(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-17
(45)【発行日】2024-01-25
(54)【発明の名称】モデルベースの限界寸法測定の方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
G03F 1/84 20120101AFI20240118BHJP
G03F 1/24 20120101ALI20240118BHJP
【FI】
G03F1/84
G03F1/24
(21)【出願番号】P 2022190593
(22)【出願日】2022-11-29
(62)【分割の表示】P 2021037637の分割
【原出願日】2016-09-01
【審査請求日】2022-11-29
(32)【優先日】2015-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500049141
【氏名又は名称】ケーエルエー コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】セズジナー アブドゥラフマン
(72)【発明者】
【氏名】ヴェッラ エリック
(72)【発明者】
【氏名】ガナパシー バラジ
(72)【発明者】
【氏名】リウ ヤンウェイ
【審査官】今井 彰
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0144798(US,A1)
【文献】特表2007-520892(JP,A)
【文献】特表2015-510149(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0063490(US,A1)
【文献】特開2003-279319(JP,A)
【文献】特表2015-519617(JP,A)
【文献】特開2003-330163(JP,A)
【文献】特表2018-527619(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 1/20-1/86、7/20-7/24、9/00-9/02
H01L 21/027、21/30
G01B 11/00-11/30
G01N 21/84-21/985
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レチクル上の限界寸法バイアスを測定する方法であって、
前記レチクル上の構造の測定画像を取得するために画像化システムによって前記レチクルを検査することであって、前記構造は未知の限界寸法値を有する、検査することと、
モデルを用いて、前記構造を前記測定画像が取得された前記レチクルの上に形成するために用いたパターンを記述する設計データベースを使用して算出画像を生成することであって、前記モデルは、前記構造に対応するレチクル材料の光学的特性と、前記画像化システムの計算モデルと、調節可能な限界寸法とに基づいて前記算出画像を生成する、生成することと、
最終的なモデル限界寸法に結果としてなるように前記調節可能な限界寸法を調節して、反復的に算出画像を生成する動作を繰り返すことによって、前記測定画像および算出画像の差のノルムを最小化することであって、前記差の前記ノルムを最小化することは、前記調節可能な限界寸法および前記画像化システムの1つまたは複数の不確実パラメータに関して同時に実行される、最小化することと、
前記未知の限界寸法値を前記差の前記ノルムの最小化に結果としてなった前記最終的な限界寸法として定義することと
を含み、最小化される前記差の前記ノルムは、以下の通り、
【数1】
であり、ここで、
I
calc(x,y,v,CD,p)は、x,y位置、ビューv、限界寸法CDおよび1つまたは複数の未知の画像化システムパラメータpの関数としての前記算出画像の複数の強度値であり、
I
meas(x,y,v)は、x,y位置およびビューvの関数としての前記測定画像の複数の強度値であり、
σ(x,y,v)は、ビューvのピクセル(x,y)の強度測定の不確実度であり、
p
iは、前記画像化システムの第i番目の不確実パラメータであり、
E(p
i)は、p
iの期待値であり、
σ(p
i)は、p
iの前記不確実度であり、
