(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】光学積層体及び表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20240116BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20240116BHJP
B32B 9/00 20060101ALI20240116BHJP
B32B 9/04 20060101ALI20240116BHJP
G02B 1/115 20150101ALI20240116BHJP
G02F 1/1335 20060101ALI20240116BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
G02B5/30
B32B7/023
B32B9/00 A
B32B9/04
G02B1/115
G02F1/1335 510
G09F9/00 302
G09F9/00 313
G09F9/00 338
(21)【出願番号】P 2020195932
(22)【出願日】2020-11-26
【審査請求日】2020-12-25
【審判番号】
【審判請求日】2022-09-14
(31)【優先権主張番号】P 2020094775
(32)【優先日】2020-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】萩原 慎也
(72)【発明者】
【氏名】太田 裕史
(72)【発明者】
【氏名】福田 謙一
【合議体】
【審判長】神谷 健一
【審判官】井口 猶二
【審判官】廣田 健介
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-102179(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
G02B 1/115
G02F 1/1335
G09F 9/00
B32B 7/023
B32B 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示セル及び光学積層体を有し、
前記光学積層体は、偏光素子と、反射防止フィルムと、前記偏光素子の前記反射防止フィルム側の表面に積層された保護フィルムと、前記反射防止フィルムを前記保護フィルムに貼合する粘着剤層と、を有し、
前記光学積層体は、前記表示セルの視認側表面に、前記表示セル側から、前記偏光素子、前記反射防止フィルムの順に配置される向きで積層されており、
前記偏光素子は、含水率が、温度20℃相対湿度
30%の平衡含水率以上かつ温度20℃相対湿度
35%の平衡含水率以下であり、
前記反射防止フィルムは、温度40℃相対湿度90%の透湿度が20g/m
2・day以下であり、
前記粘着剤層は、貯蔵弾性率が0.050~0.170MPaであり、厚みが3~30μmである、表示装置。
【請求項2】
表示セル及び光学積層体を有し、
前記光学積層体は、偏光素子と、反射防止フィルムと、前記偏光素子の前記反射防止フィルム側の表面に積層された保護フィルムと、前記反射防止フィルムを前記保護フィルムに貼合する粘着剤層と、を有し、
前記光学積層体は、前記表示セルの視認側表面に、前記表示セル側から、前記偏光素子、前記反射防止フィルムの順に配置される向きで積層されており、
前記光学積層体は、含水率が、温度20℃相対湿度
30%の平衡含水率以上かつ温度20℃相対湿度
35%の平衡含水率以下であり、
前記反射防止フィルムは、温度40℃相対湿度90%の透湿度が20g/m
2・day以下であり、
前記粘着剤層は、貯蔵弾性率が0.050~0.170MPaであり、厚みが3~30μmである、表示装置。
【請求項3】
前記保護フィルムは厚みが10~55μmである、請求項1または2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記反射防止フィルムは、基材フィルムと前記基材フィルムの表面に設けられた反射防止層とを含み、
前記反射防止層は屈折率が異なる複数の薄膜からなる、請求項1~3のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項5】
前記反射防止層は、二酸化ケイ素(SiO
2)を主成分とする薄膜を含む、請求項4に記載の表示装置。
【請求項6】
前記反射防止層は、五酸化ニオブ(Nb
2O
5)または二酸化チタン(TiO
2)を主成分とする薄膜を含む、請求項4または5に記載の表示装置。
【請求項7】
前記反射防止層は、厚みが100nm~350nmである、請求項4~6のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項8】
前記反射防止フィルムは、前記基材フィルムと前記反射防止層との間に設けられたハードコート層をさらに有する、請求項4~7のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項9】
請求項1に記載の表示装置の製造方法であって、
前記偏光素子の含水率が温度20℃相対湿度
30%の平衡含水率以上かつ温度20℃相対湿度
35%の平衡含水率以下となるように調整する含水率調整工程を有する、光学積層体の製造工程を有する、製造方法。
【請求項10】
請求項2に記載の表示装置の製造方法であって、
前記光学積層体の含水率が温度20℃相対湿度
30%の平衡含水率以上かつ温度20℃相対湿度
35%の平衡含水率以下となるように調整する含水率調整工程を有する、光学積層体の製造工程を有する、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学積層体、表示装置及び光学積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置(LCD)は、液晶テレビだけでなく、パソコン、携帯電話等のモバイル、カーナビ等の車載用途などで広く用いられている。通常、液晶表示装置は、液晶表示セルの両側に粘着剤層で偏光素子を含む偏光板を貼合した液晶パネル部材を有し、バックライト部材からの光を液晶パネル部材で制御することにより表示が行われている。
【0003】
また、有機EL表示装置も近年、液晶表示装置と同様に、テレビ、携帯電話等のモバイル、カーナビ等の車載用途で広く用いられている。有機EL表示装置では、外光が金属電極(陰極)で反射され鏡面のように視認されることを抑止するために、有機EL表示セルの視認側表面に円偏光板(偏光素子とλ/4板を含む積層体、以下では単に偏光板ということがある)が配置される場合がある。
【0004】
偏光板は上記のように、液晶表示装置や有機EL表示装置の部材として、車に搭載される機会が増えてきている。車載用の表示装置に用いられる偏光板は、それ以外のテレビや携帯電話等のモバイル用途のものに比較して、湿熱環境や高温環境に曝されることが多く、湿熱耐久性及び高温耐久性が求められる。
【0005】
一方、車載用の表示装置は、カーナビ用途等で用いられる場合、タッチパネル機能が必要である。タッチパネルの中でも近年、オンセルやインセルの比率が上がってきており、この用途では、視認側の偏光板は最外表に配置されるため、上記の耐久性に加え、映り込み防止機能も必要である。
【0006】
特開2011-081219号公報(特許文献1)には、外光の映り込みを防止する目的で防眩層上にスパッタリング方式の多層構成の反射防止層を積層した防眩性ハードコートフィルムを用いることが開示されている(実施例1等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、偏光素子を含む光学積層体であって、車載用の表示装置に適しており、湿熱耐久性及び高温耐久性に優れている光学積層体、当該光学積層体を用いた表示装置、及び当該光学積層体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下の光学積層体、表示装置及び光学積層体の製造方法を提供する。
[1] 偏光素子と反射防止フィルムとを有する光学積層体であって、
前記偏光素子は、含水率が、温度20℃相対湿度20%の平衡含水率以上かつ温度20℃相対湿度48%の平衡含水率以下であり、
下記要件(i)及び下記要件(ii):
(i)前記反射防止フィルムは、温度40℃相対湿度90%の透湿度が20g/m2・day以下である、
(ii)前記偏光素子と前記反射防止フィルムとの間に、温度40℃相対湿度90%の透湿度が20g/m2・day以下である保護フィルムを有する、
の少なくとも一方を満たす、光学積層体。
[2] 偏光素子と反射防止フィルムとを有する光学積層体であって、
前記光学積層体は、含水率が、温度20℃相対湿度20%の平衡含水率以上かつ温度20℃相対湿度48%の平衡含水率以下であり、
下記要件(i)及び下記要件(ii):
(i)前記反射防止フィルムは、温度40℃相対湿度90%の透湿度が20g/m2・day以下である、
(ii)前記偏光素子と前記反射防止フィルムとの間に、温度40℃相対湿度90%の透湿度が20g/m2・day以下である保護フィルムを有する、
の少なくとも一方を満たす、光学積層体。
[3] 前記偏光素子と前記反射防止フィルムとの間に、保護フィルムを有する、[1]または[2]に記載光学積層体。
[4] 前記反射防止フィルムは、基材フィルムと前記基材フィルムの表面に設けられた反射防止層とを含み、
前記反射防止層は屈折率が異なる複数の薄膜からなる、[1]~[3]のいずれか1項に記載の光学積層体。
