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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-16
(45)【発行日】2024-01-24
(54)【発明の名称】加工装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20240117BHJP
   H01L 21/677 20060101ALI20240117BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20240117BHJP
【FI】
H01L21/68 N
H01L21/68 A
H01L21/304 643A
H01L21/304 643Z
H01L21/304 648A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020075974
(22)【出願日】2020-04-22
(65)【公開番号】P2021174824
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2023-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】弁理士法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮本 弘樹
【審査官】内田 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-94247(JP,A)
【文献】特開2000-167758(JP,A)
【文献】特開平10-256345(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H01L 21/677
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に複数の棚が配置され該棚に被加工物を収納可能なカセットを載置するカセットステージと、
被加工物を保持する保持部を回転させながら該被加工物の上方からエアまたはエアと水とを混合させた混合流体を噴射して被加工物を洗浄する洗浄ノズルを備えるスピンナ洗浄機構と、
吸着面で被加工物を吸着するロボットハンドを備え該スピンナ洗浄機構と該カセットとの間において被加工物を搬送するロボットと、
該被加工物を保持するチャックテーブルと、
該チャックテーブルに保持された被加工物を加工する加工手段と、
該チャックテーブルに保持された被加工物を該スピンナ洗浄機構に搬送する搬送手段と、
制御手段と、
を備える加工装置であって、
該ロボットは、該ロボットハンドを水平方向に移動させる水平移動機構と、該ロボットハンドを上下方向に移動させる上下移動機構と、を備え、
該制御手段は、
該上下移動機構によって該スピンナ洗浄機構の該保持部と該洗浄ノズルとの間の高さに該ロボットハンドを位置づける第1制御部と、
該第1制御部によって該スピンナ洗浄機構の該保持部と該洗浄ノズルとの間の高さに位置づけられた該ロボットハンドを該水平移動機構によって該保持部の上方に進入させる第2制御部と、
を備え、
該保持部の上方に進入された該ロボットハンドの該吸着面に該洗浄ノズルから該エアまたは該混合流体を噴射することによって該吸着面を洗浄する加工装置。
【請求項2】
該洗浄ノズルを該水平移動機構による該ロボットハンドの移動方向に対し水平方向において交差する方向に移動するノズル移動機構を備える請求項1記載の加工装置。
【請求項3】
該ロボットハンドは、該吸着面の反対面に被加工物を吸引保持する第2吸着面を備え、
該ロボットは、該吸着面と該第2吸着面とを反転させる反転機構を備え、
該洗浄ノズルから該エアまたは該混合流体を噴射することによって該吸着面および該第2吸着面を洗浄する請求項1または請求項2記載の加工装置。
【請求項4】
該保持部は、被加工物を吸引保持する保持面を備えるスピンナテーブルであって、
該スピンナ洗浄機構は、該保持面と吸引源とを連通する吸引路と、該吸引路に配置される分岐部と、該分岐部とエア源とを連通するエア供給路と、を備え、
該ロボットハンドの該吸着面に該洗浄ノズルから該エアまたは該混合流体を噴射する際に、該保持面とエア源とを連通させ該保持面から噴出するエアを該吸着面の反対面に当てることによって、該ロボットハンドを非接触で該保持面が支持する請求項1記載の加工装置。
【請求項5】
該保持部は、被加工物を吸引保持する保持面を備えるスピンナテーブルであって、
該スピンナ洗浄機構は、該保持面と吸引源とを連通する吸引路と、該吸引路に配置される分岐部と、該分岐部とエア源とを連通するエア供給路と、を備え、
