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特許7420852硬化型樹脂組成物、これから製造される薄膜、前記薄膜を含む色変換パネルおよび前記色変換パネルを含む表示装置
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  • 特許-硬化型樹脂組成物、これから製造される薄膜、前記薄膜を含む色変換パネルおよび前記色変換パネルを含む表示装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】硬化型樹脂組成物、これから製造される薄膜、前記薄膜を含む色変換パネルおよび前記色変換パネルを含む表示装置
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/14 20060101AFI20240116BHJP
   C08K 7/26 20060101ALI20240116BHJP
   G02B 1/111 20150101ALI20240116BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20240116BHJP
   G02B 1/18 20150101ALI20240116BHJP
   H10K 59/00 20230101ALI20240116BHJP
   H05B 33/02 20060101ALI20240116BHJP
   H10K 50/10 20230101ALI20240116BHJP
   H05B 33/12 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
C08L83/14
C08K7/26
G02B1/111
G02B5/20
G02B1/18
H10K59/00
H05B33/02
H05B33/14 A
H05B33/12 E
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2022044318
(22)【出願日】2022-03-18
(65)【公開番号】P2022151762
(43)【公開日】2022-10-07
【審査請求日】2022-03-18
(31)【優先権主張番号】10-2021-0037500
(32)【優先日】2021-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】590002817
【氏名又は名称】三星エスディアイ株式会社
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI Co., LTD.
【住所又は居所原語表記】150-20 Gongse-ro,Giheung-gu,Yongin-si, Gyeonggi-do, 446-902 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】李 承 恩
(72)【発明者】
【氏名】徐 賢 柱
(72)【発明者】
【氏名】柳 智 鉉
(72)【発明者】
【氏名】徐 東 均
(72)【発明者】
【氏名】蘇 旻 至
(72)【発明者】
【氏名】申 東 珠
(72)【発明者】
【氏名】李 成 根
【審査官】西山 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-027262(JP,A)
【文献】特開2016-084267(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00- 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケイ素含有重合体、
Si-NMR分析によるQ4領域のピークの最大値がQ3領域のピークの最大値の2倍以上である中空シリカ粒子、および
溶媒
を含み、
前記ケイ素含有重合体は、下記化学式1で表されるカルボシラン-シロキサン共重合体を含む、硬化型樹脂組成物:
【化1】

上記化学式1中、
~Rは、それぞれ独立して、水素原子、または置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数2~30のアルケニル基、置換もしくは非置換の炭素数2~30のアルキニル基、置換もしくは非置換の炭素数1~30のヘテロアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数6~30のアリール基、置換もしくは非置換の炭素数3~30のシクロアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数2~30のヘテロシクロアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルコキシ基、カルボキシル基、R(C=O)-、R(C=O)O-(ここで、Rは水素原子、炭素数1~30のアルキル基、炭素数3~30のシクロアルキル基、炭素数6~30のアリール基、またはこれらの組み合わせである)、エポキシ基含有1価有機基、(メタ)アクリル基、(メタ)アクリレート基、またはこれらの組み合わせであり、
Yは、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルキレン基、置換もしくは非置換の炭素数2~30のアルケニレン基、置換もしくは非置換の炭素数3~30のシクロアルキレン基、置換もしくは非置換の炭素数6~30のアリーレン基、またはこれらの組み合わせであり、
0≦M≦0.5、0≦D≦0.5、0<T1≦0.95、0<T2≦0.2、0<Q≦0.95であり、
M+D+T1+T2+Q=1である。
【請求項2】
前記化学式1において、M=0、0≦D≦0.2、0<T1<0.5、0<T2<0.2、0.5≦Q≦0.95、およびD+T1+T2+Q=1である、請求項1に記載の硬化型樹脂組成物。
【請求項3】
前記化学式1において、M=0、D=0、0<T1<0.4、0<T2<0.2、0.6≦Q≦0.9、およびT1+T2+Q=1である、請求項1に記載の硬化型樹脂組成物。
【請求項4】
前記ケイ素含有重合体のポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)は、1,000g/mol~100,000g/molである、請求項1~3のいずれか1項に記載の硬化型樹脂組成物。
【請求項5】
前記ケイ素含有重合体は、前記硬化型樹脂組成物の総質量を基準にして1質量%~30質量%含まれる、請求項1~4のいずれか1項に記載の硬化型樹脂組成物。
【請求項6】
沸点が100℃~250℃である有機高分子をさらに含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の硬化型樹脂組成物。
【請求項7】
前記有機高分子は、ポリアルキレンオキシド系共重合体、ポリアリーレンオキシド系共重合体、グリコール系共重合体、またはこれらの組み合わせを含む、請求項6に記載の硬化型樹脂組成物。
【請求項8】
前記有機高分子の数平均分子量(Mn)は、100g/mol~10,000g/molである、請求項6または7に記載の硬化型樹脂組成物。
【請求項9】
前記有機高分子は、前記硬化型樹脂組成物の総質量を基準にして0.1質量%~10質量%含まれる、請求項6~のいずれか1項に記載の硬化型樹脂組成物。
【請求項10】
前記中空シリカ粒子の平均直径(D50)は10nm~300nmである、請求項1~9のいずれか1項に記載の硬化型樹脂組成物。
【請求項11】
前記中空シリカ粒子の平均空隙率は40%~90%である、請求項1~10のいずれか1項に記載の硬化型樹脂組成物。
【請求項12】
前記中空シリカ粒子は、前記硬化型樹脂組成物の総質量を基準にして0.1質量%~15質量%含まれる、請求項1~11のいずれか1項に記載の硬化型樹脂組成物。
【請求項13】
フッ素系界面活性剤を含む表面改質用添加剤をさらに含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の硬化型樹脂組成物。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載の硬化型樹脂組成物が硬化されてなる薄膜。
【請求項15】
前記薄膜は、500nm~550nmの波長の光に対する屈折率が1.35以下であり、水に対する接触角が105°以上である、請求項14に記載の薄膜。
【請求項16】
請求項14または15に記載の薄膜を含む色変換パネル。
【請求項17】
請求項16に記載の色変換パネルを含む表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化型樹脂組成物、これから製造される薄膜、前記薄膜を含む色変換パネルおよび前記色変換パネルを含む表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイ分野が発達するにつれてディスプレイを用いた各種表示装置が多様化しており、このような表示装置のうち、OLEDまたは量子ドットを含む表示装置のような自発光材料の発光効率を増大させる技術に対する要求が継続的に発生している。低屈折率素材をディスプレイを形成するパネルの様々な薄膜の間に使用すれば、内部で光が移動する時に損失する光量をリサイクリングさせることによって発光効率を高めることができる。また、低屈折率特性は低反射率効果を生じさせるため、光センサー外部のレンズの低反射層、またはディスプレイもしくは太陽電池の最外層の反射防止膜(AR)などに使用できる。
【0003】