[5] 前記反射防止層は、二酸化ケイ素(SiO2)を主成分とする薄膜を含む、[4]に記載の光学積層体。
[6] 前記反射防止層は、五酸化ニオブ(Nb2O5)または二酸化チタン(TiO2)を主成分とする薄膜を含む、[4]または[5]に記載の光学積層体。
[7] 前記反射防止層は、厚みが100nm~350nmである、[4]~[6]のいずれか1項に記載の光学積層体。
[8] 前記反射防止フィルムは、前記基材フィルムと前記反射防止層との間に設けられたハードコート層をさらに有する、[4]~[7]のいずれか1項に記載の光学積層体。
[9] 表示セルと、[1]~[8]のいずれか1項に記載の光学積層体とを有し、
前記光学積層体は、前記表示セルの視認側表面に、前記表示セル側から、前記偏光素子、前記反射防止フィルムの順に配置される向きで積層されている、表示装置。
[10] [1]に記載の光学積層体の製造方法であって、
前記偏光素子の含水率が温度20℃相対湿度20%の平衡含水率以上かつ温度20℃相対湿度48%の平衡含水率以下となるように調整する含水率調整工程を有する、光学積層体の製造方法。
[11] [2]に記載の光学積層体の製造方法であって、
前記光学積層体の含水率が温度20℃相対湿度20%の平衡含水率以上かつ温度20℃相対湿度48%の平衡含水率以下となるように調整する含水率調整工程を有する、光学積層体の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、偏光素子を含む光学積層体であって、車載用の表示装置に適しており、湿熱耐久性及び高温耐久性に優れている光学積層体、当該光学積層体を用いた表示装置及び当該光学積層体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】光学積層体の層構成を示す概略断面図の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[光学積層体]
本発明の実施形態に係る光学積層体は、偏光素子と反射防止フィルムとを有する。反射防止フィルムは、偏光素子の視認側表面に配置されている。光学積層体は、偏光素子の反射防止フィルム側の表面に積層された保護フィルム(以下、「第1保護フィルム」ともいう)を有していてもよく、偏光素子の反射防止フィルム側とは反対側の表面に積層された保護フィルム(以下、「第2保護フィルム」ともいう)を有していてもよい。本明細書において、第1保護フィルムは、偏光素子と反射防止フィルムとの間に積層されている保護フィルムとする。また、本明細書において、偏光板は、偏光素子を含み、偏光素子に貼合されている第1保護フィルム及び/又は第2保護フィルムを有する場合には、これらをも含む積層体のことをいう。
【0013】
図1は、本実施形態に係る光学積層体の層構成を示す概略断面図の一例である。光学積層体100は、偏光素子10と、反射防止フィルム20とを備え、偏光素子10の反射防止フィルム20側の表面に積層された第1保護フィルム11と、偏光素子10の反射防止フィルム20側とは反対側の表面に積層された第2保護フィルム12とをさらに備える。
【0014】
本実施形態に係る光学積層体は、下記の(a)及び(b)の少なくとも一方の特徴を有する。
(a)偏光素子の含水率が、温度20℃相対湿度20%の平衡含水率以上であり、かつ温度20℃相対湿度48%の平衡含水率以下である。
(b)光学積層体の含水率が、温度20℃相対湿度20%の平衡含水率以上であり、かつ温度20℃相対湿度48%の平衡含水率以下である。
上記(a)について、偏光素子の含水率は、好ましくは温度20℃相対湿度30%の平衡含水率以上であり、かつ温度20℃相対湿度45%の平衡含水率以下である。偏光素子の含水率は、より好ましくは、温度20℃相対湿度30%の平衡含水率以上であり、かつ温度20℃相対湿度40%の平衡含水率以下である。
上記(b)について、光学積層体の含水率は、好ましくは温度20℃相対湿度30%の平衡含水率以上であり、かつ温度20℃相対湿度45%の平衡含水率以下である。光学積層体の含水率は、より好ましくは、温度20℃相対湿度30%の平衡含水率以上であり、かつ温度20℃相対湿度40%の平衡含水率以下である。
【0015】
光学積層体は、下記要件(i)及び下記要件(ii)の少なくとも一方を満たす。
(i)反射防止フィルムは、温度40℃相対湿度90%の透湿度が20g/m2・day以下である。
(ii)偏光素子と反射防止フィルムとの間に、温度40℃相対湿度90%の透湿度が20g/m2・day以下である保護フィルムを有する。
上記要件(ii)を満たすことは、下記要件(iia)を満たすことと同じことを意味する。
(iia)偏光素子の反射防止フィルム側の表面に積層された、温度40℃相対湿度90%の透湿度が20g/m2・day以下である第1保護フィルムを有する。
【0016】
本実施形態の光学積層体は、偏光素子の含水率が上記の範囲内であり、かつ上記要件(i)及び上記要件(ii)の少なくとも一方を満たすことにより、湿熱耐久性及び高温耐久性の向上を図ることができる。湿熱耐久性に優れた光学積層体として、湿熱環境下に放置した前後において偏光度の変化量が小さい光学積層体を提供することができる。湿熱環境は、例えば、温度85℃相対湿度85%の環境である。湿熱耐久性の評価は、実施例に記載の評価方法にしたがって行うことができる。高温耐久性に優れた光学積層体として、高温環境下に放置した前後において透過率の変化量が小さい光学積層体を提供することができる。高温環境は、例えば、温度95℃の環境である。高温耐久性の評価は、実施例に記載の評価方法にしたがって行うことができる。
【0017】
<偏光素子>
偏光素子は、ポリビニルアルコール(以下、「PVA」とも称す。)系樹脂を含む層(本明細書において、「PVA系樹脂層」とも称す。)に二色性色素を吸着配向させてなる偏光素子を用いることができる。このような偏光素子としては、PVA系樹脂フィルムを用いて、このPVA系樹脂フィルムを二色性色素で染色し、一軸延伸することによって形成したものや、PVA系樹脂を含む塗布液を基材フィルム上に塗布して得られた積層フィルムを用いて、この積層フィルムの塗布層であるPVA系樹脂層を二色性色素で染色し、積層フィルムを一軸延伸することによって形成したものが挙げられる。
【0018】
偏光素子は、ポリ酢酸ビニル系樹脂を鹸化して得られるPVA系樹脂から形成される。ポリ酢酸ビニル系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルのほか、酢酸ビニルとこれに共重合可能な他の単量体との共重合体が挙げられる。共重合可能な他の単量体としては、例えば不飽和カルボン酸類、エチレン等のオレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸類などが挙げられる。
【0019】
PVA系樹脂の鹸化度は、好ましくは約85モル%以上、より好ましくは約90モル%以上、さらに好ましくは約99モル%~100モル%である。PVA系樹脂の重合度としては、1000~10000、好ましくは1500~5000である。このPVA系樹脂は変性されていてもよく、たとえば、アルデヒド類で変性されたポリビニルホルマール、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラールなどでもよい。
【0020】
本実施形態の偏光素子の厚みは5~50μmが好ましく、5~30μmがより好ましく、8~25μmがさらに好ましい。偏光素子の厚みが50μm以下であることにより、高温環境下でPVA系樹脂のポリエン化が光学特性の低下に与える影響を抑制することができ、また偏光素子の厚みが5μm以上であることにより所望の光学特性を達成する構成とすることが容易となる。
【0021】
偏光素子の視感度補正単体透過率は、好ましくは38.8%~44.8%、より好ましくは40.4%~43.2%であり、さらに好ましくは40.7%~43.0%である。視感度補正単体透過率が44.8%を超えると高温環境下で赤変するなど光学特性の劣化が大きくなる場合があり、視感度補正単体透過率が38.8%未満では高温環境下でポリエン化が進行しやすく光学特性の劣化が大きくなる場合がある。
【0022】
視感度補正単体透過率は、JIS Z8701-1982に規定されている2度視野(C光源)により、視感度補正を行ったY値を測定することによって求めることができる。視感度補正単体透過率は、例えば、日本分光(株)製の分光光度計(型番:V7100)などで簡便に測定することができる。
【0023】
(特徴(a))
特徴(a)を有する場合、偏光素子の含水率は、温度20℃相対湿度20%の平衡含水率以上であり、かつ温度20℃相対湿度48%の平衡含水率以下である。好ましくは温度20℃相対湿度30%の平衡含水率以上であり、かつ温度20℃相対湿度45%の平衡含水率以下である。より好ましくは、温度20℃相対湿度42%の平衡含水率以下であり、さらに好ましくは、温度20℃相対湿度40%の平衡含水率以下であり、最も好ましくは、温度20℃相対湿度38%の平衡含水率以下である。温度20℃相対湿度20%の平衡含水率を下回ると、偏光素子のハンドリング性が低下し、割れやすくなる。温度20℃相対湿度48%の平衡含水率以下であることにより、湿熱耐久性と高温耐久性に優れた光学積層体を提供することができる。偏光素子の含水率が高いと、偏光素子に含まれるPVA系樹脂のポリエン化が進みやすくなるためと推定される。偏光素子の上記含水率は、光学積層体中における偏光素子の含水率である。
