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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-16
(45)【発行日】2024-01-24
(54)【発明の名称】含フッ素化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 69/65 20060101AFI20240117BHJP
   C07C 233/09 20060101ALI20240117BHJP
【FI】
C07C69/65 CSP
C07C233/09 Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022145177
(22)【出願日】2022-09-13
(62)【分割の表示】P 2018119223の分割
【原出願日】2018-06-22
(65)【公開番号】P2022177135
(43)【公開日】2022-11-30
【審査請求日】2022-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】519135633
【氏名又は名称】公立大学法人大阪
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松浦 誠
(72)【発明者】
【氏名】黒木 克親
(72)【発明者】
【氏名】岸川 洋介
(72)【発明者】
【氏名】柳 日馨
(72)【発明者】
【氏名】福山 高英
【審査官】高森 ひとみ
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-514317(JP,A)
【文献】国際公開第2013/147266(WO,A1)
【文献】REGISTRY(STN)[Online],2016年,pp.1-2,[検索日:2023年5月17日],CAS登録番号:2027267-20-3、2026619-24-7、2014661-44-8
【文献】GRAHAM, K. et al.,Radiofluorinated Derivatives of 2-(Phosphonomethyl)pentanedioic Acid as Inhibitors of Prostate Specific Membrane Antigen (PSMA) for the Imaging of Prostate Cancer,Journal of Medicinal Chemistry,Vol.55, No.22,2012年,pp.9510-9520,DOI:10.1021/jm300710j
【文献】ELWORTHY, T. R. et al.,On the utility of α-heteroatom substituted orthoesters in the Johnson Claisen rearrangement,Tetrahedron Letters,1994年,Vol. 35, No. 28,pp. 4951-4954
【文献】MACHLEIDT, H.,Organic fluorine compounds. V. Synthesis of α-fluorocarboxylic acid esters,Justus Liebigs Annalen der Chemie,1964年,Vol.676,pp.66-75
【文献】Andrew G. Myers et al.,Practical Methodology for the Asymmetric Synthesis of Organofluorine Compounds,Tetrahedron Letters,1998年,Vol.39, No.11,pp.1335-1338
【文献】YOSHIDA, S.,Single C-F Bond Cleavage of Trifluoromethylarenes with an ortho-Silyl Group,Angewandte Chemie, International Edition,2016年,Vol.55, No.35,pp.10406-10409
【文献】DEDEK, V. and YESELY, I.,Chemistry of organic compounds of fluorine. Part XXVII. Cleavage of 3,3,4-trifluoro-2,2-dimethyloxetane by mineral acids,Collection of Czechoslovak Chemical Communications,1985年,Vol.50, No.9,pp.1948-58
【文献】CLAVEL, P. et al.,Selective electrochemical synthesis and reactivity of functional benzylic fluorosilylsynthons,Journal of Fluorine Chemistry,2001年,Vol.107, No.2,pp.301-310
【文献】ZEMTSOV, A. A. et al.,Copper-Catalyzed Allylation of α,α-Difluoro-Substituted Organozinc Reagents,Journal of Organic Chemistry,2014年,Vol.79, No.2,pp.818-822,DOI:10.1021/jo4024705
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1):
【化1】
[式中、
は、
アリール基、又は
(R11-)N-C(=O)-(当該式中、R11は、各出現において独立して、1個以上の置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基である。)
であり、
は、水素原子、又はフッ素原子であり、
は、1個以上の置換基を有していてもよいメトキシカルボニル基であり、及び
4a、R4b、R5a及びR5bは、各出現において独立して、水素原子、炭化水素基、シアノ基、カルボキシ基、アルコキシ基、エステル基、エーテル基、又はアシル基である。]
で表される化合物。
【請求項2】
は、フッ素原子である、請求項に記載の化合物。
【請求項3】
5a及びR5bは、水素原子である、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
4a及びR4bは、水素原子である、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
式(1):
【化2】
[式中、
は、
RCO-(当該式中、Rは、アルキル基である。)、又は
(R11-)N-C(=O)-(当該式中、R11は、各出現において独立して、1個以上の置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基である。)
であり、
は、フッ素原子であり、
は、1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基であり、及び
4a、R4b、R5a及びR5bは、各出現において独立して、水素原子、炭化水素基、シアノ基、カルボキシ基、アルコキシ基、エステル基、エーテル基、又はアシル基である。]
で表される化合物。
【請求項6】
5a及びR5bは、水素原子である、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
4a及びR4bは、水素原子である、請求項5又は6に記載の化合物。
【請求項8】
式(1):
【化3】
[式中、
は、RCO-(当該式中、Rは、アルキル基である。)であり、
は、フッ素原子であり、
は、1個以上の置換基を有していてもよいメトキシカルボニル基であり、及び
4a、R4b、R5a及びR5bは、各出現において独立して、水素原子、炭化水素基、シアノ基、カルボキシ基、アルコキシ基、エステル基、エーテル基、又はアシル基である。]
で表される化合物。
【請求項9】
5a及びR5bは、水素原子である、請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
4a及びR4bは、水素原子である、請求項8又は9に記載の化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は含フッ素化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生体内の生理活性物質には、含フッ素メチレン基含有化合物であるものが存在すること
から、フルオロメチレン基を有する化合物の医薬品等への応用が盛んに研究されている。
例えば、α位にフッ素原子及びパーフルオロ有機基からなる群より選択される1個以上
の置換基を有するカルボニル化合物である、α-フルオロメチレン化合物、及びα-ジフ
ルオロアルドール化合物等の含フッ素メチレン化合物の製造方法の有用性は高い(非特許
文献1及び2)。
【0003】
含フッ素メチレン基含有化合物の製造方法の例として、特許文献1には、
一般式(1);
【化1】
[式中、
は、有機基を表し、
は、水素原子、又はフッ素原子を表し、及び
2a、R2b、R2c、及びR2dは、同一又は異なって、-Y-R21、又は-N(
-R22を表し、或いはR2bとR2cとは連結して結合を形成してもよく、
Yは、結合手、酸素原子、又は硫黄原子を表し、
21は、水素原子、又は有機基を表し、
22は、各出現において同一又は異なって、水素原子、又は有機基を表す。]
で表される化合物、又はその閉環誘導体、若しくは開環誘導体の製造方法であって、
次の一般式(2):
【化2】
[式中、Xは脱離基を表し、及びその他の記号は前記と同意義を表す。]
で表される化合物を、
還元剤の存在下、且つ光照射下で、
次の一般式(3):
【化3】
[式中の記号は前記と同意義を表す。]
で表される化合物と反応させる工程Aを含む製造方法が、提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開2017/154948号パンフレット
【非特許文献】
【0005】
【文献】John T.Welchら、Tetrahedron, 1987年,43,14,3123頁
【文献】Svanteら、J. Am. Chem. Soc., 1981年,103,4452頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、更に、新たな、含フッ素メチレン基含有化合物の製造方法の提供が求められて
いる。
本開示は、新たな、含フッ素メチレン基含有化合物の製造方法等を提供することを目的
とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、次の態様を含む。
【0008】
項1.
