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特許7422076化合物、チオール発生剤、組成物、硬化物及び硬化物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-17
(45)【発行日】2024-01-25
(54)【発明の名称】化合物、チオール発生剤、組成物、硬化物及び硬化物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 329/06 20060101AFI20240118BHJP
   C07C 323/52 20060101ALI20240118BHJP
   C07C 333/08 20060101ALI20240118BHJP
   C09K 3/00 20060101ALI20240118BHJP
   C07D 487/04 20060101ALI20240118BHJP
   C07D 251/34 20060101ALI20240118BHJP
   C08G 75/045 20160101ALI20240118BHJP
【FI】
C07C329/06 CSP
C07C323/52
C07C333/08
C09K3/00 K
C07D487/04 136
C07D251/34 G
C08G75/045
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020535850
(86)(22)【出願日】2019-08-07
(86)【国際出願番号】 JP2019031213
(87)【国際公開番号】W WO2020032131
(87)【国際公開日】2020-02-13
【審査請求日】2022-07-19
(31)【優先権主張番号】P 2018150313
(32)【優先日】2018-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000387
【氏名又は名称】株式会社ADEKA
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 直美
(72)【発明者】
【氏名】三原 大樹
(72)【発明者】
【氏名】竹内 良智
(72)【発明者】
【氏名】松川 和司
【審査官】前田 憲彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-120359(JP,A)
【文献】特開2017-066286(JP,A)
【文献】特開2016-184117(JP,A)
【文献】特開2014-051598(JP,A)
【文献】特開2014-238438(JP,A)
【文献】特開2009-244779(JP,A)
【文献】特開2006-227224(JP,A)
【文献】特開昭48-061626(JP,A)
【文献】特開昭55-066568(JP,A)
【文献】特開昭54-041948(JP,A)
【文献】特開昭50-106881(JP,A)
【文献】国際公開第2018/131350(WO,A1)
【文献】仏国特許出願公開第02574805(FR,A1)
【文献】国際公開第2015/191505(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/163440(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 329/
C07C 323/
C07C 333/
C09K 3/
C07D 487/
C07D 251/
C08G 75/
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(A1)、(A2)、(A4)又は(A6)で表される化合物。
【化1】
(式中、R 11 及びR 12 は、それぞれ独立に、下記一般式(101)を表し、
11 及びL 12 は、炭素原子数1~10のアルキレン基を表し、
a1は、1~20の整数を表し、
21 、R 22 及びR 23 は、それぞれ独立に、下記一般式(101)を表し、
21 、L 22 及びL 23 は、炭素原子数1~10のアルキレン基を表し、
24 は、水素原子又は一価の炭素原子数1~40の脂肪族基を表し、
41 、R 42 、R 43 、R 44 、R 45 及びR 46 は、それぞれ独立に、下記一般式(101)を表し、
41 、L 42 、L 43 、L 44 、L 45 及びL 46 は、炭素原子数1~10のアルキレン基を表し、
61 、R 62 、R 63 及びR 64 は、それぞれ独立に、下記一般式(101)を表し、
61 、L 62 、L 63 及びL 64 は、炭素原子数1~10のアルキレン基を表し、
65 及びR 66 は、それぞれ独立に、水素原子又は一価の炭素原子数1~40の脂肪族基を表し、
24 を除く前記脂肪族基中のメチレン基の1つ又は2つ以上は、-O-、-S-、-CO-、-O-CO-、-CO-O-、-O-CO-O-、-S-CO-、-CO-S-、-S-CO-O-、-O-CO-S-、-CO-NH-、-NH-CO-、-NH-CO-O-、-O-CO-NH-、-NR’-、-S-S-若しくは-SO -から選ばれた基で置き換えられている場合があるか、又は酸素原子が隣り合わない条件でこれらの基を組み合わせた基で置き換えられている場合があり、
24 で表される脂肪族基中のメチレン基の1つ又は2つ以上は、-O-、-S-、-NR’-、-S-S-若しくは-SO -から選ばれた基で置き換えられている場合がある。)
【化2】
(式中、R は、-CO-O-で硫黄原子側末端のメチレン基が置換された、一価の炭素原子数1~40の脂肪族基又は一価の炭素原子数7~35のアリールアルキル基を表し、
*は、結合箇所を表し、
前記脂肪族基及びアリールアルキル基中のメチレン基の1つ又は2つ以上は、-O-、-S-、-CO-、-O-CO-、-CO-O-、-O-CO-O-、-S-CO-、-CO-S-、-S-CO-O-、-O-CO-S-、-CO-NH-、-NH-CO-、-NH-CO-O-、-O-CO-NH-、-NR’-、-S-S-若しくは-SO -から選ばれた基で置き換えられている場合があるか、又は酸素原子が隣り合わない条件でこれらの基を組み合わせた基で置き換えられている場合がある。)
【請求項2】
前記一般式(A4)又は(A6)で表される請求項に記載の化合物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の化合物を含むチオール発生剤。
【請求項4】
パターン形成用である、請求項に記載のチオール発生剤。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の化合物と、
チオール反応性を有する重合性成分と、
を有する重合性組成物。
【請求項6】
前記チオール反応性を有する重合性成分が、ラジカル重合性化合物を含む請求項に記載の重合性組成物。
【請求項7】
請求項又は請求項に記載の重合性組成物のパターン状硬化物。
【請求項8】
請求項記載のパターン状硬化物の製造方法であって、
前記一般式(A)で表される化合物により前記チオール反応性を有する重合性成分同士を架橋する工程を有するパターン状硬化物の製造方法。
【請求項9】
前記チオール反応性を有する重合性成分同士を重合する工程を有する請求項に記載のパターン状硬化物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターニング精度及び耐熱性に優れた組成物を形成可能な化合物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
チオール化合物は、アクリルモノマー等との間でチオール-エン反応(エン-チオール反応とも呼ばれる。)等の反応を起こすことができる。
また、このような重合反応は、重合開始剤の不存在下でも進行する。
したがって、アクリルモノマーに、重合開始剤と共に、チオール化合物を添加することで、重合開始剤によるアクリルモノマー等の重合反応と、チオール化合物によるアクリルモノマー等の反応と、を同時に実施することができる。
このような性質を利用し、チオール化合物は、光硬化性組成物の感度改良等に用いられている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-154774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光硬化性組成物を用いたパターン状硬化物の形成方法としては、光硬化性組成物の塗膜に対してパターン状に露光し、現像液により未硬化の塗膜を除去した後、加熱処理(ポストベーク)を実施する方法が知られている。
特許文献1に記載されるようなチオール化合物を光硬化性組成物に添加してパターン状硬化物を形成した場合、上記加熱処理時の収縮が少ないといった耐熱性に優れたパターン状硬化物を得ることができる。
しかしながら、チオール化合物の添加により、パターニング精度が低下するといった問題があった。
また、本発明者等は、耐熱性等の向上のため、重合開始剤の添加量増量を検討した。しかしながら、チオール化合物添加の場合と同様に、耐熱性の向上を図ることはできるが、パターニング精度が低下するといった問題があった。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、パターニング精度及び耐熱性に優れた組成物を形成可能な化合物を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、パターニング終了後まで、チオール-エン反応等のチオール化合物による反応の進行を抑制し、パターニング終了後に上記反応が進行可能となる化合物を用いることで、パターニング精度及び耐熱性の両者に優れた組成物を形成可能となることを見出した。
本発明者等は、これらの知見に基づいて、本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、下記一般式(A)で表される化合物(以下「化合物A」ともいう。)である。
【0008】
【化1】
(式中、Rは、一価の炭素原子数1~40の脂肪族基、一価の炭素原子数6~35の芳香族炭化水素環含有基、一価の炭素原子数2~35の複素環含有基又は一価の炭素原子数0~40のシリル基を表し、
Xは、nと同数の価数を有する炭素原子数1~40の脂肪族基、炭素原子数6~35の芳香族炭化水素環含有基又は炭素原子数2~35の複素環含有基を表し、
前記脂肪族基、芳香族炭化水素環含有基、複素環含有基及びシリル基中のメチレン基の1つ又は2つ以上は、-O-、-S-、-CO-、-O-CO-、-CO-O-、-O-CO-O-、-S-CO-、-CO-S-、-S-CO-O-、-O-CO-S-、-CO-NH-、-NH-CO-、-NH-CO-O-、-O-CO-NH-、-NR’-、-S-S-若しくは-SO-から選ばれた基で置き換えられている場合があるか、又は酸素原子が隣り合わない条件でこれらの基を組み合わせた基で置き換えられている場合があり、
nは2以上10以下の整数を表す。)
【0009】
本発明によれば、上記構造を有することにより、上記化合物Aは、パターニング精度及び耐熱性に優れた組成物を形成可能となる。
【0010】
本発明においては、上記化合物Aが、下記一般式(A1)、(A2)、(A3)、(A4)、(A5)又は(A6)で表される化合物であることが好ましい。上記化合物Aは、上記構造の化合物であることで、パターニング精度及び耐熱性により優れた組成物を形成可能な化合物となり、特に、耐熱性に優れた組成物を形成可能となるからである。
【0011】
【化2】
(式中、R11及びR12は、それぞれ独立に、下記一般式(101)を表し、
11及びL12は、炭素原子数1~10のアルキレン基を表し、
a1は、1~20の整数を表し、
21、R22及びR23は、それぞれ独立に、下記一般式(101)又は(102)を表し、
21、R22及びR23のうち、いずれか2つ以上が、下記一般式(101)であり、
21、L22及びL23は、炭素原子数1~10のアルキレン基を表し、
24は、水素原子又は一価の炭素原子数1~40の脂肪族基を表し、
31、R32、R33及びR34は、それぞれ独立に、下記一般式(101)又は(102)を表し、
31、R32、R33及びR34のうち、いずれか2つ以上が、下記一般式(101)であり、
31、L32、L33及びL34は、炭素原子数1~10のアルキレン基を表し、
41、R42、R43、R44、R45及びR46は、それぞれ独立に、下記一般式(101)又は(102)を表し、
41、R42、R43、R44、R45及びR46のうち、いずれか2つ以上が、下記一般式(101)であり、
41、L42、L43、L44、L45及びL46は、炭素原子数1~10のアルキレン基を表し、
51、R52及びR53は、それぞれ独立に、下記一般式(101)又は(102)を表し、
51、R52及びR53のうち、いずれか2つ以上が、下記一般式(101)であり、
51、L52及びL53は、炭素原子数1~10のアルキレン基を表し、
61、R62、R63及びR64は、それぞれ独立に、下記一般式(101)又は(102)を表し、
61、R62、R63及びR64のうち、いずれか2つ以上が、下記一般式(101)であり、
61、L62、L63及びL64は、炭素原子数1~10のアルキレン基を表し、
65及びR66は、それぞれ独立に、水素原子又は一価の炭素原子数1~40の脂肪族基を表し、
前記脂肪族基中のメチレン基の1つ又は2つ以上は、-O-、-S-、-CO-、-O-CO-、-CO-O-、-O-CO-O-、-S-CO-、-CO-S-、-S-CO-O-、-O-CO-S-、-CO-NH-、-NH-CO-、-NH-CO-O-、-O-CO-NH-、-NR’-、-S-S-若しくは-SO-から選ばれた基で置き換えられている場合があるか、又は酸素原子が隣り合わない条件でこれらの基を組み合わせた基で置き換えられている場合がある。)
【0012】
【化3】
(式中、Rは、一価の炭素原子数1~40の脂肪族基、一価の炭素原子数6~35の芳香族炭化水素環含有基、一価の炭素原子数2~35の複素環含有基又は一価の炭素原子数0~40のシリル基を表し、
*は、結合箇所を表し、
前記脂肪族基、芳香族炭化水素環含有基、複素環含有基及びシリル基中のメチレン基の1つ又は2つ以上は、-O-、-S-、-CO-、-O-CO-、-CO-O-、-O-CO-O-、-S-CO-、-CO-S-、-S-CO-O-、-O-CO-S-、-CO-NH-、-NH-CO-、-NH-CO-O-、-O-CO-NH-、-NR’-、-S-S-若しくは-SO-から選ばれた基で置き換えられている場合があるか、又は酸素原子が隣り合わない条件でこれらの基を組み合わせた基で置き換えられている場合がある。)
【0013】
本発明においては、上記一般式(A2)中のR21、R22及びR23の全てが、それぞれ独立に、上記一般式(101)であり、上記一般式(A3)中のR31、R32、R33及びR34の全てが、それぞれ独立に、上記一般式(101)であり、上記一般式(A4)中のR41、R42、R43、R44、R45及びR46の全てが、それぞれ独立に、上記一般式(101)であり、上記一般式(A5)中のR51、R52及びR53中の全てが、それぞれ独立に、上記一般式(101)であり、上記一般式(A6)中のR61、R62、R63及びR64の全てが、それぞれ独立に、上記一般式(101)であることが好ましい。
上記R21、R22、R23、R31、R32、R33、R34、R41、R42、R43、R44、R45、R46、R51、R52、R53、R61、R62、R63及びR64が、上述の基であることで、上記化合物Aは、パターニング精度及び耐熱性により優れた組成物を形成可能となるからである。
【0014】
本発明においては、上記化合物Aが、上記一般式(A4)又は(A6)で表される化合物であることが好ましい。上記化合物Aは、パターニング精度及び耐熱性により優れた組成物を形成可能となるからである。
【0015】
本発明においては、上記Rが、-CO-O-又は-CO-NR-で硫黄原子側末端のメチレン基が置換された、一価の炭素原子数1~40の脂肪族基又は一価の炭素原子数6~35の芳香族炭化水素環含有基であることが好ましい。上記Rが、上述の基であることで、上記化合物Aは、パターニング精度及び耐熱性により優れた組成物を形成可能となるからである。
【0016】
本発明は、上述の化合物を含むチオール発生剤である。
【0017】
本発明によれば、上記化合物Aを含むことにより、上記チオール発生剤は、パターニング精度及び耐熱性に優れた組成物を形成可能となる。
【0018】
本発明は、下記一般式(A)で表される化合物と、チオール反応性を有する重合性成分(以下、重合性成分Bと称する場合がある。)と、を有する組成物である。
【0019】
【化4】
(式中、Rは、一価の炭素原子数1~40の脂肪族基、一価の炭素原子数6~35の芳香族炭化水素環含有基、一価の炭素原子数2~35の複素環含有基又は一価の炭素原子数0~40のシリル基を表し、
Xは、nと同数の価数を有する炭素原子数1~40の脂肪族基、炭素原子数6~35の芳香族炭化水素環含有基又は炭素原子数2~35の複素環含有基を表し、
前記脂肪族基、芳香族炭化水素環含有基、複素環含有基及びシリル基中のメチレン基の1つ又は2つ以上は、-O-、-S-、-CO-、-O-CO-、-CO-O-、-O-CO-O-、-S-CO-、-CO-S-、-S-CO-O-、-O-CO-S-、-CO-NH-、-NH-CO-、-NH-CO-O-、-O-CO-NH-、-NR’-、-S-S-若しくは-SO-から選ばれた基で置き換えられている場合があるか、又は酸素原子が隣り合わない条件でこれらの基を組み合わせた基で置き換えられている場合があり、
nは2以上10以下の整数を表す。)
【0020】
本発明によれば、上記組成物は、上記化合物Aを含むため、パターニング精度及び耐熱性に優れたものとなる。
【0021】
本発明においては、上記チオール反応性を有する重合性成分が、ラジカル重合性化合物を含むことが好ましい。上記組成物は、硬化速度に優れたものとなるからである。また、上記化合物Aを用いた架橋が容易だからである。
【0022】
本発明は、上述の組成物の硬化物である。
【0023】
本発明によれば、上記硬化物は、上記化合物Aを含むため、パターニング精度及び耐熱性に優れたものとなる。
【0024】
本発明は、上記一般式(A)で表される化合物により上記チオール反応性を有する重合性成分同士を架橋する工程を有する硬化物の製造方法を提供する。
【0025】
本発明によれば、上記化合物Aにより上記重合性成分Bを架橋することにより、耐熱性に優れた硬化物を製造できる。
【0026】
本発明においては、上記チオール反応性を有する重合性成分同士を重合する工程を有することが好ましい。パターニング精度及び耐熱性により優れたものとなるからである。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、パターニング精度及び耐熱性に優れた組成物を形成可能な化合物を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】パターンにしわが発生している場合の光学顕微鏡観察画像の例。
図2】パターンにしわが発生している場合のSEM観察画像の例。
図3】パターンにしわが発生していない場合の光学顕微鏡観察画像の例。
図4】パターンにしわが発生していない場合のSEM観察画像の例。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明は、化合物、それを用いたチオール発生剤、組成物、硬化物及び硬化物の製造方法に関するものである。
以下、本発明の化合物、チオール発生剤、組成物、硬化物及び硬化物の製造方法について詳細に説明する。
【0030】
A.化合物
まず、本発明の化合物について説明する。
本発明の化合物は、下記一般式(A)で表される化合物(以下「化合物A」ともいう。)である。
【0031】
【化5】
(式中、Rは、一価の炭素原子数1~40の脂肪族基、一価の炭素原子数6~35の芳香族炭化水素環含有基、一価の炭素原子数2~35の複素環含有基又は一価の炭素原子数0~40のシリル基を表し、
Xは、nと同数の価数を有する炭素原子数1~40の脂肪族基、炭素原子数6~35の芳香族炭化水素環含有基又は炭素原子数2~35の複素環含有基を表し、
前記脂肪族基、芳香族炭化水素環含有基、複素環含有基及びシリル基中のメチレン基の1つ又は2つ以上は、-O-、-S-、-CO-、-O-CO-、-CO-O-、-O-CO-O-、-S-CO-、-CO-S-、-S-CO-O-、-O-CO-S-、-CO-NH-、-NH-CO-、-NH-CO-O-、-O-CO-NH-、-NR’-、-S-S-若しくは-SO-から選ばれた基で置き換えられている場合があるか、又は酸素原子が隣り合わない条件でこれらの基を組み合わせた基で置き換えられている場合があり、
