(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】電流センサおよび電流センサの製造方法
(51)【国際特許分類】
G01R 15/20 20060101AFI20240116BHJP
【FI】
G01R15/20 C
(21)【出願番号】P 2020084150
(22)【出願日】2020-05-12
【審査請求日】2023-02-10
(31)【優先権主張番号】P 2019128714
(32)【優先日】2019-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】303046277
【氏名又は名称】旭化成エレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健治
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 健司
【審査官】島▲崎▼ 純一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-179994(JP,A)
【文献】国際公開第2015/198609(WO,A1)
【文献】特開2018-116047(JP,A)
【文献】特開2015-002211(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0304327(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電流センサであって、
一次側端子と、
第1磁気センサと、
前記一次側端子と同一の面上に配置され、前記一次側端子に接続される一次導体と、
平面視で、前記一次導体に対して前記第1磁気センサとは反対側に、前記第1磁気センサから離れて配置される信号処理ICと、
前記一次導体を跨いで、前記第1磁気センサと前記信号処理ICとを接続するワイヤと、を備え、
前記一次導体は、前記ワイヤに向かい合わない第1領域と、前記ワイヤに向かい合う第2領域とを有し、
前記第2領域の高さは、前記第1領域より低
く、
前記一次導体は、当該電流センサの第1辺に沿って配置された第1の前記一次側端子および第2の前記一次側端子の間に被測定電流を流すように構成され、
前記一次導体は、第1の前記一次側端子の配列方向に沿って配設される第1の脚部と、第2の前記一次側端子の配列方向に沿って配設される第2の脚部と、前記第1の脚部および前記第2の脚部の間に接続され、前記平面視で前記第1磁気センサの3辺を囲む曲部と、を有し、
前記曲部は、前記第1領域の少なくとも一部を含む
電流センサ。
【請求項2】
電流センサであって、
一次側端子と、
第1磁気センサと、
前記一次側端子と同一の面上に配置され、前記一次側端子に接続される一次導体と、
平面視で、前記一次導体に対して前記第1磁気センサとは反対側に、前記第1磁気センサから離れて配置される信号処理ICと、
前記一次導体を跨いで、前記第1磁気センサと前記信号処理ICとを接続するワイヤと、を備え、
前記一次導体は、前記ワイヤに向かい合わない第1領域と、前記ワイヤに向かい合う第2領域とを有し、
前記第2領域の高さは、前記第1領域より低く、
前記第1磁気センサ、前記信号処理IC、前記ワイヤ、前記一次側端子の一部、および前記一次導体は、パッケージとして封止され、
前記一次導体は、前記パッケージの外部に露出しない
電流センサ。
【請求項3】
電流センサであって、
一次側端子と、
第1磁気センサと、
前記一次側端子と同一の面上に配置され、前記一次側端子に接続される一次導体と、
平面視で、前記一次導体に対して前記第1磁気センサとは反対側に、前記第1磁気センサから離れて配置される信号処理ICと、
前記一次導体を跨いで、前記第1磁気センサと前記信号処理ICとを接続するワイヤと、を備え、
前記一次導体は、前記ワイヤに向かい合わない第1領域と、前記ワイヤに向かい合う第2領域とを有し、
前記第2領域の高さは、前記第1領域より低く、
前記一次側端子と前記第1領域との高さの差が、前記第1領域と前記第2領域との高さの差よりも小さい
電流センサ。
【請求項4】
電流センサであって、
一次側端子と、
第1磁気センサと、
前記一次側端子と同一の面上に配置され、前記一次側端子に接続される一次導体と、
平面視で、前記一次導体に対して前記第1磁気センサとは反対側に、前記第1磁気センサから離れて配置される信号処理ICと、
前記一次導体を跨いで、前記第1磁気センサと前記信号処理ICとを接続するワイヤと、を備え、
前記一次導体は、前記ワイヤに向かい合わない第1領域と、前記ワイヤに向かい合う第2領域とを有し、
前記第2領域の高さは、前記第1領域より低く、
前記一次側端子と前記第1領域との高さの差は、20μm以上であり、かつ、前記一次側端子の高さの40%以下である
電流センサ。
【請求項5】
複数の前記ワイヤを備え、
複数の前記ワイヤのうちの一のワイヤに向かい合う前記第2領域と、他のワイヤに向かい合う前記第2領域の高さは、前記第1領域より低い、請求項1
から4のいずれか一項に記載の電流センサ。
【請求項6】
前記第1磁気センサ、前記信号処理IC、前記ワイヤ、前記一次側端子の一部、および前記一次導体は、パッケージとして封止される請求項1
、3、および4のいずれか一項に記載の電流センサ。
【請求項7】
前記第1磁気センサおよび前記信号処理ICは、前記パッケージの外部に露出しない請求項
2または6に記載の電流センサ。
【請求項8】
前記第1磁気センサはホール素子である請求項
2、6、および7のいずれか一項に記載の電流センサ。
【請求項9】
前記ホール素子は、化合物半導体チップであり、
前記信号処理ICは、シリコンチップである
請求項
8に記載の電流センサ。
【請求項10】
前記パッケージは、樹脂外形からリードが突出しないリードレス構造である請求項
2、および6から
9のいずれか一項に記載の電流センサ。
【請求項11】
二次側ワイヤを介して前記信号処理ICに接続される、前記面上に配置された二次側端子を更に備え、
前記二次側端子は、前記信号処理ICの高さより高い第3領域を含む請求項1から10のいずれか一項に記載の電流センサ。
【請求項12】
前記二次側端子における、前記二次側ワイヤが接続される第4領域は、前記第3領域より低く、
前記第3領域と前記第4領域との高さの差は、前記第1領域と前記第2領域との高さの差および前記一次側端子と前記第1領域との高さの差の和と実質的に同一である請求項11に記載の電流センサ。
【請求項13】
前記信号処理ICは、前記平面視において前記一次導体および前記二次側端子の間に配置される請求項11または12に記載の電流センサ。
【請求項14】
