(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-17
(45)【発行日】2024-01-25
(54)【発明の名称】照明装置およびその制御方法
(51)【国際特許分類】
F21S 2/00 20160101AFI20240118BHJP
F21V 7/09 20060101ALI20240118BHJP
F21V 9/14 20060101ALI20240118BHJP
F21V 23/00 20150101ALI20240118BHJP
F21V 9/08 20180101ALI20240118BHJP
F21S 8/04 20060101ALI20240118BHJP
G02B 5/30 20060101ALI20240118BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20240118BHJP
【FI】
F21S2/00 350
F21V7/09 100
F21V9/14
F21V23/00 115
F21V23/00 140
F21V9/08 400
F21S8/04 100
F21S2/00 390
F21S2/00 340
G02B5/30
F21Y115:10
F21Y115:10 300
(21)【出願番号】P 2019232825
(22)【出願日】2019-12-24
【審査請求日】2022-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102934
【氏名又は名称】今井 彰
(72)【発明者】
【氏名】北原 和
(72)【発明者】
【氏名】有賀 貴紀
【審査官】安食 泰秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-066625(JP,A)
【文献】国際公開第2016/072503(WO,A1)
【文献】特開2004-102132(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 2/00
F21V 7/09
F21V 9/14
F21V 23/00
F21V 9/08
F21S 8/04
G02B 5/30
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光軸に対する配光角により光度が変化し、前記光軸の周りに対称な分布を備えた第1の光を、前記光軸に沿って断続的に配置された、前記光軸に垂直な断面がほぼ円弧状の複数の反射面により、前記第1の光の前記光軸の周りに対称な分布の成分を前記配光角により複数の光束に分けて前記光軸に垂直な方向に変換して照明光として出力するように構成された光学装置と、
前記照明光の強度を、前記光軸に平行な複数の線または面の単位で制御する透過制御機構と、を有する照明装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記光学装置は、前記円弧状の複数の反射面により前記複数の光束のそれぞれをライン状または方形状に引き延ばすように反射し、前記光軸に平行な第1の方向の第1の距離に対して、前記光軸に対して垂直な第2の方向の第2の距離が長い領域を照明する前記照明光を出力するように構成されている、照明装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記光学装置は、前記円弧状の複数の反射面のそれぞれにより前記ライン状または方形状の幅方向の光度を制御して、幅方向の光度分布が均等な前記照明光を出力するように構成されている、照明装置。
【請求項4】
請求項2または3において、
前記透過制御機構は、前記照明光の強度を前記第2の方向に分断された前記複数の線または面の単位で制御する、照明装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか一項において、
前記透過制御機構は、前記照明光の強度を前記複数の線または面の単位でオンオフ制御する、照明装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか一項において、
前記透過制御機構は、液晶シャッターを含む、照明装置。
【請求項7】
請求項6において、
前記液晶シャッターと前記光学装置との間に配置された偏光変換素子をさらに有する、照明装置。
【請求項8】
請求項
1ないし7のいずれか一項において、
前記照明光により照明される領域を通過する人または顔の位置を検出する検出装置からの情報に基づき、前記透過制御機構を制御する制御装置をさらに有する、照明装置。
【請求項9】
光軸に対する配光角により光度が変化し、前記光軸の周りに対称な分布を備えた第1の光を、前記光軸に沿って断続的に配置された、前記光軸に垂直な断面がほぼ円弧状の複数の反射面により、前記第1の光の前記光軸の周りに対称な分布の成分を前記配光角により複数の光束に分けて前記光軸に垂直な方向に変換して照明光として出力するように構成された光学装置と、
