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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】レーダ装置およびレーダ装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/36 20060101AFI20240116BHJP
   G01S 13/22 20060101ALI20240116BHJP
   G01S 13/931 20200101ALN20240116BHJP
【FI】
G01S7/36
G01S13/22
G01S13/931
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020051759
(22)【出願日】2020-03-23
(65)【公開番号】P2021148744
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-01-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(74)【代理人】
【識別番号】100143959
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 秀一
(72)【発明者】
【氏名】堀 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】松嶋 禎央
【審査官】渡辺 慶人
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-083931(JP,A)
【文献】特開2009-207138(JP,A)
【文献】特開2008-157794(JP,A)
【文献】特開2008-058165(JP,A)
【文献】特開2002-168947(JP,A)
【文献】特開昭64-066584(JP,A)
【文献】特開昭62-229085(JP,A)
【文献】国際公開第2018/138992(WO,A1)
【文献】米国特許第03949309(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00 - 7/64
13/00 - 17/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
CW信号である搬送波を生成する発振部と、
前記搬送波をパルス変調したパルス信号を送信信号として送信アンテナから送信する送信部と、
受信アンテナによって前記送信信号の反射信号を受信信号として受信し、前記受信信号を前記搬送波を用いてダウンコンバートする受信部と、
前記受信部によってダウンコンバートされた前記受信信号から所定の周波数より低い成分を除去して出力する受信フィルタと、
前記受信フィルタから出力された前記受信信号に基づいて、前記反射信号に干渉する干渉信号と前記搬送波との周波数差を算出するとともに、前記周波数差に基づいて前記送信信号を送信するための送信モードを決定し、決定した前記送信モードに基づいて前記発振部および前記送信部を制御するデータ処理制御部とを、備え、
前記送信モードは、前記周波数差が前記所定の周波数より小さくなるように前記搬送波の周波数を前記干渉信号の周波数に同調させて前記送信信号を生成する同調送信モードを含む、
レーダ装置。
【請求項2】
前記送信モードは、前記パルス信号の繰り返し周期が不等間隔になるように前記送信信号を生成するスタガ送信モードを含み、
前記データ処理制御部は、前記周波数差に基づいて、前記同調送信モードと前記スタガ送信モードとを切り換える
請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項3】
請求項2に記載のレーダ装置において、
前記データ処理制御部は、前記周波数差が第1閾値より小さい場合に、前記送信モードを前記同調送信モードに設定し、前記周波数差が前記第1閾値より大きい場合に、前記送信モードを前記スタガ送信モードに設定する
レーダ装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載のレーダ装置において、
前記送信モードは、一定の周波数の前記搬送波を、所定のパルス周期およびパルス幅でパルス変調を行うことによって前記送信信号を生成する通常送信モードを更に含み、
前記データ処理制御部は、前記送信モードが前記同調送信モードまたは前記スタガ送信モードであるときに、前記レーダ装置の測定環境が所定の条件を満足した場合に、前記送信モードを前記通常送信モードに切り替える
レーダ装置。
【請求項5】
請求項に記載のレーダ装置において、
前記データ処理制御部は、前記搬送波の周波数を前記干渉信号の周波数に同調させたときの前記送信信号の占有帯域幅が所定の周波数範囲を超えない場合に、前記送信モードを前記同調送信モードに設定する
レーダ装置。
【請求項6】
請求項2乃至4の何れか一項に記載のレーダ装置において、
前記データ処理制御部は、前記搬送波の周波数を前記干渉信号の周波数に同調させたときの前記送信信号の占有帯域幅が所定の周波数範囲を超えない場合に、前記送信モードを前記同調送信モードに設定する
レーダ装置。
【請求項7】
請求項に記載のレーダ装置において、
前記データ処理制御部は、前記周波数差が所定の閾値よりも大きい場合に、前記送信モードを前記スタガ送信モードに設定する
レーダ装置。
【請求項8】
請求項6または7に記載のレーダ装置において、
前記データ処理制御部は、前記搬送波の周波数を前記干渉信号の周波数に同調させたときの前記送信信号の占有帯域幅が前記所定の周波数範囲を超える場合に、前記周波数差が大きくなるように前記搬送波の周波数を制御するとともに、前記送信モードを前記スタガ送信モードに設定する
レーダ装置。
【請求項9】
請求項4乃至8の何れか一項に記載のレーダ装置において、
前記データ処理制御部は、前記搬送波の周波数を前記干渉信号の周波数に同調させたときの前記送信信号の占有帯域幅が前記所定の周波数範囲を超える場合に、前記送信信号のパルス幅を増加させるとともに、パルス幅を増加させた後の前記送信信号の占有帯域幅と前記所定の周波数範囲との関係に基づいて、前記送信モードを決定する
レーダ装置。
【請求項10】
請求項1乃至9の何れか一項に記載のレーダ装置において、
前記データ処理制御部は、前記受信フィルタから出力された前記受信信号に対して周波数解析を行い、その解析結果に基づいて前記干渉信号の有無を判定し、前記干渉信号が存在すると判定した場合に、前記周波数差を算出する
レーダ装置。
【請求項11】
請求項10に記載のレーダ装置において、
前記データ処理制御部は、前記周波数解析による解析結果に基づいて、信号強度が第2閾値を超える周波数成分が存在する場合に、前記干渉信号が存在すると判定する
レーダ装置。
【請求項12】
請求項11に記載のレーダ装置において、
前記第2閾値は、前記反射信号の各周波数成分における信号強度に基づいて決定される
レーダ装置。
【請求項13】
CW信号である搬送波を生成する発振部と、前記搬送波をパルス変調したパルス信号を送信信号として送信アンテナから送信する送信部と、受信アンテナによって前記送信信号の反射信号を受信信号として受信し、前記受信信号を前記搬送波を用いてダウンコンバートする受信部と、前記受信部によってダウンコンバートされた前記受信信号から所定の周波数より低い成分を除去して出力する受信フィルタと、前記受信フィルタから出力された前記受信信号に基づいて、前記発振部および前記送信部を制御するデータ処理制御部とを有するレーダ装置の制御方法であって、
前記データ処理制御部に、前記反射信号に干渉する干渉信号と前記搬送波との周波数差を算出させる第1ステップと、
前記データ処理制御部に、前記周波数差に基づいて前記送信信号を送信するための送信モードを決定させる第2ステップと、
前記データ処理制御部に、決定した前記送信モードに基づいて前記発振部および前記送信部を制御させる第3ステップとを含み、
前記送信モードは、前記周波数差が前記所定の周波数より小さくなるように前記搬送波の周波数を前記干渉信号の周波数に同調させて前記送信信号を生成する同調送信モードを含む
レーダ装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーダ装置およびレーダ装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パルス方式でレーダ信号を出力するレーダ装置(以下、「パルスレーダ」とも称する。)におけるレーダ信号の干渉対策として、例えば特許文献1,2に開示されているように、送信信号としてのパルス信号の送信周期を一定としないスタガ方式が知られている。
【0003】
具体的に、特許文献1のレーダ装置は、スタガトリガの繰り返し順序を任意に選択できる回路と干渉除去回路とを備えることにより、同一スタガ比を持ち平均繰返し周波数が等しい干渉信号に対しても干渉除去を行うことが可能となっている。特許文献2のレーダ装置は、複数の送信タイミング情報の中から、自車両に搭載されている他のレーダ装置と重複しない送信タイミングを選択することにより、虚像の発生を抑制することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭60-100775号公報
【文献】特開2018-119934号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ISM(Industry Science and Medical)バンドのように、レーダ専用に帯域の割り当てがされていない周波数帯においては、任意の周波数または変調方式の信号が干渉波として存在し得る。例えば、屋外自動販売機や自動ドアに設置される移動体を検知するための人感センサとして用いられるドップラーセンサは、24GHz帯のCW(Continuous Wave)信号を使用している。そのため、ドップラーセンサから出力される信号は、自動車のような移動体に設置される24GHz帯を使用するパルスレーダのレーダ信号に対する与干渉信号となる。
