(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】切削装置
(51)【国際特許分類】
B24B 27/06 20060101AFI20240116BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20240116BHJP
B24B 49/12 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
B24B27/06 M
H01L21/78 F
B24B49/12
(21)【出願番号】P 2020012713
(22)【出願日】2020-01-29
【審査請求日】2022-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100202496
【氏名又は名称】鹿角 剛二
(74)【代理人】
【識別番号】100202692
【氏名又は名称】金子 吉文
(72)【発明者】
【氏名】能丸 圭司
【審査官】マキロイ 寛済
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-179538(JP,A)
【文献】特開2018-062052(JP,A)
【文献】特開平06-140497(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 27/06
H01L 21/301
B24B 49/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持する保持手段と、該保持手段に保持された被加工物を切削する切り刃が環状に配設された切削ブレードを備えた切削手段と、該切削ブレードの切り刃を監視する監視手段と、モニターと、を少なくとも備えた切削装置であって、
該監視手段は、切削ブレードの切り刃を撮像する撮像部と、パルス光を発し該撮像部による撮像領域を照明するパルス光源と、該撮像部が発する像を捉えるカメラと、を少なくとも備え、
該撮像部は、切削ブレードの切り刃の一方の側面を撮像する第一の撮像部と、他方の側面を撮像する第二の撮像部と、を備え、
該第一の撮像部は、該切り刃の一方の側面に対面する一方の端面を備えた第一のプリズムと、該第一のプリズムの他方の端面に配設される第一の結像レンズと、該第一の結像レンズに一方の端面が連結され
該切り刃の一方の側面の像を伝達する第一の光ファイバーとを含み、
該第二の撮像部は、該切り刃の他方の側面に対面する一方の端面を備えた第二のプリズムと、該第二のプリズムの他方の端面に配設される第二の結像レンズと、該第二の結像レンズに一方の端面が連結され
該切り刃の他方の側面の像を伝達する第二の光ファイバーとを含み、
該第一の光ファイバーの他方の端面から発せられる
該切り刃の一方の側面の像、及び該第二の光ファイバーの他方の端面から発せられる
該切り刃の他方の側面の像は、該カメラに伝達されて該モニターに表示される切削装置。
【請求項2】
該撮像部は、さらに、第三の撮像部を備え、
該第三の撮像部は、該切り刃の外周端部に対面する第三の結像レンズと、該第三の結像レンズに一方の端面が連結され
該切り刃の外周端部の像を伝達する第三の光ファイバーとを含み、該第三の光ファイバーの他方の端面から発せられる
該切り刃の外周端部の像は、
該切り刃の一方の側面の像、及び
該切り刃の他方の側面の像と共に該カメラに伝達されて該モニターに表示される請求項1に記載の切削装置。
【請求項3】
該撮像部と該カメラとの間にビームスプリッターが配設され、該パルス光源が発するパルス光は該ビームスプリッターを介して該撮像部に配設された各光ファイバーの他方の端面から導入されて該切削ブレードの切り刃の撮像領域に対面する一方の端面に導かれ、該撮像領域を照明する請求項1、又は2に記載の切削装置。
【請求項4】
該パルス光源は、該撮像部に配設された各光ファイバーとは別にパルス光を伝達する照明用光ファイバーを備え、該照明用光ファイバーによって該撮像領域を照明する請求項1、又は2に記載の切削装置。
【請求項5】
該監視手段によって撮像された該切削ブレードの切り刃の像を記憶する記憶部を備えた請求項1乃至4のいずれかに記載の切削装置。
【請求項6】
