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特許7421863飲料用酸味抑制剤、飲料用酸味抑制剤を含む飲料、及び飲料の酸味の抑制方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-17
(45)【発行日】2024-01-25
(54)【発明の名称】飲料用酸味抑制剤、飲料用酸味抑制剤を含む飲料、及び飲料の酸味の抑制方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 2/00 20060101AFI20240118BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20240118BHJP
   A23L 2/38 20210101ALI20240118BHJP
   C12J 1/00 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
A23L2/00 B
A23L2/52
A23L2/38 R
C12J1/00 A
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019017863
(22)【出願日】2019-02-04
(65)【公開番号】P2020124147
(43)【公開日】2020-08-20
【審査請求日】2021-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000227009
【氏名又は名称】日清オイリオグループ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】宮原 麻衣
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 敏樹
【審査官】厚田 一拓
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-212957(JP,A)
【文献】国際公開第2017/150325(WO,A1)
【文献】特表2018-534938(JP,A)
【文献】国際公開第2018/025354(WO,A1)
【文献】特開2018-102224(JP,A)
【文献】特開2019-000008(JP,A)
【文献】特開2008-245539(JP,A)
【文献】特開2018-061510(JP,A)
【文献】特許第6382461(JP,B1)
【文献】特開2010-124696(JP,A)
【文献】北海道立総合研究機構食品加工研究センター研究報告,2018年,No.13,43-49
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 2/00 - 35/00
C12J 1/00 - 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酢酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、キナ酸、及び乳酸から選ばれる1種、又は2種以上を合計で1~質量%、及び中鎖脂肪酸トリグリセリドである飲料用酸味抑制剤を0.5~質量%含有し、かつ、該酢酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、キナ酸、及び乳酸から選ばれる1種、又は2種以上の含有量に対して、該飲料用酸味抑制剤を質量比で0.2~倍含有する飲料(但し、該飲料は、りんご酢、黒酢、もろみ酢、穀物酢、及び米酢から選ばれる1種、又は2種以上を含有する)。
【請求項2】
酢酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、キナ酸、及び乳酸から選ばれる1種、又は2種以上を合計で1~質量%含有し、かつ、りんご酢、黒酢、もろみ酢、穀物酢、及び米酢から選ばれる1種、又は2種以上を含有する飲料に、中鎖脂肪酸トリグリセリドを0.5~5質量%含有するように配合し、さらに、該中鎖脂肪酸トリグリセリドを、該酢酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、キナ酸、及び乳酸から選ばれる1種、又は2種以上の含有量に対して、質量比で0.2~とする該飲料の酸味の抑制方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構成脂肪酸に中鎖脂肪酸を含む油脂を