示したキャリア要素を備える本発明による位置測定装置を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
有利な実施形態の以下の説明では、1つの図面に挿入し、説明する構成要素の符号は、他の図面においても保持する。符号が繰り返し使用されるが、同じ機能を果たす場合には、必要に応じて数を補足する。
【0015】
図1は、本発明による位置測定装置のブロック図を示す。位置測定装置は、基本的な機能を実施し、シャフト5の角度位置および/または回転数を決定するために、測定目盛13を有する目盛キャリア12と、センサ素子15を有する走査ユニット14と、位置処理ユニット20と、インターフェイスユニット30と、を含む。
【0016】
目盛キャリア12は、ディスク状または環状に構成されており、測定目盛13は、ディスクの回転中心を中心として半径方向に配置されている。目盛キャリア12は、位置測定装置を作動するために、シャフト5に回動不能に結合されており、これにより測定目盛13はシャフト5と共に回転する。
【0017】
シャフト5は位置測定装置の一部であってもよく、それぞれの用途において、機械シャフト(モータシャフト)との適切な機械的連結を介して結合されていてもよい。しかしながら、シャフト5は、角度位置および/または回転数を測定したい機械シャフト(モータシャフト)自体であってもよい。この場合にはシャフトは位置測定装置の一部ではない。
【0018】
走査ユニット14は、測定目盛13を走査するために目盛キャリア12に向かい合って配置されている。位置測定の基本原理は、測定目盛13による物理的な大きさまたは特性の角度に依存した変化に基づいている。検出は、物理的な走査原理に対応して構成されたセンサ素子15によって行われる。したがって、光学的な走査原理の場合、センサ素子15は光検出器であり、誘導的な走査原理の場合には受信コイルであり、磁気的な走査原理の場合には磁界センサ(ホールセンサ、MRセンサなど)であり、容量的な走査原理の場合には、例えばキャパシタ電極である。センサ素子15による測定目盛13の走査によりシャフト5の角度位置に関する情報を含む位置信号PSが得られる。位置信号PSは位置処理ユニット20に供給され、位置処理ユニット20で絶対デジタル位置値(角度値)Pとして処理される。
【0019】
位置値Pはインターフェイスユニット30に供給される。インターフェイスユニット30は、位置測定装置と後続電子機器100との通信を可能にするデジタル式のデータインターフェイス、特にシリアルインターフェイスである。このために、インターフェイスユニット30は、後続電子機器100の対応するインターフェイスに接続可能である。有利には、インターフェイスユニット30は双方向インターフェイスとして構成されており、コマンド、および必要に応じてデータを後続電子機器100から位置測定装置へ伝送し、位置測定装置データによって測定されたデータを後続電子機器100へ伝送することができる。
【0020】
位置測定のためには、当業者に知られている様々な物理的測定原理、例えば、光学的、誘導的、磁気的、または容量的な測定原理を使用することができる。
【0021】
本発明によれば、位置測定装置は、さらに少なくとも1つの第2の走査ユニット60および評価ユニット80を有する。
【0022】
第2の走査ユニット60は、機械部品70の位置に依存する測定信号MSを生成するように構成されている。測定信号MSの検出は、機械部品70の測定対象72を適切なセンサ素子62によって走査することによって行われる。測定対象72としては、機械部品70自体、特に機械部品70の、第2の走査ユニット60に向いている側の物理的特性を利用することができる。後に示すように、本発明の有利な実施形態は、機械部品70の、第2の走査ユニット60に向いている側に配置された別個の要素が測定対象72として使用される場合に得られる。
【0023】
走査のために、任意の物理的走査原理、特に、光学的、磁気的、誘導的または容量的な走査原理を使用することができる。選択された走査原理は、測定対象72および第2の走査ユニット60の構成を決定する。
【0024】
以下では、物理的走査原理によって決定される大きさの、位置に依存した変化を検出するためのセンサ素子が配置される機能ユニットは常に「走査ユニット」と呼ぶ。さらに走査ユニットは、この大きさを生成する役割を果たす構成要素を含むこともできる。
【0025】