該切削ブレードの切り刃が一回転する際に該監視手段が該切り刃を撮像する回数をXとし、該切削ブレードを回転させる回転軸の1秒間の回転数をYとしたとき、
パルス光源の繰り返し周波数=X×Y [Hz]
とする請求項1乃至5のいずれかに記載された切削装置。
【請求項7】
該切削ブレードの切り刃を挟むように配設された発光素子及び受光素子と、該切削ブレードを回転させる回転軸に配設されたロータリーエンコーダと、を備え、
該受光素子の受光量が変化した際に該ロータリーエンコーダによって検出される値に対応するタイミングで該パルス光源からパルス光を発するように制御して、該受光素子の受光量が変化した領域を該撮像部によって撮像する撮像領域として照明し撮像する請求項1乃至6のいずれかに記載された切削装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保持手段に保持された被加工物を切削する切り刃を監視する監視手段を備えた切削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
IC、LSI等の複数のデバイスが分割予定ラインによって表面に形成されたウエーハは、切削ブレードを備えた切削装置によって個々のデバイスチップに分割され、携帯電話、パソコン等の電気機器に利用される。
【0003】
また、切削ブレードの外周に環状に形成された切り刃の状態を監視するブレード検出手段を備えた切削装置が本出願人から提案されており(特許文献1を参照)、該ブレード検出手段を用いて切削ブレードの切り刃の状態を検出して切削ブレードの交換時期を知ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記した特許文献1に開示された技術では、切り刃を挟んで発光素子とカメラとを配置し、発光素子から照射された光を利用して切り刃のシルエットを監視する構成であるため、切り刃の側面に切削屑が付着しているか否か、切り刃の側面から砥粒の脱落があるか否か等の詳細な状態を検出することができず、切削ブレードの交換時期、被加工物に形成される切り溝の状態、チッピング(刃欠け)の状態等の予知の精度が高いとはいえず、さらなる改善が求められている。
【0006】
本発明は、上記事実に鑑みなされたものであり、その主たる技術課題は、切り刃の側面の状態を正確に検出し、切削ブレードの交換時期、被加工物に形成される切り溝の状態等の予知の精度に優れた切削装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、被加工物を保持する保持手段と、該保持手段に保持された被加工物を切削する切り刃が環状に配設された切削ブレードを備えた切削手段と、該切削ブレードの切り刃を監視する監視手段と、モニターと、を少なくとも備えた切削装置であって、該監視手段は、切削ブレードの切り刃を撮像する撮像部と、パルス光を発し該撮像部による撮像領域を照明するパルス光源と、該撮像部が発する像を捉えるカメラと、を少なくとも備え、該撮像部は、切削ブレードの切り刃の一方の側面を撮像する第一の撮像部と、他方の側面を撮像する第二の撮像部と、を備え、該第一の撮像部は、該切り刃の一方の側面に対面する一方の端面を備えた第一のプリズムと、該第一のプリズムの他方の端面に配設される第一の結像レンズと、該第一の結像レンズに一方の端面が連結され該切り刃の一方の側面の像を伝達する第一の光ファイバーとを含み、該第二の撮像部は、該切り刃の他方の側面に対面する一方の端面を備えた第二のプリズムと、該第二のプリズムの他方の端面に配設される第二の結像レンズと、該第二の結像レンズに一方の端面が連結され該切り刃の他方の側面の像を伝達する第二の光ファイバーとを含み、該第一の光ファイバーの他方の端面から発せられる該切り刃の一方の側面の像、及び該第二の光ファイバーの他方の端面から発せられる該切り刃の他方の側面の像は、該カメラに伝達されて該モニターに表示される切削装置が提供される。
【0008】
該撮像部は、さらに、第三の撮像部を備え、該第三の撮像部は、該切り刃の外周端部に対面する第三の結像レンズと、該第三の結像レンズに一方の端面が連結され該切り刃の外周端部の像を伝達する第三の光ファイバーとを含み、該第三の光ファイバーの他方の端面から発せられる該切り刃の外周端部の像は、該切り刃の一方の側面の像、及び該切り刃の他方の側面の像と共に該カメラに伝達されて該モニターに表示されるようにすることが好ましい。