前記一次導体は、当該電流センサの第1辺に沿って配置された第1の前記一次側端子および第2の前記一次側端子の間に被測定電流を流すように構成され、
前記第1磁気センサは、該第1磁気センサの
3辺が前記平面視で前記一次導体に囲まれる位置に配置される請求項
2から
4のいずれか一項に記載の電流センサ。
【請求項15】
前記平面視で前記一次導体および前記第1辺により囲まれる領域の外側に配置された第2磁気センサを更に備える請求項
1または14に記載の電流センサ。
【請求項16】
前記信号処理ICは、樹脂のみによって支持される請求項1から15のいずれか一項に記載の電流センサ。
【請求項17】
請求項1から16のいずれか一項に記載の電流センサの製造方法であって、
前記一次導体の面に、エッチングにより前記第1領域と前記第2領域との高さの差を形成し、エッチングまたはコイニングにより前記一次側端子と前記第1領域との高さの差を形成する
製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流センサおよび電流センサの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電流センサとして、被測定電流によって発生する磁場に応じた信号を出力する磁気センサを用いて、被測定電流を検出する電流センサが知られている。例えば、特許文献1および特許文献2には、被測定電流を入出力するための端子、端子に接続され、被測定電流が流れる導体および導体に近接して配置される磁気センサを有する電流センサが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-045634号公報
【文献】特開2018-179994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
たとえば特許文献2において、電流が流れる導体は、電流センサのパッケージ表面に露出する端子部分以外が薄肉化され、パッケージの内部に収容されている。その結果、導体は、大きな抵抗を有していた。これにより、電流センサに大きな電流が流れた場合に、導体から生じる発熱は大きく、電流の検出精度に問題が生じていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様においては、電流センサであって、一次側端子と、第1磁気センサと、一次側端子と同一の面上に配置され、一次側端子に接続される一次導体と、平面視で、一次導体に対して第1磁気センサとは反対側に、第1磁気センサから離れて配置される信号処理ICと、一次導体を跨いで、第1磁気センサと信号処理ICとを接続するワイヤと、を備え、一次導体は、ワイヤに向かい合わない第1領域と、ワイヤに向かい合う第2領域とを有し、第2領域の高さは、第1領域より低い、電流センサを提供する。
【0006】
電流センサは、複数のワイヤを備え、複数のワイヤのうちの一のワイヤに向かい合う第2領域と、他のワイヤに向かい合う第2領域の高さは、第1領域より低くてよい。第1磁気センサ、信号処理IC、一次側ワイヤ、一次側端子の一部、および一次導体は、パッケージとして封止されてよい。
【0007】
第1磁気センサおよび信号処理ICは、パッケージの外部に露出しなくてよい。
【0008】
一次導体は、パッケージの外部に露出しなくてよい。
【0009】
第1磁気センサはホール素子であってよい。
【0010】
ホール素子は、化合物半導体チップであってよい。信号処理ICは、シリコンチップであってよい。
【0011】
パッケージは、樹脂外形からリードが突出しないリードレス構造であってよい。
【0012】
一次側端子と第1領域との高さの差が、第1領域と第2領域との高さの差よりも小さくてよい。
【0013】
一次側端子と第1領域との高さの差は、20μm以上であり、かつ、一次側端子の高さの40%以下であってよい。
【0014】
電流センサは、二次側ワイヤを介して信号処理ICに接続される、面の上に配置された二次側端子を更に備え、二次側端子は、信号処理ICの高さより高い第3領域を含んでよい。
【0015】
二次側端子における、二次側ワイヤが接続される第4領域は、第3領域より低く、第3領域と第4領域との高さの差は、第1領域と第2領域との高さの差および一次側端子と第1領域との高さの差の和と実質的に同一であってよい。
【0016】
信号処理ICは、平面視において一次導体および二次側端子の間に配置されてよい。
【0017】
一次導体は、当該電流センサの第1辺に沿って配置された第1の一次側端子および第2の一次側端子の間に被測定電流を流すように構成されてよい。第1磁気センサは、平面視で一次導体に囲まれる位置に配置されてよい。
【0018】
電流センサは、平面視で一次導体および第1辺により囲まれる領域の外側に配置された第2磁気センサを備えてよい。
【0019】
信号処理ICは、樹脂のみによって支持されてよい。
【0020】
本発明の第2の態様においては、電流センサの製造方法を提供する。製造方法は、一次導体の面に、エッチングにより第1領域と第2領域との高さの差を形成し、エッチングまたはコイニングにより一次側端子と第1領域との高さの差を形成する段階を備えてよい。
【0021】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本実施形態に係る電流センサの内部構造の平面図および概略断面図を示す。
【
図2】本実施形態に係る電流センサの製造工程のフローを示す。
【
図3】電流センサの製造工程を説明するための平面図および概略断面図を示す。
【
図4】電流センサの製造工程を説明するための平面図および概略断面図を示す。
【
図5】電流センサの製造工程を説明するための平面図および概略断面図を示す。
【
図6】電流センサの製造工程を説明するための平面図および概略断面図を示す。
【
図7】電流センサの製造工程を説明するための平面図および概略断面図を示す。
【
図8】電流センサの製造工程を説明するための平面図および概略断面図を示す。
【
図9】複数の電流センサを構成するパッケージをダイシングする状態を示す。
【
図10】本実施形態の第1変形例に係る電流センサの内部構造の平面図および概略断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0024】
図1は、本実施形態に係る電流センサ100の構造を示す。
図1の(A)は、電流センサ100の内部構造の平面図を示す。
図1の(B)は、(A)における基準線AAに関する電流センサ100の概略断面図を示す。電流センサ100は、導体に流れる被測定電流によって発生する磁場に応じて磁気センサから出力される信号を用いて、被測定電流を検出する。なお、
