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特許7421172表面修飾シリカ粒子の有機溶媒分散ゾルの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-16
(45)【発行日】2024-01-24
(54)【発明の名称】表面修飾シリカ粒子の有機溶媒分散ゾルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/14 20060101AFI20240117BHJP
【FI】
C01B33/14
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022511689
(86)(22)【出願日】2021-03-03
(86)【国際出願番号】 JP2021008213
(87)【国際公開番号】W WO2021199870
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-11-15
(31)【優先権主張番号】P 2020064226
(32)【優先日】2020-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】今井 翔太
(72)【発明者】
【氏名】石田 智久
【審査官】玉井 一輝
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/058754(WO,A1)
【文献】特開平5-269365(JP,A)
【文献】特開2019-182688(JP,A)
【文献】特開2013-53329(JP,A)
【文献】国際公開第2014/199904(WO,A1)
【文献】特開平4-226572(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/00-33/193
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)工程乃至(C)工程を含む、表面修飾シリカ粒子の有機溶媒分散ゾルの製造方法。
(A)表面未修飾シリカ粒子の有機溶媒分散ゾルとシランカップリング剤とを混合する工程
(B)(A)工程で得られた結果物に対し、塩基性化合物を添加する工程
(C)(B)工程で得られた結果物に対し、陽イオン交換樹脂を接触させる工程
【請求項2】
前記表面未修飾シリカ粒子の有機溶媒分散ゾル中のシリカ粒子の一次粒子径が1nm乃至100nmである、請求項1に記載の表面修飾シリカ粒子の有機溶媒分散ゾルの製造方法。
【請求項3】
前記塩基性化合物がアミン類である、請求項1又は請求項2に記載の表面修飾シリカ粒子の有機溶媒分散ゾルの製造方法。
【請求項4】
前記塩基性化合物が下記式(1)で表されるアルキルアミン類である、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の表面修飾シリカ粒子の有機溶媒分散ゾルの製造方法。
【化1】
(式中、R及びRは、それぞれ独立して水素原子、或いは炭素原子数1乃至8の直鎖状アルキル基又は炭素原子数3乃至8の分岐鎖状アルキル基を表し、Rは炭素原子数2乃至8の直鎖状アルキル基又は炭素原子数3乃至8の分岐鎖状アルキル基を表す。)
【請求項5】
前記シランカップリング剤が下記式(2)で表されるシラン化合物である、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の表面修飾シリカ粒子の有機溶媒分散ゾルの製造方法。
【化2】
(式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rはメチル基又はエチル基を表し、Qは炭素原子数3乃至8のアルキレン基を表し、nは0乃至2の整数を表す。)
【請求項6】
前記式(2)で表されるシラン化合物が下記式(2´)で表されるシラン化合物である、請求項5に記載の表面修飾シリカ粒子の有機溶媒分散ゾルの製造方法。
【化3】
(式中、R及びRは前記式(2)と同義である。)
【請求項7】
前記(C)工程は、前記(B)工程で得られた結果物に前記陽イオン交換樹脂を添加し撹拌する工程、又は前記陽イオン交換樹脂が充填されたカラムに該(B)工程で得られた結果物を通液する工程である、請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の表面修飾シリカ粒子の有機溶媒分散ゾルの製造方法。
【請求項8】
前記(C)工程において、前記陽イオン交換樹脂に前記塩基性化合物に由来する陽イオンを吸着させる、請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の表面修飾シリカ粒子の有機溶媒分散ゾルの製造方法。
【請求項9】
前記(C)工程で得られる表面修飾シリカ粒子の有機溶媒分散ゾルのpHが2乃至6である、請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の表面修飾シリカ粒子の有機溶媒分散ゾルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面修飾シリカ粒子の有機溶媒分散ゾルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリカ粒子はその高い機械的特性及び熱的特性のため、しばしば樹脂組成物の成分として利用される。シリカ粒子を有機樹脂に配合する場合、該有機樹脂との相溶性や硬化性を考慮して、該シリカ粒子の表面を、疎水性シランカップリング剤、反応性部位含有シランカップリング剤等のシランカップリング剤で処理、即ち表面修飾することが多い。このように表面修飾されたシリカ粒子は、通常、有機溶媒に分散した状態(オルガノゾル)又はモノマーに分散した状態(モノマーゾル)の形で用いられる。
【0003】