有効成分とする、飲料中の酢酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、キナ酸、及び乳酸から選ばれる1種、又は2種以上に由来する酸味の抑制剤(飲料用酸味抑制剤)、酢酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、キナ酸、及び乳酸から選ばれる1種、又は2種以上と、該飲料用酸味抑制剤とを特定量含有する酸味の抑制された飲料、及び酢酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、キナ酸、及び乳酸から選ばれる1種、又は2種以上を特定量含有する飲料に、構成脂肪酸に中鎖脂肪酸を含む油脂を配合する該飲料の酸味の抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、健康志向の高まりから、疲労回復等の様々な効果を有する食酢やクエン酸が注目されており、それらを高濃度含有する飲料が開発されている。しかし、食酢やクエン酸は、特有の酸味、及び刺激臭を有するため、飲用者を不快にさせる、むせさせる等の問題があり、継続して飲み続けることが困難であった。
このため、上記の酸味を抑制する方法として、高甘味度甘味料を添加する方法(特許文献1)、にがりを添加する方法(特許文献2)等が提案されているが、十分な効果が得られない、飲料自体の味を変化させてしまう等の問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平10-215793号公報
【文献】特開2004-275143号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記の問題を鑑み、飲料中の酢酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、キナ酸、及び乳酸から選ばれる1種、又は2種以上に由来する酸味の抑制剤(飲料用酸味抑制剤)、酢酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、キナ酸、及び乳酸から選ばれる1種、又は2種以上と、該飲料用酸味抑制剤とを特定量含有する酸味の抑制された飲料、及び酢酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、キナ酸、及び乳酸から選ばれる1種、又は2種以上を特定量含有する飲料に、構成脂肪酸に中鎖脂肪酸を含む油脂を配合する該飲料の酸味の抑制方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、構成脂肪酸に中鎖脂肪酸を含む油脂を使用することで、飲料中の酢酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、キナ酸、及び乳酸から選ばれる1種、又は2種以上に由来する酸味を抑制できることを見出し、本発明を完成した。具体的に、本発明は以下を提供する。
【0006】
(1)構成脂肪酸に中鎖脂肪酸を含む油脂を有効成分として含有する飲料用酸味抑制剤。
(2)酢酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、キナ酸、及び乳酸から選ばれる1種、又は2種以上を合計で0.1~10質量%、及び(1)に記載の飲料用酸味抑制剤を0.1~15質量%含有する飲料。
(3)酢酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、キナ酸、及び乳酸から選ばれる1種、又は2種以上を合計で0.1~10質量%含有する飲料に、構成脂肪酸に中鎖脂肪酸を含む油脂を配合する該飲料の酸味の抑制方法。
(4)酢酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、キナ酸、及び乳酸から選ばれる1種、又は2種以上を合計で0.1~10質量%、タンパク質を1~10質量%、及び(1)に記載の飲料用酸味抑制剤を0.1~15質量%含有する飲料。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、飲料中の酢酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、キナ酸、及び乳酸から選ばれる1種、又は2種以上に由来する酸味の抑制剤(飲料用酸味抑制剤)、該酸味の抑制された飲料、及び該酸味の抑制方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[飲料用酸味抑制剤]