図1をはじめとする概略断面図において、切断面を斜線で示す。なお、
図1に示すように、電流センサ100の底面を第1面1とし、第1面1とは反対の面(上面)を第2面2とする。また、第1面1と垂直な方向を第1方向、第1方向と直交する方向を第2方向、並びに第1方向および第2方向と直交する方向を第3方向とする。また、電流センサ100の第1面1の第2方向に対向する辺のうちの1辺を第1辺とする。なお、上記の「上面」および「底面」等の用語は、
図1に示した状態を基準として便宜上名付けたものであり、基板等に対する電流センサ100の実装状態を示すものではない。本図の電流センサ100は、基板側に第2面2が向かうように、基板に実装されるものであり、基板側を「底面」とみれば、第2面2が底面、第1面1が上面となる。
【0025】
本図の平面図および断面図は、パッケージ60(第1および第2封止部材61,62)を透過して電流センサ100の内部構成を表している。電流センサ100は、複数の一次側端子16と、一次側ダミー端子17と、一次導体10と、第1磁気センサ30と、一次側ワイヤ51と、信号処理集積回路(IC)36と、二次側端子41と、二次側ワイヤ52と、パッケージ60とを備える。
【0026】
複数の一次側端子16は、一次導体10に接続され、外部(不図示)と一次導体10との間で被測定電流を流すための導電性端子である。本実施形態において、複数の一次側端子16は、電流センサ100の第1辺に沿って第3方向に互いに離隔して配設される。複数の一次側端子16は、平面視で第2方向の第1辺とは反対側の端において、一次導体10に接続される。各一次側端子16は、一例として、矩形状に成形される。複数の一次側端子16は、銅または銅を含む合金等の金属であってよい。複数の一次側端子16は、第1の一次側端子16aと、第2の一次側端子16bとを含み、第1の一次側端子16aから第2の一次側端子16bへ(または第2の一次側端子16bから第1の一次側端子16aへ)と被測定電流を流すように構成される。
【0027】
第1の一次側端子16aは、平面視で第3方向における第1辺の一方側(図中の上半分)に配設される。第2の一次側端子16bは、平面視で第3方向における第1辺の他方側(図中の下半分)に配設される。
【0028】
第1および第2の一次側端子16a,16bは、それぞれ電流センサ100の第2面2側の面と、第1辺側の面とが、パッケージ60の第2面2および第1辺側の面にそれぞれ面一に露出して、その他の面がパッケージ60に覆われる構成をとってよい。各一次側端子16の第2面2側の露出した面は、電流センサ100を例えば外部基板上に実装した際に、外部基板上に配設された配線等に半田により接合される。なお、複数の一次側端子16は、半田による外部基板との接合を容易にするために、少なくとも第2面2側の面にメッキが施されてよい。
【0029】
一次側ダミー端子17は、第1辺において、第1の一次側端子16aおよび第2の一次側端子16bの間に配置されてよい。一次側ダミー端子17は、一次導体10に接続されない。一次側ダミー端子17は、電流センサ100の外部との接合強度を向上するために設けられる。また、一次側ダミー端子17は、電流センサ100において第1辺側および第1辺と反対側の外部との接合部分を略対称にして、接合時のセルフアライメント性を向上させるために設けられる。一次側ダミー端子17は、複数の一次側端子16と同様に、一部をパッケージ60に露出させ、パッケージ60内に収容されている。一次側ダミー端子17は、複数の一次側端子16と同様の素材を有してよい。
【0030】
一次導体10は、電流センサ100により検出される電流(被測定電流と呼ぶ)が流れる導電性部材である。一次導体10は、一次側端子16と同一の面上に配置され、一次側端子16に接続され、電流センサ100の第1辺に沿って配置された第1の一次側端子16aおよび第2の一次側端子16bの間に被測定電流を流すように構成される。一次導体は、一次側ワイヤ51に向かい合わない第1領域と、一次側ワイヤ51に向かい合う第2領域とを有する。一次導体10は、銅または銅を含む合金等の非磁性金属であってよい。一次導体10は、第1の一次側端子16aに接続される脚部12aと第2の一次側端子16bに接続される脚部12bとを含む2つの脚部12と、2つの脚部12の間の曲部14を含む。
【0031】
脚部12aは、第1の一次側端子16aの配列方向(第3方向)に沿って配設される。脚部12aは、平面視で第2方向の第1辺側の端部において、複数の第1の一次側端子16aに接続される。脚部12bは、第2の一次側端子16bの配列方向(第3方向)に沿って配設される。脚部12bは、平面視で第2方向の第1辺側の端部において、複数の第2の一次側端子16bに接続される。各脚部12は、平面視で第3方向を長手とする略矩形状を有してよい。
【0032】
曲部14は、第2方向における第1辺側の端部において各脚部12と接続される。曲部14は、第1磁気センサ30および信号処理IC36の間を通り、平面視で第1磁気センサ30の少なくとも一部を囲うように形成される。たとえば、曲部14は、平面視で第1磁気センサ30の3辺に近接して、U字状に形成される。曲部14は、第2方向の第1辺側に向かって開口してよい。なお、曲部14は、2つの脚部12と一体的に形成されてよい。
【0033】
被測定電流は、第1の一次側端子16a(または第2の一次側端子16b)から入力され、第3方向の一方側の脚部12を介して曲部14を流れ、第3方向の他方側の脚部12を介して第2の一次側端子16b(または第1の一次側端子16a)から出力される。
【0034】
曲部14は、平面視において第1磁気センサ30および信号処理IC36の間に位置する第1段差18aが形成され、他の部分(すなわち、一次導体10の第1領域)に比べて高さが小さい第1段差形成部14a(すなわち、一次導体10の第2領域)を含む。一次側ワイヤ51が複数である場合、第1段差形成部14a(第2領域)は、一次導体10のうち、全ての一次側ワイヤ51に対して向かい合う範囲に設けられ、従って、複数の一次側ワイヤ51のうちの一の一次側ワイヤ51に向かい合う第2領域と、他の一次側ワイヤ51に向かい合う第2領域の高さは、第1領域より低くてよい。なお、一次側ワイヤ51が1つである場合、第1段差形成部14a(第2領域)は、当該一次側ワイヤ51に向かい合う一次導体10の範囲に線状に形成されてよい。第1段差形成部14aは、曲部14において電流センサ100の第1面1とは反対側の面(すなわち、第2面2)における一次側ワイヤ51と向かい合う部分に配置されてよく、当該部分において、曲部14における第1段差形成部14aを除く部分(第1領域)に対して第1面1側に凹む第1段差18aを形成してよい。なお、第1段差形成部14aは、平面視で第3方向における両端が第1辺に対して斜めに形成されてよい。第1段差形成部14aは、第1磁気センサ30と信号処理IC36とを後述する一次側ワイヤ51により接続する場合に、一次側ワイヤ51が1次導体10に接触することを防止する。曲部14における第1段差形成部14aを除く部分は、2つの脚部12と実質的に同じ高さを有してよい。すなわち、一次導体10における第1段差形成部14aを除く部分(第1領域)は、第1段差形成部14aよりも高く(厚く)形成されてよい。