シランカップリング剤によるシリカ粒子の表面修飾は、加水分解工程と、該加水分解工程に続く縮合工程とを経て行われる。前記加水分解工程では、シランカップリング剤の加水分解反応によってシラノール基(Si―OH)が生じ、シリカ粒子表面のシラノール基と水素結合が形成される。前記縮合工程では、加水分解されたシランカップリング剤のシラノール基と、シリカ粒子表面のシラノール基との縮合反応によって共有結合が形成される。加水分解反応と縮合反応とが共存すると、シランカップリング剤がシリカ粒子表面のシラノール基と縮合する前に、シランカップリング剤同士が縮合反応する虞があるため、該加水分解工程と該縮合工程とをコントロールすることが、均一かつ効率的にシリカ粒子を表面修飾するために重要である。
【0004】
一般に、酸性条件では、シラノール基が安定であり、加水分解工程が促進され、一方、塩基性条件では、シラノール基が不安定で、縮合工程が促進されることが知られている。したがって、シリカ粒子を表面修飾する手順としては、シリカ粒子とシランカップリング剤とを酸性条件で反応させ、その後、酸性条件から塩基性条件に変更することが、上記の観点から望ましい。また、前記酸性条件から塩基性条件に変更する時に、アミン化合物を添加することが知られている。例えば特許文献1には、有機溶媒分散シリカゾルにアミン化合物を添加してpHを所定の範囲にすることで、該シリカゾルから安定なエポキシモノマーゾル及びアクリルモノマーゾルを得られることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2010/058754号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されているような、塩基性化合物を含有する有機溶媒分散シリカゾルは、以下に説明する理由から、保存安定性が必ずしも良いとはいえない。
【0007】
通常、有機溶媒分散シリカゾルに添加されたシランカップリング剤の全てをシリカ粒子表面のシラノール基と反応させることは困難であり、該有機溶媒分散シリカゾル中に未反応のシランカップリング剤が残存してしまう。これら残存シランカップリング剤は、塩基性条件下で長期間保管すると該シランカップリング剤同士で縮合反応を起こし得るため、結果的に有機溶媒分散シリカゾルの白濁及びゲル化を助長し、保存安定性が悪化することがある。
【0008】
本発明はこれら事情を鑑みてなされたものであり、保存安定性が良好な表面修飾シリカ粒子の有機溶媒分散ゾルの製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
本発明者らは、縮合反応が塩基性条件下で促進されることに注目し、表面修飾シリカ粒子の有機溶媒分散ゾル中に未反応のシランカップリング剤が残存していても、酸性又は中性条件下であれば未反応のシランカップリング剤同士の縮合を抑制できると着想した。検討の結果、塩基性化合物を含む表面修飾シリカ粒子の有機溶媒分散ゾルに陽イオン交換樹脂を接触させて該塩基性化合物の一部又は全部を除去することで、表面修飾シリカ粒子の有機溶媒分散ゾルの保存安定性が極めて良好になることを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明は、下記(A)工程乃至(C)工程を含む、表面修飾シリカ粒子の有機溶媒分散ゾルの製造方法である。
(A)表面未修飾シリカ粒子の有機溶媒分散ゾルとシランカップリング剤とを混合する工程
(B)(A)工程で得られた結果物に対し、塩基性化合物を添加する工程
(C)(B)工程で得られた結果物に対し、陽イオン交換樹脂を接触させる工程
【0011】
前記表面未修飾シリカ粒子の有機溶媒分散ゾル中のシリカ粒子の一次粒子径が、例えば1nm乃至100nmである。
【0012】
前記塩基性化合物が、例えばアミン類である。
【0013】
前記塩基性化合物が、例えば下記式(1)で表されるアルキルアミン類である。
【化1】
(式中、R及びRは、それぞれ独立して水素原子、或いは炭素原子数1乃至8の直鎖状アルキル基又は炭素原子数3乃至8の分岐鎖状アルキル基を表し、Rは炭素原子数2乃至8の直鎖状アルキル基又は炭素原子数3乃至8の分岐鎖状アルキル基を表す。)
【0014】
前記シランカップリング剤が、例えば下記式(2)で表されるシラン化合物である。
【化2】
(式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rはメチル基又はエチル基を表し、Qは炭素原子数3乃至8のアルキレン基を表し、nは0乃至2の整数を表す。)
【0015】
前記式(2)で表されるシラン化合物が、例えば下記式(2´)で表されるシラン化合物である。
【化3】
(式中、R及びRは前記式(2)と同義である。)
【0016】
前記(C)工程は、例えば、前記(B)工程で得られた結果物に前記陽イオン交換樹脂を添加し撹拌する工程、又は前記陽イオン交換樹脂が充填されたカラムに該(B)工程で得られた結果物を通液する工程である。前記(C)工程において、前記陽イオン交換樹脂に前記(B)工程で得られた結果物に含まれる塩基性化合物に由来する陽イオンを吸着させる。前記(C)工程で得られる表面修飾シリカ粒子の有機溶媒分散ゾルのpHが好ましくは2乃至6である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の製造方法により得られた表面修飾シリカ粒子の有機溶媒分散ゾルは、保存安定性が良好であり、長期間保管してもゲル化することなく透明性及び流動性を保持し、粘度がほとんど上昇しない。さらに、本発明の製造方法により得られた表面修飾シリカ粒子の有機溶媒分散ゾルは、酸性又は中性条件下でシリカ粒子の分散性が維持される。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に関して詳細を説明する。
【0019】
本発明で使用する表面未修飾シリカ粒子の有機溶媒分散ゾルは特に限定されず、公知の方法により製造されたものを用い得る。例えば、水ガラス(ケイ酸ナトリウム)を原料として得られた水分散シリカゾルを有機溶媒置換する方法、粉末状態のシリカ粒子を有機溶媒又は有機溶媒/水混合液に分散させる方法が挙げられる。
【0020】
前記表面未修飾シリカ粒子の有機溶媒分散ゾル中のシリカ粒子濃度は特に限定されないが、一般に60質量%以下が好ましい。