前記不確実パラメータは、臨界寸法CD及び焦点である、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記測定画像は、前記算出画像の同じ複数のxy位置に対応する複数のxy位置での複数の強度値から成ることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法であって、前記測定画像は、検査ツールの異なる動作用パラメータに対する複数のビューのために取得される前記構造の複数の測定画像を含み、前記算出画像は、前記複数のビューに対する前記構造に対する複数の算出画像から成るように生成されることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法であって、前記ビューは反射光および透過光の検出を含むことを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法であって、前記ビューは、焦点オフセット、照明の瞳分布、前記照明の偏光状態、収集光学部品の開口数、前記収集光学部品の開口形状、瞳フィルタ設定のうち1つまたは複数に対する異なる設定を含むことを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法であって、前記画像化システムの前記計算モデルは前記画像化システム上で測定された収差特性を含むことを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法であって、前記測定画像および算出画像はそれぞれ、複数のビューで得られる画像のセット、反射または透過モード、照明瞳分布、照明偏光、収集瞳開口数および形状、焦点設定、ならびに、瞳フィルタ位相および振幅を含む少なくとも1つまたは複数の画像化パラメータが異なっている2つのビュー、を含むことを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法であって、
前記レチクル全体の複数の構造に対して、前記複数の構造のそれぞれのために、検査する動作、算出画像を生成する動作、ノルムを最小化する動作、および前記未知の限界寸法を定める動作を繰り返して、前記レチクル全体の前記複数の構造に対する複数の最終的な限界寸法を取得し、このことにより限界寸法均一性(CDU)マップを生成することと、
前記CDUマップを分析して、前記レチクルに欠陥があって修復されるかもしくは廃棄されるべきか、または、前記レチクルが半導体のウェーハを製造するために用いることになるかどうかを決定することと
を更に含むことを特徴とする方法。
【請求項9】
レチクル上の限界寸法バイアスを測定するための検査システムであって、
入射ビームを生成して前記レチクルに方向を定めるための照明光学部品と、
前記入射ビームに応答して前記レチクルからの画像を検出するための出力光学部品と、
少なくとも1つのメモリおよび少なくとも1つのプロセッサであって、
前記レチクル上の構造の測定画像を取得するために前記検査システムによって前記レチクルを検査する動作であって、前記構造は未知の限界寸法値を有する、検査する動作と、
モデルを用いて、前記構造を前記測定画像が取得された前記レチクルの上に形成するために用いたパターンを記述する設計データベースを使用して算出画像を生成する動作であって、前記モデルは、前記構造に対応するレチクル材料の光学的特性と、画像化システムの計算モデルと、調節可能な限界寸法とに基づいて前記算出画像を生成する、生成する動作と、
最終的なモデル限界寸法に結果としてなるように前記調節可能な限界寸法を調節して、反復的に算出画像を生成する前記動作を繰り返すことによって、前記測定画像および算出画像の差のノルムを最小化する動作であって、前記差の前記ノルムを最小化する動作は、前記調節可能な限界寸法および前記画像化システムの1つまたは複数の不確実パラメータに関して同時に実行される、最小化する動作と、
前記未知の限界寸法値を前記差の前記ノルムの最小化に結果としてなった前記最終的な限界寸法として定義する動作と
を開始するように構成される少なくとも1つのメモリおよび少なくとも1つのプロセッサと
を含み、最小化される前記差の前記ノルムは、以下の通り、
【数2】
であり、ここで、
I
calc(x,y,v,CD,p)は、x,y位置、ビューv、限界寸法CDおよび1つまたは複数の未知の画像化システムパラメータpの関数としての前記算出画像の複数の強度値であり、
I
meas(x,y,v)は、x,y位置およびビューvの関数としての前記測定画像の複数の強度値であり、
σ(x,y,v)は、ビューvのピクセル(x,y)の強度測定の不確実度であり、
p
iは、前記画像化システムの第i番目の不確実パラメータであり、
E(p
i)は、p
iの期待値であり、
σ(p
i)は、p
iの前記不確実度であり、
