(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-17
(45)【発行日】2024-01-25
(54)【発明の名称】グロメット
(51)【国際特許分類】
H02G 3/22 20060101AFI20240118BHJP
H01B 17/58 20060101ALI20240118BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
H02G3/22
H01B17/58 C
B60R16/02 622
(21)【出願番号】P 2021055334
(22)【出願日】2021-03-29
【審査請求日】2022-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】奥林 良介
(72)【発明者】
【氏名】金次 良高
(72)【発明者】
【氏名】内堀 正紀
(72)【発明者】
【氏名】丸岡 武志
【審査官】東 昌秋
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-180106(JP,A)
【文献】特公平3-19110(JP,B2)
【文献】特開2001-157344(JP,A)
【文献】特開2002-101532(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/22-3/40
H01B 17/58
B60R 16/02
F16L 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体パネルのパネル孔に挿入されて、当該車体パネルに取り付けられるグロメットであって、
ケーブルが挿入される略筒状の挿入筒部と、
前記挿入筒部の中間部分において、前記パネル孔への挿入方向から視て放射方向の径外側に拡がるとともに、前記車体パネルへの装着状態において、前記挿入方向に跨いで前記パネル孔に装着される略円盤状の円盤部とで構成され、
前記円盤部は、
前記挿入方向から視て略円形状に構成され、
前記挿入方向の先端側である挿入先端側に配置され、前記挿入筒部より大径且つ前記パネル孔より小径な挿入先端部を備え、
前記挿入先端部には、
前記挿入筒部の前記放射方向の径外側に、前記挿入方向の後端側である挿入後端側に向けて凹状に形成された複数の肉抜き部と、
隣接する前記肉抜き部との間で前記放射方向に沿った第1補強部とが交互に設けられ、
前記肉抜き部には、前記放射方向の径外側と径内側とを連結する、前記第1補強部よりも、
前記放射方向及び前記挿入方向と直交する周方向の厚みが薄い第2補強部が設けられ、
前記第1補強部は、前記放射方向の径外側に向かうに伴い、前記周方向に沿った厚みである板厚が厚くなる
グロメット。
【請求項2】
前記第1補強部と前記第2補強部とが交互に配置された
請求項1に記載のグロメット。
【請求項3】
前記第2補強部は、
前記周方向に沿った厚みである板厚が一定に構成された
請求項1又は請求項2に記載のグロメット。
【請求項4】
前記肉抜き部は、前記放射方向の径外側に向かうに伴い、前記第1補強部と前記第2補強部との間隔が拡がるように構成された
請求項1乃至請求項3のうちのいずれかに記載のグロメット。
【請求項5】
前記肉抜き部の前記挿入後端側は、前記放射方向の径外側に向かうに伴い、前記挿入先端側に向けて傾斜する
請求項1乃至請求項4のうちのいずれかに記載のグロメット。
【請求項6】
前記第1補強部が、偶数配置された
請求項1乃至請求項5のうちのいずれかに記載のグロメット。
【請求項7】
前記挿入筒部は、前記挿入先端側に延出する一対の先端側筒部と、前記挿入後端側に延出する後端側筒部とで構成され、
前記先端側筒部は、前記挿入方向から視て互いに対向するとともに、前記第1補強部に対応する位置に配置された
請求項6に記載のグロメット。
【請求項8】
前記挿入方向から視て、前記先端側筒部
の前記周方向における中央部分と、前記第1補強部
における前記周方向の中央部分とが一致する
請求項7に記載のグロメット。
【請求項9】
一対の前記先端側筒部は、前記挿入方向から視て、前記第1補強部と、前記第1補強部と対向する前記第1補強部との間に設けられた
請求項7又は請求項8に記載のグロメット。
【請求項10】
前記挿入方向から視て、前記先端側筒部における両端と対応する位置に、前記第1補強部が配置された
請求項7乃至請求項9のうちのいずれかに記載のグロメット。
【請求項11】
前記肉抜き部に、他のケーブルを挿通させる補助挿入筒部が設けられた
請求項1乃至請求項10のうちのいずれかに記載のグロメット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば車体パネルのパネル孔に挿入されて、当該車体パネルに取り付けられるグロメットに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、車体パネルのパネル孔にワイヤーハーネスなどのケーブルを挿通する場合、ケーブルの保護及びパネル孔を通じた漏水などを防止する目的で、グロメットが用いられている。具体的には、ケーブルを挿通させたグロメットをパネル孔に装着することで、グロメットで保護されたケーブルをパネル孔に挿通させつつ、パネル孔を通じた漏水などを防止できる。このため、グロメットは、パネル孔から脱落しがたい構造とすることが望ましい。
【0003】
パネル孔に用いるグロメットとして、例えば、ケーブルが挿入される略筒状の挿入筒部の径外側に、パネル孔の貫通方向にパネル孔を跨いで車体パネルに装着される略円盤状の円盤部が設けられたグロメットが特許文献1に開示されている。
【0004】