【0009】
該撮像部と該カメラとの間にビームスプリッターが配設され、該パルス光源が発するパルス光は該ビームスプリッターを介して該撮像部の各光ファイバーの他方の端面から導入されて該切削ブレードの切り刃の撮像領域に対面する一方の端面に導かれ、該撮像領域を照明するようにすることができる。また、該パルス光源は、該撮像部に配設された各光ファイバーとは別にパルス光を伝達する照明用光ファイバーを備え、該照明用光ファイバーによって該撮像領域を照明するようにすることもできる。さらに、該監視手段によって撮像された該切削ブレードの切り刃の像を記憶する記憶部を備えることが好ましい。
【0010】
該切削ブレードの切り刃が一回転する際に該監視手段が該切り刃を撮像する回数をXとし、該切削ブレードを回転させる回転軸の1秒間の回転数をYとしたとき、
パルス光源の繰り返し周波数=X×Y [Hz]
とすることができる。
【0011】
また、該切削ブレードの切り刃を挟むように配設された発光素子及び受光素子と、該切削ブレードを回転させる回転軸に配設されたロータリーエンコーダと、を備え、該受光素子の受光量が変化した際に該ロータリーエンコーダによって検出される値に対応するタイミングで該パルス光源からパルス光を発するように制御して、該受光素子の受光量が変化した領域を該撮像部によって撮像する撮像領域として照明し撮像することもできる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の切削装置は、被加工物を保持する保持手段と、該保持手段に保持された被加工物を切削する切り刃が環状に配設された切削ブレードを備えた切削手段と、該切削ブレードの切り刃を監視する監視手段と、モニターと、を少なくとも備えた切削装置であって、該監視手段は、切削ブレードの切り刃を撮像する撮像部と、パルス光を発し該撮像部による撮像領域を照明するパルス光源と、該撮像部が発する像を捉えるカメラと、を少なくとも備え、該撮像部は、切削ブレードの切り刃の一方の側面を撮像する第一の撮像部と、他方の側面を撮像する第二の撮像部と、を備え、該第一の撮像部は、該切り刃の一方の側面に対面する一方の端面を備えた第一のプリズムと、該第一のプリズムの他方の端面に配設される第一の結像レンズと、該第一の結像レンズに一方の端面が連結され該切り刃の一方の側面の像を伝達する第一の光ファイバーとを含み、該第二の撮像部は、該切り刃の他方の側面に対面する一方の端面を備えた第二のプリズムと、該第二のプリズムの他方の端面に配設される第二の結像レンズと、該第二の結像レンズに一方の端面が連結され該切り刃の他方の側面の像を伝達する第二の光ファイバーとを含み、該第一の光ファイバーの他方の端面から発せられる該切り刃の一方の側面の像、及び該第二の光ファイバーの他方の端面から発せられる該切り刃の他方の側面の像は、該カメラに伝達されて該モニターに表示されるようにしていることから、切り刃の側面に切削屑が付着しているか否か、切り刃の側面からの砥粒の脱落があるか否か等の状態を検出することができ、切削ブレードの交換時期や、切り溝の状態の予知の精度が向上する。また、切り刃の外周端部に対面する第三の撮像部を配設することにより、切り刃の外周端部の状況も監視することができ、切削ブレードの交換時期、切り溝の状態、チッピングの状態等を把握する際の予知の精度がより向上する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】(a)切削手段の一部を拡大して示す斜視図、(b)(a)に示す切削手段のブレードカバーの可動部を起こした状態を示す斜視図である。
【
図3】
図2(b)に示すブレードハウジングから、撮像部保持ブロックを取り出した状態を示す斜視図である。
【
図4】
図1の切削装置に配設された監視手段30の構成を示す概念図である。
【
図5】
図1に示す監視手段の第一の撮像部、第二の撮像部、及び第三の撮像部の構成を示す概念図である。
【
図6】
図4に示す発光素子、及び受光素子の機能を説明するための概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に基づいて構成される切削装置に係る実施形態について添付図面を参照しながら、詳細に説明する。