前記光学装置の前面に配置された前記照明光の透過強度を制御する透過制御機構と、
前記透過制御機構の前記照明光の透過強度を、前記光軸に平行な複数の線または面の単位で制御する制御装置と、を有する照明装置。
【請求項10】
請求項
9において、
前記制御装置は、前記照明光により照明される領域を通過する人または顔の位置を検出する検出装置からの情報に基づき、前記照明光の透過強度を制御する、照明装置。
【請求項11】
請求項
8または10において、
前記検出装置を有する、照明装置。
【請求項12】
光軸に対する配光角により光度が変化し、前記光軸の周りに対称な分布を備えた第1の光を、前記光軸に沿って断続的に配置された、前記光軸に垂直な断面がほぼ円弧状の複数の反射面により、前記第1の光の前記光軸の周りに対称な分布の成分を前記配光角により複数の光束に分けて前記光軸に垂直な方向に変換して照明光として出力するように構成された光学装置と、
前記光学装置の前面に配置された前記照明光の透過強度を制御する透過制御機構と、を有する照明装置の制御方法であって、
前記透過制御機構の前記照明光の透過強度を、前記光軸に平行な複数の線または面の単位で制御すること、を有する制御方法。
【請求項13】
請求項
12において
前記制御することは、前記照明光により照明される領域を通過する人または顔の位置に対応する前記照明光の透過強度を制御すること、を含む、制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明装置およびその制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、長い線状の照射範囲を少数の光源モジュールによって形成することができる照明装置を提供することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
廊下などの細長い領域を数少ない光源からの光で照明する場合、その領域を通過する人が光源からの光を眩しく感じる可能性がある。特に、光源からの光が、細長い領域に即した形状に照射範囲を限定された、指向性の強い照明装置は、照明が必要とされる領域に限定して照明を行うことができる。このために、効率がよく、また、本来照明を必要としない領域に対する影響を最小限にできるというメリットがある。一方、指向性が高い照明装置は、照明される領域を人が通過する際のグレアを低減できることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、光軸の周りに対称な分布を備えた第1の光を光軸に垂直な方向に変換して照明光として出力する光学装置と、照明光の強度を、光軸に平行な複数の線または面の単位で制御する透過制御機構とを有する照明装置である。
【0006】
本発明の他の態様の一つは、光軸の周りに対称な分布を備えた第1の光を光軸に垂直な方向に変換して照明光として出力する光学装置と、光学装置の前面に配置された照明光の透過強度を制御する透過制御機構とを有する照明装置の制御方法であって、透過制御機構の照明光の透過強度を、光軸に平行な複数の線または面の単位で制御することを有する制御方法である。
【発明の効果】
【0007】
この照明装置および制御方法によれば、照明光により照明される領域を通過する人または顔の位置に対応する照明光の透過強度を制御することが可能であり、グレアレスの照明装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】照明装置を天井に取り付けた状態を示す平面図。
【
図5】LED光源の強度分布(
図5(a))および光学装置の概略構成を示す断面図(
図5(b))。
【
図6】光学装置により廊下を照明した状態を示す図。
【
図7】照明装置により廊下を照明した状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1に、本実施形態に係る照明装置の一例を示している。この照明装置1は、廊下などの方形状またはライン状の領域(照明対象領域)2を照明するように制御された光(照明光)3を前方19に出力する光学装置10と、照明光3の透過状態を制御する透過制御機構50と、透過制御機構50を介して照明対象領域2に対する照明光3の到達状態を部分的に制御する制御装置60と、照明対象領域2に入った人(通行人)を検出する人感センサー68とを有する。
【0010】
図2に、廊下を照明対象領域2とする照明装置1を天井9に取り付けた状態を示している。また、
図3に、透過制御機構50が、照明光3の透過を長手方向(Y方向)に分割された複数の領域51により制御する様子を示している。透過制御機構50の一例は液晶シャッター55であるが、照明光3が通過する領域を長手方向(Y方向)に分割してオンオフすることができる機械式のシャッターであってもよい。