【0024】
偏光素子の含水率が、温度20℃相対湿度20%の平衡含水率以上であり、かつ温度20℃相対湿度48%の平衡含水率以下であるかを確認する方法として、上記温度と上記相対湿度の範囲に調整された環境で保管し、一定時間質量の変化がなかった場合には環境と平衡に達しているとみなすことができ、又は上記温度と上記相対湿度の範囲に調整された環境の偏光素子の平衡含水率を予め計算し、偏光素子の含水率と予め計算した平衡含水率とを対比することにより確認することができる。
【0025】
含水率が温度20℃相対湿度20%の平衡含水率以上、かつ温度20℃相対湿度48%の平衡含水率以下である偏光素子を製造する方法としては、特に限定されないが、例えば上記温度と上記相対湿度の範囲に調整された環境に偏光素子を10分以上3時間以下保管する方法、又は30℃以上90℃以下で加熱処理する方法が挙げられる。
【0026】
上記含水率である偏光素子を製造する別の好ましい方法としては、偏光素子の少なくとも片面に保護フィルムを積層した積層体を、又は偏光素子を用いて構成した積層体を、上記温度と上記相対湿度の範囲に調整された環境に、10分以上120時間以下保管する方法、又は30℃以上90℃以下で加熱処理する方法が挙げられる。画像表示装置の作製時において、光学積層体を画像表示セルに積層した画像表示パネルを、上記温度と上記相対湿度の範囲に調整された環境に10分以上3時間以下保管又は30℃以上90℃以下で加熱処理する方法も挙げられる。
【0027】
偏光素子の含水率は、偏光素子単独又は偏光素子と保護フィルムとの積層体であって光学積層体を構成するために用いられる材料段階で含水率が上記数値範囲となるように調整されていることが好ましい。光学積層体を構成した後に含水率を調整した場合には、カールが大きくなりすぎ、画像表示セルへの貼合時に不具合が生じやすくなることがある。光学積層体を構成する前の材料段階で上記含水率となるように調整されている偏光素子を用いて光学積層体を構成することにより、含水率が上記数値範囲を満たす偏光素子を備える光学積層体を容易に構成することができる。光学積層体を画像表示セルに貼合した状態で、光学積層体中における偏光素子の含水率が上記数値範囲となるように調整してもよい。この場合、光学積層体は、画像表示セルに貼合されているのでカールが生じにくい。
【0028】
(特徴(b))
特徴(b)を有する場合、光学積層体の含水率は、温度20℃相対湿度20%の平衡含水率以上であり、かつ温度20℃相対湿度48%の平衡含水率以下である。好ましくは温度20℃相対湿度30%の平衡含水率以上であり、かつ温度20℃相対湿度45%の平衡含水率以下である。より好ましくは、温度20℃相対湿度42%の平衡含水率以下であり、さらに好ましくは、温度20℃相対湿度40%の平衡含水率以下であり、最も好ましくは、温度20℃相対湿度38%の平衡含水率以下である。光学積層体の含水率が温度20℃相対湿度20%の平衡含水率を下回ると、光学積層体のハンドリング性が低下し、割れやすくなる。光学積層体の含水率が、温度20℃相対湿度48%の平衡含水率を上回ると、偏光素子の透過率が低下しやすくなる。光学積層体の含水率が高いと、PVA系樹脂のポリエン化が進みやすくなるためと推定される。
【0029】
光学積層体の含水率が温度20℃相対湿度20%の平衡含水率以上、かつ温度20℃相対湿度48%の平衡含水率以下の範囲内であるかを確認する方法として、上記温度と上記相対湿度の範囲に調整された環境で保管し、一定時間質量の変化がなかった場合には環境と平衡に達しているとみなすことができ、又は上記温度と上記相対湿度の範囲に調整された環境の光学積層体の平衡含水率を予め計算し、光学積層体の含水率と予め計算した平衡含水率とを対比することにより確認することができる。
【0030】
含水率が温度20℃相対湿度20%の平衡含水率以上、かつ温度20℃相対湿度48%の平衡含水率以下である光学積層体を製造する方法としては、特に限定されないが、例えば上記温度と上記相対湿度の範囲に調整された環境に光学積層体を10分以上3時間以下保管する方法、又は30℃以上90℃以下で加熱処理する方法が挙げられる。
【0031】
画像表示装置の作製時において、光学積層体を画像表示セルに積層した画像表示パネルを、上記温度と上記相対湿度の範囲に調整された環境に10分以上3時間以下保管又は30℃以上90℃以下で加熱処理する方法も挙げられる。
【0032】
(偏光素子の製造方法)
偏光素子の製造方法は特に限定されないが、予めロール状に巻かれたポリビニルアルコール系樹脂フィルムを送り出して延伸、染色、架橋などを行って作製する方法(以下、「製造方法1」とする。)やポリビニルアルコール系樹脂を含む塗布液を基材フィルム上に塗布して塗布層であるポリビニルアルコール系樹脂層を形成して得られた積層体を延伸する工程を含む方法(以下、「製造方法2」とする。)が典型的である。
【0033】
製造方法1は、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを一軸延伸する工程、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムをヨウ素等の二色性色素で染色することにより、その二色性色素を吸着させる工程、二色性色素が吸着されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸水溶液で処理する工程、及びホウ酸水溶液による処理後に水洗する工程を経て製造することができる。
【0034】
膨潤工程は、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを、膨潤浴中に浸漬する処理工程であり、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの表面の汚れやブロッキング剤等を除去でき、また、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを膨潤させることで染色ムラを抑制できる。膨潤浴は、通常、水、蒸留水、純水等の水を主成分とする媒体が用いられる。膨潤浴は、常法に従って、界面活性剤、アルコール等が適宜に添加されていてもよい。
【0035】
膨潤浴の温度は、10~60℃程度であることが好ましく、15~45℃程度であることがより好ましく、18~30℃程度であることがさらに好ましい。また、膨潤浴への浸漬時間は、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの膨潤の程度が膨潤浴の温度の影響を受けるため一概に決定できないが、5~300秒間程度であることが好ましく、10~200秒間程度であることがより好ましく、20~100秒間程度であることがさらに好ましい。膨潤工程は1回だけ実施されてもよく、必要に応じて複数回実施されてもよい。
【0036】
染色工程は、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを、染色浴(ヨウ素溶液)に浸漬する処理工程であり、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに、ヨウ素または二色性染料等の二色性物質を吸着・配向させることができる。ヨウ素溶液は、通常、ヨウ素水溶液であることが好ましく、ヨウ素および溶解助剤としてヨウ化物を含有する。なお、ヨウ化物としては、ヨウ化カリウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化亜鉛、ヨウ化アルミニウム、ヨウ化鉛、ヨウ化銅、ヨウ化バリウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化錫、ヨウ化チタン等が挙げられる。これらの中でも、偏光素子中のカリウムの含有率を制御する観点から、ヨウ化カリウムが好適である。
【0037】
染色浴中、ヨウ素の濃度は、0.01~1重量%程度であることが好ましく、0.02~0.5重量%程度であることがより好ましい。染色浴中、ヨウ化物の濃度は、0.01~10重量%程度であることが好ましく、0.05~5重量%程度であることがより好ましく、0.1~3重量%程度であることがさらに好ましい。
【0038】
染色浴の温度は、10~50℃程度であることが好ましく、15~45℃程度であることがより好ましく、18~30℃程度であることがさらに好ましい。また、染色浴への浸漬時間は、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの染色の程度が染色浴の温度の影響を受けるため一概に決定できないが、10~300秒間程度であることが好ましく、20~240秒間程度であることがより好ましい。染色工程は1回だけ実施されてもよく、必要に応じて複数回実施されてもよい。
【0039】
架橋工程は、染色工程にて染色されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムを、ホウ素化合物を含む処理浴(架橋浴)中に浸漬する処理工程であり、ホウ素化合物によりポリビニルアルコール系樹脂フィルムが架橋して、ヨウ素分子または染料分子が当該架橋構造に吸着できる。ホウ素化合物としては、例えば、ホウ酸、ホウ酸塩、ホウ砂等が挙げられる。架橋浴は、水溶液が一般的であるが、例えば、水との混和性のある有機溶媒および水の混合溶液であってもよい。また、架橋浴は、偏光素子中のカリウムの含有率を制御する観点から、ヨウ化カリウムを含むことが好ましい。
【0040】