【0006】
一方、上述した特許文献1,2に開示されている干渉対策技術としてのスタガ方式は、与干渉信号として同種(パルス)のレーダ信号を想定した技術である。すなわち、上述した干渉対策技術は、パルスレーダのレーダ信号に対して、他のパルスレーダのレーダ信号の干渉を防止するための技術である。
【0007】
一般に、スタガ方式は、パルス間の相関を取り、相関のある信号のみを目標信号として出力し、相関の取れないものを干渉信号とみなして除去する技術であるため、上述のドップラーセンサが出力するCW信号に対しては、十分に除去する効果が得られない場合がある。
【0008】
例えば、車載のパルスレーダの搬送波周波数と自動販売機等に設けられたドップラーセンサの搬送波周波数との差が小さい場合(例えば1MHz程度の場合)、パルスレーダから出力されるレーダ信号の送信周期をスタガ方式によって可変したとしても、パルスレーダで受信した受信信号の位相をランダム化することができないため、ドップラーセンサのCW信号の干渉を抑制することができず、パルスレーダの受信感度、すなわち対象物の速度や対象物までの距離の計測精度の低下する虞がある。
【0009】
本発明は、上述した課題を解消するためのものであり、CW信号の干渉を抑制してレーダ装置の受信感度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の代表的な実施の形態に係るレーダ装置は、CW信号である搬送波を生成する発振部と、前記搬送波をパルス変調したパルス信号を送信信号として送信アンテナから送信する送信部と、受信アンテナによって前記送信信号の反射信号を受信信号として受信し、前記受信信号を前記搬送波を用いてダウンコンバートする受信部と、前記受信部によってダウンコンバートされた前記受信信号から所定の周波数より低い成分を除去して出力する受信フィルタと、前記受信フィルタから出力された前記受信信号に基づいて、前記反射信号に干渉する干渉信号と前記搬送波との周波数差を算出するとともに、前記周波数差に基づいて前記送信信号を送信するための送信モードを決定し、決定した前記送信モードに基づいて前記発振部および前記送信部を制御するデータ処理制御部とを、備え、前記送信モードは、前記周波数差が前記所定の周波数より小さくなるように前記搬送波の周波数を前記干渉信号の周波数に同調させて前記送信信号を生成する同調送信モードを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様によれば、CW信号の干渉を抑制してレーダ装置の受信感度を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施の形態に係るレーダシステムの実装例を示す図である。
図2】本発明の実施の形態に係るレーダシステムの構成例を示す図である。
図3】本発明の実施の形態に係るレーダ装置の構成例を示す図である。
図4】実施の形態1に係るレーダ装置におけるデータ処理制御部の機能ブロック構成を示す図である。
図5A】実施の形態1に係るレーダ装置によるCW干渉信号の有無の判定手法の一例を示す図である。
図5B】実施の形態1に係るレーダ装置によるCW干渉信号の有無の判定手法の一例を示す図である。
図6A】周波数差fΔを説明するための図である。
図6B】周波数差fΔを説明するための図である。
図7A】同調送信モードで信号を送信したときの受信信号の周波数スペクトルを示す図である。
図7B】スタガ送信モードで信号を送信したときの受信信号の周波数スペクトルを示す図である。
図8】実施の形態1に係るレーダ装置による処理の流れを示すフロー図である。
図9】実施の形態2に係るレーダ装置におけるデータ処理制御部の機能ブロック構成を示す図である。
図10】実施の形態2に係る干渉防止送信モードの設定方法を説明するための図である。
図11】実施の形態2に係るレーダ装置における周波数判定情報360Aの一例を示す図である。
図12A】実施の形態2に係るレーダ装置10による処理の流れを示すフロー図である。
図12B】実施の形態2に係るレーダ装置10による処理の流れを示すフロー図である。
図13】実施の形態3に係るレーダ装置におけるデータ処理制御部の機能ブロック構成を示す図である。
図14】実施の形態3に係る干渉防止送信モードの設定方法を説明するための図である。
図15】実施の形態3に係るレーダ装置における周波数判定情報360Bの一例を示す図である。
図16A】実施の形態3に係るレーダ装置による処理の流れを示すフロー図である。
図16B】実施の形態3に係るレーダ装置による処理の流れを示すフロー図である。
図17A】実施の形態3に係るレーダ装置による処理の流れを示すフロー図である。
図17B】実施の形態3に係るレーダ装置による処理の流れを示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
1.実施の形態の概要
先ず、本願において開示される発明の代表的な実施の形態について概要を説明する。なお、以下の説明では、一例として、発明の構成要素に対応する図面上の参照符号を、括弧を付して記載している。
【0014】
〔1〕本発明の代表的な実施の形態に係るレーダ装置(10,10-1,10-2)は、CW信号である搬送波を生成する発振部(11)と、前記搬送波をパルス変調したパルス信号を送信信号として送信アンテナから送信する送信部(12)と、受信アンテナ(17)によって前記送信信号の反射信号を受信信号として受信し、前記受信信号を前記搬送波を用いてダウンコンバートする受信部(16)と、前記受信部によってダウンコンバートされた前記受信信号から所定の周波数より低い成分を除去して出力する受信フィルタ(20)と、前記受信フィルタから出力された前記受信信号に基づいて、前記反射信号に干渉する干渉信号と前記搬送波との周波数差(fΔ)を算出するとともに、前記周波数差に基づいて前記送信信号を送信するための送信モードを決定し、決定した前記送信モードに基づいて前記発振部および前記送信部を制御するデータ処理制御部(15)とを、備え、前記送信モードは、前記周波数差が前記所定の周波数より小さくなるように前記搬送波の周波数(fC)を前記干渉信号の周波数(fI)に同調させて前記送信信号を生成する同調送信モードを含むことを特徴とする。
【0015】
〔2〕上記〔1〕に記載のレーダ装置(10)において、と、前記送信モードは、前記パルス信号の繰り返し周期が不等間隔になるように前記送信信号を生成するスタガ送信モードを含み、前記データ処理制御部は、前記周波数差に基づいて、前記同調送信モードと前記スタガ送信モードとを切り換えてもよい。
【0016】
〔3〕上記〔2〕に記載のレーダ装置(10)において、前記データ処理制御部(15)は、前記周波数差が第1閾値(A)より小さい場合に、前記送信モードを前記同調送信モードに設定し、前記周波数差が前記第1閾値より大きい場合に、前記送信モードを前記スタガ送信モードに設定してもよい。
【0017】
〔4〕上記〔1〕または〔2〕に記載のレーダ装置(10A,10B)において、前記データ処理制御部(15A,15B)は、前記搬送波の周波数を前記干渉信号の周波数に同調させたときの前記送信信号の占有帯域幅(OBW)が所定の周波数範囲を超えない場合に、前記送信モードを前記同調送信モードに設定してもよい。
【0018】
〔5〕上記〔4〕に記載のレーダ装置(10A,10B)において、前記データ処理制御部(15A,15B)は、前記周波数差が所定の閾値(A)よりも大きい場合に、前記送信モードを前記スタガ送信モードに設定してもよい。
【0019】
〔6〕上記〔4〕または〔5〕に記載のレーダ装置(10A,10B)において、前記データ処理制御部(15A,15B)は、前記搬送波の周波数を前記干渉信号の周波数に同調させたときの前記送信信号の占有帯域幅(OBW)が前記所定の周波数範囲を超える場合に、前記周波数差が大きくなるように前記搬送波の周波数を制御するとともに、前記送信モードを前記スタガ送信モードに設定してもよい。
【0020】
〔7〕上記〔4〕乃至〔6〕の何れか一項に記載のレーダ装置(10B)において、前記データ処理制御部(15B)は、前記搬送波の周波数を前記干渉信号の周波数に同調させたときの前記送信信号の占有帯域幅(OBW)が前記所定の周波数範囲(fR)を超える場合に、前記送信信号のパルス幅を増加させるとともに、パルス幅を増加させた後の前記送信信号の占有帯域幅(OBWx)と前記所定の周波数範囲(fR)との関係に基づいて、前記送信モードを決定してもよい。
【0021】
〔8〕上記〔1〕乃至〔7〕の何れか一項に記載のレーダ装置(10,10A,10B)において、前記データ処理制御部(15B)は、前記受信フィルタから出力された前記受信信号に対して周波数解析を行い、その解析結果に基づいて前記干渉信号の有無を判定し、前記干渉信号が存在すると判定した場合に、前記周波数差を算出してもよい。
【0022】
〔9〕上記〔8〕に記載のレーダ装置(10,10A,10B)において、前記データ処理制御部(15B)は、前記周波数解析による解析結果に基づいて、信号強度が第2閾値(Mth)を超える周波数成分が存在する場合に、前記干渉信号が存在すると判定してもよい。
【0023】
〔10〕上記〔9〕に記載のレーダ装置(10,10A,10B)において、前記第2閾値は、前記反射信号の各周波数成分における信号強度に基づいて決定されてもよい。
【0024】
〔11〕上記〔2〕乃至〔10〕の何れか一項に記載のレーダ装置(10,10A,10B)において、前記送信モードは、一定の周波数の前記搬送波を、所定のパルス周期およびパルス幅でパルス変調を行うことによって前記送信信号を生成する通常送信モードを更に含み、前記データ処理制御部(15,15A,15B)は、前記送信モードが前記同調送信モードまたは前記スタガ送信モードであるときに、前記レーダ装置の測定環境が所定の条件(Tth,Lth)を満足した場合に、前記送信モードを前記通常送信モードに切り替えてもよい。
【0025】
