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特許7421318液体材料気化装置、液体材料気化装置の制御方法、及び、液体材料気化装置用プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-16
(45)【発行日】2024-01-24
(54)【発明の名称】液体材料気化装置、液体材料気化装置の制御方法、及び、液体材料気化装置用プログラム
(51)【国際特許分類】
   G05D 7/06 20060101AFI20240117BHJP
   C23C 16/448 20060101ALI20240117BHJP
   H01L 21/205 20060101ALN20240117BHJP
【FI】
G05D7/06 Z
C23C16/448
H01L21/205
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2019214198
(22)【出願日】2019-11-27
(65)【公開番号】P2021086358
(43)【公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-10-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000127961
【氏名又は名称】株式会社堀場エステック
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100129702
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 喜永
(72)【発明者】
【氏名】寺阪 正訓
(72)【発明者】
【氏名】本間 瞭一
(72)【発明者】
【氏名】アレキサンダー フェルナンデス
【審査官】大古 健一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2005/0181129(US,A1)
【文献】特開平11-131233(JP,A)
【文献】特開2017-76800(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 7/00 - 7/06
C23C 16/00 -16/56
H01L 21/205
H01L 21/31
H01L 21/365
H01L 21/469
H01L 21/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体材料、又は、液体材料が気化した材料ガスである材料流体が流れる流路に設けられた制御バルブと、
前記制御バルブよりも下流側に設けられた圧力センサと、
材料流体の流量を測定する流量センサと、
設定圧力と前記圧力センサで測定される測定圧力との偏差を小さくしつつ、前記流量センサで測定される測定流量が液体材料の気化できる上限流量に基づいて設定された流量である制限流量以下となるように前記制御バルブを制御するバルブ制御器と、を備え
前記バルブ制御器が、
(a)
測定流量と制限流量の偏差に基づいて、前記制御バルブの操作量である第1操作量を算出する第1操作量算出部と、
測定圧力と設定圧力の偏差に基づいて、前記制御バルブの操作量である第2操作量を算出する第2操作量算出部と、
第1操作量と第2操作量を比較して、いずれか一方の操作量を前記制御バルブに入力する操作量決定部とを備えた、又は
(b)
測定流量と設定流量の偏差に基づいて、前記制御バルブを制御する流量制御部と、
測定圧力と設定圧力の偏差が小さくなるように、制限流量以下の設定流量を前記流量制御部に設定する流量設定部とを備えた、液体材料気化装置。
【請求項2】
前記制御バルブが、電圧が印加されていない状態で全開状態となるノーマルオープンタイプのバルブであり、
前記操作量決定部が、第1操作量と第2操作量のうち大きいほうの操作量を前記制御バルブに入力する請求項記載の液体材料気化装置。
【請求項3】
前記制御バルブが、電圧が印加されていない状態で全閉状態となるノーマルクローズタイプのバルブであり、
前記操作量決定部が、第1操作量と第2操作量のうち小さいほうの操作量を前記制御バルブに入力する請求項記載の液体材料気化装置。
【請求項4】
前記流量設定部が、測定圧力が設定圧力よりも大きい場合には設定流量を小さくする方向に変更し、測定圧力が設定圧力よりも小さい場合には設定流量を大きくする方向に変更する請求項記載の液体材料気化装置。
【請求項5】
前記制御バルブの上流側には液体材料が流れ、前記制御バルブの下流側では液体材料が気化した材料ガスが流れるように構成されており、
前記流量センサが、前記制御バルブの上流側に設けられ、液体材料の流量を測定する請求項1乃至いずれかに記載の液体材料気化装置。
【請求項6】
前記制御バルブの上流側には液体材料が流れ、前記制御バルブの下流側では液体材料が気化した材料ガスが流れるように構成されており、
前記流量センサが、前記制御バルブの下流側に設けられ、材料ガスの流量を測定する請求項1乃至いずれかに記載の液体材料気化装置。
【請求項7】
タンク内に収容された液体材料が加熱器によって加熱され、気化した材料ガスが前記タンク内から前記流路に導出されるように構成されており、
前記流量センサが、前記制御バルブの上流側に設けられ、材料ガスの流量を測定する請求項1乃至いずれかに記載の液体材料気化装置。