【0021】
前記表面未修飾シリカ粒子の有機溶媒分散ゾル中のシリカ粒子は、例えば一次粒子径が1nm乃至100nmのシリカ粒子である。ここで、一次粒子とは、粉体を構成する粒子であり、この一次粒子が凝集した粒子を二次粒子という。前記一次粒子径は、ガス吸着法(BET法)により測定される前記シリカ粒子の比表面積(単位質量あたりの表面積)S、該シリカ粒子の密度ρ、及び一次粒子径Dとの間に成り立つ関係式:D=6/(ρS)から算出することができる。該関係式から算出される一次粒子径は、平均粒子径であり、一次粒子の直径である。
【0022】
前記表面未修飾シリカ粒子の有機溶媒分散ゾル中のシリカ粒子の形状は特に限定されず、いずれの形状でもよい。例えば、球状、楕円球状、扁平状、細長い形状、歪な形状が挙げられる。
【0023】
前記表面未修飾シリカ粒子の有機溶媒分散ゾル中の溶媒は、シリカ粒子が分散できる限り特に限定されず、有機溶媒のみ、或いは有機溶媒/水混合液のいずれでもよい。有機溶媒のみを用いる場合、炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類、エーテル類、アルコール類、アルデヒド類、ケトン類、エステル類、アミド類、ニトリル類等の全ての有機溶媒を使用することができる。有機溶媒/水混合液を用いる場合、水と混合可能な有機溶媒を使用することができる。
【0024】
前記炭化水素類としては、例えば、n―ペンタン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、n―ヘキサン、イソヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、n―ヘプタン、ベンゼン、トルエン、о―キシレン、m―キシレン、p―キシレン及びメシチレンが挙げられる。
【0025】
前記ハロゲン化炭化水素類としては、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、クロロエタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、ヘキサクロロエタン、ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、ハイドロフルオロカーボン及びパーフルオロカーボンが挙げられる。
【0026】
前記エーテル類としては、例えば、ジエチルエーテル、ジ―n―プロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジ―n―ブチルエーテル、ジイソブチルエーテル、ジ―tert―ブチルエーテル、ジ―n―ペンチルエーテル、ジイソペンチルエーテル、ジ―n―ヘキシルエーテル、メチル―n―プロピルエーテル、メチルイソプロピルエーテル、エチル―n―プロピルエーテル、エチルイソプロピルエーテル、n―ブチルメチルエーテル、イソブチルメチルエーテル、tert―ブチルメチルエーテル、n―ブチルエチルエーテル、イソブチルエチルエーテル、tert―ブチルエチルエーテル、メチル―n―ペンチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、n―ヘキシルメチルエーテル、シクロヘキシルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,3―ジオキサン、1,4―ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジブチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールジエチルエーテル及びトリプロピレングリコールジブチルエーテルが挙げられる。
【0027】
前記アルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、1―プロパノール、2―プロパノール、1―ブタノール、2―ブタノール、2―メチル―1―プロパノール、tert―ブチルアルコール、1―ペンタノール、2―ペンタノール、3―ペンタノール、2―メチル―1―ブタノール、3―メチル―2―ブタノール、ネオペンチルアルコール、シクロペンタノール、メチルシクロペンタノール、1―ヘキサノール、2―ヘキサノール、3―ヘキサノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、1―ヘプタノール、2―ヘプタノール、3―ヘプタノール、4―ヘプタノール、1―オクタノール、2―オクタノール、3―オクタノール、4―オクタノール、2―エチル―1―ヘキサノール、ベンジルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル及びトリプロピレングリコールモノブチルエーテル等の1価アルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,3―プロパンジオール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,4―ブタンジオール、1,3―ブタンジオール、1,2―ブタンジオール、1,5―ペンタンジオール、1,4―ペンタンジオール、1,3―ペンタンジオール、1,2―ペンタンジオール、3―メチル―1,5―ペンタンジオール、2,2,4―トリメチル―1,3―ペンタンジオール及び1,2―ヘキサンジオール等の2価アルコール、グリセリン等の3価アルコールが挙げられる。
【0028】
前記アルデヒド類としては、例えば、エタナール、プロパナール、2―メチル―1―プロパナール、ブタナール、3―メチルブタナール、ペンタナール及びベンズアルデヒドが挙げられる。
【0029】
前記ケトン類としては、例えば、アセトン、2―ブタノン、2―ペンタノン、3―ペンタノン、シクロペンタノン、2,4―ペンタンジオン、4―メチル―2―ペンタノン、4―ヒドロキシ―4―メチル―2―ペンタノン、シクロヘキサノン及び2―ヘプタノンが挙げられる。
【0030】