〔12〕本発明の代表的な実施の形態に係るレーダ装置の制御方法は、CW信号である搬送波を生成する発振部と、前記搬送波をパルス変調したパルス信号を送信信号として送信アンテナから送信する送信部と、受信アンテナによって前記送信信号の反射信号を受信信号として受信し、前記受信信号を前記搬送波を用いてダウンコンバートする受信部と、前記受信部によってダウンコンバートされた前記受信信号から所定の周波数より低い成分を除去して出力する受信フィルタと、前記受信フィルタから出力された前記受信信号に基づいて、前記発振部および前記送信部を制御するデータ処理制御部とを有するレーダ装置の制御方法である。本制御方法は、前記データ処理制御部に、前記反射信号に干渉する干渉信号と前記搬送波との周波数差を算出させる第1ステップ(S7)と、前記データ処理制御部に、前記周波数差に基づいて前記送信信号を送信するための送信モードを決定させる第2ステップ(S7~S8)と、前記データ処理制御部に、決定した前記送信モードに基づいて前記発振部および前記送信部を制御させる第3ステップ(S8,S9)とを含み、前記送信モードは、前記周波数差が前記所定の周波数より小さくなるように前記搬送波の周波数を前記干渉信号の周波数に同調させて前記送信信号を生成する同調送信モードを含むことを特徴とする。
【0026】
2.実施の形態の具体例
以下、本発明の実施の形態の具体例について図を参照して説明する。なお、以下の説明において、各実施の形態において共通する構成要素には同一の参照符号を付し、繰り返しの説明を省略する。また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実と異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0027】
≪実施の形態1≫
図1は、本発明の実施の形態に係るレーダシステムの実装例を示す図である。
【0028】
本実施の形態に係るレーダシステム1は、例えば、車両用のレーダシステムである。図1に示すように、レーダシステム1を構成するレーダ装置10-1,10-2は、例えば、パルスレーダであり、車両Cの後部の左右にそれぞれ配置されている。レーダ装置10-1,10-2は、車両Cの後方に検出領域を有し、検出領域に検出物標としての物標(例えば、他の車両、自転車、人等)が存在することを検知しECU50に報知する。ECU50は、例えば、物標が自車両に接触または衝突する可能性がある場合に図示しない警報機器を制御し、警報を発する。
【0029】
図2は、本発明の実施の形態に係るレーダシステムの構成例を示す図である。
【0030】
図2に示すように、レーダシステム1は、上位装置としてのECU(Electrоnic Control Unit)30と、レーダ装置10-1,10-2を有する。ECU50およびレーダ装置10-1,10-2は、通信線41,42によって接続され、互いに通信可能となっている。
【0031】
なお、図2では、上位装置としてECU50を例に挙げているが、ネットワークにおける自己のID(Identification)を認識でき、かつ、通信線41,42を介して他の装置を制御できる機能を有する装置であれば、ECU以外の装置を用いるようにしてもよい。
【0032】
ECU50は、車両の各部を制御するとともに、レーダ装置10-1,10-2から通信線41,42を介して供給される情報に基づいて物標を検出し、必要に応じて警告等を行う。
【0033】
レーダ装置10-1,10-2は、検出対象である物標に対してパルス信号を照射し、反射信号に基づいて物標を検出し、通信線41,42を介してECU50に伝える。また、レーダ装置10-1,10-2は、通信線41,42によって接続され、一方がマスタとして動作し、他方がスレーブとして動作する。
【0034】
図3は、本発明の実施の形態に係るレーダ装置の構成例を示す図である。なお、レーダ装置10-1,10-2は同様の構成であるため、以下では、レーダ装置10-1,10-2を「レーダ装置10」と称して説明する。
【0035】
図3に示すように、レーダ装置10は、発振部11、送信部12、データ処理制御部15、受信部16、受信フィルタ20、およびA/D(Analog to Digital)変換部(ADC)21を主要な構成要素として備えている。
【0036】
発振部11は、所定の周波数のCW(Continuous Wave)信号を生成して、送信部12と受信部16に供給する。発振部11は、例えば、局部発振部である。
【0037】
送信部12は、変調部13および送信アンテナ14を有する。送信部12は、搬送波信号として発振部11から供給されるCW信号を、変調部13によってパルス変調し、送信アンテナ14を介して物標に対して送信する。
【0038】
変調部13は、データ処理制御部15によって制御される。変調部13は、データ処理制御部15から供給されたパルス信号に基づいて、発振部11から供給されるCW信号をパルス変調して送信信号(パルス信号)を生成し、送信アンテナ14に供給する。送信アンテナ14は、変調部13から供給されるパルス信号を、外部(物標)に向けて送信する。
【0039】
受信部16は、受信アンテナ17、増幅部18、および、復調部19を有している。受信部16は、送信アンテナ14から送信され、物標によって反射された信号を受信して復調処理を施した後、A/D変換部21に出力する。
【0040】
受信アンテナ17は、送信アンテナ14から送信され、物標からの反射信号を受信し、増幅部18に供給する。増幅部18は、例えば、ローノイズアンプ(LNA:Low noise amplifier)である。増幅部18は、送信アンテナ14によって受信した信号(受信信号)を所定の利得で増幅して復調部19に出力する。尚、増幅部18は、データ処理制御部15によって利得が可変に制御されるようにしてもよい。
【0041】
復調部19は、増幅部18から供給される受信信号を、発振部11から供給されるCW信号を用いて復調して出力する。換言すれば、復調部19は、増幅部18によって増幅された受信信号を、発振部11から供給されるCW信号に基づいてダウンコンバートして受信フィルタ20に供給する。
【0042】
なお、受信部16は、受信アンテナ17として、複数のアンテナ(例えば、4つのアンテナ)を有していてもよい。この場合には、受信部16は、受信アンテナ17を構成する複数のアンテナのうちいずれか1つを選択し、選択したアンテナで受信した信号を増幅部18に供給する。
【0043】
受信フィルタ20は、受信部16から供給された受信信号から所定の周波数より低い成分を除去するフィルタ回路である。受信フィルタ20は、例えばハイパスフィルタ(HPF)である。受信フィルタ20は、受信部16から供給された受信信号からカットオフ周波数以下(例えば1MHz以下)の周波数成分を除去してA/D変換部21に供給する。 尚、受信フィルタ20としては、受信部16から供給された受信信号から所定の周波数より低い成分を除去するフィルタ機能を有する公知のものを使用することができ、例えばバンドパスフィルタ(BPF)を使用することができる。
【0044】
A/D変換部21は、受信フィルタ20から供給される受信信号を所定の周期でサンプリングし、デジタル信号に変換する回路である。A/D変換部21は、復調部19によってダウンコンバートされ、受信フィルタ20によって低周波数成分が除去された受信信号を、デジタル信号に変換してデータ処理制御部15に供給する。また、A/D変換部21は、入力された信号がA/D変換部21の入力電圧範囲を超えているか否かを判定し、入力された信号がA/D変換部21の入力電圧範囲を超えている場合には、入力された信号が飽和していることを示すオーバーレンジ信号を出力する。
【0045】
データ処理制御部15は、レーダ装置10を構成する各構成要素(回路)を統括的に制御する。データ処理制御部15は、例えば、MCU(Micro Control Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、およびDSP(Digital Signal Processor)等のプログラム処理装置を含んで構成されている。
【0046】
データ処理制御部15は、発振部11および変調部13を制御することにより、指定した周波数の搬送波信号(CW信号)を、指定したパルス周期およびパルス幅に基づいてパルス変調させて、送信アンテナ14から送信させる。
【0047】
また、データ処理制御部15は、受信部16およびA/D変換部21を制御することにより、受信部16で受信され復調された受信信号をA/D変換部21を介して入力し、入力した受信データに対して演算処理を実行することにより、物標を検出して上位装置であるECU50に報知する。
【0048】
更に、データ処理制御部15は、送信部12から出力された送信信号(パルス信号)の反射信号に干渉する外部のCW信号(以下、「CW干渉信号」とも称する。)の有無を判定し、CW干渉信号が存在する場合には、レーダ装置10の受信感度の低下を防止するための処理を行った上で、送信部12から送信信号を出力させる。
【0049】
具体的に、データ処理制御部15は、受信フィルタ(HPF)20から出力された受信信号に基づいて、発振部11によって生成された搬送波としてのCW信号とCW干渉信号との周波数差を算出するとともに、算出した周波数差に基づいて送信部12からパルス信号を送信するための送信モードを決定し、決定した送信モードに基づいて発振部11および送信部12を制御する。
【0050】
ここで、実施の形態1に係るレーダ装置10は、送信モードとして、通常送信モードと干渉防止送信モードとを有している。
【0051】
通常送信モードは、予め設定された所定の周波数の搬送波を、予め設定された所定のパルス周期およびパルス幅でパルス変調を行うことによって送信信号としてのパルス信号を生成するモードである。
【0052】
干渉防止送信モードは、物標からの反射信号に対する外部のCW信号による干渉を防止するためのモードである。本実施の形態では、干渉防止送信モードとして、同調送信モードおよびスタガ送信モードを含む。
【0053】
同調送信モードは、発振部11によって生成された搬送波としてのCW信号とCW干渉信号との周波数差が、受信フィルタ20のカットオフ周波数以下となるように(例えば、当該周波数差がゼロになるように)搬送波(CW信号)の周波数fCをCW干渉信号の周波数fIに同調させて送信信号としてのパルス信号を生成するモードである。