【請求項8】
前記流路が、メイン流路と、前記メイン流路の下流側から分岐する複数の分岐流路とからなり、各分岐流路がそれぞれ別々に材料ガスの供給対象に接続される請求項1乃至いずれかに記載の液体材料気化装置。
【請求項9】
前記制御バルブが、各分岐流路にそれぞれ設けられた請求項記載の液体材料気化装置。
【請求項10】
前記流路に設けられたノズルをさらに備えた請求項1乃至いずれかに記載の液体材料気化装置。
【請求項11】
前記制御バルブの下流側に設けられたバッファタンクをさらに備えた請求項1乃至10いずれかに記載の液体材料気化装置。
【請求項12】
前記制御バルブの下流側が気体状態の材料流体の供給対象が接続されており、
前記制御バルブを通過した材料流体がすべて供給対象に流入するように構成されている請求項1乃至11いずれかに記載の液体材料気化装置。
【請求項13】
液体材料、又は、液体材料が気化した材料ガスである材料流体が流れる流路に設けられた制御バルブと、
前記制御バルブよりも下流側に設けられた圧力センサと、
材料流体の流量を測定する流量センサと、
設定圧力と前記圧力センサで測定される測定圧力との偏差を小さくしつつ、前記流量センサで測定される測定流量が液体材料の気化できる上限流量に基づいて設定された流量である制限流量以下となるように前記制御バルブを制御するバルブ制御器と、
前記制御バルブの下流側に設けられたバッファタンクとを備えた液体材料気化装置。
【請求項14】
液体材料、又は、液体材料が気化した材料ガスである材料流体が流れる流路に設けられた制御バルブと、
前記制御バルブよりも下流側に設けられた圧力センサと、
材料流体の流量を測定する流量センサと、
設定圧力と前記圧力センサで測定される測定圧力との偏差を小さくしつつ、前記流量センサで測定される測定流量が液体材料の気化できる上限流量に基づいて設定された流量である制限流量以下となるように前記制御バルブを制御するバルブ制御器と、を備え、
前記制御バルブの上流側には液体材料が流れ、前記制御バルブの下流側では液体材料が気化した材料ガスが流れるように構成されており、
前記流量センサが、(a)前記制御バルブの上流側に設けられ、液体材料の流量を測定する、又は(b)前記制御バルブの下流側に設けられ、材料ガスの流量を測定する液体材料気化装置。
【請求項15】
液体材料、又は、液体材料が気化した材料ガスである材料流体が流れる流路に設けられた制御バルブと、前記制御バルブよりも下流側に設けられた圧力センサと、材料流体の流量を測定する流量センサと、を備えた液体材料気化装置の制御方法であって、
設定圧力と前記圧力センサで測定される測定圧力との偏差を小さくしつつ、前記流量センサで測定される測定流量が液体材料の気化できる上限流量に基づいて設定された流量である制限流量以下となるように前記制御バルブを制御し、
(a)測定流量と制限流量の偏差に基づいて前記制御バルブの操作量である第1操作量を算出し、測定圧力と設定圧力の偏差に基づいて前記制御バルブの操作量である第2操作量を算出し、第1操作量と第2操作量を比較して、いずれか一方の操作量を前記制御バルブに入力すること、又は
(b)測定流量と設定流量の偏差に基づいて前記制御バルブを制御し、測定圧力と設定圧力の偏差が小さくなるように制限流量以下の設定流量を設定することを特徴とする液体材料気化装置の制御方法。
【請求項16】
液体材料、液体材料が気化した材料ガスである材料流体が流れる流路に設けられた制御バルブと、前記制御バルブよりも下流側に設けられた圧力センサと、材料流体の流量を測定する流量センサと、を備えた液体材料気化装置に用いられるプログラムであって、
設定圧力と前記圧力センサで測定される測定圧力との偏差を小さくしつつ、前記流量センサで測定される測定流量が液体材料の気化できる上限流量に基づいて設定された流量である制限流量以下となるように前記制御バルブを制御するバルブ制御器としての機能をコンピュータに発揮させ、さらに
(a)
測定流量と制限流量の偏差に基づいて、前記制御バルブの操作量である第1操作量を算出する第1操作量算出部と、
測定圧力と設定圧力の偏差に基づいて、前記制御バルブの操作量である第2操作量を算出する第2操作量算出部と、
第1操作量と第2操作量を比較して、いずれか一方の操作量を前記制御バルブに入力する操作量決定部としての機能、又は
(b)
測定流量と設定流量の偏差に基づいて、前記制御バルブを制御する流量制御部と、
測定圧力と設定圧力の偏差が小さくなるように、制限流量以下の設定流量を前記流量制御部に設定する流量設定部としての機能をコンピュータに発揮させることを特徴とする液体材料気化装置用プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば半導体製造プロセスに用いられる液体材料気化装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ALD(Atomic Layer Deposition)やALE(Atomic layer Etching)では、原子層レベルの積層やエッチングを実現するために、チャンバ内へ材料ガスを供給するオン期間と材料ガスの供給を停止するオフ期間とを高速で切り替えながら、オン期間では求められる一定量の材料ガスを再現性良くチャンバに対して供給する必要がある。また、このような半導体プロセスでは材料ガスとして液体材料を気化させたものが用いられるようになっている。