本発明の飲料用酸味抑制剤は、構成脂肪酸に中鎖脂肪酸を含む油脂を有効成分として含有し、飲料中に含有する酢酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、キナ酸、及び乳酸から選ばれる1種、又は2種以上に由来する酸味を抑制する効果を有する。本発明において酸味とは、食酢に代表される様なすっぱさであって、飲食時に感じられる感覚を意味する。
本発明の飲料用酸味抑制剤は、飲料中に均一に分散されていれば酸味の抑制効果が得られるが、飲料中にO/W型に乳化されていることが好ましい。
【0009】
本発明の飲料用酸味抑制剤は、構成脂肪酸に中鎖脂肪酸を含む油脂を好ましくは80~100質量%、より好ましくは85~98質量%、最も好ましくは90~95質量%含有する。また、本発明の飲料用酸味抑制剤は、本発明の効果を損なわない限りにおいて、乳化剤等の他の成分を含有することができる。
【0010】
[構成脂肪酸に中鎖脂肪酸を含む油脂]
本発明の構成脂肪酸に中鎖脂肪酸を含む油脂は、トリグリセリドの構成脂肪酸中に中鎖脂肪酸を含有する。本発明の構成脂肪酸に中鎖脂肪酸を含有する油脂は、トリグリセリドの構成脂肪酸中の中鎖脂肪酸の含有量が、好ましくは50~100質量%であり、より好ましくは70~100質量%であり、最も好ましくは90~100質量%である。また、前記中鎖脂肪酸は、炭素数6~12の脂肪酸であり、好ましくは炭素数8(n-オクタン酸)、及び10(n-デカン酸)から選ばれる1種又は2種以上の脂肪酸である。
【0011】
本発明の構成脂肪酸に中鎖脂肪酸を含む油脂は、該構成脂肪酸が中鎖脂肪酸のみからなる中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)を含有する油脂、構成脂肪酸が中鎖脂肪酸と長鎖脂肪酸(炭素数14~24の脂肪酸)からなる中長鎖脂肪酸トリグリセリド(以下、MLCTともいう。)を含有する油脂、ヤシ油等が挙げられる。
また、本発明の構成脂肪酸に中鎖脂肪酸を含む油脂は、トリグリセリドの構成脂肪酸中の中鎖脂肪酸の含有量が、上記の範囲を満たせば、前記MCT、前記MLCT、前記ヤシ油等と、それら以外の油脂との混合油脂でもよい。前記混合油脂は、好ましくは20℃で液状の油脂である。
前記MCT及びMLCTは、ヤシ油やパーム核油由来の中鎖脂肪酸や長鎖脂肪酸とグリセリンとを原料として、エステル化反応させることにより得ることができる。エステル化反応の条件は、特に限定されるものではなく、無触媒且つ無溶剤にて加圧下で反応させてもよく、触媒や溶剤を用いて反応させてもよい。また、上記MLCTは、MCTとMCT以外の油脂とをエステル交換する方法によっても得ることができる。エステル交換する方法としては、特に限定されるものではなく、ナトリウムメトキシドを触媒とした化学的エステル交換や、リパーゼ製剤を触媒とした酵素的エステル交換など、通常行われる方法で行えばよい。
なお、本発明に用いる油脂中の構成脂肪酸を確認、定量する方法としては、例えば、トリグリセリドの構成脂肪酸をメチルエステル化し、ガスクロマトグラフィーにより定量分析する方法が挙げられる。
【0012】
[飲料]
本発明の飲料は、酢酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、キナ酸、及び乳酸から選ばれる1種、又は2種以上と、本発明の飲料用酸味抑制剤とを特定量含有し、該酢酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、キナ酸、及び乳酸から選ばれる1種、又は2種以上に由来する酸味が抑制された飲料である。また、本発明の飲料は、清涼飲料、果汁飲料、野菜飲料、豆乳飲料、酢飲料、クエン酸飲料、ビタミン飲料、医薬部外品の栄養ドリンク等の液状のもののみならず、いわゆるゼリー飲料のようなゲル状、半固形状のものも含まれる。本発明の飲料は、好ましくは酸性の飲料であり、pHが好ましくは2.0~6.5、より好ましくは2.5~4.5である。また、本発明の飲料は、本発明の飲料用酸味抑制剤が飲料中に均一に分散されていればよいが、より好ましくはO/W型乳化物である。
【0013】
本発明の飲料は、本発明の飲料用酸味抑制剤を0.1~15質量%含有する。また、本発明の飲料中の前記飲料用酸味抑制剤の含有量は、好ましくは0.2~12質量%、より好ましくは0.3~10質量%、さらにより好ましくは0.4~8質量%、最も好ましくは0.5~5質量%である。飲料用酸味抑制剤の含有量が前記の範囲にあると、酸味の抑制効果を奏しやすい。また、飲料用酸味抑制剤の含有量が15質量%よりも多くなると、効果の向上が望めない。