nは2以上10以下の整数を表す。)
【0032】
本発明によれば、上記構造を有することにより、上記化合物Aは、パターニング精度及び耐熱性に優れた組成物を形成可能となる。
上記構造を有することにより、上記化合物Aが、パターニング精度及び耐熱性に優れた組成物を形成可能となる理由については、以下のように推察される。
【0033】
上記化合物Aは、チオール基がRにより保護されているため、パターニングの終了後まで、例えば、組成物中の重合性成分B同士を重合する工程及び現像工程の実施後まで、重合性成分B同士を架橋する架橋反応の進行を抑制できる。
その結果、上記化合物Aは、上記重合する工程時や現像工程の途中等に所望のパターンを超えて組成物の硬化が進行することを抑制でき、パターニング精度に優れたものとなる。
また、上記化合物Aは、例えば加熱処理等により、保護基Rを脱離して2以上のチオール基を発生することで、重合性成分B同士を架橋する架橋反応が可能となる。そして、架橋反応の進行により硬化物の架橋密度が向上する。
その結果、硬化物は、ポストベーク等の加熱処理時の収縮の少ないもの、すなわち、耐熱性に優れた硬化物を得ることができる。
以上のことから、上記化合物Aは、パターニング精度及び耐熱性に優れた組成物を形成可能となるのである。
また、架橋反応は、重合開始剤の不存在下でも進行することから、硬化物表面のみならず、硬化物表面から厚み方向に深い深部でも進行することができる。その結果、硬化物の表面側と裏面側とで架橋密度の差が小さいものとなり、例えば、架橋密度の差による反り、しわの発生が抑制される。
また、パターニング精度に優れたものとなるとの効果により、上記化合物Aは、線幅の細いパターン状硬化物の形成が容易となると共に、露光時間のばらつきによる線幅の変動の少ない露光マージンに優れた組成物を容易に得ることができる。
さらに、耐熱性に優れた硬化物を得ることができるとの効果により、上記化合物Aは、硬化処理として加熱処理が必要とされる部材の形成に用いることで、膜厚の厚い部材の形成が容易となる。
さらにまた、線幅の細いパターン状硬化物の形成が容易となる効果及び膜厚の厚い部位剤の形成が容易となる効果を同時に達成することにより、例えば、微細かつアスペクト比の高いパターン状の硬化物の形成が容易となる。また、アスペクト比の高い硬化物を形成するに際して、組成物の塗膜の薄膜化が容易となり、例えば、低コスト化を図ることが容易となるとの効果を発揮できる。
また、上記化合物Aを用いないでアスペクト比の高い硬化物を形成する方法としては、露光量を低減する方法も考えられる。この場合には、硬化物の硬化度低下及びそれにより生じる現像マージンの低下が想定される。これに対して、上記化合物Aを用いた場合には、アスペクト比の高いパターン状の硬化物の形成が容易であるとの効果により、露光量の低減が不要となり、現像マージンの高いパターン状の硬化物を容易に得ることができる。
以上のことから、上記化合物Aは、パターン状硬化物形成用の組成物に用いられることで、パターニング精度及び耐熱性に優れ、線幅の細いパターン状硬化物、アスペクト比の高いパターン状硬化物の形成に適した組成物を得ることができる。また、上記化合物Aは、パターン状硬化物の形成時の露光マージン、現像マージンに優れ、工程通過性に優れた組成物を得られる。
また、上記化合物Aは、これを硬化性組成物に添加することで、露光による硬化処理後の現像の際に、硬化物のアルカリ現像液への耐性向上を図ることができる。したがって、上記化合物を含む組成物は、アルカリ現像時間のばらつきに対してパターン状の硬化物を安定的に形成できる。このようなことから、現像工程における現像マージンに優れたものとすることができ、この結果からも、パターニング精度に優れたものとすることが容易となる。
以上のことから、上記化合物Aは、重合する工程で発揮される優れたパターニング精度、現像工程で発揮される優れた現像マージン、及び、その後のポストベーク工程等の加熱処理工程の実施時に発揮される優れた耐熱性をバランスよく発揮でき、全体としてパターニング精度及び耐熱性に優れたものとなるのである。このようなことから、上記化合物Aは、例えば、パターニング状硬化物形成用硬化性組成物に特に適したものとなるのである。
【0034】
上記Rで表される一価の炭素原子数1~40の脂肪族基としては、芳香族炭化水素環及び複素環を含まないものであればよく、例えば、炭素原子数1~40のアルキル基、炭素原子数2~40のアルケニル基、炭素原子数3~40のシクロアルキル基、炭素原子数4~40のシクロアルキルアルキル基及びこれらの基の水素原子の1つ又は2つ以上が後述する置換基により置換された基等が挙げられる。
本発明において、脂肪族基とは脂肪族化合物から任意の原子を除いた基を指す。
【0035】
上記炭素原子数1~40のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、iso-プロピル、ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、iso-ブチル、アミル、iso-ペンチル、tert-ペンチル、シクロペンチル、ヘキシル、2-ヘキシル、3-ヘキシル、シクロヘキシル、4-メチルシクロヘキシル、ヘプチル、2-ヘプチル、3-ヘプチル、iso-ヘプチル、tert-ヘプチル、1-オクチル、iso-オクチル、tert-オクチル、アダマンチル等が挙げられる。
【0036】
上記炭素原子数2~40のアルケニル基としては、例えば、ビニル、エチレン、2-プロペニル、3-ブテニル、2-ブテニル、4-ペンテニル、3-ペンテニル、2-ヘキセニル、3-ヘキセニル、5-ヘキセニル、2-ヘプテニル、3-ヘプテニル、4-ヘプテニル、3-オクテニル、3-ノネニル、4-デセニル、3-ウンデセニル、4-ドデセニル及び4,8,12-テトラデカトリエニルアリル等が挙げられる。
【0037】
上記炭素原子数3~40のシクロアルキル基とは、3~40の炭素原子を有する、飽和単環式又は飽和多環式アルキル基を意味する。上記炭素原子数3~40のシクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、アダマンチル、デカハイドロナフチル、オクタヒドロペンタレン及びビシクロ[1.1.1]ペンタニル等が挙げられる。
【0038】
上記炭素原子数4~40のシクロアルキルアルキル基とは、アルキル基の水素原子が、シクロアルキル基で置換された炭素原子数4~40の基を意味する。上記炭素原子数4~40のシクロアルキルアルキル基としては、例えば、シクロプロピルメチル、2-シクロブチルエチル、3-シクロペンチルプロピル、4-シクロヘキシルブチル、シクロヘプチルメチル、シクロオクチルメチル、2-シクロノニルエチル、2-シクロデシルエチル、3-アダマンチルプロピル及びデカハイドロナフチルプロピル等が挙げられる。
【0039】
上記Rで表される一価の炭素原子数6~35の芳香族炭化水素環含有基としては、芳香族炭化水素環を含むものであればよく、例えば、炭素原子数6~35のアリール基、炭素原子数7~35のアリールアルキル基及びこれらの基の水素原子の1つ又は2つ以上が後述する置換基により置換された基等が挙げられる。
また、芳香族炭化水素環含有基は、通常、複素環基を含まないものである。
【0040】
上記炭素原子数6~35のアリール基としては、フェニル、ナフチル、アントラセニル等が挙げられる。
【0041】
上記炭素原子数7~35のアリールアルキル基としては、ベンジル、フルオレニル、インデニル、9-フルオレニルメチル基等が挙げられる。
【0042】
上記Rで表される一価の炭素原子数2~35の複素環含有基としては、複素環を含むものであればよく、ピリジル、ピリミジル、ピリダジル、ピペリジル、ピラニル、ピラゾリル、トリアジル、ピロリル、キノリル、イソキノリル、イミダゾリル、ベンゾイミダゾリル、トリアゾリル、フリル、フラニル、ベンゾフラニル、チエニル、チオフェニル、ベンゾチオフェニル、チアジアゾリル、チアゾリル、ベンゾチアゾリル、オキサゾリル、ベンゾオキサゾリル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、インドリル、2-ピロリジノン-1-イル、2-ピペリドン-1-イル、2,4-ジオキシイミダゾリジン-3-イル、2,4-ジオキシオキサゾリジン-3-イル及びこれらの基の水素原子の1つ又は2つ以上が後述する置換基により置換された基等が挙げられる。
【0043】
上記Rで表される一価の炭素原子数0~40のシリル基としては、ケイ素原子を含むものであればよく、水素原子が未置換のシリル基、水素原子が他の置換基で置換された置換シリル基及びこれらの基の水素原子の1つ又は2つ以上が後述する置換基により置換された基等が挙げられる。
上記置換シリル基としては、モノアルキルシリル基、モノアリールシリル基、ジアルキルシリル基、ジアリールシリル基、トリアルキルシリル基、トリアリールシリル基、モノアルキルジアリールシリル基、ジアルキルモノアリールシリル基といったシリル基が挙げられる。
上記モノアルキルシリル基としては、モノメチルシリル基、モノエチルシリル基、モノブチルシリル基、モノイソプロピルシリル基、モノデカンシリル、モノイコサンシリル基、モノトリアコンタンシリル基等が挙げられる。
上記モノアリールシリル基としては、モノフェニルシリル基、モノトリルシリル基、モノナフチルシリル基、モノアンスリルシリル基等が挙げられる。
上記ジアルキルシリル基としては、ジメチルシリル基、ジエチルシリル基、ジメチルエチルシリル基、ジイソプロピルシリル基、ジブチルシリル基、ジオクチルシリル基、ジデカンシリル基等が挙げられる。
上記ジアリールシリル基としては、ジフェニルシリル基、ジトリルシリル基等が挙げられる。
上記トリアルキルシリル基としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、ジメチルエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、トリブチルシリル基、トリオクチルシリル基等が挙げられる。
上記トリアリールシリル基としては、トリフェニルシリル基、トリトリルシリル基等が挙げられる。
上記モノアルキルジアリールシリル基としては、メチルジフェニルシリル基、エチルジフェニルシリル基等が挙げられる。
上記ジアルキルモノアリールシリル基としては、ジメチルフェニルシリル基、メチルエチルフェニル基等が挙げられる。
【0044】
上記Rにおける脂肪族基、芳香族炭化水素環含有基、複素環含有基及びシリル基中のメチレン基の1つ又は2つ以上は、-O-、-S-、-CO-、-O-CO-、-CO-O-、-O-CO-O-、-S-CO-、-CO-S-、-S-CO-O-、-O-CO-S-、-CO-NH-、-NH-CO-、-NH-CO-O-、-O-CO-NH-、-NR’-、-S-S-若しくは-SO-から選ばれた基で置き換えられていてもよく、又は酸素原子が隣り合わない条件でこれらの基を組み合わせた基で置き換えられていてもよい。
すなわち、Rは、脂肪族基、芳香族炭化水素環含有基、複素環含有基及びシリル基中のメチレン基の1つ又は2つ以上が、-O-、-S-、-CO-、-O-CO-、-CO-O-、-O-CO-O-、-S-CO-、-CO-S-、-S-CO-O-、-O-CO-S-、-CO-NH-、-NH-CO-、-NH-CO-O-、-O-CO-NH-、-NR’-、-S-S-若しくは-SO-から選ばれた基、又は酸素原子が隣り合わない条件でこれらの基を組み合わせた基で置き換えられた構造の基であってもよい。
上記R’は、水素原子又は炭素原子数1~8のアルキル基を表し、該炭素原子数1~8のアルキル基としては、上記Rで表されるアルキル基のうち所定の炭素原子数を満たすものが挙げられる。
【0045】
上記Rにおける脂肪族基、芳香族炭化水素環含有基、複素環含有基及びシリル基等の各官能基は、特に断りがない限り、置換基を有していない無置換の基又は置換基を有している基である。
上記脂肪族基、芳香族炭化水素環含有基、複素環含有基及びシリル基中の水素原子の1つ又は2つ以上を置換する置換基、より具体的には、上述のアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルキルアルキル基、アリール基、アリールアルキル基、複素環含有基及びシリル基中の水素原子の1つ又は2つ以上を置換する置換基としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子;アセチル、2-クロロアセチル、プロピオニル、オクタノイル、フェニルカルボニル(ベンゾイル)、フタロイル、4-トリフルオロメチルベンゾイル、ピバロイル、サリチロイル、オキザロイル、ステアロイル、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t-ブトキシカルボニル、n-オクタデシルオキシカルボニル、カルバモイル等のアシル基;アセチルオキシ、ベンゾイルオキシ等のアシルオキシ基;アミノ、エチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ブチルアミノ、シクロペンチルアミノ、2-エチルヘキシルアミノ、ドデシルアミノ、アニリノ、クロロフェニルアミノ、トルイジノ、アニシジノ、N-メチル-アニリノ、ジフェニルアミノ、ナフチルアミノ、2-ピリジルアミノ、メトキシカルボニルアミノ、フェノキシカルボニルアミノ、アセチルアミノ、ベンゾイルアミノ、ホルミルアミノ、ピバロイルアミノ、ラウロイルアミノ、カルバモイルアミノ、N,N-ジメチルアミノカルボニルアミノ、N,N-ジエチルアミノカルボニルアミノ、モルホリノカルボニルアミノ、メトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、t-ブトキシカルボニルアミノ、n-オクタデシルオキシカルボニルアミノ、N-メチル-メトキシカルボニルアミノ、フェノキシカルボニルアミノ、スルファモイルアミノ、N,N-ジメチルアミノスルホニルアミノ、メチルスルホニルアミノ、ブチルスルホニルアミノ、フェニルスルホニルアミノ等の置換アミノ基;スルホンアミド基、スルホニル基、カルボキシル基、シアノ基、スルホ基、水酸基、ニトロ基、イミド基、カルバモイル基、スルホンアミド基、ホスホン酸基、リン酸基又はカルボキシル基、スルホ基、ホスホン酸基、リン酸基の塩等が挙げられる。
なお、上記炭素原子数1~40の脂肪族基の水素原子が置換されている場合の炭素原子数とは、水素原子が置換された後の炭素原子数を指し、水素原子が置換される前の炭素原子数を指すのではない。以下、その他の基中の水素原子が置換されている場合も同じである。
また、上記炭素原子数1~40の脂肪族基中のメチレン基が置換されている場合の炭素原子数とは、メチレン基が置換された後の炭素原子数を指し、メチレン基が置換される前の炭素原子数を指すのではない。以下、その他の基中のメチレン基が置換されている場合も同じである。
【0046】
上記Rは、パターニング精度及び耐熱性により優れた組成物を形成可能な化合物を得るとの観点からは、一価の炭素原子数1~40の脂肪族基、一価の炭素原子数6~35の芳香族炭化水素環含有基、一価の炭素原子数2~35の複素環含有基又は一価の炭素原子数0~40のシリル基の硫黄原子側末端のメチレン基が-CO-O-又は-CO-NH-に置き換えられた、一価の炭素原子数1~40の脂肪族基、一価の炭素原子数6~35の芳香族炭化水素環含有基、一価の炭素原子数2~35の複素環含有基又は一価の炭素原子数0~40のシリル基であることが好ましい。
すなわち、上記Rは、一価の炭素原子数1~40の脂肪族基、一価の炭素原子数6~35の芳香族炭化水素環含有基、一価の炭素原子数2~35の複素環含有基又は一価の炭素原子数0~40のシリル基の硫黄原子側末端のメチレン基が、-CO-O-又は-CO-NH-に置き換えられた構造の基であることが好ましい。
【0047】
上記Rは、-CO-O-又は-CO-NH-で硫黄原子側末端が置換された、一価の炭素原子数1~40の脂肪族基又は一価の炭素原子数6~35の芳香族炭化水素環含有基であることがより好ましく、更に、-CO-O-又は-CO-NH-で硫黄原子側末端が置換された、炭素原子数1~40のアルキル基又は炭素原子数6~35のアリールアルキル基であることが好ましい。特に、-CO-O-で硫黄原子側末端が置換された、炭素原子数1~40のアルキル基、すなわち、-CO-O-R’’(R’’は置換基を有している場合がある炭素原子数1~39のアルキル基)で表される基又は-CO-NH-で硫黄原子側末端が置換された、炭素原子数6~35のアリールアルキル基、すなわち、-CO-NH-R’’’(R’’’は置換基を有している場合がある炭素原子数6~34のアリール基又は炭素原子数6~34のアリールアルキル基)で表される基であることが好ましく、なかでも特に、-CO-O-R’’で表される基であることが好ましい。上記Rが、上述の基であることで、上記化合物Aは、パターニング精度及び耐熱性により優れた組成物を形成可能となるからである。
すなわち、上記Rは、一価の炭素原子数1~40の脂肪族基又は一価の炭素原子数6~35の芳香族炭化水素環含有基の硫黄原子側末端のメチレン基が、-CO-O-又は-CO-NH-で置換された構造の基であることがより好ましく、更に、炭素原子数1~40のアルキル基又は炭素原子数6~35のアリールアルキル基の硫黄原子側末端のメチレン基が、-CO-O-又は-CO-NH-で置換された構造の基であることが好ましい。特に、炭素原子数1~40のアルキル基の硫黄原子側末端のメチレン基が、-CO-O-で置換された構造の基、すなわち、-CO-O-R’’(R’’は置換基を有していてもよい炭素原子数1~39のアルキル基)で表される基、又は炭素原子数6~35のアリールアルキル基の硫黄原子側末端のメチレン基が、-CO-NH-で置換された構造の基、すなわち、-CO-NH-R’’’(R’’’は置換基を有していてもよい炭素原子数6~34のアリール基又は炭素原子数6~34のアリールアルキル基)で表される基であることが好ましく、なかでも特に、-CO-O-R’’で表される基であることが好ましい。
【0048】
本発明において、上記R’’は、置換基を有していてもよい炭素原子数1~20のアルキル基であることが好ましく、なかでも、置換基を有していてもよい炭素原子数1~8のアルキル基であることが好ましく、特に、無置換の炭素原子数1~8のアルキル基であることが好ましく、なかでも特に、無置換の炭素原子数3~6のアルキル基であることが好ましく、なかでも特に、iso-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、iso-ブチル、n-ペンチル、iso-ペンチル、tert-ペンチルであることが好ましく、なかでも特に、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、iso-ブチル、tert-ブチル、すなわち、Rが、-CO-O-Cで表される基であることが好ましく、なかでも特にR’’がtert-ブチルであること、すなわち、Rが、-CO-O-tert-ブチル基であることが好ましい。
また、上記R’’’は、炭素原子数6~12のアリールアルキル基であることが好ましい。上記R’’及びR’’’が上述の基であることで、上記化合物Aは、Rの脱離制御が容易となるからである。
【0049】
上記nは、2以上10以下の整数であるが、パターニング精度及び耐熱性により優れた組成物を形成可能な化合物を得るとの観点からは、3以上8以下であることが好ましく、なかでも、4以上7以下であることが好ましく、特に、4以上6以下であることが好ましい。上記nが上述の範囲であることで、上記化合物Aは、耐熱性により優れた組成物を得ることができるからである。
本発明においては、パターニング精度及び耐熱性に優れると共に、架橋密度及び疎水性のバランスに優れ、アルカリ現像時間のばらつきに対してパターン状の硬化物を安定的に形成可能な組成物が形成容易となるとの観点からは、上記nが5以上6以下であることが好ましい。
【0050】
上記Xは、n個の-SRを結合する連結基として用いられるものである。
上記Xで表される、nと同数の価数を有する炭素原子数1~40の脂肪族基、炭素原子数6~35の芳香族炭化水素環含有基及び炭素原子数2~35の複素環含有基とは、それぞれ、一価の炭素原子数1~40の脂肪族基、一価の炭素原子数6~35の芳香族炭化水素環含有基及び一価の炭素原子数2~35の複素環含有基から、n-1個の水素原子を除いた構造の基である。
上記一価の炭素原子数1~40の脂肪族基、一価の炭素原子数6~35の芳香族炭化水素環含有基及び一価の炭素原子数2~35の複素環含有基としては、上記Rで表される一価の炭素原子数1~40の脂肪族基、一価の炭素原子数6~35の芳香族炭化水素環含有基及び一価の炭素原子数2~35の複素環含有基と同様の基が挙げられる。