【0003】
液体材料を気化させて材料ガスを生成する場合、例えば材料ガスの圧力や流量が大きく変動すると、液体材料が十分に気化せず、所望量の材料ガスがチャンバ内に供給されなかったり、液体材料のままチャンバ内に供給されてしまったりする可能性がある。
【0004】
このため、ALDやALEで用いられる半導体製造システムでは例えば特許文献1に示されるような液体材料気化装置によって一定流量の材料ガスが常に生成されるように制御を行うとともに、オフ期間中には材料ガスをベントしてチャンバへ供給されないようにしている。具体的にこの半導体製造システムは、図12に示すように液体材料とキャリアガスを混合して液体材料を気化させる液体材料気化装置100Aと、液体材料気化装置100AとチャンバCNとを接続し、第1開閉バルブV1を具備する供給ラインSLと、供給ラインSLから分岐し、第2開閉バルブV2を具備するベントラインVLと、を備えている。液体材料気化装置100Aは制御バルブ1Aによって液体材料の供給量を制御し、供給ラインSLに流れる材料ガスの流量が一定となるように制御される。また、製造レシピによって規定されるオン期間とオフ期間の切り替えは第1開閉バルブV1と第2開閉バルブV2を交互にオンオフを切り替えることで実現される。このようにしてオン期間には一定量の材料ガスがチャンバCN内に供給される。
【0005】
しかしながら、このような材料ガスの供給方法では、材料ガスが捨てられている間に高価な液体材料を多量に無駄にしてしまうことにもなる。具体的には第1開閉バルブV1、第2開閉バルブV2、及び、制御バルブ1Aの開閉状態を示すタイミングチャートである図13(a)に示すように第1開閉バルブV1がオフで第2開閉バルブV2がオンの状態では制御バルブ1Aもオンのため、斜線部分に示す領域では液体材料は気化されてそのままベントラインVLから捨てられてしまっている。
【0006】
一方、チャンバCN内の処理する基板のバッチサイズが大きく、オン期間とオフ期間自体が長い場合には、図13(b)に示すように制御バルブ1Aのオンオフも第2制御バルブV2のオンオフに同期させて切り替えることで液体材料の消費量を低減している。このような制御態様であったとしても、オン期間に一定流量の材料ガスを供給するためにオン期間の開始前に制御バルブ1Aがオンとされることや、流量制御に一次遅れが発生することにより、斜線で示されるように一部の材料ガスはベントラインVLから捨てざるを得ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第5350824号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上述したような問題に鑑みてなされたものであり、液体材料を十分に気化できる状態を維持しつつ、材料ガスの流量や圧力を所望の値に変化させながら制御できるようにし、例えばベントラインから捨てられる材料ガスの量を低減できる液体材料気化装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明に係る液体材料気化装置は、液体材料、又は、液体材料が気化した材料ガスである材料流体が流れる流路に設けられた制御バルブと、前記制御バルブよりも下流側に設けられた圧力センサと、材料流体の流量を測定する流量センサと、設定圧力と前記圧力センサで測定される測定圧力との偏差を小さくしつつ、前記流量センサで測定される測定流量が液体材料の気化できる上限流量に基づいて設定された流量である制限流量以下となるように前記制御バルブを制御するバルブ制御器と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る制御方法は、液体材料、又は、液体材料が気化した材料ガスである材料流体が流れる流路に設けられた制御バルブと、前記制御バルブよりも下流側に設けられた圧力センサと、材料流体の流量を測定する流量センサと、を備えた液体材料気化装置の制御方法であって、設定圧力と前記圧力センサで測定される測定圧力との偏差を小さくしつつ、前記流量センサで測定される測定流量が液体材料の気化できる上限流量に基づいて設定された流量である制限流量以下となるように前記制御バルブを制御することを特徴とする。
【0011】
このようなものであれば、設定圧力が変更されて前記制御バルブの下流側から供給される材料ガスの流量や圧力が変更されたとしても、材料流体の流量は液体材料が気化できる流量に制限されるので、前記制御バルブの下流側に液体材料がそのまま供給されるのを防ぐことができる。
【0012】
また、前記制御バルブの下流側に液体材料が供給されないようにできるので、例えばALD/ALEプロセスのように材料ガスの供給と停止が繰り返される場合でもそれに合わせて前記制御バルブにより材料ガスの流量を増減させることが可能となる。したがって、前記制御バルブと供給対象との間にベントラインを設けて、材料ガスの供給が停止される間は材料ガスを捨てる必要がなくなる。
【0013】
1つの前記制御バルブによって、材料流体の流量が制限流量以下となり、液体材料の気化が保証されるようにしつつ、前記制御バルブの下流側を流れる材料流体の圧力は一定に保たれるように制御するための具体的な制御構成としては、前記バルブ制御器が、測定流量と制限流量の偏差に基づいて、前記制御バルブの操作量である第1操作量を算出する第1操作量算出部と、測定圧力と設定圧力の偏差に基づいて、前記制御バルブの操作量である第2操作量を算出する第2操作量算出部と、第1操作量と第2操作量を比較して、いずれか一方の操作量を前記制御バルブに入力する操作量決定部と、を備えたものが挙げられる。