この特許文献1のグロメットでは、円盤部として、先端からパネル孔の径より大径の拡径部分まで徐々に拡径されるテーパー部と、パネル孔の径と略同径であり、パネル孔の縁部を収容する収容溝部と、パネル孔の径より大径で、且つ、車体パネルへの装着状態において車体パネルより一方側に配置される大径部とが、他方側から一方側に向かってこの順で配置されている。
【0005】
このように構成されたグロメットをパネル孔に挿入する場合、他方側からパネル孔に挿通し、パネル孔の縁部に当接したテーパー部を変形させながら、パネル孔の縁部が収容溝部に収容されるまでグロメットを一方側に押し込む。このようにパネル孔の縁部を収容溝部に収容することにより、パネル孔の径より大径であるテーパー部の拡径部分と大径部のそれぞれが抜け留めとして機能し、パネル孔からグロメットが不用意に脱落することを防止できる。
【0006】
ところで、近年、燃費向上の観点などから、自動車を構成する各種部品の軽量化が細部にまで求められ、当然に、ケーブルの保護及びパネル孔を通じた漏水などの防止を目的としたグロメットについても軽量化の要求があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述の問題に鑑み、軽量化を図ることができるグロメットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、車体パネルのパネル孔に挿入されて、当該車体パネルに取り付けられるグロメットであって、ケーブルが挿入される略筒状の挿入筒部と、前記挿入筒部の中間部分において、前記パネル孔への挿入方向から視て放射方向の径外側に拡がるとともに、前記車体パネルへの装着状態において、前記挿入方向に跨いで前記パネル孔に装着される略円盤状の円盤部とで構成され、前記円盤部は、前記挿入方向から視て略円形状に構成され、前記挿入方向の先端側である挿入先端側に配置され、前記挿入筒部より大径且つ前記パネル孔より小径な挿入先端部を備え、前記挿入先端部には、前記挿入筒部の前記放射方向の径外側に、前記挿入方向の後端側である挿入後端側に向けて凹状に形成された複数の肉抜き部と、隣接する前記肉抜き部との間で前記放射方向に沿った第1補強部とが交互に設けられ、前記肉抜き部には、前記放射方向の径外側と径内側とを連結する、前記第1補強部よりも、前記放射方向及び前記挿入方向と直交する周方向の厚みが薄い第2補強部が設けられ、前記第1補強部は、前記放射方向の径外側に向かうに伴い、前記周方向に沿った厚みである板厚が厚くなるグロメットであることを特徴とする。
【0010】
前記ケーブルは、電気機器類を電気的に接続する電線や、複数の前記電線を束ねて構成されたワイヤーハーネス、通信用のケーブルなどを含む。
前記第1補強部は、周方向に対して偶数あるいは奇数設けられていてもよい。また、前記第1補強部は、等間隔あるいは適宜の間隔を隔てて設けられる場合を含む。
【0011】
前記第2補強部は、隣り合う前記第1補強部の間に複数設けられていてもよい。
上述の前記放射方向に沿ったとは、挿入方向から視て第1補強部が放射方向外側に向けて延出していることをさし、例えば、第1補強部の板厚が放射方向に沿って一定である場合や、放射方向に沿って変化している場合を含む。なお、上述の前記放射方向に沿ったとは、下記効果を奏する範囲で、放射方向から傾斜する方向も含むものとする。
【0012】
この発明によると、挿入後端側に向けて凹状に窪ませて形成された複数の肉抜き部が挿入先端部に設けられるため、円盤部の空隙を増加させることができる。したがって、グロメットの軽量化を図ることができる。
【0013】
また、肉抜き部を設けることにより剛性が低下した円盤部に対して、放射方向に沿った第1補強部を周方向に隣接する肉抜き部の間に設けることにより、円盤部の剛性を向上させることができる。これにより、円盤部をパネル孔に対して挿入する場合に、円盤部が過度に変形することを防止でき、挿入方向から視て円盤部を略円形状に保つことができる。
また、パネル孔に対してグロメットを挿入する際に作用させる挿入力を第1補強部を介して円盤部の外径側に確実に伝達できるため、パネル孔にグロメットを容易かつ確実に装着することができる。
【0014】
さらにまた、隣接する第1補強部よりも板厚を薄くした第2補強部を隣接する第1補強部の間に設けることにより、パネル孔に対する挿入時には肉抜き部を適度に変形させ、パネル孔にグロメットが装着された装着状態において、グロメットの挿入筒部を挿通する電線を介して意図しない外力が作用した場合には、第2補強部が外力に抗して肉抜き部の変形を抑制することができる。したがって、パネル孔に対するグロメットの装着性を低下させることなく、パネル孔からの意図しないグロメットの脱落を防止できる。
【0015】
また、前記第1補強部は、前記放射方向の径外側に向かうに伴い板厚が厚くなっている。これにより、挿入方向から視て円形状に構成された円盤部の径外側において上述の高剛性部分を周方向に拡がるように形成することができる。このため、装着状態において、グロメットに意図しない外力が作用したとしても、グロメットの変形をより確実に防止でき、グロメットの脱落を確実に防止できる。
【0016】
さらに、第1補強部の径外方向への拡がりが放射方向に沿っている場合には、パネル孔に対してグロメットを挿入する場合において、効率よく挿入力を円盤部の径外側に伝達することができる。これにより、より容易にグロメットをパネル孔に挿入することができる。
【0017】
この発明の態様として、前記第1補強部と前記第2補強部とが交互に配置されてもよい。
この発明により、第1補強部に対応した剛性の高い高剛性部分と、肉抜き部に対応した剛性の低い低剛性部分と、第2補強部に対応した中程度の剛性を有する中剛性部分を周方向に沿って、所定の並びで配置することができる。すなわち、高剛性部分と低剛性部分と中剛性部分とを周期的に配置でき、変形しやすい箇所と変形しにくい箇所とを全体としてバランスよく配置したグロメットとすることができる。したがって、パネル孔に対してグロメットの挿入しやすさと、パネル孔に対して装着されたグロメットの意図しない脱落の防止をバランスよく設定することができる。