図2に示すように、照明装置1は、天井9に取り付けられることにより、廊下などの方形状、またはライン状の細長い領域となる照明対象領域2を集中して照明することができる。
【0011】
光学装置10は、中心となる光軸(Z軸)12の周り18に円弧状に広がった、平面視(Z軸12に直交するX-Y平面で見た形状)が略扇形の柱状、ロッド状あるいはシリンドリカルレンズ状の透光性部材(光学素子)11と、光学素子11の一方の端面から第1の光7を入射するLED6とを含み、光軸12の周りに対称な分布を備えた第1の光を光軸12に垂直な方向(Z軸12に垂直な方向、X方向、前方19)に変換して照明光3として出力し、Y方向に長い照明対象領域2を照明する。すなわち、この光学装置10により、光軸に平行な第1の方向(Z軸12の方向)の第1の距離L1に対して、光軸に対して垂直な第2の方向(Y方向)の第2の距離L2が長い照明対象領域2を照明する照明光3を得ることができる。光学装置10は、平面視が略扇形で柱状に、扇形の中心となるZ軸12に沿って延びた透光性部材11と、透光性部材11を挟むように配置された反射部材21および22とを含む。LED6はフレームインサートタイプの樹脂パッケージ、ガラスエポキシ樹脂パッケージ、セラミックパッケージ、金属パッケージなどのLEDの他、柔軟性のないリジット基板、柔軟性のあるフレキシブル基板(可撓性基板)、さらには、これらを組み合わせたリジットフレキシブル基板などを用いた、COB(chip on board)やCOF(chip on film)を用いてもよい。
【0012】
図4に、光学装置10の概略構成を展開して示している。光学装置10は、中心軸となるZ軸12の周りに、Z軸12と直交する平面(X-Y平面)で見た形状(平面視)が角度θ(中心角θ、開き角θ)で広がった略扇形で、透光性の部材、例えば、アクリル樹脂あるいはガラスなどから構成された透光性部材(光学素子)11を含む。光学素子11は、全体がZ軸12に沿って延びた柱状で、Z軸12の側(内側)は、Z軸12の一方の端(底面側、Z軸マイナス方向)が開口13となった空洞14となり、反対側の投射側(前方、外側)19の面(出射面)15は略円弧状となっている。光学装置10は、さらに、光学素子11を挟むように配置された反射部材21および22を含む。反射部材21および22は、光学素子11に面した側に反射面23および24を含む。反射面23および24は、Z軸12で交差し、光学素子11を挟み込むように配置されている。
【0013】
光学素子11の空洞14は、内面が、開口13の側から、Z軸12に沿って透過面と反射面とが交互に配置された多段となっている。すなわち、光学素子11は、内側に、開口13と逆側から開口13に向かって、すなわち、Z軸12のプラス側(第1の光7の入射側と反対側)からマイナス側(第1の光7の入射側)に向かって、段階的に配置された同心円弧状の扇形の複数の透過面32と、これらの透過面32により複数に分割された円弧状の反射面31とを有する。反射面31は、Z軸12に沿って、X-Y平面に対して鋭角に傾くように広がっており、透過面32は、Z軸12のプラス側からマイナス側に向かって、段階的に内径が拡大するように順番に配置された同心円弧状の扇形の複数の透過面である。
【0014】
具体的には、本例の光学素子11は、開口13と逆側(上側、Z軸プラス方向)から開口13に向かって、すなわち、Z軸12のプラス側からマイナス側に向かって、Z軸12に垂直で、X-Y平面に平行な6つの透過面(第1~第6の透過面)32a~32fと、それらにより分割された6つの反射面(第4~第9の反射面)31a~31fとを含む。光学素子11は、さらに、最も開口13の側に、Z軸12の周りに形成された円弧状の透過性の面33を含む。
【0015】
光学素子11の外面15はシリンドリカル面であってもよく、反射面31a~31fおよび透過面33に対応して、形成された曲面を備えていてもよい。例えば、外面15は、反射面31a~31fにより反射された光および透過面33を透過した光をより均等に出力するようにトーリック面状の自由曲面として最適化されていてもよい。
【0016】
光学装置10は、平面視が略扇形のシリンドリカルレンズ状の光学素子11の側面17aおよび17bに、反射部材21および22が、それぞれの反射面23および24が密着するように取り付けられている。この光学装置10においては、開口13に取り付けられた基板6aに装着されたLED6から、Z軸12に沿って、Z軸12と平行になるように第1の光7が入射される。分断された反射面31a~31fにより構成される反射面31は、Z軸12に平行な光軸7a(
図5参照)を備えた配光特性の第1の光7を、Z軸12の周り18の中心角θの範囲に反射する。反射面23は、Z軸12の周り18に、光源6からの第1の光7を反射面31の方向に反射し、反射面24は、反射面23とはZ軸12の周り18に逆方向にLED6からの第1の光7を反射する。