上記Xにおける脂肪族基、芳香族炭化水素環含有基及び複素環含有基中のメチレン基の1つ又は2つ以上は、-O-、-S-、-CO-、-O-CO-、-CO-O-、-O-CO-O-、-S-CO-、-CO-S-、-S-CO-O-、-O-CO-S-、-CO-NH-、-NH-CO-、-NH-CO-O-、-O-CO-NH-、-NR’-、-S-S-若しくは-SO-から選ばれた基で置き換えられていてもよく、又は酸素原子が隣り合わない条件でこれらの基を組み合わせた基で置き換えられていてもよい。
すなわち、Xは、脂肪族基、芳香族炭化水素環含有基及び複素環含有基中のメチレン基の1つ又は2つ以上が、-O-、-S-、-CO-、-O-CO-、-CO-O-、-O-CO-O-、-S-CO-、-CO-S-、-S-CO-O-、-O-CO-S-、-CO-NH-、-NH-CO-、-NH-CO-O-、-O-CO-NH-、-NR’-、-S-S-若しくは-SO-から選ばれた基、又は酸素原子が隣り合わない条件でこれらの基を組み合わせた基で置き換えられた構造の基であってもよい。
上記R’は、水素原子又は炭素原子数1~8のアルキル基を表し、該炭素原子数1~8のアルキル基としては、上記Rで表されるアルキル基のうち所定の炭素原子数を満たすものが挙げられる。
【0051】
上記Xで表される二価の炭素原子数1~40の脂肪族基としては、上記一価の炭素原子数1~40の脂肪族基から水素原子を1つ除いた構造の基が挙げられ、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ブチルジイル等のアルキレン;上記アルキレンのメチレン鎖が-O-、-S-、-CO-O-、-O-CO-で置き換えられた基;エタンジオール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール等のポリオールの残基(例えば、後述する一般式(X1)で表される基)を含む基;エタンジチオール、プロパンジチオール、ブタンジチオール、ペンタンジチオール、ヘキサンジチオール等のジチオールの残基及びこれらの基が後述する置換基により置換された基等が挙げられる。
上記Xで表される三価の炭素原子数1~40の脂肪族基としては、上記一価の炭素原子数1~40の脂肪族基から水素原子を2つ除いた構造の基が挙げられ、例えば、プロピリジン、1,1,3-ブチリジン等のアルキリジン;トリメチロールプロパン等のポリオールの残基(例えば、後述する一般式(X2)で表される基)を含む基及びこれらの基が後述する置換基により置換された基が挙げられる。
上記Xで表される四価の炭素原子数1~40の脂肪族基としては、上記一価の炭素原子数1~40の脂肪族基から水素原子を3つ除いた構造の基が挙げられ、例えば、ペンタエリスリトール等のポリオールの残基(例えば、後述する一般式(X3)で表される基)を含む基及びこれらの基が後述する置換基により置換された基が挙げられる。
上記Xで表される六価の炭素原子数1~40の脂肪族基としては、上記一価の炭素原子数1~40の脂肪族基から水素原子を5つ除いた構造の基が挙げられ、例えば、ジペンタエリスリトール等のポリオールの残基(例えば、後述する一般式(X4)で表される基)を含む基及びこれらの基が後述する置換基により置換された基が挙げられる。
【0052】
上記Xで表される二価の炭素原子数6~35の芳香族炭化水素環含有基としては、上記一価の炭素原子数6~35の芳香族炭化水素環含有基から水素原子を1つ除いた構造の基が挙げられ、例えば、フェニレン、ナフチレン等のアリーレン基;カテコール、ビスフェノール等の二官能フェノールの残基;2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン等及びこれらの基が後述する置換基により置換された基が挙げられる。
上記Xで表される三価の炭素原子数6~35の芳香族炭化水素環含有基としては、上記一価の炭素原子数6~35の芳香族炭化水素環含有基から水素原子を2つ除いた構造の基が挙げられ、例えば、フェニル-1,3,5-トリメチレン及びこれらの基が後述する置換基により置換された基が挙げられる。
【0053】
上記Xで表される二価の炭素原子数2~35の複素環含有基としては、上記一価の炭素原子数2~35の複素環含有基から水素原子を1つ除いた構造の基が挙げられ、例えば、ピリジン環、ピリミジン環、ピペリジン環、ピペラジン環、トリアジン環、フラン環、チオフェン環、インドール環等を有する基及びこれらの基の水素原子の1つ又は2つ以上が後述する置換基により置換された基が挙げられる。
上記Xで表される三価の炭素原子数2~35の複素環含有基としては、上記一価の炭素原子数2~35の複素環含有基から水素原子を2つ除いた構造の基が挙げられ、例えば、イソシアヌル環を有する基(例えば、後述する一般式(X5)で表される構造を有する基)、トリアジン環を有する基及びこれらの基の水素原子の1つ又は2つ以上が後述する置換基により置換された基が挙げられる。
上記Xで表される四価の炭素原子数2~35の複素環含有基としては、上記一価の炭素原子数2~35の複素環含有基から水素原子を3つ除いた構造の基が挙げられ、例えば、グリコールウリル基(例えば、後述する一般式(X6)で表される構造)を有する基及びこの基の水素原子が後述する置換基により置換された基が挙げられる。
【0054】
上記Xにおける脂肪族基、芳香族炭化水素環含有基及び複素環含有基等の各官能基は、置換基を有している場合があるものであり、特に断りがない限り、置換基を有していない無置換の官能基又は置換基を有している官能基である。
このような脂肪族基、芳香族炭化水素環含有基、複素環含有基等の各官能基の水素原子の1つ又は2つ以上を置換する置換基としては、上記Rにおける脂肪族基等の水素原子を置換する置換基と同様の内容とすることができる。
【0055】
本発明においては、パターニング精度及び耐熱性により優れた組成物を形成可能な化合物を得るとの観点からは、上記Xが、炭素原子数1~40の脂肪族基又は炭素原子数2~35の複素環含有基であることが好ましく、なかでも、炭素原子数10~40の脂肪族基、炭素原子数5~25の複素環含有基であることが好ましく、特に、炭素原子数15~30の脂肪族基、炭素原子数10~20の複素環含有基であることが好ましく、なかでも特に、炭素原子数25~30の脂肪族基、炭素原子数11~15の複素環含有基であることが好ましい。上記Xが上述の基であることで、パターニング精度及び耐熱性により優れた組成物を形成可能な化合物が得られるからである。
【0056】
本発明においては、化合物Aの合成容易の観点からは、上記Xにおける炭素原子数1~40の脂肪族基、炭素原子数6~35の芳香族炭化水素環含有基及び炭素原子数2~35の複素環含有基中のメチレン基の1つ又は2つ以上が、-O-、-S-、-CO-、-O-CO-、-CO-O-、-O-CO-O-、-S-CO-、-CO-S-、-S-CO-O-、-O-CO-S-、-CO-NH-、-NH-CO-、-NH-CO-O-、-O-CO-NH-、-NR’-、-S-S-若しくは-SO-から選ばれた基で置き換えられている場合があるか、又は酸素原子が隣り合わない条件でこれらの基を組み合わせた基で置き換えられていることが好ましく、なかでも、メチレン基の1つ又は2つ以上が、-O-CO-、-CO-O-で置き換えられていることが好ましく、特に、n個のメチレン基が、-O-CO-、-CO-O-で置き換えられていることが好ましい。
すなわち、上記Xは、炭素原子数1~40の脂肪族基、炭素原子数6~35の芳香族炭化水素環含有基及び炭素原子数2~35の複素環含有基中のメチレン基の1つ又は2つ以上が、-O-、-S-、-CO-、-O-CO-、-CO-O-、-O-CO-O-、-S-CO-、-CO-S-、-S-CO-O-、-O-CO-S-、-CO-NH-、-NH-CO-、-NH-CO-O-、-O-CO-NH-、-NR’-、-S-S-若しくは-SO-から選ばれた基、又は酸素原子が隣り合わない条件でこれらの基を組み合わせた基で置き換えられた構造の基であることが好ましく、なかでも、メチレン基の1つ又は2つ以上が、-O-CO-又は-CO-O-で置き換えられた構造の基であることが好ましく、特に、n個のメチレン基が、-O-CO-又は-CO-O-で置き換えられた基であることが好ましい。
【0057】
本発明においては、上記Xで表される炭素原子数1~40の脂肪族基が、ポリオールの残基(例えば、下記一般式(X1)~(X4)で表される基)を有する基であることが好ましい。
また、上記Xで表される炭素原子数2~35の複素環含有基が、イソシアヌル環(下記一般式(X5)で表される構造)又はグリコールウリル基(下記一般式(X6)で表される構造)を有する基であることが好ましい。
上記Xが上述の基であることで、パターニング精度及び耐熱性により優れた組成物を形成可能な化合物が得られるからである。また、上記化合物Aは、合成容易となるからである。
なお、上記一般式(X1)~(X6)で表される構造中の水素原子は、置換基により置換されていてもよい。上記水素原子を置換する置換基については、上記Rにおける脂肪族基等の水素原子を置換する置換基と同様の内容とすることができる。
【0058】
【化6】
(式中、a1は、1~20の整数であり、*は、結合箇所を表す。)
【0059】
上記a1は、1~20の整数であるが、2~10の整数であることが好ましく、なかでも、3~5の整数であることが好ましい。
【0060】
上記化合物Aとしては、より具体的には、下記一般式(A1)~(A6)で表される化合物を好ましく用いることができる。
本発明においては、なかでも、上記化合物Aが、下記一般式(A4)又は(A6)で表される化合物であることが好ましい。上記化合物Aは、上記構造の化合物であることで、パターニング精度及び耐熱性により優れた組成物を形成可能な化合物となり、特に、耐熱性に優れた組成物を形成可能となるからである。
本発明においては、なかでも、上記化合物Aが、下記一般式(A4)で表される化合物であることが好ましい。パターニング精度及び耐熱性と共に、現像マージンにより優れたものとなる結果、特にパターニング精度に優れたものとなるからである。
【0061】
上記一般式(A4)及び(A6)で表される化合物であることで、パターニング精度及び耐熱性の両者に優れると共に、特に、耐熱性に優れた組成物を形成可能な化合物となる理由については、以下のように推察される。
一般式(A4)で表される化合物は、保護基の脱離後に発生するチオール基の数が6つと多く、そのチオール基が全方位に伸びるように配置される。このため、上記化合物Aが含まれることで、上記化合物A周囲に架橋密度の高い領域を形成することができる。その結果、耐熱性に優れたものになる。
また、上記一般式(A4)で表される化合物が有する、6つの保護チオール基又はチオール基を結合する部位に含まれる(X4)で表される構造は、比較的分子量が大きく、かつ、中心の酸素原子から6方向に広がる構造を有することで、架橋による硬化収縮が少ない。このため、加熱処理時の収縮の少ないものとすることが容易となる。このようなことから、上記一般式(A4)で表される化合物は、パターニング精度及び耐熱性のバランスに優れたものとすることができると共に、特に優れた耐熱性を発揮することが容易である。
また、上記一般式(A4)で表される化合物は、6方向に広がる構造を有すること、及び、大きい分子量であることで、組成物中の拡散速度が低い。このため、一部の化合物から保護基が脱離したとしても、重合性成分同士の架橋が進行しにくい。その結果、パターニング精度により優れたものとなる。
また、6つの保護チオール基又はチオール基を結合する部位に含まれる(X4)で表される構造は、比較的分子量が大きく、疎水性の高い部位としやすい。このため、上記一般式(A4)で表される化合物は、アルカリ現像液への耐性に優れた硬化物の形成が容易となり、上記化合物を含む組成物は、現像マージンに優れたものとなる。
以上のように、上記一般式(A4)で表される化合物は、重合する工程で発揮される優れたパターニング精度、現像工程で発揮される優れた現像マージン及びその結果得られるパターニング精度の向上、及び、その後のポストベーク工程等の加熱処理工程時で発揮される優れた耐熱性等を、パターニング工程の各工程で効果的に発揮できる。
このようなことから、上記一般式(A4)で表される化合物は、例えば、パターニング状硬化物形成用硬化性組成物に特に適したものとなるのである。
また、一般式(A6)で表される化合物は、保護基の脱離後に発生するチオール基の数が4つと多く、そのチオール基が全方位に伸びるように配置されると共に、剛直なグリコールウリル基を有する。このため、上記化合物Aが含まれることで、上記化合物A周囲に架橋密度の高い領域を形成することができる。その結果、耐熱性に優れたものになる。
また、上記一般式(A6)で表される化合物が有する、グリコールウリル基は、剛直な構造であることで、架橋による硬化収縮が少ない。すなわち、加熱処理時の収縮の少ないものとすることが容易となる。このようなことから、上記一般式(A4)で表される化合物は、パターニング精度及び耐熱性のバランスに優れたものとすることができると共に、特に優れた耐熱性を発揮することが容易である。
また、上記一般式(A6)で表される化合物は、剛直なグリコールウリル基を有し、かさ高い構造であるため、組成物中での拡散速度が低い。このため、一部の化合物から保護基が脱離したとしても、重合性成分同士の架橋が進行しにくい。その結果、パターニング精度により優れたものとなる。
【0062】
【化7】
(式中、R11及びR12は、それぞれ独立に、下記一般式(101)を表し、
11及びL12は、炭素原子数1~10のアルキレン基を表し、
a1は、1~20の整数を表し、
21、R22及びR23は、それぞれ独立に、下記一般式(101)又は(102)を表し、
21、R22及びR23のうち、いずれか2つ以上が、下記一般式(101)であり、
21、L22及びL23は、炭素原子数1~10のアルキレン基を表し、
24は、水素原子又は一価の炭素原子数1~40の脂肪族基を表し、
31、R32、R33及びR34は、それぞれ独立に、下記一般式(101)又は(102)を表し、
31、R32、R33及びR34のうち、いずれか2つ以上が、下記一般式(101)であり、
31、L32、L33及びL34は、炭素原子数1~10のアルキレン基を表し、
41、R42、R43、R44、R45及びR46は、それぞれ独立に、下記一般式(101)又は(102)を表し、
41、R42、R43、R44、R45及びR46のうち、いずれか2つ以上が、下記一般式(101)であり、
41、L42、L43、L44、L45及びL46は、炭素原子数1~10のアルキレン基を表し、
51、R52及びR53は、それぞれ独立に、下記一般式(101)又は(102)を表し、
51、R52及びR53のうち、いずれか2つ以上が、下記一般式(101)であり、
51、L52及びL53は、炭素原子数1~10のアルキレン基を表し、
61、R62、R63及びR64は、それぞれ独立に、下記一般式(101)又は(102)を表し、
61、R62、R63及びR64のうち、いずれか2つ以上が、下記一般式(101)であり、
61、L62、L63及びL64は、炭素原子数1~10のアルキレン基を表し、
65及びR66は、それぞれ独立に、水素原子又は一価の炭素原子数1~40の脂肪族基を表し、
前記脂肪族基中のメチレン基の1つ又は2つ以上は、-O-、-S-、-CO-、-O-CO-、-CO-O-、-O-CO-O-、-S-CO-、-CO-S-、-S-CO-O-、-O-CO-S-、-CO-NH-、-NH-CO-、-NH-CO-O-、-O-CO-NH-、-NR’-、-S-S-若しくは-SO-から選ばれた基で置き換えられている場合があるか、又は酸素原子が隣り合わない条件でこれらの基を組み合わせた基で置き換えられている場合がある。)
【0063】
【化8】
(式中、Rは、一価の炭素原子数1~40の脂肪族基、一価の炭素原子数6~35の芳香族炭化水素環含有基、一価の炭素原子数2~35の複素環含有基又は一価の炭素原子数0~40のシリル基を表し、
*は、結合箇所を表し、
前記脂肪族基、芳香族炭化水素環含有基、複素環含有基及びシリル基中のメチレン基の1つ又は2つ以上は、-O-、-S-、-CO-、-O-CO-、-CO-O-、-O-CO-O-、-S-CO-、-CO-S-、-S-CO-O-、-O-CO-S-、-CO-NH-、-NH-CO-、-NH-CO-O-、-O-CO-NH-、-NR’-、-S-S-若しくは-SO-から選ばれた基で置き換えられている場合があるか、又は酸素原子が隣り合わない条件でこれらの基を組み合わせた基で置き換えられている場合がある。)
【0064】
上記一般式(A2)中のR24並びに(A6)中のR65及びR66で表される一価の炭素原子数1~40の脂肪族基としては、上記Rで用いられる一価の炭素原子数1~40の脂肪族基と同様のものが挙げられる。
上記一般式(101)中のRは、上記一般式(A)中のRと同じである。
【0065】
上記L11、12、L21、L22、L23、L31、L32、L33、L34、L41、L42、L43、L44、L45、L46、L51、L52、L53、L61、L62、L63及びL64で表される炭素原子数1~10のアルキレン基としては、炭素原子数1~10のアルキル基から水素原子を1つ除いた構造の2価の基が挙げられる。
上記炭素原子数1~10のアルキル基としては、例えば、上記Rにおける炭素原子数1~40のアルキル基のうち所定の炭素原子数のものを用いることができる。
上記炭素原子数1~10のアルキレン基としては、より具体的には、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ブチルジイル等を挙げることができる。
また、上記炭素原子数1~10のアルキレン基としては、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよい。直鎖状のものとしては、例えば、炭素原子数3の基としては、プロパンの1、2位から水素原子を除去したプロピレン基を挙げることができ、プロパンの1、3位から水素原子を除去したトリメチレン基を挙げることができる。
【0066】
上記一般式(A2)中のR21、R22及びR23は、そのうちの2つ以上が、上記一般式(101)であればよいが、全てが上記一般式(101)であることが好ましい。
上記一般式(A3)中のR31、R32、R33及びR34は、そのうちの2つ以上が、上記一般式(101)であればよいが、3つ以上が上記一般式(101)であることが好ましく、なかでも、全てが上記一般式(101)であることが好ましい。
上記一般式(A4)中のR41、R42、R43、R44、R45及びR46中の2つ以上が、上記一般式(101)であればよいが、R41、R42、R43、R44、R45及びR46中の4つ以上が、上記一般式(101)であることが好ましく、なかでも、R41、R42、R43、R44、R45及びR46の全てが、上記一般式(101)であることが好ましい。
上記一般式(A5)中のR51、R52及びR53中の2つ以上が、上記一般式(101)であればよいが、R51、R52及びR53中の全てが、上記一般式(101)であることが好ましい。
上記一般式(A6)中のR61、R62、R63及びR64中の2つ以上が、上記一般式(101)であればよいが、R61、R62、R63及びR64の3つ以上が、上記一般式(101)であることが好ましく、R61、R62、R63及びR64の全てが、上記一般式(101)であることが好ましい。
上記R21、R22及びR23、R31、R32、R33及びR34、R41、R42、R43、R44、R45及びR46、R51、R52及びR53、R61、R62、R63及びR64が、上述の基であることで、上記化合物Aは、パターニング精度及び耐熱性により優れた組成物を形成可能となるからである。
【0067】
上記一般式(101)中のRとして好ましい構造は、上記一般式(A)中のRとして好ましい構造と同じである。
【0068】
本発明においては、上記R24が、炭素原子数1~40の脂肪族基であることが好ましく、なかでも、炭素原子数1~20のアルキル基であることが好ましく、なかでも、炭素原子数1~10のアルキル基であることが好ましく、特に、炭素原子数1~5のアルキル基であることが好ましく、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル等の炭素原子数1~3のアルキル基であることが好ましい。上記R24が、上述の基であることで、上記化合物Aは、パターニング精度及び耐熱性により優れた組成物を形成可能となるからである。
本発明においては、上記R65及びR66が、水素原子又は炭素原子数1~20のアルキル基であることが好ましく、なかでも、水素原子又は炭素原子数1~10のアルキル基であることが好ましく、特に、水素原子であることが好ましい。上記R65及びR66が、上述の基であることで、上記化合物Aは、パターニング精度及び耐熱性により優れた組成物を形成可能となるからである。
