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特許7421460研磨装置、および研磨パッドの交換時期を決定する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-16
(45)【発行日】2024-01-24
(54)【発明の名称】研磨装置、および研磨パッドの交換時期を決定する方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 49/18 20060101AFI20240117BHJP
   B24B 49/10 20060101ALI20240117BHJP
   B24B 53/017 20120101ALI20240117BHJP
   B24B 53/00 20060101ALI20240117BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20240117BHJP
【FI】
B24B49/18
B24B49/10
B24B53/017 Z
B24B53/00 A
H01L21/304 621D
H01L21/304 622F
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020163274
(22)【出願日】2020-09-29
(65)【公開番号】P2022055703
(43)【公開日】2022-04-08
【審査請求日】2023-04-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100091498
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100174089
【弁理士】
【氏名又は名称】郷戸 学
(74)【代理人】
【識別番号】100186749
【弁理士】
【氏名又は名称】金沢 充博
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 佑多
(72)【発明者】
【氏名】高橋 太郎
(72)【発明者】
【氏名】大滝 裕史
(72)【発明者】
【氏名】鳥越 恒男
(72)【発明者】
【氏名】西田 弘明
【審査官】須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-226007(JP,A)
【文献】特開2005-022028(JP,A)
【文献】特開2020-028955(JP,A)
【文献】特開2014-042968(JP,A)
【文献】特開2006-255851(JP,A)
【文献】特開2017-100254(JP,A)
【文献】特開2009-255250(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2020-0043216(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B3/00-3/60
B24B21/00-57/04
H01L21/304;21/463
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨パッドを支持する研磨テーブルと、
ワークピースを前記研磨パッドの研磨面に押し付ける研磨ヘッドと、
前記研磨パッドの前記研磨面をドレッシングするドレッサと、
前記ドレッサと前記研磨パッドとの摩擦を検出するように構成され、前記ドレッサに固定された検出センサと、
前記検出センサの複数の出力値から摩耗指標値を決定し、前記摩耗指標値が所定の下限値を下回ったときに警報信号を発するように構成された摩耗監視装置を備えており、
前記摩耗監視装置は、時間軸に沿って並ぶ前記複数の出力値に対してフーリエ変換を実行して、パワースペクトルを作成し、前記パワースペクトルの第1のピーク値である前記摩耗指標値を決定するように構成されている、研磨装置。
【請求項2】
研磨パッドを支持する研磨テーブルと、
ワークピースを前記研磨パッドの研磨面に押し付ける研磨ヘッドと、
前記研磨パッドの前記研磨面をドレッシングするドレッサと、
前記ドレッサと前記研磨パッドとの摩擦を検出するように構成され、前記ドレッサに固定された検出センサと、
前記検出センサの複数の出力値から摩耗指標値を決定し、前記摩耗指標値が所定の下限値を下回ったときに警報信号を発するように構成された摩耗監視装置を備えており、
前記摩耗監視装置は、前記複数の出力値を複数の基準値からそれぞれ減算することにより複数の相対出力値を算出し、時間軸に沿って並ぶ前記複数の相対出力値に対してフーリエ変換を実行して、パワースペクトルを作成、前記パワースペクトルの第1のピーク値である前記摩耗指標値を決定するように構成されている、研磨装置。
【請求項3】
前記複数の基準値は、前記ドレッサが前記研磨パッドを最初にドレッシングしたときに得られた前記検出センサの複数の出力値である、請求項に記載の研磨装置。
【請求項4】
前記摩耗監視装置は、前記パワースペクトルの第2のピーク値が所定の上限値を上回ったときに、前記研磨パッドの異常を検出するように構成されている、請求項またはに記載の研磨装置。
【請求項5】
前記検出センサは、加速度センサ、アコースティックエミッションセンサ、および歪センサのうちのいずれか1つである、請求項1乃至のいずれか一項に記載の研磨装置。
【請求項6】