【0054】
スタガ送信モードは、パルス信号の繰り返し周期が不等間隔になるように送信タイミングを調整して送信信号を生成するモードである。
【0055】
データ処理制御部15は、CW干渉信号が存在しない場合に、通常送信モードによってパルス信号を生成して送信し、CW干渉信号が存在する場合に、同調送信モードまたはスタガ送信モードによってパルス信号を生成して送信する。データ処理制御部15は、上記周波数差に基づいて、同調送信モードとスタガ送信モードとを切り換える。
【0056】
データ処理制御部15は、上述した各機能を実現するために、以下に示す機能ブロックを有している。
【0057】
図4は、実施の形態1に係るレーダ装置10におけるデータ処理制御部15の機能ブロック構成を示す図である。
【0058】
図4に示すように、データ処理制御部15は、上述した各機能を実現するための機能ブロックとして、信号解析部30、計測部31、通信部32、干渉判定部33、周波数差算出部34、周波数判定部35、記憶部36、干渉防止制御部37、パルス制御部38、および周波数制御部39を有している。
【0059】
干渉防止制御部37、パルス制御部38、および周波数制御部39は、例えば、CPU(Central Processing Unit)が、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)等の記憶装置に記憶されたプログラムに従って各種の演算処理を実行することにより実現される。
【0060】
信号解析部30、計測部31、干渉判定部33、周波数差算出部34、および周波数判定部35は、例えば、DSP(Digital Signal Processor)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等によるプログラム処理によって実現される。通信部32は、例えば、UART(Universal Asynchronous Receiver Transmitter)やCAN(Controller Area Network)等のMCUに搭載されている入出力インターフェース回路等によって実現される。
【0061】
信号解析部30は、A/D変換部21から供給される受信信号(デジタル信号)を解析する。信号解析部30は、例えば、受信信号に含まれるI成分とQ成分とに基づいて受信信号の位相を解析するとともに、フーリエ変換処理を行って受信信号の周波数成分を解析する。
【0062】
計測部31は、信号解析部30の解析結果に基づいて、物標を検出するとともに、物標の速度および物標までの距離を計測する。通信部32は、通信線41,42を介して上位装置としてのECU50や他のレーダ装置10との間でデータの授受を行う。例えば、通信部32は、計測部31によって計測された物標までの距離および物標の速度の情報をECU50に送信する。
【0063】
干渉判定部33は、信号解析部30による周波数解析結果に基づいて、CW干渉信号の有無を判定する。
【0064】
図5Aおよび図5Bは、実施の形態1に係るレーダ装置10によるCW干渉信号の有無の判定手法の一例を示す図である。
【0065】
図5Aおよび図5Bにおいて、横軸は周波数を表し、縦軸は信号強度を表している。参照符号400は、A/D変換部21からデータ処理制御部15に入力された受信信号に含まれる送信信号に対する反射信号の特性を表し、参照符号500は、A/D変換部21からデータ処理制御部15に入力された受信信号に含まれるCW干渉信号の特性を表している。
【0066】
図5Aに示すように、干渉判定部33は、信号解析部30による周波数解析結果に基づいて、信号強度が閾値Mthを超える周波数成分が存在する場合に、CW干渉信号が存在すると判定して、そのCW干渉信号の周波数fIを検出し、信号強度が閾値Mthを超える周波数成分が存在しない場合に、CW干渉信号が存在しないと判定する。
【0067】
閾値Mthは、CW干渉信号の有無を判定するための基準値である。閾値Mthは、参照符号600に示すように固定値であってもよいし、参照符号601に示すように、反射信号の各周波数成分における信号強度に基づいて決定される値(変動値)であってもよい。
【0068】
閾値Mthを反射信号の各周波数成分における信号強度に基づく変動値とすることにより、信号強度が小さいCW干渉信号であっても確実に検出することが可能となり、CW干渉信号の検出精度を向上させることが可能となる。
【0069】
また、図5Bに示すように、受信信号(反射信号)が入力されない期間に、CW干渉信号の有無を判定するようにしてもよい。これによれば、閾値Mtの値をより低い値に設定することが可能となり、信号強度が小さいCW干渉信号であっても確実に検出することが可能となる。
【0070】
ここで、閾値Mthや、閾値Mthを反射信号の各周波数成分における信号強度から算出するための計算式等は、例えば、干渉判定情報361として予め記憶部36に格納されている。
【0071】
周波数差算出部34は、干渉判定部33によって検出されたCW干渉信号の周波数fIと発振部11から出力される搬送波(CW信号)の周波数fCとの差(以下、「周波数差fΔ」とも称する。)を算出する。
【0072】
図6Aおよび図6Bは、周波数差fΔを説明するための図である。
図6Aおよび図6Bにおいて、横軸は周波数を表し、縦軸は信号強度を表している。参照符号400は、A/D変換部21からデータ処理制御部15に入力された受信信号に含まれる送信信号に対する反射信号の特性を表し、参照符号500は、A/D変換部21からデータ処理制御部15に入力された受信信号に含まれるCW干渉信号の特性を表している。
【0073】
図6Aには、周波数差fΔが後述する閾値Aよりも小さい場合が示され、図6Bには、周波数差fΔが閾値Aよりも大きい場合が示されている。
【0074】
A/D変換部21からデータ処理制御部15に入力される受信信号は、復調部19によってダウンコンバートされた後の信号である。したがって、図6Aおよび図6Bに示すように、発振部11から出力される搬送波としてのCW信号の周波数fCに対応する周波数成分は0Hzとなるので、CW干渉信号の周波数fIに対応する周波数成分がそのまま周波数差fΔとなる。
【0075】
周波数判定部35は、干渉判定部33による判定結果と周波数差算出部34によって算出された周波数差fΔとに基づいて、送信モードを決定する。具体的に、周波数判定部35は、干渉判定部33によってCW干渉信号が存在すると判定された場合に、周波数差算出部34によって算出された周波数差fΔと所定の閾値Aとを比較する。
【0076】
閾値Aは、干渉防止のための送信モードの切り替え基準となる値である。換言すれば、閾値Aは、スタガ処理による受信感度の向上が期待できる周波数差に相当する。閾値Aは、例えば、周波数判定情報360として記憶部36に記憶されている。
【0077】
周波数差算出部34は、図6Aに示すように周波数差fΔが所定の閾値Aより小さい場合には、送信モードを同調送信モードに設定する。一方、図6Bに示すように周波数差fΔが所定の閾値Aより大きい場合には、周波数差算出部34は、送信モードをスタガ送信モードに設定する。
【0078】
また、周波数判定部35は、送信モードが干渉防止送信モード(同調送信モードまたはスタガ送信モード)であるときに、レーダ装置10の測定環境の変化を検出した場合に、送信モードを通常送信モードに切り替える。
【0079】
例えば、周波数判定部35は、レーダ装置10の測定環境の変化を検出するためのパラメータを用いて、送信モードを干渉防止送信モードから通常送信モードに切り替える。測定環境の変化を検出するためのパラメータとしては、干渉防止送信モードの継続時間に関する基準値Tthやレーダ装置10を搭載した車両の移動距離に関する基準値Lth等を例示することができる。基準値Tthおよび基準値Lthは、例えば、周波数判定情報360として記憶部36に記憶されている。
【0080】
例えば、周波数判定部35は、送信モードが同調送信モードまたはスタガ送信モードに切り替わったタイミングで計時を開始し、同調送信モードまたはスタガ送信モードの継続時間が基準値Tthに到達した場合に、送信モードを通常送信モードに切り替える。また、周波数判定部35は、送信モードが同調送信モードまたはスタガ送信モードに切り替わったタイミングで車両(レーダ装置10)の移動距離の計測を開始し、移動距離が基準値Lthに到達した場合に、送信モードを通常送信モードに切り替える。
【0081】
これによれば、レーダ装置10の測定環境の変化に応じて送信モードを通常送信モードに戻すことができるので、CW干渉信号による干渉が発生しない測定環境において干渉防止送信モードが継続することを回避することができる。
【0082】
なお、周波数判定部35は、レーダ装置10の測定環境の変化を検出するために、基準値Tthおよび基準値Lthを両方用いてもよいし、一方のみを用いてもよい。
【0083】
記憶部36は、データ処理制御部15による送信信号の生成、受信信号の解析、および送信モードの切り替え等に係るデータ処理に必要な各種パラメータを記憶する。記憶部36には、例えば、上述した閾値Aや基準値Tth、Lth等を含む周波数判定情報360と、閾値Mth等を含む干渉判定情報361とが記憶されている。
【0084】
干渉防止制御部37は、周波数判定部35によって決定された送信モードに基づいて、パルス制御部38および周波数制御部39を制御し、所望のパルス信号を生成して送信信号として送信させる。
【0085】
具体的に、干渉防止制御部37は、周波数判定部35によって通常送信モードが選択されている場合には、所定の周波数fCのCW信号(搬送波)を生成するように周波数制御部39に指示するとともに、所定のパルス周期およびパルス幅のパルス信号を生成するように、パルス制御部38に指示する。
【0086】
また、干渉防止制御部37は、周波数判定部35によって同調送信モードが選択されている場合には、周波数差fΔが、受信フィルタ20のカットオフ周波数以下となるように(例えば、ゼロになるように)搬送波の周波数fCをCW干渉信号の周波数fIに同調させる。具体的には、干渉防止制御部37は、CW干渉信号の周波数fIに一致する周波数fCXの搬送波を生成するように周波数制御部39に指示する。