前記エステル類としては、例えば、メチルホルマート、エチルホルマート、n―プロピルホルマート、イソプロピルホルマート、n―ブチルホルマート、イソブチルホルマート、tert―ブチルホルマート、n―ペンチルホルマート、イソペンチルホルマート、メチルアセタート、エチルアセタート、n―プロピルアセタート、イソプロピルアセタート、n―ブチルアセタート、イソブチルアセタート、tert―ブチルアセタート、n―ペンチルアセタート、イソペンチルアセタート、シクロペンチルアセタート、n―へキシルアセタート、イソへキシルアセタート、シクロヘキシルアセタート、n―ヘプチルアセタート、イソヘプチルアセタート、n―オクチルアセタート、イソオクチルアセタート、ベンジルアセタート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセタート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセタート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセタート、エチレングリコールジアセタート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセタート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセタート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセタート、トリエチレングリコールモノメチルエーテルアセタート、トリエチレングリコールモノエチルエーテルアセタート、トリエチレングリコールモノブチルエーテルアセタート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセタート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセタート、プロピレングリコールジアセタート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセタート、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルアセタート、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート、トリプロピレングリコールモノエチルエーテルアセタート、トリプロピレングリコールモノブチルエーテルアセタート、メチルプロピオナート、エチルプロピオナート、n―プロピルプロピオナート、イソプロピルプロピオナート、n―ブチルプロピオナート、イソブチルプロピオナート、tert―ブチルプロピオナート、メチルブチラート、エチルブチラート、n―プロピルブチラート、イソプロピルブチラート、n―ブチルブチラート、イソブチルブチラート、tert―ブチルブチラート、メチルイソブチラート、エチルイソブチラート、n―プロピルイソブチラート、イソプロピルイソブチラート、n―ブチルイソブチラート、イソブチルイソブチラート、tert―ブチルイソブチラート、メチルラクタート、エチルラクタート、n―プロピルラクタート、イソプロピルラクタート、n―ブチルラクタート、イソブチルラクタート、tert―ブチルラクタート、メチルアセトアセタート、エチルアセトアセタート、n―プロピルアセトアセタート、イソプロピルアセトアセタート、n―ブチルアセトアセタート、イソブチルアセトアセタート、tert―ブチルアセトアセタート、ジメチルマロナート、ジエチルマロナート、トリアセチン、γ―ブチロラクトン、γ―バレロラクトン、γ―カプロラクトン、δ―バレロラクトン、δ―カプロラクトン及びε―カプロラクトンが挙げられる。
【0031】
前記アミド類としては、例えば、N,N―ジメチルホルムアミド、N,N―ジメチルアセトアミド及びN―メチルピロリドンが挙げられる。
【0032】
前記ニトリル類としては、例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル及びブチロニトリルが挙げられる。
【0033】
これら有機溶媒は1種単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。なお、前記表面未修飾シリカ粒子の有機溶媒分散ゾルは、そのまま本発明に使用するだけでなく、これを用いて、モノマーゾルの製造を行うことができる。その場合、該表面未修飾シリカ粒子の有機溶媒分散ゾル中の有機溶媒をモノマーへと置換する工程を鑑み、該モノマーとの相溶性が高く、かつ減圧蒸留による除去性が高い有機溶媒を選択することで、均一なモノマーゾルを効率よく得ることができる。
【0034】
前記表面未修飾シリカ粒子の有機溶媒分散ゾルとして市販品を用いてもよく、具体的には、CHO―ST―M、DMAC―ST、DMAC―ST―ZL、EAC―ST、EG―ST、EG―ST―ZL、EG―ST―XL30、IPA―ST、IPA―ST―L、IPA―ST―ZL、IPA―ST―UP、メタノールシリカゾル、MA―ST―M、MA―ST―L、MA―ST―ZL、MA―ST―UP、MEK―ST、MEK―ST―40、MEK―ST―L、MEK―ST―ZL、MEK―ST―UP、MIBK―ST、MIBK―ST―L、NMP―ST、NPC―ST―30、PMA―ST、PGM―ST、PGM―ST―UP、TOL―ST、XBA―ST(以上、日産化学(株)製)、PL―1―IPA、PL―1―TOL、PL―2L―PGME及びPL―2L―MEK(以上、扶桑化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0035】
前記表面未修飾シリカ粒子の有機溶媒分散ゾルとして、市販の水分散シリカゾルを減圧蒸留や限外濾過といった公知の方法で有機溶媒置換したもの、市販の粉末状シリカ粒子を有機溶媒或いは有機溶媒/水混合液に分散させたものを用いてもよい。
【0036】
これら表面未修飾シリカ粒子の有機溶媒分散ゾルは1種単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0037】
