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  • 特許-垂直型風力発電装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-16
(45)【発行日】2024-01-24
(54)【発明の名称】垂直型風力発電装置
(51)【国際特許分類】
   F03D 3/04 20060101AFI20240117BHJP
【FI】
F03D3/04 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022185397
(22)【出願日】2022-11-21
(62)【分割の表示】P 2022038133の分割
【原出願日】2022-03-11
(65)【公開番号】P2023133103
(43)【公開日】2023-09-22
【審査請求日】2022-12-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005902
【氏名又は名称】株式会社三井E&S
(74)【代理人】
【識別番号】100091306
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 友一
(74)【代理人】
【識別番号】100174609
【弁理士】
【氏名又は名称】関 博
(72)【発明者】
【氏名】大津 正樹
【審査官】松浦 久夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-163745(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0254798(US,A1)
【文献】特開2010-077946(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電機に動力伝達可能な回転軸と、
周壁に切欠きを備え、前記回転軸を内包する第1筒状部材を有するベースと、
前記第1筒状部材の外周側に配置され、前記第1筒状部材を基点として回転可能な第2筒状部材と、前記第2筒状部材の外周に放射状に配置される複数の羽根とを備えた羽根車と、
前記切欠きを介して前記羽根車の回転力を前記回転軸に伝達するアイドルギアと、を有し、
前記羽根の高さ寸法を前記羽根車の直径の寸法よりも大きくしたことを特徴とする垂直型風力発電装置。
【請求項2】
前記羽根車の外周側に配置されると共に、導入部と排出部とを有し、集風機能を備えたケーシングが設けられ、
前記導入部と前記排出部とは、前記羽根車の回転中心を基点として、羽根が風を受けて回転する側に偏るように配置されていることを特徴とする請求項1に記載の垂直型風力発電装置。
【請求項3】
前記ケーシングは、前記第1筒状部材を基点として回転可能に構成されていることを特徴とする請求項に記載の垂直型風力発電装置。
【請求項4】
前記排出部には、風向舵が備えられていることを特徴とする請求項に記載の垂直型風力発電装置。
【請求項5】
前記羽根の高さ寸法は、前記羽根車の直径の寸法の2倍以上としたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の垂直型風力発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風力発電装置に係り、特に回転軸を風向きに対して垂直に配置した垂直型の風力発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
風力発電装置には、様々な形態のものが存在するが大別すると、水平型と垂直型に分けることができる。水平型の風力発電装置は、回転軸を風の流れる方向に沿って配置するもので、代表的なものとしてはプロペラ型の風力発電装置が知られている。一方、垂直型の風力発電装置は、回転軸を風の流れる方向に直交するように、すなわち地面に対して垂直となるように配置するもので、代表的なものとしてはクロスフロー型と呼ばれる風力発電装置が知られている。
【0003】
一般的に、垂直型の風力発電装置は水平型の風力発電装置に比べて静音性に優れているものの、発電効率が悪いとされているため、発電設備として実用化されているものが少ない。そうした中で垂直型の風力発電装置における発電効率の向上を図るための技術が、特許文献1に開示されている。
【0004】
特許文献1に開示されている風力発電装置は、垂直に配置された回転軸に円筒体を固定し、この円筒体の周囲にバケット状に湾曲した羽根を複数配置した羽根車を備えた、いわゆるクロスフロー型の風力発電装置に関する技術である。特許文献1に開示されている風力発電装置では、羽根車の外周に風洞を配置し、この風洞により羽根車が一定方向に風を受けるように、正面からの風を誘導する構成としている。そして、風洞には、垂直尾翼を配置することで、風洞の入口側が常に風上を向くように構成している。
【0005】
このような構成の風力発電装置によれば、風洞に供給される風は、常に風車を一定方向に回転するように作用することとなる。このため、弱風であっても効率良く羽根車を回転させることができ、発電効率を向上させることができると考えられる。しかし、さらに大きな電力を得るためには、羽根の面積を大きくする必要があるが、羽根車の直径を大きくする場合には広い土地が必要となり、羽根の高さを高くする場合には、羽根、及び回転軸の強度に懸念が生じる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開昭52-1251号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明では、発電装置の専有面積を変える事なく、羽根車によって得られる動力を大きなものとした上で、風車全体としての強度的懸念を払拭することのできる垂直型風力発電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明に係る垂直型風力発電装置は、発電機に動力伝達可能な回転軸と、周壁に切欠きを備え、前記回転軸を内包する第1筒状部材を有するベースと、前記第1筒状部材の外周側に配置され、前記第1筒状部材を基点として回転可能な第2筒状部材と、前記第2筒状部材の外周に放射状に配置される複数の羽根とを備えた羽根車と、前記切欠きを介して前記羽根車の回転力を前記回転軸に伝達する遊星ギアと、を有し、前記羽根の高さ寸法を前記羽根車の直径の寸法よりも大きくしたことを特徴とする。
