(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】ヒートシンクおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 23/36 20060101AFI20240116BHJP
H01L 23/473 20060101ALI20240116BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20240116BHJP
F28D 15/02 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
H01L23/36 Z
H01L23/46 Z
H05K7/20 B
F28D15/02 L
(21)【出願番号】P 2020073071
(22)【出願日】2020-04-15
【審査請求日】2022-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114292
【氏名又は名称】来間 清志
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(72)【発明者】
【氏名】高田 早紀
【審査官】佐藤 靖史
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-190847(JP,A)
【文献】特開2001-274297(JP,A)
【文献】特開2007-281504(JP,A)
【文献】特開2002-305272(JP,A)
【文献】特開2000-283670(JP,A)
【文献】特開2008-241227(JP,A)
【文献】特開平10-107466(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101641004(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/36
H01L 23/473
H05K 7/20
F28D 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱体からの熱の入熱面である第1主面と、放熱面である第2主面とを有し、熱伝導材料からなるベース部材と、
前記第2主面上に、互いに隣接させて整列配置した複数のフィンと
を備え、
各フィンは、
前記第2主面に面して配設される基部と、
前記基部の一端に位置する屈曲部から、前記第2主面から離れる方向に延在するフィン本体部と
を有し、
前記複数のフィンのうちの隣接する2つのフィン同士で見て、一のフィンを構成する基部の他端部と、他のフィンを構成する屈曲部と、前記ベース部材の第2主面とで形成される境界位置に一体接合部を少なくとも有することを特徴とするヒートシンク。
【請求項2】
前記フィンは、前記基部と前記フィン本体部とのなす角度が略90°である、請求項1に記載のヒートシンク。
【請求項3】
前記フィンは、前記基部と前記フィン本体部とのなす角度が
、前記フィン本体部における前記第2主面から離れた端部における前記フィン本体部の厚み方向の前記他端部側の縁と前記他端部とを結ぶ線と、前記基部と、のなす角度が90°になる際の、前記基部と前記フィン本体部とのなす角度より大きく、90°未満である、請求項1に記載のヒートシンク。
【請求項4】
前記複数のフィンは、前記基部と前記フィン本体部とのなす角度がいずれも同じである、請求項2または3に記載のヒートシンク。
【請求項5】
前記複数のフィンは、前記基部と前記フィン本体部とのなす角度が90°未満である第1フィンと、前記基部と前記フィン本体部とのなす角度が90°以上である第2フィンとで構成される請求項1に記載のヒートシンク。
【請求項6】
前記ベース部材は、熱伝導材料からなる2枚の熱伝導板で構成されたべーパーチャンバーである請求項1~5のいずれか1項に記載のヒートシンク。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載のヒートシンクの製造方法であって、
前記ベース部材の前記第2主面上に、複数のフィンを互いに隣接させて整列配置する工程と、
整列配置した前記複数のフィンを、隣接する2つのフィン同士で見て、一のフィンを構成する基部の他端部と、他のフィンを構成する屈曲部と、前記一のフィンの基部の他端部および前記他のフィンを構成する屈曲部に面する前記ベース部材の第2主面とを、レーザー溶接で同時に接合して一体接合部を形成する工程と