【0018】
またこの発明の態様として、前記第2補強部は、前記周方向に沿った厚みである板厚が一定に構成されてもよい。
この発明によると、第2補強部の断面強度が変化しないため、グロメットをパネル孔に装着した状態において意図しない外力が作用した場合に、第2補強部に局所的な変形が生じず、第2補強部全体として外力に抗することができる。これにより、意図しない円盤部の変形をより防止でき、グロメットの脱落をより確実に防止できる。
【0019】
またこの発明の態様として、前記肉抜き部は、前記放射方向の径外側に向かうに伴い、前記第1補強部と前記第2補強部との間隔が拡がるように構成されてもよい。
この発明により、パネル孔に対するグロメットの挿入しやすさや、パネル孔に装着されたグロメットの意図しない脱落に影響なく、肉抜き部の空間を増大させることができる。そのため、パネル孔に対してグロメットを確実に装着させることができるとともに、よりグロメットの軽量化を図ることができる。
【0020】
またこの発明の態様として、前記肉抜き部の前記挿入後端側は、前記放射方向の径外側に向かうに伴い、前記挿入先端側に向けて傾斜してもよい。
この発明により、パネル孔に対してグロメットを挿入する場合や、パネル孔からグロメットを抜去する場合に、肉抜き部の底部を介して円盤部に挿入力や抜去力を確実に伝達することができる。これにより、グロメットの装着及び抜去作業を効率よくできる。
【0021】
またこの発明の態様として、前記第1補強部が、偶数配置されてもよい。
この発明によると、挿入方向から視て、所定の位置に配置された第1補強部と周方向において対向する位置に他の第1補強部が配置される。これにより、円盤部の剛性が安定し、パネル孔に対してグロメットを確実に装着させることができるとともに、装着状態におけるグロメットの意図しない脱落を防止できる。
【0022】
またこの発明の態様として、前記挿入筒部は、前記挿入先端側に延出する一対の先端側筒部と、前記挿入後端側に延出する後端側筒部とで構成され、前記先端側筒部は、前記挿入方向から視て互いに対向するとともに、前記第1補強部に対応する位置に配置されてもよい。
【0023】
この発明により、第1補強部が先端側筒部の基端と接続されているため、先端側筒部の変形を防止することができる。これにより、例えばパネル孔に対するグロメットの装着作業において、先端側筒部が変形して、装着を妨げることを防止できる。
【0024】
またこの発明の態様として、前記挿入方向から視て、前記先端側筒部の前記周方向における中央部分と、前記第1補強部における前記周方向の中央部分とが一致してもよい。
この発明により、先端側筒部の剛性を向上させることができるため、グロメットをパネル孔に挿入させる際に、先端側筒部の変形を抑制し、挿入力を円盤部に確実に伝達することができる。これにより、より確実にグロメットをパネル孔に装着することができる。また、先端側筒部の剛性を向上させることにより、先端側筒部にケーブルを容易にテープ固定することができる。
【0025】
またこの発明の態様として、一対の前記先端側筒部は、前記挿入方向から視て、前記第1補強部と、前記第1補強部と対向する前記第1補強部との間に設けられてもよい。
この発明によると、一対の先端側筒部の剛性を確実に向上させることができるため、挿入力を円盤部の径外側に確実に伝達し、確実にグロメットをパネル孔に装着することができるとともに、先端側筒部にケーブルを容易にテープ固定することができる。
【0026】
またこの発明の態様として、記挿入方向から視て、前記先端側筒部における両端と対応する位置に、前記第1補強部が配置されてもよい。
この発明により、先端側筒部の剛性をより向上させることができるため、より確実にグロメットをパネル孔に装着することができるとともに、先端側筒部にケーブルを容易にテープ固定することができる。
【0027】
またこの発明の態様として、前記肉抜き部に、他のケーブルを挿通させる補助挿入筒部が設けられてもよい。
この発明により、パネル孔に対する円盤部の挿入や意図しないグロメットの脱落防止に影響することなく、追加する他のケーブルをグロメットに挿通させることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明により、軽量化を図ることができるグロメットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】グロメットをパネル孔に挿入する前の状態の概略側面図。
【
図10】取り外し過程におけるグロメットの概略背面図。
【
図11】他の実施形態におけるグロメットの概略背面図。
【
図12】他の実施形態におけるグロメットの概略背面図。
【
図13】他の実施形態におけるグロメットの概略背面図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
この発明の一実施形態を、以下図面を用いて説明する。
まず、グロメット1の概要について
図1乃至
図6を用いて説明する。ここで、
図1はグロメット1をパネル孔210に挿入する前の状態の概略側面図を示し、
図2はグロメット1の概略斜視図を示し、
図3はグロメット1の概略背面図を示し、
図4は
図3におけるA-A矢視断面の断面図を示す。
図5及び
図6は
図3における背面図の右上方を拡大表示した、グロメット1の概略拡大背面図を示す。
【0031】
図7及び
図8はグロメット1を車体パネル200に装着する装着過程におけるグロメット1の断面図を示す。なお、
図7は
図3におけるA-A矢視断面に対応する断面図を示し、
図8は
図3におけるB-B矢視断面に対応する断面図を示す。