【0035】
なお、一次導体10における第1段差形成部14aを除く部分(第1領域)は、複数の一次側端子16よりも低く形成されている。したがって、複数の一次側端子16は、一次導体10との接続部分(すなわち、各一次側端子16の第2方向の第1辺と反対側)において、一次導体10の脚部12よりも第1面1とは反対側に突出する第2段差18bが形成される。第2段差18bは、一次導体10がパッケージ60の表面に露出することを防ぐ。これにより、電流センサ100の1次側端子16と二次側端子41との間の第2面2に沿った絶縁距離(沿面距離)が大きくなり、電流センサ100の耐圧特性が向上する。その結果、電流センサ100の小型化が可能となる。また、一次導体10がパッケージ60の表面に露出しないため、1次側端子16の第2面2を外部基板上に実装する場合に、半田が1次導体10側に広がって付着することを防ぐ。これにより、実装するために十分な量の半田を1次側端子16の第2面2に供給することができる。
【0036】
ここで、第2段差18bの高さ(すなわち、一次側端子16と第1領域との高さの差)は、第1段差18aの高さ(すなわち、第1領域と第2領域との高さの差)よりも小さくてよい。これにより、一次導体10の肉厚部分の厚みの減少を抑制し、1次導体10の抵抗の増大を抑えることができる。また、第2段差18bの高さ(すなわち、一次側端子16と第1領域との高さの差)は、20μm以上であり、かつ、第1方向における一次側端子16の高さの40%以下であってよい。第2段差18bの高さは、20μm~160μm、好ましくは、40μm~100μmであってよい。これにより、パッケージ表面からの絶縁性を保ちつつ、一次導体10の肉厚部分の厚みを最大化することができる。
【0037】
第1磁気センサ30は、一次導体10に流れる電流により発生する磁場の磁束に応じた信号を信号処理IC36に出力するホール素子であってよい。ホール素子としては、InAsまたはGaAs等から構成される化合物半導体チップまたはシリコンチップであるホール素子等を採用することができる。また、第1磁気センサ30は、これに代えて、ホール素子と増幅回路が一体化されたホールICまたは磁気抵抗素子であってもよい。第1磁気センサ30は、矩形状であってよい。
【0038】
第1磁気センサ30は、一次側ワイヤ51を介して信号処理IC36に接続される。第1磁気センサ30は、曲部14の内側に形成される空間内に曲部14とは非接触で配置される。すなわち、第1磁気センサ30は、平面視で一次導体10に囲まれる位置に配置される。本図において第1磁気センサ30は、平面視で少なくとも3辺において一次導体10の曲部14に囲まれる位置に配置される。これにより、第1磁気センサ30は、一次導体10に流れる電流によって発生する磁束をより多く捉えることが可能となり、電流検出感度が向上する。また、第1磁気センサ30は、平面視で曲部14の対応する辺との間隔が一定となるように配置されてよい。これにより、磁気センサ30は、さらに多くの磁束を検出することができる。
【0039】
第1磁気センサ30は、第2面2側の面の四隅において、一次側ワイヤ51にそれぞれ接続するための端子を有する。
【0040】
図1において、第1方向における第1磁気センサ30の高さは、一次導体10の第1段差形成部14aの高さと実質的に同じであり、一次導体10の第1段差形成部14aを除く部分の高さより小さい。なお、第1方向における第1磁気センサ30の高さは、これに限らず、複数の一次側端子16の高さより小さければよい。たとえば、第1方向における第1磁気センサ30の高さは、第1段差形成部14aよりも小さくてもよい。
【0041】
なお、第1磁気センサ30は、第1方向に対向する面のうち少なくとも一方の面(すなわち、第1面1側および第2面2側の面の少なくとも一方)に磁性体メッキ等により形成された磁性体を有し、磁束を集めてよい。また、第1磁気センサ30は、第1方向に対向する面のうち少なくとも一方の面において、例えば銅またはアルミニウム等の非磁性導体を用いて静電シールドされ、パッケージ60外から来る静電ノイズを遮蔽してよい。
【0042】
1または複数の一次側ワイヤ51は、例えば銅や金のような金属等の導電体を用いて成形された線状部材である。一次側ワイヤ51は、一次導体10を跨いで、第1磁気センサ30と信号処理IC36とを電気的に接続する。一次側ワイヤ51は、第1磁気センサ30の複数の端子と信号処理IC36の複数の端子とをそれぞれ接続する複数のワイヤを含む。たとえば、一次側ワイヤ51の複数のワイヤは、第1磁気センサ30において第2面2側の面の四隅に配置する複数の端子と、信号処理IC36において第2面2側の面の第1辺側に配置する複数の端子とを、それぞれ接続する。一次側ワイヤ51は、平面視で第2方向に平行に延びるワイヤを有してもよく、第1辺に対して斜めに延びるワイヤを有してもよい。
【0043】
信号処理IC36は、シリコンチップ等の、信号を処理する素子である。信号処理IC36は、平面視で、一次導体10に対して第1磁気センサ30とは反対側に、第1磁気センサ30から離れて配置される。信号処理IC36は、平面視で第2方向において第1磁気センサ30と一次導体10を挟んで、第1磁気センサ30から離して配置され、一次側ワイヤ51を介して第1磁気センサ30に接続される。また、信号処理IC36は、二次側端子41から離して配置され、二次側ワイヤ52を介して、二次側端子41に接続される。信号処理IC36は、矩形状であってよい。
【0044】
信号処理IC36は、一次側ワイヤ51を介して第1磁気センサ30から受け取った信号を処理して、一次導体10に流れる電流の量を算出し、二次側ワイヤ52を介して二次側端子41に出力する。信号処理IC36は、たとえば第2面2側の面の第1辺側および第1辺と反対側に、複数の端子を有する。
【0045】
信号処理IC36は、第1磁気センサ30からの出力信号を増幅する増幅回路を有してもよい。また信号処理IC36は、感度補正回路、出力信号のオフセットを補正するオフセット補正回路、および温度に応じて出力信号を補正する温度補正回路等の補正回路を有してもよい。なお、補正回路は、補正係数等の補正パラメータを含んでよい。