を含むことを特徴とするヒートシンクの製造方法。
【請求項8】
前記ベース部材は、熱伝導材料からなる2枚の熱伝導板で構成されたべーパーチャンバーであり、
前記フィンは、前記基部が、前記ベース部材の前記第1主面にレーザー溶接し接合され、
前記2枚の熱伝導板は、第1熱伝導板または第2熱伝導板の外面側から、レーザー溶接されて接合される、請求項7に記載のヒートシンクの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートシンクおよびその製造方法に関し、より詳しくは、放熱性に優れたヒートシンクおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車、航空機、自動車等の移動体や電気機器に搭載された電子部品に発生した熱を放熱しまたは冷却して、電子部品の損傷を防止するために、ヒートシンクが用いられている。
【0003】
近年、移動体や電子機器の内部の電子部品により強い熱が加わる用途が増えており、ヒートシンクの放熱効率を高めるべく様々な検討がなされている。例えば、特許文献1には、接続部とその接続部の一端部に設けられた1枚のフィンからなる側面視略L字型の板状部材を用い、1つのフィンとベース板とのなす角度が鋭角となるよう構成されたヒートシンクが提案されている。このようなヒートシンクは、板状部材の内側からレーザー光などを照射してそのヒートシンクを製造する際に、接続部とベース板との接合面積を大きくすることができ、その結果、優れた放熱性を有することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されるヒートシンクでは、フィンとベース板とは接合されているものの、隣り合ったフィン同士は互いに非接触状態で離隔配置されているため、発熱体からの熱が、ベース板を通じて個々のフィンに伝達されて放熱する構造であることから、放熱性が十分でない場合がある。また、このようなヒートシンクでは、個々のフィンごとに複数回、底部全体にレーザー溶接を行う必要があるため、溶接作業(加工)に相当の時間を要し、加えて、溶接作業を長時間行うことは、熱溜りによって歪が生じやすいという問題点もある。
【0006】
本発明は、以上のような実情に鑑みてなされたものであり、放熱性に優れたヒートシンクおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上述した課題を解決すべく鋭意検討を重ねた。その結果、ヒートシンクが、発熱体からの熱の入熱面である第1主面と、放熱面である第2主面とを有し、熱伝導材料からなるベース部材と、第2主面上に、互いに隣接させて整列配置した複数のフィンとを備え、各フィンは、第2主面に面して配設される基部と、基部の一端に位置する屈曲部から、第2主面から離れる方向に延在するフィン本体部とを有し、複数のフィンは、隣接する2つのフィン同士で見て、一のフィンを構成する基部の他端部と、他のフィンを構成する屈曲部と、ベース部材の第2主面とで形成される境界位置に一体接合部を少なくとも有することにより、放熱性に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的に本発明は以下のものを提供する。
【0008】
(1)発熱体からの熱の入熱面である第1主面と、放熱面である第2主面とを有し、熱伝導材料からなるベース部材と、前記第2主面上に、互いに隣接させて整列配置した複数のフィンとを備え、各フィンは、前記第2主面に面して配設される基部と、前記基部の一端に位置する屈曲部から、前記第2主面から離れる方向に延在するフィン本体部とを有し、前記複数のフィンのうちの隣接する2つのフィン同士で見て、一のフィンを構成する基部の他端部と、他のフィンを構成する屈曲部と、前記ベース部材の第2主面とで形成される境界位置に一体接合部を少なくとも有することを特徴とするヒートシンク。
(2)前記フィンは、前記基部と前記フィン本体部とのなす角度が略90°である、上記(1)に記載のヒートシンク。
(3)前記フィンは、前記基部と前記フィン本体部とのなす角度が90°未満である、上記(1)に記載のヒートシンク。
(4)前記複数のフィンは、前記基部と前記フィン本体部とのなす角度がいずれも同じである、上記(2)または(3)に記載のヒートシンク。