【0017】
したがって、光学装置10は、光源であるLED6から、Z軸12に沿って出射された第1の光7を、Z軸12において中心角θで交差する反射面23および反射面24で、角度θの範囲の、光学素子11の反射面31の方向に相互に反射する(折り畳む)。光学装置10は、さらに、複数の分割された反射面31により、Z軸12と垂直な方向に、Z軸12の周りの角度θの範囲に反射された照明光3を出力する。反射面23および反射面24は、LED6からの第1の光7を、角度θの範囲に畳み込めるように配置されていればよく、LED6の近傍に少なくとも配置されていればよい。
【0018】
図5に、光学装置10の光学素子11により、Z軸12に沿って入射されたLED光(入射光)7が、反射面31により反射され、Z軸12と直交する方向19に出射される様子を模式的に示している。
図5(a)に示すように、LED(光源)6から出力された第1の光7は、光軸7aを中心とするランバーシアン配光分布を備えている。この第1の光7の光軸7aの周りの成分は、反射面23および反射面24により中心角θの扇形の光学素子11の方向に反射される。また、この第1の光7の光軸7aに対する配光角φの成分は、
図5(b)に示すように、光学素子11の複数の透過面32a~32fと、複数に分割された反射面31a~31fにより複数のグループ(光束)に分けられて、それぞれの光束が光軸7aと直交する方向19に出力される。さらに、LED6から出力された第1の光7の配光角φが大きい成分は、光学素子11の開口13の近傍の透過面33を介して光軸7aと直交する方向19に出力される。
【0019】
したがって、この光学装置10は、反射面31、反射面23および反射面24により、ランバーシアン配光を備えた第1の光7を、光軸7aに対して直交する方向19に円弧状に反射して、ライン状または方形状の領域を照明するのに適した配光を備えた照明光3に変換できる。さらに、反射面31により、光軸7aと直交する方向19に反射して、第1の光7を光軸7aと直交する方向に変換することにより、光軸7aの周りに配光角φで光度が変化するランバーシアン配光の光度が共通する部分を、ライン状または方形状の配光の端から端まで引き延ばすことが可能である。例えば、光軸7a上の最も光度の高い光(光束)をライン状または方形状の配光の端から端まで引き延ばすことが可能である。また、このため、反射面31の曲率または傾きを制御し、ライン状または方形状の幅方向の光度を制御することにより、光度分布がより均等に近いライン状または方形状の配光を得ることができる。
【0020】
なお、本例の光学装置10の光学素子11は、第1の光7が入射されるZ軸12の方向に分割された、Z軸12に垂直な断面がほぼ円弧状の複数の反射面31a~31fを透光性の素材を用いて構成しているが、光学装置10は、光軸7aまたは平行なZ軸12に沿って断続的に配置された、光軸に垂直な断面がほぼ円弧状の複数の反射面を含むものであればよく、ロート状に加工された複数の反射面を有するミラーをZ軸12に沿って配置することにより構成してもよい。この光学装置10は、光軸7aに平行な第1の方向(Z軸12の方向)の第1の距離に対して、光軸に対して垂直な第2の方向(Y方向)の第2の距離が長い照明対象領域2を照明する照明光3を出力することができる。なお、光学装置10において、光源であるLED6をZ軸12で交わる反射面23および24の内側に配置する都合上、LED6の光軸7aと、Z軸12とは完全には一致しない。しかしながら、光軸7aとZ軸12との位置の差は、基本的にはLED6のサイズ程度の微差であり、以降では、光軸7aとZ軸12とは一致しているものとして説明する。
【0021】
図6に、光学装置10によりY方向に細長い照明対象領域2として廊下5を照明したときの状態を示している。廊下5を通行している光学装置10から出力される照明光3は、点光源であるLED6からの第1の光7を、光軸7aと平行なまたは一致するZ軸12に対して垂直なX方向(前方19)に変換して出力する際に、光軸12の方向の広がりを限定して、光軸7aと平行なZ軸12に垂直なY方向に延ばした照明光3である。このため、光学装置10からの照明光3は、Y方向、すなわち、長手方向に指向性が高く、照明光3の照明対象である廊下5を光学装置10に向かって通行する人70の瞳に照明光3が入りやすく、通行人70は、グレアを感じやすい。
【0022】
図7に、照明装置1により廊下5を照明したときの状態を示している。照明装置1は、光軸7aの周りに対称な分布を備えた第1の光を光軸7aと平行または一致するZ軸12に垂直な方向に変換して照明光3として出力する光学装置10と、照明光3の強度を、光軸7aと一致するまたは平行なZ軸12に平行な複数の線または面の単位で制御する透過制御機構50とを有する。透過制御機構50は、