【0009】
また、上記のような特徴を有する垂直型風力発電装置には、前記羽根車の外周側に配置されると共に、前記第1筒状部材を基点として回転可能に構成される集風機能を備えたケーシングを備えるようにすると良い。このような特徴を有する事によれば、羽根車へ風を誘導することが可能となる。
【0010】
また、上記のような特徴を有する垂直型風力発電装置における前記ケーシングには、導入部と排出部とが設けられ、前記排出部には、風向舵が備えられているようにすることができる。このような特徴を有する事によれば、風向舵が風を受けることでケーシングが回転し、導入部が風上側を向くこととなる。
【0011】
また、上記のような特徴を有する垂直型風力発電装置における前記導入部には、風導板を設けるようにすると良い。このような特徴を有する事によれば、導入部に対して効率的に向かい風を導くことができるようになる。
【0012】
さらに、上記のような特徴を有する垂直型風力発電装置では、前記羽根の高さ寸法は、前記羽根車の直径の寸法の2倍以上とすることが望ましい。このような特徴を有する事により、羽根自体の面積の増加に加え、下層に比べて風速が速くなりやすい上層に羽根を置くことが可能となり、発電効率の向上を図りやすくなる。
【発明の効果】
【0013】
上記のような特徴を有する垂直型風力発電装置によれば、羽根車を構成する羽根の高さを高くすることで集風効果を高めることができ、大きな動力を得て発電効率の向上を図ることができる。また、回転軸の外周に大径とすることのできる第1筒状部材を配置したことで、軸方向の強度を確保することが可能となる。よって、風車全体としての強度が不足するという懸念を払拭することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態に係る垂直型風力発電装置の概略構成を示す断面図である。
図2】ケーシングと羽根車の平面視形状を示す断面図である。
図3】ケーシングと羽根車の配置関係を示す側面図である。
図4】インナーナルギアとアイドルギア、及びピニオンギアの関係を説明するための部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の垂直型風力発電装置に係る実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、図面において図1は、実施形態に係る垂直型風力発電装置の概略構成を示す断面図である。また、図2は、ケーシングと羽根車の平面視形状を示す断面図であり、図3は、ケーシングと羽根車の配置関係を示す側面図である。さらに、図4は、インターナルギアとアイドルギア、及びピニオンギアの関係を説明するための部分断面図である。
【0016】
[構成]
本実施形態に係る垂直型風力発電装置(以下、単に風力発電装置10と称す)は、ベース12と発電機14、羽根車16、及びケーシング18を基本として構成されている。ベース12は、詳細を後述する発電機14を内包する要素であり、本実施形態では、第1筒状部材12aとボトムケース12bとを有する。第1筒状部材12aは、発電機14に動力伝達可能な回転軸14a(図1に示す例では、発電機14の回転軸14a)を内包する要素であり、その周壁には、複数の切欠き12a1が設けられると共に、切欠き12a1に配置可能な複数(本実施形態では3つ(図4参照))のアイドルギア12cを備える。複数の切欠き12a1には、アイドルギア12cが介入され、少なくともアイドルギア12cの歯の一部が、第1筒状部材12aの外周側に突出するように構成される。このため、各切欠き12a1の周囲には、アイドルギア12cの回転軸12c1を支持するためのブラケット12a2が設けられている。
【0017】
また、第1筒状部材12aの外周には、詳細を後述する羽根車16とケーシング18が配置される。このため、第1筒状部材12aの外周には、羽根車16とケーシング18をそれぞれ回転自在に支持するための軸受12d,12e,12f,12gが設けられている。なお、各軸受12d~12gは、第1筒状部材12aの長手方向両端部近傍にそれぞれ配置することで、羽根車16とケーシング18がそれぞれ長手方向に沿って両持ち支持されることとなり、支持状態の安定化を図ることができる。ボトムケース12bは、風力発電装置10の土台となる要素であり、本実施形態では、発電機14の本体を収容している。
【0018】
発電機14は、回転軸14aを介して伝達された動力を電力に変換するための要素である。本実施形態では、上述したベース12のボトムケース12bに収容され、第1筒状部材12aに向けて回転軸14aを延設させている。回転軸14aには、ピニオンギア14bが設けられている。ピニオンギア14bは、第1筒状部材12aに設けられたアイドルギア12cと噛み合うように、その配置高さが調整されている。このような構成とすることで、アイドルギア12cが回転することで、回転軸14aが回転し、発電機14が機能することとなる。
【0019】
羽根車16は、第2筒状部材16aと、羽根16bとを基本として構成されている。第2筒状部材16aは、軸受12d,12eを介して第1筒状部材12aの外周側に配置されることとなる回転筒である。第2筒状部材16aの内周面には、第1筒状部材12aに設けられたアイドルギア12cと噛み合う位置に、インターナルギア16a1が設けられている。