(5)前記複数のフィンは、前記基部と前記フィン本体部とのなす角度が90°未満である第1フィンと、前記基部と前記フィン本体部とのなす角度が90°以上である第2フィンとで構成される上記(1)に記載のヒートシンク。
(6)前記ベース部材は、熱伝導材料からなる2枚の熱伝導板で構成されたべーパーチャンバーである上記(1)~(5)のいずれかに記載のヒートシンク。
(7)上記(1)~(6)のいずれかに記載のヒートシンクの製造方法であって、前記ベース部材の前記第2主面上に、複数のフィンを互いに隣接させて整列配置する工程と、整列配置した前記複数のフィンを、隣接する2つのフィン同士で見て、一のフィンを構成する基部の他端部と、他のフィンを構成する屈曲部と、前記一のフィンの基部の他端部および前記他のフィンを構成する屈曲部に面する前記ベース部材の第2主面とを、レーザー溶接で同時に接合して接合部を形成する工程とを含むことを特徴とするヒートシンクの製造方法。
(8)前記ベース部材は、熱伝導材料からなる2枚の熱伝導板で構成されたべーパーチャンバーであり、前記フィンは、前記基部が、前記ベース部材の前記第1主面にレーザー溶接し接合され、
前記2枚の熱伝導板は、第1熱伝導板または第2熱伝導板の外面側から、レーザー溶接されて接合される、上記(7)に記載のヒートシンクの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、放熱性に優れたヒートシンクおよびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1の実施形態のヒートシンクの概略斜視図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態のヒートシンクの隣り合う2つのフィンを示した概略側面図である。
【
図3】本発明の第2の実施形態のヒートシンクの概略斜視図である。
【
図4】本発明の第2の実施形態のヒートシンクの隣り合う2つのフィンを示した概略側面図である。
【
図5】本発明の第3の実施形態のヒートシンクの概略斜視図である。
【
図6】本発明の第3の実施形態のヒートシンクの隣り合う3つのフィンを示した概略側面図である。
【
図7】第1の実施形態のヒートシンクの製造方法について説明するための概略模式図である。
【
図8】第1~第3の実施形態のヒートシンクの製造方法について、基部とフィン本体部とのなす角度がレーザーの打ち込みに及ぼす影響を説明するための模式図である。
【
図9】第3の実施形態のヒートシンクの製造方法について説明するための概略模式図である。
【
図10】ベーパーチャンバーに応用する実施形態のヒートシンクおよびその製造方法を説明するための模式図であって、(a)は、ヒートシンクを製造する際のレーザー照射方向L1~L3を模式的に示した図であり、(b)は、(a)に示すレーザー照射方向L1~L3にレーザーを照射した後に形成した接合部の位置を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されない。
【0012】
1.ヒートシンク
本発明のヒートシンクは、発熱体からの熱の入熱面である第1主面と、放熱面である第2主面とを有し、熱伝導材料からなるベース部材と、第2主面上に、互いに隣接させて整列配置した複数のフィンとを備える。各フィンは、第2主面に面して配設される基部と、基部の一端に位置する屈曲部から、第2主面から離れる方向に延在するフィン本体部とを有する。複数のフィンのうちの隣接する2つのフィン同士で見て、一のフィンを構成する基部の他端部と、他のフィンを構成する屈曲部と、ベース部材の第2主面とで形成される境界位置に一体接合部を少なくとも有する。
【0013】
なお、「熱伝導材料」とは、25℃における熱伝導率が10Wm-1K-1以上であるものをいう。
【0014】
また、以下においては、便宜上、第1主面および第2主面が異なる面である例のみを具体的に説明するが、第1主面および第2主面、すなわち、入熱面および放熱面が同一面上に存在する態様も含むものとする。
【0015】
図1は、本発明の第1の実施形態のヒートシンクの概略斜視図である。
図1に示されるヒートシンク1は、発熱体からの熱の入熱面である第1主面21と、放熱面である第2主面22とを有し、熱伝導材料からなるベース部材2と、第2主面22上に、互いに隣接させて整列配置した複数のフィン3、
図1では5つのフィン3-1~3-5とを備えている。また、各フィン3は、第2主面22に面して配設される基部31と、基部31の一端に位置する屈曲部32から、第2主面22から離れる方向に延在するフィン本体部33とを有する。