【0014】
本発明の飲料は、タンパク質を1質量%未満含有する場合(又はタンパク質を含有しない場合)、該飲料中の前記飲料用酸味抑制剤の含有量は、好ましくは0.1~6質量%、より好ましくは0.2~5質量%、最も好ましくは0.3~4質量%である。
本発明の飲料は、タンパク質を1質量%以上含有する場合、該飲料中の前記飲料用酸味抑制剤の含有量は、好ましくは0.5~15質量%、より好ましくは0.8~12質量%、さらにより好ましくは1~10質量%、最も好ましくは1~5質量%である。
【0015】
本発明の飲料は、本発明の飲料用酸味抑制剤を、酢酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、キナ酸、及び乳酸から選ばれる1種、又は2種以上の含有量に対して、質量比で好ましくは0.05~30倍、より好ましくは0.1~20倍、さらにより好ましくは0.2~10倍、最も好ましくは0.4~4倍含有することができる。
【0016】
本発明の飲料は、酢酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、キナ酸、及び乳酸から選ばれる1種、又は2種以上を、合計で0.1~10質量%含有する。また、本発明の飲料中の前記酢酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、キナ酸、及び乳酸から選ばれる1種、又は2種以上の合計含有量は、好ましくは0.2~8質量%、より好ましくは0.5~7質量%、さらにより好ましくは0.8~6質量%、最も好ましくは1~5質量%である。各種の酸が前記の範囲あると、本発明の飲料は、各種の酸について、健康機能が期待できる量を無理なく摂取することができる。また、本発明の飲料は、酢酸、及びクエン酸から選ばれる1種、又は2種以上を含有することが好ましい。
【0017】
本発明の酢酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、キナ酸、及び乳酸は、食品に使用されるものであれば、特に制限されない。また、酢酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、キナ酸、及び乳酸の各種塩類も使用することができる。なお、前記の各種塩類を配合する場合は、酢酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、キナ酸、又は乳酸に質量換算して、所望の含有量となるように適宜配合すればよい。
本発明の酢酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、キナ酸、及び乳酸、並びにそれらの塩類は、果汁や発酵原料に含まれるものも使用できる。具体的には、果汁として、りんご果汁、オレンジ果汁、レモン果汁、アセロラ果汁、ブルーベリー果汁、ぶどう果汁等、発酵原料として、りんご酢、黒酢、もろみ酢、穀物酢、米酢等が挙げられる。本発明の飲料に前記の果汁や発酵原料を配合する場合は、それらに含まれる酢酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、キナ酸、及び乳酸から選ばれる1種、又は2種以上の含有量が、所望の含有量となるように適宜配合すればよい。なお、果汁や発酵原料中の酢酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、キナ酸、又は乳酸の含有量は、従来公知の方法で測定することができる。例えば、液体クロマトグラフィー法等が挙げられる。
【0018】
本発明の飲料は、乳化剤を含有してもよい。本発明の飲料が乳化剤を含む場合、該乳化剤の含有量は好ましくは0.1~5.0質量%、より好ましくは0.2~2.0質量%、最も好ましくは0.3~1.0質量%である。また、前記乳化剤のHLBは好ましくは9~14、より好ましくは10~13である。前記乳化剤は、ポリグリセリン脂肪酸エステルが好ましく使用できる。
【0019】
本発明の飲料は、本発明の効果が阻害されない範囲で他の原料を含有してもよい。例えば、飲料として通常配合される着色料、甘味料、高甘味度甘味料、酸化防止剤、香料、苦味料、本発明の飲料用酸味抑制剤に含有される油脂以外の油脂等を含有することができる。
【0020】