例えば、光学的な走査原理が使用される場合には、第2の走査ユニット60は、センサ素子62として、測定対象72によって反射される光を検出する光検出器(フォトダイオード)を含む。光は、光源(LEDまたはレーザダイオード)によって測定対象72の方向に放出される。この場合、測定対象72は光反射特性を有する。
【0026】
磁気的な走査原理を使用する場合には、測定対象72は少なくとも1つの磁性領域を有し、第2の走査ユニット60の側で、センサ素子62である磁界センサ(ホール素子またはMRセンサ)によって磁界を検出する。
【0027】
誘導的な測定原理の場合には、第2の走査ユニット60は励磁コイルによって、センサ素子62として使用される検出器コイルで電圧を誘導する電磁場を生成する。この場合、測定対象72は、電磁場に影響を及ぼし、したがって検出器コイルで誘導される電圧の振幅に影響を及ぼす弱め界磁特性を有する。
【0028】
容量性の測定原理は、測定対象72と第2の走査ユニット60の適切な素子とによってコンデンサが形成され、このコンデンサがセンサ素子62としての役割を果たし、静電容量が、第2の走査ユニット60に対する測定対象72の位置によって決定されることに基づいている。
【0029】
測定原理にかかわらず、第2の走査ユニット60による測定対象72の走査によって得られる測定信号MSは、第2の走査ユニット60に対する測定対象72の位置に依存することに注意されたい。これは特に、測定対象72と第2の走査ユニット60との間の距離について当てはまる。
【0030】
測定信号MSは評価ユニット80に供給され、評価ユニット80でデジタル測定値Mとして処理される。図1に示すように、測定対象72を有する機械部品70が第2の走査ユニット60に対して測定方向Zに移動可能に配置されている場合、デジタル測定値Mは、第2の走査ユニット60に対する測定対象72の位置(距離)または/および位置変化(距離変化)を示す。
【0031】
この例ではシャフト5の軸線方向に延在する方向Zにおける位置測定の代わりに、またはこれに加えて、他の空間方向における、例えば方向Zに対して垂直に配置された横方向Xにおける位置および/または位置変化を測定することもできる。したがって、横方向Xの移動は、第2の走査ユニット60に対する機械部品70の平行な変位に対応する。したがって、測定値Mは、横方向Xにおける測定対象72の変位を示す。横方向Xの移動は、直線運動、または円形経路に追従する移動であってもよい。このように、測定値Mは長さまたは角度を示す。
【0032】
走査ユニット14、第2の走査ユニット60、および電子モジュール、例えば位置処理ユニット20、インターフェイスユニット30および評価ユニット80を収容するためにケーシング40が設けられている。
【0033】
図2は、取り付けられた状態の本発明による位置測定装置の第1の実施形態を示す。すなわち、目盛キャリア12はシャフト5に回動不能に結合されており、位置測定装置のケーシング40は、例えばねじ込み結合によって不動の機械構成要素74に固定されている。ケーシング40内には、目盛キャリア12に向いている方の側に、測定目盛13を走査するための走査ユニット14が公知の方法で配置されている。さらに、Z方向に割り当てられた機械部品70.1,70.2までの距離D1,D2をそれぞれ示す測定値Mを決定する2つの第2の走査ユニット60.1,60.2が設けられている。測定は、機械部品70.1,70.2の測定対象72.1,72.2を走査することによって行われる。
【0034】
さらにケーシング40内には、位置処理ユニット20、インターフェイスユニット30、および評価ユニット80などの電子モジュールが配置されている(図示しない)。この場合、別個のプリント回路基板が設けられていてもよいが、走査ユニット14および/または第2の走査ユニット60.1,60.2が既にプリント回路基板を含む場合には、これらのモジュールをこのプリント回路基板に配置することもできる。さらに、ケーシング40内またはケーシング40にコネクタ、接続端子などが設けられていてもよい。
【0035】
位置測定装置を組み込む機械は、例えば、電磁モータブレーキが組み込まれた電動モータであってもよい。この場合、不動の機械部品74は、例えば、モータケーシングまたはケーシングフレームの一部であり、シャフト5は、電動モータのモータシャフトであり、機械部品70.1,70.2は、運動方向Zにブレーキを作動または停止(解除)するために移動される電磁モータブレーキの部品である。距離D1,D2から、モータブレーキの機能、例えば、モータブレーキが作動されているか、または停止されているか(解除されているか)を推論することができる。さらに距離D1,D2を監視することによって、ブレーキパッドの摩耗状態について述べることが可能になる。機械部品70.1,70.2は、単一の環状の構成部品(例えば、モータブレーキのアーマチュアディスク)の別個の部品または領域であってもよい。