該ロボットハンドの該吸着面と該第2吸着面とのうちの洗浄される側の面に該洗浄ノズルから該エアまたは該混合流体を噴射する際に、該保持面とエア源とを連通させ該保持面から噴出するエアを該洗浄される側の面の反対面に当てることによって、該ロボットハンドを非接触で該保持面が支持する請求項3記載の加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示のように、加工装置を用いて半導体ウェーハ等の被加工物を加工する際には、まず、被加工物を吸着保持する吸着面を有するロボットハンドを備えるロボットを用いて、カセットに収納された被加工物を保持してカセットから搬出して仮置きテーブルに仮置きし、吸引パッド等の搬送手段を用いて仮置きテーブルに仮置きされた被加工物を保持してチャックテーブルに搬送する。そして、研削砥石等の加工具を用いてチャックテーブルに保持された被加工物を加工した後、搬出手段を用いて加工後の被加工物をスピンナ洗浄手段のスピンナテーブルに搬送して、スピンナテーブルを回転させつつ洗浄水を被加工物に供給しながら洗浄を行い、ロボットを用いて洗浄された被加工物を保持してカセットに収納する。
【0003】
例えば、テープマウンタを用いて保護テープを被加工物の一方の面に貼着した後、保護テープを円形の被加工物の大きさに合わせてカットする際にはテープ屑が発生するため、該テープ屑が被加工物に付着したり、被加工物に貼着された保護テープに付着したりする場合がある。また、例えばワイヤーソー等によってインゴットからスライスされたアズスライスウェーハは、そのスライス面に凹凸が形成されているため、スライスにより発生した切断屑が付着している事がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-030055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
よって、カセットに収納されている被加工物をロボットハンドの吸着面で吸引保持してカセットから搬出し、さらに、加工後の被加工物をロボットハンドの吸着面で吸引保持してカセットに搬入する加工装置においては、加工後の被加工物を保持する前にロボットハンドの吸着面をゴミが付着してない状態にするという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上下方向に複数の棚が配置され該棚に被加工物を収納可能なカセットを載置するカセットステージと、被加工物を保持する保持部を回転させながら該被加工物の上方からエアまたはエアと水とを混合させた混合流体を噴射して被加工物を洗浄する洗浄ノズルを備えるスピンナ洗浄機構と、吸着面で被加工物を吸着するロボットハンドを備え該スピンナ洗浄機構と該カセットとの間において被加工物を搬送するロボットと、該被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物を加工する加工手段と、該チャックテーブルに保持された被加工物を該スピンナ洗浄機構に搬送する搬送手段と、制御手段と、を備える加工装置であって、該ロボットは、該ロボットハンドを水平方向に移動させる水平移動機構と、該ロボットハンドを上下方向に移動させる上下移動機構と、を備え、該制御手段は、該上下移動機構によって該スピンナ洗浄機構の該保持部と該洗浄ノズルとの間の高さに該ロボットハンドを位置づける第1制御部と、該第1制御部で位置づけられた高さの該ロボットハンドを該水平移動機構によって該保持部の上方に進入させる第2制御部と、を備え、該保持部の上方に進入させた該ロボットハンドの該吸着面に該洗浄ノズルから該エアまたは該混合流体を噴射することによって該吸着面を洗浄する加工装置である。
上記の加工装置は、該洗浄ノズルを該水平移動機構による該ロボットハンドの移動方向に対し水平方向において交差する方向に移動するノズル移動機構を備えるものであることが望ましい。
上記の加工装置は、該ロボットハンドは、該吸着面の反対面に被加工物を吸引保持する第2吸着面を備え、該ロボットは、該吸着面と該第2吸着面とを反転させる反転機構を備え、該洗浄ノズルから該エアまたは該混合流体を噴射することによって該吸着面および該第2吸着面を洗浄するものであることが望ましい。
上記の加工装置は、該保持部は、被加工物を吸引保持する保持面を備えるスピンナテーブルであって、該スピンナ洗浄機構は、該保持面と吸引源とを連通する吸引路と、該吸引路に配置される分岐部と、該分岐部とエア源とを連通するエア供給路と、を備え、該ロボットハンドの該吸着面に該洗浄ノズルから該エアまたは該混合流体を噴射する際に、該保持面とエア源とを連通させ該保持面から噴出するエアを該吸着面の反対面に当てることによって、該ロボットハンドを非接触で該保持面が支持するものであることが望ましい。