【0032】
図9は車体パネル200にグロメット1を装着した装着状態におけるグロメット1の断面図を示し、
図10は車体パネル200に装着されたグロメット1を取り外す過程におけるグロメット1の概略平面図を示す。なお、
図9は
図3におけるA-A矢視断面に対応する断面図を示す。
【0033】
図1及び2について詳述する。
図1は、車体パネル200に設けたパネル孔210を明確にするため、便宜上車体パネル200のみを断面で表示したグロメット1の概略側面図を示す。
図2(a)は背面上方側(挿入先端側Xfの上方)から視たグロメット1の概略斜視図を示し、
図2(b)は正面上方側(挿入先端側Xfの上方)から視たグロメット1の概略斜視図を示す。
【0034】
グロメット1は、
図1に示すように、ワイヤーハーネスなどで構成されるケーブル100を内部に挿通させ、ケーブル100に装着した状態で車体パネル200に取り付けられるものであり、パネル孔210を塞ぐ形で車体パネル200に取り付けられる。このように車体パネル200に取り付けられたグロメット1は、ケーブル100を保護しつつ、パネル孔210を通じた漏水などを防止することができる。
【0035】
なお、
図1に示すように、グロメット1をパネル孔210に挿入する方向であり、パネル孔210の貫通方向と一致する方向を挿入方向Xとする。そして、グロメット1をパネル孔210に挿入する際に、グロメット1を押し込む側を挿入方向Xの先端側とし、挿入先端側Xfとする。また、挿入先端側Xfの反対側を挿入方向Xの後端側とし、挿入後端側Xbという。
【0036】
さらにまた、挿入方向Xに沿った挿入筒部10の中心軸を中心として、挿入方向Xと直交する方向を放射方向とし、放射方向に沿って挿入筒部10の中心軸から離間する側を径外側とし、放射方向に沿って挿入筒部10の中心軸に近接する側を径内側とする。
【0037】
グロメット1は、
図1乃至
図4に示すように、ケーブル100が挿入される略筒状の挿入筒部10と、挿入筒部10の中間部分において挿入方向Xから視て放射方向の径外側に拡がる略円盤状の円盤部20とで一体構成されている。
【0038】
そして、グロメット1は、挿入筒部10にケーブル100を挿入した状態でパネル孔210に挿入され、円盤部20が挿入方向Xに跨いだ状態でパネル孔210に装着されることで、パネル孔210を塞ぐ形で車体パネル200に取り付けられる。
【0039】
また、グロメット1は、パネル孔210に装着でき、且つ、グロメット1の脱落を防止できる程度の可撓性を有するゴムなどの弾性体で構成されている。具体的には、装着作業に伴いグロメット1にパネル孔210が当接した場合でも、グロメット1の当接部分を径内側に変形させながらグロメット1を押し進めることができるとともに、円盤部20がパネル孔210を挿入方向Xに跨いだ状態を維持できる程度の可撓性及び剛性を有する弾性体でグロメット1は構成されている。
【0040】
挿入筒部10は、
図1乃至
図4に示すように、挿入後端側Xbに配置される後端側筒部11と、挿入先端側Xfに向けて延出する一対の先端側筒部12とで構成されている。
後端側筒部11は、円環状に形成されており、後述する挿入先端部30の底面と連結している。
【0041】
先端側筒部12は挿入方向Xから視て円弧状に形成されており、挿入先端部30の先端面から挿入方向Xに沿って延出している。この先端側筒部12を用いて、挿入筒部10を挿通するケーブル100をテープ固定する。なお、先端側筒部12の内径は、後端側筒部11の内径よりも大きくなるように構成されている。この一対の先端側筒部12,12は、挿入方向Xから視て、円盤部20の周方向に沿って互いに対向している。
【0042】
この円盤部20は、
図2に示すように、挿入筒部10の中間部分において挿入方向Xから視て放射方向の径外側に拡がる略傘状に構成され、車体パネル200への装着状態においてパネル孔210を挿入方向Xに跨いで装着される。
【0043】
円盤部20は、
図2乃至
図4に示すように、挿入先端部30、テーパー部40、縮径部50、及び、大径部60が、挿入先端側Xfから挿入後端側Xbに向かってこの順で備えられている。また、テーパー部40、縮径部50及び大径部60は挿入筒部10と放射方向に沿って離間しており、挿入筒部10との間に円環状の隙間空間Sが形成されている。
【0044】
挿入先端部30は、グロメット1をパネル孔210に挿入する際に、円盤部20のうちでパネル孔210に最初に挿通される部位であり、挿入方向Xから視て、挿入筒部10より大径且つパネル孔210より小径の円形状に構成されている。
【0045】
この挿入先端部30の挿入先端側Xfは、
図2乃至
図4に示すように、挿入先端側Xfが放射方向に対して平坦に形成され、挿入後端側Xbは前記放射方向の径外側に向かうに伴い、前記挿入先端側に向けて傾斜している。
【0046】
平坦に形成された挿入先端部30の挿入先端側Xfには、挿入後端側Xbに向けて凹状に形成された複数の肉抜き部31と(
図4参照)、隣り合う肉抜き部31の間に設けられた複数の第1補強部32と、それぞれの肉抜き部31における中央部分において放射方向に延びる第2補強部33とが設けられている(
図3参照)。
【0047】
肉抜き部31は、
図3乃至
図5に示すように、挿入筒部10の径外側において周方向に沿って略等間隔に6つ設けられている。この肉抜き部31は、平面視において、内角が40度で形成された環状の扇型であり、放射方向に沿って拡がるように構成されている。すなわち、肉抜き部31は、周方向に対して合計で240度となるように構成されている。
なお、肉抜き部31における挿入後端側Xbは、放射方向の径外側に向かうに伴い、挿入先端側Xfに向けて傾斜しており、挿入後端側Xb端部は後端側筒部11と連結されている。
【0048】