【0036】
シャフト5の回転角度または回転数の測定に関して、この配置は特に有利である。なぜならば、走査距離A(走査ユニット14のセンサ素子15と目盛キャリア12の測定目盛13との間の距離)が実質的に一定であり、したがって、測定目盛13の走査により得られる位置信号PSが実際にはシャフト5の回転運動にのみ依存しているからである。
【0037】
走査ユニット14および第2の走査ユニット60.1,60.2は、この実施形態では互いに独立しており、すなわち、異なる走査原理に基づいていてもよい。
【0038】
図3は、取り付けられた状態にある本発明による位置測定装置の別の実施形態を示す。前述の図面に関連して既に説明した構成要素には、同じ符号を付している。上記実施形態とは異なり、走査ユニット14および第2の走査ユニット60.1,60.2は、共通のキャリア要素50に一緒に配置されている。キャリア要素50は、有利には、プリント回路基板である。
【0039】
この実施形態は、センサ素子15,62.1,62.2がコイル(受信コイル)であり、交番磁界を生成するためにもコイル(励起コイル)が必要とされるので、誘導的な走査原理が走査ユニット14および第2の走査ユニット60.1,60.2の両方で使用される場合には、特に有利である。コイルは、プリント回路基板、特に多層プリント回路基板に、安価に簡単な方法で作製することができる。さらにキャリア要素50には、走査ユニット14,60.1,60.2の電気回路の他の構成要素、ならびに、必要に応じて位置処理ユニット20、インターフェイスユニット30および評価ユニット80を配置することもでき、この場合、単一のプリント回路基板しか必要とされない。
【0040】
さらに、ケーシング40のためのカバーとしての役割を果たすことができるようにキャリア要素50の外形を構成することが有利である。
【0041】
図4は、誘導的な測定原理の場合に対応する測定対象72.1,72.2を有するキャリア要素50の有利な構成を示す。
【0042】
キャリア要素50は、走査ユニット14が配置されている内側領域52と、2つの第2の走査ユニット60.1,60.2を有する外側領域54とを含む。
【0043】
内側領域52には、受信コイルの形式の複数のセンサ素子15と励磁コイル17とが配置されている。(図示しない励磁ユニットと連携した)励磁コイル17によって交番電磁場が生成され、この交番電磁場は、シャフト5の角度位置、もしくはシャフト5に結合された目盛キャリア12(図示しない測定目盛13を有する)の角度位置に応じて弱められる。したがって、受信コイル15で誘起される電圧が回転角度に応じて変化するので位置決定が可能となる。この点において、キャリア要素50の内側領域52は、ドイツ連邦共和国特許出願公開第19751853号明細書に記載されたキャリア要素に対応する。
【0044】
キャリア要素50の外側領域54内の第2の走査ユニット60.1,60.2は、交番電磁場を検出するためのそれぞれ1つの受信コイルを有するセンサ要素62.1,62.2を含む。受信コイルは、必ずしも円形ディスクの360°全体にわたって延在する必要はなく、測定したい測定対象72.1,72.2の位置を検出するために必要な領域にのみ延在する。2つの走査ユニット60.1,60.2の場合には、これらの走査ユニットは、例えば、それぞれ180°未満、特に90°未満の角度範囲を有するリングセグメントを含む。キャリア要素50の外側輪郭は、ケーシング40の機械的要件に適合させることができる。破線で示すように、キャリア要素50は、例えば、円形ディスク状である。
【0045】
第2の走査ユニット60.1,60.2によって検出されるべき交流電磁場は、少なくとも3つの異なる方法で生成することができる:
1.内側領域52内で生成され、内側領域52の縁部を越えて外側領域54にまで延在する交流電磁場が、検出されるべき交流電磁場として用いられる。
2.第2の走査ユニット60.1,60.2には、内側領域52の励起コイルと直列に接続された励起コイル64.1,64.2が配置されている。このようにして、電磁場発生回路は外側領域54にまで拡大される。
3.第2の走査ユニット60.1,60.2には、励磁コイル64.1,64.2が配置されており、これらの励磁コイルは、交流電磁場を発生させるための別個の励磁ユニットによって制御される。