上記の加工装置は、該保持部は、被加工物を吸引保持する保持面を備えるスピンナテーブルであって、該スピンナ洗浄機構は、該保持面と吸引源とを連通する吸引路と、該吸引路に配置される分岐部と、該分岐部とエア源とを連通するエア供給路と、を備え、該ロボットハンドの該吸着面と該第2吸着面とのうちの洗浄される側の面に該洗浄ノズルから該エアまたは該混合流体を噴射する際に、該保持面とエア源とを連通させ該保持面から噴出するエアを該洗浄される側の面の反対面に当てることによって、該ロボットハンドを非接触で該保持面が支持するものであることが望ましい。
【発明の効果】
【0007】
スピンナ洗浄機構を用いて水とエアとの混合流体を噴射してロボットハンドに付着した加工屑を洗浄することによって、ロボットハンドに付着した加工屑が被加工物に移って被加工物の加工不良が発生するのを防止することができる。
また、スピンナ洗浄機構からエアを噴射してロボットハンドに付着した加工屑を洗浄することにより、洗浄後に別途、吸着面、及び第2吸着面に向けてエアを噴射して吸着面等を乾燥させることを要さず、洗浄にかかる時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】加工装置全体を表す斜視図である。
図2】スピンナ洗浄機構を用いてロボットハンドを洗浄する様子を側方から見た側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
1 加工装置の構成
図1に示す加工装置1は、加工手段3を用いて半導体ウェーハ等の被加工物17を加工する加工装置である。
加工装置1は、図1に示すように、Y軸方向に延設されたベース10と、ベース10の+Y方向側に立設されたコラム11とを備えている。
【0010】
コラム11の-Y方向側の側面には、加工手段3を昇降可能に支持する加工送り手段4が配設されている。加工手段3は、Z軸方向の回転軸35を有するスピンドル30と、スピンドル30を回転可能に支持するハウジング31と、回転軸35を軸にしてスピンドル30を回転駆動するスピンドルモータ32と、スピンドル30の下端に接続された円環状のマウント33と、マウント33の下面に着脱可能に装着された加工具34とを備えている。
【0011】
加工具34は、例えば研削ホイールであり、ホイール基台341と、ホイール基台341の下面に環状に配列された略直方体形状の複数の研削砥石340とを備えている。研削砥石340の下面は、被加工物17に接触する研削面342となっている。
【0012】
スピンドルモータ32を用いてスピンドル30を回転させることにより、スピンドル30に接続されたマウント33及びマウント33の下面に装着された加工具34が一体的に回転することとなる。
【0013】
加工送り手段4は、Z軸方向の回転軸45を有するボールネジ40と、ボールネジ40に対して平行に配設された一対のガイドレール41と、回転軸45を軸にしてボールネジ40を回転させるZ軸モータ42と、内部のナットがボールネジ40に螺合して側部がガイドレール41に摺接する昇降板43と、昇降板43に連結され加工手段3を支持するホルダ44とを備えている。
【0014】
Z軸モータ42によってボールネジ40が駆動されて、ボールネジ40が回転軸45を軸にして回転すると、これに伴って、昇降板43がガイドレール41に案内されてZ軸方向に昇降移動するとともに、ホルダ44に保持されている加工手段3の加工具34がZ軸方向に移動することとなる。
【0015】
ベース10の上には、チャックテーブル2が配設されている。チャックテーブル2は円板状の吸引部20と吸引部20を支持する環状の枠体21とを備えている。吸引部20の上面は被加工物17が保持される保持面200であり、枠体21の上面210は保持面200に面一に形成されている。
保持面200には図示しない吸引手段が接続されている。保持面200に被加工物17が載置されている状態で、図示しない吸引手段を用いて吸引力を発揮させることにより、生み出された吸引力が保持面200に伝達されて、保持面200に被加工物17を吸引保持することができる。
【0016】
チャックテーブル2の周囲にはカバー27及びカバー27に伸縮自在に連結された蛇腹28が配設されている。例えば、チャックテーブル2がY軸方向に移動すると、カバー27がチャックテーブル2とともにY軸方向に移動して蛇腹28が伸縮することとなる。
【0017】
ベース10の-Y方向側かつ+X方向側には第1カセット載置部121が設けられている。第1カセット載置部121には、第1カセット701が載置されている。
【0018】
ベース10の-Y方向側かつ-X方向側には第2カセット載置部122が設けられている。第2カセット載置部122は、第1カセット載置部121に隣接された位置に配設されている。第2カセット載置部122には、第2カセット702が載置されている。
第1カセット701及び、第2カセット702には、図示しない複数の棚が上下方向に配置されており、該棚には被加工物17を収容可能となっている。
【0019】
第1カセット701の+Y方向側には、ロボット5が配設されている。