【0014】
上限流量と設定圧力のうち測定値から大きく離れている側の目標が前記操作量決定部において採用されるようにして、いずれの偏差も短時間で縮小するように前記制御バルブが制御されるようにするには、前記制御バルブが、電圧が印加されていない状態で全開状態となるノーマルオープンタイプのバルブであり、前記操作量決定部が、第1操作量と第2操作量のうち大きいほうの操作量を前記制御バルブに入力するものであればよい。また、同様に前記制御バルブが、電圧が印加されていない状態で全閉状態となるノーマルクローズタイプのバルブであり、前記操作量決定部が、第1操作量と第2操作量のうち小さいほうの操作量を前記制御バルブに入力するものであればよい。
【0015】
材料流体の流量が制限流量以下となり、液体材料の気化が保証されるようにしつつ、前記制御バルブの下流側の材料流体の圧力も一定に保たれるようにするための別の制御態様としては、前記バルブ制御器が、測定流量と設定流量の偏差に基づいて、前記制御バルブを制御する流量制御部と、測定圧力と設定圧力の偏差が小さくなるように、制限流量以下の設定流量を前記流量制御部に設定する流量設定部と、を備えたものが挙げられる。
【0016】
設定流量を変更することで前記制御バルブの下流側の材料流体の圧力を設定圧力に追従させるための具体的な構成例としては、前記流量設定部が、測定圧力が設定圧力よりも大きい場合には設定流量を小さくする方向に変更し、測定圧力が設定圧力よりも小さい場合には設定流量を大きくする方向に変更するものが挙げられる。
【0017】
前記制御バルブの上流側には液体材料が流れ、前記制御バルブの下流側では液体材料が気化した材料ガスが流れるように構成されており、前記流量センサが、前記制御バルブの上流側に設けられ、液体材料の流量を測定するものであれば、液体材料の流量を直接測定しているので、液体材料が気化できない流量となるのをより正確に防ぐことが可能となる。
【0018】
例えば高温対応の流量センサを用いることで、前記制御バルブの下流側を流れる材料ガスの流量を直接フィードバックして材料ガスの流量に時間遅れが発生しにくくしつつ、気化した材料ガスが再び液化するのを防げるようにするための具体的な構成例としては、前記制御バルブの上流側には液体材料が流れ、前記制御バルブの下流側では液体材料が気化した材料ガスが流れるように構成されており、前記流量センサが、前記制御バルブの下流側に設けられ、材料ガスの流量を測定するものが挙げられる。
【0019】
タンク内に収容された液体材料が加熱器によって加熱され、気化した材料ガスが前記タンク内から前記流路に導出されるように構成されており、前記流量センサが、前記制御バルブの上流側に設けられ、材料ガスの流量を測定するものが挙げられる。
【0020】
前記制御バルブに対して材料ガスが直接供給されるようにして、当該制御バルブの下流側に液体材料が流れないようにできる具体的な構成例としては、タンク内に収容された液体材料が加熱器によって加熱され、気化した材料ガスが前記タンク内から前記流路に導出されるように構成されており、前記流量センサが、前記制御バルブの上流側に設けられ、材料ガスの流量を測定するものが挙げられる。このようなものであれば、前記タンク内の液体材料から生成可能な材料ガスの流量以上とならないように前記制御バルブは制御されるので、例えば気化供給能力の不足に起因して前記制御バルブが全閉又は全開状態で維持されつづけてしまい、偏差が小さくならない状態が継続されるといった不具合が発生するのを防ぐことができる。
【0021】
例えば気化された材料ガスを複数の供給対象に対して並列的に供給できるようにするには、前記流路が、メイン流路と、前記メイン流路の下流側から分岐する複数の分岐流路とからなり、各分岐流路がそれぞれ別々に材料ガスの供給対象に接続されるものであればよい。
【0022】
1つの液体材料の供給源からそれぞれ異なる圧力を有した材料ガスを各供給対象に個別に供給できるようにするには、前記制御バルブが、各分岐流路にそれぞれ設けられたものであればよい。
【0023】
例えば前記制御バルブを通過した後の材料流体の流量を所定値に律速して、気化状態を安定させられるようにするには、前記流路に設けられたノズルをさらに備えたものであればよい。
【0024】
前記供給対象に供給される材料ガスの圧力の脈動を緩和するには、前記制御バルブの下流側に設けられたバッファタンクをさらに備えたものであればよい。
【0025】
前記制御バルブの下流側が気体状態の材料流体の供給対象が接続されており、前記制御バルブを通過した材料流体がすべて供給対象に流入するように構成されていれば、材料ガスについてはすべて供給対象に対して供給し、無駄となる材料ガスをなくすことができる。
【0026】
既存の液体材料気化装置においてプログラムを更新することにより、本発明と同様の効果を享受できるようにするには、液体材料、又は、液体材料が気化した材料ガスである材料流体が流れる流路に設けられた制御バルブと、前記制御バルブよりも下流側に設けられた圧力センサと、材料流体の流量を測定する流量センサと、を備えた液体材料気化装置に用いられるプログラムであって、設定圧力と前記圧力センサで測定される測定圧力との偏差を小さくしつつ、前記流量センサで測定される測定流量が液体材料の気化できる上限流量に基づいて設定された流量である制限流量以下となるように前記制御バルブを制御するバルブ制御器としての機能をコンピュータに発揮させることを特徴とする液体材料気化装置用プログラムを用いればよい。