式(1):
【化4】
[式中、
は、有機基であり、
は、水素原子、又はフッ素原子であり、
4aは、水素原子、又は有機基であり、
4bは、水素原子、又は有機基であり、
は、水素原子、又は有機基であり、及び
5aは、水素原子、又は有機基であり、
5bは、水素原子、又は有機基である。
或いは、Rは、R4aと連結して、環を形成していてもよい。]
で表される化合物の製造方法であって、
式(2):
【化5】
[式中、Xは脱離基であり、及びその他の記号は前記と同意義である。]
で表される化合物を、
所望による還元剤の存在下、且つ光照射下で、
式(3):
【化6】
[式中、Xは脱離基であり、及びその他の記号は前記と同意義である。]
で表される化合物と反応させる工程Aを含む製造方法。
項2.
は、R11-Y-、又は(R11-)N-であり、
Yは、結合手、酸素原子、又は硫黄原子であり、及び
11は、各出現において独立して、1個以上の置換基を有していてもよい炭化水素基で
ある、
項1に記載の製造方法。
項3.
は、R11-Y-であり、
Yは、結合手であり、及び
11は、
1個以上の置換基を有していてもよいアリール基、又は
1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基
である、
項2に記載の製造方法。
項4.
は、R11-Y-であり、
Yは、-O-C(=O)-、又は-O-C(=S)-であり、及び
11は、1個以上の置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基である、
項2に記載の製造方法。
項5.
は、(R11-)N-C(=O)-であり、
11は、各出現において独立して、1個以上の置換基を有していてもよい脂肪族炭化水
素基である、
項2に記載の製造方法。
項6.
は、フッ素原子である、項1~5に記載の製造方法。
項7.
4aは、水素原子であり、
4bは、水素原子であり、
は、
水素原子、
1個以上の置換基を有していてもよい炭化水素基、又は
1個以上の置換基を有していてもよいアルコキシカルボニル基
であり、
5aは、水素原子であり、及び
5bは、水素原子である、
項1~6に記載の製造方法。
項8.
は、
ハロゲン原子、
アルキルスルホニルオキシ基、又は
アリールスルホニルオキシ基
である、
項1~7に記載の製造方法。
項9.
は、
-SOR、
-SR、
-S(=O)R、
-SeR、
-TeR、
-Cl、
-Br、
-I、
-PR、又は
-P(=O)R
[これらの式中、Rは、各出現において独立して、有機基である。]である
項1~8に記載の製造方法。
項10.
は、-SOR(当該式中、Rは有機基である。)である、
項9に記載の製造方法。
項11.
前記還元剤が、
N-H部を有する含窒素不飽和複素環化合物である、
項1~10のいずれか1項に記載の製造方法。
項12.
前記還元剤が、式(4):
【化7】
[式中、
ha、Rhb、Rhc、及びRhdは、同一又は異なって、アルキル基である。]
で表される化合物である項1~11のいずれか1項に記載の製造方法。
項13.
工程Aの反応が、触媒の存在下で実施される項1~12のいずれか1項に記載の製造方法

項14.
前記触媒が、遷移金属錯体、及び有機色素化合物からなる群より選択される1種以上であ
る項13に記載の製造方法。
項15.
式(1a):
【化8】
[式中、
は、各出現において独立して、有機基であり、
は、各出現において独立して、水素原子、又はフッ素原子であり、
4aは、各出現において独立して、水素原子、又は有機基であり、
4bは、各出現において独立して、水素原子、又は有機基であり、及び
は、水素原子、又は有機基である。]
で表される化合物の製造方法であって、
式(2):
【化9】
[式中、Xは脱離基であり、及びその他の記号は前記と同意義である。]
で表される化合物を、
所望による還元剤の存在下、且つ光照射下で、
式(3):
【化10】
[式中、Xは脱離基であり、及びその他の記号は前記と同意義である。]
で表される化合物と反応させる工程Aaを含む製造方法。
項16.
式(1):
【化11】
[式中、
は、有機基であり、
は、水素原子、又はフッ素原子であり、
4aは、水素原子、又は有機基であり、
4bは、水素原子、又は有機基であり、
は、有機基であり、
5aは、水素原子、又は有機基であり、及び
5bは、水素原子、又は有機基である
(但し、
がペルフルオロアルキル基の場合、Rは炭素数2以上のアルキル基又は炭素数3以
上のエステル基である。)。]
で表される化合物。
項17.
は、R11-Y-であり、
Yは、結合手であり、及び
11は、
1個以上の置換基を有していてもよいアリール基、又は
1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基であり、
は、水素原子、又はフッ素原子であり、及び
は、水素原子、又は有機基である、
項16に記載の化合物。
項18.
は、フッ素原子である、
項17に記載の化合物。
項19.
4aは、水素原子であり、
4bは、水素原子であり、
は、
水素原子、
1個以上の置換基を有していてもよいアルコキシカルボニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいアリール基、又は
1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基であり、
5aは、水素原子であり、及び
5bは、水素原子である、
項17又は18に記載の化合物。
項20.
は、R11-Y-であり、
Yは、-O-C(=O)-、又は-O-C(=S)-であり、
11は、1個以上の置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基であり、
は、水素原子、又はフッ素原子であり、及び
は、水素原子、又は有機基である、
項16に記載の化合物。
項21.
は、フッ素原子である、項20に記載の化合物。
項22.
4aは、水素原子であり、
4bは、水素原子であり、
は、
水素原子、
1個以上の置換基を有していてもよいアルコキシカルボニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいアリール基、又は
1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基であり
5aは、水素原子であり、及び
5bは、水素原子である、
項20又は21に記載の化合物。
項23.