【0069】
上記一般式(A1)中のa1は、上記一般式(X1)中のa1と同じである。
【0070】
上記L11及びL12としては、炭素原子数1~5のアルキレン基であることが好ましく、なかでも、直鎖の炭素原子数1~3のアルキレン基又は分岐の3~5のアルキレン基であることが好ましい。
上記L11及びL12は、それぞれ同一の基であっても、異なる基であってもよいが、合成容易の観点からは、同一の基であることが好ましい。
上記L21、L22及びL23としては、炭素原子数1~5のアルキレン基であることが好ましく、なかでも、直鎖の炭素原子数1~3のアルキレン基又は分岐の3~5のアルキレン基であることが好ましい。
上記L21、L22及びL23は、それぞれ同一の基であっても、異なる基であってもよいが、合成容易の観点からは、同一の基であることが好ましい。
上記L31、L32、L33及びL34としては、炭素原子数1~5のアルキレン基であることが好ましく、なかでも、直鎖の炭素原子数1~3のアルキレン基又は分岐の3~5のアルキレン基であることが好ましい。
上記L31、L32、L33及びL34は、それぞれ同一の基であっても、異なる基であってもよいが、合成容易の観点からは、同一の基であることが好ましい。
上記L41、L42、L43、L44、L45及びL46としては、炭素原子数1~5のアルキレン基であることが好ましく、なかでも、直鎖の炭素原子数1~3のアルキレン基又は分岐の3~5のアルキレン基であることが好ましい。
上記L41、L42、L43、L44、L45及びL46は、それぞれ同一の基であっても、異なる基であってもよいが、合成容易の観点からは、同一の基であることが好ましい。
上記L51、L52及びL53としては、炭素原子数1~5のアルキレン基であることが好ましく、なかでも、直鎖の炭素原子数1~3のアルキレン基又は分岐の3~5のアルキレン基であることが好ましい。
上記L51、L52及びL53は、それぞれ同一の基であっても、異なる基であってもよいが、合成容易の観点からは、同一の基であることが好ましい。
上記L61、L62、L63及びL64としては、炭素原子数1~5のアルキレン基であることが好ましく、なかでも、直鎖の炭素原子数1~3のアルキレン基又は分岐の3~5のアルキレン基であることが好ましい。
上記L61、L62、L63及びL64は、それぞれ同一の基であっても、異なる基であってもよいが、合成容易の観点からは、同一の基であることが好ましい。
上記L11、12、L21、L22、L23、L31、L32、L33、L34、L41、L42、L43、L44、L45、L46、L51、L52、L53、L61、L62、L63及びL64が、上述の範囲であることで、パターニング精度及び耐熱性により優れた組成物を形成可能な化合物となるからである。
上記L11、12、L21、L22、L23、L31、L32、L33、L34、L41、L42、L43、L44、L45、L46、L51、L52、L53、L61、L62、L63及びL64で表される、直鎖の炭素原子数1~3のアルキレン基としては、具体的には、メチレン、エチレン(エタン-1,2-ジイル)、プロピレン(プロパン-1,3-ジイル)等が挙げられる。
上記L11、12、L21、L22、L23、L31、L32、L33、L34、L41、L42、L43、L44、L45、L46、L51、L52、L53、L61、L62、L63及びL64で表される、分岐の3~5のアルキレン基としては、具体的には、プロパン-1,1-ジイル、プロパン-1,2-ジイル、ブタン-1,1-ジイル、ブタン-1,2-ジイル、ブタン-1,3-ジイル、ペンタン-1,1-ジイル、ペンタン-1,2-ジイル、ペンタン-1,3-ジイル、ペンタン-1,4-ジイル等が挙げられる。
【0071】
上記化合物A中のチオール基(SH基)の数、すなわち、化合物A中の、保護基Rにより保護されていないチオール基の数としては、パターニング精度及び耐熱性により優れた組成物を形成可能となるものであればよく、少ないほど好ましい。
上記チオール基の数としては、化合物A中に2以下であることが好ましく、1以下であることが好ましく、0であること、すなわち、上記化合物Aが、チオール基を含まないものであることが好ましい。パターニング精度及び耐熱性により優れた組成物を形成可能となるからである。
【0072】
上記化合物Aの分子量としては、パターニング精度及び耐熱性により優れた組成物を形成可能となるものであればよく、例えば、3000以下であることが好ましく、なかでも300以上2500以下であることが好ましく、特に、500以上2000以下であることが好ましく、なかでも特に、600以上1800以下であることが好ましい。
また、上記化合物Aの分子量は、パターニング精度及び耐熱性に優れると共に、上記化合物を含む組成物が、現像マージンに優れたものとなるとの観点、特に優れた耐熱性を発揮する観点からは、1000以上1700以下であることが好ましく、1200以上1600以下であることがより好ましく、特に、1300以上1500以下であることが好ましい。
化合物Aの保護基Rの脱離後の化合物の分子量、すなわち、保護基Rにより-SH基が保護されていないチオール化合物の分子量は、パターニング精度及び耐熱性に優れると共に、上記化合物を含む組成物が、現像マージンに優れたものとなるとの観点、特に優れた耐熱性を発揮する観点からは、400以上1000以下であることが好ましく、500以上900以下であることがより好ましく、特に、600以上800以下であることが好ましい。
【0073】
上記化合物A中の保護チオール基(SR)当量、すなわち、化合物Aの分子量を保護チオール基(SR)の数で割った値(化合物Aの分子量/保護チオール基SRの数)としては、500以下であることが好ましく、なかでも、100以上400以下であることが好ましく、特に、150以上300以下であることが好ましい。上記化合物Aの保護チオール基当量が上述の範囲であることで、パターニング精度及び耐熱性により優れた組成物を形成可能な化合物となるからである。
上記化合物A中の保護チオール基(SR)当量は、パターニング精度及び耐熱性に優れると共に、上記化合物を含む組成物が、現像マージンに優れたものとなるとの観点、特に優れた耐熱性を発揮する観点からは、200以上270以下であることが好ましく、特に、220以上260以下であることが好ましく、なかでも特に、230以上250以下であることが好ましい。
化合物Aの保護基Rの脱離後の化合物のチオール基当量、すなわち、保護基Rにより-SH基が保護されていない、チオール化合物のチオール基当量は、パターニング精度及び耐熱性に優れると共に、上記化合物を含む組成物が、現像マージンに優れたものとなるとの観点、特に優れた耐熱性を発揮する観点からは、400以上1000以下であることが好ましく、500以上900以下であることが好ましく、600以上800以下であることが好ましい。
【0074】
上記化合物Aは、加熱により保護基Rが脱離するものとすることができる。
上記化合物Aに含まれる保護基Rが脱離する温度としては、例えば、100℃以上300℃以下とすることができ、なかでも、120℃以上250℃以下であることが好ましく、150℃以上230℃以下であることが好ましい。
脱離温度は、示差熱分析法により5重量%の熱減量を示した温度とすることができる。
測定方法としては、例えば、STA(示差熱熱重量同時測定装置)を用い、試料約5mg、窒素200mL/min雰囲気下、常圧下で、昇温開始温度30℃、昇温終了温度500℃、昇温速度10℃/minで昇温した際における、試料についての熱減量を測定し、30℃時点の試料重量に対して5%減量した時点の温度を5%重量減少温度とすることができる。
示差熱熱重量同時測定装置としては、STA7000(日立ハイテクサイエンス製)を用いることができる。
【0075】
上記化合物Aの具体例としては、例えば、下記で表される化合物を挙げることができる。
【0076】
【化9】
【0077】
【化10】
【0078】
【化11】
【0079】
【化12】
【0080】
【化13】
【0081】
【化14】
【0082】
【化15】
【0083】
【化16】
【0084】
【化17】
【0085】
【化18】
【0086】
【化19】
【0087】
【化20】
【0088】
【化21】
【0089】
【化22】
【0090】
【化23】
【0091】
【化24】
【0092】
【化25】
【0093】
【化26】
【0094】
【化27】
【0095】
【化28】
【0096】
【化29】
【0097】
【化30】
【0098】
【化31】
【0099】
上記化合物Aの製造方法は、所望の構造を得ることができる方法であれば特に限定されない。上記製造方法は、例えば、特開2017-031318号公報に記載されるように、ポリオールのヒドロキシ基と、SH基含有カルボン酸とのエステル化物を形成する方法、特開2015-059099号公報に記載されるように、エチレン性不飽和基を有する化合物のエチレン性不飽和基に、チオ酢酸を付加反応させた後、水素化ホウ素化合物により還元する方法等、公知の方法により、チオール基含有化合物を製造し、次いで、チオール基含有化合物と、酸無水物、酸塩化物、Boc化試薬、アルキルハライド化合物、シリルクロライド化合物、アリルエーテル化合物等を反応させる方法を挙げることができる。
【0100】
上記化合物Aは、加熱処理等によりSH基を発生するチオール発生剤として用いることができ、例えば、ラジカル重合性成分等の重合性成分Bを含む硬化性組成物等の組成物に添加されるチオール発生剤として用いることができる。
上記硬化性組成物の用途としては、熱硬化性塗料、光硬化性塗料或いはワニス、熱硬化性接着剤、光硬化性接着剤、プリント基板、或いはカラーテレビ、PCモニタ、携帯情報端末、デジタルカメラ等のカラー表示の液晶表示パネルにおけるカラーフィルタ、CCDイメージセンサーのカラーフィルタ、フォトスペーサ、ブラックカラムスペーサ、プラズマ表示パネル用の電極材料、タッチパネル、タッチセンサー、粉末コーティング、印刷インク、印刷版、接着剤、歯科用組成物、光造形用樹脂、ゲルコート、電子工学用のフォトレジスト、電気めっきレジスト、エッチングレジスト、液状及び乾燥膜の双方、はんだレジスト、種々の表示用途用のカラーフィルタを製造するための或いはプラズマ表示パネル、電気発光表示装置、及びLCDの製造工程において構造を形成するためのレジスト、電気及び電子部品を封入するための組成物、ソルダーレジスト、磁気記録材料、微小機械部品、導波路、光スイッチ、めっき用マスク、エッチングマスク、カラー試験系、ガラス繊維ケーブルコーティング、スクリーン印刷用ステンシル、ステレオリトグラフィによって三次元物体を製造するための材料、ホログラフィ記録用材料、画像記録材料、微細電子回路、脱色材料、画像記録材料のための脱色材料、マイクロカプセルを使用する画像記録材料用の脱色材料、印刷配線板用フォトレジスト材料、UV及び可視レーザー直接画像系用のフォトレジスト材料、プリント回路基板の逐次積層における誘電体層形成に使用するフォトレジスト材料、3D実装用フォトレジスト材料或いは保護膜等の各種の用途に使用することができ、その用途に特に制限はない。
また、上記化合物Aを含む硬化性組成物の用途としては、パターニング精度及び耐熱性の両者に優れたパターン状硬化物の形成用途であることが好ましく、特に、フォトリソ法によりパターニングされてパターン状硬化物の形成に用いられる光硬化性組成物に用いられることが好ましい。
より具体的には、上記硬化性組成物の用途としては、カラーフィルタ、フォトスペーサ、ブラックカラムスペーサ、電極材料、フォトレジスト、ソルダーレジスト、オーバーコート、絶縁膜、ブラックマトリクス、隔壁材等に好ましく用いることができる。
本発明においては、上記化合物Aが光硬化性組成物に用いられる場合、幅が200μm以下のパターン状硬化物形成用の光硬化性組成物に用いられること、すなわち、幅200μm以下のパターン形成用の光硬化性組成物に用いられることが好ましく、なかでも、0.1μm以上150μm以下のパターン形成用の光硬化性組成物に用いられることが好ましく、特に、0.5μm以上100μm以下のパターン形成用の光硬化性組成物に用いられることが好ましく、1μm以上50μm以下のパターン形成用の光硬化性組成物に用いられることが好ましい。上記幅のパターン形成用であることで、上記化合物Aのパターニング精度及び耐熱性に優れるとの効果、線幅の細いパターン状硬化物の形成が容易となるとの効果をより効果的に発揮できるからである。また、アスペクト比の高いパターンを安定的に形成可能となるからである。
また、上記化合物Aがパターン形成用の光硬化性組成物に用いられる場合、パターンの膜厚としては、0.1μm以上100μm以下であることが好ましく、0.3μm以上50μm以下であることが好ましく、0.5μm以上10μm以下であることが好ましく、1μm以上5μm以下であることが好ましい。上記膜厚が上述の範囲内であることにより、上記化合物Aのパターニング精度及び耐熱性に優れるとの効果をより効果的に発揮でき、アスペクト比の高いパターンを安定的に形成可能となるからである。
【0101】
B.チオール発生剤
次に、本発明のチオール発生剤について説明する。
本発明のチオール発生剤は、上述の化合物(上記化合物A)を含むことを特徴とするものである。
【0102】
本発明によれば、上記化合物Aを含むことにより、パターニング精度及び耐熱性に優れた組成物を形成可能なチオール発生剤となる。
【0103】
1.化合物
本発明のチオール発生剤に用いる上記化合物Aの種類としては、パターニング精度及び耐熱性に優れた組成物を形成可能なものであればよく、チオール発生剤中に1種類のみであってもよく、2種類以上であってもよい。上記チオール発生剤は、例えば、2種類以上5種類以下の化合物Aを含むことができる。
【0104】
上記化合物Aの含有量としては、パターニング精度及び耐熱性に優れた組成物を形成可能なものであればよく、チオール発生剤の種類等に応じて適宜設定されるものである。
上記化合物Aの含有量としては、例えば、上記チオール発生剤の固形分100質量部中に、100質量部、すなわち、上記チオール発生剤が上記化合物Aであるものとすることができる。
また、上記含有量は、チオール発生剤の固形分100質量部中に、100質量部未満、すなわち、チオール発生剤が上記化合物A及びその他の成分を含む組成物であってもよく、例えば、20質量部超99.99質量部以下とすることができる。
本発明においては、パターニング精度及び耐熱性に優れた組成物を形成容易となるとの観点からは、上記含有量の下限が、50質量部以上であることが好ましく、なかでも、70質量部以上であることが好ましく、特に、90質量部以上であることが好ましい。
また、チオール発生剤の粒径制御等が容易になるとの観点等からは、上記含有量の上限は、99質量部以下であることが好ましく、なかでも、95質量部以下であることが好ましく、特に、90質量部以下であることが好ましい。
なお、固形分とは、溶剤以外の全ての成分を含むものである。
また、上記化合物Aの含有量は、化合物Aとして2種類以上を含む場合には、化合物Aの合計量を示すものである。
【0105】
なお、上記化合物Aについては、上記「A.化合物」の項に記載の内容と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0106】
2.その他の成分
上記チオール発生剤は、上記化合物A以外のその他の成分を含むものであってもよい。
このようなその他の成分としては、例えば、後述する「C.組成物」の「2.チオール反応性を有する重合性成分」、「3.重合開始剤」、「4.カルボキシル基を有する重合体」、「5.その他の成分」の項に記載の内容を挙げることができる。
上記その他の成分は、なかでも、上記「3.重合開始剤」の項に記載の重合開始剤を含むことが好ましい。重合性成分Bの重合、反応等に関与する成分を集約することで、重合性成分Bを含む組成物の製造が容易となるからである。
上記ラジカル重合開始剤の化合物A100質量部に対する含有量としては、後述する「C.組成物」の「3.重合開始剤」の項に記載の内容と同様とすることができる。
上記その他の成分は、上記チオール発生剤の粒径制御等が容易になるとの観点等から、なかでも、「5.その他の成分」に記載の重合性基を有しない重合体を含むことが好ましい。
上記その他の成分の含有量は、上記チオール発生剤の用途等に応じて適宜設定することができるが、例えば、チオール発生剤の固形分100質量中に、50質量部以下とすることができ、10質量部以下であることが好ましい。上記チオール発生剤は、化合物Aの含有割合を大きいものとすることが容易となり、パターニング精度及び耐熱性に優れた組成物を形成容易となるからである。
【0107】
3.製造方法
上記チオール発生剤の製造方法としては、上記化合物Aを所望の配合量で含むものとすることができる方法であればよい。
上記チオール発生剤が、化合物A及びその他の成分を含む場合には、公知の混合手段を用いる方法を挙げることができる。
【0108】
上記チオール発生剤の用途としては、重合性成分Bを含む硬化性組成物等の組成物への添加用途を挙げることができる。
上記硬化性組成物の具体的な用途等については、上記「A.化合物」の項に記載の内容と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0109】
C.組成物
次に、本発明の組成物について説明する。
本発明の組成物は、下記一般式(A)で表される化合物(化合物A)と、チオール反応性を有する重合性成分(重合性成分B)と、を有することを特徴とするものである。
【0110】
【化32】
(式中、Rは、一価の炭素原子数1~40の脂肪族基、一価の炭素原子数6~35の芳香族炭化水素環含有基、一価の炭素原子数2~35の複素環含有基又は一価の炭素原子数0~40のシリル基を表し、
Xは、nと同数の価数を有する炭素原子数1~40の脂肪族基、炭素原子数6~35の芳香族炭化水素環含有基又は炭素原子数2~35の複素環含有基を表し、
前記脂肪族基、芳香族炭化水素環含有基、複素環含有基及びシリル基中のメチレン基の1つ又は2つ以上は、-O-、-S-、-CO-、-O-CO-、-CO-O-、-O-CO-O-、-S-CO-、-CO-S-、-S-CO-O-、-O-CO-S-、-CO-NH-、-NH-CO-、-NH-CO-O-、-O-CO-NH-、-NR’-、-S-S-若しくは-SO-から選ばれた基で置き換えられている場合があるか、又は酸素原子が隣り合わない条件でこれらの基を組み合わせた基で置き換えられている場合があり、
nは2以上10以下の整数を表す。)
【0111】
本発明によれば、上記組成物は、上記化合物Aを含むため、パターニング精度及び耐熱性に優れたものとなる。
【0112】
本発明の組成物は、上記化合物A、重合性成分Bを含むものである。
以下、本発明の組成物の各成分について詳細に説明する。
【0113】
1.化合物A
上記化合物Aの種類としては、パターニング精度及び耐熱性に優れた組成物を形成可能なものであればよく、組成物中に1種類のみであってもよく、2種類以上であってもよい。上記化合物Aは、例えば、2種類以上5種類以下の化合物Aを含むことができる。
【0114】
上記化合物Aの含有量としては、上記組成物の用途等に応じて適宜設定されるものである。
このような含有量としては、組成物の固形分100質量部中、0.01質量部以上20質量部以下とすることができ、0.05質量部以上10質量部以下であることが好ましい。組成物にパターニング精度及び耐熱性に優れた組成物を形成容易となるからである。
【0115】
なお、上記化合物Aについては、上記「A.化合物」の項に記載の内容と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0116】
2.重合性成分B
上記重合性成分Bとしては、チオールと反応することができると共に、上記重合性成分同士が重合可能なチオール反応性基を有する化合物であればよく、特に制限はない。
このようなチオール反応性基としては、ラジカル重合性基、カチオン重合性基等を好ましく用いることができる。
上記重合性成分Bは、ラジカル重合性基を有するラジカル重合性化合物及びカチオン重合性基を有するカチオン重合性化合物のうち、少なくとも一方を含むものとすることができ、ラジカル重合性化合物からなるラジカル重合性成分、カチオン重合性化合物からなるカチオン重合性成分、又はラジカル重合性化合物およびカチオン重合性化合物の両者を含む重合性成分等とすることができる。
上記重合性成分Bが上述の成分であることで、例えば、光ラジカル重合開始剤、光カチオン重合開始剤等の光重合開始剤と組み合わせて用いることで、上記組成物は、光照射により重合性成分同士を重合する工程及び現像工程により、パターン状の硬化物をパターニング精度よく形成可能だからである。