本発明で使用するシランカップリング剤は、分子内にケイ素原子を少なくとも1個有し、かつ該ケイ素原子の内の少なくとも1個に加水分解性基(加水分解によってシラノール基が形成され得る官能基であり、例えばアルコキシ基)が1個乃至3個結合した化合物である。
【0038】
前記シランカップリング剤としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、n―プロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、n―ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、n―ペンチルトリメトキシシラン、シクロペンチルトリメトキシシラン、n―ヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、n―オクチルトリメトキシシラン、イソオクチルトリメトキシシラン、n―デシルトリメトキシシラン、n―ドデシルトリメトキシシラン、n―テトラデシルトリメトキシシラン、n―ヘキサデシルトリメトキシシラン、n―オクタデシルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、7―オクテニルトリメトキシシラン、3―(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、8―(メタ)アクリロイルオキシオクチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、p―トリルトリメトキシシラン、p―スチリルトリメトキシシラン、ベンジルトリメトキシシラン、1―ナフチルトリメトキシシラン、トリメトキシ[3―(フェニルアミノ)プロピル]シラン、 [3―(N,N―ジメチルアミノ)プロピル]トリメトキシシラン、3―(2―アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、8―(2―アミノエチルアミノ)オクチルトリメトキシシラン、3―アミノプロピルトリメトキシシラン、3―メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3―イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、トリス[3―(トリメトキシシリル)プロピル]イソシアヌレート、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n―プロピルトリエトキシシラン、イソプロピルトリエトキシシラン、n―ブチルトリエトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、n―ペンチルトリエトキシシラン、シクロペンチルトリエトキシシラン、n―ヘキシルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、n―オクチルトリエトキシシラン、イソオクチルトリエトキシシラン、n―デシルトリエトキシシラン、n―ドデシルトリエトキシシラン、n―テトラデシルトリエトキシシラン、n―ヘキサデシルトリエトキシシラン、n―オクタデシルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、3―(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、8―(メタ)アクリロイルオキシオクチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、p―トリルトリエトキシシラン、p―スチリルトリエトキシシラン、ベンジルトリエトキシシラン、3―アミノプロピルトリエトキシシラン、3―メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3―イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、トリス[3―(トリエトキシシリル)プロピル]イソシアヌレート等のトリアルコキシシラン類、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、シクロペンチルメチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、n―オクチルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、3―(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジ―p―トリルジメトキシシラン、3―アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3―メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジイソブチルジエトキシシラン、シクロペンチルメチルジエトキシシラン、ジシクロペンチルジエトキシシラン、シクロヘキシルメチルジエトキシシラン、n―オクチルメチルジエトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、3―(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジ―p―トリルジエトキシシラン、3―(2―アミノエチルアミノ)プロピルメチルジメトキシシラン、3―アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3―メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン等のジアルコキシシラン類、トリメチルメトキシシラン、トリエチルメトキシシラン、n―オクチルジメチルメトキシシラン、n―オクタデシルジメチルメトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、3―(メタ)アクリロイルオキシプロピルジメチルメトキシシラン、フェニルジメチルメトキシシラン、ジフェニルメチルメトキシシラン、トリフェニルメトキシシラン等のモノアルコキシシラン類及び多官能基型シランカップリング剤が挙げられる。