架橋浴中、ホウ素化合物の濃度は、1~15重量%程度であることが好ましく、1.5~10重量%程度であることがより好ましく、2~5重量%程度であることがより好ましい。また、架橋浴にヨウ化カリウムを使用する場合、架橋浴中、ヨウ化カリウムの濃度は、1~15重量%程度であることが好ましく、1.5~10重量%程度であることがより好ましく、2~5重量%程度であることがより好ましい。
【0041】
架橋浴の温度は、20~70℃程度であることが好ましく、30~60℃程度であることがより好ましい。また、架橋浴への浸漬時間は、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの架橋の程度が架橋浴の温度の影響を受けるため一概に決定できないが、5~300秒間程度であることが好ましく、10~200秒間程度であることがより好ましい。架橋工程は1回だけ実施されてもよく、必要に応じて複数回実施されてもよい。
【0042】
延伸工程は、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを、少なくとも一方向に所定の倍率に延伸する処理工程である。一般には、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを、搬送方向(長手方向)に1軸延伸する。延伸の方法は特に制限されず、湿潤延伸法と乾式延伸法のいずれも採用できる。延伸工程は1回だけ実施されてもよく、必要に応じて複数回実施されてもよい。延伸工程は、偏光素子の製造において、いずれの段階で行われてもよい。
【0043】
湿潤延伸法における処理浴(延伸浴)は、通常、水、または水との混和性のある有機溶媒および水の混合溶液等の溶媒を用いることができる。延伸浴は、偏光素子中のカリウムの含有率を制御する観点から、ヨウ化カリウムを含むことが好ましい。延伸浴にヨウ化カリウムを使用する場合、当該延伸浴中、ヨウ化カリウムの濃度は、1~15重量%程度であることが好ましく、2~10重量%程度であることがより好ましく、3~6重量%程度であることがより好ましい。また、処理浴(延伸浴)には、延伸中のフィルム破断を抑制する観点から、ホウ素化合物を含むことができ、この場合、当該延伸浴中、ホウ素化合物の濃度は、1~15重量%程度であることが好ましく、1.5~10重量%程度であることがより好ましく、2~5重量%程度であることがより好ましい。
【0044】
延伸浴の温度は、25~80℃程度であることが好ましく、40~75℃程度であることがより好ましく、50~70℃程度であることがさらに好ましい。また、延伸浴への浸漬時間は、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの延伸の程度が延伸浴の温度の影響を受けるため一概に決定できないが、10~800秒間程度であることが好ましく、30~500秒間程度であることがより好ましい。なお、湿潤延伸法における延伸処理は、膨潤工程、染色工程、架橋工程、および洗浄工程のいずれか1つ以上の処理工程とともに施してもよい。
【0045】
乾式延伸法としては、例えば、ロール間延伸方法、加熱ロール延伸方法、圧縮延伸方法等が挙げられる。なお、乾式延伸法は、乾燥工程とともに施してもよい。
【0046】
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに施される総延伸倍率(累積の延伸倍率)は、目的に応じ適宜設定できるが、2~7倍程度であることが好ましく、3~6.8倍程度であることがより好ましく、3.5~6.5倍程度であることがさらに好ましい。
【0047】
洗浄工程は、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを、洗浄浴中に浸漬する処理工程であり、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの表面等に残存する異物を除去できる。洗浄浴は、通常、水、蒸留水、純水等の水を主成分とする媒体が用いられる。また、偏光素子中のカリウムの含有率を制御する観点から、洗浄浴にヨウ化カリウムを使用することが好ましく、この場合、洗浄浴中、ヨウ化カリウムの濃度は、1~10重量%程度であることが好ましく、1.5~4重量%程度であることがより好ましく、1.8~3.8重量%程度であることがさらに好ましい。
【0048】
洗浄浴の温度は、5~50℃程度であることが好ましく、10~40℃程度であることがより好ましく、15~30℃程度であることがさらに好ましい。また、洗浄浴への浸漬時間は、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの洗浄の程度が洗浄浴の温度の影響を受けるため一概に決定できないが、1~100秒間程度であることが好ましく、2~50秒間程度であることがより好ましく、3~20秒間程度であることがさらに好ましい。洗浄工程は1回だけ実施されてもよく、必要に応じて複数回実施されてもよい。
【0049】
乾燥工程は、洗浄工程にて洗浄されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムを、乾燥して偏光素子を得る工程である。乾燥は、任意の適切な方法で行われ、例えば、自然乾燥、送風乾燥、加熱乾燥が挙げられる。
【0050】
製造方法2は、上記ポリビニルアルコール系樹脂を含む塗布液を基材フィルム上に塗布する工程、得られた積層フィルムを一軸延伸する工程、一軸延伸された積層フィルムのポリビニルアルコール系樹脂層を二色性色素で染色することにより、その二色性色素を吸着させて偏光素子とする工程、二色性色素が吸着されたフィルムをホウ酸水溶液で処理する工程、及びホウ酸水溶液による処理後に水洗する工程を経て製造することができる。偏光素子を形成するために用いる基材フィルムは、偏光素子の保護層として用いてもよい。必要に応じて、基材フィルムを偏光素子から剥離除去してもよい。
【0051】
<反射防止フィルム>
反射防止フィルムは、光学積層体の視認側表面から入射する光の反射率を低下させる反射防止機能を有する。光学積層体は、外光の映り込みによるコントラスト低下を防止するために、反射防止フィルムを有する。反射防止フィルムとして、上記要件(i)を満たすために、温度40%相対湿度90%での透湿度が20g/m2・day以下、好ましくは10g/m2・day以下である反射防止フィルムを用いることができる。反射防止フィルムの透湿度は、後述の実施例に記載の方法にしたがって測定した値とする。このような透湿度の低い反射防止フィルムを用いることで、湿熱耐久性及び高温耐久性を向上させることができる。反射防止フィルムの透湿度は、反射防止層の材料、厚み、基材フィルムの材料、厚み等により調整することができる。反射防止フィルムの温度40%相対湿度90%での透湿度は、通常、1g/m2・day以上である。
【0052】
反射防止フィルムは、例えば、基材フィルムの片側に反射防止層を有している構成のものを用いることができる。基材フィルムとしては、特に制限されないが、後述する保護フィルムに用いる材料と同等のものが使用できる。
【0053】
反射防止フィルムとしては、公知の反射防止フィルムであったり、市販の反射防止フィルムを用いたりすることができ、例えば以下のものが例示される。
【0054】
(a)凹凸の周期が可視光の波長以下に制御された凹凸パターンからなる、いわゆるモスアイ構造の原理を使用した反射防止フィルム(特開2010-122599号公報、特表2001-517319号公報、特開2004-205990号公報、特開2004-287238号公報、特開2001-27505号公報、特開2002-286906号公報、国際公開第2006/059686号等に記載されている反射防止フィルム)。市販品としては、例えば、モスマイト(登録商標、三菱化学株式会社製)を使用することができる。
(b)光学機能を発揮する微細凹凸パターンからなる反射防止フィルム(特開2004-59822号公報、特公平5-46064号公報、特公平6-85103号公報等に記載されている反射防止フィルム)。
(c)光の波長以下のピッチの無数の微細凹凸で構成された凹凸パターンからなる反射防止フィルム(特開2001-264520号公報、特開平9-80205号公報等に記載されている反射防止フィルム)。
(d)屈折率が調整された層を単層または多層で有する反射防止フィルム(特開2000-187102号公報、特開平6-186401号公報、特開2004-345333号公報等に記載されている反射防止フィルム)。市販品としては、例えば、MTAR、MTAGAR(美舘社製)を使用することができる。
反射防止フィルムの厚みは、例えば10μm以上100μm以下である。
【0055】
反射防止フィルムとしては、厚みおよび屈折率を厳密に制御した薄膜若しくは薄膜を2層以上積層した反射防止層を有するものが好適である。なお、本明細書において、薄膜とは厚みが1μm以下である膜のことをいう。反射防止層は、光の干渉効果を利用して入射光と反射光の逆転した位相を互いに打ち消し合わせることで反射防止機能を発現する構成とすることができる。反射防止機能を発現させる可視光線の波長領域は、例えば、380~780nmであり、特に視感度が高い波長領域は450~650nmの範囲であり、その中心波長である550nmの反射率を最小にするように反射防止層を設計することが好ましい。反射防止層の厚みは、100nm~350nmであることが好ましく、150nm~300nmであることがより好ましい。
【0056】