は、R11-Y-であり、
Yは、-O-C(=O)-、又は-O-C(=S)-であり、
11は、1個以上の置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基
は、水素原子、又はフッ素原子であり、及び
は、水素原子、又は有機基である、
項16に記載の化合物。
項24.
は、(R11-)N-C(=O)-であり、
11は、各出現において独立して、1個以上の置換基を有していてもよい脂肪族炭化水
素基であり、
は、水素原子、又はフッ素原子であり、
4aは、水素原子であり、
4bは、水素原子であり、
は、水素原子、又は有機基であり、
5aは、水素原子あり、及び
5bは、水素原子、又は有機基である、
項16に記載の化合物。
項25.
は、フッ素原子である、項24に記載の化合物。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、フルオロメチレン基を有する化合物の、効率的な、新たな製造方法が
提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
用語
本明細書中の記号及び略号は、特に限定のない限り、本明細書の文脈に沿い、本開示が
属する技術分野において通常用いられる意味に理解できる。
【0011】
本明細書中、語句「含有する」は、語句「から本質的になる」、及び語句「からなる」
を包含することを意図して用いられる。
【0012】
特に限定されない限り、本明細書中に記載されている工程、処理、又は操作は、室温で
実施され得る。
本明細書中、室温は、10~40℃の範囲内の温度を意味する。
【0013】
本明細書中、「Cn-m」(ここで、n及びmは、それぞれ自然数である。)は、有機
化学分野で慣用されている通り、炭素数がn以上、且つm以下であることを表す。
【0014】
本明細書中、「フルオロメチレン基」は、特に限定の無い限り、モノフルオロメチレン
基、及びジフルオロメチレン基を包含する。
【0015】
本明細書中、特に限定のない限り、「ハロゲン原子」としては、例えば、フッ素原子、
塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が例示される。
【0016】
本明細書中、特に限定のない限り、「有機基」は、その構成原子として1個以上の炭素
原子を含有する基を意味する。
本明細書中、特に限定のない限り、「有機基」としては、炭化水素基、シアノ基、カル
ボキシ基、アルコキシ基、エステル基、エーテル基、及びアシル基が例示される。
【0017】
本明細書中、特に限定のない限り、「炭化水素基」は、その構成原子として、1個以上
の炭素原子、及び1個以上の水素原子を含有する基を意味する。
本明細書中、特に限定のない限り、「炭化水素基」としては、脂肪族炭化水素基、及び
芳香族炭化水素基(アリール基)、及びそれらの組み合わせ等が例示される。
【0018】
本明細書中、特に限定のない限り、「脂肪族炭化水素基」は、直鎖状、分枝鎖状、環状
、又はそれらの組み合わせであることができる。
【0019】
本明細書中、特に限定のない限り、「脂肪族炭化水素基」は、飽和、又は不飽和である
ことができる。
【0020】
本明細書中、特に限定のない限り、「脂肪族炭化水素基」としては、例えば、アルキル
基、アルケニル基、アルキニル基、及びシクロアルキル基が例示される。
【0021】
本明細書中、特に限定のない限り、「アルキル基」としては、例えば、メチル、エチル
、プロピル(例:n-プロピル、イソプロピル)、ブチル(例:n-ブチル、イソブチル
、sec-ブチル、tert-ブチル)、ペンチル(例:n-ペンチル、tert-ペン
チル、ネオペンチル、イソペンチル、sec-ペンチル、3-ペンチル)、ヘキシル、ヘ
プチル、オクチル、ノニル、及びデシル等の、直鎖状又は分枝鎖状の、且つ第一級、第二
級、又は第三級のC1-15アルキル基(例:C1-12アルキル基、C1-10アルキ
ル基)が例示される。
【0022】
本明細書中、「フルオロアルキル基」は、少なくとも1個の水素原子がフッ素原子で置
換されたアルキル基である。
本明細書中、「フルオロアルキル基」が有するフッ素原子の数は、1個以上(例、1~
3個、1~6個、1~12個、1個から置換可能な最大数)であることができる。
「フルオロアルキル基」は、パーフルオロアルキル基を包含する。「パーフルオロアル
キル基」は、全ての水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基である。
【0023】
本明細書中、特に限定のない限り、「アルケニル基」としては、例えば、ビニル、1-
プロペニル、イソプロペニル、2-メチル-1-プロペニル、1-ブテニル、2-ブテニ
ル、3-ブテニル、2-エチル-1-ブテニル、1-ペンテニル、2-ペンテニル、3-
ペンテニル、4-ペンテニル、4-メチル-3-ペンテニル、1-ヘキセニル、2-ヘキ
セニル、3-ヘキセニル、4-ヘキセニル、及び5-ヘキセニル等の、直鎖状、又は分枝
鎖状の、炭素数1~10のアルケニル基が例示される。
【0024】
本明細書中、特に限定のない限り、「アルキニル基」としては、例えば、エチニル、1
-プロピニル、2-プロピニル、1-ブチニル、2-ブチニル、3-ブチニル、1-ペン
チニル、2-ペンチニル、3-ペンチニル、4-ペンチニル、1-ヘキシニル、2-ヘキ
シニル、3-ヘキシニル、4-ヘキシニル、及び5-ヘキシニル等の、直鎖状、又は分枝
鎖状の、炭素数2~6のアルキニル基が例示される。
【0025】
本明細書中、特に限定のない限り、「シクロアルキル基」としては、例えば、シクロペ
ンチル基、シクロヘキシル基、及びシクロヘプチル等の炭素数3~10(好ましくは、炭
素数4~10)のシクロアルキル基が例示される。
【0026】
本明細書中、特に限定のない限り、「アルコキシ基」は、例えば、RO-(当該式中、
Rはアルキル基である。)で表される基である。
【0027】
本明細書中、特に限定のない限り、「エステル基」は、例えば、RCO-(当該式中
、Rはアルキル基である。)で表される基である。
【0028】
本明細書中、特に限定のない限り、「エーテル基」は、エーテル結合(-O-)を有す
る基を意味し、ポリエーテル基を包含する。ポリエーテル基は、式:R-(O-R
n-(当該式中、Rはアルキル基であり、Rは各出現において同一又は異なって、ア
ルキレン基であり、及びnは1以上の整数である。)で表される基を包含する。アルキレ
ン基は前記アルキル基から水素原子を1個除去して形成される2価の基である。
【0029】
本明細書中、特に限定のない限り、「アシル基」は、アルカノイル基を包含する。本明
細書中、特に限定のない限り、「アルカノイル基」は、例えば、RCO-(当該式中、R
はアルキル基である。)で表される基である。
【0030】
本明細書中、特に限定のない限り、「芳香族基」は、アリール基、及びヘテロアリール
基を包含する。
本明細書中、「アリール基」の例は、フェニル基、及びナフチル基等のC6-14アリ