【0046】
誘導的な測定原理にしたがって、測定対象72.1,72.2は弱め界磁特性を有する。この実施形態では、測定対象72.1,72.2は導電性領域76によって形成されており、導電性領域76は、キャリア要素50に類似したプリント回路基板であってもよいキャリア要素78に配置されている。導電性領域76は、例えば、銅表面によって形成されている。測定対象72.1,72.2は、適切な方法で、例えば接着剤結合またはねじ込み結合によって機械部品70.1,70.2に結合される。
【0047】
別個のキャリア要素78として測定対象72.1,72.2を配置することによって、機械部品72.1,72.2の材料および性質に実質的に依存しないことが達成される。さらに測定対象72.1,72.2と第2の走査ユニット60.1,60.2との間の位置および/または位置変化を区別して測定することを可能にする異なる測定対象72.1,72.2を使用することができる。
【0048】
図1図3によれば、第2の走査ユニット60.1,60.2と対応する測定対象72.1,72.2とは、取り付けられた状態で互いに向かい合って配置されている。
【0049】
この実施形態では、測定信号MSは、センサ素子62.1,62.2で誘導される電圧である。
【0050】
図5は、図4に示したキャリア要素を備える本発明による位置測定装置のブロック図を示す。簡単に示すために、第2の走査ユニット60.1しか示されていないが、回路は2つ以上の第2の走査ユニットに容易に拡張することができる。
【0051】
磁界発生回路は、第2の走査ユニット60.1の励磁コイル64.1と直列に接続された内側領域52内の励磁コイル17と、励磁コイル17,64.1と共に共振回路を形成する励振ユニット66とを含む。励振ユニット66は、共振回路を周期的にまたはパルス状に励振し、これにより振動を発生させるように適切に構成されている。共振回路を形成するために、励振ユニット66はコンデンサを含み、共振回路を励振するために切換素子を含む。
【0052】
交流電磁場は、シャフト5の回転角度の決定に関する場合には(図示しない測定目盛13を有する)目盛キャリア12に基づいて、機械部品70.1の位置の決定に関する場合には測定対象72.1に基づいて、位置に依存して弱められ、これにより、センサ素子15および62.1では誘導電圧が変調される。
【0053】
位置処理ユニット20は、既知の方法で、センサ素子15で誘導された電圧を、シャフト5の角度位置を示す位置値Pとして処理する。
【0054】
評価ユニット80には、センサ素子62.1で誘起され電圧が測定信号として供給される。評価ユニット80は、測定信号を、測定対象72.1(および機械部品70.1)と第2の走査ユニット60.1との間の距離D1を示す測定値Mとして処理する第1の信号処理ユニット82を含む。
【0055】
さらに評価ユニット80は、測定信号のさらなる評価、例えば、適切なフィルタ方法または周波数分析(フーリエ分析など)による周波数範囲における評価を行う第2の信号処理ユニット84を含んでいてもよい。このようにして、第2の走査ユニット60.1に対する測定対象72.1の振動(振幅および/または周波数)のためのパラメータを示すさらなる測定値M、例えば測定値Mを得ることができる。本発明の範囲では、振動は位置変化とみなされるべきである。
【0056】
第1の処理ステップとして、測定信号が信号処理ユニット82,84に供給される前に、交流電磁場の基本周波数(キャリア周波数)を有する信号成分を除去するために、評価ユニットにおいて復調を行うことができる。
【0057】
測定値Mはインターフェイスユニット30に供給され、インターフェイスユニット30から後続電子機器100に出力することができる。
【0058】
図6は、誘導式の測定原理における、対応する測定対象172.1,172.2を有するキャリア要素50の別の有利な構成を示す。
【0059】
内側領域52は、図4の実施形態の内側領域に対応し、外側領域54には、さらに2つの第2の走査ユニット160.1,160.2が配置されている。
【0060】
しかしながら、この実施形態では、第2の走査ユニット160.1,160.2のセンサ素子162.1,162.2は、交流電磁場を検出するためにそれぞれ2つの受信コイルを含む。
【0061】
測定対象172.1,172.2は、測定目盛セグメントとして構成されており、すなわち、キャリア要素178に配置された導電性領域176の規則的なシーケンスを有する。