光の干渉効果に基づく反射防止層の設計において、その干渉効果を向上させる手段としては、例えば、反射防止層と後述する防眩性ハードコート層との屈折率差を大きくする方法がある。一般的に、2~15層の薄膜(厚みおよび屈折率を厳密に制御した薄膜)を積層した構造の多層反射防止層では、屈折率の異なる成分を所定の厚さだけ複数層形成することで、反射防止層の光学設計の自由度が上がり、より反射防止効果を向上させることができ、分光反射特性も可視光領域で均一(フラット)にすることが可能になる。薄膜は高い厚み精度が要求されるため、一般的に、各層の形成は、ドライ方式である真空蒸着、スパッタリング、CVD等で実施される。透湿度を所定の範囲にすることから、スパッタリングを用いることが好ましい。また、スパッタリングにより各層が形成された反射防止フィルムを用いることにより、耐擦傷性の高い光学積層体を構成することができる。
【0057】
反射防止層としては、低屈折率層と高屈折率層とが交互に積層されてなるものが好ましく用いられる。高屈折率層同士、または低屈折率層同士は、同一の屈折率でなくても構わないが、同一材料で同一屈折率とすれば、材料コストおよび成膜コスト等を抑制する観点から好ましい。
【0058】
低屈折率層を構成する材料としては、二酸化ケイ素(SiO2)、酸窒化シリコン(SiON)、酸化ガリウム(Ga2O3)、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化ランタン(La2O3)、フッ化ランタン(LaF3)、フッ化マグネシウム(MgF2)、フッ化ナトリウムアルミニウム(Na3AlF6)などが挙げられる。中でも屈折率の低さ、可視光域に吸収がないこと、膜強度の高さなどから二酸化ケイ素(SiO2)が最も好ましい。
【0059】
高屈折率層を構成する材料としては、五酸化ニオブ(Nb2O5)、二酸化チタン(TiO2)、二酸化ジルコニウム(ZrO2)、五酸化タンタル(Ta2O5)、酸窒化シリコン(SiON)、窒化シリコン(Si3N4)および酸化シリコンニオブ(SiNbO)などが挙げられる。中でも屈折率の高さ、膜強度の高さから五酸化ニオブ(Nb2O5)または二酸化チタン(TiO2)がより好ましく、更に可視光域に吸収がないことから五酸化ニオブ(Nb2O5)が最も好ましい。
【0060】
いずれの化合物も化学量論比の組成比からずれた構成元素比となるように制御したり、成膜密度を制御したりして成膜することにより、屈折率をある程度変化させることができる。なお、低反射率層および高反射率層を構成する材料としては、上述の屈折率の条件を満たすものであれば、上記化合物に限らない。また、不可避不純物が含まれていてもよい。
【0061】
反射防止フィルムは、基材フィルムと反射防止層との間にハードコート層を備えていてもよい。ハードコート層が設けられることにより、反射防止層の硬度や弾性率等の機械特性を向上できる。ハードコート層は、表面の硬度が高く、耐擦傷性に優れるものが好ましい。ハードコート層は、例えば、基材フィルム上に、硬化性樹脂を含有する溶液を塗布することにより形成できる。
【0062】
硬化性樹脂としては、熱硬化型樹脂、紫外線硬化型樹脂、電子線硬化型樹脂等が挙げられる。硬化性樹脂の種類としてはポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリルウレタン系樹脂、アミド系樹脂、シリコーン系樹脂、シリケート系樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、オキセタン系樹脂、アクリルウレタン系樹脂等の各種の樹脂があげられる。これらの硬化性樹脂は、一種または二種以上を、適宜に選択して使用できる。
【0063】
これらの中でも、硬度が高く、紫外線硬化が可能で生産性に優れることから、アクリル系樹脂、アクリルウレタン系樹脂、およびエポキシ系樹脂が好ましく、中でもアクリルウレタン系樹脂が好ましい。紫外線硬化型樹脂には、紫外線硬化型のモノマー、オリゴマー、ポリマー等が含まれる。好ましく用いられる紫外線硬化型樹脂は、例えば紫外線重合性の官能基を有するもの、中でも当該官能基を2個以上、特に3~6個有するアクリル系のモノマーやオリゴマーを成分として含むものが挙げられる。
【0064】
反射防止フィルムに、防眩性およびギラツキ防止性を持たせるために、基材フィルムの表面に設けられるハードコート層は防眩性を有していることが好ましい。防眩性ハードコート層としては、例えば、上記の硬化性樹脂マトリクス中に、微粒子を分散させたものが挙げられる。樹脂マトリクス中に分散させる微粒子としては、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化カルシウム、酸化錫、酸化インジウム、酸化カドミウム、酸化アンチモン等の各種金属酸化物微粒子、ガラス微粒子、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリウレタン、アクリル-スチレン共重合体、ベンゾグアナミン、メラミン、ポリカーボネート等の各種透明ポリマーからなる架橋又は未架橋の有機系微粒子、シリコーン系微粒子等の透明性を有するものを特に制限なく使用できる。これら微粒子は、1種または2種以上を適宜に選択して用いることができる。中でも、マトリックス樹脂よりも屈折率の高い微粒子が好ましく、例えばスチレンビーズ(屈折率1.59)等の屈折率1.5以上の有機系微粒子が好ましい。微粒子の平均粒子径は好ましくは1~10μm、より好ましくは2~5μmである。微粒子の割合は特に制限されないが、マトリックス樹脂100重量部に対して6~20重量部が好ましい。
【0065】
ハードコート層は、例えば、基材フィルム上に、硬化性樹脂を含有する溶液を塗布することにより形成できる。ハードコート層を形成するための溶液には、紫外線重合開始剤が配合されていることが好ましい。微粒子を含む防眩性ハードコート層を形成するためには、硬化性樹脂に加えて上記の微粒子を含有する溶液を透明フィルム上に塗布することが好ましい。溶液中には、レベリング剤、チクソトロピー剤、帯電防止剤等の添加剤を含有させてもよい。防眩性ハードコート層の形成においては、溶液中にチクソトロピー剤(粒子径0.1μm以下のシリカ、マイカ等)を含有させることにより、ハードコート層の表面において、突出粒子による微細凹凸構造を容易に形成できる。
【0066】
ハードコート層の厚みは特に限定されないが、高い硬度を実現するためには、0.5μm以上が好ましく、1μm以上がより好ましい。塗布による形成の容易性を考慮すると、ハードコート層の厚みは15μm以下が好ましく、12μm以下がより好ましく、10μm以下がさらに好ましい。また、偏光素子からの水分の外部への放出を妨げないように、フィルム基材の透湿度を高く維持するためにも、ハードコート層の厚みは上記範囲であることが好ましい。
【0067】
基材フィルムの反射防止層の形成面側の表面の算術平均粗さRaは、1.5nm以下が好ましく、1.0nm以下がより好ましい。算術平均粗さRaは、0.00nm以上であってよく、0.05nm以上であってよい。基材フィルム上にハードコート層が形成されている場合は、ハードコート層の算術平均粗さが、基材フィルムの反射防止層の形成面側の表面の算術平均粗さとなる。算術平均粗さRaは、原子間力顕微鏡(AFM)を用いた1μm四方の観察像から求められる。
【0068】
上記のように、塗布によりハードコート層を形成すれば、基材フィルムの表面の算術平均粗さを小さくできる。基材フィルムの表面が平滑であれば、その上に形成される反射防止層の表面の算術平均粗さも小さくなり、反射防止フィルムの耐擦傷性が向上する傾向がある。
【0069】
<保護フィルム>
保護フィルムとしては、特に制限されないが、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮蔽性、および位相差値の安定性等に優れる材料からなることが好ましい。保護フィルムの材料としては、特に限定されるものではないが、例えば、メタクリル酸メチル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、環状オレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、セルロース系樹脂、スチレン系樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン系樹脂、アクリロニトリル・スチレン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、変性ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリブチレンテフタレート系樹脂、ポリエチレンテフタレート系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、およびポリイミド系樹脂等からなるフィルムが挙げられる。
【0070】
これらの樹脂は、単独で、または2種類以上を組み合わせて用いることができる。また、これらの樹脂は、任意の適切なポリマー変性を行ってから用いることもでき、このポリマー変性としては、例えば、共重合、架橋、分子末端変性、立体規則性制御、および異種ポリマー同士の反応を伴う場合を含む混合等の変性が挙げられる。
【0071】