【0015】
図1に示す切削装置1によって加工される被加工物は、例えば、図に示すように、ダイシングテープTを介して環状のフレームFに保持された半導体のウエーハWである。切削装置1は、略直方体形状のハウジング1Aを備え、ハウジング1Aのカセット載置領域4に載置されるカセット4Aと、カセット4Aから被加工物であるウエーハWを仮置きテーブル5に搬出する搬出入手段3と、ウエーハWを保持する保持手段10と、仮置きテーブル5に搬出されたウエーハWを保持手段10のチャックテーブル10aに搬送して載置する旋回アームを有する搬送手段6と、チャックテーブル10a上に載置され保持されたウエーハWを撮像する撮像手段11と、ウエーハWに切削加工を施す切削手段20と、切削加工が施されたウエーハWをチャックテーブル10aから洗浄位置に搬送するための搬送手段13と、各種の情報を表示するモニター35と、作業者が加工条件等を設定するための操作パネル14と、を備えている。
【0016】
さらに、切削装置1のハウジング1Aの内部には、保持手段10を図中矢印Xで示す方向で移動させる移動手段、切削手段20を矢印Yで示す方向、及び矢印Zで示す方向で移動させる移動手段(いずれも図示は省略する)、及び制御手段100(点線で示す)が備えられており、制御手段100によって、搬出入手段3、搬送手段6、保持手段10、切削手段20、及びそれらを移動させる該移動手段等が制御される。
【0017】
切削装置1は、上記した周知の構成に加え、切削ブレードの切り刃を監視する監視手段30を備えている。本実施形態の監視手段30の一部は、切削手段20に一体的に配設されている。
図2に切削手段20の一部を拡大して示す。
図2(a)に示すように、切削手段20は、切り刃22aを備えた切削ブレード22が先端部に固定された回転軸23を回転自在に支持するハウジング21と、ハウジング21の先端において切削ブレード22をカバーするブレードカバー24と、切削ブレード22によって切削される加工部位に切削水を供給する切削水供給手段26と、を備えている。ブレードカバー24には、後述する監視部30を構成する撮像部40の一部を保持する撮像部保持ブロック25が装着されている。回転軸23は、図示しない電動モータによって回転させられる。ブレードカバー24は、ハウジング21の先端に固定された主部241と、主部241に対して揺動自在に支持された可動部242とにより構成されている。切削ブレード22を交換する場合は、可動部242を固定する固定ネジ242aを緩めて、
図2(b)に示すように可動部242を矢印R1で示す方向に起こして切削ブレード22を露出させ、回転軸23の先端で切削ブレード22を固定している固定リング22bを外して切削ブレード22を交換する。
【0018】
図1に戻り説明を続けると、カセット4Aから搬出入手段3により搬出されたウエーハWは、搬送手段6により保持手段10のチャックテーブル10a上に搬送されて載置され吸引保持される。チャックテーブル10aに保持されたウエーハWは、撮像手段11によって撮像されて加工位置(分割予定ライン)が検出され、切削手段20の下方に位置付けられて、撮像手段11によって検出された分割予定ラインの位置情報に基づき切削加工が施される。切削加工が施されたウエーハWは、搬送手段13によって洗浄位置に搬送されて洗浄、乾燥処理が施され、搬送手段6、及び搬出入手段3によってカセット4Aの所定の位置に戻される。
【0019】
図3には、切削手段20のブレードカバー24から撮像部保持ブロック25を取り外した状態が示されている。図に示すように、撮像部保持ブロック25は、昇降部材252を上下方向から保持する上部材25a及び下部材25bを備え、昇降ツマミ251を矢印R3で示す方向に回転させることで、回転軸251aに螺合された昇降部材252を矢印R4で示す方向で昇降させることができる。昇降部材252の先端部には、切り刃22aの状態を撮像する際に切り刃22aが位置付けられる検出空間252aが形成されて略逆U字形状をなしている。
【0020】
さらに、
図4、
図5を参照しながら、本実施形態の監視手段30について説明する。