近年、ディスプレイ装置はさらに薄く、さらに軽く、曲げられるか(bendable)、巻くことが可能で(rollable)あることが求められるようになっている。このような特性の実現のために薄くて柔軟な(flexible)膜の導入が検討されている。低屈折率コーティング層の屈折率が低いほどコーティング層の厚さを低減することができ、コーティング膜のマージンが広くなりデバイスの目的とする効率は増加する。一方、低屈折率素材の屈折率を低くするための課題だけでなく、ディスプレイ装置の製造時または使用時における熱に対する安定性、および上/下部膜との優れた接着性など改善しなければならない問題が存在する。
【0004】
ここで、特許文献1には、シルセスキオキサンを含む液晶配向剤およびこれを用いた液晶配向膜に関する技術が開示されている。また、特許文献2には、シリカのシラノール基量の測定方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6617634号公報
【文献】特許第6501636号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、低い屈折率と水に対する高い接触角を有しながらも、基材または隣接する膜との接着性が改善された硬化型樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の一形態によれば、ケイ素含有重合体と、Si-NMR分析によるQ4領域のピークの最大値がQ3領域のピークの最大値の2倍以上である中空シリカ粒子、および溶媒を含む硬化型樹脂組成物が提供される。
【0008】
(2)一形態において、前記ケイ素含有重合体は、下記化学式1で表されるカルボシラン-シロキサン共重合体を含む:
【0009】
【化1】
【0010】
上記化学式1中、
~Rは、それぞれ独立して、水素原子、または置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数2~30のアルケニル基、置換もしくは非置換の炭素数2~30のアルキニル基、置換もしくは非置換の炭素数1~30のヘテロアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数6~30のアリール基、置換もしくは非置換の炭素数3~30のシクロアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数2~30のヘテロシクロアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルコキシ基、カルボキシル基、R(C=O)-、R(C=O)O-(ここで、Rは水素原子、炭素数1~30のアルキル基、炭素数3~30のシクロアルキル基、炭素数6~30のアリール基、またはこれらの組み合わせである)、エポキシ基含有1価有機基、(メタ)アクリル基、(メタ)アクリレート基、またはこれらの組み合わせであり、
Yは、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルキレン基、置換もしくは非置換の炭素数2~30のアルケニレン基、置換もしくは非置換の炭素数3~30のシクロアルキレン基、置換もしくは非置換の炭素数6~30のアリーレン基、またはこれらの組み合わせであり、
0≦M≦0.5、0≦D≦0.5、0<T1≦0.95、0<T2≦0.2、0<Q≦0.95であり、
M+D+T1+T2+Q=1である。
【0011】
(3)一実施形態において、前記化学式1中、M=0、0≦D≦0.2、0<T1<0.5、0<T2<0.2、0.5≦Q≦0.95、およびD+T1+T2+Q=1である。
【0012】
(4)一実施形態において、前記化学式1中、M=0、D=0、0<T1<0.4、0<T2<0.2、0.6≦Q≦0.9、およびT1+T2+Q=1である。
【0013】
(5)一実施形態において、前記ケイ素含有重合体のポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)は、1,000g/mol~100,000g/molである。
【0014】
(6)一実施形態において、前記ケイ素含有重合体は、前記硬化型樹脂組成物の総質量を基準にして1質量%~30質量%含まれる。
【0015】
(7)一実施形態において、前記硬化型樹脂組成物は、沸点が100℃~250℃である有機高分子をさらに含む。
【0016】
(8)一実施形態において、前記有機高分子は、ポリアルキレンオキシド系共重合体、ポリアリーレンオキシド系共重合体、グリコール系共重合体、またはこれらの組み合わせを含む。
【0017】
(9)一実施形態において、前記有機高分子の数平均分子量(Mn)は、100g/mol~10,000g/molである。
【0018】
(10)一実施形態において、前記有機高分子は、前記硬化型樹脂組成物の総質量を基準にして0.1質量%~10質量%含まれる。
【0019】
(11)一実施形態において、前記中空型シリカ粒子の平均直径(D50)は、10nm~300nmである。
【0020】
(12)一実施形態において、前記中空シリカ粒子の平均空隙率は、40%~90%である。
【0021】
(13)一実施形態において、前記中空シリカ粒子は、前記硬化型樹脂組成物の総質量を基準にして0.1質量%~15質量%含まれる。
【0022】
(14)一実施形態において、前記硬化型樹脂組成物は、フッ素系界面活性剤を含む表面改質用添加剤をさらに含む。
【0023】
(15)本発明の他の一実施形態による薄膜は、前記硬化型樹脂組成物を硬化させて製造される。
【0024】
(16)一実施形態において、前記薄膜は、500nm~550nmの波長の光に対する屈折率が1.35以下であり、水に対する接触角が105°以上である。
【0025】
(17)本発明の他の一実施形態による色変換パネルは、前記薄膜を含む。
【0026】
(18)本発明のまた他の一実施形態による表示装置は、前記色変換パネルを含む。
【発明の効果】
【0027】
本発明の一実施形態による硬化型樹脂組成物は低い温度で硬化可能であり、これから製造される薄膜は低い屈折率、水に対する高い接触角、および高い接着性を有する。これにより、一実施形態による組成物から製造される薄膜は多様な表示装置で有利に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の一実施形態による色変換パネルを概略的に示した平面図である。
図2図1のII-II線に沿って切断した断面を概略的に示した断面図である。
図3図2の一変形例による断面図である。
図4図2図3の一変形例による断面図である。
図5図2の一変形例による断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、添付された図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。但し、本発明を説明することにおいて、すでに公知された機能あるいは構成に関する説明は、本発明の要旨を明瞭にするために省略する。
【0030】
本発明を明確に説明するために説明上不必要な部分を省略し、明細書全体にわたって同一または類似の構成要素については同一な参照符号を付けるようにする。また、図面に示された各構成の大きさおよび厚さは説明の便宜のために任意に示し、本発明が必ずしも示されたところに限定されない。
【0031】
図面で、様々な層および領域を明確に表現するために厚さを拡大して示した。また、図面において説明の便宜のために、一部の層および領域の厚さを誇張して示した。層、膜、領域、板などの部分が他の部分「の上に」または「上に」あるという時、これは他の部分「の直上に」ある場合だけでなく、その中間にまた他の部分がある場合も含む。
【0032】
本発明の一実施形態は、低い屈折率を有し水に対する高い接触角を有しつつ、隣接の膜または基材との接着性が改善された硬化型樹脂組成物に関する。
【0033】
ディスプレイ分野が発達するにつれてディスプレイを用いた各種表示装置が多様化しており、このような表示装置のうち、OLEDまたは量子ドットを含む表示装置のような自発光材料の発光効率を増大させる技術に対する要求が継続的に発生している。低屈折率素材は低反射率特性を有するので光センサー外部のレンズの低反射層、ディスプレイもしくは太陽電池の最外層の反射防止(AR:Anti-reflection)膜、または光が移動するデバイス内部で光の損失を減らして効率を高めるための層に使用できる。一方、低屈折率コーティング層の屈折率が低いほどコーティング層の厚さを減らすことができてコーティング膜のマージンが広くなり、デバイスの目的とする効率は増加するようになる。
【0034】
低屈折率素材を得るための既存の方法のうち、熱硬化性樹脂を用いる場合、ナノ気孔を形成するために約350℃以上、少なくとも約300℃以上の高い温度で樹脂を硬化しなければならないことが知られている。化学気相蒸着(CVD:Chemical Vapor Deposition)のような方法は、高価な装置を必要とするだけでなく、厚いコーティング膜を形成しにくく、またナノ気孔を形成しにくく低い屈折率を有する薄膜を製造しにくい。フッ素系化合物やエポキシ高分子を使用する場合、低屈折率を実現しにくく、実現するとしても厚さがマイクロメートル水準に上昇する場合、クラックが発生する可能性が高い。一方、シリコン素材の場合、低屈折率の実現が容易であることが知られているが、厚さが厚くなるほど上/下部膜との付着力が低下するという問題がある。特に、低屈折率を実現する層の下部にカラーフィルタ層のようなパターンを有する層が存在する場合、パターンによって基板が平らでなく段差を有することがある。この時、下部パターンの段差が大きくてパターンの間の隙間に低屈折率を実現する層のコーティング液が入って前記コーティング液で満たされる場合、その部分は低屈折率層の厚さが非常に厚くなることがあり、この部分でクラックが発生する可能性がある。したがって、低い屈折率を有しながらもクラックが発生せず上/下部膜との接着力が良い厚い膜を実現することは難しい。