前記研磨装置は、前記ワークピースの研磨の進捗を示す研磨指標値を生成する研磨進捗検出器と、前記研磨指標値を監視する動作制御部をさらに備えており、
前記動作制御部は、前記摩耗指標値に基づいて前記研磨指標値を補正するように構成されている、請求項1乃至のいずれか一項に記載の研磨装置。
【請求項7】
ワークピースのための研磨装置に使用される研磨パッドの交換時期を決定する方法であって、
前記研磨パッドの研磨面をドレッサによりドレッシングしながら、前記ドレッサと前記研磨パッドとの摩擦を、前記ドレッサに固定された検出センサにより検出し、
時間軸に沿って並ぶ前記検出センサの複数の出力値に対してフーリエ変換を実行してパワースペクトルを作成し、前記パワースペクトルの第1のピーク値である摩耗指標値を決定し、
前記摩耗指標値が所定の下限値を下回ったときに警報信号を発する、方法。
【請求項8】
ワークピースのための研磨装置に使用される研磨パッドの交換時期を決定する方法であって、
前記研磨パッドの研磨面をドレッサによりドレッシングしながら、前記ドレッサと前記研磨パッドとの摩擦を、前記ドレッサに固定された検出センサにより検出し、
前記検出センサの複数の出力値を複数の基準値からそれぞれ減算することにより複数の相対出力値を算出し、
時間軸に沿って並ぶ前記複数の相対出力値に対してフーリエ変換を実行してパワースペクトルを作成し、
前記パワースペクトルの第1のピーク値である摩耗指標値を決定し、
前記摩耗指標値が所定の下限値を下回ったときに警報信号を発する、方法。
【請求項9】
前記複数の基準値は、前記ドレッサが前記研磨パッドを最初にドレッシングしたときに得られた前記検出センサの複数の出力値である、請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記パワースペクトルの第2のピーク値が所定の上限値を上回ったときに、前記研磨パッドの異常を検出する工程をさらに含む、請求項またはに記載の方法。
【請求項11】
前記検出センサは、加速度センサ、アコースティックエミッションセンサ、および歪センサのうちのいずれか1つである、請求項乃至10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記摩耗指標値に基づいて、前記ワークピースの研磨の進捗を示す研磨指標値を補正する工程をさらに含む、請求項乃至11のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェーハ、基板、パネルなどのワークピースを研磨するための研磨装置に使用される研磨パッドの交換時期を決定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
化学機械研磨(以下、CMPという)は、シリカ(SiO)等の砥粒を含んだ研磨液を研磨パッド上に供給しつつワークピース(例えば、ウェーハ、基板、またはパネルなど)を研磨パッドに摺接させて該ワークピースを研磨するプロセスである。このCMPを行うための研磨装置は、研磨面を有する研磨パッドを支持する研磨テーブルと、ワークピースを研磨パッドに押し付けるための研磨ヘッドを備えている。
【0003】
研磨装置は、次のようにしてワークピースを研磨する。研磨テーブルおよび研磨パッドを一体に回転させながら、研磨液(典型的にはスラリー)を研磨パッドの研磨面に供給する。研磨ヘッドはワークピースを回転させながら、ワークピースの表面を研磨パッドの研磨面に対して押し付ける。ワークピースは、研磨液の存在下で研磨パッドに摺接される。ワークピースの表面は、研磨液の化学的作用と、研磨液に含まれる砥粒および研磨パッドの機械的作用により、研磨される。
【0004】
ワークピースの研磨を行うと、研磨パッドの研磨面には砥粒や研磨屑が付着し、研磨性能が低下してくる。そこで、研磨パッドの研磨面を再生するために、ドレッサによる研磨パッドのドレッシングが行なわれる。ドレッサは、その下面に固定されたダイヤモンド粒子などの硬質の砥粒を有しており、このドレッサで研磨パッドの研磨面を削り取ることにより、研磨パッドの研磨面を再生する。研磨パッドのドレッシングは、1枚のワークピースを研磨する毎に行われる。
【0005】
研磨パッドは、ドレッシングを繰り返すにつれて徐々に減耗していく。研磨パッドが減耗すると、意図した研磨性能が得られなくなるため、研磨パッドを定期的に交換することが必要となる。そこで、研磨パッドの使用時間が、予め定められた時間を超えたとき、または研磨されたワークピースの枚数が、予め定められた数を超えたときに、研磨パッドが新たなものに交換される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2012-56029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、研磨パッドの使用時間および研磨されたワークピースの枚数は、研磨パッドの減耗を間接的に表しているにすぎず、研磨パッドの減耗を正確に反映していないことがある。結果として、まだ寿命に到達していない研磨パッドが交換されることがあり、あるいは使用限界を超えて減耗した研磨パッドが使用され続けることがある。特に、過度に減耗した研磨パッドが使用されると、ワークピースの目標の膜厚プロファイルが達成できないことがある。
【0008】