【0046】
複数の二次側端子41は、信号処理IC36を駆動するための電源を供給し、信号処理IC36から出力される電流量の算出結果を外部デバイスに出力するための導電性端子である。複数の二次側端子41はまた、補正パラメータを設定するための信号を外部デバイスから信号処理IC36に入力するための導電性端子であってよい。複数の二次側端子41は、電流センサ100の第1辺と反対側の辺に沿って、第3方向に一定の間隔で並んで配設される。各二次側端子41は、一次側端子16と同一の面上に配置され、二次側ワイヤ52を介して信号処理IC36に接続される。各二次側端子41は、一例として、平面視で矩形状に成形される。
【0047】
各二次側端子41は、信号処理IC36の高さより高い第3領域を含み、第2方向において第1辺側の端部から所定の範囲の二次側ワイヤ52が接続される部分に第1面1側に下がる第3段差48を有し、他の部分(第3領域)に比べて高さが小さい第3段差形成部41a(すなわち、二次側端子41の第4領域)を含む。第3段差形成部41aは、信号処理IC36と実質的に同じ高さを有してよい。第3段差形成部41aは、二次側端子41における電流センサ100の第2面2側の面において第1面1側に凹む。これにより、信号処理IC36と各二次側端子41とが二次側ワイヤ52によって容易に接続されることができる。また、第3段差形成部41aにより、1次側端子16と2次側端子41との間の沿面距離が大きくなり、電流センサ100の耐圧特性が向上する。ここで、第1方向における第3段差48の高さ(第3領域と第4領域との高さの差)は、第1方向における第1段差18a(第1領域と第2領域との高さの差)および第2段差18b(一次側端子16と第1領域との高さの差)の和と実質的に同一であってよい。つまり、第1方向における第3段差形成部41aの高さは、第1方向における第1段差形成部14aの高さと実質的に同一であってよい。これにより、一回の段差加工処理で、第1段差形成部14aおよび第3段差形成部41aを形成することができる。
【0048】
各二次側端子41は、第2面2側の面の少なくとも一部(たとえば、第3段差形成部41aを除く部分)および第2方向に対向する面のうちの第1辺と反対側の面が、パッケージ60表面の第2面2および第2方向に対向する面のうち第1辺と反対側の面にそれぞれ面一に露出してよい。二次側端子41の第2面2側の露出した面は、電流センサ100を例えば外部基板上に実装した際に、外部基板上に配設された配線等に接合される。
【0049】
二次側ワイヤ52は、例えば銅や金のような金属等の導電体を用いて成形された線状部材である。二次側ワイヤ52は、信号処理IC36と二次側端子41とを電気的に接続する。二次側ワイヤ52は、複数のワイヤを含み、複数のワイヤは、信号処理IC36において第2面2側の面の第1辺と反対側に配置する複数の端子と複数の第3段差形成部41aとをそれぞれ接続する。
【0050】
パッケージ60は、電流センサ100が樹脂外形からリードが突出しないリードレス構造を有するように、複数の一次側端子16および複数の二次側端子41の一部を除く電流センサ100の各構成部を封止して保護する。ここで、パッケージ60は、第1磁気センサ30および信号処理IC36のそれぞれの外面全面を覆って、第1磁気センサ30および信号処理IC36を内部に収容する。それにより、第1磁気センサ30および信号処理IC36はそれぞれ、一次側端子16および一次導体10と絶縁される。なお、一次側端子16、一次導体10または二次側端子41は、パッケージ60に直接支持されて、覆われる。したがって、電流センサ100は、高い耐圧を得ることができる。また、第1磁気センサ30および信号処理IC36を支持するための別途のリードフレームが不要となることで、電流センサ100の小型化が可能となる。
【0051】
なお、パッケージ60は、例えば、エポキシなどの絶縁性の樹脂を用いてモールド成形することで、直方体状に成形されてよい。
【0052】
パッケージ60は、一次導体10、一次側端子16、第1磁気センサ30、信号処理IC36および二次側端子41の第2面2側(すなわち、上面側)を封止する第1封止部材61と、第1面1側(すなわち、底面側)を封止する第2封止部材62とを有する。第1封止部材61および第2封止部材62により、一次導体10は、全ての外面においてパッケージ60の外部に露出しない。また、第1磁気センサ30および信号処理IC36は、全ての外面においてパッケージ60の外部に露出しない。したがって、電流センサ100の耐圧特性はさらに向上し、電流センサ100の小型化および薄型化が容易となる。
【0053】
第1および第2封止部材61,62は、同一材料が好ましいが、それぞれ異なる材料であってもよい。また、第1および第2封止部材61,62の少なくとも一方は、無機物の材料であるフィラーを含む材料によって形成されてよい。
【0054】
このように、本実施形態によれば、電流センサ100は、一次導体10の第2面2側の面において一次側ワイヤ51に向き合う領域付近に第1段差18aを有するため、一次導体10の薄肉部分の面積を最小化することができる。これにより、第1磁気センサ30と信号処理IC36とのワイヤ接続スペースを確保しつつ、1次導体10の抵抗の増大を最小限に抑えることができる。したがって、通電時の一次導体10の発熱を低減することができる。その結果、電流センサ100に大きな電流が流れた場合においても、電流の検出精度の低下を抑制することが可能となる。
【0055】
本実施形態によれば、第2段差18bの高さは、20μm以上であり、第1方向における一次側端子16の高さの40%以下であるので、パッケージ表面からの外部ノイズに対して絶縁性を保ちつつ、一次導体10の肉厚部分の厚みを最大化し、一次導体10の抵抗の増大を最小化することができる。したがって、通電時の一次導体10の発熱を低減することができる。その結果、電流センサ100に大きな電流が流れた場合に、電流の検出精度の低下を防止することができる。
【0056】
本実施形態に係る電流センサ100の製造方法について説明する。
図2に、本実施形態に係る電流センサ100の製造工程のフローを示す。
【0057】
S102において、リードフレーム20,21に一次導体10、複数の一次側端子16、一次側ダミー端子17および複数の二次側端子41のパターンを形成し、第1の段差加工により、リードフレーム20,21に段差を形成する。
図3は、
図2のS102によって形成された状態を示す。すなわち、
図3は、一次導体10、複数の一次側端子16および一次側ダミー端子17のパターンを含み、第1段差形成部14aが形成されたリードフレーム20と、複数の二次側端子41のパターンを含み、第3段差形成部41aが形成されたリードフレーム21とを示す。