【0016】
図2は、本発明の第1の実施形態のヒートシンク1の隣り合う2つのフィンを示した概略側面図である。
図2に示されるように、複数のフィン3-1~3-5のうちの隣接する2つのフィン同士3-1、3-2で見て、一のフィン3-1を構成する基部31-1の他端部34-1と、他のフィンを構成する屈曲部32-2と、ベース部材2の第2主面22とで形成される略断面T字状の界面に接合部4-1を少なくとも有する。
【0017】
本発明者らの検討の結果、各フィン3-1、3-2の基部31-1、31-2は、ベース部材2と必ずしもその全面で接合する必要はなく、一のフィン3-1を構成する基部31-1の他端部34-1と、他のフィン3-2を構成する屈曲部32-2と、ベース部材2の第2主面22とで形成される接合部4-1で接合さえすれば、発熱体からの熱が、ベース板を通じて隣接するフィン全体にわたって伝達されて放熱する構造が得られ、特許文献1のように、各フィン3-1、3-2の基部の下面とベース部材の第2主面との接合面積を増やさなくても、熱伝導性を有効に高めることができることが分かった。そして、このようなヒートシンク1によれば、金型を用いて鋳造したいわゆるダイカストモデルのヒートシンクと比較しても、優れた放熱性を示すことが分かった。
【0018】
すなわち、接合部4-1以外で、基部31-1はベース部材2と接合されていてもされていなくてもよい。勿論、接合部4-1以外でもフィン3-1の基部31-1をベース部材2と接合したヒートシンクは、接合部4-1のみを接合したヒートシンクに比べて、放熱性は若干高まる。これは、接合部4-1のみを接合したヒートシンクは、接合部4-1以外の基部31-1の下面の一部が、ベース部材1の第2主面に対してナノオーダーからミリオーダーで部分的に非接触となっているためと考えられるが、各フィン3―1~3-5のそれぞれの基部31-1の下面を、個々に溶接する作業時間を省略できることを考慮すれば、短時間の接合時間で優れた放熱性を有するヒートシンクを効率よく製造することができる点で有利である。
【0019】
第1の実施形態におけるヒートシンク1では、フィン3は、基部31とフィン本体部33とのなす角度が略90°である。フィン3において、このように基部31とフィン本体部33とのなす角度が略90°であることにより、フィンの枚数を減らすことなく、直方体形状である筐体(ダクトなど)に収容させることができる。尚、ここでいう「略90°」とは、製造時の寸法誤差等を考慮して、90°±5°の範囲を意味する。
【0020】
また、
図1に示すヒートシンク1では、フィン3は、基部31とフィン本体部33とのなす角度がいずれも同じである場合を示している。このように、フィン3は、基部31とフィン本体部33とのなす角度がいずれも同じであることにより、全体で熱の偏りがなく、熱溜りの発生を防止することができる。また、後述する製造方法で製造する場合には、基部31とフィン本体部33とのなす角度がいずれも同じであることにより、一体接合部4を設ける際のレーザーを打ち込むスペースが等間隔になり、成形性が高くなる。
【0021】
ベース部材2を構成する材料は、熱伝導性を有する材料、すなわち25℃における熱伝導率が10Wm-1K-1以上である材料であれば特に限定されず、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、SUSなどであってよい。
【0022】
フィン3を構成する材料は、熱伝導性を有する材料、すなわち25℃における熱伝導率が10Wm-1K-1以上である材料であれば特に限定されず、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、SUSなどであってよい。なお、フィン3を構成する材料は、上述したベース部材2と必ずしも同じ組成成分でなくてもよいが、効率的な熱伝導の観点から、フィン3を構成する材料は、上述したベース部材2と同じ組成成分を有することが好ましい。
【0023】
一体接合部4の形状は、一体化の具体的な手法によっても異なるため特に限定されず、
図1に示すような三角形の形状には限られない。また、略三角形であったとしても、その角度および向きは限定されない。なお、レーザー照射による溶接にて一体化する場合には、略三角形となることが多いが、その方向については、レーザー照射の方向によって異なる。この詳細については後述する。