そこで、本発明は、研磨パッドの消耗または異常を正確に検出し、研磨パッドの適切な処理時期、または交換時期などを決定することができる改良された技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一態様では、研磨パッドを支持する研磨テーブルと、ワークピースを前記研磨パッドの研磨面に押し付ける研磨ヘッドと、前記研磨パッドの前記研磨面をドレッシングするドレッサと、前記ドレッサと前記研磨パッドとの摩擦を検出するように構成され、前記ドレッサに固定された検出センサと、前記検出センサの複数の出力値から摩耗指標値を決定し、前記摩耗指標値が所定の下限値を下回ったときに警報信号を発するように構成された摩耗監視装置を備えている、研磨装置が提供される。
【0010】
一態様では、前記摩耗監視装置は、時間軸に沿って並ぶ前記複数の出力値に対して周波数解析を実行して、前記摩耗指標値を決定するように構成されている。
一態様では、前記周波数解析はフーリエ変換であり、前記摩耗監視装置は、時間軸に沿って並ぶ前記複数の出力値に対してフーリエ変換を適用して、パワースペクトルを作成するように構成されており、前記摩耗指標値は前記パワースペクトルの第1のピーク値である。
一態様では、前記摩耗監視装置は、前記複数の出力値を複数の基準値からそれぞれ減算することにより複数の相対出力値を算出し、時間軸に沿って並ぶ前記複数の相対出力値に対して周波数解析を実行して、前記摩耗指標値を決定するように構成されている。
一態様では、前記周波数解析はフーリエ変換であり、前記摩耗監視装置は、時間軸に沿って並ぶ前記複数の相対出力値に対してフーリエ変換を適用して、パワースペクトルを作成するように構成されており、前記摩耗指標値は前記パワースペクトルの第1のピーク値である。
一態様では、前記複数の基準値は、前記ドレッサが前記研磨パッドを最初にドレッシングしたときに得られた前記検出センサの複数の出力値である。
一態様では、前記摩耗監視装置は、前記パワースペクトルの第2のピーク値が所定の上限値を上回ったときに、前記研磨パッドの異常を検出するように構成されている。
一態様では、前記検出センサは、加速度センサ、アコースティックエミッションセンサ、および歪センサのうちのいずれか1つである。
一態様では、前記研磨装置は、前記ワークピースの研磨の進捗を示す研磨指標値を生成する研磨進捗検出器と、前記研磨指標値を監視する動作制御部をさらに備えており、前記動作制御部は、前記摩耗指標値に基づいて前記研磨指標値を補正するように構成されている。
【0011】
一態様では、ワークピースのための研磨装置に使用される研磨パッドの交換時期を決定する方法であって、前記研磨パッドの研磨面をドレッサによりドレッシングしながら、前記ドレッサと前記研磨パッドとの摩擦を、前記ドレッサに固定された検出センサにより検出し、前記検出センサの複数の出力値から摩耗指標値を決定し、前記摩耗指標値が所定の下限値を下回ったときに警報信号を発する、方法が提供される。
【0012】
一態様では、前記摩耗指標値を決定する工程は、時間軸に沿って並ぶ前記複数の出力値に対して周波数解析を実行して、前記摩耗指標値を決定する工程である。
一態様では、前記周波数解析はフーリエ変換であり、前記摩耗指標値を決定する工程は、時間軸に沿って並ぶ前記複数の出力値に対してフーリエ変換を適用してパワースペクトルを作成し、前記パワースペクトルの第1のピーク値である前記摩耗指標値を決定する工程である。
一態様では、前記摩耗指標値を決定する工程は、前記複数の出力値を複数の基準値からそれぞれ減算することにより複数の相対出力値を算出し、時間軸に沿って並ぶ前記複数の相対出力値に対して周波数解析を実行して、前記摩耗指標値を決定する工程である。
一態様では、前記周波数解析はフーリエ変換であり、前記摩耗指標値を決定する工程は、時間軸に沿って並ぶ前記複数の相対出力値に対してフーリエ変換を適用してパワースペクトルを作成し、前記パワースペクトルの第1のピーク値である前記摩耗指標値を決定する工程である。
一態様では、前記複数の基準値は、前記ドレッサが前記研磨パッドを最初にドレッシングしたときに得られた前記検出センサの複数の出力値である。
一態様では、前記方法は、前記パワースペクトルの第2のピーク値が所定の上限値を上回ったときに、前記研磨パッドの異常を検出する工程をさらに含む。
一態様では、前記検出センサは、加速度センサ、アコースティックエミッションセンサ、および歪センサのうちのいずれか1つである。
一態様では、前記方法は、前記摩耗指標値に基づいて、前記ワークピースの研磨の進捗を示す研磨指標値を補正する工程をさらに含む。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ドレッサに固定された検出センサにより、ドレッサと研磨パッドとの摩擦が検出される。検出センサの出力値は、研磨パッドが摩耗するにつれて徐々に変化する。言い換えれば、検出センサの出力値は、研磨パッドの摩耗を反映している。したがって、摩耗監視装置は、検出センサの複数の出力値から求められた摩耗指標値に基づいて、研磨パッドの摩耗および研磨パッドの交換時期を正確に決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】研磨装置の一実施形態を示す模式図である。
図2】ドレッサが研磨パッドの研磨面をドレッシングしているときの検出センサの出力値の経時変化の一例を示すグラフである。
図3】摩耗監視装置によって作成されたパワースペクトルの一例を示すグラフである。