【0035】
一実施形態によれば、硬化型樹脂組成物として低い温度、例えば、約300℃以下、例えば、約280℃以下、例えば、約270℃以下、例えば、約250℃以下、例えば、約240℃以下で硬化可能であり、これから製造された薄膜が低い屈折率を有しながらも優れた接着性を有する硬化型樹脂組成物が提供される。
【0036】
本発明の一形態は、ケイ素含有重合体と、Si-NMR分析によるQ4領域のピークの最大値がQ3領域のピークの最大値の2倍以上である中空シリカ粒子、および溶媒を含む硬化型樹脂組成物を提供する。
【0037】
前記ケイ素含有重合体は、カルボシラン-シロキサン共重合体を含むことができる。
【0038】
以下、一実施形態による硬化型樹脂組成物の各成分について詳しく説明する。
【0039】
(a)ケイ素含有重合体
低屈折率素材としてケイ素含有重合体が知られている。本発明の一実施形態による硬化型樹脂組成物はポリマーマトリックスとしてケイ素含有重合体を含む。本発明の一実施形態による硬化型樹脂組成物は、特に、下記化学式1で表されるカルボシラン-シロキサン共重合体を含みうる:
【0040】
【化2】
【0041】
上記化学式1中、
~Rは、それぞれ独立して、水素原子、または置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数2~30のアルケニル基、置換もしくは非置換の炭素数2~30のアルキニル基、置換もしくは非置換の炭素数1~30のヘテロアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数6~30のアリール基、置換もしくは非置換の炭素数3~30のシクロアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数2~30のヘテロシクロアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルコキシ基、カルボキシル基、R(C=O)-、R(C=O)O-(ここで、Rは水素原子、炭素数1~30のアルキル基、炭素数3~30のシクロアルキル基、炭素数6~30のアリール基、またはこれらの組み合わせである)、エポキシ基含有1価有機基、(メタ)アクリル基、(メタ)アクリレート基、またはこれらの組み合わせであり、
Yは、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルキレン基、置換もしくは非置換の炭素数2~30のアルケニレン基、置換もしくは非置換の炭素数3~30のシクロアルキレン基、置換もしくは非置換の炭素数6~30のアリーレン基、またはこれらの組み合わせであり、
0≦M≦0.5、0≦D≦0.5、0<T1≦0.95、0<T2≦0.2、0<Q≦0.95であり、
M+D+T1+T2+Q=1である。
【0042】
ここで、「(メタ)アクリル基」は、CH=CH-CO-またはCH=C(CH)-CO-である。「(メタ)アクリレート基」は、CH=CH-CO-O-またはCH=C(CH)-CO-O-である。
【0043】
一実施形態で、前記化学式1において、M=0、0≦D≦0.2、0<T1<0.5、0<T2<0.2、0.5≦Q≦0.95、およびD+T1+T2+Q=1であってもよく、例えば、M=0、D=0、0<T1<0.4、0<T2<0.2、0.6≦Q≦0.9、およびT1+T2+Q=1であり得る。
【0044】
一実施形態による硬化型樹脂組成物がポリマーマトリックスとして前記のようなカルボシラン-シロキサン共重合体を含む場合、低い屈折率を有しながらも高温でクラックが発生することを抑制することができる。
【0045】
好ましくは、前記化学式1において、R~Rは、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、炭素数2~20のヘテロシクロアルキル基、エポキシ基含有1価有機基、炭素数6~20のアリール基、(メタ)アクリル基、(メタ)アクリレート基、(メタ)アクリル基で置換されたアルキル基、(メタ)アクリレート基で置換されたアルキル基、またはこれらの組み合わせでありうるが、これらに限定されない。
【0046】
好ましくは、前記化学式1において、Yは炭素数1~10のアルキレン基、炭素数4~10のシクロアルキレン基、炭素数6~20のアリーレン基、またはこれらの組み合わせでありうるが、これらに限定されない。
【0047】
前記化学式1から分かるように、前記カルボシラン-シロキサン共重合体は主連結基に該当するケイ素(Si)原子と酸素(O)間の結合以外に、前記共重合体の全体構造単位の総モル数を基準にして一定含量、即ち、20モル%以下の二つのケイ素(Si)原子の間を連結する炭化水素基Yを有することによって、前記共重合体が高い表面硬度を有しながらも高温でクラックが発生しないように共重合体の構造に柔軟性を付与することができ、さらに、高い透過率と低い屈折率とを有するポリマーマトリックスを形成することができる。
【0048】
前記化学式1で表されるカルボシラン-シロキサン共重合体のポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)は、例えば、1,000g/mol~100,000g/mol、例えば1,000g/mol~90,000g/mol、例えば、1,000g/mol~80,000g/mol、例えば、1,000g/mol~70,000g/mol、例えば、1,000g/mol~60,000g/mol、例えば、1,000g/mol~50,000g/mol、例えば、1,000g/mol~40,000g/mol、例えば、1,000g/mol~30,000g/mol、例えば、1,000g/mol~20,000g/mol、例えば、1,000g/mol~10,000g/mol、例えば、1,000g/mol~9,000g/mol、例えば、1,000g/mol~8,000g/mol、例えば、1,000g/mol~7,000g/mol、例えば、1,500g/mol~7,000g/mol、例えば、2,000g/mol~7,000g/mol、例えば、2,000g/mol~6,500g/mol、例えば、2,000g/mol~6,000g/mol、例えば、2,000g/mol~5,500g/mol、例えば、2,000g/mol~5,000g/mol、例えば、2,000g/mol~4,500g/mol、例えば、2,000g/mol~4,000g/mol、例えば、2,500g/mol~4,000g/mol、例えば、3,000g/mol~4,000g/molであり得るが、これらに限定されない。
【0049】
前記化学式1で表されるカルボシラン-シロキサン共重合体が前記範囲の重量平均分子量を有することによって、これから製造される膜は低い屈折率を有しながらもクラックが発生しにくい。
【0050】
前記化学式1で表されるカルボシラン-シロキサン共重合体は、特に制限されないが、下記化学式2で表されるシラン化合物、および下記化学式3で表されるカルボシラン化合物を加水分解縮合反応させて製造することができる。
【0051】
【化3】
【0052】
上記化学式2中、
は、それぞれ独立して、水素原子、または置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数2~30のアルケニル基、置換もしくは非置換の炭素数2~30のアルキニル基、置換もしくは非置換の炭素数1~30のヘテロアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数6~30アリール基、置換もしくは非置換の炭素数3~30のシクロアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数2~30のヘテロシクロアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルコキシ基、カルボキシル基、R(C=O)-、R(C=O)O-(ここで、Rは水素、炭素数1~30のアルキル基、炭素数3~30のシクロアルキル基、炭素数6~30のアリール基、またはこれらの組み合わせである)、エポキシ基含有1価有機基、(メタ)アクリル基、(メタ)アクリレート基、またはこれらの組み合わせであり、
は、それぞれ独立して、水素原子、または炭素数1~30のアルキル基、炭素数3~30のシクロアルキル基、炭素数2~30のアルケニル基、または炭素数6~30のアリール基のうちのいずれか一つを示し、
nは、0≦n<4を示す。
【0053】
【化4】
【0054】
上記化学式3中、
は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~30のアルキル基、炭素数3~30のシクロアルキル基、炭素数2~30のアルケニル基、または炭素数6~30のアリール基のうちのいずれか一つを示し、
Yは、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルキレン基、置換もしくは非置換の炭素数2~30のアルケニレン基、置換もしくは非置換の炭素数3~30のシクロアルキレン基、置換もしくは非置換の炭素数6~30のアリーレン基、またはこれらの組み合わせを示す。
【0055】
前記化学式2で、nは、0≦n<4の整数であってよい。また、nは0≦n<3の整数であり得る。
【0056】
前記化学式2で表されるシラン化合物と前記化学式3で表されるカルボシラン化合物との加水分解縮重合反応は、水を含む溶媒内で酸触媒または塩基触媒下で行うことができる。
【0057】