本発明においては、なかでも、上記重合性成分Bが、重合性化合物Bとしてラジカル重合性化合物を含むことが好ましく、特に、ラジカル重合性化合物からなるラジカル重合性成分であることが好ましい。上記重合性成分Bがラジカル重合性化合物を含むことで、上記組成物は、硬化速度に優れたものとなるからである。また、上記化合物Aを用いた架橋が容易だからである。
【0117】
(1)ラジカル重合性化合物
上記ラジカル重合性化合物は、ラジカル重合性基を有する化合物である。
このようなラジカル重合性化合物としては、例えば、特開2016-176009号公報に記載されるラジカル重合性化合物を挙げることができる。
上記ラジカル重合性基としては、より具体的には、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基等のエチレン性不飽和基を有する化合物を挙げることができる。
上記ラジカル重合性化合物としては、ラジカル重合性基を1つ有する単官能化合物、ラジカル重合性基を2以上有する多官能化合物を用いることができる。
【0118】
上記ラジカル重合性化合物としては、酸基を有する化合物及び酸基を有しない化合物を用いることができる。
上記酸基としては、-COOH基、-SOH基、-SONHCO-基、フェノール性ヒドロキシ基、-SONH-基、-CO-NH-CO-基等を挙げることができる。
上記酸基を有する化合物としては、例えば、4-ヒドロキシスチレン、(メタ)アクリル酸、α-ブロモ(メタ)アクリル酸、α-クロル(メタ)アクリル酸、β-フリル(メタ)アクリル酸、β-スチリル(メタ)アクリル酸、マレイン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノイソプロピル、フマル酸、ケイ皮酸、α-シアノケイ皮酸、イタコン酸、クロトン酸、プロピオール酸、4-ヒドロキシフェニルメタクリレート、3,5-ジメチル-4-ヒドロキシベンジルアクリルアミド、4-ヒドロキシフェニルアクリルアミド、4-ヒドロキシフェニルマレイミド、3-マレイミドプロピオン酸、4-マレイミド酪酸、6-マレイミドヘキサン酸等が挙げられる。
上記酸基を有する化合物としては、例えば、エポキシ化合物のエポキシ基に、不飽和一塩基酸を作用させたエポキシアクリレート樹脂、エポキシ化合物のエポキシ基に、不飽和一塩基酸を作用させ、更に多塩基酸無水物を作用させて得られたカルボキシル基含有エポキシアクリレート樹脂等の酸基含有エポキシアクリレート樹脂が挙げられる。
上記酸基含有エポキシアクリレート樹脂の例としては、昭和電工社製Ripoxy(登録商標)SPC-2000、SPC-3000、DIC社製のディックライト(登録商標)UE-777及び日本ユピカ社製ユピカ(登録商標)4015等を挙げることができる。
また、上記酸基を有する化合物としては、メタクリロイル基又はアクリロイル基と、カルボキシル基と、を有する重合体も用いることができる。このような重合体としては、後述する「4.カルボキシル基を有する重合体」の項に記載の重合体のうち、架橋性基としてメタクリロイル基又はアクリロイル基を有する構造単位を有する重合体等も好ましく用いることができる。
上記酸基を有する化合物としては、ラジカル重合性化合物の重合体のうち、未反応の又は事後的に付加したラジカル重合性基を有するものも用いることができる。例えば、酸基を有する化合物同士の重合体、酸基を有する化合物及び酸基を有しない化合物の重合体のうち、未反応の又は事後的に付加したラジカル重合性基を有するものも酸基を有する化合物として用いることができる。
【0119】
上記酸基を有しない化合物としては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-エチルスチレン等の重合可能なスチレン誘導体、アクリルアミド、アクリロニトリル、ビニル-n-ブチルエーテル等のビニルアルコールのエーテル類、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリルエステル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸グリシジルエステル、ペンタエリトリトールテトラアクリレート、ジペンタエリトリトールペンタアクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリトリトールトリアクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、マレイン酸無水物、マレイン酸モノエステル、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等のN-置換マレイミドが挙げられる。
【0120】
ラジカル重合性化合物は、光ラジカル重合開始剤、熱ラジカル重合開始剤等のラジカル重合開始剤と共に用いることができる。
【0121】
(2)カチオン重合性化合物
カチオン重合性化合物は、カチオン重合性基をする化合物である。
このようなカチオン重合性化合物等としては、例えば、特開2016-176009号公報に記載されるカチオン重合性化合物等を挙げることができる。
上記カチオン重合性化合物としては、より具体的には、エポキシ基を有するエポキシ化合物及びオキセタン基を有するオキセタン化合物等の環状エーテル基を有する化合物、並びにビニルエーテル基を有するビニルエーテル化合物等を挙げることができる。
上記カチオン重合性化合物は、カチオン重合性基を1つ有する単官能化合物、カチオン重合性基を2以上有する多官能化合物を用いることができる。
上記カチオン重合性化合物は、酸基を有する化合物及び酸基を有しない化合物を用いることができる。
上記カチオン重合性化合物としては、エポキシ基、オキセタニル基又はビニルエーテル基と、カルボキシル基と、を有する重合体も用いることができる。このような重合体としては、後述する「4.カルボキシル基を有する重合体」の項に記載の重合体のうち、架橋性基としてエポキシ基、オキセタニル基又はビニルエーテル基を有する構造単位を有する重合体等も好ましく用いることができる。
カチオン重合性化合物は、2種以上を混合して使用する場合には、それらを予め共重合して共重合体として使用してもよい。
カチオン重合性化合物は、光カチオン重合開始剤、熱カチオン重合開始剤等のカチオン重合開始剤と共に用いることができる。
【0122】
(3)その他
上記重合性成分Bの含有量は、パターニング精度及び耐熱性に優れたものとすることができるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、本発明の組成物の固形分100質量部中に、10質量部以上90質量部以下であることが好ましく、なかでも、20質量部以上80質量部以下であることが好ましく、特に、30質量部以上70質量部以下であることが好ましい。パターニング精度及び耐熱性により優れた組成物となるからである。
また、上記重合性成分Bの含有量は、パターニング精度及び耐熱性に優れたものとすることができるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、上記化合物A及び重合性成分Bの合計100質量部中に、70質量部以上であることが好ましく、なかでも、80質量部以上99.9質量部以下であることが好ましく、特に、90質量部以上99質量部以下であることが好ましい。上記含有量が上述の範囲内であることで、パターニング精度及び耐熱性により優れた組成物となるからである。
【0123】
上記重合性成分Bは、重合性化合物Bとして、酸基を有する化合物及び酸基を有しない化合物のいずれも用いることができるが、パターニング精度により優れた組成物とする観点からは、酸基を有する化合物を含むことが好ましく、パターニング精度及び耐熱性により優れた組成物とする観点からは、酸基を有する化合物及び酸基を有しない化合物の両者を含むことが好ましい。
より具体的には、重合性成分Bがラジカル重合性成分である場合には、パターニング精度により優れた組成物とする観点からは、ラジカル重合性化合物として、酸基を有する化合物を含むことが好ましく、パターニング精度及び耐熱性により優れた組成物とする観点からは、ラジカル重合性化合物として、酸基を有する化合物及び酸基を有しない化合物の両者を含むことが好ましい。
【0124】
上記酸基を有する化合物の含有量としては、パターニング精度及び耐熱性に優れた組成物となるものであればよいが、上記重合性成分B100質量部中に、1質量部以上95質量部以下であることが好ましく、なかでも、1質量部以上80質量部以下であることが好ましい。パターニング精度及び耐熱性により優れた組成物となるからである。
本発明において、上記組成物をパターニング精度により優れたものとする観点からは、上記酸基を有する化合物の含有量は、上記重合性成分B100質量部中に、20質量部以上であることが好ましく、なかでも、50質量部以上であることが好ましく、特に、70質量部以上であることが好ましい。
上記組成物を耐熱性により優れたものとする観点からは、上記酸基を有する化合物の含有量は、上記重合性成分B100質量部中に、70質量部以下であることが好ましく、なかでも、50質量部以下であることが好ましく、特に、30質量部以下であることが好ましい。
また、上記組成物をパターニング精度により優れたものとする観点からは、上記酸基を有する化合物の含有量は、上記化合物A及び重合性成分Bの合計100質量部中に、20質量部以上であることが好ましく、なかでも、50質量部以上90質量部以下であることが好ましく、特に、70質量部以上90質量部以下であることが好ましい。
上記組成物を耐熱性により優れたものとする観点からは、上記酸基を有する化合物の含有量は、上記化合物A及び重合性成分Bの合計100質量部中に、80質量部以下であることが好ましく、なかでも、50質量部以下であることが好ましく、特に、30質量部以下であることが好ましい。
なお、酸基を有する化合物の含有量は、重合性成分Bがラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の両者を含む場合には、ラジカル重合性化合物のうち酸基を有する化合物及びカチオン重合性化合物のうち酸基を有する化合物の合計の含有量を示すものである。
【0125】
上記重合性化合物Bの官能基数、すなわち、重合性化合物Bが一分子内に有するチオール反応基の数としては、1以上であればよく、チオール反応基を1つ有する単官能化合物、チオール反応基を2以上有する多官能化合物を用いることができる。
酸基を有しない化合物の官能基数としては、1以上であればよいが、2以上であることが好ましく、なかでも、3以上8以下であることが好ましく、特に、4以上7以下であることが好ましい。上記組成物はパターニング精度及び耐熱性等のバランスに優れたものとなるからである。
より具体的には、重合性成分Bがラジカル重合性成分である場合には、パターニング精度及び耐熱性等のバランスの観点からは、ラジカル重合性化合物のうち酸基を有しない化合物の官能基数が、2以上であることが好ましく、なかでも、3以上8以下であることが好ましく、特に、4以上7以下であることが好ましい。
【0126】
上記重合性成分Bは、組成物のパターニング精度等の観点からは、重合性化合物Bとして、低分子量化合物を含むことが好ましい。
上記重合性成分Bは、組成物の耐熱性等の観点からは、重合性化合物Bとして、高分子量化合物を含むことが好ましい。
上記重合性成分Bは、組成物のパターニング精度及び耐熱性等のバランスの観点からは、重合性化合物Bとして、低分子量化合物および高分子量化合物の両者を含むことが好ましい。
より具体的には、重合性成分Bがラジカル重合性成分である場合には、パターニング精度等の観点からは、ラジカル重合性化合物として、低分子量化合物を含むことが好ましく、パターニング精度及び耐熱性の観点からは、ラジカル重合性化合物として、低分子量化合物および高分子量化合物の両者を含むことが好ましい。
低分子量化合物の分子量としては、所望のパターニング精度等が得られるものであればよく、例えば、1000未満とすることができ、50以上500以下であることが好ましく、なかでも50以上300以下であることが好ましい。
また、高分子量化合物の分子量としては、所望の耐熱性等が得られるものであればよく、例えば、1000以上とすることができ、1000以上100000以下であることが好ましく、なかでも、1500以上50000以下であることが好ましく、特に、2000以上10000以下であることが好ましい。
以下、分子量は、化合物が重合体である場合には、重量平均分子量(Mw)を示すものである。
【0127】
重量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により、標準ポリスチレン換算値として求めることができる。重量平均分子量Mwは、例えば、日本分光製のGPC(LC-2000plusシリーズ)を用い、溶出溶剤をテトラヒドロフランとし、校正曲線用ポリスチレンスタンダードをMw1110000、707000、397000、189000、98900、37200、13700、9490、5430、3120、1010、589(東ソー製 TSKgel標準ポリスチレン)とし、測定カラムをKF-804、KF-803、KF-802(昭和電工製)として測定して得ることができる。また、測定温度は40℃とすることができ、流速は1.0mL/分とすることができる。
【0128】
上記高分子量化合物の含有量は、パターニング精度及び耐熱性に優れたものとすることができるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、パターニング精度及び耐熱性等のバランスの観点から、適宜調整されるものである。
上記高分子量化合物の含有量は、具体的には、重合性成分B100質量部中に、1質量部以上90質量部以下であることが好ましく、なかでも、1質量部以上80質量部以下であることが好ましい。パターニング精度及び耐熱性により優れた組成物となるからである。
本発明において、上記組成物を耐熱性により優れたものとするとの観点からは、上記高分子量化合物の含有量は、上記重合性成分B100質量部中に、30質量部以上であることが好ましく、なかでも、50質量部以上であることが好ましく、70質量部以上であることが好ましい。
上記組成物を塗布性に優れたものとする観点からは、上記高分子量化合物の含有量は、上記重合性成分B100質量部中に、60質量部以下であることが好ましく、なかでも、40質量部以下であることが好ましく、特に、20質量部以下であることが好ましい。
また、上記組成物を耐熱性により優れたものとするとの観点からは、上記高分子量化合物の含有量は、上記化合物A及び重合性成分Bの合計100質量部中に、20質量部以上であることが好ましく、なかでも、50質量部以上90質量部以下であることが好ましく、特に、70質量部以上90質量部以下であることが好ましい。
上記組成物を塗布性に優れたものとする観点からは、上記高分子量化合物の含有量は、上記化合物A及び重合性成分Bの合計100質量部中に、80質量部以下であることが好ましく、なかでも、50質量部以下であることが好ましく、特に、30質量部以下であることが好ましい。
なお、高分子量化合物の含有量は、重合性成分Bがラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の両者を含む場合には、ラジカル重合性化合物としての高分子量化合物及びカチオン重合性化合物としての高分子量化合物の合計の含有量を示すものである。
【0129】
3.重合開始剤
上記組成物は、重合性成分B同士を重合可能な重合開始剤を含むことが好ましい。
上記組成物を用いてパターン状の硬化物をパターニング精度よく形成することが容易となるからである。
このような重合開始剤は、重合性成分Bの種類に応じて適宜選択することができる。
上記重合開始剤は、重合性成分Bが、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物を含む場合には、それぞれ、ラジカル重合開始剤及びカチオン重合開始剤を用いることができる。
【0130】
上記重合開始剤の含有量としては、パターニング精度及び耐熱性により優れた組成物となるものであればよい。
上記含有量は、例えば、本発明の組成物の固形分100質量部中に、0.01質量部以上30質量部以下とすることができ、0.1質量部以上20質量部以下であることが好ましく、2質量部以上10質量部以下であることが好ましい。上記含有量であることで、組成物は、パターニング精度及び耐熱性により優れたものとなるからである。
上記重合開始剤の含有量としては、パターニング精度及び耐熱性に優れた組成物を形成可能なものであればよいが、化合物A100質量部に対して、10質量部以上700質量部以下であることが好ましく、なかでも、15質量部以上650質量部以下であることが好ましく、20質量部以上600質量部以下であることが好ましい。上記含有量が上述の範囲であることで、パターニング精度及び耐熱性に優れた組成物を形成容易となるからである。
また、上記重合開始剤の含有量としては、パターニング精度及び耐熱性に優れた組成物を形成可能なものであればよいが、重合性成分B100質量部に対して、0.1質量部以上50質量部以下であることが好ましく、なかでも、0.5質量部以上45質量部以下であることが好ましく、1質量部以上40質量部以下であることが好ましい。上記含有量が上述の範囲であることで、パターニング精度及び耐熱性に優れた組成物を形成容易となるからである。
【0131】
(1)ラジカル重合開始剤
上記ラジカル重合開始剤としては、ラジカルを発生し、ラジカル重合性成分を重合可能なものであればよい。
【0132】
このようなラジカル重合開始剤としては、光ラジカル重合開始剤及び熱ラジカル重合開始剤のいずれも用いることができるが、パターニング精度等に優れるとの効果をより効果的に発揮する観点からは、光ラジカル重合開始剤であることが好ましい。
上記光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル及びベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインブチルエーテル等のベンゾイン類;ベンジルジメチルケタール等のベンジルケタール類;アセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1-ベンジル-1-ジメチルアミノ-1-(4'-モルホリノベンゾイル)プロパン、2-モルホリル-2-(4'-メチルメルカプト)ベンゾイルプロパン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノ-プロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、1-ヒドロキシ-1-ベンゾイルシクロヘキサン、2-ヒドロキシ-2-ベンゾイルプロパン、2-ヒドロキシ-2-(4'-イソプロピル)ベンゾイルプロパン、N,N-ジメチルアミノアセトフェノン、1,1-ジクロロアセトフェノン、4-ブチルベンゾイルトリクロロメタン、4-フェノキシベンゾイルジクロロメタン等のアセトフェノン類;2-メチルアントラキノン、1-クロロアントラキノン及び2-アミルアントラキノン等のアントラキノン類;2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン及び2,4-ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;ベンゾフェノン、メチルベンゾフェノン、4,4'-ジクロロベンゾフェノン、4,4'-ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーズケトン及び4-ベンゾイル-4'-メチルジフェニルサルファイド等のベンゾフェノン類;2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド等のオキサイド類;3-(2-メチル-2-モルホリノプロピオニル)-9-メチルカルバゾール等のカルバゾール類;ベンジル、ベンゾイル蟻酸メチル等のα-ジカルボニル類;特開2000-80068号公報、特開2001-233842号公報、特開2005-97141号公報、特表2006-516246号公報、特許第3860170号公報、特許第3798008号公報、WO2006/018973号公報、特開2011-132215号公報、WO2015/152153号公報に記載の化合物等のオキシムエステル類;p-メトキシフェニル-2,4-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-メチル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-フェニル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-ナフチル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(p-ブトキシスチリル)-s-トリアジン等のトリアジン類;過酸化ベンゾイル、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、エチルアントラキノン、1,7-ビス(9'-アクリジニル)ヘプタン、チオキサントン、1-クロル-4-プロポキシチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、ベンゾフェノン、フェニルビフェニルケトン、4-ベンゾイル-4'-メチルジフェニルスルフィド、2-(p-ブトキシスチリル)-5-トリクロロメチル-1,3,4-オキサジアゾール、9-フェニルアクリジン、9,10-ジメチルベンズフェナジン、ベンゾフェノン/ミヒラーズケトン、ヘキサアリールビイミダゾール/メルカプトベンズイミダゾール、チオキサントン/アミン等が挙げられる。