図3の(A)は、平面図であり、
図3の(B)は、(A)における基準線AAに関する概略断面図である。
【0058】
本実施形態において、リードフレーム20は、第1辺側に複数の一次側端子16および一次側ダミー端子17を、第1辺と反対側に脚部12および曲部14を含む一次導体10を有する。複数の一次側端子16および一次側ダミー端子17は、たとえば第1辺側の端部において互いに一体的に結合されてよい。本実施形態において、リードフレーム21は、平面視で第1辺と反対側の辺に沿って並ぶ複数の二次側端子41を有する。複数の二次側端子41はそれぞれ、第1辺と反対側の端部において一体的に結合されてよい。
【0059】
本実施形態において、フルエッチングにより金属板からリードフレーム20,21にパターンを形成し、ハーフエッチングによりリードフレーム20,21に段差18cおよび第3段差48をそれぞれ形成する。リードフレーム20,21のパターン形成加工および第1の段差加工は、同時に行われてよい。たとえば、金属板の面のうち、複数の一次側端子16、一次側ダミー端子17、一次導体10および複数の二次側端子41の第1面1側および第2面2側の両面をマスクする。ただし、これらの面のうち、第1段差形成部14aおよび第3段差形成部41aの第2面2側の面は、マスクされない。マスクした金属板をエッチング液に浸漬することで、複数の一次側端子16、一次側ダミー端子17、一次導体10および複数の二次側端子41以外の部分を除去する。また、一次導体10および複数の二次側端子41に、第1段差形成部14aおよび第3段差形成部41aをそれぞれ形成する。これにより、一次導体10および複数の二次側端子41に、段差18cおよび第3段差48をそれぞれ形成する。
【0060】
金属板の厚みは、たとえば0.4mmであってよい。段差18cの高さは、たとえば0.2mm以上0.25mm以下であってよい。第3段差48の高さは、たとえば0.2mm以上0.25mm以下であってよい。
【0061】
本実施形態によれば、一回のエッチング処理によって、複数の一次側端子16、一次側ダミー端子17、一次導体10および複数の二次側端子41のパターンと、第1段差形成部14aおよび第3段差形成部41aとが形成されるリードフレーム20,21を得ることができる。
【0062】
また、リードフレーム20,21のパターン形成加工および第1の段差加工は、別個に行われてもよい。たとえば、金属板のフルエッチングを行い、パターンを形成した後に、一部をハーフエッチングしてもよい。
【0063】
金属板のフルエッチングに代えて、金属板をプレス加工することにより、第1方向において金属板に貫通孔を形成し、一次導体10、複数の一次側端子16、一次側ダミー端子17および複数の二次側端子41のパターンを形成してもよい。また、金属板をプレス加工を用いて、リードフレーム20,21の外縁を形成し、エッチングを用いて、一次導体10、複数の一次側端子16、一次側ダミー端子17および複数の二次側端子41のパターンを形成してもよい。
【0064】
なお、
図3では、1つの電流センサ100を構成する1組のリードフレーム20,21を示したが、これは説明のための一例であり、複数の電流センサ100を構成する複数組のリードフレーム20,21が配置されてよい。このとき、複数組のリードフレーム20,21は、周期的に配置されるように形成されてよく、異なる電流センサ100を構成する隣り合うリードフレーム20,21は、互いに連結されてよい。
【0065】
S104において、第2の段差加工により、S102において形成されたリードフレーム20の一次導体10と一次側端子16との間に、第2段差18bを形成する。
図4は、
図2のS104によって形成された状態、すなわち、第2の段差加工により形成されたリードフレーム20,21を示す。
図4の(A)は、平面図であり、
図4の(B)は、(A)における基準線AAに関する概略断面図である。
【0066】
たとえば、S102によって形成されたリードフレーム20の一次導体10の面のうち第1段差形成部14aを除く部分にエッチングを行い、当該部分を薄くする。これにより一次導体10と複数の一次側端子16との各接続部分に第2段差18bを形成する。本エッチングにより、一次導体10における第1段差形成部14aと第1段差形成部14aを除く部分との間に、段差18cよりも第2段差18bの高さだけ小さい高さを有する第1段差18aが形成される。
【0067】
なお、第2段差18bは、一次導体10の面に対してエッチング又はコイニング等のプレス加工をすることにより形成されてもよい。
【0068】
リードフレーム21において、二次側端子41の第3段差形成部41aのワイヤ接続面に、例えば銀を用いてメッキ膜を設けてもよい。なお、後述するS112の封止部材によるリードフレーム20,21等の封止工程後に、リードフレーム20,21においてパッケージ60の表面に露出する部分に対し、たとえば錫等を用いて外装メッキ膜を設けてもよい。
【0069】
S106において、S104において形成されたリードフレーム20,21の第1面1側の面にシート状の支持部材70を貼り付ける。S108において、信号処理IC36と、第1磁気センサ30および二次側端子41とをワイヤボンディングする。
図5は、
図2のS106およびS108によって形成された状態、すなわちリードフレーム20,21、第1磁気センサ30および信号処理IC36が、支持部材70上に互いに離隔して配置され、信号処理IC36が、第1磁気センサ30および二次側端子41とワイヤで接続される状態を示す。
図5の(A)は、平面図であり、
図5の(B)は、(A)における基準線AAに関する概略断面図である。
【0070】
たとえば、S106において、リードフレーム20,21を、一次導体10の曲部14と複数の二次側端子41の先端とが対向するように支持部材70上に配置する。そして、支持部材70上に第1磁気センサ30および信号処理IC36をリードフレーム20,21に接触しないように設置する。第1磁気センサ30は、リードフレーム20における一次導体10の曲部14の内側に形成される空間内に曲部14から離隔して配置される。そして信号処理IC36は、平面視においてリードフレーム20の一次導体10および二次側端子41の間に、一次導体10および二次側端子41から離隔して配置される。支持部材70として、例えば、粘着層が形成された耐熱性の高いポリイミドテープ等を採用することができる。
【0071】
たとえば、S108において、S106において形成された第1磁気センサ30と信号処理IC36とを一次側ワイヤ51によりワイヤボンディングする。また、信号処理IC36と各二次側端子41の第3段差形成部41aとを二次側ワイヤ52によりワイヤボンディングする。