【0087】
更に、干渉防止制御部37は、周波数判定部35によってスタガ送信モードが選択されている場合には、スタガ方式によって送信信号としてのパルス信号の送信タイミングを調整する。具体的に、干渉防止制御部37は、送信信号としてのパルス信号の繰り返し周期が不等間隔になるようにパルス制御部38に指示する。
【0088】
パルス制御部38は、干渉防止制御部37によって指定されたパルス周期およびパルス幅のパルス信号を、干渉防止制御部37によって指定された送信タイミングで変調部13に供給する。周波数制御部39は、干渉防止制御部37によって指定された周波数のCW信号(搬送波)を生成するように、発振部11を制御する。
【0089】
図7Aは、同調送信モードで信号を送信したときの受信信号の周波数スペクトルを示す図である。
【0090】
同図において、横軸は周波数を表し、縦軸は信号強度を表している。参照符号400は、A/D変換部21からデータ処理制御部15に入力された受信信号に含まれる送信信号に対する反射信号の特性を表し、参照符号500は、A/D変換部21からデータ処理制御部15に入力された受信信号に含まれるCW干渉信号の特性を表している。
【0091】
上述したように、同調送信モードでは、搬送波の周波数fCがCW干渉信号の周波数fIに同調するように調整される。そのため、受信信号に含まれる反射信号とCW干渉信号の周波数スペクトルは、図7Aに示すようになる。
【0092】
すなわち、図7Aに示すように、受信信号に含まれるCW干渉信号のダウンコンバート後の周波数成分は、CW干渉信号に同調した搬送波の周波数fCxのダウンコンバート後の周波数成分である0Hz付近に移動する。
【0093】
上述したように、レーダ装置10において、受信部16の復調部19とデータ処理制御部15との間には、受信フィルタ20としてのハイパスフィルタ(HPF)が設けられているため、ダウンコンバート後の受信信号の低周波成分は、受信フィルタ20によって除去される。
【0094】
したがって、図7Aに示すように、受信フィルタ20によって参照符号410で示される周波数範囲の成分が除去される場合、周波数範囲410に含まれるCW干渉信号の周波数成分は、受信フィルタ20によって除去され、受信信号のうち周波数範囲410よりも大きい周波数成分のみが、データ処理制御部15の信号解析部30に入力される。
【0095】
このように、周波数差fΔが小さい場合、すなわちCW干渉信号と搬送波とが互いに近接した周波数である場合には、同調送信モードに設定して搬送波の周波数をCW干渉信号に同調させることにより、レーダ装置10のレーダ計測に対する外部のCW干渉信号の影響を抑制することができる。
【0096】
図7Bは、スタガ送信モードで信号を送信したときの受信信号の周波数スペクトルを示す図である。
【0097】
同図において、横軸は周波数を表し、縦軸は信号強度を表している。参照符号400は、A/D変換部21からデータ処理制御部15に入力された受信信号に含まれる送信信号に対する反射信号の特性を表し、参照符号500は、A/D変換部21からデータ処理制御部15に入力された受信信号に含まれるCW干渉信号の特性を表している。
【0098】
上述したように、スタガ送信モードでは、パルス信号の繰り返し周期が不等間隔になるように送信信号の送信タイミングが調整され、受信信号に含まれる反射信号とCW干渉信号の周波数スペクトルは、図7Bに示すようになる。
【0099】
すなわち、周波数差fΔが大きい場合には、スタガ方式で送信信号を送信することにより、受信信号の位相がランダム化され、図7Bに示すようにダウンコンバート後のCW干渉信号の周波数成分を分散させることができ、反射信号の信号強度に対するCW干渉信号の信号強度が小さくなる。
【0100】
このように、周波数差fΔが大きい場合、すなわちCW干渉信号と搬送波の周波数とが大きく離れている場合には、スタガ処理によって送信信号の送信タイミングを調整することにより、レーダ装置10によるレーダ計測に対する外部のCW信号の干渉を抑制することができる。
【0101】
次に、実施の形態1に係るレーダ装置10の処理の流れについて説明する。
【0102】
図8は、実施の形態1に係るレーダ装置10による処理の流れを示すフロー図である。
【0103】
本実施の形態に係るレーダ装置10は、車両のエンジンが始動されるたびに図8に示す処理を実行する。例えば、エンジンを始動するためにイグニッションキーをオンの状態にすると、図2に示したECU50およびレーダ装置10-1,10-2に電源電力の供給が開始され、レーダ装置10-1,10-2が起動する。
【0104】
図8に示すように、レーダ装置10は、起動後、送信モードとして通常送信モードが設定される(ステップS1)。通常送信モードにおいて、干渉防止制御部37は、所定の周波数fCの搬送波(CW信号)を生成するように周波数制御部39に指示するとともに、所定のパルス周期およびパルス幅のパルス信号を生成するように、パルス制御部38に指示する。これにより、後述するレーダ計測処理(ステップS2)において、周波数fCのCW信号を所定のパルス周期およびパルス幅でパルス変調した送信信号が送信アンテナ14から出力される。
【0105】
次に、レーダ装置10は、レーダ計測処理を行う(ステップS2)。
具体的には、先ず、送信アンテナ14は、周波数fCのCW信号を所定のパルス周期およびパルス幅でパルス変調した送信信号を送信する。そして、受信アンテナ17は、当該送信信号の物標による反射信号を受信する。このとき、レーダ装置10の周囲環境にCW干渉信号が存在する場合には、受信アンテナ17は反射信号とともにCW干渉信号も受信する。受信アンテナ17によって受信した受信信号は、復調部19によってダウンコンバートされた後、受信フィルタ20によって低周波成分が除去されて、A/D変換部21に供給される。A/D変換部21は、供給された受信信号をデジタル信号に変換してデータ処理制御部15に入力し、データ処理制御部15は、上述した手法により、A/D変換部21によってデジタル信号に変換された受信信号に対して信号解析を実行する。具体的には、信号解析部30が、上述したように受信信号に対して周波数解析を実行するとともに、計測部31が信号解析部30の解析結果に基づいて、物標の速度および物標までの距離を計測し、通信部32が計測部31による計測結果をECU50に送信する。
【0106】
次に、データ処理制御部15は、入力された受信信号が飽和しているか否か、すなわち受信信号がA/D変換部21の入力電圧範囲を超える信号レベルであるか否かを判定する(ステップS3)。
【0107】
受信信号がA/D変換部21の入力電圧範囲を超える信号レベルである場合には(ステップS3:Yes)、A/D変換部21からオーバーレンジ信号が出力され、データ処理制御部15は、通信部32によって、レーダ装置10の信号の検知性能が低下していることを示す信号をECU50等に対して出力する(ステップS5)。その後、データ処理制御部15は、ステップS2に戻る。
【0108】
一方、受信信号がA/D変換部21の入力電圧範囲を超える信号レベルでない場合には(ステップS3:No)、データ処理制御部15は、A/D変換部21によってデジタル信号に変換された受信信号の周波数成分を解析する(ステップS4)。具体的には、信号解析部30が、上述したように受信信号に対して周波数解析を実行して、受信信号に含まれる周波数成分を抽出する。
【0109】
次に、データ処理制御部15は、CW干渉信号が存在するか否かを判定する(ステップS6)。具体的には、干渉判定部33が、信号解析部30の解析結果に基づいて、受信信号にCW干渉信号が含まれているか否かを、上述した手法により判定する。
【0110】
受信信号にCW干渉信号が含まれていない場合には、データ処理制御部15は、ステップS2に戻り、通常送信モードにおいて、レーダ計測処理、信号解析、およびCW干渉信号の判定等を繰り返し実行する(ステップS2~S6)。
【0111】
一方、受信信号にCW干渉信号が含まれている場合には、データ処理制御部15は、周波数差fΔに基づく判定処理を行う(ステップS7)。具体的には、上述したように、周波数差算出部34が、干渉判定部33によって検出されたCW干渉信号の周波数fIと発振部11から出力される搬送波としてのCW信号の周波数fCとの差(周波数差fΔ)を算出し、周波数判定部35が周波数差fΔと閾値Aとを比較する。
【0112】
ステップS7において、周波数差fΔが閾値Aより小さい場合には、データ処理制御部15は、送信モードを同調送信モードに設定し、上述したように搬送波の周波数fCを変更して送信信号を送信させる(ステップS8)。
【0113】
一方、図8のフロー図において、周波数差fΔが閾値A以上である場合には、データ処理制御部15は、送信モードをスタガ送信モードに設定し、上述したようにスタガ方式で送信信号を送信させる(ステップS9)。
【0114】
ステップS8およびステップS9における送信モードの通常送信モードから干渉防止送信モードへの変更後、レーダ装置10は、ステップS2と同様に、レーダ計測処理を行って物標の検出を行う(ステップS10)。
【0115】
次に、データ処理制御部15は、干渉防止送信モードを終了するか否かを判定する(ステップS11)。具体的には、周波数判定部35は、レーダ装置10の測定環境の変化の有無を判定する。より具体的には、上述したように、周波数判定部35は、同調送信モードまたはスタガ送信モードの継続時間が基準値Tthに到達したか否か、または車両の移動距離が基準値Lthに到達したか否かを判定する。
【0116】
レーダ装置10の測定環境の変化を検出していない場合(ステップS11:No)には、データ処理制御部15は、現在の送信モードを変更することなく、レーダ計測処理を行って物標の検出を行う(ステップS10)。
【0117】
一方、レーダ装置10の測定環境の変化を検出した場合(ステップS11:Yes)には、データ処理制御部15は、ステップS1に移行し、現在の送信モードを、同調送信モードまたはスタガ送信モードから通常送信モードに変更して、上述した一連の処理を繰り返し行う。