【0133】
上記熱ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、4,4-ジ(t-ブチルパーオキシ)ブチルバレレート、ジクミルパーオキサイド等の過酸化物類;2,2'-アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物類;テトラメチルチラウムジスルフィド等が挙げられる。
【0134】
(2)カチオン重合開始剤
上記カチオン重合開始剤としては、所定の条件により酸を発生させることが可能な化合物であればどのようなものでも問題はなく、例えば、紫外線照射等の光照射により酸を発生させることが可能な光カチオン重合開始剤、熱により酸を発生させることが可能な熱カチオン重合開始剤を用いることができる。
上記カチオン重合開始剤は、上記光カチオン重合開始剤及び熱カチオン重合開始剤の少なくとも一方を用いることができるが、硬化が容易であるとの観点、組成物の硬化時に、組成物に隣接して用いられる周辺部材への熱によるダメージを低減でき、周辺部材の選択の自由度が高くなるとの観点等からは、光カチオン重合開始剤であることが好ましい。また、上記光カチオン重合開始剤は硬化速度が速いという利点もある。
また、上記カチオン重合開始剤は、光が到達困難な場所でも硬化物の形成が容易となる観点からは、熱カチオン重合開始剤であることが好ましい。
【0135】
このようなカチオン重合開始剤等としては、特開2016-176009号公報に記載されるカチオン開始剤等を用いることができる。
【0136】
4.カルボキシル基を有する重合体
上記組成物は、現像性に優れたものとする観点からは、カルボキシル基を有する重合体を含むことが好ましい。上記重合体を含むことで、上記組成物は、パターニング精度により優れたものとなるからである。
【0137】
上記カルボキシル基を有する重合体は、カルボキシル基を有する構造単位を(以下、「構造単位(U1)」という。)有するものであればよく、特に制限をされないが、更にメタクリロイル基、アクリロイル基、ビニル基、エポキシ基、オキセタニル基、ビニルエーテル基、メルカプト基、イソシアネート基等の架橋性基を有する構造単位(以下、「構造単位(U2)」という。)、及びシリル基を有する構造単位(以下「構造単位(U3)」という。)から選ばれる構造単位を有することが好ましい。
上記カルボキシル基を有する重合体は、上記構造単位(U1)~(U3)以外の構造単位(以下、「構造単位(U4)」という。)を有していてもよい。
【0138】
上記構造単位(U1)としては、不飽和カルボン酸および不飽和カルボン酸無水物よりなる群から選択される少なくとも1種(以下、「化合物(u1)」という。)に由来する構造単位であることが好ましい。
上記化合物(u1)としては、例えば、モノカルボン酸、ジカルボン酸、ジカルボン酸の無水物等を挙げることができる。上記モノカルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、2-アクリロイルオキシエチルコハク酸、2-メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2-アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸等を;
上記ジカルボン酸としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸等を;
上記ジカルボン酸の無水物としては、上記したジカルボン酸の無水物等を、それぞれ挙げることができる。
【0139】
これらのうち、共重合反応性、得られる共重合体の現像液に対する溶解性の点から、アクリル酸、メタクリル酸、2-アクリロイルオキシエチルコハク酸、2-メタクリロイルオキシエチルコハク酸又は無水マレイン酸が好ましい。
化合物(u1)は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0140】
上記構造単位(U2)としては、エポキシ基又はオキセタニル基を有する重合性不飽和化合物(以下、「化合物(u2)」という。)に由来する構造単位であることが好ましい。
上記化合物(u2)は、エポキシ基を有する重合性不飽和化合物およびオキセタニル基を有する重合性不飽和化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0141】
エポキシ基を有する重合性不飽和化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸オキシラニル(シクロ)アルキルエステル、α-アルキルアクリル酸オキシラニル(シクロ)アルキルエステル、重合性不飽和結合を有するグリシジルエーテル化合物等を;
オキセタニル基を有する重合性不飽和化合物としては、例えば、オキセタニル基を有する(メタ)アクリル酸エステル等を、それぞれ挙げることができる。
【0142】
上記化合物(u2)の具体例としては、
(メタ)アクリル酸オキシラニル(シクロ)アルキルエステルとして、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2-メチルグリシジル、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、(メタ)アクリル酸3,4-エポキシブチル、(メタ)アクリル酸6,7-エポキシヘプチル、(メタ)アクリル酸3,4-エポキシシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸3,4-エポキシシクロヘキシルメチル、3,4-エポキシトリシクロ[5.2.1.02.6]デシル(メタ)アクリレート、等を;
α-アルキルアクリル酸オキシラニル(シクロ)アルキルエステルとして、例えば、α-エチルアクリル酸グリシジル、α-n-プロピルアクリル酸グリシジル、α-n-ブチルアクリル酸グリシジル、α-エチルアクリル酸6,7-エポキシヘプチル、α-エチルアクリル酸3,4-エポキシシクロヘキシル等を;
重合性不飽和結合を有するグリシジルエーテル化合物として、例えば、o-ビニルベンジルグリシジルエーテル、m-ビニルベンジルグリシジルエーテル、p-ビニルベンジルグリシジルエーテル等を;
オキセタニル基を有する(メタ)アクリル酸エステルとして、例えば、3-((メタ)アクリロイルオキシメチル)オキセタン、3-((メタ)アクリロイルオキシメチル)-3-エチルオキセタン、3-((メタ)アクリロイルオキシメチル)-2-メチルオキセタン、3-((メタ)アクリロイルオキシエチル)-3-エチルオキセタン、2-エチル-3-((メタ)アクリロイルオキシエチル)オキセタン、3-メチル-3-(メタ)アクリロイルオキシメチルオキセタン、3-エチル-3-(メタ)アクリロイルオキシメチルオキセタン等を、それぞれ挙げることができる。
【0143】
これら具体例のうち、特に、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸2-メチルグリシジル、メタクリル酸3,4-エポキシシクロヘキシル、メタクリル酸3,4-エポキシシクロヘキシルメチル、3,4-エポキシトリシクロ[5.2.1.02.6]デシルメタアクリレート、3,4-エポキシトリシクロ[5.2.1.02.6]デシルアクリレート、3-メタクリロイルオキシメチル-3-エチルオキセタン、3-メチル-3-メタクリロイルオキシメチルオキセタン又は3-エチル-3-メタクリロイルオキシメチルオキセタンが、重合性の点から好ましい。
化合物(u2)は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0144】
上記構造単位(U2)のうち、架橋性基として、メタクリロイル基又はアクリロイル基を有する構造単位としては、(メタ)アクリロイルオキシ基を有する構造単位を好ましく用いることができる。
上記(メタ)アクリロイルオキシ基を有する構造単位は、重合体中のカルボキシル基にエポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルを反応させて得られる。反応後の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する構造単位は、下記式(U2-1)で表される構造単位であることが望ましい。
【0145】
【化33】
(式中、R1000およびR1001は、それぞれ独立して水素原子又はメチル基であり、R1002は、下記式(α)又は下記式(β)で表される2価の基であり、cは、1~6の整数であり、*は結合箇所を表す。)
【0146】
【化34】
(式中、R1003は、水素原子又はメチル基であり、*は、結合箇所を表す。)
【0147】
上記式(U2-1)で表される構造単位について、例えば、カルボキシル基を有する共重合体に、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸2-メチルグリシジル等の化合物を反応させた場合、式(U2-1)中のR1002は、式(α)となる。一方、カルボキシル基を有する共重合体に、メタクリル酸3,4-エポキシシクロヘキシルメチルを反応させた場合、式(U2-1)中のR1002は、式(β)となる。
【0148】
上述した重合体中のカルボキシル基とエポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステル等の不飽和化合物との反応においては、必要に応じて適当な触媒の存在下において、好ましくは重合禁止剤を含む重合体の溶液に、エポキシ基を有する不飽和化合物を投入し、加温下で所定時間撹拌する。上記触媒としては、例えば、テトラブチルアンモニウムブロミド等が挙げられる。上記重合禁止剤としては、例えば、p-メトキシフェノール等が挙げられる。反応温度は、70℃~100℃が好ましい。反応時間は、8時間~12時間が好ましい。
【0149】
上記カルボキシル基を有する重合体の構成単位比率において、架橋性基として(メタ)アクリロイルオキシ基を有する構造単位の含有比率は、カルボキシル基を有する重合体全構成単位のうちの10モル%~70モル%であることが好ましく、20モル%~50モル%であることがより好ましい。
(メタ)アクリロイルオキシ基を有する構造単位比率が上記の範囲であることで、耐熱性及び現像時の現像不良が少なくなり、現像残渣の発生が抑制できる。
【0150】
上記構造単位(U3)としては、シリル基を有する重合性不飽和化合物(以下、「化合物(u3)」という。)に由来する構造単位であることが好ましい。
【0151】
上記化合物(u3)としては、例えば、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルエチルジメトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等を挙げることができる。
上記化合物(u3)は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0152】
上記構造単位(U4)は、上記(U1)~(U3)以外の構造単位であり、上記(u1)~(u3)以外の重合性不飽和化合物(以下、「化合物(u4)」という。)に由来する構造単位であることが好ましい。
上記化合物(u4)としては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル、(メタ)アクリル酸アリールエステル、(メタ)アクリル酸アラルキルエステル、不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステル、含酸素複素5員環又は含酸素複素6員環を有する(メタ)アクリル酸エステル、ビニル芳香族化合物、共役ジエン化合物およびその他の重合性不飽和化合物を挙げることができる。これらの具体例としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとして、例えば、アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸i-プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸sec-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル等を;
(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステルとして、例えば、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2-メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン-8-イル、(メタ)アクリル酸2-(トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン-8-イルオキシ)エチル、(メタ)アクリル酸イソボロニル等を;
(メタ)アクリル酸アリールエステルとして、例えば、アクリル酸フェニル等を;
(メタ)アクリル酸アラルキルエステルとして、例えば、(メタ)アクリル酸ベンジル等を;
不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステルとして、例えば、マレイン酸ジエチル、フマル酸ジエチル等を;
含酸素複素5員環又は含酸素複素6員環を有する(メタ)アクリル酸エステルとして、例えば、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフラン-2-イル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロピラン-2-イル、(メタ)アクリル酸2-メチルテトラヒドロピラン-2-イル等を;
ビニル芳香族化合物として、例えば、スチレン、α-メチルスチレン等を;
共役ジエン化合物として、例えば、1,3-ブタジエン、イソプレン等を;
その他の重合性不飽和化合物として、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド等を、それぞれ挙げることができる。
【0153】
上記化合物(u4)としては、共重合反応性の点から、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸2-メチルグリシジル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン-8-イル、スチレン、p-メトキシスチレン、メタクリル酸テトラヒドロフラン-2-イル、1,3-ブタジエン等が好ましい。
上記化合物(u4)は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0154】
上記カルボキシル基を有する重合体は、上記のような化合物(u1)~(u4)を、それぞれ、以下の割合で含む重合性不飽和化合物の混合物を共重合することにより、合成することができる。
化合物(u1):好ましくは0.1モル%~30モル%、より好ましくは1モル%~20モル%、更に好ましくは5モル%~15モル%
化合物(u2):好ましくは1モル%~95モル%、より好ましくは10モル%~60モル%、更に好ましくは20モル%~30モル%
化合物(u3):好ましくは50モル%以下、より好ましくは1モル%~40モル%、更に好ましくは10モル%~30モル%
化合物(u4):好ましくは80モル%以下、より好ましくは1モル%~60モル%、更に好ましくは25モル%~50モル%
【0155】
また、得られた共重合体中の化合物(u1)に由来する構造単位中のカルボキシル基に対して、エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルを反応させることで、(メタ)アクリロイルオキシ基を有する構造単位を有するものとすることができる。
【0156】
化合物(u1)~化合物(u4)を上記の範囲で含有する重合性不飽和化合物の混合物を共重合して得られたカルボキシル基を有する重合体を含有する重合性組成物は、良好な塗布性が損なわれることなく高い解像度が達成されるから、高精細なパターンであっても特性のバランスが高度に調整された硬化膜を与えることができることから好ましい。
【0157】
カルボキシル基を有する重合体の重量平均分子量(Mw)としては、所望の現像性を得られるものであればよく、例えば、上記「2.チオール反応性を有する重合性成分」の「(1)ラジカル重合成分」中の高分子量化合物の分子量と同様とすることができる。上記重合体を使用することにより、良好な塗布性が損なわれることなく高い解像度が達成されるから、高精細なパターンであっても特性のバランスが高度に調整された硬化膜を与えることができることとなる。
【0158】
カルボキシル基を有する重合体は、上記のような重合性不飽和化合物の混合物を、好ましくは適当な溶媒中において、好ましくはラジカル重合開始剤の存在下で重合することにより製造することができる。
【0159】
上記重合に用いられる溶媒としては、例えば、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸3-メトキシブチル、シクロヘキサノールアセテート、ベンジルアルコール、3-メトキシブタノール等を挙げることができる。これらの溶媒は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0160】
上記ラジカル重合開始剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス-(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス-(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、4,4’-アゾビス(4―シアノバレリン酸)、ジメチル-2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物を挙げることができる。これらのラジカル重合開始剤は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0161】
上記カルボキシル基を有する重合体の好ましい例として下記の重合体U-1及び重合体U-2を挙げることができる。
【0162】
[重合体U-1]
冷却管および攪拌機を備えたフラスコに、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル4質量部およびプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート190質量部を仕込み、引き続きメタクリル酸55質量部、メタクリル酸ベンジル45質量部、並びに分子量調節剤としてのα-メチルスチレンダイマー2質量部を仕込み、緩やかに撹拌しつつ、溶液の温度を80℃に上昇させた。80℃で4時間保持した後、溶液の温度を100℃に上昇させ、この温度を1時間保持して重合することにより共重合体を含有する溶液を得る。次いで、この共重合体を含む溶液に、テトラブチルアンモニウムブロミド1.1質量部、重合禁止剤としての4-メトキシフェノール0.05質量部を加え、空気雰囲気下90℃で30分間撹拌後、メタクリル酸グリシジル74質量部を入れて90℃のまま10時間反応させることで得られる重量平均分子量Mw9000の重合体U-1を挙げることができる。
上記重合体U-1は、構造単位(U1)、構造単位(U2)及び構造単位(U4)を有するものである。
【0163】
[重合体U-2]