ール基(例:C6-10アリール基)を包含する。
本明細書中、「ヘテロアリール基」の例は、環構成原子として、炭素原子以外に窒素原
子、硫黄原子、及び酸素原子からなる群より選ばれる1~4個のヘテロ原子を含む5~1
4員(単環、2環、又は3環式)複素環基を包含する。
本明細書中、「ヘテロアリール基」の具体例は、
(1)フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、ピラジニ
ル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、
オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、オキサジアゾリル基、チアジアゾリル基、トリア
ゾリル基、テトラゾリル基、トリアジニル基等の単環式芳香族複素環基;並びに
(2)キノリル基、イソキノリル基、キナゾリル基、キノキサリル基、ベンゾフリル基、
ベンゾチエニル基、ベンズオキサゾリル基、ベンズイソオキサゾリル基、ベンゾチアゾリ
ル基、ベンズイミダゾリル基、ベンゾトリアゾリル基、インドリル基、インダゾリル基、
ピロロピラジニル基、イミダゾピリジニル基、イミダゾピラジニル基、イミダゾチアゾリ
ルピラゾロピリジニル基、ピラゾロチエニル基、ピラゾロトリアジニル基等の多環式(例
、二環式)芳香族複素環基を包含する。
【0031】
本明細書中、「芳香環」の例は、
(1)ベンゼン環、及びナフタレン環等の芳香族炭素環;並びに
(2)フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チ
アゾール環、イソチアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、1,2,3-オキサジ
アゾール環、1,2,4-オキサジアゾール環、1,3,4-オキサジアゾール環、フラ
ザン環、1,2,3-チアジアゾール環、1,2,4-チアジアゾール環、1,3,4-
チアジアゾール環、1,2,3-トリアゾール環、1,2,4-トリアゾール環、テトラ
ゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環等の、
環構成原子として、炭素原子以外に酸素原子、硫黄原子、及び窒素原子から選ばれるヘテ
ロ原子を1~3個含有する5又は6員の単環式芳香族複素環
を包含する。
【0032】
本明細書中、「非芳香族炭化水素環」の例は、炭素数3~8の非芳香族炭化水素環を包
含し、その具体例は、
(1)シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタ
ン、及びシクロオクタンのC3-8シクロアルカン;
(2)シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、及びシクロオクテンのC5-
シクロアルケン;
(3)シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、シクロヘプタジエン、シクロオクタジ
エン等のC5-8シクロアルカジエン;及び
(4)ビシクロ[2.1.0]ペンタン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ビシクロ[
3.2.1]オクタン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン、及びトリシクロ[2
.2.1.0]ヘプタン等の炭素数5~8の橋かけ環炭化水素
を包含できる。
【0033】
本明細書中、「非芳香族複素環」の例は、3~8員の非芳香族複素環等を包含し、その
具体例は、オキシラン、アゼチジン、オキセタン、チエタン、ピロリジン、ジヒドロフラ
ン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロチオフェン、イミダゾリジン、オキサゾリジン、
イソオキサゾリン、ピペリジン、ジヒドロピラン、テトラヒドロピラン、テトラヒドロチ
オピラン、モルホリン、チオモルホリン、ピペラジン、ジヒドロオキサジン、テトラヒド
ロオキサジン、ジヒドロピリミジン、テトラヒドロピリミジン、アゼパン、オキセパン、
チエパン、オキサゼパン、チアゼパン、アゾカン、オキソカン、チオカン、オキサゾカン
、及びチアゾカンを包含する。
【0034】
製造方法[化合物(1)]
【0035】
本開示の、式(1):
【化12】
[式中、
は、有機基であり、
は、水素原子、又はフッ素原子であり、
4aは、水素原子、又は有機基であり、
4bは、水素原子、又は有機基であり、
5aは、水素原子、又は有機基であり、
5bは、水素原子、又は有機基であり、及び
は、水素原子、又は有機基である。
或いは、Rは、R4aと連結して、環を形成していてもよい。]
で表される化合物[本明細書中、化合物(1)と称する場合がある。]の製造方法
式(2):
【化13】
[式中、Xは脱離基であり、及びその他の記号は前記と同意義である。]
で表される化合物を、
所望による還元剤の存在下、且つ光照射下で、
式(3):
【化14】
[式中、Xは脱離基であり、及びその他の記号は前記と同意義である。]
で表される化合物と反応させる工程Aを含む。
【0036】
本発明の好適な一態様において、
は、R11-Y-、又は(R11-)N-であり、
Yは、結合手、酸素原子、又は硫黄原子であり、及び
11は、各出現において独立して、1個以上の置換基を有していてもよい炭化水素基で
ある。
【0037】
本発明のより好適な一態様において、
は、R11-Y-であり、
Yは、結合手であり、及び
11は、
1個以上の置換基を有していてもよいアリール基、又は
1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基
である。
11は、好ましくは、アリール基、又はペルフルオロアルキル基である。
【0038】
本発明の、別のより好適な一態様において、
は、R11-Y-であり、
Yは、-O-C(=O)-、又は-O-C(=S)-であり、及び
11は、1個以上の置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基である。
11は、好ましくはC1-6アルキル基、又はC7-11アラルキル基(例:ベンジ
ル)である。
【0039】
本発明の、また別のより好適な一態様において、
は、(R11-)N-C(=O)-であり、
11は、各出現において独立して、1個以上の置換基を有していてもよい脂肪族炭化水
素基である。
11は、好ましくは、各出現において独立して、C1-6アルキル基である。
【0040】
は、好ましくはフッ素原子である。
【0041】
がR4aと連結して形成する「環」の例は、芳香環、非芳香族炭化水素環、及び非
芳香族複素環を包含する。
当該環の置換基の例は、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、ヒドロキシ基