本発明の飲料は、タンパク質を含有してもよい。本発明に使用するタンパク質は、食品に使用されるものであれば特に制限されないが、動物性タンパク質として、カゼイン、又はその塩類、ホエー、又はその濃縮物等、植物性タンパク質として、大豆、えんどう豆等の豆類由来のタンパク質が挙げられる。本発明の飲料は、大豆由来のタンパク質を含有することが好ましく、特に、大豆タンパク質を含有する大豆粉、豆乳等を含有することが好ましい。
本発明の飲料中のタンパク質の含有量は、好ましくは1~10質量%、より好ましくは2~8質量%、さらにより好ましくは2.5~6質量%、最も好ましくは3~5質量%である。タンパク質の含有量が前記の範囲にあると、本発明の飲料が酸性状態のときに、タンパク質変性による舌ざわりの悪さや、味の悪さが抑制される。
また、本発明の飲料に前記の大豆粉や豆乳を配合する場合は、それらに含まれるタンパク質の含有量が、所望の含有量となるように適宜配合すればよい。なお、全脂大豆粉や豆乳中のタンパク質の含有量は、ローリー法により測定することができる。
【0021】
[飲料の酸味の抑制方法]
本発明の飲料の酸味の抑制方法は、構成脂肪酸に中鎖脂肪酸を含む油脂を、酢酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、キナ酸、及び乳酸から選ばれる1種、又は2種以上を含有する飲料に配合することを含む。これにより、前記飲料中の酢酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、キナ酸、及び乳酸から選ばれる1種、又は2種以上に由来する酸味を抑制できる。構成脂肪酸に中鎖脂肪酸を含む油脂を飲料に添加する方法は、特に限定されず、飲料中に均一に混合して、分散するか乳化すればよい。
また、本発明の飲料の酸味の抑制方法は、代表的には上記の飲料用酸味抑制剤を使用することができる。
【0022】
上記の構成脂肪酸に中鎖脂肪酸を含有する油脂は、トリグリセリドの構成脂肪酸中の中鎖脂肪酸の含有量が、好ましくは50~100質量%であり、より好ましくは70~100質量%であり、最も好ましくは90~100質量%である。また、前記中鎖脂肪酸は、炭素数6~12の脂肪酸であり、好ましくは炭素数8(n-オクタン酸)、及び10(n-デカン酸)から選ばれる1種又は2種以上の脂肪酸である。
【0023】
上記の構成脂肪酸に中鎖脂肪酸を含む油脂の飲料への配合量は、飲料中の酢酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、キナ酸、及び乳酸から選ばれる1種、又は2種以上に由来する酸味の抑制効果が得られる限りにおいて制限されないが、飲料中の酢酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、キナ酸、及び乳酸から選ばれる1種、又は2種以上の合計含有量に対して、質量比で好ましくは0.05~30倍、より好ましくは0.1~20倍、さらにより好ましくは0.2~10倍、最も好ましくは0.4~4倍である。飲料用酸味抑制剤の添加量が上記の範囲にあると、酸味の抑制効果を奏しやすい。
【0024】
本発明の飲料の酸味の抑制方法における、該飲料中の酢酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、キナ酸、及び乳酸から選ばれる1種、又は2種以上の合計含有量は0.1~10質量%であり、好ましくは0.2~8質量%、より好ましくは0.5~7質量%、さらにより好ましくは0.8~6質量%、最も好ましくは1~5質量%である。
また、前記飲料中の構成脂肪酸に中鎖脂肪酸を含む油脂の含有量は、好ましくは0.1~15質量%、より好ましくは0.2~12質量%、さらに好ましくは0.3~10質量%、さらにより好ましくは0.4~8質量%、最も好ましくは0.5~5質量%である。
【実施例
【0025】
以下、実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれら実施例の記載に何ら限定されるものではない。
【0026】
[酢酸含有飲料の酸味の抑制効果の確認]
表1~3に示すように、酢酸を0.2、0.5、1.0、5.0、及び10.0質量%、並びに、MCT(本発明の飲料用酸味抑制剤)、ヤシ油、又はヒマワリ油を0.5、1.0、2.0、及び4.0質量%含有する飲料を調製した。具体的には、60℃の水に、乳化剤を0.5質量%溶解した後、所望の量の酢酸と、所望の量のMCT、ヤシ油、又はヒマワリ油とを添加し、卓上ホモミキサーで乳化して酢酸含有飲料(実施例1、実施例2、及び比較例1)を調製した。