【0039】
前記シランカップリング剤として市販品を用いてもよく、具体的には、KBM―1003、KBE―1003、KBM―1083、KBM―1403、KBM―502、KBM―503、KBE―502、KBE―503、KBM―5803、KBM―5103、KBM―602、KBM―603、KBM―903、KBE―903、KBM―573、KBM―6803、KBE―9007、KBM―9659、KBE―9659、KBM―802、KBM―803、KBM―13、KBE―13、KBM―22、KBE―22、KBM―103、KBE―103、KBM―202SS、KBM―3033、KBE―3033、KBM―3063、KBE―3063、KBM―3103C、KBE―3083、X―12―1048、X―12―1050、X―12―1154、X―12―1156、X―12―972F、X―12―1159L、X―40―9296、KR―503、KR―511、KR―513、KR―518、KR―519及びKPN―3504(以上、信越化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0040】
前記シランカップリング剤の使用量は特に限定されないが、通常、前記表面未修飾シリカ粒子の有機溶媒分散ゾル中のシリカ粒子の表面積1nmに対して0.1個乃至10個、好ましくは0.5個乃至5個となる量である。なお、“個”とは、シランカップリング剤の分子数を表す。
【0041】
これらシランカップリング剤は1種単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。使用するシランカップリング剤は特に限定されないが、重合性を有する官能基を分子内に含むシランカップリング剤を用いてシリカ粒子を表面修飾することで、該シリカ粒子を配合した重合性樹脂組成物を硬化させた際に、該シリカ粒子と樹脂マトリクスとの密着性を向上させることができる。具体的には、例えば、エチレン性不飽和基[“CH=C(CH)―”又は“CH=CH―”]を分子内に含むシランカップリング剤を用いてシリカ粒子を表面修飾することで、該シリカ粒子を配合したラジカル重合性樹脂組成物を硬化させた際に、該シリカ粒子と樹脂マトリクスとの密着性を向上させることができる。
【0042】
本発明で使用する塩基性化合物は特に限定されず、アミン類、第4級アンモニウム類、無機塩基類等の全ての塩基性化合物を使用することができる。
【0043】
前記アミン類としては、例えば、エチルアミン、n―プロピルアミン、イソプロピルアミン、n―ブチルアミン、イソブチルアミン、n―ペンチルアミン、イソぺンチルアミン、シクロペンチルアミン、n―ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、n―へプチルアミン、n―オクチルアミン、2―エチルへキシルアミン、アニリン、ベンジルアミン、エタノールアミン、プロパノールアミン、ブタノールアミン及びエチレンジアミン等の第1級アミン、ジエチルアミン、ジ―n―プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジ―n―ブチルアミン、ジイソブチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジベンジルアミン、ジエタノールアミン及びジブタノールアミン等の第2級アミン、トリエチルアミン、トリ―n―ブチルアミン、トリ―n―ペンチルアミン、トリ―n―オクチルアミン、N―エチルジイソプロピルアミン、N,N―ジメチルブチルアミン、N,N―ジメチルエタノールアミン、N,N―ジエチルエタノールアミン、N,N―ジブチルエタノールアミン、N―メチルジエタノールアミン、N―エチルジエタノールアミン、N―ブチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン及びテトラメチルエチレンジアミン等の第3級アミン、ピロリジン、メチルピロリジン、ピペリジン、メチルピペリジン、ピペラジン、キヌクリジン、1,4―ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、1,5―ジアザビシクロ[4.3.0]―5―ノネン、1,8―ジアザビシクロ[5.4.0]―7―ウンデセン、ピリジン及びイミダゾール等の複素環式アミンが挙げられる。
【0044】
前記第4級アンモニウム類としては、例えば、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム及び水酸化テトラブチルアンモニウムが挙げられる。
【0045】
前記無機塩基類としては、例えば、アンモニア、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムが挙げられる。
【0046】
前記塩基性化合物として、(A)表面未修飾シリカ粒子の有機溶媒分散ゾルとシランカップリング剤とを混合する工程で得られた結果物との相溶性の観点から、特に前記式(1)で表されるアルキルアミン類を用いることが好ましい。
【0047】
前記塩基性化合物の添加量は、前記表面未修飾シリカ粒子の有機溶媒分散ゾルの分散性が損なわれない限り特に限定されないが、通常、表面未修飾シリカ粒子成分100質量部に対して0.01質量部乃至5質量部、好ましくは0.05質量部乃至3質量部である。
【0048】
前記塩基性化合物は1種単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。該塩基性化合物を(A)工程で得られた結果物に添加する際、その塩基性化合物を水、有機溶媒、或いは有機溶媒/水混合液に溶解させてから用いることが好ましい。なお、ここで用いられる有機溶媒としては、該(A)工程で得られた結果物と相溶する限り特に限定されず、オルガノゾル中に含まれる有機溶媒と同一であっても、異なっていてもよい。
【0049】