【0027】
なお、液体材料気化装置用プログラムは、電子的に配信されるものであってもよいし、CD、DVD、フラッシュメモリ等のプログラム記録媒体に記録されたものであっても構わない。
【発明の効果】
【0028】
このように本発明に係る液体材料気化装置であれば、前記制御バルブの下流側における材料流体の圧力については設定圧力に追従するように制御しつつ、液体材料が気化可能な制限流量以内に流量を制限することができる。したがって、液体材料が気化できずに前記制御バルブの下流側に供給されてしまうのを防ぎつつ、所望の圧力制御を実現できる。また、従来のように液体材料の気化状態を一定に保つために液体材料気化装置から供給される材料ガスの流量を一定に保ち続ける必要がなく、変化させることが可能となる。したがって、従来のように供給対象への材料ガスの供給を停止させるために生成した材料ガスをベントラインから排気する必要がなく、無駄となる液体材料の量を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の第1実施形態に係る液体材料気化装置を示す模式図。
図2】第1実施形態の液体材料気化装置の機能ブロック図。
図3】第1実施形態の液体材料気化装置の動作を示すフローチャート。
図4】第1実施形態の液体材料気化装置で測定される各測定値と、各操作量の時間変化を示すシミュレーション結果の第1例。
図5】第1実施形態の液体材料気化装置で測定される各測定値と、各操作量の時間変化を示すシミュレーション結果の第2例。
図6】第1実施形態の液体材料気化装置で測定される各測定値と、各操作量の時間変化を示すシミュレーション結果の第3例。
図7】第1実施形態の液体材料気化装置で測定される各測定値と、各操作量の時間変化を示すシミュレーション結果の第4例。
図8】本発明の第1実施形態に係る液体材料気化装置の第1変形例を示す模式図。
図9】本発明の第1実施形態に係る液体材料気化装置の第2変形例を示す模式図。
図10】本発明の第2実施形態に係る液体材料気化装置を示す模式図。
図11】第2実施形態の液体材料気化装置の機能ブロック図。
図12】従来の液体材料気化装置を示す模式図。
図13】従来の液体材料気化装置の動作を示すタイミングチャート。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の第1実施形態に係る液体材料気化装置100、及び、半導体製造システム200について図1図7を参照しながら説明する。
【0031】
第1実施形態の半導体製造システム200は、例えばALD/ALEプロセスに用いられるものであり、液体材料を気化させた材料ガスを供給対象であるチャンバCNに対して供給するものである。なお、この明細書において材料ガスとは、成膜用の成分ガス、エッチングガス等のチャンバCN内のプロセスを進行させるために必要なガスを含む概念である。また、液体材料自体、液体材料が気化した材料ガス、材料ガスとキャリアガスが混合された混合ガスを総称して材料流体ともよぶ。
【0032】
この半導体製造システム200は図1に示すように液体材料気化装置100とチャンバCNとの間は供給ラインSLで接続されており、バッファタンクBTと、供給バルブVが設けられている。なお、バッファタンクBTについては用途によって設けられない場合もある。加えて、供給バルブVは例えば半導体製造システム200を統括する制御装置によりその開度又は開閉が制御され、液体材料気化装置100は直接制御しない。液体材料気化装置100が供給バルブVを制御するように構成してもよい。また、チャンバCN内でプロセスが進行している間は材料ガスの供給が一時的に停止される場合でもベントラインは使用されない。言い換えると第1実施形態の半導体製造システム200は、チャンバCN内でプロセスが進行している間は材料ガスを捨てることがないように構成されている。このため、図1では供給ラインSLから分岐するベントラインは図示していない。
【0033】
次に液体材料気化装置100の詳細について説明する。この液体材料気化装置100は、液体材料をキャリアガスなしで供給し、減圧することで気化させるインジェクションタイプの気化装置である。
【0034】
液体材料気化装置100は、キャリアガスなしで液体材料が流れる液ラインLL上に設けられ、液体材料の流量を測定する流量センサ2と、液ラインLLと供給ラインSLとの間に介在する制御バルブ1と、制御バルブ1の下流側において供給ラインSL上にあるバッファタンクBT内の圧力を測定する圧力センサ3と、流量センサ2と圧力センサ3の測定値に基づいて制御バルブ1を制御するバルブ制御器4と、を備えている。
【0035】
ここで、制御バルブ1よりも下流側はチャンバCNに設けられたドライポンプDPによって真空引きされるため、所定の圧力(所定の真空度)に減圧された状態となる。制御バルブ1を通過し、供給ラインSL内に噴射された液体材料はその圧力が減圧されることで気化され、材料ガスの状態となる。また、供給ラインSLについては液体材料が気化しやすいように所定温度となるように加熱されていてもよい。
【0036】
流量センサ2は液体の流量を測定するものであって、測定原理としては圧力式、熱式、コリオリ流量式等さまざまなものを使用してもよい。