図4に示すように、監視手段30は、切削手段20(説明の都合上、ブレードカバー24は省略している)の切削ブレード22の切り刃22aを撮像する撮像部40と、パルス光Lを発し撮像部40の撮像領域を照明するパルス光源50と、撮像部40が発する像を捉えるカメラ60とを備えている。
【0021】
撮像部40は、昇降部材252の先端部に収容された、第一の撮像部42と、第二の撮像部44と、第三の撮像部46と、を備えている。
図5には、第一の撮像部42、第二の撮像部44、及び第三の撮像部46をより具体的に示している。第一の撮像部42は、昇降部材252の検出空間252aに切り刃22aが位置付けられたときに、切り刃22aの一方の側面に対面する端面421aを備えた第一のプリズム421と、第一のプリズム421の他方の端面421bに配設された第一の結像レンズ422と、第一の結像レンズ422に一方の端面423aが連結され切り刃22aの一方の側面の像を伝達する第一の光ファイバー423と、を備えている。
【0022】
第二の撮像部44は、昇降部材252の検出空間252aに切り刃22aが位置付けられたときに、切り刃22aの他方の側面に対面する一方の端面441aを備えた第二のプリズム441と、第二のプリズム441の他方の端面441bに配設される第二の結像レンズ442と、第二の結像レンズ442に一方の端面443aが連結され切り刃22aの他方の側面の像を伝達する第二の光ファイバー443と、を備えている。すなわち、第一のプリズム421の一方の端面421a、及び第二のプリズム441の一方の端面441aは、検出空間252aを挟み対向する位置に配設されている。
【0023】
第三の撮像部46は、昇降部材252の検出空間252aに切り刃22aが位置付けられたときに、切り刃22aの外周端部に対面する第三の結像レンズ462と、第三の結像レンズ462に一方の端面463aが連結され切り刃22aの外周端部の像を伝達する第三の光ファイバー463と、を備えている。なお、本実施形態では、切削装置1に対して第一の撮像部42、第二の撮像部44、第三の撮像部46を配設したが、本発明はこれに限定されず、第三の撮像部46を配設せず、第一の撮像部42、第二の撮像部44のみを配設した構成とすることもできる。
【0024】
図4に戻り説明を続けると、第一の光ファイバー423の他方の端面423b、第二の光ファイバー443の他方の端面443b、及び第三の光ファイバー463の他方の端面463bは一つに纏められ、コリメートレンズ47に対面する位置に配設されている。また、各光ファイバーの他方の端面から発せられる像は、コリメートレンズ47によって平行とされ、ビームスプリッター70、及び結像レンズ48を挟んで位置付けられたカメラ60によって撮像される。カメラ60によって撮像された像は、制御手段100に配設された記憶部110に記憶されると共に、モニター35に表示される。なお、上記したように、第一の光ファイバー423の他方の端面423b、第二の光ファイバー443の他方の端面443b、及び第三の光ファイバー463の他方の端面463bは一つに纏められており、各端部から発せられる像(42A、44A、46A)は、カメラ60によって同時に撮像されることから、
図4に示すように1枚の画像に取り込まれる。
【0025】
本実施形態では、ビームスプリッター70の反射面72に集光レンズ49を介してパルス光Lを照射するパルス光源50が配設されている。パルス光源50としては、例えば、白色光源、又はスペックル処理が施されたレーザーダイオード(LD)光源等を採用することができる。パルス光源50から照射されたパルス光Lは、ビームスプリッター70の反射面72で反射し、撮像部40の第一の光ファイバー423の他方の端面423b、第二の光ファイバー443の他方の端面443b、及び第三の光ファイバー463の他方の端面463bから導入されて、第一の光ファイバー423の一方の端面423a、第二の光ファイバー443の一方の端面443a、及び第三の光ファイバー463の一方の端面463aから照射されて、検出空間252aに位置付けられる切り刃22aにおける撮像領域を照明する。このパルス光源50は、制御手段100に接続されており、パルス光Lを発光させるタイミング、及びその繰り返し周波数は、制御手段100によって制御される。
【0026】