図4】時間軸に沿って並ぶ複数の基準値、検出センサの複数の出力値、および基準値と検出センサの出力値との差である相対出力値を示すグラフである。
図5図4に示す、時間軸に沿って並ぶ相対出力値にフーリエ変換(または高速フーリエ変換)を適用して得られたパワースペクトルを示す図である。
図6】ドレッサが研磨パッドの研磨面をドレッシングしているときの検出センサの出力値の経時変化の他の例を示すグラフである。
図7図6に示す、時間軸に沿って並ぶ検出センサの複数の出力値にフーリエ変換(または高速フーリエ変換)を適用して得られたパワースペクトルを示す図である。
図8】新品の研磨パッドを用いてワークピースを研磨したときに研磨進捗検出器から出力された研磨指標値(膜厚)の時間変化と、摩耗した研磨パッドを用いてワークピースを研磨したときに研磨進捗検出器から出力された研磨指標値(膜厚)の時間変化を示すグラフである。
図9】相関データの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、研磨装置の一実施形態を示す模式図である。研磨装置1は、ウェーハ、基板、パネルなどワークピースWを化学機械的に研磨する装置である。図1に示すように、この研磨装置1は、研磨面2aを有する研磨パッド2を支持する研磨テーブル5と、ワークピースWを研磨面2aに対して押し付ける研磨ヘッド7と、研磨液(例えば、砥粒を含むスラリー)を研磨面2aに供給する研磨液供給ノズル8と、研磨装置1の動作を制御する動作制御部10を備えている。研磨ヘッド7は、その下面にワークピースWを保持できるように構成されている。ワークピースWは被研磨膜を有する。
【0016】
動作制御部10は、少なくとも1台のコンピュータから構成されている。動作制御部10は、プログラムが格納された記憶装置10aと、プログラムに含まれる命令に従って演算を実行する演算装置10bを備えている。記憶装置10aは、RAMなどの主記憶装置と、ハードディスクドライブ(HDD)、ソリッドステートドライブ(SSD)などの補助記憶装置を備えている。演算装置10bの例としては、CPU(中央処理装置)、GPU(グラフィックプロセッシングユニット)が挙げられる。ただし、動作制御部10の具体的構成はこれらの例に限定されない。
【0017】
研磨装置1は、支軸14と、支軸14の上端に連結された研磨ヘッド揺動アーム16と、研磨ヘッド揺動アーム16の自由端に回転可能に支持された研磨ヘッドシャフト18をさらに備えている。研磨ヘッド7は、研磨ヘッドシャフト18の下端に固定されている。研磨ヘッド揺動アーム16内には、電動機などを備えた研磨ヘッド回転機構(図示せず)が配置されている。この研磨ヘッド回転機構は、研磨ヘッドシャフト18に連結されており、研磨ヘッドシャフト18および研磨ヘッド7を矢印で示す方向に回転させるように構成されている。
【0018】
研磨ヘッドシャフト18は、図示しない研磨ヘッド昇降機構(ボールねじ機構などを含む)に連結されている。この研磨ヘッド昇降機構は、研磨ヘッドシャフト18を研磨ヘッド揺動アーム16に対して相対的に上下動させるように構成されている。この研磨ヘッドシャフト18の上下動により、研磨ヘッド7は、矢印で示すように、研磨ヘッド揺動アーム16および研磨テーブル5に対して相対的に上下動可能となっている。
【0019】
研磨装置1は、研磨パッド2および研磨テーブル5をそれらの軸心を中心に回転させるテーブル回転モータ21をさらに備えている。テーブル回転モータ21は研磨テーブル5の下方に配置されており、研磨テーブル5は、テーブル軸5aを介してテーブル回転モータ21に連結されている。研磨テーブル5および研磨パッド2は、テーブル回転モータ21によりテーブル軸5aを中心に矢印で示す方向に回転されるようになっている。研磨パッド2は、研磨テーブル5の上面に貼り付けられている。研磨パッド2の露出面は、ウェーハなどのワークピースWを研磨する研磨面2aを構成している。
【0020】
ワークピースWの研磨は次のようにして行われる。ワークピースWは、その被研磨面が下を向いた状態で、研磨ヘッド7に保持される。研磨ヘッド7および研磨テーブル5をそれぞれ回転させながら、研磨テーブル5の上方に設けられた研磨液供給ノズル8から研磨液(例えば、砥粒を含むスラリー)を研磨パッド2の研磨面2a上に供給する。研磨パッド2はその中心軸線を中心に研磨テーブル5と一体に回転する。研磨ヘッド7は研磨ヘッド昇降機構(図示せず)により所定の高さまで移動される。さらに、研磨ヘッド7は上記所定の高さに維持されたまま、ワークピースWを研磨パッド2の研磨面2aに押し付ける。ワークピースWは研磨ヘッド7と一体に回転する。研磨液が研磨パッド2の研磨面2a上に存在した状態で、ワークピースWは研磨面2aに摺接される。ワークピースWの表面は、研磨液の化学的作用と、研磨液に含まれる砥粒および研磨パッド2の機械的作用との組み合わせにより、研磨される。
【0021】
研磨装置1は、研磨面2a上のワークピースWの膜厚を測定する膜厚センサから構成された研磨進捗検出器42を備えている。研磨進捗検出器42は、ワークピースWの膜厚を直接または間接に示す研磨指標値を生成するように構成されている。この研磨指標値は、ワークピースWの膜厚に従って変化するので、ワークピースWの研磨の進捗を示す。研磨指標値は、ワークピースWの膜厚自体を表す値であってもよいし、または膜厚に換算される前の物理量または信号値であってもよい。
【0022】