また、グロメット1には、オプション用のケーブルを挿通するためのオプション用挿入筒部70が、互いに対向する肉抜き部31と連通するように2つ、挿入筒部10の径外側に設けられている(
図2(b)及び
図5参照)。
【0049】
第1補強部32は、
図3に示すように、隣接する肉抜き部31の間で、放射方向に沿って設けられている。すなわち、第1補強部32は、肉抜き部31と同様に、挿入筒部10の径外側において周方向に沿って略等間隔に6つ設けられている。
【0050】
この第1補強部32は、平面視において、内角が20度で形成された環状の扇型であり、放射方向に沿って拡がるように構成されている。すなわち、第1補強部32は、放射方向の径外側に向かうに伴い板厚が厚くなっている。
【0051】
第2補強部33は、
図3に示すように、それぞれの肉抜き部31における周方向の中央部分において、放射方向の径内側と径外側とを連結している。この第2補強部33は、放射方向に沿って板厚が一定となっている。なお、第1補強部32における径内側の板厚は第2補強部33の板厚の2.5倍で構成され、第1補強部32における径外側の板厚は第2補強部33の板厚の4.3倍で構成されている。
【0052】
このように肉抜き部31の中央部分に第2補強部33を設けることで、第2補強部33がない状態と比べて車体パネル200に装着されたグロメット1に対する抜去力(引き抜きに抗する力)を向上させることができる。
【0053】
なお、6つ設けられた第1補強部32のうちの対向する一つの第1補強部32,32の径外側には、周方向において第1補強部32の中心と中心が一致する先端側筒部12が設けられている。この先端側筒部12は、肉抜き部31の径内側に沿って配置されており、先端側筒部12の周方向の両端は第2補強部33と略対応する位置に配置されている。
【0054】
このように構成された挿入先端部30において、肉抜き部31と第1補強部32とは、挿入筒部10(先端側筒部12)の径外側において周方向に沿って交互に配置されている。また、肉抜き部31の間に設けられた第2補強部33と第1補強部32も、周方向に沿って交互に配置されている。なお、肉抜き部31は、放射方向の径外側に向かうに伴い第1補強部32と第2補強部33との間隔が広くなるように構成されている。
【0055】
この挿入先端部30における肉抜き部31の径外側には剛性の低い低剛性部分R1が形成され、第1補強部32の径外側には剛性の高い高剛性部分R2が形成され、第2補強部33の径外側には中程度の剛性を有する中剛性部分R3が形成されており、低剛性部分R1と高剛性部分R2と中剛性部分R3とが、周方向に沿って周期的に配置されている(
図6参照)。
【0056】
テーパー部40は、挿入先端部30からパネル孔210の径よりひと回り大径の拡径部分41まで徐々に拡径される形状である(
図1及び
図4参照)。グロメット1をパネル孔210に挿入する際には、拡径部分41より挿入先端側Xfのどこかでパネル孔210の縁部211に当接する。なお、グロメット1をさらに押し込むことにより、隙間空間Sを狭める形でテーパー部40を径内側に向かって変形させることができる。
【0057】
縮径部50は、拡径部分41から挿入後端側Xbに向かって縮径され、装着状態において縁部211が配置される部位である。より具体的には、縮径部50は、
図4に示すように、拡径部分41から挿入後端側Xbに向かって徐々に縮径する第1部分51と、第1部分51から挿入後端側Xbに向かって段差状に凹んだ第2部分52とで構成されている。
【0058】
大径部60は、
図4に示すように、縮径部50より挿入後端側Xbに配置され、且つ、装着状態において車体パネル200より挿入後端側Xbに配置される部位であり、縮径部50及びパネル孔210より大径で構成されている。
【0059】
この大径部60は、グロメット1を車体パネル200に装着させた装着状態において、第1部分51と大径部60とで縁部211を挟持することとなる。そのため、パネル孔210は大径部60により塞がれることになり、大径部60をパネル孔210の蓋として機能させることができる。
【0060】
このように、円盤部20は、挿入先端部30からパネル孔210に挿入し、縁部211にテーパー部40が当接した後も、大きな力でグロメット1を押し込むことで、テーパー部40を変形させながらグロメット1を押し進められるようにしている。
【0061】
そして、グロメット1を押し進めて縮径部50に縁部211を配置させれば、大径部60によりパネル孔210が塞がれ、パネル孔210を通じた漏水などを防止できる状態で、グロメット1が車体パネル200に装着される。また、装着状態において、縁部211は第2部分52に嵌まった状態となるため、パネル孔210からグロメット1が脱落することも防止される。
【0062】
以下、車体パネル200に対するグロメット1の装着及び抜去などについて、
図7乃至
図10とともに説明する。
まず、ケーブル100が挿入筒部10を挿通するグロメット1を、挿入先端部30がパネル孔210を向くように配置し、パネル孔210に対して挿入先端部30を挿入させるように、グロメット1をパネル孔210(挿入先端側Xf)に向けて押し込む。
【0063】
これにより、パネル孔210における縁部211がテーパー部40と当接するため(
図7参照)、挿入先端部30の径外側部分を径内側に向けて変形するように、径外側から径内側に向けて押圧力F1が作用することとなる。そのため、肉抜き部31に対応する低剛性部分R1が径内側に向けて変形する。
【0064】
一方で、所定の板厚を有する第1補強部32が周方向に沿って複数設けられていることから、第1補強部32に対応する箇所は剛性が高い高剛性部分R2となる。したがって、高剛性部分R2及びその近傍(肉抜き部31の周方向両端側)において押圧力F1に抗する反力D1が生じ、高剛性部分R2及びその近傍(肉抜き部31の周方向両端側)における円盤部20の変形が抑制される。したがって、挿入先端部30が全体として径内側に変形することなく、平面視略円形状の形状を維持させることができる(