なお、上記した実施形態では、パルス光源50が発したパルス光Lを、撮像部40とカメラ60との間に配設したビームスプリッター70を介して、撮像部40を構成する第一の光ファイバー423、第二の光ファイバー443、及び第三の光ファイバー463を介して切削ブレード22の切り刃22aの撮像領域に導くようにしたが、本発明はこれに限定されず、例えば、
図4に点線で示すように、パルス光源50’から発せられるパルス光Lを、撮像部40の各光ファイバーとは別に配設された照明用光ファイバー423’、443’、463’を介して検出空間252aに導入し、切削ブレード22の切り刃22aの撮像領域を照明するようにしてもよい。その場合は、ビームスプリッター70を備える必要はない。
【0027】
図4に示すように、切削手段20の後端部には、回転軸23の回転位置を示す値(電気信号)を出力するロータリーエンコーダ29を備えている。ロータリーエンコーダ29によって出力される値は制御手段100に伝達され、回転軸23の位置、回転速度等が演算される。
【0028】
さらに、本実施形態では、
図6に示すように、切削ブレード22の回転方向(矢印R5で示す)において、昇降部材252の上流側に、切削ブレード22の切り刃22aの外周端部を挟むように配設された発光素子82及び受光素子84を備えている(
図4も併せて参照されたい)。発光素子82と受光素子84とによって検出される領域P1においては、切り刃22aが発光素子82から発せられた光の概ね2/3程度を遮り、残りの1/3程度の光量が受光素子84によって受光され、該受光量を示す電気信号が制御手段100に伝達される。
図6に示すように、発光素子82及び受光素子84が配設された位置と、第一の撮像部42、第二の撮像部44、及び第三の撮像部46が配設された位置との回転方向の角度はα°である。
【0029】
本実施形態の切削装置1は、概ね上記したとおりの構成を備えており、切削装置1を使用して、切削ブレード22の切り刃22aの状態を監視する際の手順、及びその作用ついて、以下に説明する。
【0030】
切削ブレード22の切り刃22aの状態を、監視手段30を構成する撮像部40によって監視すべく、撮像部保持ブロック25の昇降ツマミ251を回転させて、昇降部材252を下降させ、
図4、
図5に示すように、切削ブレード22の切り刃22aを昇降部材252の検出空間252aに位置付ける。この際、モニター35を参照しながらパルス光源50を作動して昇降部材252の位置を調整することで、撮像部40によって撮像される撮像領域の所望の位置に、切り刃22aの外周端部を位置付けることができる。
【0031】
次いで、切削手段20を作動して、切削ブレード22を回転させる。切削ブレード22の回転軸23の回転速度は、例えば18,000rpmである。ここで、切削ブレード22の切り刃22aの外周の状態を、切削ブレード22の回転方向で見て1度間隔で撮像する場合、切削ブレード22を1回転させる間に撮像する回数(X)は360回である。そして、1秒間当たりの回転数(Y)は、Y=18,000[rpm]/60[秒]であることから、パルス光源50を発光させる際の繰り返し周波数は、以下のとおりである。なお、このときのパルス光Lのパルス幅は、回転軸23が1度回転するのに掛かる時間よりも短い時間のパルス幅、例えば、1/1,000,000[秒]=1μ秒に設定される。
パルス光源の繰り返し周波数=360[回]×18,000[rpm]/60[秒]
=108,000[Hz]
【0032】
上記した繰り返し周波数でパルス光源をフラッシュの如く発光させて撮像部40によって像を撮像し、制御手段100に記憶させる。そして、切削ブレード22を1回転させる間に記憶された360枚の画像を参照して、各画像それぞれに記録された切削ブレード22の切り刃22aの一方の側面(第一の画像42A)、他方の側面(第二の画像44A)、外周端部(第三の画像46A)の状態を確認する。なお、第一の画像42A、第二の画像44Aの幅は、切り刃22aが1度回転する場合に移動する幅よりも広い範囲を対象としており、上記した360枚の画像によって、切り刃22aの全周の領域を確認することができる。
【0033】