前記不確実パラメータは、臨界寸法CD及び焦点である、
ことを特徴とするシステム。
【請求項10】
請求項9に記載のシステムであって、前記測定画像は、前記算出画像の同じ複数のxy位置に対応する複数のxy位置での複数の強度値から成ることを特徴とするシステム。
【請求項11】
請求項10に記載のシステムであって、前記測定画像は、検査ツールの異なる動作用パラメータに対する複数のビューのために取得される前記構造の複数の測定画像を含み、前記算出画像は、前記複数のビューに対する前記構造に対する複数の算出画像から成るように生成されることを特徴とするシステム。
【請求項12】
請求項11に記載のシステムであって、前記ビューは、反射および透過光の検出、ならびに、焦点オフセット、照明の瞳分布、前記照明の偏光状態、収集光学部品の開口数、前記収集光学部品の開口形状、瞳フィルタ設定のうち1つまたは複数に対する異なる設定、のうち2つ以上を含むことを特徴とするシステム。
【請求項13】
請求項9に記載のシステムであって、前記画像化システムの前記計算モデルは前記画像化システム上で測定された収差特性を含むことを特徴とするシステム。
【請求項14】
請求項9に記載のシステムであって、前記測定画像および算出画像はそれぞれ、複数のビューで得られる画像のセット、反射または透過モード、照明瞳分布、照明偏光、収集瞳開口数および形状、焦点設定、ならびに、瞳フィルタ位相および振幅を含む少なくとも1つまたは複数の画像化パラメータが異なっている2つのビュー、を含むことを特徴とするシステム。
【請求項15】
請求項9に記載のシステムであって、
前記レチクル全体の複数の構造に対して、前記複数の構造のそれぞれのために、検査する前記動作、算出画像を生成する前記動作、ノルムを最小化する前記動作、および前記未知の限界寸法を定める前記動作を繰り返して、前記レチクル全体の前記複数の構造に対する複数の最終的な限界寸法を取得し、このことにより限界寸法均一性(CDU)マップを生成することと、
前記CDUマップを分析して、前記レチクルに欠陥があって修復されるかもしくは廃棄されるべきか、または、前記レチクルが半導体のウェーハを製造するために用いることになるかどうかを決定することと
を更に含むことを特徴とするシステム。
【請求項16】
コンピュータ可読媒体であって、
レチクル上の構造の測定画像を取得するために画像化システムによって前記レチクルを検査する動作であって、前記構造は未知の限界寸法値を有する、検査する動作と、
モデルを用いて、前記構造を前記測定画像が取得された前記レチクルの上に形成するために用いたパターンを記述する設計データベースを使用して算出画像を生成する動作であって、前記モデルは、前記構造に対応するレチクル材料の光学的特性と、前記画像化システムの計算モデルと、調節可能な限界寸法とに基づいて前記算出画像を生成する、生成する動作と、
最終的なモデル限界寸法に結果としてなるように前記調節可能な限界寸法を調節して、反復的に算出画像を生成する前記動作を繰り返すことによって、前記測定画像および算出画像の差のノルムを最小化する動作であって、前記差の前記ノルムを最小化する動作は、前記調節可能な限界寸法および前記画像化システムの1つまたは複数の不確実パラメータに関して同時に実行される、最小化する動作と、
前記未知の限界寸法値を前記差の前記ノルムの最小化に結果としてなった前記最終的な限界寸法として定義する動作と
を実行するためのその上に格納される命令を有することを特徴とするコンピュータ可読媒体であり、最小化される前記差の前記ノルムは、以下の通り、
【数3】
であり、ここで、
I
calc(x,y,v,CD,p)は、x,y位置、ビューv、限界寸法CDおよび1つまたは複数の未知の画像化システムパラメータpの関数としての前記算出画像の複数の強度値であり、
I
meas(x,y,v)は、x,y位置およびビューvの関数としての前記測定画像の複数の強度値であり、
σ(x,y,v)は、ビューvのピクセル(x,y)の強度測定の不確実度であり、
p
iは、前記画像化システムの第i番目の不確実パラメータであり、
E(p
i)は、p
iの期待値であり、
σ(p
i)は、p
iの前記不確実度であるり、
前記不確実パラメータは、臨界寸法CD及び焦点である、
コンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概してレチクル計測などの半導体計測の分野に関する。より詳細には、本発明は、レチクル上の特徴の寸法を計測する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法第119条の下で、2015年9月4日に出願のアブドゥラフマン セズジナー(Abdurrahman Sezginer)らによる「Model-Based CD Measurement」と題する米国仮出願第62/214,472号の優先権を主張し、その出願は全ての目的のためにその全体を本願に引用して援用する。
【0003】
一般に半導体製造の産業は、シリコンなどの基板上へ層構造にされてパターン化される半導体材料を使用して集積回路を製造するための、非常に複雑な技術を必要とする。集積回路は、通常は複数のレチクルから製造される。初めに、回路設計者は、特定の集積回路(IC)設計を記述する回路パターンデータまたは設計データベースをレチクル製造システムまたはレチクルライタに提供する。回路パターンデータは、一般には製造されるICデバイスの物理層を表すレイアウトの形である。表されるレイアウトは、ICデバイスの各物理層(例えば、ゲート酸化膜、ポリシリコン、メタライゼーションなど)のための表現層を含み、ここで、各表現層は特定のICデバイスの層のパターニングを画定する複数のポリゴンから成る。レチクルライタは回路パターンデータを使用して、特定のIC設計を製造するために後で用いる複数のレチクルを書き込む(例えば、通常は、電子ビームライタまたはレーザスキャナを用いてレチクルパターンを露光させる)。
【0004】
各レチクルまたはフォトマスクは通常、少なくとも透明なおよび不透明な領域ならびに、時には半透明の領域および移相領域を含んでいる光学素子であり、そして、それらは集積回路などの電子デバイスの同一表面の特徴のパターンを一緒に画定する。レチクルがフォトリソグラフィ中に使われて、エッチング、イオン注入または他の製造プロセスのための半導体のウェーハの指定された領域を画定する。
【0005】
レチクル検査システムは、レチクルの製造の間、または、フォトリソグラフィにおけるこのようなレチクルの使用の後に発生した可能性がある限界寸法均一性問題などの欠陥に対して、レチクルを検査することができる。回路集積の大規模化および半導体デバイスのサイズの減少のため、製造されるデバイスは、欠陥にますます影響されるようになった。すなわち、デバイスの障害を起こす欠陥はより小さくなってきている。したがって、レチクルの特性をモニタするための検査技術の改良が継続的に求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許出願公開第2015/0144798号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下は、本発明の一定の実施形態の基本的な理解を提供するために、本開示の簡略化された概要を提示する。この概要は本開示の広範囲な概要でなく、そして、それは鍵となる/重要な本発明の要素を特定するものではなく、本発明の範囲を詳細に描写するものではない。その唯一の目的は、後で示すより詳細な説明の序文として、本明細書で開示するいくつかの概念を簡略形式で示すことである。
【0008】
一実施形態において、レチクル上の限界寸法バイアスを測定するための方法と装置が開示される。レチクルは画像化システムによって検査されてレチクル上の構造の測定画像が取得され、そして、その構造は未知の限界寸法(CD)を有する。モデルを用いて、構造をレチクル上に形成するために用いるパターンを記載する設計データベースを使用して、算出画像が生成される。モデルは、構造のレチクル材料、画像化システムの計算モデルおよび調節可能なCDの光学的特性に基づいて、算出画像を生成する。調節可能なCDを調節して、反復的に構造の未知のCD用の最終的なCDを取得するように算出画像を生成する動作を繰り返すことによって、測定および算出画像の差のノルムは、最小化される。差のノルムを最小化することは、調節可能なCDおよび画像化システムの1つまたは複数の不確実パラメータに関して同時に実行される。
【0009】
具体的な実装においては、測定画像は、算出画像の同じ複数のxy位置に対応する複数のxy位置における複数の強度値から成る。更なる態様において、測定画像は、検査ツールの異なる動作用パラメータに対する複数のビューのために取得される構造の複数の測定画像を含み、算出画像は、複数のビューのための構造に対する複数の算出画像から成るように生成される。別の態様においては、ビューは、反射光および透過光の検出を含む。更なる実施形態では、ビューは、焦点オフセット、照明の瞳分布、照明の偏光状態、収集光学部品の開口数、開口形状、瞳フィルタ設定またはアナライザ設定のうち1つまたは複数に対する異なる設定を含む。