ロボット5は、被加工物17を吸着して保持するロボットハンド50を備えている。ロボットハンド50は、先端が楕円形に広げられてしゃもじ型に形成された薄板部材であり、一方の面が被加工物17を吸引保持する吸着面501を備える。なお、吸着面501の反対面に被加工物17を吸引保持する第2吸着面502を備えていてもよい。
【0020】
吸着面501には、外周部分に複数の吸引口5010が配設されている。吸引口5010には、図示しない吸引源が接続されている。吸引口5010に被加工物17が塞いでいる状態で、該吸引源を作動させると、生み出された吸引力が吸引口5010に伝達され、吸引口5010に被加工物17が吸着される。このようにして、吸着面501に被加工物17を吸着して保持することができる。
第2吸着面502の外周にも、同様に、図示しない吸引口が配設されており、該吸引口には図示しない吸引源が接続されている。第2吸着面502においても、上記と同様の構成によって被加工物17を吸着して保持することが可能となっている。
【0021】
ロボット5はロボットハンド50の吸着面501と第2吸着面502とを反転させる反転機構51を備えている。反転機構51は、筐体510と筐体510の内部に設けられたモータ511とを備えている。モータ511の-Y方向側の端部には、ホルダ503が連結され、ホルダ503にはロボットハンド50が把持されている。
【0022】
例えば、吸着面501と第2吸着面502とのいずれかが上側(+Z方向側)に向いた状態で、反転機構51のモータ511を用いてロボットハンド50を180°回転させることにより、吸着面501と第2吸着面502とを反転させることができる。
例えば、吸着面501が上側に向いた状態で、反転機構51のモータ511を用いてロボットハンド50を180°回転させると、吸着面501が下側(-Z方向側)に向いた状態になり、その代わりに第2吸着面502が上側に向いた状態となる。
同様に、第2吸着面502が上側に向いた状態で、反転機構51のモータ511を用いてロボットハンド50を180°回転させると、第2吸着面502が下側に向いた状態になり、その代わりに吸着面501が上側に向いた状態となる。
【0023】
反転機構51の筐体510の下端には、軸部52が連結されており、軸部52の下端には、ロボットハンド50を水平方向に移動させる水平移動機構53が連結されている。
水平移動機構53を作動させることにより、軸部52、反転機構51、及びロボットハンド50が一体的に水平方向に移動することとなる。
【0024】
水平移動機構53の下端には、ロボットハンド50を上下方向に移動させる上下移動機構54が連結されている。上下移動機構54を作動させることにより、水平移動機構53、軸部52、及び反転機構51、並びにロボットハンド50が一体的に上下方向に移動することとなる。
【0025】
ロボットハンド50の可動域における+X方向側には、研削加工前の被加工物17が仮置きされる仮置き領域13が配設されており、ロボットハンド50の可動域における-X方向側には、研削加工後の被加工物17を洗浄する洗浄領域14が設けられている。
【0026】
仮置き領域13には、位置合わせ手段72が配設されている。第1カセット70から搬出されて仮置き領域13に載置された被加工物17は、位置合わせ手段72によって所定の位置に位置合わせされることとなる。
【0027】
仮置き領域13に隣接する位置には、位置合わせ手段72によって位置合わせされた被加工物17をチャックテーブル2に搬入する第1搬送手段601が配設されている。
第1搬送手段601は、円板状のパッド60及びパッド60を吊持するアーム61を備えている。アーム61の端部には、Z軸方向の回転軸65を有する筒状の軸部610が連結されている。例えば、軸部610には、回転軸65を軸にして軸部610を回転させる図示しない回転手段等が接続されている。
【0028】
第1搬送手段601の-X方向側には、研削加工後の被加工物17をチャックテーブル2の保持面200から搬出させる第2搬送手段602が配設されている。第2搬送手段602は、第1搬送手段601と同様の構成を有しているため、同様の符号を付して、その説明を省略する。
【0029】
洗浄領域14には、スピンナ洗浄機構73が配設されている。スピンナ洗浄機構73は、被加工物17が保持される保持部としてのスピンナテーブル8と、スピンナテーブル8に保持された被加工物17の上方からエアまたはエアと水とが混合された混合流体を噴射して被加工物17を洗浄する洗浄ノズル730と備えている。
【0030】
スピンナテーブル8は、図2に示すように、円板状の吸引部80と吸引部80を支持する枠体81とを備えている。吸引部80は、例えば、多数の細孔を有するポーラス部材等であり、吸引部80の上面は、被加工物17が保持される保持面800となっている。
【0031】