、カルボキシ基、アルキル基、アルケニル基、及びアルキニル基を包含する。
【0042】
は、好ましくは
水素原子、
1個以上の置換基を有していてもよい炭化水素基、又は
1個以上の置換基を有していてもよいアルコキシカルボニル基
である。
【0043】
は、より好ましくは
水素原子、
1個以上の置換基を有していてもよいC1-6アルキル基、
1個以上の置換基を有していてもよいC6-14アリール基、又は
1個以上の置換基を有していてもよいC1-6アルコキシ-カルボニル基
である。
【0044】
4aは、好ましくは、水素原子である。
4bは、好ましくは、水素原子である。
5aは、好ましくは、水素原子である。
5bは、好ましくは、水素原子である。
【0045】
好ましくは、Rは、
水素原子、
1個以上の置換基を有していてもよい炭化水素基、又は
1個以上の置換基を有していてもよいアルコキシカルボニル基
であり、
4aは、水素原子であり、
4bは、水素原子であり、
5aは、水素原子であり、及び
5bは、水素原子である。
【0046】
で表される脱離基の例は、
ハロゲン原子(例:フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子)、
アルキルスルホニルオキシ基(例:メタンスルホニルオキシ基、トリフルオロメタンスル
ホニルオキシ基等のC1-6アルキルスルホニルオキシ基)、及び
アリールスルホニルオキシ基(例:ベンゼンスルホニルオキシ基、p-トルエンスルホニ
ルオキシ基等のC6-10アリールスルホニルオキシ基)
を包含する。
【0047】
は、好ましくは
ハロゲン原子、
アルキルスルホニルオキシ基、又は
アリールスルホニルオキシ基
である。
【0048】
は、好ましくは
-SOR、
-SR、
-S(=O)R、
-SeR、
-TeR、
-Cl、
-Br、
-I、
-PR、又は
-P(=O)R
[これらの式中、Rは、各出現において独立して、有機基である。]
である。
【0049】
は、より好ましくは
-SOR(当該式中、Rは有機基である。)
である。
【0050】
工程Aにおける、化合物(3)の使用量は、化合物(2)の1モルに対して、好ましく
は、1.0~20.0モルの範囲内、より好ましくは、1.3~10モルの範囲内、及び
更に好ましくは、1.5~5モルの範囲内である。
【0051】
工程Aの反応は、所望により好適に還元剤の存在下で実施される。
【0052】
前記還元剤は、無機、又は有機の還元剤であることができ、その例は、水素、ギ酸、ギ
酸アンモニウム、ギ酸ナトリウム、ギ酸-トリエチルアミン、トリエチルシラン、テトラ
メチルジシロキサン、ポリメチルヒドロシロキサン、NaBHCN、NHCBH3(N-
heterocyclic carbene boranes)、及びN-H部(イミノ基)を有する含窒素不飽和複素
環化合物を包含する。
【0053】
前記還元剤の好適な例は、N-H部を有する含窒素不飽和複素環化合物を包含する。
【0054】
前記還元剤としての前記「N-H部を有する含窒素不飽和複素環化合物」の好適な例は
、式(4):
【化15】
[式中、
3a、R3b、R3c、及びR3dは、同一又は異なって、アルキル基を表す。]
で表される化合物[本明細書中、化合物(4)と称する場合がある。]を包含する。
【0055】
3aは、好ましくはC1-6アルキル基、より好ましくはメチル基、又はエチル基で
ある。
【0056】
3bは、好ましくはC1-6アルキル基、より好ましくはメチル基、又はエチル基で
ある。
【0057】
3cは、好ましくはC1-6アルキル基、より好ましくはメチル基、又はエチル基で
ある。
【0058】
3dは、好ましくはC1-6アルキル基、より好ましくはメチル基、又はエチル基で
ある。
【0059】
本開示で用いることができる前記還元剤のより好適な例は、次の化学式の化合物を包含
する。これらの化合物は所謂Hantzschエステル(本明細書中、HEHと略記する場合があ
る。)である。
【化16】
【0060】
これらの還元剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい
【0061】
工程Aの反応においては、所望により、アミン等の除酸剤を用いることができる。
ここで、化合物(4)を用いる場合、好適に、その他のアミンを用いないことができる
【0062】
工程Aにおいて還元剤を用いる場合、その量は、基質である前記式(2)で表される化
合物の1モルに対して、好ましくは、0.5~10モルの範囲内、より好ましくは、1.
0~5.0モルの範囲内、及び更に好ましくは、1.2~3.0モルの範囲内である。
【0063】
工程Aの反応は、触媒の存在下、又は実質的若しくは完全な不存在下で実施することが
できる。
工程Aの反応は、好ましくは触媒の存在下で実施される。
【0064】
本開示で用いることができる前記触媒の例は、遷移金属錯体、及び有機色素化合物を包
含する。
【0065】
本開示で用いることができる前記遷移金属錯体が有する中心金属種の例は、コバルト、
ルテニウム、ロジウム、レニウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、オスミウム、及
び白金を包含する。
当該中心金属種の好適な例は、ルテニウム、イリジウム、及びパラジウムを包含する。
【0066】
本開示で用いることができる前記遷移金属錯体が有する配位子の例は、及び含窒素化合
物、含酸素化合物、及び含硫黄化合物を包含する。
【0067】
配位子としての当該「含窒素化合物」の例は、ジアミン化合物(例:エチレンジアミン
)、及び含窒素複素環化合物(例:ピリジン、ビピリジン、フェナントロリン、ピロール
、インドール、カルバゾール、イミダゾール、ピラゾール、キノリン、イソキノリン、ア
クリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、フタラジン、キナゾリン、及びキノキサ
リン)を包含する。
【0068】
配位子としての当該「含酸素化合物」の例は、ジケトン(例:ジピバロイルメタン)、
及び含酸素複素環化合物(例:フラン、ベンゾフラン、オキサゾール、ピラン、ピロン、
クマリン、及びベンゾピロン)を包含する。
【0069】
配位子としての当該「含硫黄化合物」の例は、含硫黄複素環化合物(例:チオフェン、
チオナフテン、及びチアゾール)を包含する。
【0070】
前記遷移金属錯体において、これらの配位子の数は1個以上であることができる。但し
、いうまでもなく、その数は必ずしも明らかでなくてもよい。
【0071】
工程Aの反応に触媒を用いる場合、工程Aにおける、触媒の使用量は、化合物(2)の
1モルに対して、好ましくは、0.0001~0.1モルの範囲内、より好ましくは、0
.001~0.05モルの範囲内、及び更に好ましくは、0.005~0.02モルの範
囲内である。
【0072】
本開示で用いることができる前記有機色素化合物は、分子内に金属原子を含有しない化
合物であることができる。
当該有機色素化合物の例は、ローズベンガル、エリスロシン、エオシン(例:エオシン