【0010】
別の実施例では、画像化システムの計算モデルは、画像化システム上で測定された収差特性を含む。別の態様においては、測定および算出画像の差のノルムは、測定および算出画像ピクセル値の差の平方和である。代替の実施形態において、測定および算出画像の差のノルムは、測定および算出画像ピクセル値の差の絶対値の和である。別の実施形態では、システムの1つまたは複数の不確実パラメータは、焦点および照度のうち1つまたは複数を含む。具体的な実施例としては、測定および算出画像はそれぞれ、複数のビューで得られる画像のセット、反射または透過モードを含む少なくとも1つまたは複数の画像化パラメータによって異なっている2つのビュー、照明瞳分布、照明偏光、収集瞳開口数および形状、焦点設定、ならびに、瞳フィルタ位相および振幅を含む。
【0011】
別の実施例では、レチクル全体の複数の構造に対して、複数の構造のそれぞれのために、検査する動作、算出画像を生成する動作、ノルムを最小化する動作、および未知の限界寸法を定める動作が繰り返されて、レチクル全体の複数の構造に対する複数の最終的な限界寸法を取得し、このことにより限界寸法均一性(CDU)マップを生成する。CDUマップを分析して、レチクルに欠陥があって修復されるかもしくは廃棄されるべきか、または、レチクルが半導体のウェーハを製造するために用いることになるかどうかを決定する。
【0012】
代替の実施形態において、本発明は、レチクル上の限界寸法バイアスを測定するための検査システムに関係する。システムは、入射ビームを生成し、そして入射ビームに応答してレチクルから実際の画像を検出するためのレチクルおよび出力光学部品上へ入射ビームの方向を定めるための、照明光学部品を含む。システムは、上記の記載された動作のうち1つまたは複数を開始するように構成される少なくとも1つのメモリおよび少なくとも1つのプロセッサを更に含む。他の実施形態において、本発明は、少なくとも上記の記載された動作のいくつかを実行するためにその上に格納される命令を有するコンピュータ読取り可能な媒体に関係する。
【0013】
これらの、そしてまた他の本発明の態様は、図面を参照して更に以下に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態による限界寸法(CD)測定プロセスのフローチャートである。
【
図2】マスク上の三次元パターンの物理モデルの表現の横断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態による算出および測定レチクル画像の間の回帰分析を実行することからの結果のグラフである。
【
図4】本発明の一実施形態によるCD均一性(CDU)マップ解析手順を例示するフローチャートである。
【
図5】本発明の技術を行うことができる例示検査システムの図である。
【
図6A】一定の実施形態によるフォトマスクからマスクパターンをウェーハに転写するリソグラフィシステムの簡略図である。
【
図6B】一定の実施形態によるフォトマスク検査装置の概略図を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下の説明では、本発明の完全な理解を提供するために多数の具体的な詳細を記載する。本発明は、これらの具体的な詳細の一部もしくは全部がなくても実践することができる。他の例では、本発明をわかりにくくすることを避けるため、公知のプロセス動作については詳述しない。本発明は一定の実施形態と併せて説明するが、それが本発明をこれらの一定の実施形態に限定することを目的としないことが理解される。
【0016】
本発明の一定の実施形態は、レチクルを検査して欠陥または、より詳しくは、レチクル機能の特性、例えば限界寸法(CD)の変動を検出するための技術およびシステムを提供する。以下の例示の実施形態がレチクルに関して記載されているが、いかなる適切なタイプのサンプル(例えば、ウェーハ)もこのような技術またはシステムを使用してモニタすることができる。加えて、以下の例示の実施形態は、CD変動の他に、例えば、高さ均一性、サイドウオール角度均一性、表面粗さ均一性、ペリクル透過率均一性、水晶透過率均一性などについての他のサンプル特性値のモニタリングに適用することができる。
【0017】