【0024】
一体接合部4を構成する材料は、熱伝導性を有する材料であれば特に限定されず、アルミニウム、銅などであってよい。また、一体接合部4は、ベース部材2を構成する材料およびフィン3を構成する材料のうちの少なくとも一方の材料に含まれる組成成分を有することが好ましく、ベース部材2を構成する材料およびフィン3を構成する材料の両方に含まれる組成成分を有することがより好ましい。一実施形態において、ベース部材2を構成する材料およびフィン3を構成する材料が溶融されて、両材料に含まれる組成成分が溶接されていることが好ましい。また、ベース部材2を構成する材料、フィン3を構成する材料および一体接合部4を構成する材料は、効率的な熱伝導の観点から、いずれも同じ組成成分を有することが好ましい。
【0025】
以上では、フィン3において、基部31とフィン本体部33とのなす角度が略90°である例について示したが、フィンは、基部とフィン本体部とのなす角度が90°未満であってもよい。以下、このような実施形態について、具体例を挙げて説明する。
図3は、本発明の第2の実施形態のヒートシンクの概略斜視図である。また、
図4は、本発明の第2の実施形態のヒートシンク1Aの2つの隣り合うフィンを示した概略側面図である。なお、第2の実施形態のヒートシンクと、第1の実施形態のヒートシンクとは、基部とフィン本体部とのなす角度のみが異なるものである。また、
図3および
図4に付した第2の実施形態のヒートシンクの各部の符号は、
図1および
図2に付した第1の実施形態のヒートシンクの各部の符号に「A」を加えたものであり、数字が同じものであれば、同じ部位を意味する。
【0026】
このヒートシンク1Aにおいて、フィン3Aは、基部31Aとフィン本体部33Aとのなす角度が90°未満である。フィン3Aにおいて、このように基部31Aとフィン本体部33Aとのなす角度が90°未満であることにより、例えば後述する製造方法において製造する場合に、ベース部材2Aに対して垂直方向にレーザーを照射することができるので、作業性を高めやすい(
図8参照。詳細は後述する。)。
【0027】
また、複数のフィンは、基部とフィン本体部とのなす角度が90°未満である第1フィンと、基部とフィン本体部とのなす角度が90°以上である第2フィンとで構成されていてもよい。以下、このような実施形態について、具体例を挙げて説明する。
図5は、本発明の第3の実施形態のヒートシンクの概略斜視図である。また、
図6は、本発明の第3の実施形態のヒートシンク1Bの隣り合う3つのフィンを示した概略側面図である。なお、第3の実施形態のヒートシンクと、第1の実施形態のヒートシンクとは、基部とフィン本体部とのなす角度のみが異なるものである。また、
図5および
図6に付した第3の実施形態のヒートシンクの各部の符号は、
図1および
図2に付した第1の実施形態のヒートシンクの各部の符号に「B」を加えたものであり、数字が同じものであれば、同じ部位を意味する。
【0028】
本実施形態のヒートシンク1Bでは、
図5に示すように、複数のフィン3B-1~3B-5が、基部とフィン本体部とのなす角度が90°未満である第1フィン3B-1、3B-3、3B-5と、基部とフィン本体部とのなす角度が90°以上である第2フィン3B-2,3B-4とで構成されている場合を示している。このように複数のフィン3B-1~3B-5が、第1フィン3B-1、3B-3、3B-5と、第2フィン3B-2、3B-4とで構成されることにより、例えば後述する製造方法において製造する場合に、
図6および
図8(c)に示すように、2つのフィン3B-2およびフィン3B-3のフィン本体部33B-2およびフィン本体部33B-3とで区画されるスペースから、レーザー照射方向を変えてレーザーを照射することによって、2箇所の一体接合部4B-1および4B-2を形成することができるため、加工速度を上げることができるという利点や、歪みが少なくなるという利点を有する(
図8参照。詳細は後述する。)。なお、ヒートシンクを側面視した場合において、フィン本体部がベースプレートの端部よりも外方へ出ないことが好ましい。例えば、ヒートシンク1Bでは、ベースプレート2Bの端部に最も近いフィン本体部33B-1を有するフィン3B-1においては、基部31B-1とフィン本体部33B-1のなす角度は90°未満である。このように基部31B-1とフィン本体部33B-1のなす角度を90°未満とすることにより、立方体形のダクトに収納でき、省スペース化を図ることができる。なお、ヒートシンク1Bにおいて、ヒートシンク1やヒートシンク1Aと異なり、一体接合部4Bが上部から下部に向かって広がっている理由は、上述したとおり、より溶接のためのレーザー照射の方向の違いを意図したものであり、詳細は後述する。