枠体81の下には、連結部材82を介して回転手段85が連結されており、回転手段85の下端にはロータリジョイント84が接続されている。回転手段85を用いることによりスピンナテーブル8を回転させることができる。
【0032】
スピンナテーブル8の下方には、吸引路86を通じて吸引部80に接続された吸引源88が配設されている。
吸引路86は、例えば、枠体81、回転手段85、及びロータリジョイント84の内部を貫通するように形成されており、ロータリジョイント84の端面からロータリジョイント84の外部に突き出て、吸引源88に接続されている。
【0033】
吸引源88と保持面800との間には、吸引バルブ880が配設されている。吸引バルブ880が開いている状態で吸引源88を作動させると、吸引源88によって生み出された吸引力が、吸引路86を通じて吸引部80の保持面800に伝達されることとなる。
例えば、被加工物17が保持面800に載置されている状態で、吸引バルブ880を開いて、吸引源88を作動させることにより、保持面800に被加工物17を吸引保持することができる。
【0034】
吸引路86には、分岐部891が配置されている。分岐部891は、吸引路86におけるロータリジョイント84と吸引バルブ880との間のある一部分であり、分岐部891からエア供給路892が分岐されて設けられている。また、エア供給路892はエア源89に接続されている。すなわち、分岐部891とエア源89とは、エア供給路892によって接続されている。
【0035】
エア源89と分岐部891との間には、エアバルブ890が配設されている。エアバルブ890を開くと、分岐部891とエア源89とが連通され、これにより、エア源89と保持面800とが連通される。
エアバルブ890が開いている状態で、エア源89を用いてエアを供給すると、供給されたエアは、吸引路86を通じて吸引部80に伝達され、保持面800に形成されている多数の細孔から+Z方向に噴射されることとなる。
例えば、保持面800に被加工物17等が載置されていない状態で、エアバルブ890を開くとともにエア源89を作動させて、保持面800の多数の細孔からエアを噴射させることにより、吸引部80の内部や保持面800に付着している研削屑等を除去することができる。
また、例えば、ロボットハンド50がスピンナテーブル8の上方に位置づけられている状態で、保持面800から上方に向けてエアを噴射することにより、ロボットハンド50を下側から非接触状態で支持することができる。
【0036】
洗浄ノズル730は、流体が噴射される流体噴射部731を備えている。流体噴射部731の下端には流体の噴射口7310が形成されている。流体噴射部731の上端には、水供給路791を通じて水源79が接続されている。水源79と流体噴射部731との間には、水バルブ790が配設されている。
水バルブ790が開いている状態で、水源79から水を供給することにより流体噴射部731の噴射口7310から水が噴射されることとなる。
【0037】
流体噴射部731の側部には、水平方向に延ばされたアーム部732が連結されている。アーム部732には、エア供給路781を通じてエア供給源78が接続されている。エア供給源78とアーム部732との間には、エアバルブ780が配設されている。
エアバルブ780が開いている状態で、エア供給源78から水を供給することにより、エアがアーム部732の内部に形成されている図示しない流路を通じて流体噴射部731に供給され、流体噴射部731の噴射口7310からエアが噴射されることとなる。
【0038】
また、洗浄ノズル730においては、水源79から水を供給しながらエア供給源78からエアを供給することにより、流体噴射部731の噴射口7310からエアと水とが混合された混合流体を噴射することも可能となっている。
【0039】
例えば、スピンナテーブル8の保持面800に研削加工後の被加工物17が載置されている状態で、洗浄ノズル730の流体噴射部731から水等を噴射することにより被加工物17を洗浄することができる。
【0040】
アーム部732の流体噴射部731に連結されていない側の端部には、アーム部732に対して略垂直に延ばされた軸部733が配設されている。軸部733の下端には、ノズル移動機構74が連結されている。
【0041】
ノズル移動機構74は、図示しないモータ等を有する回転機構である。ノズル移動機構74を用いて軸部733をZ軸方向の軸心を軸にして回転させることにより、アーム部732、及び流体噴射部731が一体的に旋回して、水平移動する構成となっている。
【0042】
例えば、水平移動機構53を用いたロボットハンド50の水平方向への移動によりロボットハンド50がスピンナテーブル8の保持面800の上方に位置づけられている状態で、ノズル移動機構74を用いて洗浄ノズル730の流体噴射部731を旋回させることにより、洗浄ノズル730の流体噴射部731を、水平方向においてロボットハンド50の移動方向と交差するように移動させることができる。