研磨進捗検出器42の例としては、渦電流センサ、光学式膜厚センサが挙げられる。研磨進捗検出器42は、研磨テーブル5内に設置されており、研磨テーブル5と一体に回転する。より具体的には、研磨進捗検出器42は、研磨テーブル5が一回転するたびに、研磨面2a上のワークピースWを横切りながら、ワークピースWの複数の測定点での膜厚を測定するように構成されている。
【0023】
研磨進捗検出器42は、動作制御部10に接続されている。研磨進捗検出器42によって生成された研磨指標値は、動作制御部10によって監視される。すなわち、複数の測定点での膜厚は、研磨指標値として研磨進捗検出器42から出力され、研磨指標値は動作制御部10に送られる。動作制御部10は、研磨指標値に基づいて研磨装置1の動作を制御するように構成されている。例えば、動作制御部10は、研磨指標値が所定の目標値に到達した時点である研磨終点を検出する。
【0024】
研磨進捗検出器42として、膜厚センサに代えて、テーブル回転モータ21に印加されるトルク電流を測定するトルク電流検出器が用いられてもよい。ワークピースWの表面を構成する膜が研磨によって除去されると、その膜の下に存在する下地層が露出する。膜と下地層は異なる材料から構成されているので、膜が除去されて下地層が露出すると、ワークピースWと研磨パッド2との摩擦が変化する。この摩擦の変化は、テーブル回転モータ21に印加されるトルク電流の変化として現れる。例えば、摩擦が大きくなると、研磨テーブル5を予め設定された速度で回転させるために必要なトルク電流が大きくなる。トルク電流検出器は、研磨指標値としてトルク電流の測定値を出力し、動作制御部10に送る。動作制御部10は、トルク電流の変化に基づいて、ワークピースWの膜が除去された時点を決定することができる。
【0025】
研磨装置1は、研磨パッド2の研磨面2aをドレッシングするドレッサ40を備えている。このドレッサ40は、研磨パッド2の研磨面2aに摺接されるドレッシングディスク50と、ドレッシングディスク50が連結されるドレッサシャフト51と、ドレッサシャフト51を回転自在に支持するドレッサ揺動アーム55とを備えている。ドレッシングディスク50の下面はドレッシング面50aを構成し、このドレッシング面50aは砥粒(例えば、ダイヤモンド粒子)から構成されている。
【0026】
ドレッサシャフト51は、ドレッサ揺動アーム55内に配置された図示しないディスク押圧機構(例えばエアシリンダを含む)に連結されている。このディスク押圧機構は、ドレッサシャフト51を介してドレッシングディスク50のドレッシング面50aを研磨パッド2の研磨面2aに対して押し付けるように構成されている。さらに、ドレッサシャフト51は、ドレッサ揺動アーム55内に配置された図示しないディスク回転機構(例えば電動機を含む)に連結されている。このディスク回転機構は、ドレッサシャフト51を介してドレッシングディスク50を矢印で示す方向に回転させるように構成されている。
【0027】
研磨パッド2の研磨面2aのドレッシングは次のようにして行われる。研磨パッド2は研磨テーブル5とともにテーブル回転モータ21によって回転されながら、図示しない純水供給ノズルから純水が研磨面2aに供給される。ドレッシングディスク50は、ドレッサシャフト51を中心にディスク回転機構(図示せず)により回転されながら、ドレッシングディスク50のドレッシング面50aはディスク押圧機構(図示せず)により研磨面2aに押圧される。研磨面2a上に純水が存在した状態で、ドレッシングディスク50は研磨面2aに摺接される。ドレッシングディスク50の回転中、ドレッサ揺動アーム55を支軸58を中心に旋回させてドレッシングディスク50を研磨面2aの半径方向に揺動させる。このようにして、ドレッシングディスク50により研磨パッド2が削り取られ、研磨面2aがドレッシング(再生)される。研磨パッド2の研磨面2aのドレッシングは、ワークピースWの研磨中、またはワークピースWの研磨後に実施される。
【0028】
研磨装置1は、ドレッサ揺動アーム55に固定された検出センサ60を備えている。この検出センサ60は、加速度センサ、アコースティックエミッションセンサ(以下、AEセンサという)、歪センサなどから構成される。一実施形態では、検出センサ60はドレッシングディスク50に固定されてもよい。検出センサ60は、ドレッサ40(より具体的にはドレッシングディスク50)と研磨パッド2との摩擦を検出する摩擦検出器である。
【0029】
例えば、検出センサ60として加速度センサが使用されている場合、ドレッシングディスク50が研磨パッド2の研磨面2aに摺接しているときに、ドレッシングディスク50の振動は加速度センサに伝わる。ドレッシングディスク50と研磨パッド2との摩擦は、振動として加速度センサによって検出される。振動が大きいほど、摩擦は大きいと推定される。検出センサ60としてAEセンサが使用されている場合、ドレッシングディスク50が研磨パッド2の研磨面2aに摺接しているときに、ドレッシングディスク50および研磨パッド2から音波(弾性波)が放出される。ドレッシングディスク50と研磨パッド2との摩擦は、音波(弾性波)としてAEセンサによって検出される。AEセンサは、この音波(弾性波)を電気信号に変換して、その電気信号を出力する。検出センサ60として歪センサが使用されている場合、ドレッシングディスク50が研磨パッド2の研磨面2aに摺接しているときに、ドレッサ揺動アーム55のたわみが歪センサによって検出される。ドレッシングディスク50と研磨パッド2との摩擦は、ドレッサ揺動アーム55のたわみとして歪センサによって検出される。ドレッサ揺動アーム55のたわみが大きいほど、摩擦は大きいと推定される。