冷却管および攪拌機を備えたフラスコに、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル5質量部および酢酸3-メトキシブチル250質量部を仕込み、更にメタクリル酸18質量部、メタクリル酸トリシクロ[5.2.1.02.6]デカン-8-イル25質量部、スチレン5部、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン20質量部およびメタクリル酸グリシジル32質量部を仕込んで窒素置換した後、緩やかに撹拌しつつ、溶液の温度を80℃に上昇する。この温度を5時間保持して重合することで得られる重量平均分子量Mw12000の重合体U-2を挙げることができる。
上記重合体U-2は、構造単位(U1)、構造単位(U2)、構造単位(U3)及び構造単位(U4)を有するものである。
【0164】
上記カルボキシル基を有する重合体の含有量としては、その使用目的に応じて適宜選択され特に制限されないが、例えば、組成物の固形分100質量部中に10質量部以上90質量部以下とすることができる。
また、上記カルボキシル基を有する重合体及び重合性成分Bの合計の含有量は、その使用目的に応じて適宜選択され特に制限されないが、例えば、組成物の固形分100質量部中に合計で10質量部以上99質量部以下とすることができる。
【0165】
5.その他の成分
また、上記組成物は、上記化合物A、重合性成分B及び重合開始剤以外に、必要に応じてその他の成分を含むことができる。
上記その他の成分としては、重合性基を有しない重合体、上記各成分を溶解又は分散する溶剤、着色剤等を挙げることができる。
【0166】
(1)重合性基を有しない重合体
上記重合体は、重合性基を有しないものである。
ここで、重合性基としては、ラジカル重合性基、カチオン重合性基を挙げることができる。
このような重合体としては、例えば、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルサルホン、ポリビニルブチラール、ポリフェニレンエーテル、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ノルボルネン系樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、イソブチレン無水マレイン酸共重合樹脂、環状オレフィン系樹脂、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリニビルピロリドン等の熱可塑性樹脂を挙げることができる。
上記重合体としては、上記重合性成分Bの重合物も用いることができる。
また、上記重合体としては、上記カルボキシル基を有する重合体のうち、架橋性基を有する構造単位を含まないものも用いることができる。
【0167】
上記重合体の重量平均分子量(Mw)は、組成物の用途等に応じて適宜設定されるものであるが、例えば、1500以上とすることができ、1500以上300000以下とすることができる。
上記重合体の含有量は、その使用目的に応じて適宜選択され特に制限されないが、例えば、組成物の固形分100質量部中に10質量部以上90質量部以下とすることができる。
また、上記重合体及び重合性成分Bの合計の含有量は、その使用目的に応じて適宜選択され特に制限されないが、例えば、組成物の固形分100質量部中に合計で10質量部以上99質量部以下とすることができる。
【0168】
(2)溶剤
上記溶剤としては、25℃、大気圧下で液状であり、組成物の各成分を分散又は溶解可能なものである。
また、上記溶剤は、ラジカル重合性基、カチオン重合性基等の重合性基を有しないものである。
したがって、例えば、重合性成分Bのうち、25℃、大気圧下で液状であるものは、上記溶剤に該当しないものである。
このような溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、ジエチルケトン、アセトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、2-ヘプタノン等のケトン類;エチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸-n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、酢酸シクロヘキシル、乳酸エチル、コハク酸ジメチル、テキサノール等のエステル系溶媒;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のセロソルブ系溶媒;メタノール、エタノール、イソ-又はn-プロパノール、イソ-又はn-ブタノール、アミルアルコール等のアルコール系溶媒;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコール-1-モノメチルエーテル-2-アセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3-メトキシブチルエーテルアセテート、エトキシエチルエーテルプロピオネート等のエーテルエステル系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン等のBTX系溶媒;ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒;テレピン油、D-リモネン、ピネン等のテルペン系炭化水素油;ミネラルスピリット、スワゾール#310(コスモ松山石油社)、ソルベッソ#100(エクソン化学社)等のパラフィン系溶媒;四塩化炭素、クロロホルム、トリクロロエチレン、塩化メチレン、1,2-ジクロロエタン等のハロゲン化脂肪族炭化水素系溶媒;クロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素系溶媒;カルビトール系溶媒;アニリン;トリエチルアミン;ピリジン;酢酸;アセトニトリル;二硫化炭素;N,N-ジメチルホルムアミド;N,N-ジメチルアセトアミド;N-メチルピロリドン;ジメチルスルホキシド等の有機溶剤が挙げられる。
また、上記溶剤としては、水を含むものであってもよい。
これらのなかでも、ケトン類、エーテルエステル系溶媒等、特にプロピレングリコール-1-モノメチルエーテル-2-アセテート(以下、「PGMEA」又は「プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート」ともいう)、シクロヘキサノン等の有機溶剤が、化合物A等との相溶性が良好である観点から好ましい。
上記溶剤は1種又は2種以上の混合溶剤として使用することができる。
【0169】
上記溶剤の含有量としては、パターニング精度及び耐熱性により優れた組成物となるものであればよい。
上記含有量は、例えば、本発明の組成物100質量部中に、10質量部以上95質量部以下とすることができ、40質量部以上95質量部以下であることが好ましく、60質量部以上90質量部以下であることが好ましい。上記含有量であることで、組成物は、塗布性に優れたものとなるからである。
【0170】
(3)シランカップリング剤
上記組成物は、必要に応じてシランカップリング剤を含むことができる。
このようなシランカップリング剤としては、分子量が100以上1000以下のものを用いることができ、例えば信越化学社製シランカップリング剤を用いることができ、なかでも、KBE-9007、KBM-502、KBE-403等、イソシアネート基、メタクリロイル基、エポキシ基を有するシランカップリング剤が好適に用いられる。
上記シランカップリング剤のうちメタクリロイル基、エポキシ基等を含むものであっても、重合性成分Bには含まれないものである。
【0171】
(4)着色剤
上記組成物は、必要に応じて、着色剤を含むことができる。
上記着色剤としては、顔料、染料、天然色素等が挙げられる。これらの着色剤は、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0172】
上記顔料としては、例えば、ニトロソ化合物;ニトロ化合物;アゾ化合物;ジアゾ化合物;キサンテン化合物;キノリン化合物;アントラキノン化合物;クマリン化合物;フタロシアニン化合物;イソインドリノン化合物;イソインドリン化合物;キナクリドン化合物;アンタンスロン化合物;ペリノン化合物;ペリレン化合物;ジケトピロロピロール化合物;チオインジゴ化合物;ジオキサジン化合物;トリフェニルメタン化合物;キノフタロン化合物;ナフタレンテトラカルボン酸;アゾ染料、シアニン染料の金属錯体化合物;レーキ顔料;ファーネス法、チャンネル法若しくはサーマル法によって得られるカーボンブラック、又はアセチレンブラック、ケッチェンブラック若しくはランプブラック等のカーボンブラック;上記カーボンブラックをエポキシ樹脂で調整又は被覆したもの、上記カーボンブラックを予め溶剤中で樹脂に分散処理し、20~200mg/gの樹脂を吸着させたもの、上記カーボンブラックを酸性又はアルカリ性表面処理したもの、平均粒径が8nm以上でDBP吸油量が90ml/100g以下のもの、950℃における揮発分中のCO及びCOから算出した全酸素量が、カーボンブラックの表面積100m当たり9mg以上であるもの;黒鉛、黒鉛化カーボンブラック、活性炭、炭素繊維、カーボンナノチューブ、カーボンマイクロコイル、カーボンナノホーン、カーボンエアロゲル、フラーレン;アニリンブラック、ピグメントブラック7、チタンブラック、ペリレンブラック、ラクタムブラック、シアニンブラック;酸化クロム緑、ミロリブルー、コバルト緑、コバルト青、マンガン系、フェロシアン化物、リン酸塩群青、紺青、ウルトラマリン、セルリアンブルー、ピリジアン、エメラルドグリーン、硫酸鉛、黄色鉛、亜鉛黄、べんがら(赤色酸化鉄(III))、カドミウム赤、合成鉄黒、アンバー等の有機又は無機顔料を用いることができる。これらの顔料は単独で又は複数を混合して用いることができる。
【0173】
上記顔料としては、市販の顔料を用いることもでき、例えば、ピグメントレッド1、2、3、9、10、14、17、22、23、31、38、41、48、49、88、90、97、112、119、122、123、144、149、166、168、169、170、171、177、179、180、184、185、192、200、202、209、215、216、217、220、223、224、226、227、228、240、254;ピグメントオレンジ13、31、34、36、38、43、46、48、49、51、52、55、59、60、61、62、64、65、71、72;ピグメントイエロー1、3、12、13、14、16、17、20、24、55、60、73、81、83、86、93、95、97、98、100、109、110、113、114、117、120、125、126、127、129、137、138、139、147、148、150、151、152、153、154、166、168、175、180、185、211、215、231;ピグメントグリ-ン7、10、36、58、59、62、63;ピグメントブルー15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:5、15:6、22、24、56、60、61、62、64;ピグメントバイオレット1、19、23、27、29、30、32、37、40、50;ピグメントバイオレット19、23、29等が挙げられる。
【0174】
上記染料としては、アゾ染料、アントラキノン染料、インジゴイド染料、トリアリールメタン染料、キサンテン染料、アリザリン染料、アクリジン染料スチルベン染料、チアゾール染料、ナフトール染料、キノリン染料、ニトロ染料、インダミン染料、オキサジン染料、フタロシアニン染料、シアニン染料等の染料等が挙げられ、これらは複数を混合して用いる場合もある。
【0175】
上記着色剤の含有量は、所望の発色の硬化物を得られるものであればよく、例えば、上記組成物の固形分100質量部中に、1質量部以上80質量部以下であることが好ましく、なかでも、5質量部以上60質量部以下であることが好ましく、特に、10質量部以上50質量部以下であることが好ましい。
また、上記着色剤の含有量は、所望の発色の硬化物を得られるものであればよく、例えば、上記重合性成分B100質量部に対して、1質量部以上350質量部以下であることが好ましく、なかでも、10質量部以上250質量部以下であることが好ましく、特に、20質量部以上200質量部以下であることが好ましい。
【0176】
(5)添加剤
上記その他の成分としては、着色剤、無機化合物、着色剤及び無機化合物等を分散させる分散剤、連鎖移動剤、増感剤、界面活性剤、シランカップリング剤、メラミン等の添加剤を挙げることができる。
上記添加剤については、公知の材料を用いることができ、例えば、国際公開第2014/021023号公報に記載のものを用いることができる。
上記添加剤としては、紫外線吸収剤、酸化防止剤等も用いることができる。
上記紫外線吸収剤としては、加熱処理等により、紫外線吸収能や酸化防止機能が発現する潜在性紫外線吸収剤、潜在性酸化防止剤も用いることができる。
このような潜在性紫外線吸収剤及び潜在性酸化防止剤としては、例えば、国際公開第2014/021023号公報に記載の潜在性添加剤として記載されるものを用いることができる。
【0177】
上記添加剤の合計含有量は、組成物の固形分100質量部中に30質量部以下とすることができる。
【0178】
6.製造方法
上記組成物の製造方法は、上記各成分を所望の含有量で配合可能な方法であればよく、上記各成分を同時に添加して混合する方法であってもよく、各成分を順次添加しながら混合する方法であってもよい。
【0179】
上記組成物の用途等については、上記「A.化合物」の項に記載のチオール発生剤が添加される組成物の用途と同様とすることができる。
【0180】
D.硬化物
次に、本発明の硬化物について説明する。
本発明の硬化物は、上述の組成物の硬化物であることを特徴とするものである。
【0181】
本発明によれば、上記硬化物は、上述の組成物を用いることで、パターニング精度及び耐熱性に優れたものとなる。
【0182】
本発明の硬化物は、上述の組成物を用いるものである。
上記組成物の内容については、上記「C.組成物」の項に記載の内容と同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
【0183】
上記硬化物は、重合性成分B同士が重合した重合体を有するものである。
【0184】
上記硬化物に含まれる未反応の重合性成分Bの残存率としては、硬化物の用途等に応じて適宜設定されるものであるが、例えば、硬化物100質量部中に10質量部以下であり、1質量部以下であることが好ましい。硬化物は耐熱性に優れたものとなるからである。
【0185】
上記硬化物に含まれる化合物Aは、チオール基が保護基Rで保護されたもの、保護基Rが脱離してチオール基が発生しているもの、重合性成分B同士を架橋しているものであってもよい。
ここで、化合物Aが上記重合性成分B同士を架橋しているとは、R脱離後の化合物Aが、重合性成分B同士を架橋している状態をいうものである。
また、架橋は、R脱離により化合物Aから発生したチオール基が、重合性成分Bのチオール反応性を有する基とチオール・エン反応等により共有結合を形成している状態をいうものである。
本発明においては、上記化合物Aが、重合性成分B同士を架橋しているものであることが好ましい。上記硬化物は耐熱性に優れたものとなるからである。
なお、上記化合物Aが架橋する対象となる重合性成分Bは、下記(1)及び(2)の少なくとも一方を含むものである。
(1)重合性成分B同士で重合せずに残存した未反応の重合性成分B
(2)重合性成分B同士が重合した重合体のうち、チオール反応性基を有するもの
【0186】
上記硬化物の平面視形状については、上記硬化物の用途等に応じて適宜設定することができ、例えば、ドット状、ライン状等のパターン状であることが好ましい。本発明のパターニング精度及び耐熱性に優れた組成物を形成可能との効果をより効果的に発揮できるからである。
【0187】
上記硬化物の用途等については、上記「A.化合物」の項に記載の内容と同様とすることができる。
【0188】
上記硬化物の製造方法としては、上記組成物の硬化物を所望の形状となるように形成できる方法であれば特に限定されるものではない。
このような製造方法としては、例えば、後述する「E.硬化物の製造方法」の項に記載の製造方法を用いることができる。
【0189】
E.硬化物の製造方法
次に、本発明の硬化物の製造方法について説明する。
本発明の製造方法は、架橋する工程を含むものである。
以下、本発明の製造方法の各工程について詳細に説明する。
【0190】
1.架橋する工程
本発明の製造方法における架橋する工程は、上記一般式(A)で表される化合物により上記重合性成分B同士を架橋する工程である。
本工程における架橋する方法としては、化合物Aから保護基Rを脱離して、発生したチオール基により重合性成分B同士を架橋できる方法であればよく、例えば、上記化合物Aを加熱処理する方法を挙げることができる。
上記化合物Aを加熱する加熱温度等については、化合物AからRを脱離できる温度状況等であればよく、例えば、上記「A.化合物」の項に記載の内容と同様とすることができる。
上記化合物Aを加熱処理する方法としては、上記組成物又はその硬化物(後述する重合する工程後の組成物)を、オーブン等の公知の加熱手段を用いて加熱する方法を用いることができる。
また、上記架橋する工程は、後述するポストベーク工程と同時に行うものであってもよい。
なお、本工程により架橋される重合性成分Bは、本工程が、後述する重合する工程後に実施される場合には、下記(1)及び(2)の少なくとも一方を含むものである。
(1)重合性成分B同士で重合せずに残存した未反応の重合性成分B
(2)重合性成分B同士が重合した重合体のうち、チオール反応性基を有するもの
【0191】
2.重合する工程
上記硬化物の製造方法は、上記重合性成分B同士を重合する工程を有することが好ましい。パターニング精度及び耐熱性により優れたものとなるからである。
本工程における上記重合性成分B同士の重合方法としては、重合性成分B同士を重合可能な方法であればよく、例えば、上記組成物として、重合性成分Bと共に重合開始剤を含むものを用いる方法を挙げることができる。
上記重合方法は、ラジカル重合開始剤の種類に応じて異なるものである。
例えば、上記組成物が、重合開始剤として光ラジカル重合開始剤、光カチオン重合開始剤等の光重合開始剤を含む場合には、組成物に対して光照射を行い、重合性成分B同士を重合する方法を用いることができる。
組成物に照射される光としては、波長300nm~450nmの光を含むものとすることができる。
上記光照射の光源としては、例えば、超高圧水銀、水銀蒸気アーク、カーボンアーク、キセノンアーク等を挙げることができる。
上記照射される光としては、レーザー光を用いてもよい。レーザー光としては、波長340~430nmの光を含むものを用いることができる。
レーザー光の光源としては、アルゴンイオンレーザー、ヘリウムネオンレーザー、YAGレーザー、及び半導体レーザー等の可視から赤外領域の光を発するものも用いることができる。
なお、これらのレーザーを使用する場合には、上記組成物は、可視から赤外の当該領域を吸収する増感色素を含むことができる。
【0192】
上記重合方法は、例えば、組成物が、重合開始剤として熱ラジカル重合開始剤、熱カチオン重合開始剤等の熱重合開始剤を含む場合には、組成物に対して加熱処理を行い、重合性成分B同士を重合する方法を用いることができる。
加熱温度としては、上記組成物を安定的に硬化できるものであればよく、60℃以上、好ましくは100℃以上300℃以下とすることができる。
加熱時間としては、10秒~3時間程度行うことができる。
【0193】
上記重合方法の種類は、1種類のみを含むものであってもよく、2種類以上を含むものであってもよい。
【0194】
上記重合する工程の実施タイミングは、上記架橋する工程の前及び後のいずれであってもよいが、パターニング精度よく、パターン状硬化物を製造することができるとの観点からは、上記架橋する工程の前であることが好ましい。
【0195】
3.その他の工程
上記硬化物の製造方法は、上記架橋する工程及び重合する工程以外に、必要に応じてその他の工程を含むものであってもよい。
上記その他の工程としては、上記重合する工程後に、組成物の塗膜中の未重合部分を除去してパターン状硬化物を得る現像工程、上記重合する工程後に、硬化物を加熱処理するポストベーク工程、上記重合する工程前に、組成物を加熱処理して上記組成物中の溶剤を除去するプリベーク工程、上記重合する工程前に、上記組成物の塗膜を形成する工程等を挙げることができる。
【0196】
上記現像工程における未重合部分を除去する方法としては、例えば、アルカリ現像液を未重合部分に塗布する方法を挙げることができる。
上記アルカリ現像液としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液や、水酸化カリウム水溶液等のアルカリ現像液として一般的に使用されているものを用いることができる。