【0072】
S110において、S108により形成されたリードフレーム20、リードフレーム21、第1磁気センサ30、並びに信号処理IC36の第2面2側を第1封止部材61により封止する。
図6は、
図2のS110によって形成された状態、すなわちリードフレーム20,21、第1磁気センサ30および信号処理IC36の第2面2側が、第1封止部材61に覆われる状態を示す。
図6の(A)は、平面図であり、
図6の(B)は、(A)における基準線AAに関する概略断面図である。
【0073】
たとえば、支持部材70上に配置されたリードフレーム20,21、第1磁気センサ30および信号処理IC36を、開口を有する箱体状の型枠71内に収容する。なお、S102において複数の電流センサ100を構成する複数組のリードフレーム20,21を形成した場合は、1つの箱体状の型枠71内に複数組のリードフレーム20,21、第1磁気センサ30および信号処理IC36を収容してよい。
【0074】
次に板状の蓋体72を型枠71上に押しつけて型枠71の内部空間を閉じ、型枠71の貫通孔(不図示)を介して第1封止部材61を型枠71内に流し込む。なお、複数の一次側端子16、一次側ダミー端子17および複数の二次側端子41の第2面2側の面は、第1封止部材61が流れ込まないように、蓋体72の型枠71側の面に接触してよい。さらに、複数の一次側端子16、一次側ダミー端子17および複数の二次側端子の第2面2側の面への樹脂滲みを防止するために、たとえば耐熱シートで蓋体72の型枠71側の面を覆って、樹脂封止を行ってもよい。
【0075】
S112において、S110により形成された、第2面2側が封止されたリードフレーム20,21、第1磁気センサ30および信号処理IC36を含む第1封止体から支持部材70を除去する。
図7は、
図2のS112によって形成された状態、すなわち第1磁気センサ30および信号処理IC36の第1面1側の面が、第2封止部材62に覆われる状態を示す。
図7の(A)は、平面図であり、
図7の(B)は、(A)における基準線AAに関する概略断面図である。
【0076】
たとえば、第1封止部材61により第1封止体を型枠71から取り出し、上下を返して、第1封止体から支持部材70を剥がす。次に、リードフレーム20、リードフレーム21、第1磁気センサ30、および信号処理IC36の第1面1側を第2封止部材62により封止する。たとえば、第1封止体を上下を返したままの状態で支持部材70上に配置し、開口を有する箱体状の型枠73内に収容する。なお、S110において複数の電流センサ100を構成する複数組のリードフレーム20,21、第1磁気センサ30および信号処理IC36の上面側を封止した場合は、1つの箱体状の型枠73内にその封止体を収容する。
【0077】
次に開口を有する箱体状の蓋体74を、蓋体74の開口が型枠73の開口に対向するように型枠73上に押しつけて、2つの開口から形成される内部空間を閉じ、蓋体74の貫通孔(不図示)を介して第2封止部材62を内部空間に流し込む。なお、第1封止部材61の樹脂がガラス転移点以上となるように、型枠73を加熱してよい。これにより、第2封止部材62の境界部分の樹脂成分と第1封止部材61の境界部分の樹脂成分とは、一体化して硬化する。これにより、第1磁気センサ30、信号処理IC36、一次側ワイヤ51、複数の一次側端子16および一次側ダミー端子17の一部、並びに一次導体10は、パッケージ60として封止される。第1磁気センサ30および信号処理IC36は、外面全面が樹脂に覆われ、樹脂のみによって支持される。なお、複数の一次側端子16、一次側ダミー端子17および複数の二次側端子41の第2面2側の面は、パッケージ60の内部に封止されず、パッケージ60の第2面2からそれぞれ面一に露出する。
【0078】
S114において、S112において形成されたパッケージ60をダイシングする。
図8は、
図2のS114によって形成された状態、すなわちパッケージされたリードフレーム20,21、第1磁気センサ30および信号処理IC36が支持部材76上に配置された状態を示す。
図8の(A)は、平面図であり、
図8の(B)は、(A)における基準線AAに関する概略断面図である。
【0079】
たとえば、S112において形成されたパッケージ60を型枠73から取り出し、パッケージ60の上下を返し、支持部材76上に配置する。切断線Lに沿って、パッケージ60のうち、リードフレーム20の各一次側端子16および一次側ダミー端子17が互いに連結する部分並びにリードフレーム21の各二次側端子41が互いに連結する部分を、第1および第2封止部材61,62の外縁とともに切断する。それにより、複数の一次側端子16および一次側ダミー端子17の第1辺側の面と、複数の二次側端子41の第1辺と反対側の面は、パッケージ60の第1辺側の面および第1辺と反対側の面からそれぞれ面一に露出する。これにより、電流センサ100が完成する。
【0080】
本実施形態に係る電流センサ100の製造方法によれば、第2の段差加工において第1の段差加工でエッチングされた部分を除く部分を微小にエッチングまたはコイニングして第1および第2段差18a,18bを形成する。これにより、ワイヤ接続スペースを確保しつつ、一次導体10の厚みの減少を低減し、一次導体10の抵抗の増大を抑制する電流センサ100を短い処理時間で効率的に製造することができる。
【0081】
本実施形態に係る電流センサ100の製造方法によれば、リードフレーム20,21、第1磁気センサ30および信号処理IC36の第2面2側を第1封止部材61により封止した後、上下を返して、第1面1側を第2封止部材62により封止する。これにより、第1および第2封止部材61,62が一体化したパッケージ60を形成することができる。したがって、高耐圧特性を有する電流センサ100を製造することができる。
【0082】
なお、本実施形態においては、第1磁気センサ30および信号処理IC36がリードフレーム等によって支持されていない形態を示したが、第1磁気センサ30および信号処理IC36は、例えばリードフレーム上に載置されてもよい。
【0083】
また、電流センサ100は、一次側ダミー端子17を有していなくてもよい。
【0084】
図9は、複数の電流センサ100を構成するパッケージ60をダイシングする状態を示す。すなわち、
図9は、樹脂封止された複数の電流センサ100を構成する複数組のリードフレーム20,21、第1磁気センサ30および信号処理IC36を形成した場合のパッケージ60の内部構造の平面図と、切断線L1,L2とを示す。本図において、1枚の金属板(全体的なリードフレーム)から複数の電流センサ100のリードフレーム20,21が形成される。リードフレーム20,21は、第2方向および第3方向にそれぞれ複数組並んで配列する。隣接するリードフレーム20,21は、互いに端部を介して連結する。