【0030】
以下に説明する実施形態では、検出センサ60にはAEセンサが使用されている。図2は、ドレッサ40が研磨パッド2の研磨面2aをドレッシングしているときの検出センサ60の出力値の経時変化の一例を示すグラフである。図2の縦軸は、検出センサ60の出力値を表し、図2の横軸は、時間を表している。研磨パッド2のドレッシング中、ドレッシングディスク50は、ドレッサ揺動アーム55の旋回運動に伴って研磨パッド2の研磨面2a上を半径方向に揺動(往復運動)する。したがって、図2に示すように、検出センサ60の出力値は、ドレッシングディスク50の揺動に伴って周期的に変化する。検出センサ60の出力値の周期は、ドレッシングディスク50の揺動周期に相当する。
【0031】
通常、研磨パッド2の研磨面2aには、研磨液を保持するための多数の溝が形成されている。研磨パッド2が摩耗してくると、溝の深さが小さくなり、ドレッシングディスク50と研磨パッド2との間の摩擦が小さくなる。結果として、検出センサ60の出力値も全体的に低下する(グラフの点線参照)。研磨パッド2の摩耗が進行すると、研磨パッド2を新たな研磨パッドに交換しなければならない。そこで、本実施形態では、次のようにして研磨パッド2の交換時期を決定する。
【0032】
図1に示すように、研磨装置1は、検出センサ60に電気的に接続された摩耗監視装置63を備えている。摩耗監視装置63は、検出センサ60の複数の出力値を取得し、検出センサ60の複数の出力値から摩耗指標値を決定するように構成されている。より具体的には、摩耗監視装置63は、時間軸に沿って並ぶ検出センサ60の複数の出力値に対して周波数解析を実行して、前記摩耗指標値を決定するように構成されている。本実施形態では、周波数解析はフーリエ変換であり、摩耗監視装置63は、時間軸に沿って並ぶ検出センサ60の複数の出力値に対してフーリエ変換を適用して、パワースペクトルを作成し、パワースペクトルのピーク値である摩耗指標値を決定するように構成されている。フーリエ変換は、高速フーリエ変換(FFT)であってもよい。周波数解析の他の例として、ウェーブレット解析、オクターブ分析などを用いてもよい。
【0033】
図3は、摩耗監視装置63によって作成されたパワースペクトルの一例を示すグラフである。図3の横軸は、図2に示す検出センサ60の出力値の変動の周波数であり、図3の縦軸は、周波数成分の強さである。図3に示すように、パワースペクトルは、ドレッシングディスク50の揺動に起因するピーク値P1を有する。このピーク値P1が現れる周波数f1は、ドレッシングディスク50の揺動の周波数に相当する。したがって、摩耗監視装置63は、ドレッシングディスク50の揺動に起因するパワースペクトルのピーク値P1を特定することができる。
【0034】
検出センサ60の出力値には、研磨装置1に固有のノイズや研磨パッド2上の異物などに起因するノイズが含まれることがある。これらのノイズに起因して、図3に示すように、ピーク値P1以外にも複数のピーク値がパワースペクトル上に現れる。本実施形態によれば、パワースペクトルは、ドレッシングディスク50と研磨パッド2との摩擦に起因するピーク値P1と、ノイズに起因する他のピーク値とを分けることができる。したがって、摩耗監視装置63は、ドレッシングディスク50と研磨パッド2との摩擦の時間変化を監視することができる。
【0035】
一実施形態では、摩耗監視装置63は、検出センサ60の出力値に対してノイズ処理を行って、検出センサ60の修正された出力値を生成することが可能である。例えば、摩耗監視装置63は、研磨パッド2とワークピースWの接触、研磨パッド2とドレッサ40の接触以外に発生するノイズ成分を予め測定又は予測して、そのノイズ成分を検出センサ60の出力値から除去することで、検出センサ60の出力値を修正することができる。例えば、ワークピースWやドレッサ40の研磨パッド2との接触がないときの検出センサ60の出力値、研磨ヘッド7だけが回転しているときの検出センサ60の出力値、水研磨時の検出センサ60の出力値、ドレッシング時の検出センサ60の出力値、水研磨およびドレッシング時の検出センサ60の出力値、ワークピースWの研磨時の検出センサ60の出力値、ワークピースWの研磨およびドレッシング時の検出センサ60の出力値、またはこれらの組合せに基づいて、フィルタリング、演算により検出センサ60の修正された出力値を作りだすことができる。さらに、検出センサ60の修正された出力値を利用して効率よく、高SNにてセンサ信号によるパッド表面状態のモニタリングが可能となる。
【0036】
パワースペクトルのピーク値P1は、研磨パッド2が摩耗するにつれて徐々に低下する。摩耗監視装置63は、ピーク値P1を所定の下限値と比較し、ピーク値P1が下限値を下回ったときに警報信号を発するように構成されている。この警報信号は、摩耗監視装置63のディスプレイ装置63cに、ユーザーに研磨パッド2の交換を促す情報を表示させる。
【0037】
検出センサ60の出力値は、研磨パッド2が摩耗するにつれて徐々に変化する。言い換えれば、検出センサ60の出力値は、研磨パッド2の摩耗を反映している。したがって、摩耗監視装置63は、検出センサ60の複数の出力値から求められた摩耗指標値に基づいて、研磨パッド2の摩耗および研磨パッド2の交換時期を正確に決定することができる。
【0038】