セルロース系樹脂は、セルロースの水酸基における水素原子の一部又は全部が、アセチル基、プロピオニル基及び/又はブチリル基で置換された、セルロースの有機酸エステル又は混合有機酸エステルでありうる。例えば、セルロースの酢酸エステル、プロピオン酸エステル、酪酸エステル、それらの混合エステルなどからなるものが挙げられる。なかでも、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートなどが好ましい。
【0072】
これらの樹脂は、透明性を損なわない範囲で、適宜の添加物が配合されていてもよい。添加物として例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、造核剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、位相差低減剤、安定剤、加工助剤、可塑剤、耐衝撃助剤、艶消し剤、抗菌剤、防かび剤などを挙げることができる。これらの添加物は、複数種が併用されてもよい。
【0073】
保護フィルムの厚みは通常1~100μmであるが、強度や取扱性等の観点から5~60μmであることが好ましく、10~55μmであることがより好ましく、15~50μmであることがさらに好ましい。
【0074】
保護フィルムは、同時に他の光学的機能を有していてもよく、複数の層が積層された積層構造に形成されていてもよい。保護フィルムの膜厚は光学特性の観点から薄いものが好ましいが、薄すぎると強度が低下し加工性に劣るものとなる。適切な膜厚としては、5~100μmであり、好ましくは10~80μm、より好ましくは15~70μmである。
【0075】
保護フィルムは、セルロースアシレート系フィルム、ポリカーボネート系樹脂からなるフィルム、ノルボルネンなどシクロオレフィン系樹脂からなるフィルム、(メタ)アクリル系重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂系フィルムなどのフィルムを用いることができる。偏光素子の両面に保護フィルムを有する構成の場合、PVA接着剤などの水系接着剤を用いて貼合する場合は透湿度の点で少なくとも片側の保護フィルムはセルロースアシレート系フィルムまたは(メタ)アクリル系重合体フィルムの何れかであることが好ましく、中でもセルロースアシレートフィルムが好ましい。
【0076】
第1保護フィルムと第2保護フィルムとは、同じであってもよいし異なっていてもよい。第1保護フィルムおよび第2保護フィルムは、その外面(偏光素子とは反対側の面)に、帯電防止層のような表面処理層(コーティング層)を備えるものであってもよい。なお、第1保護フィルムおよび第2保護フィルムの厚みは、表面処理層の厚みを含んだものである。
【0077】
第1保護フィルムとして、上記要件(ii)を満たすために、温度40℃相対湿度90%の透湿度が20g/m2・day以下である保護フィルムを用いることができる。保護フィルムの透湿度は、材料、厚み等により調整することができる。温度40℃相対湿度90%の透湿度が20g/m2・day以下である保護フィルムはとしては、環状オレフィン系樹脂フィルム、ドライ方式で水蒸気バリア層を積層したフィルム等が好ましく用いられる。
【0078】
少なくとも一方の保護フィルムとしては、視野角補償などの目的で位相差機能を備えていても良く、その場合、フィルム自身が位相差機能を有していても良く、位相差層を別に有していてもよく、両者の組み合わせであってもよい。
なお、位相差機能を備えるフィルムは、偏光素子に貼合された別の保護フィルムを介して粘着剤層または接着剤層を介して貼合された構成であっても構わない。
【0079】
<貼合層>
光学積層体において、各層を貼合するために貼合層が用いられる。貼合層としては、接着剤層または粘着剤層が挙げられる。
【0080】
(接着剤層)
接着剤層は、例えば、偏光素子への保護フィルムの貼合に用いることができる。接着剤層を構成する接着剤は、任意の適切な接着剤を用いることができる。接着剤は、水系接着剤、溶剤系接着剤、活性エネルギー線硬化型接着剤などを用いることができるが、水系接着剤であることが好ましい。
【0081】
接着剤の塗布時の厚みは、任意の適切な値に設定され得る。例えば、硬化後または加熱(乾燥)後に、所望の厚みを有する接着剤層が得られるように設定する。接着剤層の厚みは、好ましくは0.01μm以上7μm以下であり、より好ましくは0.01μm以上5μm以下であり、さらに好ましくは0.01μm以上2μm以下であり、最も好ましくは0.01μm以上1μm以下である。
【0082】
(水系接着剤)
水系接着剤としては、任意の適切な水系接着剤が採用され得る。中でも、PVA系樹脂を含む水系接着剤(PVA系接着剤)が好ましく用いられる。水系接着剤に含まれるPVA系樹脂の平均重合度は、接着性の点から、好ましくは100~5500程度、さらに好ましくは1000~4500である。平均鹸化度は、接着性の点から、好ましくは85モル%~100モル%程度であり、さらに好ましくは90モル%~100モル%である。
【0083】
上記水系接着剤に含まれるPVA系樹脂としては、アセトアセチル基を含有するものが好ましく、その理由は、PVA系樹脂層と保護フィルムとの密着性に優れ、耐久性に優れているからである。アセトアセチル基含有PVA系樹脂は、例えば、PVA系樹脂とジケテンとを任意の方法で反応させることにより得られる。アセトアセチル基含有PVA系樹脂のアセトアセチル基変性度は、代表的には0.1モル%以上であり、好ましくは0.1モル%~20モル%程度である。
上記水系接着剤の樹脂濃度は、好ましくは0.1質量%~15質量%であり、さらに好ましくは0.5質量%~10質量%である。
【0084】
水系接着剤には架橋剤を含有させることもできる。架橋剤としては公知の架橋剤を用いることができる。例えば、水溶性エポキシ化合物、ジアルデヒド、イソシアネートなどが挙げられる。
【0085】
PVA系樹脂がアセトアセチル基含有PVA系樹脂である場合は、架橋剤としてグリオキサール、グリオキシル酸塩、メチロールメラミンのうちの何れかであることが好ましく、グリオキサール、グリオキシル酸塩の何れかであることが好ましく、グリオキサールであることが特に好ましい。
【0086】
水系接着剤は有機溶剤を含有することもできる。有機溶剤は、水と混和性を有する点でアルコール類が好ましく、アルコール類の中でもメタノールまたはエタノールであることがより好ましい。尿素系化合物の一部は水に対する溶解度が低い反面、アルコールに対する溶解度は十分なものがある。その場合は、尿素系化合物をアルコールに溶解し、尿素系化合物のアルコール溶液を調製した後、尿素系化合物のアルコール溶液をPVA水溶液に添加し、接着剤を調製することも好ましい態様の一つである。
【0087】
水系接着剤のメタノールの濃度は、好ましくは10質量%以上70質量%以下、より好ましくは15質量%以上60質量%以下、さらに好ましくは20質量%以上60質量%以下である。メタノールの濃度が10質量%以上であることにより、高温環境下でのポリエン化をより抑制しやすくなる。また、メタノールの含有率が70質量%以下であることにより、色相の悪化を抑制することができる。
【0088】
(活性エネルギー線硬化型接着剤)
活性エネルギー線硬化型接着剤は、紫外線等の活性エネルギー線を照射することによって硬化する接着剤であり、例えば重合性化合物及び光重合性開始剤を含む接着剤、光反応性樹脂を含む接着剤、バインダー樹脂及び光反応性架橋剤を含む接着剤等を挙げることができる。上記重合性化合物としては、光硬化性エポキシ系モノマー、光硬化性アクリル系モノマー、光硬化性ウレタン系モノマー等の光重合性モノマー、及びこれらモノマーに由来するオリゴマー等を挙げることができる。上記光重合開始剤としては、紫外線等の活性エネルギー線を照射して中性ラジカル、アニオンラジカル、カチオンラジカルといった活性種を発生する物質を含む化合物を挙げることができる。
【0089】
(粘着剤層)
粘着剤層は、例えば、第1保護フィルムへの反射防止フィルムの貼合に使用することができる。
【0090】
粘着剤層は、(メタ)アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ウレタン系樹脂、エステル系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリビニルエーテル系樹脂のような樹脂を主成分とする粘着剤組成物で構成することができる。中でも、透明性、耐候性、耐熱性等に優れる(メタ)アクリル系樹脂をベースポリマーとする粘着剤組成物が好適である。粘着剤組成物は、活性エネルギー線硬化型、熱硬化型であってもよい。粘着剤層の厚みは、通常3~30μmであり、好ましくは3~25μmである。
【0091】
粘着剤組成物に用いられる(メタ)アクリル系樹脂(ベースポリマー)としては、例えば、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルのような(メタ)アクリル酸エステルの1種又は2種以上をモノマーとする重合体又は共重合体が好適に用いられる。ベースポリマーには、極性モノマーを共重合させることが好ましい。極性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートのような、カルボキシル基、水酸基、アミド基、アミノ基、エポキシ基等を有するモノマーを挙げることができる。
【0092】
粘着剤組成物は、上記ベースポリマーのみを含むものであってもよいが、通常は架橋剤をさらに含有する。架橋剤としては、2価以上の金属イオンであって、カルボキシル基との間でカルボン酸金属塩を形成するもの;ポリアミン化合物であって、カルボキシル基との間でアミド結合を形成するもの;ポリエポキシ化合物やポリオールであって、カルボキシル基との間でエステル結合を形成するもの;ポリイソシアネート化合物であって、カルボキシル基との間でアミド結合を形成するものが例示される。中でも、ポリイソシアネート化合物が好ましい。