前記化学式1~化学式3で、「置換」とは、それぞれの官能基がアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、エポキシ基、(メタ)アクリル基、(メタ)アクリレート基、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン基、アミノ基、またはこれらの組み合わせで置換されたものを示す。
【0058】
好ましくは、前記化学式2において、Rは、炭素数1~10のアルキル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、エポキシ基含有1価有機基、炭素数6~20のアリール基、(メタ)アクリル基、(メタ)アクリレート基、(メタ)アクリル基で置換されたアルキル基、(メタ)アクリレート基で置換されたアルキル基、またはこれらの組み合わせでありうるが、これらに限定されない。
【0059】
前記化学式2で表されるシラン化合物の具体的な例としては、テトラメチルオルトシリケート(TMSO)、テトラエチルオルトシリケート(TEOS)、テトライソプロポキシシラン、メチルトリメトキシシラン(MTMS)、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、メチル-3,3,3-トリフルオロプロピルジメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシトリプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、N-β(アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-β(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、トリメチルシラノールなどが挙げられるが、これらに限定されない。前記化学式2で表されるシラン化合物は、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0060】
前記化学式3で表されるカルボシラン化合物の例としては、1,2-ビス(トリメトキシシリル)エタン(1,2-bis(trimethoxysilyl)ethane)、1,2-ビス(トリエトキシシリル)エタン(1,2-bis(triethoxysilyl)ethane)、1,4-ビス(トリメトキシシリル)シクロヘキサン(1,4-bis(trimethoxysilyl)cyclohexane)などが挙げられるが、これらに限定されない。前記化学式3で表されるカルボシラン化合物は、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0061】
前記化学式1で表されるカルボシラン-シロキサン共重合体は、前記硬化型樹脂組成物の総質量を基準にして、例えば、1質量%~30質量%、例えば、1質量%~20質量%、例えば、2質量%~20質量%、例えば、2質量%~15質量%、例えば、3質量%~15質量%、例えば、3質量%~10質量%含まれうるが、これらの範囲に限定されない。
【0062】
前記化学式1で表されるカルボシラン-シロキサン共重合体が前記硬化型樹脂組成物内に前記範囲で含まれることによって、これから製造される膜が低い屈折率を有しながらもクラックが発生する可能性が低い。
【0063】
(b)中空シリカ粒子
一実施形態による硬化型樹脂組成物は膜の屈折率をさらに減少させるために中空シリカ粒子を含み、前記中空シリカ粒子がSi-NMR分析によるQ4領域のピークの最大値(最大ピーク値)がQ3領域のピークの最大値(最大ピーク値)の2倍以上であることを特徴とする。これによって、前記膜の上/下部に存在する他の膜、および/または基板との接着性が顕著に向上する。
【0064】
シリコン系樹脂は低屈折率素材として知られており、前記シリコン系樹脂が中空粒子を含む場合、中空粒子内の空隙によって膜の屈折率をさらに減少させることができる。また、このようなシリコン系樹脂は、数ナノメートルから数十マイクロメートル水準の厚さを有する膜として製造される場合にもクラックが発生しにくい耐クラック性を有する。しかし、膜の厚さが厚くなるほどこのような膜を形成する組成物の硬化メカニズムに変化が生じ、コーティング膜と上/下部膜との間の付着力(または結合力)が弱くなって剥離が起こる場合がある。これは前記膜を含む電子部品、例えば、色変換パネルなどの製造工程で大きな問題になることがある。したがって、当該膜の上部または下部に存在するパターンなどを十分にコーティングすることができる程度に厚い膜として製造することができ、かつ、クラックが発生せず、またそのような膜が上/下部膜から剥離されないように付着力(接着性)を増加させる必要がある。
【0065】
本発明者らは、膜の屈折率を減少させるために添加する中空シリカ粒子の表面に存在するシラノール基(Si-OH)の含量が低いほど、これを含むシリコン系硬化型樹脂組成物の接着性が向上しうることを発見した。本発明者らは、中空シリカ粒子のSi-NMR分析で前記粒子表面の(SiO4/2)を示すQ4領域のピークの最大値が(SiO3/2)-OHを示すQ3領域のピークの最大値より2倍以上大きい場合、これから製造される硬化膜の水接触角が105°以上に大きくなって膜が疎水性になりながらも、この膜の上/下部膜をCross-cuttingしてテープで取り剥がすテーピングテスト、即ち、cross-cut taping testで膜の接着性が4B以上と高い値を示すという、全く予想しなかった驚くべき効果を発見して本発明を完成させた。一般には、膜が親水性であるほど上/下部に存在する無機膜との接着性がさらに良いと考えられている。このような観点から、前記本発明の効果は通常の技術者が従来技術から容易に予測できない驚くべきものである。
【0066】
Cross-cut taping testは、ASTM D3359国際標準試験法に基づいて、テストしようとする積層膜の上部から約50μm~125μmの深さで、横および縦方向に一定の長さ、例えば、横約15mm、縦約15mm、長方形にcross-cuttingした後、一定の付着力、例えば、約4.5N/mのテープを使用して、前記cross-cuttingされた部分を付着した後に取り剥がすtaping testを通じて当該積層膜の付着力をテストする試験方法である。前記cross-cut taping testによる付着力評価指標は、ASTM D3359国際標準試験法に開示された評価値の定義によって、前記テスト面積中の前記テープによって取り剥がされる面積の比率を数値化して示す。具体的には、前記指標が0Bである場合、テスト面積全体がテープによって取り剥がされる場合であり、5Bである時はテスト面で剥離が全く起こらない場合である。一実施形態による前記薄膜の場合、このようなcross-cut taping testによる付着力評価指標が4Bと示され、これはテスト面積の20%のみテープによって取り剥がされ、残り80%は剥離されずに維持されるのを意味する。本発明の実施形態による薄膜と異なり、後述の比較例により製造された薄膜の場合、即ち、Si-NMR分析によるQ4領域のピークの最大値がQ3領域のピークの最大値の2倍未満である中空シリカ粒子を含む硬化型樹脂組成物から製造された膜は上部Cross-cut taping testで最大3Bの接着力を示し、中空シリカ粒子の含量が増加するほど膜の接着力はさらに減少して0Bを示す。したがって、前記硬化型樹脂組成物は、ケイ素を含有する重合体と、Si-NMR分析によるQ4領域のピークの最大値がQ3領域のピークの最大値の2倍以上である中空シリカ粒子を含む中空粒子を含むことによって、これから製造される硬化膜がより高い耐熱性と優れた接着性を有することが分かる。
【0067】
一実施形態において、前記中空シリカ粒子は、シラン化合物とアルミニウム前駆体を加水分解縮重合反応させて製造されるアルミノシリケート中空微粒子を含みうる。例えば、大韓民国登録特許第10-1659709号に記載されるような方法で製造されたアルミノシリケート中空微粒子を含みうる。
【0068】
前記大韓民国登録特許第10-1659709号では、有機高分子のミセル(micell)または逆ミセルからなるテンプレートコアにシラン化合物とアルミニウムの前駆体とを特定モル比で反応させてアルミノシリケートシェルが形成されたコアシェル粒子を形成した後、このコアシェル粒子を塩基性水溶液または酸性水溶液と反応させてシェルに微細気孔を形成し、同時に前記コアを溶解させて除去して中空型アルミノシリケート粒子を形成した後、前記中空型アルミノシリケート粒子を水熱処理して粒子の密度が増加した中空型アルミノシリケート微粒子を製造することを開示している。このように製造された中空型アルミノシリケート微粒子は低屈折率特性を有し、前記コアを除去する過程で高温の焼結工程などを経ることがないため中空型アルミノシリケート微粒子間の凝集が防止されうる。また前記コアシェル粒子を塩基性水溶液または酸性水溶液と反応させてシェルに微細気孔を形成した後、これを再び水熱処理によって粒子の密度を増加させることによって、屈折率が低く、耐スクラッチ性などの物理的耐久性に優れ、透過率が増加し、ヘイズが低いという有利な光学特性を有しうる。
【0069】
前記のような中空シリカ粒子の平均直径(D50)は、例えば、10nm~300nm、例えば、10nm~250nm、例えば、10nm~200nm、例えば、10nm~180nm、例えば、20nm~150nm、例えば、20nm~130nm、例えば、30nm~130nm、例えば、40nm~130nm、例えば、50nm~130nm、例えば、50nm~120nm、例えば、50nm~110nm、例えば、60nm~100nmであり得るが、これらに限定されない。中空シリカ粒子の平均直径が前記範囲を充足する場合、ポリマーマトリックスによく分散され、硬化膜の屈折率を効率的に減少させることができ、膜の耐熱性増加および/または優れた接着特性を実現することができる。