【0118】
以上、実施の形態1に係るレーダ装置10は、上述したように、送信したパルス信号の反射信号に干渉する干渉信号と搬送波との周波数差fΔに基づいて、同調送信モードとスタガ送信モードとを切り換える。
【0119】
具体的には、上述したように、CW干渉信号とレーダ装置10の搬送波の周波数差が小さい場合には、同調送信モードに設定して搬送波の周波数をCW干渉信号と一致させるように制御する。
【0120】
このように、本実施の形態に係るレーダ装置10によれば、レーダ装置10の外部に設置されているドップラーセンサ等から出力されるCW干渉信号と搬送波の周波数差とが互いに近接している場合には、受信フィルタ20によって受信信号に含まれるCW干渉信号の成分を除去することができる。
【0121】
また、上述したように、CW干渉信号とレーダ装置10の搬送波の周波数差が大きい場合には、スタガ処理によって送信信号の送信タイミングを調整する。
【0122】
このように、本実施の形態に係るレーダ装置10によれば、CW干渉信号と搬送波の周波数差とが互いに大きく離れている場合には、スタガ処理によって受信信号の位相をランダム化して、反射信号に対するCW干渉信号の信号強度を低下させることができる。
【0123】
以上の通り、本実施の形態に係るレーダ装置10によれば、CW干渉信号の周波数によらず、CW信号の干渉を抑制して受信感度を向上させることが可能となる。
【0124】
尚、上述した実施の形態1では、送信したパルス信号の反射信号に干渉する干渉信号と搬送波との周波数差fΔに基づいて、同調送信モードとスタガ送信モードとを切り換える構成を示したが、スタガ送信モードへは切り替えず、送信したパルス信号の反射信号に干渉する干渉信号と搬送波との周波数差fΔに基づいて、通常送信モードから同調送信モードへ切り替えるか否かを判定するようにしてもよい。このような場合、例えば、ステップS9において送信モードをスタガ送信モードに設定する代わりに、周波数判定部35がレーダ装置10の検知性能が低下していることを示す信号を、通信部32からECU50に対して送信するようにしてもよい。
【0125】
≪実施の形態2≫
図9は、実施の形態2に係るレーダ装置10Aにおけるデータ処理制御部15Aの機能ブロック構成を示す図である。
【0126】
実施の形態2に係るレーダ装置10Aは、周波数差fΔのみならず、レーダ装置が照射可能な送信信号の周波数範囲も考慮して送信モードの切り替えを行う点において、実施の形態1に係るレーダ装置10と相違する。
【0127】
先ず、実施の形態2に係る干渉防止送信モードの設定方法の概要について説明する。
【0128】
図10は、実施の形態2に係る干渉防止送信モードの設定方法を説明するための図である。
【0129】
同図において、横軸は周波数を表し、縦軸は信号強度を表している。参照符号450は、ダウンコンバート前の受信信号に含まれる送信信号に対する反射信号の特性を表し、参照符号550は、ダウンコンバート前の受信信号に含まれるCW干渉信号の特性を表している。
【0130】
図10に示すように、周波数fcの搬送波をパルス変調させて生成した送信信号は、変調速度(パルス周期およびパルス幅)に比例した占有帯域幅(Occupied Band Width:OBW)を有し、送信信号の物標に対する反射信号も同様の占有帯域幅を有している。
【0131】
一方で、レーダ装置が照射可能な周波数範囲は、他の周波数帯域を使用する無線機器への悪影響を低減する観点、およびレーダ装置10の各電子機器(例えば、増幅部18やADC21等)の性能の観点等から、送信信号(受信信号)が所定の周波数範囲を超えないように構成することが好ましい。例えば、図10に示すように、レーダ装置の照射可能な下限周波数をfL、上限周波数をfHとする場合、送信信号の占有帯域幅OBWを、下限周波数fLから上限周波数fHまでの周波数範囲fR内に収めることで、レーダ装置10の送信信号(受信信号)を、下限周波数fLまたは上限周波数fHを超えないようにすることができる。
【0132】
そこで、実施の形態2に係るレーダ装置10Aは、送信信号の占有帯域幅OBWが所定の周波数範囲を超えないように、適切な干渉防止送信モードを選択する。
【0133】
具体的に、レーダ装置10Aにおけるデータ処理制御部15Aは、実施の形態1に係るデータ処理制御部15と同様に、周波数差fΔが閾値A以上である場合に、送信モードをスタガ送信モードに設定する。この場合には、実施の形態1でも述べたように、スタガ処理によって、受信信号の位相がランダム化されることにより、反射信号に対するCW干渉信号の信号強度を低下させることができる。
【0134】
また、データ処理制御部15Aは、搬送波の周波数fcを干渉信号の周波数fIに一致させたときの送信信号の占有帯域幅OBWが所定の周波数範囲fR(fLからfHまでの範囲)を超えない場合には、送信モードを同調送信モードに設定し、送信信号の占有帯域幅OBWが所定の周波数範囲fRを超える場合には、周波数差Δfが大きくなるように搬送波の周波数fcを調整するとともに、送信モードをスタガ送信モードに設定する。
【0135】
例えば、図10に示すように、fC<fIである場合に、搬送波の周波数fCをCW干渉信号の周波数fIに一致させるために、搬送波をその周波数fCが大きくなる方向にシフトさせたとき、周波数fCを中心とする送信信号の占有帯域幅OBWも周波数が大きくなる方向にシフトする。このとき、送信信号の占有帯域幅OBWにおける最大の周波数が上限周波数fHを超えない場合には、送信モードを同調送信モードに設定することが可能である。
【0136】
一方、図10において、搬送波の周波数fCをCW干渉信号の周波数fIに一致させるために、搬送波をその周波数fCが大きくなる方向にシフトさせたとき、送信信号の占有帯域幅OBWにおける最大の周波数が上限周波数fHを超える場合には、送信モードを同調送信モードに設定しないようにする。この場合には、データ処理制御部15Aは、周波数差fΔが更に大きくなる方向に、搬送波の周波数fCをシフトさせた上で送信モードをスタガ送信モードに設定する。
【0137】
例えば、図10において、搬送波をその周波数fCが小さくなる方向にシフトさせることにより、周波数差fΔを更に広げる。これによれば、スタガ処理による受信信号の位相のランダム化が可能となるので、反射信号に対するCW干渉信号の信号強度を低下させることが可能となる。
【0138】
次に、データ処理制御部15Aにおける周波数判定部35Aによる具体的な処理内容について説明する。
【0139】
周波数判定部35Aは、干渉判定部33による判定結果と周波数差算出部34によって算出された周波数差fΔと、送信信号の占有帯域幅OBWと、送信信号の上限周波数fHおよび下限周波数fLとに基づいて、送信モードを決定する。
【0140】
先ず、周波数判定部35Aは、送信信号の占有帯域幅OBWと、送信信号の上限周波数fHおよび下限周波数fLとに基づいて、下側調整幅fLBWと上側調整幅fHBWを算出する。
【0141】
下側調整幅fLBWは、図10に示すように、送信信号の照射可能な周波数範囲fRにおいて、周波数をシフト可能な下限側の最大の調整幅であり、下記式(1)によって表される。
【0142】
【数1】
【0143】
上側調整幅fHBWは、図10に示すように、送信信号の照射可能な周波数範囲fRにおいて、周波数をシフト可能な上限側の最大の調整幅であり、下記式(2)によって表される。
【0144】
【数2】
【0145】
ここで、下限周波数fL、上限周波数fH、および占有帯域幅OBWの値は、例えば、予め記憶部36Aに周波数判定情報360Aとして記憶されている。周波数判定部35Aは、記憶部36Aから読み出した下限周波数fL、上限周波数fH、および占有帯域幅OBWの値を用いて、上記式(1)および(2)から下側調整幅fLBWおよび上側調整幅fHBWをそれぞれ算出する。
【0146】
周波数判定部35Aは、送信信号の占有帯域幅OBWが所定の周波数範囲fRを超えないように、搬送波の周波数fcのCW干渉信号の周波数fIへの同調が可能であるか否かを判定する。
【0147】
具体的には、周波数判定部35Aは、下側調整幅fLBWまたは上側調整幅fHBWと、周波数差算出部34によって算出された周波数差fΔとを比較する(第1周波数判定処理)。例えば、fC>fIのとき、fΔが下側調整幅fLBW以下である場合には、周波数同調を行ったとしても、送信信号の占有帯域幅OBWが所定の周波数範囲fRを超えないと判断できるので、周波数判定部35Aは、送信モードを同調送信モードに設定する。 ここで、fC>fIの場合における同調後の搬送波の周波数fCxは、下記式(3)によって決定される。
【0148】
【数3】
【0149】
同様に、fC<fIのとき、fΔが上側調整幅fHBW以下である場合には、周波数判定部35Aは、送信モードを同調送信モードに設定する。fC<fIの場合における同調後の搬送波の周波数fCxは、下記式(4)によって決定される。
【0150】
【数4】
また、周波数判定部35Aは、スタガ処理によって干渉抑制効果が期待できるか否かを判定する。具体的には、周波数判定部35Aは、周波数差算出部34によって算出された周波数差fΔと閾値Aとを比較する(第2周波数判定処理)。周波数判定部35Aは、周波数差fΔが閾値A以上である場合には、送信モードをスタガ送信モードに設定する。
【0151】
更に、周波数判定部35Aは、送信信号の占有帯域幅OBWが所定の周波数範囲fRを超えないように、周波数差fΔを閾値A以上に拡大することができるか否かを判定する。具体的には、周波数判定部35Aは、閾値Aと下側調整幅fLBWまたは上側調整幅fHBWとの差分(A-fLBW)または(A-fHBW)と、周波数差算出部34によって算出された周波数差fΔとを比較する(第3周波数判定処理)。周波数判定部35Aは、周波数差fΔが差分(A-fLBW)または(A-fHBW)以上である場合には、周波数差fΔが閾値Aよりも大きくなるように搬送波の周波数fcを変更することを指示するとともに、送信モードをスタガ送信モードに設定する。