【0062】
測定対象172.1,172.2の測定目盛セグメントの導電性領域176、およびセンサ素子162.1,162.2の受信コイルの導体ループの配置は同じピッチ周期Tを有し、(シャフト5の回転中心に対応する)キャリア要素50の中心を中心とした円形経路に対応する横方向Xに追従している。さらに、センサ素子162.1,162.2につき2つの受信コイルが、測定目盛要素の測定方向(円周方向)に4分の1ピッチ周期Tだけずらしてして配置されている。測定目盛要素の測定方向(横方向X)におけるセンサ素子162.1,162.2に対する測定対象172.1,172.2の変位は、受信コイルで誘導される電圧の変調をもたらす。受信コイルの導体ループを適切に構成することによって、ピッチ周期T毎の変調はほぼ正弦状であり、2つの受信コイルをずらして配置することによって誘導電圧は90°の位相シフトを有する。
【0063】
第2の走査ユニット160.1,160.2と連携した測定対象172.1,172.2のこの構成は、測定される機械部品70.1,70.2の方向Zの移動が、受信コイルで誘導される電圧の振幅に一様に影響し、これに対して、横方向Xの移動時には誘導電圧の振幅は対応して正弦状の波形に追従するので、特に有利である。これは、異なる移動方向が識別可能であることを意味する。
【0064】
方向Zおよび横方向Xの移動が生じる場合のある用途は、上述のモータブレーキである。ブレーキを作動または解除するための方向Zの移動に加え、ブレーキプロセスで、生じる摩擦によって半径方向(円周方向)の力が生じ、この力は、位置測定装置によって測定する機械部品の位置の変化をもたらす場合がある。この位置変化の測定は、ブレーキの機械的な状態を判定することを可能にする。
【0065】
図7は、図6に示したキャリア要素を備える本発明による位置測定装置のブロック図を示す。この場合にも第2の走査ユニット160.1のみが示されている。
【0066】
図5とは異なり、90°だけずらして配置された2つのセンサ素子162.1が設けられており、これらのセンサ素子で誘導された電圧は測定信号として評価ユニット180に供給される。
【0067】
評価ユニット180は、方向Zの位置に関して測定信号を評価する第1の信号処理ユニット182と、横方向Xの位置変化に関して測定信号を評価する第2の信号処理ユニット184とを有する。この場合にもまず復調が行われ、これにより測定信号は正弦状および余弦状の信号として生じる。さらなる評価のために、これらの測定信号は複素数の実数部および虚数部とみなすことができる。したがって、第1の信号処理ユニット182は、方向Zにおける測定対象172.1と第2の走査ユニット160.1との間の距離D1の尺度であるこの複素数の大きさを測定値Mとして決定する。第2の信号処理ユニット184は、横方向Xにおける走査ユニット160.1に対する測定対象172.1の位置を示す複素数の位相角を測定値Mとして決定する。
【0068】
さらに、第2の信号処理ユニット184では、適切なフィルタ方法または周波数分析(フーリエ分析など)によって周波数範囲の測定信号を評価することによって、測定対象72.1の振動(振幅および/または周波数)、特に横方向Xの振動を示すさらなる測定値Mを決定することができる。
【0069】
この場合にもモータブレーキの上記の例を使用することができる、なぜならば、特にブレーキプロセスでは横方向Xの振動が生じる場合があるからである。
【0070】
本発明は、当然ながら説明した施形態に制限されておらず、当業者は様々な測定タスクのために特許請求の範囲内で変更することができる。
【符号の説明】
【0071】
5 シャフト
12 目盛キャリア
13 測定目盛
14 走査ユニット
15,62,62.1,62.2,162.1,162.2 センサ素子
20 位置処理ユニット
30 インターフェイスユニット
40 ケーシング
50 キャリア要素
60,60.1,60.2,160.1,160.2 第2の走査ユニット
70,70.1,70.2 機械部品
72,72.1,72.2,172.1,172.2 測定対象
76,176 導電性領域
78 キャリア要素
80,180 評価ユニット
182 第1の信号処理ユニット
184 第2の信号処理ユニット
100 後続電子機器
D1,D2 距離
M 測定値
MS 測定信号
P デジタル位置値
PS 位置信号
T ピッチ周期
X 横方向
Z 方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7