図8に示すように、照明光3の強度を、光軸7aと平行なまたは一致するZ軸12に平行な方向(Z方向)に対し垂直な第2の方向(長手方向、Y方向)に分断された複数の線または面の単位51で制御する機能を含む。透過制御機構50は、照明光3の強度を複数の線または面の単位51でオンオフ制御を備えていてもよい。透過制御機構50の一例は、液晶シャッター55であってもよい。
【0023】
照明装置1は、さらに、照明光3により照明される照明対象領域2、本例では廊下5を通過する人70または顔71の位置を検出する検出装置(人感センサー)68と、その検出装置68からの情報に基づき、透過制御機構50により照明光3の透過強度(透過量)を制御する制御装置60とを含む。制御装置60は、透過制御機構50により、照明光3の強度を、Z軸12に平行なZ方向に延びた複数の線または面の単位51で制御する。
【0024】
図8に、透過制御機構50である液晶シャッター55により照明光3の透過強度を制御する例を示している。この透過制御機構50は、透過型の液晶パネルで構成された液晶シャッター55であり、検出装置68により検出された人70の顔71に相当する長手方向(Y方向)の位置に、Z方向に延びた、方形状の黒い模様(画像)51aを形成し、照明光3を遮断する。黒い方形の画像51aは、透過制御機構50の中で、廊下5を通過する人70の顔71の位置と、光軸7aと平行または一致するZ軸12とを結んだ直線を横切るように形成される。また、その画像51aの前後に多段階の灰色(グレースケール)の画像51bを形成し、照明光3の透過強度(透過量)を徐々に減らしている。このようなグレースケールの画像51bを形成することにより、顔71の位置がずれた場合などであっても、廊下5を通行する人70がグレアを感じにくく、その一方で、周囲の明るさを確保できる。したがって、グレアレスの照明装置1を提供できる。
【0025】
液晶シャッター55の制御方法は本例に限定されることはなく、通行する人70の顔71に向けた照明光3を遮る、または強度を低下する模様が形成されればよく、顔71に対応する位置を含む比較的広い範囲に、灰色の画像を形成してもよく、顔71に対応する位置を含む狭い範囲のみに、黒い画像を形成してもよい。
【0026】
また、廊下5を通行する人70の位置を検出する装置68は照明装置1に内蔵されていなくてもよい。検出装置68として、複数の人感センサーが廊下5に沿って壁あるいは天井に配置されていてもよく、複数の人感センサーが廊下5に内蔵されていてもよい。検出装置68は、赤外線などにより人体を検出する装置であってもよく、画像処理により人70および顔71の位置を検出する装置であってもよい。さらに、検出装置68は顔認証などにより、顔71が向いている方向を検出できる装置であってもよい。制御装置60は、顔71の向きにより、照明装置1に向かって歩いている人70に対してのみ、液晶シャッター55を用いて照明光3の一部を減光またはカットし、照明装置1に対して後ろを向いた人70に対しては照明光3をカットまたは減光しないように照明装置1を制御してもよい。
【0027】
図9に、照明装置1の制御方法の一例を示している。ステップ101において、照明装置1により廊下5の照明を開始する。ステップ102において、
図7に示す検出装置68により、廊下5を通過する人(通行人)70を検出すると、ステップ103において、制御装置60を介して液晶シャッター55により、照明光3の透過強度を、光軸(Z軸)に平行なZ方向に延びた複数の線または面の単位で制御する。具体的には、ステップ103において、照明光3により照明される照明対象領域2である廊下5を通過する人70または顔71の位置に対応する照明光3の透過強度を制御する。液晶シャッター55により照明光3の一部をカットしてもよく、減光してもよい。ステップ102において通行人70を検出しない場合は、ステップ104において、液晶シャッター55を全開にして廊下5の全体を照明する。
【0028】
図10に、照明装置の異なる例を示している。この照明装置1は、上記に開示した光学装置10と、透過制御機構50である液晶シャッター55と、光学装置10と液晶シャッター55との間に配置された偏光変換素子80とを含む。偏光変換素子(PCS、Polarization Converting System)は、非偏光光源から出射する光をP偏光またはS偏光に変換する光学素子であり、偏光を利用する光学機器、例えば、液晶シャッター55における光利用効率を向上できる。したがって、より明るい照明装置1を得ることができる。光学装置10は、光軸7aの周りに対称な分布を備えた第1の光を光軸7aと平行または一致するZ軸12に垂直な方向に変換して照明光3として出力する。したがって、偏光変換素子80は、照明光3に直交するように、Z軸12の周りに湾曲するように配置してもよい。具体的には、光学装置10の光学素子11の湾曲した出射曲面に沿うように、湾曲した偏光変換素子80を配置してもよい。
【符号の説明】
【0029】
1 照明装置、 10 光学装置、 50 透過制御機構、 55 液晶シャッター