【0037】
制御バルブ1は例えばピエゾバルブであって、高速のオンオフ(全開全閉)の切り替えに対応できるものである。また、第1実施形態の制御バルブ1は電圧が印加されていない状態において全開状態となるノーマルオープンタイプのバルブである。
【0038】
バルブ制御器4は、供給ラインSLにおける材料ガスの圧力が所定の圧力で一定となるとともに、液ラインLLから供給ラインSLに対して気化できる上限流量以内の液体材料が供給されるように制御バルブ1を制御する。より具体的には、バルブ制御器4は設定圧力と圧力センサ3で測定される測定圧力との偏差を小さくしつつ、流量センサ2で測定される測定流量が液体材料の気化できる上限流量に基づいて設定された流量である制限流量以下となるように制御バルブ1を制御する。
【0039】
すなわち、第1実施形態では1つの制御バルブ1を制御するために供給ラインSL内の材料ガスの圧力を制御する圧力フィードバックループと、液供給ラインSL内の液体材料の流量を制御する流量フィードバックループが形成されており、これら2種類のフィードバックループは両方とも1つの制御バルブ1に対して作用する。このように制御系が構成されることにより、1つの制御バルブ1で2種類の目標値が達成される。
【0040】
バルブ制御器4の詳細について図2を参照しながら説明する。
【0041】
バルブ制御器4は、CPU、メモリ、A/Dコンバータ、D/Aコンバータ、各種入出力機器を備えたいわゆるコンピュータであって、メモリに格納されている液体材料気化装置用プログラムが実行され、各種機器が協業することにより第1操作量算出部41、第2操作量算出部42、操作量決定部43としての機能を少なくとも発揮するものである。
【0042】
第1操作量算出部41は、測定流量と制限流量の偏差に基づいて、前記制御バルブ1の第1操作量である第1電圧を算出する。ここで、制限流量は液体材料が気化できる上限流量に基づいて設定される値であり、制限流量は上限流量よりも小さい値に設定される。ここで、上限流量については実験やシミュレーションによって制御バルブ1を通過した後に液体材料が残存しているかどうかに基づいて予め測定されている。このような上限流量又は制限流量をメモリに記憶させておき、記憶されている値が第1操作量算出部41に対して自動的に設定されるようにしてもよいし、ユーザ等が外部入力として逐次制限流量を設定するようにしてもよい。
【0043】
第2操作量算出部42は、測定圧力と設定圧力の偏差に基づいて、制御バルブ1の第2操作量である第2電圧を算出する。
【0044】
操作量決定部43は、第1電圧と第2電圧とを比較して、大きいほうの電圧を制御バルブ1に対して入力する。
【0045】
このように構成された液体材料気化装置100の動作について、図4のフローチャートを参照しながら説明する。
【0046】
第1操作量算出部41と第2操作量算出部42はそれぞれ同期して、並列に操作量を算出する。
【0047】
具体的には第1操作量算出部41は、制限流量を取得し(ステップS1)、流量センサ2の測定流量を取得する(ステップS2)。さらに第1操作量算出部41は、制限流量と測定流量との偏差を算出し、流量の偏差についてPID演算を行って第1電圧を算出する(ステップS3)。このようにして第1操作量算出部41は、液体材料の流量フィードバックにより第1電圧を算出する。
【0048】
同様に第2操作量算出部42は、設定圧力を取得し(ステップS4)、圧力センサ3の測定圧力を取得する(ステップS5)。さらに第2操作量算出部42は、設定圧力と測定圧力との偏差を算出し、圧力の偏差についてPID演算を行って第2電圧を算出する(ステップS6)。このようにして第2操作量算出部42は、制御バルブ1の下流側の圧力フィードバックにより第2電圧を算出する。
【0049】
操作量決定部43は、第1電圧と第2電圧のいずれが大きいかを判定し(ステップS7)、大きいほうの電圧を制御バルブ1に入力する(ステップS8)。
【0050】
最後に制御が継続しているかどうかの判定が行われ(ステップS9)、制御が継続している場合にはステップS1~S8が繰り返される。
【0051】
次に図3のフローチャートに基づいて説明した制御側によってバルブ制御器4において算出される第1電圧、第2電圧の変化と、制御結果による圧力、流量の変化について図4乃至図7を参照しながら説明する。ここで、測定圧力及び測定流量のグラフにおいて実線で示されている部分は測定されている値がフィードバックされて算出された電圧が制御バルブ1に印加されていることを示す。また、点線で示されている部分は自身とは別の測定量がフィードバックされて算出された電圧が制御バルブ1に印加されていることを示す。同様に各電圧のグラフにおいて実線で示されている部分は操作量決定部43により実際に制御バルブ1に印加されていることを示し、点線で示されている部分は制御バルブ1に印加されていないことを示す。
【0052】