用語「レチクル」は、一般に、その上に不透明材料の層が形成されているガラス、硼珪酸塩ガラス、水晶または石英ガラスなどの透明基板を含む。不透明な(または実質的に不透明な)材料は、フォトリソグラフィで用いる光(例えば、深紫外線)を完全に、または、部分的に遮断する任意の適切な材料を含むことができる。例示材料は、クロム、ケイ化モリブデン(MoSi)、ケイ化タンタル、ケイ化タングステン、ガラス上の不透明MoSi(OMOG)などを含む。ポリシリコン膜を不透明層と透明基板の間に追加して、粘着を改善することもできる。低反射膜、例えば酸化モリブデン(MoO2)、酸化タングステン酸化(WO2)、酸化チタン(TiO2)または酸化クロム(CrO2)は、不透明材料上に形成することができる。
【0018】
用語レチクルは、異なるタイプのレチクルを指し、限定するものではないが、クリアフィールドレチクル、ダークフィールドレチクル、バイナリレチクル、移相マスク(PSM)、交互PSM、減衰またはハーフトーンPSM、三値減衰PSM、そして、クロムレス移相リソグラフィCPLマスクを含む。クリアフィールドレチクルは透明であるフィールドまたは背景領域を有し、ダークフィールドレチクルは不透明であるフィールドまたは背景領域を有する。バイナリレチクルは、透明であるかまたは不透明であるパターン化した領域を有するレチクルである。例えば、クロム金属吸着膜によって画定されるパターンを有する透明な石英ガラスブランクから作られるフォトマスクが使用可能である。バイナリレチクルは移相マスク(PSM)とは異なり、そして、その1つのタイプは光を部分的にしか透過させない膜を含むことができ、これらのレチクルは一般にハーフトーンまたは埋め込み移相マスク(EPSM)と呼ぶことができる。移相材料がレチクルの交互のクリアなスペースに配置される場合、レチクルは交互PSM、ALT PSMまたはLevenson PSMと呼ばれる。任意のレイアウト図に適用される1種類の移相材料は、減衰またはハーフトーンPSMと呼ばれ、これは不透明材料を部分的に透過する膜つまり「ハーフトーン」膜に置き換えることによって製造することができる。三値減衰PSMは、完全に不透明な特徴をも含む減衰PSMである。
【0019】
一般に、不透明な、吸収性の、部分的に不透明な移相材料は、限界寸法(CD)幅により設計されて形成されるパターン構造に形成され、それはまた、CDを有する構造の間のクリアなスペースに結果としてなる。特定のCD値は通常、特定のレチクル機能がフォトリソグラフィープロセスにおいてウェーハに転写される方法に影響を及ぼすことができ、そして、そのようなCDがこの転写プロセスを最適化するために選ばれる。別の言い方をすれば、あるレチクル機能のCD値が指定されたCD範囲の中にある場合、このようなCD値は、回路設計者によって意図されるように、結果として得られる集積回路の適正な動作を可能とする対応するウェーハ機能の製造という結果をもたらす。特徴は通常、集積チップ面積を節約するような演算回路にも結果としてなる最小寸法で形成される。
【0020】
新しく製造されたレチクルは、CD(または他の膜またはパターン特性)欠陥問題を含み得る。例えば、レチクルは、マスクライタのスワスエラーなどの不完全なCD領域を有し得る。レチクルは、多くの異なる方法で時間とともに損傷を受けることもあり得る。第1の劣化の例として、フォトリソグラフィ露光プロセスの結果、レチクルの不透明材料の物理劣化となる場合がある。例えば、レチクルに使われる、193nmの高出力深紫外線(UV)ビームなどの高出力ビームは、レチクル上の不透明材料に、損傷を物理的に引き起こす場合がある。損傷は、248nmの紫外線ビームなどの他の波長によって生じる場合もある。実質的に、紫外線ビームはレチクル上の不透明なパターンを物理的に沈み込ませることがあり得て、特徴を平坦化させる。その結果、不透明な特徴は本来のCD幅と比較して、著しくより大きいCD幅となることがあり得て、その一方で、このような不透明な特徴間のスペーシングは本来のCD幅と比較して、かなり小さいCD幅となることがあり得る。他のタイプのCD劣化が、レチクル特徴(MoSi)と照射光、クリーニングプロセス、汚染などとの間の化学反応によって生じる場合がある。これらの物理的な作用は、時間とともにレチクルの限界寸法(CD)に悪影響を与えることもあり得る。
【0021】
この劣化の結果、特徴CD値は著しく変化してしまうことがあり、レチクル全体のCD均一性に影響を及ぼして、ウェーハ収率に悪影響を与える。例えば、マスクの一部のマスク特徴幅は、本来の線幅CDより著しく大きくなり得る。例えば、レチクルの中心がレチクルのエッジとは異なるCDを有することによって、半径方向のCD不均一のパターンが生じる場合がある。
【0022】