上記現像工程の実施タイミングとしては、上記重合する工程後であればよいが、パターニング精度よく、パターン状硬化物を製造することができるとの観点からは、脱離する工程前であることが好ましい。
上記ポストベーク工程における加熱条件としては、重合する工程により得られた硬化物の強度等を向上できるものであればよく、例えば、100℃以上300℃以下とすることができ、120℃以上であることが好ましく、150℃以上であることが好ましく、200℃以上250℃以下で20分間~90分間とすることができる。上記ポストベーク温度が上述の範囲であることで、重合工程後に、上記ポストベーク工程及び架橋する工程を同時に実施することが容易となるからである。
上記プリベーク工程における加熱条件としては、組成物中の溶剤を除去できるものであればよく、例えば、70℃以上150℃以下で30秒~300秒間とすることができる。
また、上記プリベーク工程における加熱条件は、上記化合物Aの脱離温度以下で行われることが、例えば、重合する工程及び架橋する工程をこの順で実施することが容易となる観点から好ましい。このような観点からは、上記プリベーク工程における加熱条件は、150℃未満であることが好ましく、なかでも120℃未満であることが好ましく、特に、100℃未満であることが好ましく、90℃以下であることが好ましい。
上記塗膜を形成する工程で、組成物を塗布する方法としては、スピンコーター、ロールコーター、バーコーター、ダイコーター、カーテンコーター、各種の印刷、浸漬等の公知の方法を用いることができる。
上記塗膜は、基材上に形成することができる。
上記基材としては、硬化物の用途等に応じて適宜設定することができ、ソーダガラス、石英ガラス、半導体基板、金属、紙、プラスチック等を含むものを挙げることができる。
また、上記硬化物は、基材上で形成された後、基材から剥離して用いても、基材から他の被着体に転写して用いてもよい。
【0197】
4.その他
上記製造方法により製造される硬化物及びその用途等については、上記「D.組成物」の項に記載の内容と同様とすることができる。
【0198】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例
【0199】
以下、実施例等を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0200】
[実施例1]
下記式(A6-1’)で表される多官能チオール(四国化成製TS-G)0.01mol、二炭酸ジ-tert-ブチル0.05mol及びピリジン30gを混合し、窒素雰囲気下、室温で4-ジメチルアミノピリジン0.002molを加え、60℃で3時間撹拌した。室温まで冷却後、反応液をイオン交換水150gに注ぎ、クロロホルム200gを加えて油水分離を行った。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、60℃で3時間減圧乾燥させ、溶剤を留去することで、下記式(A6-1)で表される化合物を得た。得られた化合物が下記式(A6-1)で表される化合物であることは、H-NMRにて確認した。結果を下記表1に示す。
【0201】
[実施例2~6]
上記式(A6-1’)で表される多官能チオールの代わりに、下記式(A4-1’)、(A3b-1’)、(A2-1’)、(A5-1’)及び(A3a-1’)で表される多官能チオールを用いた以外は、実施例1と同様にして、下記式(A4-1)、(A3b-1)、(A2-1)、(A5-1)及び(A3a-1)で表される化合物を得た。得られた化合物が、それぞれ、下記式(A4-1)、(A3b-1)、(A2-1)、(A5-1)及び(A3a-1)で表される化合物であることは、H-NMRにて確認した。これらのうち(A4-1)、(A2-1)、(A5-1)及び(A3a-1)についての結果を下記表1に示す。
【0202】
[実施例7]
下記式(A6-1’)で表される多官能チオール(四国化成製TS-G)0.06molを、500mLの二つ口丸底フラスコに仕込み、減圧乾燥及び窒素置換を行った後、無水DMF(関東化学製)42mL及びトリエチルアミン0.83mLを加え、0℃に冷却した。次いで、フェニルイソシアナート(関東化学製)0.24molを撹拌しながら添加し、30分間撹拌後、室温に戻した。更に、3時間撹拌した後、酢酸エチル600mLを加えた。有機層を、蒸留水300mLを用いて洗浄した。上記洗浄を4回行った後、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過して、溶媒を減圧除去した。このようにして得られた反応生成物を60℃で2時間減圧乾燥することで、下記式(A6-2)で表される化合物を得た。得られた化合物が下記式(A6-2)で表される化合物であることは、H-NMRにて確認した。
【0203】
[実施例8~10]
上記式(A6-1’)で表される多官能チオールの代わりに、下記式(A4-1’)、(A2-1’)及び(A5-1’)で表される多官能チオールを用いた以外は、実施例1と同様にして、下記式(A4-2)、(A2-2)及び(A5-2)で表される化合物を得た。得られた化合物が、それぞれ、下記式(A4-2)、(A2-2)及び(A5-2)で表される化合物であることは、H-NMRにて確認した。
【0204】
【化35】
【0205】
【化36】
【0206】
【化37】
【0207】
【化38】
【0208】
【表1】
【0209】
[製造例1]
冷却管および攪拌機を備えたフラスコに、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル4質量部およびプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート190質量部を仕込み、引き続きメタクリル酸55質量部、メタクリル酸ベンジル45質量部、並びに分子量調節剤としてのα-メチルスチレンダイマー2質量部を仕込み、緩やかに撹拌しつつ、溶液の温度を80℃に上昇させた。80℃で4時間保持した後、溶液の温度を100℃に上昇させ、この温度を1時間保持して重合することにより共重合体を含有する溶液を得た。次いで、この共重合体を含む溶液に、テトラブチルアンモニウムブロミド1.1質量部、重合禁止剤としての4-メトキシフェノール0.05質量部を加え、空気雰囲気下90℃で30分間撹拌後、メタクリル酸グリシジル74質量部を入れて90℃のまま10時間反応させることにより、重合体U-1を得た(固形分濃度=35.0%)。重合体U-1の重量平均分子量Mwは、9000であった。
上記重合体U-1は、上述の構造単位(U1)、構造単位(U2)及び構造単位(U4)を有するものである。上記重合体U1は、ラジカル重合性化合物であり、酸基を有するものである。
【0210】
[製造例2]青色顔料分散液の製造
分散剤としてDISPERBYK-161(8.4質量部;ビックケミー・ジャパン製)及び着色剤としてピグメントブルー15:6(14質量部)を、PGMEA(77.6質量部)に、ビーズミルを使用して分散させて青色顔料分散液(固形分濃度22.4質量%、固形分中の顔料濃度62.5質量%、溶剤PGMEA)を製造した。
【0211】
[製造例3]黒色顔料分散液の製造
分散剤としてDISPERBYK-161(11.25質量部;ビックケミー・ジャパン製、固形分濃度40質量%)及び着色剤としてMA100(15質量部;三菱化学製、黒色顔料)を、PGMEA(73.75質量部)に、ビーズミルを使用して分散させて黒色顔料分散液(固形分濃度19.5質量%、固形分中の顔料濃度76.92質量%、溶剤PGMEA)を製造した。
【0212】
[実施例2-1~2-22及び比較例2-1~2-9]
下記表2~表4に記載の配合に従って、化合物A、チオール化合物、重合性成分B、重合開始剤、顔料分散液、カップリング剤、溶剤を混合し、25℃で1時間撹拌して組成物を得た。
また、各成分は以下の材料を用いた。
なお、表中の配合量は、各成分の質量部を表すものである。
【0213】
(化合物A)
A-1:実施例1で製造した、上記一般式(A6-1)で表される化合物
A-2:実施例2で製造した、上記一般式(A4-1)で表される化合物
A-3:実施例3で製造した、上記一般式(A3b-1)で表される化合物
A-4:実施例4で製造した、上記一般式(A2-1)で表される化合物
A-5:実施例5で製造した、上記一般式(A5-1)で表される化合物
A-6:実施例6で製造した、上記一般式(A3a-1)で表される化合物
A-7:実施例7で製造した、上記一般式(A6-2)で表される化合物
A-8:実施例8で製造した、上記一般式(A4-2)で表される化合物
A-9:実施例9で製造した、上記一般式(A2-2)で表される化合物
A-10:実施例10で製造した、上記一般式(A5-2)で表される化合物
【0214】
(チオール化合物)
A-1’:上記式(A6-1’)で表される化合物
A-2’:上記式(A4-1’)で表される化合物
A-3’:上記式(A3b-1’)で表される化合物
A-4’:上記式(A2-1’)で表される化合物
A-5’:上記式(A5-1’)で表される化合物
A-6’:上記式(A3a-1’)で表される化合物
【0215】
(重合性成分B)
B-1:SPC-3000(ラジカル重合性化合物、酸基を有する化合物(酸基含有エポキシアクリレート)、高分子量化合物;昭和電工製、固形分42.7質量%、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液)
B-2:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(ラジカル重合性化合物、酸基を有しない化合物、低分子量化合物、日本化薬製カヤラッドDPHA)
B-3:上記製造例1で得られた重合体(ラジカル重合性化合物、酸基を有する化合物、高分子量化合物、固形分濃度35.0質量%、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液)
【0216】
(重合開始剤)
C-1:下記式(C1)で表される化合物(光ラジカル重合開始剤、オキシムエステル類)
C-2:下記式(C2)で表される化合物(光ラジカル重合開始剤、オキシムエステル類)
C-3:BASF社製イルガキュアTPO(光ラジカル重合開始剤、アシルフォスフィンオキサイド類)
C-4:下記式(C4)で表される化合物(光ラジカル重合開始剤、アセトフェノン類)
【0217】
【化39】
【0218】
(顔料分散液)
D-1:製造例2で製造した青色顔料分散液(固形分濃度22.4質量%、固形分中の顔料濃度62.5質量%、溶剤PGMEA)
D-2:製造例3で製造した黒色顔料分散液(固形分濃度19.5質量%、固形分中の顔料濃度76.92質量%、溶剤PGMEA)
【0219】
(シランカップリング剤)
E-1:KBE-403(シランカップリング剤、信越化学製)
(溶剤)
F-1:プロピレングリコール-1-モノメチルエーテル-2-アセテート(溶剤)
【0220】
[評価]
実施例及び比較例で得た化合物について、下記の評価を行った。結果を表2~表4に示した。
【0221】
1.パターニング精度
ガラス基板上に実施例及び比較例の組成物を、ポストベーク後の色度座標(x,y)=(0.135,0.098)となるようにスピンコートし、ホットプレートを用いて、90℃で120秒間プリベークを行った後、23℃で60秒間冷却した。
その後、超高圧水銀ランプを用いてフォトマスク(マスク開口30μm)を介して露光した(露光ギャップ300μm、露光量40mJ/cm)。
現像液として0.04質量%KOH水溶液を用いて60秒間現像した後、よく水洗し、クリーンオーブンを用いて230℃で20分ポストベークを行い、パターンを定着させ、評価用サンプルを得た。
得られたパターンを光学顕微鏡で観察し、マスク開口に対応する部分の線幅を測定した。得られた線幅がマスク開口30μmを基準として、±5μmの範囲内であるものを〇、±5を超え±10μmの範囲内であるものを△、±10μmを超えるものを×とした。結果を下記表2~3に示す。
設定線幅に対して差がないほど線幅が制御されており、パターニング精度が良好であると判断できる。
【0222】
2.耐熱性
上記「1.パターニング精度」の項に記載の方法と同様の方法を用いて評価用サンプルを得た。
得られたパターンの膜厚を測定し、下記式により膜減り率を算出した。
膜減り率(%)=100-(ポストベーク後の膜厚/プリベーク後の膜厚)×100
なお、膜厚はBruker製DEKTAKXTを用いて測定した。
膜減り率が20%未満を〇、20%以上~25%未満を△、25%以上を×とした。結果を下記表2~3に示す。
膜減り率が小さいほどレジスト膜の架橋密度が高く、耐熱性良好であると判断できる。
【0223】
3.しわ
上記「1.パターニング精度」の項に記載の方法で得られた評価用サンプルを用いて、マスク開口30μmで形成されたパターンの表面に観察されるしわの有無について光学顕微鏡観察により、以下の基準で評価を行った。なお、「しわ」は、得られたパターンの膜厚が均一でなく、厚みむらがある場合に観察されるものである。パターンにしわが発生している場合の光学顕微鏡観察画像及びSEM観察画像の例を図1及び図2に、パターンにしわが発生している場合の光学顕微鏡観察画像及びSEM観察画像の例を図4及び図5に示す。しわが発生している場合、図1及び図2に示すように、厚みむらに起因すると推測される縞模様が観察される。
〇:しわが観察されなかった。
△:しわが観察された。
しわがないと、パターン形態が良好であると判断できる。
【0224】
4.保存安定性
実施例及び比較例の組成物の製造直後の粘度と23℃で7日間放置後の粘度を、25℃の雰囲気下で粘度計(コーンプレート型粘度計(東機産業製TVE-22H))を用いて測定し、以下の基準で保存安定性を評価した。
〇:放置後の粘度の製造直後の粘度に対する粘度変化率が10%未満
×:放置後の粘度の製造直後の粘度に対する粘度変化率が10%超
評価が〇であると、保存安定性に優れると確認できる。
【0225】
【表2】
【0226】
【表3】
【0227】
【表4】
【0228】
表2~表4より、チオール基がRにより保護された化合物Aは、例えば、化合物Aの代わりにチオール化合物を用いた例、チオール化合物を含まない例と比較して、パターニング精度及び耐熱性に優れた組成物を形成可能であることが確認できた。
化合物Aは、上記式(A6-1)及び(A6-2)等の上記一般式(A6)で表される化合物、(A4-1)及び(A4-2)等の上記一般式(A4)で表される化合物であることで、特に、パターニング精度及び耐熱性に優れた組成物を形成可能であることが確認できた。
また、Rが、-CO-NR-で硫黄原子側末端のメチレン基が置換された構造よりも、-CO-O-で硫黄原子側末端のメチレン基が置換された構造の方が、しわの発生が少ないことが確認できた。
-CO-NR-で硫黄原子側末端のメチレン基が置換された構造は、-CO-O-で硫黄原子側末端のメチレン基が置換された構造よりも、Rの脱離反応の進行が進みにくく、パターン状硬化物の表面側等の加熱処理時の温度上昇が容易な箇所と、裏面側等の温度上昇が容易でない場所とで脱離反応の進行に差が生じる結果、最終的に得られるパターン状硬化物内での架橋密度の差が大きくなり、しわが生じると推察される。
【0229】
[実施例2-23~2-28及び比較例2-10~2-15]
下記表5~表6に記載の配合に従って、化合物A、チオール化合物、重合性成分B、重合開始剤、顔料分散液、カップリング剤、溶剤を混合し、25℃で1時間撹拌して組成物を得た。
また、各成分は上記の材料を用いた。
なお、表中の配合量は、各成分の質量部を表すものである。
【0230】
実施例及び比較例で得た化合物について、上記「1.パターニング精度」の評価に加えて下記の評価を行った。結果を表5~表6に示した。
【0231】
5.耐熱性2
ガラス基板上に実施例及び比較例の組成物を、ポストベーク後の膜厚が2μmとなるようにスピンコートし、ホットプレートを用いて、90℃で120秒間プリベークを行った後、23℃で60秒間冷却した。
その後、超高圧水銀ランプを用いてフォトマスク(マスク開口30μm)を介して露光した(露光ギャップ300μm、露光量40mJ/cm)。
現像液として0.04質量%KOH水溶液を用いて60秒間現像した後、よく水洗し、クリーンオーブンを用いて230℃で20分ポストベークを行い、パターンを定着させ、膜厚2μmの評価用サンプルを得た。
また、ポストベーク後の膜厚が10μmとなるようにスピンコートした以外は、上記と同様にして膜厚10μmの評価用サンプルを得た。
これらのサンプルを用いて上記「2.耐熱性」の評価と同様にして膜減り率(%)を算出した。表には、膜減り率(%)の数値を示した。
【0232】
6.しわ
上記「5.耐熱性2」の項に記載の方法で得られた評価用サンプルを用いて、上記「3.しわ」と同様の評価を行った。
【0233】
7.現像マージン
ガラス基板上に実施例及び比較例の組成物を、ポストベーク後の膜厚が3μmとなるようにスピンコートし、ホットプレートを用いて、90℃で120秒間プリベークを行った後、23℃で60秒間冷却した。
その後、超高圧水銀ランプを用いてフォトマスク(マスク開口30μm)を介して露光した(露光ギャップ300μm、露光量40mJ/cm)。
現像液として0.04質量%KOH水溶液を用いて、23℃、吐出圧0.15MPaでスプレー現像を行い、マスクの開口部に位置する硬化部が、基材から剥離するまでの時間を測定し、以下の基準で評価を行った。
〇:剥離するまでの時間が現像開始から100秒以上であった。
△:剥離するまでの時間が現像開始から80秒以上100秒未満であった。
×:剥離するまでの時間が現像開始から60秒超80秒未満であった。
【0234】
【表5】
【0235】
【表6】
【0236】
表5~表6より、チオール基がRにより保護された化合物Aは、化合物Aの代わりにチオール化合物を用いた例と比較して、パターニング精度に優れた組成物を形成可能であることが確認できた。また、チオール化合物を含まない例と比較して、耐熱性及び現像マージンに優れ、しわの発生が無い組成物を形成可能であることが確認できた。現像マージンに優れていることで、アルカリ現像時間が変動した場合でも、所定の形状のパターンを安定的に形成することができる。
化合物AとしてA-6(上記一般式(A3a-1)で表される化合物)を用いた場合と比較して、A-2(上記一般式(A4-1)で表される化合物)を用いた場合の方がより現像マージンに優れる組成物が得られた。化合物A中の保護チオール基当量は、A-2>A-6であるため、A-6を用いた場合の方が架橋密度は高くなると想定される。しかし、6官能性で分子量の大きいA-2は疎水性が高いため、アルカリ現像液に対する耐性がより高い硬化物が得られ、その結果、A-2を用いた場合の方が、アルカリ現像液に長時間曝されても安定な硬化物が形成されたと推定される。
【0237】
8.パターニング精度2
ガラス基板上に実施例2-24、比較例2-11及び2-14の組成物を、プリベーク後の厚みが4.0μmとなるようにスピンコートし、塗膜を形成した。次いで、ホットプレートを用いて、90℃で120秒間プリベークを行った後、23℃で60秒間冷却した。その後、超高圧水銀ランプを用いてフォトマスクを介して露光ギャップ300μmで露光した。露光後の塗膜に対して、現像液として0.04質量%KOH水溶液を用いて60秒間現像した後、よく水洗し、クリーンオーブンを用いて230℃で20分ポストベークを行い、パターンを定着させ、評価用サンプルを得た。なお、評価用サンプルは、フォトマスク開口幅及び露光量として、下記水準を組み合わせて作製した。
マスク開口幅(5水準):2.0μm、10.0μm、30.0μm、50.0μm、100.0μm
露光量(3水準):50mJ/cm、100mJ/cm、300mJ/cm
得られたパターンを光学顕微鏡で観察し、マスク開口幅に対応するライン幅を測定した。結果を下記表7に示す。
設定線幅に対して差がないほど線幅が制御されており、パターニング精度が良好であると判断できる。
【0238】
9.耐熱性3
上記「8.パターニング精度2」に記載の方法と同様の方法を用いて評価用サンプルを得た。
得られたパターンの膜厚を、Bruker製DEKTAKXTを用いて測定した。結果を下記表7に示す。
プリベーク後の厚みに対して差がないほど耐熱性良好であると判断できる。
【0239】
【表7】
【0240】
表7より、化合物Aを用いることで、露光量の多少によらず、マスク開口幅からの差が小さい幅のパターン状硬化物が得られることが確認できた。
また、表7より、化合物Aを用いることで、露光量の多少によらず、プリベーク後の厚みからの差の小さい厚みのパターン状硬化物が得られることが確認できた。
このように、化合物Aを用いることで、露光量の多少によらず、設定した幅及び厚みのパターン状硬化物が得られること、さらに、アスペクト比の高いパターン状硬化物が安定的に得られることが確認できた。
図1
図2
図3
図4