図4のグラフは、供給バルブVが閉じられており、チャンバCNへの材料ガスの流入がなく、測定圧力がゼロの状態から設定圧力に変更する場合の各電圧の変化を示す。図4に示すように制御開始初期は、第1電圧のほうが第2電圧よりも大きい値として算出されるので、流量フィードバックにより算出される第1電圧が制御バルブ1に印加される。この結果、液体材料の流量はゼロから制限流量まで急速に上昇し、制限流量で維持される。また制限流量で維持された状態では液体材料が気化した材料ガスが制御バルブ1の下流側に供給され続けるので測定圧力が上昇する。そして、制限流量と測定流量の偏差が小さい状態が維持され、設定圧力と測定圧力の偏差のほうが相対的に大きくなり、算出される第2電圧が第1電圧よりも大きくなる。この結果、以降は圧力フィードバックにより算出される第2電圧が制御バルブ1に印加される。このようにして、液体材料の流量は制限流量以下に維持されながら、制御バルブ1の下流側の圧力は設定圧力で維持される。
【0053】
図5のグラフは供給バルブVが閉じられており、チャンバCNへの材料ガスの流入があり、測定圧力がゼロの状態から設定圧力に変更する場合の各電圧の変化と、圧力及び流量の変化を示す。図5のグラフは前述した図4のグラフとほぼ同じ変化態様を示すが、チャンバCNへの材料ガスの流入がある分だけ圧力の上昇に時間がかかる。したがって、第1電圧から第2電圧に切り替えられるタイミングが遅くなる。
【0054】
図6のグラフは制御バルブ1の下流側の流量が複数ステップで上昇している場合の各電圧の変化と、圧力及び流量の変化を示す。制御バルブ1の下流側の流量が上昇しても、しばらくの間は圧力フィードバックにより算出される第2電圧が制御バルブ1に印加され続ける。より詳細には制御バルブ1の下流側の流量が増加すると、測定圧力を設定圧力で保つために制御バルブ1に印加される第2電圧の値はステップ状に減少し、開度が少しずつ大きく変更される。この結果、制御バルブ1を通過する液体材料の流量が増大するので、制御バルブ1の下流側に流入する材料ガスの量が増加し、測定圧力が設定圧力で維持されることになる。一方、制御バルブ1の下流側の流量が所定値よりも大きくなると、液体材料の測定流量が制限流量に近い値となる。この時点から第1電圧のほうが第2電圧よりも大きい値として算出されるので流量フィードバック制御に切り替わり、測定流量が制限流量で維持される。
【0055】
図7のグラフは供給バルブVがパルス状にオンオフが切り替えられている場合の各電圧の変化と、圧力及び流量の変化を示す。この場合には制御バルブ1の下流側の流量変化をほとんど生じていないので、バルブ制御器4は常に圧力フィードバックによる第2電圧を制御バルブ1に印加し続ける。
【0056】
このように第1実施形態の液体材料気化装置100によれば、ノーマルオープンタイプの制御バルブ1において流量フィードバックによる第1電圧と、圧力フィードバックによる第2電圧とを比較し、いずれか大きいほうが制御バルブ1に印加される。この結果、液体材料が気化できる上限流量よりも小さい制限流量以内で液体材料の流量を維持しつつ、制御バルブ1の下流側の圧力については所望の設定圧力で保つことができる。
【0057】
この結果、供給バルブVがオンオフ制御されたり、開度変化による材料ガスの流量変化が生じたりしたとしても、液体材料の流量を制限流量以下にしつつ、液体材料の圧力は一定に保つことができる。したがって、ALD/ALEプロセスであっても、材料ガスの一部を捨てなくても所望の量の材料ガスをチャンバCNに供給しつつ、液体材料がそのままチャンバCNに供給されるのを防ぐことができる。
【0058】
第1実施形態の変形例について説明する。
【0059】
制御バルブ1については電圧が印加されていない状態では全閉状態となるノーマルクローズタイプのバルブであっても構わない。ノーマルクローズタイプのバルブを制御バルブ1として使用する場合には、操作量決定部43は第1電圧と第2電圧のうち小さいほうの電圧を選択して制御バルブ1に入力するように構成すればよい。
【0060】
流量フィードバックに用いられる流量は、液体材料が流れる液ラインLLに設けられた流量センサ2で測定される測定流量に限られない。図8に示すように流量センサ2を制御バルブ1の下流側であり、供給ラインSL上に設けられ、材料ガスの流量を測定するように構成された流量センサ2の測定流量を用いても構わない。この場合、材料ガスの流量に対して液体材料が気化可能な上限流量を定義し、この上限流量から所定値だけ小さい値を制限流量として第1操作量算出部41で用いれば良い。このような液体材料気化装置100の場合には、制御バルブ1の下流側である供給ラインSLは所定温度以上に保たれるように温度制御された状態にし、流量センサ2については所定温度以上の高温に対応するものを用いれば良い。
【0061】
また、液体材料気化装置100はインジェクションタイプに限られず、様々なタイプのものであってもよい。例えば図9に示すようにベーキングタイプの液体材料気化装置100として構成してもよい。具体的には、この液体材料気化装置100は、液体材料が収容されるタンクTNと、タンクTNを加熱する加熱器Hと、タンクTNの上方から液体材料が気化した材料ガスが導出されるように接続された供給ラインSLと、供給ラインSL上に設けられた流量センサ2、及び、制御バルブ1を備えたものである。このものは制御バルブ1の上流側において材料ガスの流量を流量センサ2で測定する。この場合も、材料ガスの流量に対してタンク内の液体材料が気化可能な上限流量を定義し、この上限流量から所定値だけ小さい値を制限流量として第1操作量算出部41で用いれば良い。このようなものであれば、制御バルブ1には気化した材料ガスが供給されるので、制御バルブ1の下流側に液体材料が確実に流れないようにできる。また、バルブ制御器4の制御によって、材料ガスの気化供給能力を超えないように制御バルブ1が制御されるので、例えば気化供給能力の不足に起因して制御バルブ1が全開状態のまま張り付いて制御不能状態となるのを防ぐことができる。