【0029】
2.ヒートシンクの製造方法
本発明のヒートシンクの製造方法は、上述したいずれかのヒートシンクの製造方法であって、ベース部材の第2主面上に、複数のフィンを互いに隣接させて整列配置する工程と、整列配置した複数のフィンを、隣接する2つのフィン同士で見て、一のフィンを構成する基部の他端部と、他のフィンを構成する屈曲部と、一のフィンの基部の他端部および他のフィンを構成する屈曲部に面するベース部材の第2主面とを、レーザー溶接で同時に接合して一体接合部を形成する工程とを含む。
【0030】
初めに、第1の実施形態のヒートシンクの製造方法について
図7を用いて説明する。
図7は、第1の実施形態のヒートシンクの製造方法について説明するための概略模式図である。はじめに、ベース部材2の第2主面22上に、複数のフィン3-1~3-5を互いに隣接させて整列配置する(
図7(a)~(b))。次に、このようにして整列配置した複数のフィン3-1~3-5を、隣接する2つのフィン同士で見て(以下、3-1、3-2の場合について説明する。)、一のフィン3-1を構成する基部31-1の他端部34-1と、他のフィン3-2を構成する屈曲部32-2と、一のフィン3-1の基部31-1の他端部34-1および他のフィン3-2を構成する屈曲部32-2に面するベース部材2の第2主面22とを、レーザー光Lを走査しながら照射するレーザー溶接によって、短時間で一体接合部4-1を形成することができる(
図7(b)~(d))。
【0031】
このようにして、一のフィン3-1を構成する基部31-1の他端部34-1と、他のフィン3-2を構成する屈曲部32-2と、一のフィン3-1の基部の他端部34-1および他のフィン3-2を構成する屈曲部32-2に面するベース部材2の第2主面22の少なくともいずれかをレーザー照射によって溶融することによって、溶接してこれらを同時に接合することで、上述したいずれかのヒートシンクを製造することができる。そして、このようなヒートシンクによれば、優れた熱伝導率を示す。
【0032】
上述した第1~第3の実施形態のヒートシンクの製造方法について、基部とフィン本体部とのなす角度がレーザーの打ち込みに及ぼす影響を説明する。
図8は、第1~第3の実施形態のヒートシンクの製造方法について、基部とフィン本体部とのなす角度がレーザーの打ち込みに及ぼす影響を説明するための概略模式図である。
【0033】
図8(a)は、第1の実施形態のヒートシンクを製造する際のレーザー照射位置を模式的に示した図である。このように、第1の実施形態のヒートシンクを、レーザーLを照射するレーザー溶接法で製造する場合には、ベース部材2に対して斜めにレーザーを打ち込む必要がある。
【0034】
図8(b)は、第2の実施形態のヒートシンクを製造する際のレーザー照射位置を模式的に示した図である。このように、第2の実施形態のヒートシンクを、レーザー溶接法で製造する場合には、ベース部材2Aに対して垂直にレーザーを打ち込んでもよい(なお、レーザーの走査方向(フィン本体部の延在方向)には垂直でなく傾くこともある。)。通常は、ベース部材2Aを水平方向に置いてレーザー溶融の作業を行うため、このように垂直方向からレーザーを打ち込むことができるのは、作業性を高めやすく、また処理を自動化する観点からも、有用である。
【0035】
図8(c)は、第3の実施形態のヒートシンクを製造する際のレーザー照射位置を模式的に示した図である。このように、第3の実施形態のヒートシンクを、レーザー溶接法で製造する場合には、2回のレーザー照射を同じ区画に角度を変えて行うことができるので、加工速度を上げることができるという利点や、歪みが少なくなるという利点を有する。なお、上述した第1および第2の実施形態のヒートシンクの製造方法と同様に、1回のレーザー照射で1つの屈曲部にレーザー照射をしてもよい。
【0036】
なお、レーザーは、ベース部材の面のうち、フィンが配置された側の面(第2主面22B)と異なる面(第1主面21B)に照射してもよい。
図9は、第3の実施形態のヒートシンクの製造方法について説明するための概略模式図である。
図9に示すようにレーザーを照射すると、