図7参照)。
【0065】
さらには、周方向に等間隔で第1補強部32を設けることにより、第1補強部32により変形が抑制された肉抜き部31の底部を介してテーパー部40に挿入力Iを伝達させるのみならず、第1補強部32を介してテーパー部40に挿入力Iを伝達させることができる。これにより、グロメット1をスムーズにパネル孔210に挿入することができる(
図8参照)。
【0066】
そして、グロメット1をパネル孔210にさらに押し込むことで、隙間空間Sを狭める形でテーパー部40が径内側に向かって変形し、縁部211が拡径部分41を超えて縮径部50(第2部分52)に嵌まり込むこととなる。これにより、第1部分51と大径部60とで縁部211を挟持することができるとともに、パネル孔210を大径部60で塞ぐことができ、大径部60をパネル孔210の蓋として機能させることができる(
図9参照)。
【0067】
このようにグロメット1がパネル孔210に装着された装着状態において、意図しない径外側の一方向に向けてケーブル100を引っ張るような外力が生じた場合、円盤部20の径外側の一方側には、径内側から径外側に向けた外力が作用し、円盤部20の径外側の他方側には径外側から径内側に向けた外力が作用することとなる。
【0068】
しかしながら、隣り合う第1補強部32の間、より正確には隣り合う第1補強部32の中央部分には、第1補強部32に比べて板厚が薄い第2補強部33が設けられていることから、第2補強部33に対応する箇所(中剛性部分R3)の剛性が第2補強部33のない箇所(低剛性部分R1)に比べて高くなっている。このため、円盤部20の放射方向に沿った意図しない外力に抗することができ、円盤部20が変形することを防止できる。
【0069】
さらにまた、パネル孔210からグロメット1を抜去する場合について、
図9及び
図10に基づき説明する。車体パネル200に装着されたグロメット1に対して挿入後端側Xbに向けて外力(引張力F2)を意図的に作用させた場合には(
図9参照)、周方向に配置されたそれぞれの第1補強部32に径内側に向かう第1引張力F3が作用するのみならず、周方向に配置されたそれぞれの第2補強部33にも径内側に向かう第2引張力F4が作用することとなる(
図10参照)。
【0070】
この第1補強部32及び第2補強部33に作用する第1引張力F3及び第2引張力F4により、円盤部20を全体的に径内側に縮径されるため、車体パネル200に装着されたテーパー部40がめくれやすくなる。したがって、円盤部20の容易にグロメット1をパネル孔210から抜くことができる。
【0071】
このように車体パネル200のパネル孔210に挿入されて、車体パネル200に取り付けられるグロメット1は、ケーブル100が挿入される略筒状の挿入筒部10と、挿入筒部10の中間部分において、パネル孔210への挿入方向Xから視て放射方向の径外側に拡がるとともに、車体パネル200への装着状態において、挿入方向Xに跨いでパネル孔210に装着される略円盤状の円盤部20とで構成されている。
【0072】
そして、円盤部20は、挿入方向Xから視て略円形状に構成され、挿入方向Xの先端側である挿入先端側Xfに配置され、挿入筒部10より大径且つパネル孔210より小径な挿入先端部30を備えている。挿入先端部30には、挿入筒部10の放射方向の径外側に、挿入方向Xの後端側である挿入後端側Xbに向けて凹状に形成された複数の肉抜き部31と、隣接する肉抜き部31との間で放射方向に沿った第1補強部32とが交互に設けられ、肉抜き部31には、放射方向の径外側と径内側とを連結する、第1補強部32よりも薄い第2補強部33が設けられている。
【0073】
これにより、挿入後端側Xbに向けて凹状に窪ませて形成された複数の肉抜き部31が挿入先端部30に設けられるため、円盤部20の空隙を増加させることができる。したがって、グロメット1の軽量化を図ることができる。
【0074】
また、肉抜き部31を設けることにより剛性が低下した円盤部20に対して、放射方向に沿った第1補強部32を周方向に隣接する肉抜き部31の間に設けることにより、円盤部20の剛性を向上させることができる。これにより、円盤部20をパネル孔210に対して挿入する場合に、円盤部20が過度に変形することを防止でき、挿入方向Xから視て円盤部20を略円形状に保つことができる。
【0075】
また、パネル孔210に対してグロメット1を挿入する際に作用させる挿入力Iを第1補強部32を介して円盤部20の外径側に対して確実に伝達できるため、パネル孔210にグロメット1を容易かつ確実に装着することができる。
【0076】
さらにまた、隣接する第1補強部32よりも板厚を薄くした第2補強部33を隣接する第1補強部32の間に設けることにより、パネル孔210に対する挿入時には肉抜き部31を適度に変形させ、パネル孔210にグロメット1が装着された装着状態において、グロメット1の挿入筒部10を挿通する電線を介して意図しない外力が作用した場合には、第2補強部33が外力に抗して肉抜き部31の変形を抑制することができる。したがって、パネル孔210に対するグロメット1の装着性を低下させることなく、グロメット1の意図しないパネル孔210からの脱落を防止できる。
【0077】
加えて、パネル孔210からグロメット1を抜去する場合、すなわち挿入方向Xに沿って挿入後端側Xbに向けて引張力F2を意図的に作用させた場合には、第1補強部32に第1引張力F3が作用するのみならず第2補強部33にも第2引張力F4が作用するため、引張力F2を円盤部20に伝達することができる。このため、円盤部20を全体的に径内側に縮径させることができ、容易にグロメット1をパネル孔210から抜くことができる。