B、エオシンY)、アクリフラビン、リポフラビン、及びチオニンを包含する。
【0073】
当該触媒の好適な例は、[Ir{dF(CF)ppy}(dtbpy)]PF
[Ir(dtbbpy)(ppy)][PF]、Ir(ppy)、Ru(bpy)
Cl・6HO、[Ru(bpz)][PF、[Ru(bpm)][Cl
、[Ru(bpy)(phen-5-NH)][PF、[Ru(bpy)
][PF、Ru(phen)Cl、Cu(dap)クロリド9-メシチ
ル-10-メチルアクリジニウム・ペルクロラート、Ir(ppy)、及びPd(PP
を包含する。
【0074】
これらの触媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0075】
工程Aで用いられる触媒は、好ましくはphotoredox触媒であることができる。
【0076】
工程Aで用いられる触媒は、担体(例:ゼオライト)に担持されていてもよい。
【0077】
工程Aの反応は、溶媒の存在下、又は実質的若しくは完全な不存在下で実施することが
できる。
工程Aの反応は、好ましくは、溶媒の存在下で実施される。
【0078】
本開示で用いることができる前記溶媒の例は、ジメチルホルムアミド(DMF)、トル
エン、CHCN、エーテル、テトラヒドロフラン(THF)、ベンゼン、ジメチルスル
ホキシド(DMSO)、ヘキサン、及びベンゾトリフルオライド(BTF)を包含する。
【0079】
これらの溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0080】
工程Aの反応の開始時において、その反応系の混合物における、
化合物(2)の濃度は、
好ましくは1~10000mMの範囲内、
より好ましくは10~1000mMの範囲内、及び
更に好ましくは50~200mMの範囲内である。
【0081】
工程Aの反応の開始時において、その反応系の混合物における、化合物(3)の濃度は

好ましくは50~50000mMの範囲内、
より好ましくは100~5000mMの範囲内、及び
更に好ましくは300~1000mMの範囲内
である。
【0082】
工程Aの反応に触媒を用いる場合、その反応系の混合物における、触媒の濃度は、
好ましくは0.01~100mMの範囲内、
より好ましくは0.1~50mMの範囲内、及び
更に好ましくは0.5~20mMの範囲内
である。
【0083】
工程Aは、例えば、化合物(2)、化合物(3)、所望による還元剤、所望による触媒
、及び所望による溶媒を混合することによって、実施できる。
当該混合の方法としては、慣用の方法を採用できる。
当該混合は、全ての物質を同時に混合してもよく、又は逐次的若しくは段階的に混合し
てもよい。
【0084】
工程Aの反応は、光照射下で実施される。
当該光照射に用いられる照射光としては、例えば、工程Aの反応を開始、及び/又は促
進できる光であれば特に限定なく使用することができる。その光源の例は、低圧、中圧、
若しくは高圧の水銀灯、タングステンランプ、及び発光ダイオード(LED)が挙げられ
る。
照射光は、好適に可視光であることができる。
照射光は、好ましくは300~600nmの波長の光を含む光、より好ましくは400
~500nmの光を含む光であることができる。
照射時間は、好ましくは1~24時間の範囲内、より好ましくは10~18時間である
ことができる。
光照射の開始は、前記混合の、前、途中、同時、又は後であることができる。
光照射の強度は、工程Aの反応を開始、及び/又は促進できるエネルギーが供給される
程度であればよく、これは、例えば、工程Aの反応が適当に進行するように、技術常識に
基づき、光源の出力、及び光源と工程Aの反応系の距離等を調整することにより適宜調整
することができる。
【0085】
工程Aの反応は、不活性ガスの存在下で実施してもよい。このような不活性ガスの例は
、窒素、及びアルゴンを包含する。
【0086】
工程Aの反応温度は、好ましくは、0~120℃の範囲内、より好ましくは、10~8
0℃の範囲内、更に好ましくは、20~60℃の範囲内である。
当該範囲内の条件であることにより、工程Aの反応が十分に進行する。
当該範囲内の条件であることにより、コスト的に有利であり、及び望ましからぬ副反応
が抑制される。
【0087】
工程Aの反応時間は、好ましくは、1~24時間の範囲内、より好ましくは、5~18
時間の範囲内、更に好ましくは、10~15時間の範囲内である。
当該範囲内の条件であることにより、工程Aの反応が十分に進行する。
当該範囲内の条件であることにより、コスト的に有利であり、及び望ましからぬ副反応
が抑制される。
【0088】
工程Aの反応は、好適に、バッチ式、又はフロー系により実施できる。
【0089】
本開示の製造方法により得られる化合物(1)は、所望により、溶媒抽出、乾燥、濾過、蒸留、濃縮、及びこれらの組み合わせ等の公知の精製方法によって精製することができる。
【0090】
本開示の製造方法によれば、原料である化合物(2)の転化率は、好ましくは40%以
上、より好ましくは60%以上であり、更に好ましくは80%以上であることができる。
本開示の製造方法によれば、化合物(1)の選択率は好ましくは70%以上であり、よ
り好ましくは80%以上であることができる。
本開示の製造方法によれば、化合物(1)の収率は好ましくは40%以上であり、より
好ましくは60%以上であることができる。
【0091】
本開示の製造方法で得られる化合物(1)は、例えば、医薬品中間体等の用途に用いる
ことができる。
【0092】
製造方法[化合物(1a)]
本明細書は、また、
式(1a):
【化17】
[式中、
は、各出現において独立して、有機基であり、
は、各出現において独立して、水素原子、又はフッ素原子であり、
4aは、各出現において独立して、水素原子、又は有機基であり、
4bは、各出現において独立して、水素原子、又は有機基であり
は、水素原子、又は有機基であり、
5a は、水素原子、又は有機基であり、
及びR 5b は、水素原子、又は有機基である。
で表される化合物の製造方法であって、
式(2):
【化18】
[式中、Xは脱離基であり、及びその他の記号は前記と同意義である。]
で表される化合物を、
所望により還元剤の存在下、且つ光照射下で、
式(3):
【化19】
[式中、Xは脱離基であり、及びその他の記号は前記と同意義である。]
で表される化合物と反応させる工程Aaを含む製造方法
を開示する。
当該工程Aaは、生成物が異なること以外は前記工程Aと同じであることができる。
言い換えれば、工程A(又は工程Aa)の反応の基質及び条件で、化合物(1)及び/又は化合物(1a)が生成され得る。
【0093】
したがって、当該工程Aaは、前記工程Aの説明に基づいて理解され得る。
ここで、化合物(Aa)をより優先的に生成させるためには、化合物(3)の量を、化
合物(2)の量に対して、より小さくすることが好ましい。
この場合、具体的には、化合物(3)/化合物(2)のモル比は、好適に0.9~0.