図5に示すような向きの三角形状の一体接合部4Bが得られる。
【0037】
3.ベーパーチャンバーへの応用
以上で説明したヒートシンクは、例えばベーパーチャンバーに応用することができる。具体的に、このような実施形態のヒートシンクにおいて、ベース部材は、熱伝導材料からなる2枚の熱伝導板で構成されたべーパーチャンバーである。
図10は、ベーパーチャンバーに応用する実施形態のヒートシンクおよびその製造方法を説明するための模式図である。
【0038】
この実施形態のヒートシンクの製造方法において、ベース部材は、熱伝導材料からなる2枚の熱伝導板で構成されたべーパーチャンバー2C―1、2C-2である。そして、フィン3C-1、3C-2、3C-3は、基部が、ベース部材の第1主面22Cにレーザー(L1、L2)溶接し接合され、2枚の熱伝導板2C-1、2C-2は、第1熱伝導板2C-1または2C-2の外面側から、レーザー(L3)溶接されて接合されるものとする。
【0039】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において自由に変更することができる。
【0040】
[実施例]
以下、本発明について実施例を示してより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0041】
〔供試材の作製(解析モデル)〕
(実施例1)
板状のベース部材(厚さ0.5mm)の一方の主面の中央部にヒーターを配置した。一方、ベース部材の他の主面に、側面視L字型の13枚のフィン(フィン本体部:厚さ0.5mm、基部:厚さ0.5mm)を整列配置した。次いで、隣接する2つのフィン同士で見て、一のフィンを構成する基部の他端部と、他のフィンを構成する屈曲部と、ベース部材の第2主面とで形成される略断面T字状の界面1mm幅の範囲をフィンの長辺方向と平行方向にレーザー接合し、ヒートシンク供試材を得た。ベース部材およびフィンとしては、アルミニウムを用いた。なお、レーザー接合を行った部分以外、マイクロ~ナノオーダーの隙間が存在している。
【0042】
(実施例2)
レーザー接合の位置を、隣接する2つのフィン同士で見て、一のフィンを構成する基部の他端部と、他のフィンを構成する屈曲部と、ベース部材の第2主面とで形成される境界位置に一体接合部を有する、フィンの基部全面をレーザー接合した以外、実施例1と同様にして供試材を得た。
【0043】
(比較例1)
レーザー接合の位置を、隣接する2つのフィン同士で見て、一のフィンを構成する基部の他端部と、他のフィンを構成する屈曲部と、ベース部材の第2主面とで形成される境界位置に一体接合部を有しない、フィンの基部の中央部1mm幅の範囲をフィンの長辺方向と平行方向にレーザー接合した以外、実施例1と同様にして供試材を得た。
【0044】
(比較例2)
板状のベース部材(厚さ0.5mm)から、13枚のフィン(厚さ0.5mm)が、ベース部材の表面から離れる方向に延在し、かつそれぞれが平行に配置される形状の材(ダイカスト法で製造されるものを想定)について、熱解析を行い、このような形状の熱抵抗を算出した。なお、ベース部材の大気さ、フィンの大きさ、フィン間の間隔は、実施例1と同様とした。ベース部材およびフィンは、アルミニウムとした。
【0045】
〔評価〕
室温20℃に調整された室内に、実施例1~2および比較例1の供試材を置き、ヒーターからベース板への入熱を10Wとし、熱抵抗を測定(算出)した。結果を下記表1に示す。
【0046】
【符号の説明】
【0047】
1,1A,1B
2,2A,2B,2C ベース部材
2D-1,2D-2 べーパーチャンバー
21,21A,21B 第1主面
22,22A,22B 第2主面
3,3-1,3-2,3-3,3-4,3-5,3A,3A-1,3A-2,3B-1,3B-2,3B-3,3B-4,3B-5,3C-1,3C-2,3C-3 フィン
31,31-1,31-2,31A,31A-1,31A-2,31B,31B-1,31B-2,31B-3,31B-3,31B-4,31B-5 基部
32,32-1,32-2,32A,32A(1),32A(2) 屈曲部
33,33A,33B,33B-1,33B-2,33-B3 フィン本体部
34,34-1,34-2,34A,34A-1,34A-2,34B,34B-1,34B-2,34B-3 他端部
4,4-1,4A,4A-1,4B-1 一体接合部
B1,B2,B3 溶接ビード
L,L1,L2,L3 レーザー