摩耗監視装置63は、少なくとも1台のコンピュータから構成されている。摩耗監視装置63は、プログラムが格納された記憶装置63aと、プログラムに含まれる命令に従って演算を実行する演算装置63bを備えている。記憶装置63aは、RAMなどの主記憶装置と、ハードディスクドライブ(HDD)、ソリッドステートドライブ(SSD)などの補助記憶装置を備えている。演算装置63bの例としては、CPU(中央処理装置)、GPU(グラフィックプロセッシングユニット)が挙げられる。ただし、摩耗監視装置63の具体的構成はこれらの例に限定されない。摩耗監視装置63は、動作制御部10と一体に構成されてもよい。すなわち、摩耗監視装置63および動作制御部10は、プログラムが格納された記憶装置、およびプログラムに含まれる命令に従って演算を実行する演算装置を含む少なくとも1台のコンピュータにより構成されてもよい。
【0039】
一実施形態では、検出センサ60の出力値からノイズを除去するために、摩耗監視装置63は、検出センサ60の複数の出力値を複数の基準値からそれぞれ減算することにより複数の相対出力値を算出し、時間軸に沿って並ぶ複数の相対出力値に対して周波数解析を実行して、摩耗指標値を決定するように構成されてもよい。一実施形態では、周波数解析はフーリエ変換(または高速フーリエ変換)であり、摩耗監視装置63は、検出センサ60の複数の出力値を複数の基準値からそれぞれ減算することにより複数の相対出力値を算出し、時間軸に沿って並ぶ複数の相対出力値に対してフーリエ変換(または高速フーリエ変換)を適用して、パワースペクトルを作成するように構成されてもよい。
【0040】
複数の基準値は、研磨装置1の運転中に取得された数値である。例えば、上記複数の基準値は、ドレッサ40が研磨パッド2を最初にドレッシングしたときに得られた検出センサ60の複数の出力値である。より具体的には、新品の研磨パッド2を研磨テーブル5に貼り付けた後であって、ワークピースを研磨する前に、研磨パッド2の研磨面2aに純水を供給しながら、ドレッサ40で研磨パッド2の初期ドレッシングを実行し、この初期ドレッシング中に検出センサ60によって生成された複数の出力値が複数の基準値に登録される。摩耗監視装置63は、検出センサ60から取得した複数の出力値を複数の基準値として記憶装置63aに保存する。
【0041】
図4は、時間軸に沿って並ぶ複数の基準値、検出センサ60の複数の出力値、および基準値と検出センサ60の出力値との差である相対出力値を示すグラフである。図4の縦軸は基準値、検出センサ60の出力値、および相対出力値を表し、図4の横軸は時間を表している。相対出力値は、検出センサ60の出力値に比べて、時間経過とともに滑らかに変化していることが図4から分かる。
【0042】
図5は、図4に示す、時間軸に沿って並ぶ相対出力値にフーリエ変換(または高速フーリエ変換)を適用して得られたパワースペクトルを示す図である。図5に示すパワースペクトルと、図4に示すパワースペクトルとの対比から分かるように、図5に示すパワースペクトルに現れるピークの数が少ない。これは、相対出力値がノイズをほとんど含まないことを意味している。
【0043】
本実施形態によれば、ワークピースWの研磨中または研磨後、摩耗監視装置63は、検出センサ60の複数の出力値を複数の基準値からそれぞれ減算することにより複数の相対出力値を算出する。基準値と検出センサ60の出力値との差である相対出力値は、ノイズが除去された値である。このような相対出力値を使用することで、摩耗監視装置63は、研磨パッド2の摩耗および研磨パッド2の交換時期をより正確に決定することができる。
【0044】
図6は、ドレッサ40が研磨パッド2の研磨面2aをドレッシングしているときの検出センサ60の出力値の経時変化の他の例を示すグラフである。図6に示す例に示すように、検出センサ60の出力値が一時的かつ急峻に上昇することがある。このような出力値の急上昇は、研磨パッド2上の異物(研磨屑、または砥粒など)の存在、研磨パッド2の部分的な剥離、研磨パッド2の研磨面2a内のスクラッチなど、研磨パッド2の異常によって起こる。
【0045】
図7は、図6に示す、時間軸に沿って並ぶ検出センサ60の複数の出力値にフーリエ変換(または高速フーリエ変換)を適用して得られたパワースペクトルを示す図である。図7に示すように、パワースペクトルは、ドレッシングディスク50の揺動に対応する周波数f1でのピーク値P1に加え、研磨パッド2の異常に起因する別のピーク値P2を持つ。このピーク値P2は、ピーク値P1の周波数f1とは異なる周波数f2に現れる。摩耗監視装置63は、このピーク値P2を所定の上限値と比較し、ピーク値P2が所定の上限値を上回ったときに、研磨パッド2の異常を検出し、研磨パッド2の異常を知らせる警報信号を生成するように構成されている。本実施形態によれば、研磨装置1は、研磨パッド2の異常(例えば、研磨パッド2上の異物、または研磨パッド2の傷)に起因するワークピースWの研磨への悪影響を回避することができる。
【0046】
図6および図7を参照して説明した実施形態は、図4および図5を参照して説明した実施形態と組み合わせてもよい。
【0047】
図8は、新品の研磨パッド2を用いてワークピースを研磨したときに研磨進捗検出器42から出力された研磨指標値(膜厚)の時間変化と、摩耗した研磨パッド2を用いてワークピースを研磨したときに研磨進捗検出器42から出力された研磨指標値(膜厚)の時間変化を示すグラフである。図8に示すように、研磨パッド2が摩耗したときの研磨指標値は、全体的に、研磨パッド2が摩耗していないときの研磨指標値からシフトしている。すなわち、ワークピースの膜厚が同じであっても、研磨進捗検出器42から出力された研磨指標値は、研磨パッド2の摩耗に依存して変わりうる。言い換えれば、研磨指標値の変化は、研磨パッド2の摩耗と相関がある。