【0020】
羽根16bは、第2筒状部材16aの外周面に複数、放射状を成すように均等配置されている。本実施形態に係る羽根16bは、図2に平面視形状を示すように、円弧状の湾曲を成し、一定方向の風による力が受けやすくなるように構成されている。また、図1で示す例では、羽根16bの上端部と下端部にそれぞれ端板16b1を設けるようにすることで、長尺となる羽根16bのよじれや強度不足を補うようにしている。しかしながら、素材の選択や厚みの調整により、羽根16bの強度が十分である場合には、端板16b1を設ける必要は無い。ここで、羽根16bの長手方向長さ寸法は、羽根車16の直径の寸法の2倍以上とすることが望ましい。地上を基点として上空を流れる風は、地表付近に比べて風速が速くなりやすい。このため、このような構成とすることで、羽根16bの面積増大を図ることができると共に、羽根16bに対して風速の速い風(強い風)を当てることができ、羽根車16に大きな動力を与えることが可能となる。
【0021】
ケーシング18は、羽根車16を覆い、羽根車16へ風を誘導するように集風する役割を担う。ケーシング18は、ほぼ円筒状の側壁18aとこの側壁18aの上下に配された端板18bとを有し、軸受12f,12gを介して第1筒状部材12aに支持されている。側壁18aには、風上側に配置され、向かい風をケーシング18内に導く開口である導入部18a1と、ケーシング18内に導入された風を排出する開口である排出部18a2とが設けられている。
【0022】
ここで、導入部18a1と排出部18a2は、羽根車16の中心を基点として、羽根16bが湾曲している側、すなわち羽根16bが風を受けて回転する側に偏るように配置している。このような構成とすることで、風を受けた際に羽根車16の回転に寄与する側の羽根16bにのみ、向かい風を当てる事が可能となり、風の力を羽根車16の回転に効率的に寄与させることができるようになる。また、導入部18a1には、開口へ風を導くための風導板18cが設けられている。このような構成とすることで、より多くの風を導入部18a1へ導くことが可能となり、羽根車16を回転させる力を高めることができるからである。
【0023】
またケーシング18には、風向舵18dが設けられている。風向舵18dは排出部18a2の近傍に設けられており、風向舵18dに風が当たる事でケーシング18が回転し、導入部18a1が風上側へ向くこととなる。
【0024】
[作用]
上記のような構成の風力発電装置10では、次のようにして電力が生成される。まず、風力発電装置10に風が当たると、風向舵18dの作用によりケーシング18が矢印Bで示すいずれかの方向に回転し、導入部18a1が風上側へ向くこととなる。導入部18a1が風上側へ向くと、導入部18a1から向かい風がケーシング18内に導入される。ケーシング18内に導入された風には、排出部18a2から排出される流れが生じるため、羽根車16が矢印Aで示す方向に回転する。
【0025】
羽根車16が回転すると、第2筒状部材16aの内周面に設けられたインターナルギア16a1が第1筒状部材12aに設けられた複数のアイドルギア12cを回転させる。そして、複数のアイドルギア12cがピニオンギア14bを回転させることで、発電機14の回転軸14aを回転させ、発電機14による電力を発生させる。
【0026】
[効果]
実施形態に係る風力発電装置10では、回転軸14aの外周側に第1筒状部材12aを配置し、この第1筒状部材12aで羽根16bや羽根車16に課される負荷を受けるようにしているため、羽根の高さを高くした場合であっても、風力発電装置10の強度を確保することができる。また、遊星ギアを介して羽根車16の回転力を回転軸14aに伝達する構成としたことで、第1筒状部材12aを回転体とすることなく回転の伝達が可能となった。また、1つのピニオンギア14bに対して複数のアイドルギア12cを噛み合わせる構成としているため、ピニオンギア14bを回転させるために必要とされるトルクが分配されることとなる。
【0027】
また、実施形態に係る風力発電装置10では、羽根車16を構成する羽根16bの高さ寸法を、羽根車16の直径の寸法の2倍以上とすることで、風を受ける面積を大きくしている。このため、風の力が弱い場合であっても、羽根車16に大きな回転力を与えることが可能となる。このため、発電機14の容量を大きくした場合であっても、これを稼働させることが可能となる。また、羽根の高さを高く(高さ寸法を大きく)することで、羽根の面積を確保しているため、風力発電装置10の占有面積(土地面積)を変える事無く大きな電力を得る事ができるようになる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
なお、上記実施形態では、回転軸14aが直接発電機14に接続されているが、ギアなどを介して発電機14に動力を伝達させる構成としても良い。
【0029】
また、上記実施形態では、端板16b1を羽根16bの上下端に設けることで羽根16bを長尺とした場合に、そのよじれや強度不足を補う旨記載している。しかしながら、端板16b1に替えて、あるいは端板16b1と共に、羽根の高さ方向の一箇所、乃至複数箇所に補強板を設けるようにしても良い。
【符号の説明】
【0030】
10………風力発電装置、12………ベース、12a………第1筒状部材、12a1………切欠き、12a2………ブラケット、12b………ボトムケース、12c………アイドルギア、12c1………回転軸、12d,12e,12f,12g………軸受、14………発電機、14a………回転軸、14b………ピニオンギア、16………羽根車、16a………第2筒状部材、16a1………インターナルギア、16b………羽根、16b1………端板、18………ケーシング、18a………側壁、18a1………導入部、18a2………排出部、18b………端板、18c………風導板、18d………風向舵。
図1
図2
図3
図4