【0043】
加工装置1は、制御手段9を備えている。制御手段9は、上下移動機構54によってスピンナ洗浄機構73のスピンナテーブル8と洗浄ノズル730との間の高さにロボットハンド50を位置付ける第1制御部91を備えている。
また、制御手段9は、第1制御部91によってスピンナ洗浄機構73のスピンナテーブル8と洗浄ノズル730との間の高さ位置に位置付けられているロボットハンド50を、水平移動機構53を用いてスピンナテーブル8の上方に進入させる第2制御部92を備えている。
つまり、ロボットハンド50は、スピンナテーブル8に対して水平方向に直線移動で進入していく。
【0044】
2 加工装置の動作
(被加工物の研削加工)
上記の加工装置1を用いて被加工物17の研削加工を行う際の加工装置1の動作について、以下に説明する。
まず、図1に示したロボット5を用いて第1カセット70に収納されている被加工物17のうちの一枚を引き出して、仮置き領域13に載置する。
具体的には、例えばロボットハンド50の吸着面501が下側に向けられている状態で、水平移動機構53及び上下移動機構54を用いてロボットハンド50を水平方向及び上下方向に適宜移動させて、ロボットハンド50の吸着面501を第1カセット70に収納されている被加工物17の上に位置づける。
そして、上下移動機構54を用いてロボットハンド50を-Z方向に下降させて、ロボットハンド50の吸着面501を被加工物17の上面170に接触させる。これにより、ロボットハンド50の吸着面501の吸引口5010が被加工物17の上面170に接触する。
吸引口5010が被加工物17の上面170に接触している状態で、図示しない吸引源を作動させることにより、生み出された吸引力が吸引口5010に伝達され、吸着面501に被加工物17が吸引保持される。
【0045】
次いで、ロボットハンド50の吸着面501に被加工物17が吸引保持されている状態で、上下移動機構54及び水平移動機構53を用いてロボットハンド50を上下方向及び水平方向に適宜移動させて、被加工物17を仮置き領域13の上に位置づける。そして、該吸引源の動作を停止して、吸着面501に作用している吸引力を取り除く。これにより、被加工物17が仮置き領域13に載置される。
【0046】
被加工物17が仮置き領域13に載置されると、位置合わせ手段72による被加工物17の位置合わせが行われる。
【0047】
位置合わせ手段72によって被加工物17の位置合わせを行った後、第1搬送手段601を用いて被加工物17をチャックテーブル2の保持面200に載置して、図示しない吸引手段等を作動させる。これにより、生み出された吸引力が保持面200に伝達されて、被加工物17が保持面200に吸引保持される。
【0048】
そして、被加工物17が保持面200に吸引保持されている状態で、チャックテーブル2を+Y方向に移動させて、加工手段3の下方に位置付ける。
次いで、図示しない回転手段等を用いてチャックテーブル2を回転させることにより、保持面200に保持されている被加工物17を回転させるとともに、スピンドルモータ32を用いて研削砥石340を回転させる。
【0049】
被加工物17が回転しており、かつ、研削砥石340が回転している状態で、加工送り手段4を用いて研削砥石340を-Z方向に下降させて、研削砥石340の研削面342を被加工物17の上面170に接触させる。
研削面342が被加工物17の上面170に接触している状態で、さらに研削砥石340を-Z方向に下降させることにより被加工物17が研削される。
【0050】
被加工物17の研削加工中には、厚み測定手段26を用いて被加工物17の厚みが測定される。被加工物17が所定の厚みまで研削されたら研削加工を終了する。
【0051】
被加工物17の研削加工の終了後、第2搬送手段602を用いて、チャックテーブル2の保持面200に保持された被加工物17をスピンナ洗浄機構73に備えるスピンナテーブル8の保持面800に搬送し、スピンナ洗浄機構73を用いて被加工物17の上面170を洗浄する。
【0052】
具体的には、まず、第2搬送手段602を用いてチャックテーブル2の保持面200に保持されている被加工物17をスピンナテーブル8の保持面800に載置する。被加工物17がスピンナテーブル8の保持面800に載置されている状態で、図2に示した吸引バルブ880を開くとともに吸引源88を作動させる。これにより、生み出された吸引力が吸引路86を通じて保持面800に伝達されて、被加工物17が保持面800に吸引保持される。
【0053】
保持面800に被加工物17が吸引保持されている状態で、回転手段85を用いてスピンナテーブル8を回転させる。これにより、保持面800に保持されている被加工物17が回転する。
【0054】
保持面800に保持されている被加工物17が回転している状態で、エアバルブ780を開いてエア供給源78からエアを供給し、さらに水バルブ790を開いて水源79から水を供給する。