【0070】
前記中空シリカ粒子の平均空隙率は、例えば、40%~90%、例えば、40%~80%、例えば、40%~70%、例えば、40%~60%、例えば、40%~50%、例えば、50%~90%、例えば、60%~90%、例えば、70%~90%、例えば、80%~90%、例えば、50%~70%であり得るが、これらに限定されない。中空シリカ粒子の平均空隙率が前記範囲を超過しない範囲であれば、中空シリカ粒子の内部空間の大きさは大きくなりすぎず、外層の厚さは小さくなりすぎないため、中空シリカ粒子の耐久性に優れる。また、中空シリカ粒子の平均空隙率が前記範囲を下回らない範囲であれば、屈折率減少効果および接着性改善効果が十分に得られうる。
【0071】
上記のように、前記中空シリカ粒子は、韓国登録特許第10-1659709号に基づいて作製することができる。Q4/Q3の比率を調節する方法は、特に制限されないが、例えば、(1)中空シリカ製造時の温度、(2)中空シリカ粒子の大きさを均一に維持する点、(3)中空シリカ粒子の表面処理工程、などを適宜調節することにより、行うことができる。
【0072】
前記中空シリカ粒子は、一実施形態による硬化型樹脂組成物の総質量を基準にして、例えば、0.1質量%~15質量%、例えば、1質量%~15質量%、1質量%~10質量%、例えば、2質量%~8質量%含まれてもよく、これらに限定されない。
【0073】
前記Si-NMR分析によるQ4領域の最大ピーク値がQ3領域の最大ピーク値より2倍以上大きい中空シリカ粒子を前記範囲で含むことによって、一実施形態による硬化型樹脂組成物は低い屈折率と水に対する高い接触角、および基板または上/下部膜に対する優れた接着性を有することができる。
【0074】
(c)沸点が100℃~250℃である有機高分子
一実施形態による硬化型樹脂組成物は、沸点が100℃~250℃である有機高分子をさらに含むことができる。
【0075】
沸点が100℃~250℃である有機高分子を含む場合、前記組成物を加熱して硬化させる時、温度が100℃~250℃に上昇することによって、沸点が100℃~250℃の間である前記有機高分子は前記加熱によって硬化する樹脂から蒸発するようになる。これにより、前記樹脂内に前記有機高分子が存在していた所にナノ気孔が形成され、このようなナノ気孔を含まない硬化膜よりさらに低い屈折率を有することができる。
【0076】
沸点が100℃~250℃である有機高分子としては、例えば、ポリアルキレンオキシド系共重合体、ポリアリーレンオキシド系共重合体、グリコール系共重合体、またはこれらの組み合わせなどが挙げられる。
【0077】
前記グリコール系共重合体の例としてはポリエチレングリコール(poly(ethylene)glycol)、ポリプロピレングリコール(poly(propylene)glycol)などが挙げられ、前記ポリアルキレンオキシド系共重合体または前記ポリアリーレンオキシド系共重合体の例としてはポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリフェニレンオキシド(poly(phenylene)oxide)などが挙げられ、これらに限定されない。
【0078】
前記沸点が100℃~250℃である有機高分子の数平均分子量(Mn)は、例えば、100g/mol~10,000g/mol、例えば、100g/mol~8,000g/mol、例えば、200g/mol~7,000g/mol、例えば、300g/mol~6,000g/mol、例えば、400g/mol~5,500g/mol、例えば、400g/mol~5,000g/mol、例えば、500g/mol~5,000g/mol、例えば、500g/mol~4,500g/mol、例えば、600g/mol~5,000g/mol、例えば、600g/mol~4,500g/mol、例えば、700g/mol~5,000g/mol、例えば、700g/mol~4,500g/mol、例えば、800g/mol~5,000g/mol、例えば、800g/mol~4,500g/mol、例えば、900g/mol~5,000g/mol、例えば、900g/mol~4,500g/mol、例えば、1,000g/mol~5,000g/mol、例えば、1,000g/mol~4,500g/mol、例えば、1,000g/mol~4,000g/mol、例えば、1,000g/mol~3,500g/mol、例えば、1,000g/mol~3,000g/mol、例えば、1,000g/mol~2,500g/mol、例えば、1,000g/mol~2,000g/molであり得るが、これらに限定されない。
【0079】
前記有機高分子は、前記硬化型樹脂組成物の総質量を基準にして、例えば、0.1質量%~10質量%、例えば、0.5質量%~10質量%、1質量%~10質量%、例えば、2質量%~8質量%、例えば、3質量%~7質量%含まれてもよく、これらに限定されない。
【0080】
(d)溶媒
一実施形態による硬化型樹脂組成物に含まれる溶媒としては、200℃以上の工程温度で使用可能な任意の溶媒を1種または2種以上混合して使用することができる。例えば、前記溶媒は、非プロトン性溶媒とプロトン性溶媒が挙げられる。
【0081】
例えば、一実施形態による硬化型樹脂組成物で使用可能な非プロトン性溶媒としては、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、メチル-n-ジ-n-プロピルエーテル、ジ-iso-プロピルエーテル、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメチルジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジ-n-プロピルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルモノ-n-プロピルエーテル、ジエチレングリコールメチルモノ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールジ-n-プロピルエーテル、ジエチレングリコールジ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルモノ-n-ヘキシルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールメチルエチルエーテル、トリエチレングリコールメチルモノ-n-ブチルエーテル、トリエチレングリコールジ-nブチルエーテル、トリエチレングリコールメチルモノ-n-ヘキシルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラジエチレングリコールメチルエチルエーテル、テトラエチレングリコールメチルモノ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールジ-n-ブチルエーテル、テトラエチレングリコールメチルモノ-n-ヘキシルエーテル、テトラエチレングリコールジ-n-ブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジ-n-プロピルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルモノ-n-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールジ-n-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールジ-n-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルモノ-n-ヘキシルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルモノ-n-ブチルエーテル、トリプロピレングリコールジ-n-ブチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルモノ-n-ヘキシルエーテル、テトラプロピレングリコールジメチルエーテル、テトラプロピレングリコールジエチルエーテル、テトラジプロピレングリコールメチルエチルエーテル、テトラプロピレングリコールメチルモノ-n-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールジ-n-ブチルエーテル、テトラプロピレングリコールメチルモノ-n-ヘキシルエーテル、テトラプロピレングリコールジ-n-ブチルエーテルなどのエーテル系溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸i-プロピル、酢酸n-ブチル、酢酸i-ブチル、酢酸sec-ブチル、酢酸n-ペンチル、酢酸sec-ペンチル、酢酸3-メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2-エチルブチル、酢酸2-エチルヘキシル、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、酢酸ノニル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、酢酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジ酢酸グリコール、酢酸メトキシトリグリコール、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n-ブチル、プロピオン酸i-アミル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジ-n-ブチルなどのエステル系溶媒;エチレングリコールメチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールエチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコール-n-ブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールエチルエーテルアセテートなどのエーテルアセテート系溶媒があり、これらに限定されない。