本発明で使用する陽イオン交換樹脂は特に限定されず、交換基としてスルホン酸基を持つ強酸性の陽イオン交換樹脂及びカルボキシ基を持つ弱酸性の陽イオン交換樹脂、構造としてゲル型の陽イオン交換樹脂及びポーラス型の陽イオン交換樹脂等、各種公知の陽イオン交換樹脂を使用することができる。
【0050】
該陽イオン交換樹脂として市販品を用いることができ、具体的には、IR120B、IR124、200CT、252、FPC3500、IRC76等のアンバーライト(登録商標)シリーズ、1020、1024、1060、1220等のアンバージェット(登録商標)シリーズ、15DRY、15JWET、16WET、33、35WET等のアンバーリスト(登録商標)シリーズ(以上、オルガノ(株)製)、SK104、SK1B、SK110、SK112、PK208、PK212L、PK216、PK218、PK220、PK228、UBK08、UBK10、UBK12、WK10、WK11、WK100及びWK40L等のダイヤイオン(登録商標)シリーズ(以上、三菱ケミカル(株)製)等が挙げられる。
【0051】
これら市販品の陽イオン交換樹脂はそのまま用いてもよいし、交換基を金属イオン型から水素イオン型へ再生するような公知の処理を適宜実施してから用いてもよい。
【0052】
続いて、本発明における各工程の詳細を説明する。
【0053】
<(A)工程>
(A)工程は、シランカップリング剤のアルコキシシリル基(加水分解性基)を、加水分解によってシラノール基へと変換することを目的とする工程である。前述のように、シランカップリング剤の加水分解反応は酸性条件で促進される。前記表面未修飾シリカ粒子の有機溶媒分散ゾルは通常シラノール基の存在により酸性条件となっているため、該表面未修飾シリカ粒子の有機溶媒分散ゾルとシランカップリング剤とを混合し、撹拌することで該加水分解反応を行うことができる。なお、反応促進の目的で適宜酸性化合物を添加してもよい。用いる表面未修飾シリカ粒子の有機溶媒分散ゾルは、シリカ粒子の凝集物等、大粒径の不純物を除去するため、メッシュフィルター等でろ過してから使用してもよい。前記表面未修飾シリカ粒子の有機溶媒分散ゾルとシランカップリング剤とを混合した後に撹拌する方法としては特に限定されないが、通常、前記有機溶媒分散ゾルの有機溶媒の融点乃至沸点の範囲すなわち液体である温度下、30分間乃至24時間、好ましくは1時間乃至10時間行う。この時、前記有機溶媒の沸点を超えない範囲で可能な限り高温下で撹拌することで、加水分解反応を促進することができる。
【0054】
<(B)工程>
(B)工程は、(A)工程で得られた結果物、すなわち加水分解されたシランカップリング剤を含む酸性の表面未修飾シリカ粒子の有機溶媒分散ゾルを、塩基性下に置くことで、シリカ粒子表面のシラノール基と、加水分解されたシランカップリング剤のシラノール基とを縮合させることを目的とする工程である。前述のように、シラノール基同士の縮合反応は塩基性条件で促進されるため、(A)工程で得られた結果物に対して塩基性化合物を添加することで、シランカップリング剤によるシリカ粒子の表面修飾率を向上させることができる。塩基性化合物を添加する際は、該塩基性化合物を水、有機溶媒又は有機溶媒/水混合液に溶解させてから添加することが好ましい。塩基性化合物を添加後に撹拌する方法としては特に限定されないが、通常、前記有機溶媒分散ゾルの有機溶媒の融点乃至沸点の範囲の温度下、1分間乃至24時間、好ましくは10分間乃至10時間行う。この時、前記有機溶媒の沸点を超えない範囲で可能な限り高温下で撹拌することで、縮合反応を促進することができる。
【0055】
<(C)工程>
(C)工程は、(B)工程で得られた結果物、すなわち塩基性の表面修飾シリカ粒子の有機溶媒分散ゾルを、陽イオン交換樹脂に接触させることで、(B)工程で添加された塩基性化合物の一部又は全部を除去し、酸性又は中性の表面修飾シリカ粒子の有機溶媒分散ゾルを得ることを目的とする工程である。前記塩基性化合物としてアミン類を用いる場合、該アミン類がプロトン化された陽イオンであるアンモニウムカチオンが前記陽イオン交換樹脂に吸着する。その結果、前記アミン類は除去された状態となる。(B)工程で得られた結果物を陽イオン交換樹脂に接触させる方法としては特に限定されないが、例えば、前記表面未修飾シリカ粒子の有機溶媒分散ゾル中の表面未修飾シリカ粒子成分100質量部に対して1質量部乃至200質量部、好ましくは10質量部乃至100質量部の陽イオン交換樹脂を該結果物に添加し、前記有機溶媒分散ゾルの有機溶媒の融点乃至沸点の範囲の温度下、1分間乃至24時間、好ましくは5分間乃至5時間撹拌する方法や、陽イオン交換樹脂が充填されたカラムに該結果物を通液する方法が挙げられる。
【0056】
(B)工程で得られた結果物を陽イオン交換樹脂に接触させる方法として、該(B)工程で得られた結果物に該陽イオン交換樹脂を添加し、撹拌する方法を採用する場合、撹拌後、該陽イオン交換樹脂をろ過により除去することが望ましい。
【0057】
(C)工程で得られる表面修飾シリカ粒子の有機溶媒分散ゾルのpHは1乃至7、好ましくは2乃至6である。(C)工程では、表面修飾シリカ粒子の有機溶媒分散ゾルのpHが1乃至7となるように、好ましくは2乃至6となるように、(B)工程で得られた結果物を陽イオン交換樹脂に接触させる。
【実施例
【0058】
以下、実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。なお、下記実施例及び比較例において、試料の物性の分析に用いた装置は、以下の通りである。
【0059】
(1)pH測定
装置:(株)堀場アドバンステクノ製 ポータブル型pHメータ D―72
(2)粘度測定
装置:柴田化学(株)製 オストワルド粘度計
【0060】
下記実施例及び比較例において使用した材料の供給元は以下の通りである。
MA―ST―M:日産化学(株)製 商品名:MA―ST―M
メタノールシリカゾル:日産化学(株)製 商品名:メタノールシリカゾル
PGM―ST:日産化学(株)製 商品名:PGM―ST
MEK―ST―40:日産化学(株)製 商品名:MEK―ST―40
KBM―5803:信越化学工業(株)製 商品名:KBM―5803