1の範囲内、及びより好適に0.5~0.2の範囲内であることができる。
【0094】
他方、化合物(A)をより優先的に生成させるためには、化合物(3)の量を、化合物
(2)の量に対して、より大きくすることが好ましい。
この場合、具体的には、化合物(3)/化合物(2)のモル比は、好適に1.1~10
の範囲内、及びより好適に2~5の範囲内であることができる。
【0095】
化合物(1)
本明細書は、また、以下の化合物[当該化合物を化合物(1)と称する場合がある。]を開示する。
【0096】
式(1):
【化20】
[式中、
は、有機基であり、
は、水素原子、又はフッ素原子であり、
4aは、水素原子、又は有機基であり、
4bは、水素原子、又は有機基であり、
は、水素原子、又は有機基であり、
5aは、水素原子、又は有機基であり、及び
5bは、水素原子、又は有機基である
(但し、
がペルフルオロアルキル基の場合、Rは炭素数2以上のアルキル基又は炭素数3以上のエステル基である。)。]
で表される化合物。
【0097】
態様1a1
当該化合物(1)において、好ましくは、
は、R11-Y-であり、
Yは、結合手であり、及び
11は、
1個以上の置換基を有していてもよいアリール基、又は
1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基
であり、
は、水素原子、又はフッ素原子であり、及び
は、水素原子、又は有機基である。
【0098】
11は、好ましくは、アリール基、又はペルフルオロアルキル基である。
11は、より好ましくは、C6-10アリール基、又はC1-10ペルフルオロアル
キル基である。
【0099】
は、好ましくは、フッ素原子である。
【0100】
は、好ましくは
水素原子、
1個以上の置換基を有していてもよい炭化水素基、又は
1個以上の置換基を有していてもよいアルコキシカルボニル基
である。
【0101】
は、更に好ましくは
水素原子、
1個以上の置換基を有していてもよいアルコキシカルボニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいアリール基、又は
1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基
である。
は、更に好ましくは
水素原子、
1個以上の置換基を有していてもよいアルコキシカルボニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいアリール基、又は
1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基
である。
【0102】
は、更に好ましくは
水素原子、
1個以上の置換基を有していてもよいC1-6アルキル基、
1個以上の置換基を有していてもよいC6-14アリール基、又は
1個以上の置換基を有していてもよいC1-6アルコキシ-カルボニル基
である。
【0103】
は、より更に好ましくは、
水素原子、
1-6アルキル基、
6-14アリール基、
1-6アルコキシ-カルボニル基、又は
である。
【0104】
4aは、好ましくは水素原子である。
4bは、好ましくは水素原子である。
5aは、好ましくは水素原子である。
5bは、好ましくは水素原子である。
【0105】
好ましくは、
4aは、水素原子、又は有機基であり、
4bは、水素原子、又は有機基であり、
は、
水素原子、
1個以上の置換基を有していてもよいアルコキシカルボニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいアリール基、又は
1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基であり、
5aは、水素原子であり、及び
5bは、水素原子である。
【0106】
態様1a2
該化合物(1)において、また好ましくは、
は、R11-Y-であり、
Yは、-O-C(=O)-、又は-O-C(=S)-であり、
11は、1個以上の置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基であり、
は、水素原子、又はフッ素原子であり、及び
は、水素原子、又は有機基である。
【0107】
好ましくは、Rは、フッ素原子である。
【0108】
好ましくは、Rは、
水素原子、
1個以上の置換基を有していてもよいアルコキシカルボニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいアリール基、又は
1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基
である。
【0109】
好ましくは、Rは、
水素原子、
1個以上の置換基を有していてもよいC1-6アルコキシカルボニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいC6-14アリール基、又は
1個以上の置換基を有していてもよいC1-6アルキル基
である。
【0110】
4aは、好ましくは水素原子である。
4bは、好ましくは水素原子である。
5aは、好ましくは水素原子である。
5bは、好ましくは水素原子である。
【0111】
好ましくは、
4aは、水素原子であり、
4bは、水素原子であり、
は、
水素原子、
1個以上の置換基を有していてもよいアルコキシカルボニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいアリール基、又は
1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基であり
5aは、水素原子であり、及び
5bは、水素原子である。
【0112】
態様1a3
該化合物(1)において、また好ましくは、
は、R11-Y-であり、
Yは、-O-C(=O)-、又は-O-C(=S)-であり、
11は、1個以上の置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基
は、水素原子、又はフッ素原子であり、及び
は、水素原子、又は有機基である。
【0113】
態様1a4
該化合物(1)において、また好ましくは、
好ましくは、
は、(R11-)N-C(=O)-であり、
11は、各出現において独立して、1個以上の置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基であり、
は、水素原子、又はフッ素原子であり、及び
は、水素原子、又は有機基である。
11は、好ましくは、各出現において独立して、C1-6アルキルである。
【0114】
は、好ましくはフッ素原子である。
【0115】
製造方法[化合物(1B)の製造方法]
本明細書は、更に、式(1B):
【化21】