【0152】
ここで、fC>fIの場合における搬送波の変更後の周波数fCxは、下記式(5)によって決定される。
【0153】
【数5】
【0154】
またfC<fIの場合における搬送波の変更後の周波数fCxは、下記式(6)によって決定される。
【0155】
【数6】
【0156】
一方、周波数差fΔが差分(A-fLBW)または(A-fHBW)より小さい場合には、同調送信モードまたはスタガ送信モードに設定してもCW干渉信号の影響を低減することができない。この場合には、周波数判定部35Aは、レーダ装置10Aの検知性能が低下していることを示す信号を、通信部32から出力させる。
【0157】
図11は、実施の形態2に係るレーダ装置10Aにおける周波数判定情報360Aの一例を示す図である。
【0158】
図11に示すように、周波数判定情報360Aに含まれるパラメータのうち、占有帯域幅OBW、下限周波数fL、上限周波数fH、閾値A、干渉防止送信モードの継続時間に関する基準値Tth、干渉防止送信モード設定後の車両の移動距離に関する基準値Lthは、固定値として予め記憶部36Aに記憶されている。
【0159】
また、周波数判定情報360Aに含まれるパラメータのうち、搬送波の周波数fC(fCx)、下側調整幅fLBW、上側調整幅fHBW、CW干渉信号の周波数fI、および周波数差fΔは、データ処理制御部15A内で計算されて記憶部36Aに記憶され、逐次更新される。
【0160】
なお、図11に示すように、占有帯域幅OBWは、レーダ装置10Aの周辺温度に応じて複数設定されていてもよい。この場合には、図9に示すように、データ処理制御部15Aは温度検知部40を更に有し、周波数判定部35Aは、温度検知部40によって検知された温度の計測値に対応する占有帯域幅OBWの値を記憶部36Aから読み出して、上述した送信モードの設定処理に用いる。これによれば、レーダ装置10Aの周辺温度が変化した場合であっても、適切な送信モードを選択することができる。
【0161】
なお、温度検知部40は、例えば、MCUの外部に設けられた温度センサからの検出信号(アナログ信号)を入力するMCUの入出力インターフェース回路やA/D変換回路によって実現することができる。
【0162】
次に、実施の形態2に係るレーダ装置10Aによる処理の流れについて説明する。
【0163】
図12Aおよび図12Bは、実施の形態2に係るレーダ装置10Aによる処理の流れを示すフロー図である。
【0164】
図12Aには、搬送波の周波数fCがCW干渉信号の周波数fIよりも大きい場合(fC>fI)のフロー図が示され、図12Bには、搬送波の周波数fCがCW干渉信号の周波数fIよりも小さい場合(fC<fI)のフロー図が示されている。
【0165】
なお、図12Aおよび図12Bに示されるフロー図は、後述する第1乃至第3周波数判定処理等で用いるパラメータのみが異なり、その他の点においては同様であるため、図12Aおよび図12Bをそれぞれ個別に説明するのではなく、まとめて説明する。
【0166】
図12A図12Bに示すように、レーダ装置10Aの起動後のステップS1~ステップS6までの処理は、実施の形態1に係るレーダ装置10の処理フローと同様である(図8参照)。
【0167】
ステップS6において、受信信号にCW干渉信号が含まれている場合、データ処理制御部15Aは、周波数差fΔに基づく判定処理を開始する。具体的には、先ず、周波数判定部35Aが、上述した第1周波数判定処理を実行して、周波数差fΔが、下側調整幅fLBW(上側調整幅fHBW)以下であるか否かを判定する(ステップS70/ステップS70A)。
【0168】
周波数差fΔが下側調整幅fLBW(上側調整幅fHBW)以下である場合(S70/S70A:Yes)の場合には、搬送波の周波数fcをCW干渉信号の周波数fIに同調させたとしても、送信信号の占有帯域幅OBWが所定の周波数範囲fRを超えないので、周波数判定部35Aは、送信モードを同調送信モードに設定する(ステップS8/S8A)。
【0169】
一方、周波数差fΔが下側調整幅fLBW(上側調整幅fHBW)より大きい場合(S70/S70A:No)の場合には、周波数判定部35Aが、上述した第2周波数判定処理を実行して、周波数差fΔが閾値A以上であるか否かを判定する(ステップS71/ステップS71A)。
【0170】
周波数差fΔが閾値A以上である場合(S71/S71A:Yes)には、周波数判定部35Aは、送信モードをスタガ送信モードに設定する(ステップS8)。
【0171】
一方、周波数差fΔが閾値Aより小さい場合(S71/S71A:No)には、周波数判定部35Aが、上述した第3周波数判定処理を実行して、周波数差fΔが(A-fHBW)以上であるか否か(周波数差fΔが(A-fLBW)以上であるか否か)を判定する(ステップS72/S72A)。
【0172】
周波数差fΔが(A-fHBW)より小さい場合(周波数差fΔが(A-fLBW)より小さい場合)には(S72/S72A:No)、干渉防止送信モード(同調送信モードまたはスタガ送信モード)に設定してもCW干渉信号の影響を低減することができないので、周波数判定部35Aは、レーダ装置10Aの検知性能が低下していることを示す信号を、通信部32からECU50に対して送信する(ステップS74)。その後、データ処理制御部15Aは、ステップS2に戻る。
【0173】
一方、周波数差fΔが(A-fHBW)以上である場合(周波数差fΔが(A-fLBW)以上である場合)には(S72/S72A:Yes)、周波数判定部35Aが、周波数差fΔが閾値Aよりも大きくなるように搬送波の周波数fcを変更することを干渉防止制御部37Aに指示する(ステップS73)。具体的には、周波数判定部35Aは、上記式(5)または式(6)にしたがって搬送波の周波数を変更するよう干渉防止制御部37Aに指示する。その後、周波数判定部35Aは、送信モードをスタガ送信モードに設定する(ステップS8)。
【0174】
図12A図12BにおけるステップS8,S9(S9A)以降の処理は、実施の形態1に係るレーダ装置10の処理フローと同様である(図8参照)。
【0175】
以上、実施の形態2に係るレーダ装置10Aによれば、上述したように、周波数差fΔのみならず設定された周波数範囲fRを考慮して送信モードを決定するので、送信信号の周波数が周波数範囲fRを超えないように、レーダ装置10Aの受信感度の低下を防止することができる。
【0176】
特に、レーダ装置10Aによれば、周波数差fΔが閾値A以上でない場合に、周波数差fΔを広げるように搬送波の周波数fcを変更した上で送信モードをスタガ送信モードに設定するので、通常のスタガ処理や周波数同調によって干渉防止効果が期待できないような周波数差fΔの場合であっても、レーダ装置10Aの受信感度の低下を防止することができる。
【0177】
≪実施の形態3≫
図13は、実施の形態3に係るレーダ装置10Bにおけるデータ処理制御部15Bの機能ブロック構成を示す図である。
【0178】
実施の形態3に係るレーダ装置10Bは、実施の形態2に係るレーダ装置10Aの機能に加えて、搬送波をパルス変調するためのパルス信号のパルス幅を変更する機能を有する点において、実施の形態2に係るレーダ装置10Aと相違する。
【0179】
先ず、実施の形態3に係る干渉防止送信モードの設定方法の概要について説明する。
【0180】
図14は、実施の形態3に係る干渉防止送信モードの設定方法を説明するための図である。
【0181】
同図において、横軸は周波数を表し、縦軸は信号強度を表している。参照符号450は、ダウンコンバート前の受信信号に含まれる送信信号に対する反射信号の特性を表し、参照符号550は、ダウンコンバート前の受信信号に含まれるCW干渉信号の特性を表している。更に、同図において、参照符号450xは、送信信号としてのパルス信号のパルス幅を参照符号450に係るパルス信号よりも広げたときの、ダウンコンバート前の受信信号に含まれる反射信号の特性を表している。
【0182】
図14に示すように、一般に、パルス変調方式では、変調に用いるパルス信号のパルス幅が大きくなるほど、変調後のパルス信号(送信信号)の占有帯域幅OBWが狭くなる。すなわち、図14に示すように、送信信号のパルス幅を拡張することにより、下側調整幅fLBWおよび上側調整幅fHBWを拡張することが可能となる。
【0183】
そこで、実施の形態3に係るレーダ装置10Bは、搬送波の周波数を調整すると送信信号の占有帯域幅OBWが規定の周波数範囲fRを超えてしまう場合には、パルス変調の基準となるパルス信号のパルス幅を拡張することにより、下側調整幅fLBWおよび上側調整幅fHBWを拡張させた上で、送信モードを通常送信モードから干渉防止送信モードに切り替える。
【0184】
具体的に、レーダ装置10Bにおけるデータ処理制御部15Bは、搬送波の周波数fcをCW干渉信号の周波数fIに一致させたときの送信信号(パルス信号)の占有帯域幅OBWが所定の周波数範囲fRを超える場合には、送信信号のパルス幅を増加させるとともに、パルス幅を増加させたパルス信号の占有帯域幅OBWxと周波数範囲fRとの関係に基づいて、送信モードを決定する。
【0185】
より具体的には、データ処理制御部15Bの周波数判定部35Bは、先ず、実施の形態2に係る周波数判定部35Aと同様に、第1周波数判定処理、第2周波数判定処理、および第3周波数判定処理を実行する。
【0186】
周波数判定部35Bは、第3周波数判定処理において、周波数差fΔが差分(A-fLBW)または(A-fHBW)より小さい場合には、パルス変調のためのパルス信号のパルス幅を大きくするように干渉防止制御部37Bに指示する。ここで、パルス幅拡張時のパルス幅の拡張量は、例えば固定値であって、予め記憶部36Bに記憶されている。
【0187】
干渉防止制御部37Bは、周波数判定部35Bからパルス幅拡張の指示に応じて、記憶部36Bに記憶されているパルス幅の増加量に基づいてパルス幅を決定し、パルス制御部38に指示する。パルス制御部38は、干渉防止制御部37Bからの指示に応じたパルス信号を生成して、変調部13に送信する。これにより、当初よりもパルス幅の広いパルス信号が送信信号として送信アンテナ14から送信される。
【0188】