また、前記の各種の酢酸含有飲料において、MCT、ヤシ油、又はヒマワリ油を含有しない飲料も調製し、対照例とした。
【0027】
上記の乳化剤は、理研ビタミン(株)社製、商品名:ポエムJ-0081HV(HLB12.0)、MCTは、日清オイリオグループ(株)社製、商品名:ODO(構成脂肪酸がn-オクタン酸(炭素数8)とn-デカン酸(炭素数10)であり、その質量比が75:25である中鎖脂肪酸トリグリセリド)、ヤシ油は、日清オイリオグループ(株)社製造品(構成脂肪酸としてn-オクタン酸8質量%、n-デカン酸6質量%、n-ドデカン酸49質量%を含む)、ヒマワリ油は、日清オイリオグループ(株)社製造品を使用した。
【0028】
酸味の抑制効果の確認は、上記で調製した酢酸含有飲料(品温:22℃)について、社内規定の味覚テスト、及び嗅覚テスト(第一薬品産業(株)製のパネル選定用基準臭を使用)に合格した5名の専門パネルが官能試験を行い、下記の採点基準に従い採点し、5名の合計点から下記の評価基準に従って評価した。評価結果を表1~3に示す。
(採点基準)
2点:対照例と比べて、1点よりもさらに酸味が抑制されている。
1点:対照例と比べて、酸味が抑制されている。
0点:対照例と比べて、酸味が抑制されていない。
(評価基準)
9点以上、10点以下:◎(非常に良好)
6点以上、8点以下 :○(良好)
0点以上、5点以下 :×(不良)
【0029】
【表1】
【0030】
【表2】
【0031】
【表3】
【0032】
[クエン酸含有飲料の酸味の抑制効果の確認]
表4~6に示すように、クエン酸を1.0、5.0、及び10.0質量%、並びに、MCT(本発明の飲料用酸味抑制剤)、ヤシ油、又はヒマワリ油を0.5、1.0、2.0、及び4.0質量%含有する飲料を調製した。具体的には、60℃の水に、乳化剤を0.5質量%溶解した後、所望の量の酢酸と、所望の量のMCT、ヤシ油、又はヒマワリ油とを添加し、卓上ホモミキサーで乳化して酢酸含有飲料(実施例3、実施例4、及び比較例2)を調製した。
また、前記の各種のクエン酸含有飲料において、MCT、ヤシ油、又はヒマワリ油を含有しない飲料も調製し、対照例とした。
【0033】
上記の乳化剤、MCT、ヤシ油は、及びヒマワリ油は、上記の酢酸含有飲料の調製で使用した原料と同じ原料を使用した。
また、酸味の抑制効果の確認は、上記の酢酸含有飲料で行った方法と同じ方法で評価した。評価結果を表4~6に示す。
【0034】
【表4】
【0035】
【表5】
【0036】
【表6】
【0037】
[酢酸及び豆乳含有飲料の酸味の抑制効果の確認]
表7~9に示すように、酢酸を0.5質量%、及びMCT(本発明の飲料用酸味抑制剤)、ヤシ油、又はヒマワリ油を1.0、及び15.0質量%含有する豆乳ベースの飲料を調製した。具体的には、豆乳(無調整豆乳:タンパク質3.6質量%)に所望の量の食酢(醸造酢:酢酸10質量%)と、所望の量のMCT、ヤシ油、又はヒマワリ油とを添加し、卓上ホモミキサーで乳化して豆乳ベースの飲料(実施例5、実施例6、及び比較例3)を調製した。
また、前記の各種の飲料において、MCT、ヤシ油、又はヒマワリ油を含有しない飲料も調製し、対照例とした。
【0038】
上記の乳化剤、MCT、ヤシ油は、及びヒマワリ油は、上記の酢酸含有飲料の調製で使用した原料と同じ原料を使用した。
また、酸味の抑制効果の確認は、上記の酢酸含有飲料で行った方法と同じ方法で評価した。評価結果を表7~9に示す。
【0039】
【表7】
【0040】
【表8】
【0041】
【表9】
【0042】
[酢及び大豆粉含有飲料の酸味の抑制効果の確認]
全脂大豆粉(商品名:ソーヤフラワーHS600(タンパク質45質量%)、日清オイリオグループ(株)製)の13%溶液を調製し、ホモジナイズ後に95℃、30分加熱して大豆飲料を製造した。次に前記大豆飲料に、ブルーベリー黒酢(商品名:ブルーベリー黒酢(酢酸1.25質量%)、(株)Mizkan Holdings製)、及びMCT(本発明の飲料用酸味抑制剤)を添加し、大豆タンパク質を3.3質量%、酢酸を0.53質量%、MCTを2.0質量%含有する飲料(実施例7)を製造した。
また、前記の飲料において、MCTの代わりにヒマワリ油を同量含有する飲料(比較例4)、MCT、又はヒマワリ油を含有しない飲料(対照例)も製造した。
【0043】
上記のMCT及びヒマワリ油は、上記の酢酸含有飲料の調製で使用した原料と同じ原料を使用した。
また、酸味の抑制効果の確認は、上記の酢酸含有飲料で行った方法と同じ方法で評価した。評価結果を表10に示す。
【0044】
【表10】