[式中、
は、有機基であり、
は、水素原子、又はフッ素原子であり、
B1は、水素原子、又は有機基であり、
B2は、水素原子、又は有機基であり、及び
は、水素原子、又は有機基である。]
で表される化合物(本明細書中、当該化合物を、化合物(1B)と称する場合がある。)の製造方法であって、
式(2):
【化22】
[式中、Xは脱離基であり、及びその他の記号は前記と同意義である。]
で表される化合物を、
還元剤の存在下、且つ光照射下で、
式(3):
【化23】
[式中、
は脱離基であり、
4a は、水素原子、又は有機基であり、
4b は、水素原子、又は有機基であり、
5a は、水素原子、又は有機基であり、及び
5b は、水素原子、又は有機基である。]
で表される化合物、及び
式():
【化24】
[式中の記号は前記と同意義である。]
で表される化合物
と反応させる工程Aを含む製造方法
を開示する。
工程Aにおける、化合物()の使用量は、化合物(2)の1モルに対して、好ましくは、3~20モルの範囲内、より好ましくは、4~15モルの範囲内、及び更に好ましくは、5~12モルの範囲内である。
【0116】
工程Aのその他の条件及び方法は、前記工程Aの条件及び方法と同様であることがで
きる。具体的には、以下の通りである。
【0117】
工程Aの反応は、光照射下で実施される。
当該光照射に用いられる照射光としては、例えば、工程Aの反応を開始、及び/又は促
進できる光であれば特に限定なく使用することができる。その光源の例は、低圧、中圧、
若しくは高圧の水銀灯、タングステンランプ、及び発光ダイオード(LED)が挙げられ
る。
照射光は、好適に可視光であることができる。
照射光は、
好ましくは300~600nmの波長の光を含む光、及び
より好ましくは400~500nmの光を含む光
であることができる。
照射時間は、好ましくは1~24時間の範囲内、及び
より好ましくは10~18時間
であることができる。
光照射の開始は、前記混合の、前、途中、同時、又は後であることができる。
光照射の強度は、工程Aの反応を開始、及び/又は促進できるエネルギーが供給され
る程度であればよく、これは、例えば、工程Aの反応が適当に進行するように、技術常
識に基づき、光源の出力、及び光源と工程Aの反応系の距離等を調整することにより適
宜調整することができる。
【0118】
工程Aの反応は、不活性ガスの存在下で実施してもよい。このような不活性ガスの例
は、窒素、及びアルゴンを包含する。
【0119】
工程Aの反応温度は、
好ましくは、0~120℃の範囲内、
より好ましくは、10~80℃の範囲内、及び
更に好ましくは、20~60℃の範囲内
であることができる。
当該範囲内の条件であることにより、工程Aの反応が十分に進行する。
当該範囲内の条件であることにより、コスト的に有利であり、及び望ましからぬ副反応
が抑制される。
【0120】
工程Aの反応時間は、
好ましくは、1~24時間の範囲内、
より好ましくは、5~18時間の範囲内、及び
更に好ましくは、10~15時間の範囲内
であることができる。
当該範囲内の条件であることにより、工程Aの反応が十分に進行する。
当該範囲内の条件であることにより、コスト的に有利であり、及び望ましからぬ副反応
が抑制される。
【0121】
工程Aの反応は、好適に、バッチ式、又はフロー系により実施できる。
【0122】
本開示の製造方法により得られる化合物(1B)は、所望により、所望により、溶媒抽
出、乾燥、濾過、蒸留、濃縮、及びこれらの組み合わせ等の公知の精製方法によって精製
することができる。
【0123】
本開示の製造方法によれば、原料である化合物(2)の転化率は、
好ましくは40%以上、
より好ましくは60%以上、及び
更に好ましくは80%以上
であることができる。
【0124】
本開示の製造方法によれば、化合物(1B)の選択率は、
好ましくは70%以上であり、及び
より好ましくは80%以上
であることができる。
【0125】
本開示の製造方法によれば、
化合物(1B)の収率は、
好ましくは40%以上であり、及び
より好ましくは60%以上
であることができる。
【0126】
本開示の製造方法で得られる化合物(1B)は、例えば、医薬品中間体等の用途に用い
ることができる。
【実施例
【0127】
以下、実施例によって本開示を更に詳細に説明するが、本開示はこれに限定されるもの
ではない。
【0128】
本明細書中、以下の略称を使用する場合がある。
HEH:Hantzschエステル
TTMSS:トリス(トリメチルシリル)シラン
DIEA:N,N-ジイソプロピルエチルアミン
bpy:2,2’-ビピリジン
【0129】
以下の実施例において、特に記載の無い場合、収率は単離収率である。
【0130】
実施例1(様々な条件での、化合物3a及び化合物4aの製造)
表1に記載の材料及び条件で、ガラス管中で、触媒(1mol%)の存在下、化合物1
a(0.5mmol)、化合物2a(1.5当量、又は3.0当量)、ハンチエステルa
(HEH)及びアミン(2当量)の溶液(溶媒 3ml)に対して、白色LEDランプ(
5W)を用いて、12時間、光照射した。
その結果、化合物3a及び/又は化合物4aが、表1に記載のNMR収率で得られた。
【0131】
【化25】
【表1】
【0132】
実施例2(Ru-光還元触媒による、ジフルオロハロアルキル化合物及びアリルスルホン
化合物を用いたアリル化合物の製造)
表2に記載の材料及び条件で、ガラス管中で、各化合物1、及び各化合物2、Ru(b
py)Cl・6HO(1mol%)、ハンチエステルa(HEH)及びEtNの
DMF溶液に対して、白色LEDランプ(5W)を用いて、2時間、光照射した。
その結果、各化合物3が、表2に記載の収率(表中、記号cはNMR収率を示す。)で得
られた。
【0133】
【表2】
【0134】
実施例3(光照射の効果の検証)
【化26】
上記スキームの条件の反応で、光照射の効果を検証するために、本システムにおける光
照射のオンオフを実施した。
光照射10分間で、生成物3aが収率49%で形成された。
光源をオフにして光照射を停止すると、反応は迅速に停止した。
その26時間後、光源をオンにして光照射を再開すると、反応が迅速に再開された。
【0135】
実施例4 スキームT
【化27】
前記の実施例の化合物1及び2に加えて、本実施例では、更にアルケン(1-オクテン
5a)を添加することによって、3成分ラジカル反応を、上記スキームTの条件で、試験
した。
2-ブロモ-2,2-ジフルオロ酢酸エチル1b、1-オクテン5a及び2-メトキシ
カルボニル置換アリルスルホン2aとの反応により、3成分からの生成物6aが収率50
%で得られた。
ペルフルオロデシルブロミド1e、1-オクテン5a、及び2-フェニルアリルスルホ
ン2aの3成分の反応により、化合物6bが収率56%で得られた。