【0082】
例えば、一実施形態による硬化型樹脂組成物で使用可能なプロトン性溶媒としては、メタノール、エタノール、n-プロパノール、i-プロパノール、n-ブタノール、i-ブタノール、sec-ブタノール、t-ブタノール、n-ペンタノール、i-ペンタノール、2-メチルブタノール、sec-ペンタノール、t-ペンタノール、3-メトキシブタノール、n-ヘキサノール、2-メチルペンタノール、sec-ヘキサノール、2-エチルブタノール、sec-ヘプタノール、n-オクタノール、2-エチルヘキサノール、sec-オクタノール、n-ノニルアルコール、n-デカノール、sec-ウンデシルアルコール、トリメチルノニルアルコール、sec-テトラデシルアルコール、sec-ヘプタデシルアルコール、フェノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコールなどのアルコール系溶媒;エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ヘキシルエーテル、エトキシトリグリコール、テトラエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル系溶媒;乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n-ブチル、乳酸n-アミルなどのエステル系溶媒などが挙げられる。これらのうち、保管安定性観点からアルコール系溶媒を使用することができる。
【0083】
前記溶媒は、前記硬化型樹脂組成物の総質量を基準にして、例えば、30質量%~95質量%、例えば40質量%~90質量%、例えば45質量%~90質量%、例えば50質量%~90質量%含まれてもよく、全体固形分含量によって適切に調節することができる。
【0084】
(e)その他の添加剤
一実施形態による硬化型樹脂組成物は、当該技術分野で公知された多様な添加剤をさらに含むことができる。このような添加剤として、前記組成物のコーティング時のコーティング性向上および欠陥生成防止効果のための界面活性剤などの表面改質剤、例えば、フッ素系界面活性剤をさらに含むことができるが、これに限定されない。これら添加剤は前記ケイ素含有重合体、例えば、前記化学式1で表されたカルボシラン-シロキサン共重合体100質量部に対して、例えば10質量部以下、例えば、8質量部以下、例えば、5質量部以下、例えば、3質量部以下、例えば、2質量部以下、例えば、1質量部以下で含まれてもよい。
【0085】
他の一実施形態は、前記硬化型樹脂組成物が硬化されてなる薄膜を提供する。例えば、本発明の一実施形態は、前記硬化型樹脂組成物を硬化させてなる薄膜を提供する。例えば、本発明の一実施形態は、前記硬化型樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物を含む薄膜を提供する。本発明の一実施形態は、前記硬化型樹脂組成物を硬化させて得られる硬化膜を提供する。
【0086】
前記薄膜は、500nm~550nm波長の光に対する屈折率が、例えば、1.35以下、例えば、1.30以下、例えば、1.28以下、例えば、1.25以下、例えば、1.20以下、例えば、1.18以下、例えば、1.15以下であってもよく、400nm~800nm波長での光透過率平均値が、例えば、90%以上、例えば、92%以上、例えば、95%以上であり得る。
【0087】
従来、前記のように低い範囲の屈折率を有する薄膜を製造するためには350℃以上、少なくとも300℃以上の高い温度での硬化が必要であるか、化学気相蒸着(CVD)のような高価な装置を使用しなければならなかった。その他に中空シリカ粒子を使用する方法もあるが、この場合、屈折率を1.2以下の水準に減少させることは難しかった。
【0088】
これに対して、一実施形態による硬化型樹脂組成物は低い硬化温度、例えば、約180℃~約240℃の範囲で約10分~約1時間以内の範囲で硬化することによって、膜の厚さが、例えば、約1μm~約10μm、例えば、約2μm~約7μm、例えば、約2μm~約5μmの前記範囲の屈折率を有しながらクラック発生のない薄膜を容易に製造することができる。
【0089】
さらに、前記硬化型樹脂組成物を用いて製造された薄膜は、上/下部膜との接着性も優れている。
【0090】
前記薄膜は水に対する接触角が、例えば105°以上であって、比較的疎水性であるにもかかわらず基材、および/または上/下部膜との接着力が優れる。例えば、前記薄膜の上にSiOのような薄膜が積層された場合、上部薄膜をCross-cutting後にTaping testを行った場合の付着力が4B以上、例えば5B程度と、非常に高い値を示す。
【0091】
反面、一実施形態による組成物と類似しているが、中空シリカ粒子のSi-NMR分析のQ3領域のピークの最大値がQ4領域のピークの最大値の1/2超である中空シリカ粒子を含む組成物を硬化させて製造した膜は、水に対する接触角が102°以下に低くなり、上下部薄膜のCross-cutting後テーピングテスト時の付着力も3B以下に急激に減少する。
【0092】
したがって、一実施形態による前記薄膜は、多様な電子材料用素材、例えば、色変換パネルの低屈折率層、ディスプレイもしくは太陽電池の最外層の反射防止膜、光センサー外部のレンズの低反射層、光学部材用コーティング材料など多様な分野で使用することができる。
【0093】
これにより、本発明のまた他の一実施形態では前記薄膜を含む色変換パネルを提供する。
【0094】
前記色変換パネルは、好ましくは、
基板;
前記基板の一面の上に配置される低屈折率層;
前記低屈折率層の上、または前記低屈折率層と前記基板との間に配置される色変換部材を含む色変換層;および
前記低屈折率層および前記色変換層を覆う平坦化層を含み、
前記低屈折率層は一実施形態による硬化型樹脂組成物から製造される。
【0095】
ここで、前記硬化型樹脂組成物については前述の通りであるので、これに関する詳しい記載は省略する。
【0096】
一実施形態で、前記色変換パネルの低屈折率層は、前記基板、または前記色変換層に一実施形態による硬化型樹脂組成物をコーティングして硬化することによって製造できる。具体的には、前記硬化型樹脂組成物を基板または前記基板の上に形成された色変換層の上にコーティングした後、例えば、約150℃以上250℃以下、例えば、170℃以上250℃以下、例えば、180℃以上250℃以下、例えば、180℃以上240℃以下、例えば、190℃以上240℃以下、例えば、200℃以上240℃以下、例えば、210℃以上240℃以下、例えば、220℃以上240℃以下の温度で約10分~約1時間以内の時間で乾燥および硬化して製造することができる。
【0097】
前記組成物を基板、または前記色変換層の上にコーティングする方法は当該技術分野で公知された多様な方法のうちの任意の方法を使用することができ、例えば、スピンコーティング法、スリットアンドスピンコーティング法、スリットコーティング法、ロールコーティング法、またはダイコーティング法のような方法があるが、これらに限定されない。一実施形態で、前記組成物は、基板または色変換層の上にスピンコーティングすることができる。
【0098】
前記のように製造された低屈折率層は、例えば、約100nm~10μmの厚さを有することができる。例えば、前記薄膜は約1μm~約10μm、例えば、約1μm~約8μm、例えば、約1μm~約7μm、例えば、約1μm~約5μmの厚さを有することができる。
【0099】
以下、図面を参照して一実施形態による色変換パネルを詳しく説明する。
【0100】
図1は一実施形態による色変換パネル100を概略的に示した平面図であり、図2および図3はそれぞれ、図1のII-II線に沿って切断した断面を概略的に示した断面図である。
【0101】
図2図3を共に参照すれば、一実施形態による色変換パネル100は基板110、低屈折率層120、色変換層130、および平坦化層140を含み、前記色変換層130は第1波長の光を発光する第1色変換層132と第2波長の光を発光する第2色変換層134のように、2以上の異なる波長の光を発光する色変換層を含むことができる。一例として、第1領域(A)において第1色変換層132は赤色(R)光を放出し、第2領域(B)において第2色変換層134は緑色(G)光を放出することができるが、これに限定されない。この他にも色変換パネル100は青色(B)系列の光を放出するかあるいは白色光を放出する第3領域(C)をさらに含むことができる。
【0102】
基板110は透明で電気的に絶縁性を有する材料からなり、第1色変換層132と第2色変換層134が位置する領域に対応する位置に保護層112をさらに含むことができる。保護層112は基板110の一面に形成されて、その後、基板110上に色変換層130が形成される時、色変換層のパターニングが円滑に行われるようにし、色変換層内の色変換部材を保護する。
【0103】
低屈折率層120は、基板110の一面、例えば、保護層112が形成された基板110の一面の上で基板110の一部および保護層112を覆うことができる。または図3に示したように、前記保護層112の上に色変換層130が先に積層された後、前記色変換層130の上に積層されて、色変換層130、基板110の一部、および保護層112の一部を全て覆うこともできる。即ち、図2図3は、低屈折率層120が色変換層130の下に位置するか(図2の場合)、または低屈折率層120が色変換層130の上に位置する(図3の場合)のみが相違し、その他の構成要素は全て同一である。