【0093】
粘着剤層の貯蔵弾性率は、周波数1Hz、温度23℃において、0.001~0.350MPaが好ましく、0.001~0.200MPaがより好ましく、0.001~0.180MPaが更に好ましく、0.010~0.170MPaが特に好ましい。
【0094】
粘着剤層の厚みは、1~200μmが好ましく、2~100μmがより好ましく、2~80μmが更に好ましく、3~50μmが特に好ましい。
【0095】
本発明では前記のように、スパッタリングにより各層が形成された反射防止フィルムを用いることにより、耐擦傷性の高い光学積層体を構成することができる。
この場合、第1保護フィルムへの反射防止フィルムの貼合に使用する粘着剤層の貯蔵弾性率と粘着剤層の厚みを以下の範囲に制御することで、鉛筆硬度に代表される、押し込み硬度が高く、反射防止層が割れ難い光学積層体を形成することができ、特に好ましい。
【0096】
具体的には粘着剤層の貯蔵弾性率は、後述する実施例に記載の方法に従って測定したときに、0.050~0.170MPaが好ましく、0.080~0.170MPaがより好ましく、0.100~0.170Mが更に好ましく、0.120~0.160MPaが特に好ましい。
【0097】
粘着剤層の厚みは、3~30μmが好ましく、3~20μmがより好ましく、3~10μmが更に好ましく、3~8μmが特に好ましい。
【0098】
[光学積層体の製造方法]
本実施形態の光学積層体の製造方法は、含水率調整工程と反射防止フィルム積層工程とを有する。含水率調整工程では、特徴(a)を有する光学積層体を製造する場合は、偏光素子の含水率が温度20℃相対湿度30%の平衡含水率以上、かつ温度20℃相対湿度48%の平衡含水率以下となるように偏光素子の含水率を調整する。偏光素子の含水率の調整方法は上述の通りである。含水率調整工程では、特徴(b)を有する光学積層体を製造する場合は、光学積層体の含水率が温度20℃相対湿度30%の平衡含水率以上、かつ温度20℃相対湿度48%の平衡含水率以下となるように光学積層体の含水率を調整する。光学積層体の含水率の調整方法は上述の通りである。反射防止フィルム積層工程は、偏光素子と反射防止フィルムとを積層する。含水率調整工程及び反射防止フィルム積層工程の順番は限定されることはなく、また含水率調整工程と反射防止フィルム積層工程とが並行して行われてもよい。本実施形態の光学積層体の製造方法は、偏光素子と保護フィルムとを積層する保護フィルム積層工程をさらに有することができる。
【0099】
[表示装置]
上記の光学積層体は、液晶表示装置や有機EL表示装置等の各種表示装置に用いることができる。本実施形態の光学積層体を用いた表示装置は、湿熱耐久性及び高温耐久性に優れたものとすることができる。本実施形態の光学積層体を用いた表示装置は、湿熱耐久性及び高温耐久性に優れることから、車載用の表示装置として好適に用いることができる。
【0100】
表示装置としては、表示セルと、表示セルの視認側表面に積層された光学積層体とを有し、光学積層体は、表示セルの視認側表面に、表示セル側から、偏光素子、反射防止フィルムの順に配置される向きで積層されている。表示セルと、光学積層体との積層には、例えば上述の粘着剤層が使用される。
【0101】
<表示セル>
表示セルとしては、液晶セルや有機ELセルが挙げられる。液晶セルとしては、外光を利用する反射型液晶セル、バックライト等の光源からの光を利用する透過型液晶セル、外部からの光と光源からの光の両者を利用する半透過半反射型液晶セルのいずれを用いてもよい。液晶セルが光源からの光を利用するものである場合、表示装置(液晶表示装置)は、表示セル(液晶セル)の視認側と反対側にも偏光板が配置され、さらに光源が配置される。光源側の偏光板と液晶セルとは、適宜の粘着剤層を介して貼り合せられていることが好ましい。液晶セルの駆動方式としては、例えばVAモード、IPSモード、TNモード、STNモードやベンド配向(π型)等の任意なタイプのものを用いうる。
【0102】
有機ELセルとしては、透明基板上に透明電極と有機発光層と金属電極とを順に積層して発光体(有機エレクトロルミネセンス発光体)を形成したもの等が好適に用いられる。有機発光層は、種々の有機薄膜の積層体であり、例えば、トリフェニルアミン誘導体等からなる正孔注入層と、アントラセン等の蛍光性の有機固体からなる発光層との積層体や、これらの発光層とペリレン誘導体等からなる電子注入層の積層体、あるいは正孔注入層、発光層、および電子注入層の積層体等、種々の層構成が採用され得る。
【実施例】
【0103】
以下、実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。例中、含有量ないし使用量を表す部及び%は、特記ないかぎり質量基準である。なお、以下の例における各物性の測定は、次の方法で行った。
【0104】
[測定方法]
(1)フィルム厚みの測定方法
株式会社ニコン製のデジタルマイクロメーターであるMH-15Mを用いて測定した。
【0105】
(2)反射防止フィルムの透湿度
JISK7129:2008 附属書Bに準じて、温度40℃相対湿度90%の雰囲気中で反射防止フィルムの透湿度を測定した。
【0106】
(3)反射防止層の各層の厚み測定
大塚電子株式会社製の反射分光膜厚計FE3000を用いて測定した。
【0107】
(4)貯蔵弾性率
粘着剤層の貯蔵弾性率G’は、以下の(I)~(III)に従って測定した。
(I)粘着剤層から試料を25±1mgずつ2つ取り出し、それぞれ略玉状に成形する。(II)得られる略玉状の試料をI型冶具の上下面に貼り付け、上下面ともL型冶具で挟み込む。測定試料の構成は、L型治具/粘着剤層/I型治具/粘着剤層/L型冶具となる。(III)こうして作製された試料の貯蔵弾性率G’を、アイティー計測制御(株)製の動的粘弾性測定装置「DVA-220」を用いて、温度23℃、周波数1Hz、初期歪み1Nの条件下で測定した。
【0108】
(A)偏光素子の作製
平均重合度約2,400、ケン化度99.9モル%以上であるポリビニルアルコールからなる厚さ75μmのポリビニルアルコールフィルムを、乾式で約5倍に一軸延伸し、さらに緊張状態を保ったまま、60℃の純水に1分間浸漬した後、ヨウ素/ヨウ化カリウム/水の重量比が0.05/5/100の水溶液に28℃で60秒間浸漬した。その後、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水の重量比が8.5/8.5/100の水溶液に72℃で300秒間浸漬した。引き続き26℃の純水で20秒間洗浄した後、65℃で乾燥して、ポリビニルアルコールにヨウ素が吸着配向された厚み28μmの偏光素子を得た。
【0109】
(B)接着剤の調製
アセトアセチル基を含有する変性PVA系樹脂(三菱ケミカル(株)製:ゴーセネックスZ-410)50gを950gの純水に溶解し、90℃で2時間加熱後常温に冷却し、PVA溶液Aを得た。
【0110】
夫々の化合物が下記の濃度になるように前記PVA溶液A、マレイン酸、グリオキサール、純水を配合しPVA系接着剤1を調製した。
【0111】
PVA濃度 3.0 重量%
マレイン酸 0.01重量%
グリオキサール 0.15重量%
【0112】
(C)セルロースアシレートフィルムの鹸化
市販のセルロースアシレートフィルムTD40(富士フイルム(株)製:膜厚40μm)を、55℃に保った1.5mol/LのNaOH水溶液(鹸化液)に2分間浸漬した後、フィルムを水洗した。その後、25℃の0.05mol/Lの硫酸水溶液に30秒浸漬した後、更に水洗浴を30秒流水下に通して、フィルムを中性の状態にした。そして、エアナイフによる水切りを3回繰り返して水を落とした後に、70℃の乾燥ゾーンに15秒間滞留させて乾燥し、鹸化処理したフィルムを作製した。
【0113】
(D)光学積層体の作製
(偏光板1の作製)
先に得られた偏光素子の両面に、上記で作製した鹸化処理したセルロースアシレートフィルムを、PVA系接着剤1を介し、乾燥後の接着剤層の厚みが両面共、100nmになるように調整し、ロール貼合機を用いて貼合した後に80℃で5分間乾燥し、偏光板1を得た。
【0114】
(平衡含水率の測定)
上記で得られた偏光板1を温度20℃で、相対湿度30%、35%、40%、45%、又は50%の条件で、72時間保管し、保管66時間、69時間、及び72時間でカールフィッシャー法を用いて、含水率を測定した。何れの湿度条件でも、保管66時間、69時間、72時間で含水率の値が変わらなかった。したがって、偏光板1の含水率は、保管環境の平衡含水率と同じになっているとみなすことができる。偏光板の含水率が、ある保管温度で平衡に達したときは、偏光板中の偏光素子の含水率も同様に、その保管温度で平衡に達しているとみなすことができる。また、偏光板中の偏光素子の含水率が、ある保管環境で平衡に達したときは、偏光板の含水率も同様に、その保管環境で平衡に達したとみなすことができる。
【0115】
上記で得られた偏光板1の乾燥直後の含水率をカールフィッシャー法で測定し、上記の平衡含水率と比較した。温度20℃相対湿度30%の含水率と同等であった。偏光板1について、温度20℃相対湿度30%の平衡含水率と同等となるように、温度20℃相対湿度30%の条件で72時間保管した。
【0116】
(偏光板2~5の作製)