【0062】
また、液体材料気化装置100はキャリアガスによって液体材料をバブリングすることにより材料ガスを生成するものであってもよい。この場合は、材料ガスとキャリアガスからなる混合ガスの流量に対して液体材料が気化可能な上限流量を定義し、この上限流量から所定値だけ小さい値を制限流量として第1操作量算出部41で用いれば良い。
【0063】
次に第2実施形態の液体材料気化装置100について図10を参照しながら説明する。
【0064】
第2実施形態の液体材料気化装置100は、第1実施形態と比較してバルブ制御器4の構成が異なっている。具体的には図10の機能ブロック図に示すように測定流量と設定流量の偏差に基づいて、制御バルブ1を制御する流量制御部45と、測定圧力と設定圧力の偏差が小さくなるように、制限流量以下の設定流量を流量制御部45に設定する流量設定部44と、を備えている点で異なっている。
【0065】
ここで流量設定部44は、設定圧力よりも測定圧力が大きい場合には設定流量を小さくして、液体材料の流量を減らし、材料ガスの供給量を減らす。また、設定圧力よりも測定圧力が小さい場合には設定流量を大きくして、液体材料の流量を増やし、材料ガスの供給量を増やす。
【0066】
このように構成された第2実施形態の液体材料気化装置100の動作について図11のフローチャートを参照しながら説明する。
【0067】
流量設定部44は、設定圧力を取得し(ステップST1)、圧力センサ3の測定圧力を取得する(ステップST2)。さらに流量設定部44は、設定圧力と測定圧力との偏差を算出し、圧力の偏差についてPID演算を行って設定流量を算出する(ステップST3)。ここで、流量設定部44は制限流量よりも算出された設定流量のほうが大きい場合には、制限流量を設定流量として流量制御部45に入力する。また、流量設定部44は算出された設定流量が制限流量よりも小さい場合には、算出された設定流量をそのまま流量制御部45に入力する。このようにして流量設定部44は、制御バルブ1の下流側の圧力フィードバックにより流量制御部45に入力される設定流量を決定する。
【0068】
次に流量制御部45は、流量センサ2の測定流量を取得する(ステップST4)。さらに流量制御部45は、制限流量と測定流量との偏差を算出し、流量の偏差についてPID演算を行って制御バルブ1に印加する電圧を算出する(ステップST5)。このようにして流量制御部45は、液体材料の流量フィードバックにより制御バルブ1に印加する電圧を算出し、その電圧を制御バルブ1に印加する(ステップST6)。
【0069】
最後に制御が継続しているかどうかの判定が行われ(ステップST7)、制御が継続している場合にはステップST1~ST6が繰り返される。
【0070】
このように構成された第2実施形態の液体材料気化装置100は、流量設定部44により流量制御部45に入力される設定流量は制限流量以下となるので、制御バルブ1の下流側の圧力は設定圧力に追従するようにしつつ、制御バルブ1が制限流量以上の流量を流すような動作を防ぐことができる。
【0071】
したがって、制御バルブ1を通過する液体材料を必ず気化して材料ガスとなるようにしつつ、その圧力も設定圧力で維持することが可能となる。このため、第1実施形態と同様にALD/ALEプロセスであっても、材料ガスの一部を捨てなくても所望の量の材料ガスをチャンバCNに供給しつつ、液体材料がそのままチャンバCNに供給されるのを防ぐことができる。
【0072】
第2実施形態の変形例について説明する。
【0073】
第2実施形態においても第1実施形態の変形例で説明したのと同様に、インジェクションタイプの液体材料気化装置100としてだけでなく、様々なタイプの液体材料気化装置100として構成することができる。
【0074】
また、流量センサ2が測定する流量は、液体材料の流量、材料ガスの流量、又は、材料ガスとキャリアガスからなる混合ガスの流量のいずれであっても、それに対応した制限流量を設定すればよい。
【0075】
その他の実施形態について説明する。各実施形態では材料ガスの供給対象であるチャンバは1つだけの場合を示したが、制御バルブ及び圧力センサが設けられる供給ラインを複数並列に設けられたものであってもよい。具体的には供給ラインはメイン流路とメイン流路の下流側から分岐する複数の分岐流路とからなり、各分流流路がそれぞれ別々に材料ガスの供給対象に接続されていてもよい。すなわち、1つのチャンバに対してそれぞれ別々の場所から材料ガスが供給されるように接続されてもよいし、各分岐流路が別々のチャンバに接続されていてもよい。また、各分岐流路にそれぞれ個別の制御バルブが設けられ、各分岐流路で独立して材料ガスの圧力制御が行われるようにしてもよい。
【0076】
その他、本発明の趣旨に反しない限りにおいて様々な変形を行ったり、各実施形態の一部同士を組み合わせたりしても構わない。
【符号の説明】
【0077】
200・・・半導体製造システム
100・・・液体材料気化装置
1 ・・・制御バルブ
2 ・・・流量センサ
3 ・・・圧力センサ
4 ・・・バルブ制御部
41 ・・・第1操作量算出部
42 ・・・第2操作量算出部
43 ・・・操作量決定部
44 ・・・設定流量決定部
45 ・・・流量制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13