【0104】
一実施形態による低屈折率層120は、500nm~550nmの波長の光に対して、例えば、1.35以下の屈折率、例えば、1.32以下の屈折率、例えば、1.31以下、例えば、1.30以下、例えば、1.29以下、例えば、1.28以下、例えば、1.27以下、例えば、1.26以下、例えば、1.25以下、例えば、1.24以下、例えば、1.23以下、例えば、1.22以下、例えば、1.21以下、例えば、1.20以下、例えば、1.19以下、例えば、1.18以下、例えば、1.17以下、例えば、1.16以下、例えば、1.15以下の相対的に低い屈折率を有する。このような低屈折率層120が色変換層130の上または下、または上と下との両方に形成される場合、色変換層130から発光する光が基板110側に反射することを防止することができる。即ち、光が低屈折率層120を通過しながら屈折率差によって反射または屈折されて再び色変換層130に移動しながら、消失した光が再使用される効果を有する。これにより、低屈折率層120が色変換層130の上、下、または両方ともに形成された一実施形態による色変換パネル100の発光効率がさらに向上できる。本明細書で言及する屈折率は真空と媒質中の光の速度の比を示す絶対屈折率を意味する。
【0105】
また、前記低屈折率層は、400nm~800nm波長の光に対する光透過率の平均値が、例えば、90%以上、例えば、91%以上、例えば、92%以上、例えば、93%以上、例えば、94%以上、例えば、95%以上、例えば、96%以上、例えば、97%以上、例えば、98%以上、例えば、99%以上であり得るが、これらに限定されない。低屈折率層の400nm~800nm波長の光に対する光透過率の平均値が前記範囲を満足する場合、前記低屈折率層の光学的特性がさらに向上できる。
【0106】
また、前記低屈折率層は、可視光線範囲に該当する400nm~800nmの範囲の波長全領域での平均反射率(SCE値)が、例えば、10%以下、例えば、7%以下、例えば、5%以下、例えば、3%以下であり得る。したがって、一実施形態による色変換パネル100は低い波長の範囲でも高い光透過率を有することができ、可視光線に該当する波長の全領域帯にかけて低い反射率を維持して光学的特性がさらに向上できる。
【0107】
第1色変換層132および第2色変換層134はそれぞれ、第1波長の光を発光する第1色変換部材133および第2波長の光を発光する第2色変換部材135を含み、これら第1色変換部材133と第2色変換部材135はそれぞれ、入射された光の波長を他の波長の光に変換させる量子ドットを含むことができる。このような色変換部材は、量子ドットを含む色変換層形成用組成物を前記基板または前記基板の上に形成された低屈折率層120の上に塗布して形成することができる。前記色変換層形成用組成物は、量子ドット、バインダー樹脂、光重合性単量体、光重合開始剤、溶媒、およびその他の添加剤などを含むことができる。
【0108】
一実施形態で、色変換層130は、量子ドットを含む色変換部材133、135を含む色変換層形成用組成物を基板110または基板110上に形成された低屈折率層120の上にコーティングした後、パターニング工程を経ることによって形成される。パターニング工程は、一例として、前記色変換層形成用組成物を基板110または低屈折率層120上にスピンコート法、スリットコート法、ロールコート法、スクリーン印刷法、アプリケータ法などの方法で塗布し乾燥して塗膜を形成する段階、マスクを用いて第1色変換層132、および第2色変換層134に対応する形状のパターンを形成する露光段階、不必要な部分を除去する現像段階、および耐熱性、耐光性、密着性、耐クラック性、耐化学性、高強度、貯蔵安定性などの面で優れたパターンを得るために、再び加熱するか活性線照射などを行って硬化させる後処理段階のような工程を経て行うことができるが、これに限定されるのではない。
【0109】
第1および第2色変換層132、134は、量子ドットを含む色変換部材133、135の他に光散乱体(図示せず)などをさらに含むことができる。光散乱体は、量子ドットと共に色変換層130内に分散されていてもよい。光散乱体は入射光が量子ドットに入射されるように誘導するか、量子ドットから放出される放射光が色変換層130外部に放出されるように放射方向を誘導することができる。これによって、色変換層130の光効率低下を最小化することができる。後述する透過部材136も光散乱体を含むことができる。
【0110】
前記低屈折率層120および前記色変換層130上には平坦化層140が形成される。平坦化層140は、低屈折率層120および色変換層130を覆ってこれらを保護し、色変換パネル100の表面が平坦になるようにする。平坦化層140は、光が透過できるように透明であり、電気的に絶縁性を有する材料からなり得る。この時、本実施形態による平坦化層140は、低屈折率層120と同一であるか異なるポリマーマトリックスからなり得る。例えば、平坦化層140は、低屈折率層120のようにカルボシラン-シロキサン共重合体を含む低屈折率材料からなることによって、色変換パネル100の発光効率をより向上させることができる。また、低屈折率層120に入射した光が平坦化層140に入射する時、反射されるか散乱される場合を最小化することによって、界面の光学的損失を最少化して光効率が向上した色変換パネル100を提供することができる。
【0111】
一方、色変換層130は、第3領域(C)に対応するように配置される透過部材136をさらに含むことができる。透過部材136は、光源から伝達された光を別途の色変換なくそのまま放出することができる。このために、一例として、透過部材136は色変換層130の高さと同一に形成されるか、または図2および図3に示したように、第1色変換層132、第2色変換層134およびその上に形成された平坦化層140が存在する高さまで一定部分何も満たされていない空の空間として存在してもよい。但し、これに限定されるのではなく、透過部材136も第1色変換層132および第2色変換層134のように、特定波長に変換された光を放出するために量子ドットをさらに含むことができ、また、前述の光散乱体もさらに含むことができる。
【0112】
図4は、図2および図3の一変形例による断面図である。図4は、低屈折率層120が色変換層130の上部および下部に全て形成された例を示す断面図である。低屈折率層120が色変換層130の上部と下部に全て形成されたことを除いて、残り構成要素は図2および図3で説明したものと全て同一なので、これらに対する詳しい説明は省略する。図4のように低屈折率層120が色変換層130の上部と下部に全て存在する場合、色変換パネル100の発光効率がさらに向上できる。
【0113】
図5は、図2の一変形例による断面図である。図5を参照すれば、一変形例による色変換パネル100は、第1キャッピング層150および第2キャッピング層160をさらに含むことができる。図5には第1キャッピング層150および第2キャッピング層160を全て含む変形例が示されているが、これらのうちのいずれか一つを省略してもよい。
【0114】
第1キャッピング層150は、平坦化層140上に形成されて平坦化層140を覆う。したがって、平坦化層140を形成する段階以後に形成できる。第1キャッピング層150は、基板110の全面にわたって形成できる。
【0115】
第2キャッピング層160は、低屈折率層120と色変換層130との間に形成され、第1キャッピング層150と同様に基板110全面にわたって形成できる。したがって、第2キャッピング層160は、低屈折率層120の形成段階と色変換層130の形成段階との間に形成できる。
【0116】
第1キャッピング層150および第2キャッピング層160も低屈折率層120と同様に低い屈折率を有する材料からなり得るが、一例としてSiNのような物質を含むことができる。平坦化層140との界面を形成する第1キャッピング層150、および低屈折率層120と平坦化層140との間、または低屈折率層120と色変換層130との間に位置してこれらとの界面を形成する第2キャッピング層160も低い屈折率を有する材料からなることによって、第1キャッピング層150および第2キャッピング層160に入射される光が反射されるか散乱される場合を最少化することができる。これにより、界面の光学的損失を最少化して光効率が向上した色変換パネル100を提供することができる。
【0117】
第1キャッピング層150および第2キャッピング層160を含む色変換パネル100の場合、低屈折率層120、第1キャッピング層150および第2キャッピング層160を全く含まない色変換パネル100に比べて150%以上の発光効率上昇効果を示すことができる。
【0118】
以上、本発明の一実施形態による色変換パネル100、およびこれを製造する方法について説明した。これによれば、量子ドットなどを含む色変換パネル100で量子ドットによる発光効率が向上する色変換パネル100を提供することができる。
【0119】
本発明のまた他の実施形態は、前記一実施形態による色変換パネルを含む表示装置を提供する。
【0120】
前記表示装置は、量子ドット、OLED、ミニLED、マイクロLED、ナノロッドLEDなどを使用する表示装置、フレキシブル表示装置であり得るが、これに限定されない。
【実施例
【0121】
以下、本発明の好ましい実施例を記載する。但し、下記の実施例は本発明の好ましい一実施形態に過ぎず、本発明が下記の実施例によって限定されるものではない。
【0122】
合成例:カルボシラン-シロキサン共重合体の製造