【0048】
例えば、研磨進捗検出器42が光学式膜厚センサまたは渦電流式膜厚センサである場合、研磨パッド2が摩耗するにつれて研磨進捗検出器42とワークピースとの距離が小さくなる。結果として、ワークピースの膜厚が同じであっても、研磨進捗検出器42から出力される研磨指標値(膜厚)は変わりうる。膜厚センサに代えてトルク電流検出器が研磨進捗検出器42として使用されている場合、研磨パッド2が摩耗するにつれて、ワークピースと研磨パッド2との間に作用する摩擦力が低下する。結果として、研磨進捗検出器42から出力される研磨指標値(トルク電流)は変わりうる。
【0049】
そこで、本実施形態では、動作制御部10は、摩耗指標値に基づいて研磨指標値を補正するように構成されている。動作制御部10は、その記憶装置10aに、図9に示すような相関データを予め格納している。図9に示す相関データは、摩耗指標値と、研磨指標値の補正量との相関の一例を示している。図9に示す例では、相関データは一次関数で表されているが、相関データは、二次関数、三次関数などであってもよい。あるいは、相関データは、摩耗指標値と、研磨指標値の補正量との相関を示すデータテーブルであってもよい。
【0050】
相関データは、過去の摩耗指標値と、対応する研磨指標値とから作成される。具体的には、新品の研磨パッドが、その使用限界以下に摩耗するまで複数のワークピースの研磨に使用されたときに取得された摩耗指標値と、同一膜厚条件下で取得された研磨指標値から、相関データが作成される。
【0051】
動作制御部10は、ワークピースWの研磨中に、摩耗監視装置63から送られる摩耗指標値を取得し、相関データを使用してその摩耗指標値に対応する補正量を決定する。そして、動作制御部10は、ワークピースWの研磨中に研磨進捗検出器42から送られる研磨指標値を取得し、研磨指標値に補正量を加算する(あるいは研磨指標値から補正量を減算する)ことで、研磨指標値を補正する。動作制御部10は、補正された研磨指標値に基づいて研磨装置1の動作を制御する。例えば、動作制御部10は、補正された研磨指標値が、予め設定した目標値に達した時点である研磨終点を決定する。
【0052】
図8および図9を参照して説明した実施形態は、図1乃至図7を参照して説明した実施形態と適宜組み合わせてもよい。
【0053】
一実施形態では、ディープラーニングによる学習済モデルに検出センサ60の出力値を入力し、研磨パッド2の表面状態予測を学習済モデルから出力することが可能である。学習済モデルへの入力としては検出センサ60の出力値、又は検出センサ60の出力値とテーブルトルク・テーブル回転速度等のパラメータが挙げられる。学習済モデルからの出力としては、研磨パッド2の表面状態の指標又は評価の予測値が挙げられる。摩耗監視装置63は、予測値が基準値に近づくと研磨パッド2の交換推奨をアラートで知らせることができる。又、正常使用時期予測を出力とすることも可能となる。ディープラーニングには、実際に研磨が行われた過程で得られた研磨パッド2の使用時間、検出センサ60の出力値の波形、研磨パッド2の交換時期等のデータセットが使用される。このデータセットは、正常に研磨パッド2の交換が行われたデータセット、使用途中で異常が発生したデータセット、正常と異常の混在したデータセットから、選んで学習に用いることが可能である。
【0054】
一実施形態では、研磨パッド2の研磨面2aの画像を生成するカメラをドレッサ揺動アーム55に設置してもよい。摩耗監視装置63は、研磨面2aの画像を利用して研磨面2aの観察が可能である。例えば、ドレッサ揺動アーム55は揺動でき、研磨テーブル5は回転可能であるため、摩耗監視装置63は、研磨面2aの任意の領域のカメラによる観察が可能となる。研磨面2aのモニタリング領域を予め決めておき、摩耗監視装置63は、定期的に研磨面2aの画像を取得する。摩耗監視装置63は、その画像から研磨パッド2の消耗度合いの変化を評価する。又、摩耗監視装置63は、研磨パッド2の消耗による検出センサ60の出力値の変化と、研磨面2aの画像を比較して、研磨パッド2の消耗度の評価を複数の指標で求めることが可能となる。例えば、両方の評価値が交換時期であることを示していると、一方だけの判断によるエラーを回避することも可能である。又、摩耗監視装置63は、検出センサ60の出力信号の異常波形が発生している部位をセンサ信号より特定し、その部位を観察し早期の対処方法を決定する事が可能となる。
【0055】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。
【符号の説明】
【0056】
1 研磨装置
2 研磨パッド
2a 研磨面
5 研磨テーブル
7 研磨ヘッド
8 研磨液供給ノズル
10 動作制御部
14 支軸
16 研磨ヘッド揺動アーム
18 研磨ヘッドシャフト
21 テーブル回転モータ
40 ドレッサ
42 研磨進捗検出器
50 ドレッシングディスク
51 ドレッサシャフト
55 ドレッサ揺動アーム
58 支軸
60 検出センサ
63 摩耗監視装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9