ある従来のCD測定技術は、試験中のオブジェクトのデジタル化画像を利用する。強度閾値が画像に適用され、強度画像が閾値に等しいエッジの位置が見つかる。それから、これらのエッジの間の距離を判定することができる。一実装では、閾値は等焦点閾値であるように選択され、それによって焦点を変えることによる測定の不安定さを最小限となるようにする。
【0023】
レチクル画像に実行されるこの寸法測定技術は、強度スケールにおける誤差および画像化システムの収差に影響される。加えて、正確な等焦点状態は、いつでも達成できるわけではない。照明のレチクルとの相互作用も、正確に同じとは考えられない。このように、測定した距離の幾何学的または物理的意味は、特に任意の二次元のパターンについては不明確であり、結果としてCD測定の正確さに対しては容認できないレベルになる。
【0024】
本発明の一定の技術において、試験中のオブジェクト(例えば、レチクル)は照明を当てられて、その画像は検出器の上に形成される。それから、検出器の出力は、デジタル化されて、更に処理することができる。それから、特徴の限界寸法(CD)は、計算モデルによって算出される画像を、画像化システムによって得られる(測定される)画像に反復的にすり合わせてみることにより測定することができる。レチクルが検査ツールの解画像限界であるパターンを有するとしても、モデルはレチクルから取得されるこのような実際の画像と同等の画像をシミュレーションすることができる。
【0025】
図1は、本発明の一実施形態によるレチクル検査プロセス100のフローチャートである。示すように、レチクル画像102は画像化システム104に提供されて、レチクル画像106を取得することができる。レチクルは、設計データベースに基づいて製造されたものである。レチクル画像106は、米国カリフォルニア州ミルピタスのKLA-Tencor社から入手可能なTeron640などの任意のツールを使用して取得することができる。レチクル画像106は、通常、画像またはフィールド平面において取得されるぼやけた画像(例えば、レチクルパターンのぼやけたレプリカ)である。以下の説明は単一のレチクル構造ならびにその対応する画像およびシミュレーションした画像に関係しているが、本技術はレチクル上の複数の構造の複数の画像に適用することができる。
【0026】
各レチクル画像(算出および測定された)はまた、複数のxy座標または強度ピクセルのアレイにおける複数の強度値から成ることになる。1つまたは複数のレチクル画像は、各種の画像化条件または「ビュー」もしくは「v」設定、例えばレチクルからの反射光および/または透過光の検出、特定波長、焦点オフセット、照明の瞳分布、照明の偏光状態、収集光学部品の開口数、開口形状、瞳フィルタ設定、アナライザ設定、などの下で取得することもできる。例えば、異なる位相および振幅設定は、照明および/または収集瞳の異なる位置に対して設定することができる。別の実施例では、異なるSまたはP偏光を選択することができる。つまり、検査ツールの照明および/または収集設定の各種の組合せは、レチクル画像を取得するために用いることができる。
【0027】
このように、レチクル画像の各セットは、複数の異なるx,yおよび1つまたは複数のビュー設定での複数の強度値に対応する。複数のビューを用いて複数のレチクル画像を取得するときに、レチクル画像のセットは異なるx,y,v値によって索引付けられる強度値のセットとして表すことができる。単一ビューからのレチクル画像は、データの貴重なソース(すなわち、異なるレチクル位置の強度値)を提供し、一方で、異なるビューで取得した画像は、更に後述するようにCDを見つけるための処理技術のためのより多くのデータを提供する。
【0028】
画像化されているレチクル上の同じパターン/構造のための設計データベース108を計算モデル110に与えて、このようなパターン/構造のための算出レチクル画像112を生成することもできる。設計データベースは、例えばレチクルが製造された直後に実行される、ダイ対データベース欠陥検査において一般的に利用できる。設計データベース108は、パターンの記述およびレチクル102上の構造を含む。1つの実施例において、グレースケール値を有するデータベース(DB)画像は、データベースポリゴンまたは二次元の形状からラスター化される。このようなデータベースは、通常、OASIS、MEBESまたはGDSIIフォーマットのファイルによって送信される。
【0029】