2Lの反応器にメチルトリメトキシシラン(Methyltrimethoxy silane:MTMS)62.66g(0.20mol)、テトラエチルオルトシリケート(Tetraethyl orthosilicate:TEOS)287.50g(0.6mol)、N-フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン(N-phenylaminopropyltrimethoxysilane)58.74g(0.1mol)、1,2-ビス(トリエトキシシリル)エタン(1,2-bis(triethoxysilyl)ethane)81.56g(0.1mol)、およびプロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)735.60gを投入し、室温で攪拌しながら水124.34gに1M塩酸1.254gを溶かした塩酸水溶液を30分にわたって添加した。その後、フラスコを60℃のオイルバスに浸けて180分間攪拌した後、真空ポンプとディーンスタークを用いて240分間、反応副生成物のメタノール、エタノール、塩酸水溶液、および水を合わせて総464.5gを流出させた。その後、生成物のカルボシラン-シロキサン共重合体溶液(A)を得た。得られた溶液(A)中のカルボシラン-シロキサン共重合体の固形分濃度は18質量%であった。得られたカルボシラン-シロキサン共重合体(A)のポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)は3,785g/molであった。重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC:HLC-8220GPC、東ソー社製)を使用して測定した。
【0123】
実施例1~4および比較例1~4:硬化型樹脂組成物の製造
前記合成例で得られたカルボシラン-シロキサン共重合体溶液と、溶媒としてプロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)、そして平均粒径(平均直径、D50)100nmの中空シリカ粒子分散液(ナノ新素材社製、シリカ固形分含量20質量%)、およびフッ素を含む界面活性剤のF-563(DIC社製)を、組成物の総質量を基準にして下記表1に記載された比率で混合して、実施例1~4、および比較例1~4による硬化型樹脂組成物を製造した。この時、前記中空シリカ粒子は、Si-NMR分析の結果、Q3領域の最大ピーク値を100%としたとき、それぞれ下記表1に記載されたQ4領域の最大ピーク値を有する中空シリカ粒子を使用して組成物を製造した。
【0124】
なお、実施例1~4において、中空シリカ粒子は、韓国登録特許第10-1659709号に基づいて製造したものを用いた。
【0125】
下記表1中、「カルボシラン-シロキサン共重合体溶液」の含量の値は、カルボシラン-シロキサン共重合体と溶剤とを全て含めた共重合体溶液全体の含有量である。同様に、「中空シリカ粒子分散液」の含量も、溶剤を含めた分散液全体の含有量である。上記の共重合体溶液および分散液は、いずれも全て溶剤としてPGMEAを含む。
【0126】
硬化膜の製造および評価
実施例1~4、および比較例1~4で製造された組成物からそれぞれ硬化膜を形成し、このように形成された硬化膜に対してそれぞれ屈折率、接触角、および蒸着膜との付着力などを測定した。この時、各硬化膜の厚さはAlpha-step(Surface profiler KLA、Tencor社製)で測定し、それぞれの評価のための硬化膜の製造方法および各測定方法は以下の通りである。
【0127】
(1)屈折率
前記実施例および比較例による組成物をそれぞれ直径4インチのシリコンウエハーの上にスピンコーティング機(Mikasa社製、Opticoat MS-A100)を使用して200rpmで10分間スピンコーティングした後、ホットプレート(hot-plate)を用いて100℃で2分間プリベーキング(pre-baking)して膜を形成した。その後、230℃の温度で20分間硬化および乾燥して、2.0μm厚さの硬化膜を得て、得られた各硬化膜に対して分光エリプソメータ(Ellipsometer Base-160、J.A.Woollam社製)で550nmでの屈折率を測定し、その結果を下記表1に記載した。
【0128】
(2)接触角
前記実施例および比較例による組成物をそれぞれガラス基板の上にスピンコーティング機(Mikasa社製、Opticoat MS-A100)を使用して200rpmで10分間スピンコーティングした後、ホットプレート(hot-plate)を用いて100℃で2分間プリベーキング(pre-baking)して膜を形成する。その後、230℃の温度で20分間硬化および乾燥して、2.0μm厚さの硬化膜を得た。得られたそれぞれの硬化膜に超純水(DI water)を3μlずつ滴下した後、接触角測定器DSA-100(KRUSS社製)を用いて前記膜表面に落とされた水滴の接触角を測定し、その結果を下記表1に記載した。
【0129】
(3)蒸着膜との付着力評価
前記実施例および比較例による組成物をそれぞれ直径6インチのシリコンウエハーの上にスピンコーティング機(Mikasa社製、Opticoat MS-A100)を使用して200rpmで10分間スピンコーティングした後、ホットプレート(hot-plate)を用いて100℃で2分間プリベーキング(pre-baking)して膜を形成した。その後、230℃の温度で20分間硬化および乾燥して、2.0μm厚さの硬化膜を得た。前記硬化膜の上に、プラズマ化学気相蒸着装置(PE-CVD)を使用してSiOx上部膜を形成した。その後、この上部膜を、ASTM D3359国際標準試験法に基づいて、深さ約100μm、カッティング最終面積約15mm×15mmでCross-cuttingした後、4.5N/mのテープを使用してtaping testを行い、その結果を下記表1に記載した。ASTM D3359国際標準試験法に開示された評価値の定義によって、前記カッティング面積中の前記テープによって取り剥がされた面積の比率を付着力評価指標として下記のように示す:
(付着力評価指標)
0B:100%剥離(全体面が剥離される)
1B:80%剥離
2B:60%剥離
3B:40%剥離
4B:20%剥離
5B:0%剥離(剥離未発生)。
【0130】
【表1】
【0131】
表1から分かるように、中空シリカ粒子のSi-NMR分析でQ4領域の最大ピーク値がQ3領域の最大ピーク値の2倍(200%)以上である中空シリカ粒子を含む実施例1~実施例4による硬化型樹脂組成物から製造された硬化膜は、1.3以下の低い屈折率を有しながら、接触角は105°以上で高く、上部膜との付着力は最小4Bであり、大部分5Bと示され、上部膜がほとんど剥離されないことが分かる。即ち、各実施例および比較例で製造されたようなマイクロメートル水準の硬化膜の厚さで、上部膜との接着力が非常に高いことが分かる。
【0132】
反面、中空シリカ粒子のSi-NMR分析でQ4領域の最大ピーク値がQ3領域の最大ピーク値の2倍(200%)未満である中空シリカ粒子を含む比較例1~比較例4による硬化型樹脂組成物から製造された硬化膜は中空シリカ粒子の含量が実施例と同等水準である場合(比較例2と比較例3)は屈折率が同様に低い屈折率を示すことが分かるが、この場合、硬化膜の接触角が全て100°未満と低く、上部膜との付着力が全て0Bと示され、上部膜が完全に剥離されることが分かる。即ち、同一な含量の中空シリカ粒子を含む場合、Q4/Q3比率が2倍未満である場合、上部膜との付着力が顕著に減少することが分かる。反面、前記比較例2および比較例3と同一な中空シリカ粒子を含むが、組成物内の中空シリカ粒子の含量を顕著に減少させた比較例1の場合、付着力指標が3Bと示され、中空シリカ粒子をより多く含む比較例2と比較例3よりは上部膜との付着力が増加することが分かる。即ち、屈折率を減少させるために中空シリカ粒子を含む場合、含量が増加するほど上部膜との付着力に問題が発生する反面、本発明の実施例によってQ4/Q3比率が2倍以上である中空シリカ粒子を含む場合、中空シリカ粒子の含量が増加して屈折率を減少させることができ、この場合、上部膜との付着力問題も全くないという驚くべき効果があることが分かる。比較例4の場合、中空シリカ粒子のQ4/Q3の比率をさらに減少させた場合、比較例1と同一含量の中空シリカ粒子を含んでも、屈折率はさらに高まり、上部膜との付着力もさらに減少することが分かる。
【0133】
以上の通り、一実施形態によって中空シリカ粒子のSi-NMR分析でQ4領域の最大ピーク値がQ3領域の最大ピーク値に比べて2倍以上になるようにした中空シリカ粒子を含む硬化型樹脂組成物は低い屈折率を維持しながら上部膜との接着力が顕著に改善された効果を有し、これにより多様な電子材料で低屈折率層などとして有用に適用可能であることが分かる。
【0134】
以上、本発明の特定の実施例が説明され図示されたが、本発明は記載された実施例に限定されるのではなく、本発明の思想および範囲を逸脱せず多様に修正および変形できるのはこの技術の分野における通常の知識を有する者に自明なことである。したがって、そのような修正例または変形例は本発明の技術的な思想や観点から個別的に理解されてはならなく、変形された実施例は本発明の特許請求の範囲に属すると言わなければならないはずである。
【符号の説明】
【0135】
100:色変換パネル
110:基板
112:保護層
120:低屈折率層
130:色変換層
132:第1色変換層
133:第1色変換部材
134:第2色変換層
135:第2色変換部材
136:透過部材
140:平坦化層
150:第1キャッピング層
160:第2キャッピング層
A:第1領域
B:第2領域
C:第3領域
図1
図2
図3
図4
図5