【0078】
また、第1補強部32と第2補強部33とが交互に配置されていることにより、第1補強部32に対応した剛性の高い高剛性部分R2と、肉抜き部31に対応した剛性の低い低剛性部分R1と、第2補強部33に対応した中程度の剛性を有する中剛性部分R3を周方向に沿って、所定の並びで配置することができる。
【0079】
すなわち、高剛性部分R2と低剛性部分R1と中剛性部分R3とを周期的に配置でき、変形しやすい箇所と変形しにくい箇所とを全体としてバランスよく配置できる。したがって、パネル孔210に対してグロメット1の挿入しやすさと、パネル孔210に対して装着されたグロメット1の意図しない脱落の防止をバランスよく設定することができる。
【0080】
さらにまた、第1補強部32は、放射方向の径外側に向かうに伴い板厚が厚くなっていることにより、挿入方向Xから視て円形状に構成された円盤部20の径外側において上述の高剛性部分R2を周方向に拡がるように形成することができる。このため、装着状態において、グロメット1に意図しない外力が作用したとしても、グロメット1の変形をより確実に防止でき、グロメット1の脱落を確実に防止できる。
【0081】
また、第1補強部32の径外方向への拡がりが放射方向に沿っているため、パネル孔210に対してグロメット1を押し込んで挿入する場合において、効率よく挿入力Iを円盤部20の径外側に伝達することができる。これにより、より容易にグロメット1をパネル孔210に挿入することができる。
【0082】
さらにまた、第2補強部33は、板厚が一定に構成されていることより、第2補強部33の断面強度が放射方向において変化しない。このため、グロメット1をパネル孔210に装着した状態において意図しない外力が作用した場合であっても、第2補強部33の局所的な変形が生じず、第2補強部33の全体として外力に抗することができる。これにより、意図しない円盤部20の変形をより防止でき、グロメット1の脱落をより確実に防止できる。
【0083】
また、肉抜き部31は、放射方向の径外側に向かうに伴い、第1補強部32と第2補強部33との間隔が拡がるように構成されている。これにより、パネル孔210に対するグロメット1の挿入しやすさや、パネル孔210に装着されたグロメット1の意図しない脱落に影響なく、肉抜き部31の空間を増大させることができる。そのため、パネル孔210に対してグロメット1を確実に装着させることができるとともに、よりグロメット1の軽量化を図ることができる。
【0084】
また、肉抜き部31の挿入後端側Xbは、放射方向の径外側に向かうに伴い、挿入先端側Xfに向けて傾斜していることにより、パネル孔210に対してグロメット1を挿入する場合や、パネル孔210からグロメット1を抜去する場合に、肉抜き部31の底部を介して円盤部20に挿入力Iや引張力F2を確実に伝達することができる。これにより、グロメット1の装着及び抜去作業を効率よくできる。
【0085】
また、第1補強部32が、偶数配置されている。すなわち、挿入方向Xから視て、所定の位置に配置された第1補強部32と周方向において対向する位置に他の第1補強部32が配置される。これにより、円盤部20の剛性が安定され、パネル孔210に対してグロメット1を確実に装着させることができるとともに、装着状態におけるグロメット1の意図しない脱落を防止できる。
【0086】
また、挿入筒部10は、挿入先端側Xfに延出する一対の先端側筒部12と、挿入後端側Xbに延出する後端側筒部11とで構成され、先端側筒部12は、挿入方向Xから視て互いに対向するとともに、第1補強部32に対応する位置に配置されている。
【0087】
これにより、第1補強部32が先端側筒部12の基端と接続されているため、先端側筒部12の変形を防止することができ、例えばパネル孔210に対するグロメット1の装着作業において、先端側筒部12が変形して、装着を妨げることを防止できる。
【0088】
また、肉抜き部31に、他のケーブル100を挿通させるオプション用挿入筒部70が設けられていることにより、パネル孔210に対する円盤部20の挿入や意図しないグロメット1の脱落防止に影響することなく、追加する他のケーブル100をグロメット1に挿通させることができる。
【0089】
また、挿入方向Xから視て、先端側筒部12における中央部分と、第1補強部32の中央部分とが一致していることにより、先端側筒部12の剛性を向上させることができる。このため、グロメット1をパネル孔210に挿入させる際に、先端側筒部12の変形を抑制し、挿入力Iを円盤部20に確実に伝達することができる。これにより、より確実にグロメット1をパネル孔210に装着することができる。また、先端側筒部12の剛性を向上させることにより、先端側筒部12にケーブル100を容易にテープ固定することができる。
【0090】
さらにまた、一対の先端側筒部12は、挿入方向Xから視て、互いに対向する第1補強部32の間に設けられていることにより、一対の先端側筒部12の剛性を確実に向上させることができる。したがって、挿入力Iを円盤部20の径外側に確実に伝達し、確実にグロメット1をパネル孔210に装着することができるとともに、先端側筒部12にケーブル100を容易にテープ固定することができる。
【0091】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
車体パネルは、車体パネル200に対応し、
以下同様に
パネル孔は、パネル孔210に対応し、
グロメットは、グロメット1に対応し、
挿入方向は、挿入方向Xに対応し、
ケーブルは、ケーブル100に対応し、
挿入筒部は、挿入筒部10に対応し、
円盤部は、円盤部20に対応し、
挿入先端部は、挿入先端部30に対応し、
挿入後端側は、挿入後端側Xbに対応し、