KBM―5103:信越化学工業(株)製 商品名:KBM―5103
TEA:東京化成工業(株)製 商品名:トリエチルアミン
TPA:東京化成工業(株)製 商品名:トリペンチルアミン
DiPEA:東京化成工業(株)製 商品名:N,N―ジイソプロピルエチルアミン
PA:東京化成工業(株)製 商品名:プロピルアミン
TOcA:シグマアルドリッチジャパン(同)製 商品名:トリオクチルアミン
15JWET:オルガノ(株)製 商品名:アンバーリスト(登録商標)15JWET
【0061】
<実施例1>
200mLナスフラスコに、表面未修飾シリカゾル有機溶媒分散体としてMA―ST―M(メタノール分散シリカゾル、一次粒子径22nm、シリカ粒子濃度40質量%、水分2質量%)を100g、及びシランカップリング剤としてKBM―5803を9.5g(シリカ粒子の表面積1nmに対して約4個となる量)秤量し、室温下で撹拌して溶解させた。該ナスフラスコを65℃のオイルバスに浸漬させ、反応液を5時間加熱撹拌した。続いて、10mLガラスバイアル瓶に、塩基性化合物としてTEAを0.06g、及び2―ブタノン(以下、本明細書ではMEKと略称する。)を3.0g秤量し、撹拌して溶解させた。該TEAのMEK溶液を、前記反応液に滴下して溶解させた後、65℃にて1時間加熱撹拌した。次に、該反応液に、陽イオン交換樹脂として15JWETを20g添加し、室温下で3時間撹拌した後、メッシュフィルターでろ過して15JWETを取り除くことで、表面修飾されたシリカ粒子のメタノール分散ゾルを得た。
【0062】
<実施例2>
塩基性化合物としてTOcAを0.18g使用する以外は実施例1と同様の手順にて、表面修飾されたシリカ粒子のメタノール分散ゾルを得た。
【0063】
<実施例3>
塩基性化合物としてDiPEAを0.07g使用する以外は実施例1と同様の手順にて、表面修飾されたシリカ粒子のメタノール分散ゾルを得た。
【0064】
<実施例4>
塩基性化合物としてPAを0.03g使用する以外は実施例1と同様の手順にて、表面修飾されたシリカ粒子のメタノール分散ゾルを得た。
【0065】
<実施例5>
塩基性化合物としてTPAを0.80g使用する以外は実施例1と同様の手順にて、表面修飾されたシリカ粒子のメタノール分散ゾルを得た。
【0066】
<実施例6>
シランカップリング剤としてKBM―5803を4.8g(シリカ粒子の表面積1nmに対して約2個となる量)を使用し、塩基性化合物としてTPAを0.31g使用する以外は実施例1と同様の手順にて、表面修飾されたシリカ粒子のメタノール分散ゾルを得た。
【0067】
<実施例7>
表面未修飾シリカゾル有機溶媒分散体としてメタノールシリカゾル(メタノール分散シリカゾル、一次粒子径12nm、シリカ粒子濃度30質量%)を100g使用し、シランカップリング剤としてKBM―5803を13.0g(シリカ粒子の表面積1nmに対して約4個となる量)を使用し、塩基性化合物としてTPAを0.23g使用する以外は実施例1と同様の手順にて、表面修飾されたシリカ粒子のメタノール分散ゾルを得た。
【0068】
<実施例8>
表面未修飾シリカゾル有機溶媒分散体としてPGM―ST[プロピレングリコールモノメチルエーテル(以下、本明細書ではPGMEと略称する。)分散シリカゾル、一次粒子径12nm、シリカ粒子濃度30質量%]を100g使用し、シランカップリング剤としてKBM―5803を13.0g(シリカ粒子の表面積1nmに対して約4個となる量)を使用し、塩基性化合物としてTPAを0.23g使用する以外は実施例1と同様の手順にて、表面修飾されたシリカ粒子のPGME分散ゾルを得た。
【0069】
<実施例9>
表面未修飾シリカゾル有機溶媒分散体としてMEK―ST―40(MEK分散シリカゾル、一次粒子径12nm、シリカ粒子濃度40質量%)100gに純水1gを添加したものを使用し、シランカップリング剤としてKBM―5103を6.5g(シリカ粒子の表面積1nmに対して約2個となる量)を使用し、塩基性化合物としてTPAを0.31g使用する以外は実施例1と同様の手順にて、表面修飾されたシリカ粒子のMEK分散ゾルを得た。
【0070】
<比較例1>
15JWETを添加しない以外は実施例1と同様の手順にて、表面修飾されたシリカ粒子のメタノール分散ゾルを得た。
【0071】
[pH測定]
ガラスバイアル瓶に、前記実施例1乃至実施例9及び比較例1で得られた表面修飾シリカ粒子の有機溶媒分散ゾル、メタノール及び純水をそれぞれ同質量ずつ混合し、撹拌することで試料液を調製した。該試料液に対し、前記pHメータを用いて、液温23℃にてpHを測定した。測定結果を下記表1に示す。
【0072】
[粘度測定]
前記オストワルド粘度計に純水10mLを充填し、25℃にて毛管を通過するのに要した時間(流下時間)を計測した。同様の手順で、前記実施例1乃至実施例9及び比較例1で得られた表面修飾シリカ粒子の有機溶媒分散ゾルについて、作製直後及び該ゾルを50℃恒温槽にて20日間保管した後の流下時間をそれぞれ計測した。下記式より、それぞれのゾルの粘度を算出した。
(ゾル粘度)=
{(ゾル流下時間)×(ゾル密度)}/{(純水流下時間)×(純水密度)}×(純水粘度)
なお、25℃における純水粘度を0.89cPとした。算出結果を下記表1に示す。
【0073】
[透明性評価]
直径3cmの円筒型30mLガラスバイアル瓶に、前記実施例1乃至実施例9及び比較例1で得られた表面修飾シリカ粒子の有機溶媒分散ゾルを充填し、該ガラスバイアル瓶を介して向こう側の文字を視認できる場合を○、視認できない場合を×とした。また、前記ガラスバイアル瓶を50℃の恒温槽にて20日間保管した後、同様に評価した。評価結果を下記表1に記す。
【0074】
【表1】
【0075】
実施例1乃至実施例9から得られた表面修飾シリカ粒子の有機溶媒分散ゾルは、50℃にて20日間保管しても透明性を維持し、粘度上昇も見られなかった。一方、比較例1から得られた表面修飾シリカ粒子の有機溶媒分散ゾルは、50℃にて20日間保管したところ白色不透明となり、粘度上昇が見られた。したがって、本発明の製造方法によれば、保存安定性の良好な表面修飾シリカ粒子の有機溶媒分散ゾルを得られることが示された。