すると、エア供給源78から供給されたエアがエア供給路781及びアーム部732の内部の図示しない流路を通って流体噴射部731に供給されるとともに、水源79から供給された水が水供給路791を通って流体噴射部731に供給される。これにより、流体噴射部731の内部において、エアと水とが混合され、生成された混合流体が流体噴射部731の噴射口7310から噴射される。
【0055】
そして、流体噴射部731の噴射口7310から混合流体が噴射されている状態で、ノズル移動機構74を用いて、スピンナ洗浄機構73の軸部733を適宜の回転量だけ回転させる。これにより、軸部733に連結されているアーム部732、及びアーム部732に連結されている流体噴射部731が一体的に旋回運動する。
こうして、流体噴射部731を保持面800に保持されている被加工物17の上方を通るように水平移動させながら、流体噴射部731から被加工物17の上面170に向けて混合流体を噴射して、被加工物17の上面170を流水洗浄する。
【0056】
被加工物17の洗浄の際には、例えば、流体噴射部731の噴射口7310から混合流体を噴射しながら、ノズル移動機構74を用いて流体噴射部731を被加工物17の上面170の上方の空間において往復移動させるとなおよい。これにより、被加工物17の上面170の各部分に対して十分に混合流体が噴射されて、被加工物17の上面170を確実に洗浄することができる。
【0057】
例えば、適宜の時間、被加工物17の上面170に向けて混合流体を噴射させながら被加工物17を回転させて、被加工物17の流水洗浄を行った後、エア供給源78及び水源79の動作を停止させるなどして洗浄ノズル730からの流体の噴射を停止させる。
その後、被加工物17を回転させ続けて、被加工物17の上面170に付着している水滴等を飛ばして被加工物17の上面170を乾燥させる。
【0058】
最後に、ロボット5を用いて被加工物17をスピンナ洗浄機構73のスピンナテーブル8の保持面800から第2カセット702に移動させて、被加工物17を第2カセット702に収納する。
【0059】
なお、被加工物17の上面170の洗浄は、洗浄ノズル730の流体噴射部731から水とエアとの混合流体ではなく水のみを噴射して行ってもよい。
【0060】
(ロボットハンドの洗浄)
加工装置1のロボットハンド50の吸着面501、及び第2吸着面502には加工屑が付着することがある。そこで、加工装置1においては、適宜、吸着面501、及び第2吸着面502の洗浄が行われる。
ロボットハンド50の吸着面501を洗浄する際の加工装置1の動作について、以下に説明する。
まず、吸着面501が上側に向けられている状態で、制御手段9の第1制御部91を用いて上下移動機構54を制御して、ロボットハンド50をスピンナ洗浄機構のスピンナテーブル8の保持面800と洗浄ノズル730との間の高さに位置づける。
【0061】
次いで、第2制御部92を用いて水平移動機構53を制御して、スピンナ洗浄機構73のスピンナテーブル8と洗浄ノズル730との間の高さ位置に位置付けられているロボットハンド50を、スピンナテーブル8の上方に進入させる。
【0062】
そして、エアバルブ780を開いてエア供給源78からエアを供給し、水バルブ790を開いて水源79から水を供給して、流体噴射部731の噴射口7310からエアと水との混合流体を噴射する。
【0063】
さらに、ノズル移動機構74を用いて流体噴射部731を旋回させて、ノズル移動機構74を水平移動機構53によるロボットハンド50の移動方向、つまり、ロボットハンド50がスピンナテーブル8の上方に進入する際の直線移動方向に対して水平方向において交差するように移動させる。これにより、吸着面501の各部分に混合流体が噴射されて吸着面501が洗浄される。
なお、水平移動機構53によってロボットハンド50を水平方向にジグザグに移動させて、流体噴射部731から噴射される流体を、吸着面全面に当てるようにしてもよい。
【0064】
ロボットハンド50の吸着面501に洗浄ノズル730から混合流体を噴射することにより、ロボットハンド50の吸着面501が上から混合流体の押圧力を受けて下方へと押し下げられて、反対面たる第2吸着面502が保持面800に接触するおそれがある。第2吸着面502が保持面800に接触すると、例えば、保持面800に付着していた加工屑等が第2吸着面502に付着するだけでなく、ロボットハンド50の故障につながる。
【0065】
そこで、洗浄ノズル730から吸着面501へのエアの噴射時に、エアバルブ890を開いて保持面800とエア源89とを連通させるとともに、エア源89からエアを供給することにより、保持面800からエアを噴射させて、吸着面501の反対側の面である第2吸着面502にエアを当てる。
これにより、保持面800から噴射されたエアが、洗浄ノズル730から噴射される混合流体の押圧力に抗するように作用して、ロボットハンド50が保持面800から非接触状態で支持される。