本実施形態の監視手段30によれば、単に発光素子とカメラとにより外周端部のシルエットを見るのではなく、切り刃22aの全周にわたりパルス光を照射してカメラ60によって一方の側面、他方の側面、及び外周端部の像を撮像して確認できることから、切り刃22aの外周のシルエットのみならず、切削ブレード22の切り刃22aの一方の側面、及び他方の側面の状態を、例えば、メンテナンスが必要な程度に切削屑が付着しているか否か、交換が必要な程度に側面からの砥粒の脱落があるか否か等を確認することができ、さらには、第三の撮像部46を備えていることで、切り刃22aの外周端部の厚み方向の摩耗状態をも確認したりすることができる。すなわち、切削ブレード22の交換時期、切り溝の状態、チッピングの状態等を把握する際の予知の精度がより向上する。
【0034】
本実施形態では、撮像部40に加えて、発光素子82、受光素子84を備えており、上記した繰り返し周波数(108,000Hz)とは異なる繰り返し周波数でパルス光源50を作動させて、切削ブレード22の切り刃22aの状態を監視することもできる。
【0035】
上記したように、発光素子82及び受光素子84が配設された位置と、第一の撮像部42、第二の撮像部44、及び第三の撮像部46が配設された位置との回転方向の角度はα°である(
図6を参照)。ここで、切削ブレード22の回転軸23を18,000rpmの回転数で回転させながら、発光素子82から照射された光を受光素子84で受光する場合、切り刃22aの外周に欠けがない場合は、受光素子84で受光される光量には、殆ど変化は見られない。これに対し、
図6に示すように、発光素子82、受光素子84によって受光量が確認される領域P1において、切り刃22aに欠けCがある場合は、瞬間的に受光量が変化(増大)する。この受光量の変化を、受光素子84の信号の変化に基づき制御手段100が検出した場合に、その検出したタイミングにおける切削手段20の回転軸23の回転位置を、ロータリーエンコーダ29によって検出する。そして、ロータリーエンコーダ29によって検出された値(電気信号)に対応するタイミング、すなわち、受光素子84によって検出された受光量が急激に変化した領域P1が、撮像手段40によって撮像される撮像領域P2に位置付けられるタイミングでパルス光源50を作動し、パルス
光Lを該撮像領域に照明して切り刃22aを撮像する。そして、撮像部40によって得られた
切り刃22aの一方の側面の像42A、
切り刃22aの他方の側面の像44A、
切り刃22aの外周端部の像46Aを制御手段100に伝達して、制御手段100の記憶部110に記憶すると共に、表示手段16に表示する。
【0036】
上記したように、受光素子84によって受光される受光量が急激に変化する領域P1は、切削ブレード22の切り刃22aが損傷している蓋然性が高い領域であり、切削ブレード22の交換が必要か否かを判断する際に、損傷の可能性が高い領域を効率的に確認することができる。なお、この際のパルス光Lの発光の繰り返し周波数は、18,000[rpm]/60[秒]=300[Hz]である。
【符号の説明】
【0037】
1:切削装置
1A:ハウジング
3:搬出入手段
4:カセット載置領域
4A:カセット
5:仮置きテーブル
6:搬送手段
10:保持手段
10a:チャックテーブル
11:撮像手段
13:搬送手段
14:操作パネル
20:切削手段
21:ハウジング
22:切削ブレード
22a:切り刃
22b:固定リング
24:ブレードカバー
241:主部
242:可動部
25:撮像部保持ブロック
251:昇降ツマミ
252:昇降部材
252a:検出空間
26:切削水供給手段
30:監視手段
35:モニター
40:撮像部
42:第一の撮像部
421:第一のプリズム
421a:一方の端面
421b:他方の端面
422:第一の結像レンズ
423:第一の光ファイバー
423a:一方の端面
423b:他方の端面
44:第二の撮像部
441:第二のプリズム
441a:一方の端面
441b:他方の端面
442:第二の結像レンズ
443:第二の光ファイバー
443a:一方の端面
443b:他方の端面
46:第三の撮像部
462:第三の結像レンズ
463:第三の光ファイバー
463a:一方の端面
463b:他方の端面
47:コリメートレンズ
48;結像レンズ
49:集光レンズ
50:パルス光源
60:カメラ
70:ビームスプリッター
72:反射面
100:制御装置
110:記憶部
W:ウエーハ
T:ダイシングテープ
F:フレーム