偏光板1に対し、夫々、含水率が、表1に記載の平衡含水率と同等となるように、乾燥温度または時間を変更し、その後、温度20℃相対湿度35%、40%、45%、又は50%の条件で72時間保管した。
【0117】
(E)反射防止フィルムの作製
(防眩性ハードコートフィルムの作製)
紫外線硬化型のウレタンアクリレート系モノマー(屈折率1.51)50重量部、紫外線硬化型のアクリレート系モノマー(屈折率1.51)50重量部、平均粒子径3.5μmのメチルメタクリレート-スチレン共重合体ビーズ(屈折率1.55)14重量部、ベンゾフェノン系光重合開始剤5重量部、およびトルエンを混合した固形分濃度40重量%の溶液を、厚み40μmのトリアセチルセルロースフィフィルム(屈折率1.49)上に塗布し、120℃で5分間乾燥した。その後、紫外線照射により硬化処理を行い、表面に凹凸構造を有する厚み約4μmの防眩性ハードコート層を形成し、防眩性ハードコートフィルムを作製した。この防眩性ハードコート層の算術平均粗さRaは0.43nmであった。
【0118】
(クリアーハードコートフィルムの作製)
紫外線硬化型のウレタンアクリレート系モノマー(屈折率1.51)50重量部、紫外線硬化型のアクリレート系モノマー(屈折率1.51)50重量部、ベンゾフェノン系光重合開始剤5重量部、およびトルエンを混合した固形分濃度40重量%の溶液を、厚み40μmのトリアセチルセルロースフィフィルム(屈折率1.49)上に塗布し、120℃で5分間乾燥した。その後、紫外線照射により硬化処理を行い、表面が平坦な厚み約4μmのクリアーハードコート層を形成し、クリアーハードコートフィルムを作製した。このクリアーハードコート層の算術平均粗さRaは0.03nmであった。
【0119】
(反射防止フィルム1の作製)
特開2019-035969号公報の実施例に準じて、上述の防眩性ハードコートフィルムを、ロールトゥートール方式のスパッタ成膜装置に導入し、フィルムを走行させながら、防眩性ハードコート層形成面にボンバード処理(Arガスによるプラズマ処理)を行った後、密着性向上層として5nmのSiOx層(x<2)を成膜し、その上に、20nmのNb2O5層、35nmのSiO2層、35nmのNb2O5層および100nmのSiO2層を順に成膜し4層構成の厚み190nmの反射防止層を形成した。反射防止層上に、防汚層としてフッ素系の樹脂を厚み5nmとなるように形成して、反射防止フィルム1を作製した。反射防止フィルム1の温度40℃相対湿度90%での透湿度は5g/m2・dayだった。
【0120】
(反射防止フィルム2と3の作製)
特開2017-227898号公報の実施例を参考に製膜条件を変更し、反射防止フィルム1とは透湿度が異なる反射防止フィルム2と3を作製した。反射防止フィルム2と3の反射防止フィルム2と3の温度40℃相対湿度90%での透湿度は夫々10g/m2・dayと60g/m2・dayだった。
【0121】
(反射防止フィルム4の作製)
防眩性ハードコートフィルムに代えてクリアーハードコートフィルムを用いた点以外は、反射防止フィルム1と同様にして、反射防止フィルム4を作製した。反射防止フィルム4の温度40℃相対湿度90%での透湿度は5g/m2・dayだった。
【0122】
(反射防止フィルム5の作製)
反射防止層をスパッタ方式から塗布型に代えた点、及び反射防止層の層構成を以下のようにした点以外は、反射防止フィルム1と同様にして、反射防止フィルム5を作製した。反射防止フィルム5の温度40℃相対湿度90%での透湿度は300g/m2・dayだった。
【0123】
反射防止層は特開2004-126220号公報、段落[0105]を参考にして、以下の3層構成の反射防止層とした。
1層目 中屈折率層(屈折率:1.63、膜厚:67nm)
2層目 高屈折率層(屈折率:1.90、膜厚:107nm)
3層目 低屈折率層(屈折率:1.43、膜厚:86nm)
【0124】
(F)粘着剤層の準備
粘着剤層A:離型剤付き38μmPETが両面に付いた、市販のシート状アクリル系粘着剤層。粘着剤層の厚みは5μmであり、貯蔵弾性率は0.14MPaである。
粘着剤層B:離型剤付き38μmPETが両面に付いた、市販のシート状アクリル系粘着剤層。粘着剤層の厚みは25μmであり、貯蔵弾性率は0.06MPaである。
【0125】
[実施例1]
上記で作製した反射防止フィルム1の反射防止層を積層していない面に、粘着剤層Aを貼合した。なお、これらの材料の貼り合わせの際には、各材料の貼合面にコロナ処理を実施した。
【0126】
上記で作製した偏光板1の片方の面に粘着剤層Aを介して反射防止フィルム1を積層し、もう一方の面に粘着剤層Bを積層して実施例1の光学積層体を作製した。なお、これらの材料の貼りあわせの際には、各材料の貼合面にコロナ処理を実施した。得られた光学積層体は、「反射防止フィルム1/粘着剤層A/偏光板1/粘着剤層B/離型剤付きPET」の層構成であった。
【0127】
得られた光学積層体について、これを構成するために用いた偏光板の含水率と同等となるように、偏光板を72時間保管した条件と同じ条件で72時間保管して光学積層体の含水率を調整した。光学積層体についても72時間保管することにより、その保管環境で平衡に達しているとみなすことができ、光学積層体中の偏光板及び偏光素子の含水率も同様に、その保管環境で平衡に達しているとみなすことができる。また、光学積層体中の偏光板または偏光素子の含水率が、ある保管環境で平衡に達したときは、光学積層体の含水率も同様に、その保管環境で平衡に達したとみなすことができる。
【0128】
[実施例2~6と比較例1~3]
実施例1の光学積層体に対して、偏光板及び反射防止フィルムとして、表1に記載の偏光板及び反射防止フィルムを用いた点以外は実施例1と同様にして実施例2~6及び比較例1~3の光学積層体を作製し、その後用いた偏光板の含水率と同等となるように、偏光板を72時間保管した条件と同じ条件で72時間保管して光学積層体の含水率を調整した。
【0129】
[評価]
(映り込み)
得られた光学積層体を、200mm×200mmの大きさに裁断し、厚さ0.7mm、300mm×300mmの大きさの無アルカリガラスに粘着剤層Bを介して貼合した。偏光板1に粘着剤層Bを積層し、200mm×200mmの大きさに裁断し、上記無アルカリガラスの光学積層体を貼合していない側に、偏光板の吸収軸が互いにクロスニコルになるように、偏光板1を、粘着剤層Bを介して貼合し、評価用サンプルを作製した。
【0130】
上記で作製した評価用サンプルを反射防止フィルムが視認側になるように観察台の上に置き、斜めから卓上蛍光灯を照射し、照射方向に対し、鏡面方向で映り込みを以下の基準で評価した。評価結果を表1に示す。
A:蛍光灯の映り込みが全く見えない。
B:蛍光灯の映り込みが殆ど見えない。
C:蛍光灯の映り込みが僅かに見える。
D:蛍光灯の映り込みがはっきり見える。
【0131】
(耐擦傷性)
スチールウール(日本スチールウール Bonster#0000)を擦傷試験機に固定し、2000gの荷重をかけて、10往復の擦傷試験を行い、試験後の反射防止フィルムの表面の外観を目視で確認した。傷が確認されなかったものを「A」、傷が確認されたものを「D」とした。評価結果を表1に示す。
【0132】
(湿熱耐久試験)
上記で作製した光学積層体を、それぞれ、35mm×35mmの大きさに裁断して、剥離フィルムを剥がし、50mm×50mm、厚さ1mmのガラス板に貼合し、評価サンプルを作製した。この評価サンプルに、温度50℃、圧力5kgf/cm2(490.3kPa)で1時間オートクレーブ処理を施した後、温度23℃相対湿度55%の環境下で24時間放置した。その後、偏光度を測定し(初期値)、温度85℃相対湿度85%の条件で500時間、保管した後、再び偏光度を測定した。偏光度は日本分光(株)製のV7100を用いて、作製した2枚の偏光板を吸収軸を平行に重ね合わせた場合の透過率(Tp)及び吸収軸を直交させて重ね合わせた場合の透過率(Tc’)を測定し、下記式から偏光度(P)を算出した。
偏光度P=((Tp-Tc’)/(Tp+Tc’))0.5 × 100[%]
【0133】
また、下記式から偏光度の変化量を算出した。
偏光度の変化量ΔP=(偏光度(初期値))-(保管後の偏光度)
【0134】
上記、偏光度の変化量の結果を基に以下の基準で評価を行った。評価結果を表1に示す。
A:偏光度変化量ΔPが0.01%以下、
B:偏光度変化量ΔPが0.01%より大きく0.02%以下、
C:偏光度変化量ΔPが0.02%より大きく0.05%以下、
D:偏光度変化量ΔPが0.05%より大きい。
【0135】
(高温耐久試験)
上記で作製した実施例1~6及び比較例1~3の光学積層体を、それぞれ、50mm×100mmの大きさに裁断して、剥離フィルムを剥がし、粘着剤層Bの表面を無アルカリガラス〔商品名“EAGLE XG”、コーニング社製〕に貼合することによって、評価サンプルを作製した。この評価サンプルに、温度50℃、圧力5kgf/cm2(490.3kPa)で1時間オートクレーブ処理を施した後、温度23℃、相対湿度55%の環境下で24時間放置した。その後、透過率を測定し(初期値)、温度95℃の加熱環境下に保管し、240~960時間まで240時間おきに透過率を測定した。初期値に対し透過率低下量が5%以上に達した時間を基に以下の基準で評価を行った。得られた結果を表1に示す。
A:960時間経過時の透過率の低下が5%未満、
B:720時間経過時又は960時間経過時の透過率の低下が5%以上、
C:480時間経過時の透過率の低下が5%以上、
D:240時間経過時の透過率の低下が5%以上。
【0136】