肉抜き部は、肉抜き部31に対応し、
第1補強部は、第1補強部32に対応し、
第2補強部は、第1補強部32に対応し、
挿入先端側は、挿入先端側Xfに対応し、
先端側筒部は、先端側筒部12に対応し、
後端側筒部は、後端側筒部11に対応し、
補助挿入筒部は、オプション用挿入筒部70に対応するが、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施形態を得ることができる。
【0092】
例えば、本実施形態において、第1補強部32における径内側の板厚を、第2補強部33の板厚の2.5倍、径外側の板厚を、第1補強部32における第2補強部33の板厚の4.3倍としているが、上述の効果を奏する限り第1補強部32の板厚は適宜変更するころができる。例えば、グロメット1の素材をより剛性の高いものとすることで、第2補強部33の板厚を薄くでき、逆にグロメット1の素材を剛性の低いものとした場合、第2補強部33の板厚を厚くすることとなる。
【0093】
また、本実施形態では、6つ設けられた第1補強部32は内角が20度の環状の扇型としているが、第1補強部32の内角は、20度に限らず、上述の効果を奏する限り変更することができる。なお、グロメット1の材質にもよるが、第1補強部32の内角が18度未満の場合、グロメット1をパネル孔210に挿入した際に作用する押圧力F1に抗することができず、座屈しやすくなる。このため第1補強部32の内角は18度以上が好ましい。
【0094】
また、6つ設けられた第1補強部32の内角が25度よりも大きくなると、第1補強部32の間に設けられた肉抜き部31による変形性が低下し、車体パネル200に対するグロメット1の挿入や抜去が困難になる。そのため第1補強部32の内角は25度以下が好ましい。
【0095】
より具体的には、挿入方向Xから視て径内側端部において、第1補強部32の弧長の2倍の長さが、第2補強部33を除く肉抜き部31の弧長の長さと第2補強部33の弧長の長さの合計と等しい場合には、第1補強部32の弧長の長さは、第2補強部33の弧長の長さの2.0倍以上3.0倍以下であることが好ましい。
【0096】
また、挿入方向Xから視て径内側端部において、第1補強部32の弧長の2倍の長さが、第2補強部33を除く肉抜き部31の弧長の長さと等しい場合には、第1補強部32の弧長の長さが、第2補強部33の弧長の長さの1.75倍以上3.0倍未満であることが好ましい。
【0097】
さらにまた、挿入方向Xから視て径内側端部において、第1補強部32の弧長の2倍の長さが、第2補強部33を除く肉抜き部31の弧長の長さよりも長く、第2補強部33を除く肉抜き部31の弧長の長さと第2補強部33の弧長の長さの合計よりも短い場合には、第1補強部32の弧長の長さが、第2補強部33の弧長の長さの2.0倍以上4.0倍未満であることが好ましい。
【0098】
さらにまた、第1補強部32の弧長の2倍の長さが、第2補強部33を除く肉抜き部31の弧長の長さよりも短い場合には、第1補強部32の弧長の長さが、第2補強部33の弧長の長さの2.0倍以上2.3倍以下であることが好ましい。
【0099】
また、ケーブル100は、複数の電線を束ねて構成されたワイヤーハーネスなどで構成されているとしているが、例えば、一本又は複数の電線や、光通信ケーブルなどのような通信用のケーブルなどとしてもよい。
【0100】
また、本実施形態において、第1補強部32は略等間隔に設けられているが、適宜間隔を不規則にしてもよい。また、第1補強部32は、径外側に向けて拡がるように構成されているが、例えば、板厚が放射方向に沿って一定としてもよい。また、上述の効果を奏する範囲で、第1補強部32の板厚が径外側に向けて縮小するように構成してもよい。
【0101】
さらには、第1補強部32及び第2補強部33は放射方向に沿って設けられているが、上述の効果を奏する範囲で、例えば放射方向から傾斜する方向に沿って第1補強部32や第2補強部33を設けてもよい。
【0102】
また、本実施形態では、肉抜き部31及び第1補強部32は、周方向に対して6つ設けられているが、必ずしも6である必要はなく、例えば
図11に示すように、肉抜き部31及び第1補強部32を4つ設けてもよい。また、肉抜き部31及び第1補強部32を8つ設けてもよい。
【0103】
さらにまた、第2補強部33は、隣り合う第1補強部32の間に一つだけとしているが、上述の効果を奏する範囲で、例えば、
図11に示すように、複数の第2補強部33を隣り合う第1補強部32の間に設けていてもよい。また、第2補強部33の板厚を薄くすることで、配置する本数を増加させてもよい。
【0104】
また、本実施形態において、肉抜き部31及び第1補強部32は、周方向に対して偶数(6つ)設けられているが、
図12に示すように、肉抜き部31及び第1補強部32を5つなどの奇数としてもよい。この場合、周方向において肉抜き部31に対向する位置には第2補強部33が配置される。
【0105】
さらにまた、本実施形態において、挿入方向Xから視て、先端側筒部12の周方向の両端は第2補強部33と略対応する位置に配置されているが、例えば
図13に示す背面図のように、先端側筒部12の周方向の両端は第1補強部32と対応する位置に配置されていてもよい。
【0106】
これにより、先端側筒部12の剛性をより向上させることができるため、より確実にグロメット1をパネル孔210に装着することができるとともに、先端側筒部12にケーブル100を容易にテープ固定することができる。
【符号の説明】
【0107】
1 グロメット
10 挿入筒部
11 後端側筒部
12 先端側筒部
20 円盤部
30 挿入先端部
31 肉抜き部
32 第1補強部
33 第2補強部
70 オプション用挿入筒部
100 ケーブル
200 車体パネル
210 パネル孔
X 挿入方向
Xf 挿入先端側
Xb 挿入後端側