【0085】
互いに連結する複数組のリードフレーム20,21は、
図2のS102~S104に示す工程と同様の工程によって、1枚の金属板から形成される。パッケージ60は、当該複数組のリードフレーム20,21を用いて、S106~S112に示す工程と同様の工程によって形成される。S114において、S112で形成されたパッケージ60を型枠73から取り出し、パッケージ60の上下を返し、支持部材76上に配置する。次に、切断線L1,L2に沿って、パッケージ60を第2方向および第3方向にそれぞれ切断する。なお、リードフレーム20,21にあらかじめアライメントマーク80を形成してよく、アライメントマーク80に従って、パッケージ60を切断してよい。これにより、個々の電流センサ100が完成する。
【0086】
このように、リードフレーム20,21を複数組配列させることで、パターン加工および段差加工を複数組単位でまとめて行うことができる。さらに本構成をとることで、複数の電流センサ100をまとめて個片化することができる。したがって、電流センサ100の大量生産が容易となる。
【0087】
図10は、本実施形態の第1変形例に係る電流センサ110の内部構造を示す。
図10の(A)は、電流センサ110の平面図であり、
図10の(B)は、(A)における基準線AAに関する電流センサ110の概略断面図である。
図10に示す電流センサ110は、
図1に示す電流センサ100とほぼ同様の構成および機能を有するが、一次導体10を有さず、一次導体11と、第2磁気センサ32と、一次側ワイヤ53とを有する点で相違する。なお、本図における
図1と同じ符号を示した構成要素は、基本的には
図1~
図9に示した説明と同様であるから、説明は省略する。
【0088】
一次導体11は、
図1の一次導体10と同様の構成および機能を有するが、形状が異なり、第1段差形成部15aを含む延設部15を有する点で相違する。
【0089】
延設部15は、第3方向において曲部14から延設して形成される。延設部15は、平面視で第2磁気センサ32の少なくとも一部を囲うように形成される。たとえば、延設部15は、平面視で第2磁気センサ32の2辺に近接して、L字状に形成される。ただし、延設部15は、端部において脚部12に接続されず、脚部12から離隔して配置される。したがって、延設部15は、被測定電流が流れない。延設部15は、第2磁気センサ32と信号処理IC36の間を通る。延設部15は、脚部12および曲部14とともに第3方向に向かって一部開口してよい。なお、延設部15は、曲部14と一体的に形成されてよい。
【0090】
第1段差形成部15aは、延設部15において平面視で第2磁気センサ32および信号処理IC36の間に位置する。第1段差形成部15aは、特に一次導体11において第2面2側の面における一次側ワイヤ53と向かい合う部分に配置されてよい。第1段差形成部15aは、一次導体11における2つの第1段差形成部14a,15aを除く部分に対して第1面1側に凹む第1段差18aを形成する。第1段差形成部15aは、平面視で第3方向における両端が第1辺に対して斜めに形成されてよい。第1段差形成部15aは、第2磁気センサ32と信号処理IC36とを一次側ワイヤ53により接続する場合に、一次側ワイヤ53が1次導体11に接触することを防止する。第1段差形成部15aは、第1段差形成部14aと同様の構成を有してよい。なお、第1段差形成部15aは、エッチング等の段差加工処理を用いて、第1段差形成部14aとともに形成されてよい。
【0091】
第2磁気センサ32は、第1磁気センサ30と同様の素子であってよい。第2磁気センサ32は、平面視で一次導体11、一次側端子16および第1辺により囲まれる領域の外側に配置される。第2磁気センサ32は、延設部15に囲まれる領域に延設部15から離れて配置される。延設部15に電流は流れないため、第1磁気センサ30の出力と第2磁気センサ32の出力との差分を取ることで、電流センサ110に対して外部から印加される外部磁場ノイズを除去することができる。また、電流が一次導体11の曲部14に流れることで発生する熱が延設部15に伝わるため、第2磁気センサ32は、第1磁気センサ30と近い温度環境下に置かれることになり、信号処理IC36で演算する温度補正処理が容易になる。
【0092】
図10において、第2磁気センサ32は、第1方向において第1磁気センサ30と実質的に同じ高さを有してよい。
【0093】
一次側ワイヤ53は、例えば銅や金のような金属等の導電体を用いて成形された線状部材である。一次側ワイヤ53は、第2磁気センサ32と信号処理IC36とを電気的に接続する。一次側ワイヤ53は、第2磁気センサ32の各端子と信号処理IC36の各端子とをそれぞれ接続する複数のワイヤを含む。たとえば、一次側ワイヤ53の複数のワイヤは、第2磁気センサ32において第2面2側の面の四隅に配置する複数の端子と、信号処理IC36において第2面2側の面の第1辺側に配置する複数の端子とを、それぞれ接続する。一次側ワイヤ53は、平面視で第2方向に平行に延びるワイヤを有してもよく、第1辺に対して斜めに延びるワイヤを有してもよい。
【0094】
本実施形態の第1変形例によれば、電流センサ110は、延設部15および第2磁気センサ32を有するため、一次導体11の周囲に生じる外部磁場等のノイズをキャンセルすることができる。
【0095】
本実施形態の第1変形例によれば、一次導体11は、延設部15を有するため、通電時に一次導体11に発生する熱の一部が延設部15に伝わる。その結果、電流センサ110の放熱性が向上する。
【0096】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0097】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0098】
1 第1面、2 第2面、10,11 一次導体、12,12a,12b 脚部、14 曲部、14a,15a 第1段差形成部、15 延設部、16 一次側端子、16a 第1の一次側端子、16b 第2の一次側端子、17 一次側ダミー端子、18a 第1段差、18b 第2段差、18c 段差、20、21 リードフレーム、30 第1磁気センサ、32 第2磁気センサ、36 信号処理IC、41 二次側端子、41a 第3段差形成部、48 第3段差、51,53 一次側ワイヤ、52 二次側ワイヤ、60 パッケージ、61 第1封止部材、62 第2封止部材、70,76 支持部材、71,73 型枠、72,74 蓋体、80 アライメントマーク、100、110 電流センサ