なお、第2吸着面502を備えるロボットハンド50の場合には、ロボットハンド50の第2吸着面502の図示しない吸引口からエアを噴射させ、非接触で保持面800に支持されてもよい。
なお、洗浄ノズル730を昇降させる昇降手段を備え、洗浄ノズル730をロボットハンドの吸着面50に接近させてもよい。
【0066】
上記のように、ロボットハンド50の吸着面501に流体噴射部731の噴射口7310からエアと水との混合流体を噴射して吸着面501を洗浄した後、水バルブ790を閉じる等して、水の供給を停止する。
その後、流体噴射部731の噴射口7310から吸着面501に向けてエアを噴射して、吸着面501に付着している水滴を吹き飛ばして、吸着面501を乾燥させる。
なお、吸着面501の洗浄は、スピンナテーブル8に被加工物17が保持されているときに行ってもよい。
【0067】
次に、第2吸着面502を洗浄する際の加工装置1の動作について説明する。第2吸着面502を洗浄する際には、まず、反転機構51を用いて、ロボットハンド50の吸着面501と第2吸着面502とを反転させる。これにより、上側に向けられていた吸着面501が下側に向けられて、今度は、第2吸着面502が上側に向けられている状態となる。
【0068】
その後、吸着面501を洗浄する際と同様にして第2吸着面502を洗浄する。すなわち、まず、第1制御部91により上下移動機構54を制御してスピンナテーブル8と洗浄ノズル730との間の高さにロボットハンド50を位置付ける。そして、第2制御部92により水平移動機構53を制御してロボットハンド50をスピンナテーブル8の保持面800の上方に進入させる。
そして、エアバルブ780を開いてエア供給源78からエアを供給し、水バルブ790を開いて水源79から水を供給して、噴射口7310からエアと水との混合流体を噴射する。
【0069】
さらに、ノズル移動機構74を用いて流体噴射部731を旋回させて、ノズル移動機構74を水平移動機構53によるロボットハンド50の移動方向に対して水平方向において交差するように移動させる。これにより、第2吸着面502の各部分に混合流体が噴射されて第2吸着面502が洗浄される。
【0070】
上記のように、洗浄ノズル730から吸着面501に混合流体を噴射して流水洗浄した後、洗浄ノズル730からエアを噴射して吸着面501に付着している水滴を取り除くという構成にかえて、例えば、吸着面501の流水洗浄後、反転機構51を用いて吸着面501を下側に向けて、上側に向けられている第2吸着面02の流水洗浄を行いながら、スピンナテーブル8の保持面800から吸着面501に対してエアを噴射し、吸着面501を乾燥させてもよい。これにより、ロボットハンド50の洗浄に要する時間の短縮が図られる。
【0071】
なお、吸着面501、及び第2吸着面502の洗浄は、洗浄ノズル730の流体噴射部731から水とエアとの混合流体ではなくエアのみを噴射して行ってもよい。
かかる場合には、洗浄後に吸着面501、及び第2吸着面502に混合流体に含まれる水滴が付着しないため、洗浄後に吸着面501、及び第2吸着面502に向けてエアのみを噴射することを要さず、洗浄にかかる時間を短縮することができる。
【符号の説明】
【0072】
1:加工装置 10:ベース 11:コラム 121:第1カセット載置部
13:仮置き領域 14:洗浄領域
122:第2カセット載置部 2:チャックテーブル
20:保持手段 200:保持面 21:枠体 210:枠体の上面
3:加工手段 30:スピンドル 31:ハウジング 32:スピンドルモータ
33:マウント 34:研削ホイール 340:研削砥石 342:研削面
341:ホイール基台
4:上下移動手段 40:ボールネジ 41:ガイドレール 42:Z軸モータ
43:昇降板 44:ホルダ
5:ロボット 50:ロボットハンド 501:吸着面 502:第2吸着面
503:ホルダ 51:反転機構 510:筐体 511:モータ
52:軸部 53:水平移動機構 54:上下移動機構
601:第1搬送手段 602:第2搬送手段 60:搬送パッド 61:アーム
610:軸部 701:第1カセット 702:第2カセット 72:位置合わせ手段
73:スピンナ洗浄機構 730:洗浄ノズル 731:流体噴射部
7310:噴射口 732:アーム部 733:軸部 74:ノズル移動機構
78:エア供給源 780:エアバルブ 781:エア供給路
79:水源 790:水バルブ 791:水供給路
8:スピンナテーブル 80:吸引部 800:保持面 81:枠体 82:連結部材
84:ロータリジョイント 85:回転手段 86:吸引路 88:吸引源
880:吸引バルブ 89:エア源 890:エアバルブ 891:分岐部
892:エア供給路
9:制御手段 91:第1制御部 92:第2制御部
17:被加工物 170:上面
図1
図2