そして、周波数判定部35Bは、パルス幅が拡張された送信信号に対する受信信号に基づいて、実施の形態2と同様の手法により、第1周波数判定処理、第2周波数判定処理、および第3周波数判定処理を再度実行して、適切な干渉防止送信モードを決定する。
【0189】
図15は、実施の形態3に係るレーダ装置10Bにおける周波数判定情報360Bの一例を示す図である。
【0190】
上述したように送信信号の占有帯域幅OBWはパルス幅に応じて変化する(図14参照)。そこで、実施の形態2に係るレーダ装置10Bは、図15に示すように、周波数判定情報360Bとして、パルス幅非拡張時とパルス幅拡張時の2種類のパラメータ群362,363を記憶部36Bに記憶している。
【0191】
周波数判定部35Bは、パルス幅非拡張時においては、パラメータ群362を用いて第1乃至第3周波数判定処理を実行し、パルス幅拡張時においては、パラメータ群363を用いて第1乃至第3周波数判定処理を実行する。
【0192】
なお、パラメータ群362とパラメータ群363とは、占有帯域幅OBW,OBWxのみ値が相違し、その他のパラメータは同一の値であってもよい。
【0193】
次に、実施の形態3に係るレーダ装置10Bによる処理の流れについて説明する。
【0194】
図16A図16B図17A、および図17Bは、実施の形態3に係るレーダ装置10Bによる処理の流れを示すフロー図である。図16Aおよび図16Bには、搬送波の周波数fCがCW干渉信号の周波数fIよりも大きい場合(fC>fI)のフロー図が示され、図17Aおよび図17Bには、搬送波の周波数fCがCW干渉信号の周波数fIよりも小さい場合(fC<fI)のフロー図が示されている。
【0195】
なお、図16A図16B図17A、および図17Bに示されるフロー図は、後述する第1乃至第3周波数判定処理等で用いるパラメータのみが異なり、その他の点においては同様であるため、図16Aおよび図16B図17Aおよび図17Bとをそれぞれ個別に説明するのではなく、まとめて説明する。
【0196】
図16A図16B図17A、および図17Bに示すように、レーダ装置10Bの起動後のステップS1~ステップS11(ステップS8Aを含む)とステップS70~S73(S70A,S72A,S73Aを含む)までの処理は、実施の形態2に係るレーダ装置10Aの処理フローと同様である(図12Aおよび図12B参照)。
【0197】
ステップS72(ステップS72A)において、周波数差fΔが(A-fHBW)より小さい場合(周波数差fΔが(A-fLBW)より小さい場合)には(S72/S72A:No)、データ処理制御部15Bは、パルス変調のパルス幅を拡張した送信信号を出力する(ステップS75)。
【0198】
具体的には、上述したように、周波数判定部35Bが、パルス変調のためのパルス信号のパルス幅を大きくするように干渉防止制御部37Bに指示し、干渉防止制御部37Bが、記憶部36Bに記憶されているパルス幅の増加量に基づいてパルス幅を決定し、パルス制御部38に指示する。パルス制御部38は、干渉防止制御部37Bから指定されたパルス幅のパルス信号を生成して変調部13に送信する。これにより、当初よりもパルス幅の広いパルス信号が送信信号として送信アンテナ14から送信される。
【0199】
次に、周波数判定部35Bは、パルス幅拡張後の周波数差fΔに基づく判定処理を開始する。具体的には、先ず、周波数判定部35Bが、上述した第1周波数判定処理を実行して、周波数差fΔが下側調整幅fLBWx(上側調整幅fHBWx)以下であるか否かを判定する(ステップS70B/ステップS70C)。
【0200】
周波数差fΔが下側調整幅fLBWx(上側調整幅fHBWx)以下である場合(S70B/S70C:Yes)の場合には、搬送波の周波数fcをCW干渉信号の周波数fIに同調させたとしても、送信信号の占有帯域幅OBWxが所定の周波数範囲fRを超えないので、周波数判定部35Bは、送信モードを同調送信モードに設定する(ステップS9B/S9C)。
【0201】
一方、周波数差fΔが下側調整幅fLBWx(上側調整幅fHBWx)より大きい場合(S70B/S70C:No)の場合には、周波数判定部35Bが、上述した第2周波数判定処理を実行して、周波数差fΔが閾値A以上であるか否かを判定する(ステップS71/ステップS71A)。
【0202】
周波数差fΔが閾値A以上である場合(S71/S71A:Yes)には、周波数判定部35Bは、送信モードをスタガ送信モードに設定する(ステップS8B/S8C)。
【0203】
一方、周波数差fΔが閾値Aより小さい場合(S71/S71A:No)には、周波数判定部35Bが、上述した第3周波数判定処理を実行して、周波数差fΔが(A-fHBWx)以上であるか否か(周波数差fΔが(A-fLBWx)以上であるか否か)を判定する(ステップS72B/S72C)。
【0204】
周波数差fΔが(A-fHBWx)より小さい場合(周波数差fΔが(A-fLBWx)より小さい場合)には(S72B/S72C:No)、干渉防止送信モード(同調送信モードまたはスタガ送信モード)に設定してもCW干渉信号の影響を低減することができないので、周波数判定部35Bは、レーダ装置10Bの検知性能が低下していることを示す信号を、通信部32からECU50に対して送信する(ステップS74B/S74C)。その後、データ処理制御部15Bは、ステップS2に戻る。
【0205】
一方、周波数差fΔが(A-fLBWx)以上である場合(周波数差fΔが(A-fHBWx)以上である場合)には(S72B/S72C:Yes)、周波数判定部35Bが、周波数差fΔが閾値Aよりも大きくなるように搬送波の周波数fcを変更することを干渉防止制御部37Bに指示する(ステップS73B/S73C)。具体的には、周波数判定部35Bは、上記式(5)または式(6)にしたがって搬送波の周波数を変更するよう干渉防止制御部37Bに指示する。次に、周波数判定部35Bは、送信モードをスタガ送信モードに設定する(ステップS8B/S8C)。
【0206】
ステップS8B/S8CおよびステップS9B/S9Cによるパルス幅拡張時の干渉防止送信モードへの切り替え後、レーダ装置10Bは、ステップS2と同様に、レーダ計測処理を行って物標の検出を行う(ステップS10B/S10C)。
【0207】
次に、データ処理制御部15Bは、パルス幅拡張時の干渉防止送信モードを終了するか否かを判定する(ステップS11B/S11C)。具体的には、上述したように、周波数判定部35Bは、パルス幅の拡張後に、同調送信モードまたはスタガ送信モードの継続時間が基準値Tthに到達したか否か、または車両の移動距離が基準値Lthに到達したか否かを判定する。
【0208】
レーダ装置10Bの測定環境の変化を検出していない場合(ステップS11B/S11C:No)には、データ処理制御部15Bは、現在の送信モードを変更することなく、レーダ計測処理を行って物標の検出を行う(ステップS10B/S10C)。
【0209】
一方、レーダ装置10Bの測定環境の変化を検出した場合(ステップS11B/S11C:Yes)には、データ処理制御部15Bは、ステップS1に移行し、拡張したパルス幅をもとに戻すとともに、現在の送信モードを、同調送信モードまたはスタガ送信モードから通常送信モードに変更して、上述した一連の処理を繰り返し行う。
【0210】
以上、実施の形態3に係るレーダ装置10Bは、上述したように、パルス変調に用いるパルス信号のパルス幅を拡張した上で、送信モードを通常送信モードから干渉防止送信モードに切り替えることが可能となっている。
【0211】
これによれば、図14の参照符号450xに示すように、パルス信号のパルス幅を拡張することにより、占有帯域幅OBWを狭くして下側調整幅fLBWおよび上側調整幅fHBWを拡張することができる。これにより、パルス幅の非拡張時において搬送波の周波数を調整すると送信信号の占有帯域幅OBWが規定の周波数範囲fRを超えてしまう場合であっても、パルス幅を拡張することで、送信モードを同調送信モードまたはスタガ送信モードに設定することが可能となる。
【0212】
したがって、実施の形態3に係るレーダ装置10Bによれば、周波数差Δfがより大きな環境下であっても、送信信号の占有帯域幅OBWが規定の周波数範囲fRを超えることなく、受信感度の低下を防ぐことが可能となる。
【0213】
≪実施の形態の拡張≫
以上、本発明者らによってなされた発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。
【0214】
例えば、上述のフローチャートは具体例であって、このフローチャートに限定されるものではなく、例えば、各ステップ間に他の処理が挿入されていてもよいし、処理が並列化されていてもよい。例えば、第1乃至第3周波数判定処理(ステップS70~S72,S70A~S72A)は、図12Aおよび図12Bに示した処理の順序に限られず、順序を入れ替えてもよい。しかしながら、第1乃至第3周波数判定処理(ステップS70~S72,S70A~S72A)を図12Aおよび図12Bに示した処理の順序で実施することで、スタガ送信モードより優先して同調送信モードを実施し、データ処理制御部15での負荷をより低減することができるため好ましい。
【符号の説明】
【0215】
1…レーダシステム、10,10A,10B,10-1,10-2…レーダ装置、11…発振部、12…送信部、13…変調部、14…送信アンテナ、15,15A,15B…データ処理制御部、16…受信部、17…受信アンテナ、18…増幅部、19…復調部、20…受信フィルタ、21…A/D変換部、30…信号解析部、31…計測部、32…通信部、33…干渉判定部、34…周波数差算出部、35,35A,35B…周波数判定部、36,36A,36B…記憶部、37,37A,37B…干渉防止制御部、38…パルス制御部、39…周波数制御部、40…温度検知部、41,42…通信線、360,360A,360B…周波数判定情報、361…干渉判定情報、362…パラメータ群、363…パラメータ群。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図13
図14
図15
図16A
図16B
図17A
図17B