本モデルは、構造/パターンおよび、定数および1つまたは複数の調節可能パラメータ(例えば、CD)を含む検査ツールパラメータの所与のセットのための異なる算出画像を生成するように、任意の好適な方法で構成することができる。各ライン特徴およびその周囲の隣接部または背景のモデル化された画像クリップを生成することができる。一般に、モデルは、実際のレチクルに用いられてレチクル画像を取得する特定の画像化ツールの光学的特性をシミュレーションする。
【0030】
各モデル化された画像クリップは、このような特定の目標から特定の距離の範囲内の特定の目標構造およびその周囲の隣接部に基づいて生成するのが好ましい。クリップのサイズは、目標およびこのような目標から間隔をおいた距離に依存し、その距離とは、任意の隣接構造が、結果として得られるモデル化された目標画像への光学効果をおそらく有するかまたは、有する可能性がある距離である。例えば、画像クリップは特徴、および、特徴からの画像化システムの点広がり関数の10倍の距離の範囲内である任意の隣接特徴または領域を含むように、サイズ設定することができる。モデルは、検査ツールまたはその他モデル化されている画像化光学ツールに存在する光学効果の少なくともいくつかを含む。例示モデルは、KLA-Tencorのレチクル検査システムなどにおいて使用するデータベースレンダリングモデルを含む。
【0031】
例えば、レチクル上の試験中のパターンの記述はモデルに入力される。一般に、試験中の構造の記述およびその周囲の背景は、設計データベースおよびモデルへの入力から通常は取得される。すなわち、検査されている特定の構造の位置は、設計データベースから対応する構造およびその周囲の背景記述を読み出すために用いる。試験中のパターンのための他のモデル入力パラメータは、レチクル材料の光学的特性を含むことができる。
【0032】
モデルは、定数パラメータ、およびCDを含む1つまたは複数の調節可能パラメータを含む、パターンパラメータの所与のセットに対する異なる算出画像を生成するように、任意の好適な方法で構成することができる。例えば、レチクル上のパターンの記述がモデルに入力される。パターンモデルパラメータは、パターン、レチクル材料の光学的特性、などの輪郭寸法を含むことができる。一実施形態において、レチクルにエッチングされるパターンのエッジの輪郭は、一定であるとみなされる。最も単純な実装において、エッジは、垂直であるとみなされる。
図2は、マスク上の三次元パターン200の物理モデルの表現の横断面図である。マスクパターンは、レチクル基板上に堆積される多くの層にエッチングされる。示すように、パターン表現200は、レチクルの基板202上へパターン化される第1の層204aおよび第2の層204bを有する。各層の屈折率の実部および虚部ならびに厚みは、計算モデルに入力することができる。実際のレチクルのエッチングされていない膜スタックの屈折率および厚み(例えば、t1およびt2)は、楕円偏光計で測定することができる。マスクパターンは、調節可能な関連するCDも有する。
【0033】
検査ツールの光学構成も、モデル化することができる。加えて、検査ツールの収差は、周期的に特徴づけられることができ、測定することができて、モデルに入力することができる。例えば、干渉計技術を、検査ツールの収差を測定するために用いることができる。
【0034】
診断用構造を使用して収差を測定する別の方法は、2016年5月10日に特許付与されたチアン チャン(Qiang Zhang)らによる米国特許第9,335,206号に更に記載されており、それは全ての目的のためにその全体を本願に引用して援用する。1つの方法において、診断試験パターンは、できるだけ一様に実質的に瞳を満たすようにEUV光強度を回折させるように、設計されている。加えて、診断マスク実施形態は、画像化された試験構造と画像化された背景の間でハイコントラストに結果としてなる試験構造および周囲の背景材料を含む。
【0035】
診断マスクの試験パターンの限界横方向寸法は、投影光学部品の解像度に相当するか、または、それ未満となるように設計することができる。一実施形態において、試験パターンは、数十ナノメートル(nm)以下である。診断マスクは、試験構造がEUV光源の下で画像化されるときに高い光学解像度およびコントラストを提供すると共に、このような微細解画像度レベルでリソグラフィパターニングをサポートするように設計してもよい。
【0036】
一実施形態において、診断マスクは薄型EUV多層(ML)リフレクタ設計に基づいており、高屈折率コントラストを有する2つの交互低吸収材料から成る。40~60対のMo/Si二重層を概して含む製造レチクルに見られるリフレクタとは対照的に、診断マスクは、約15未満または約10未満、例えば5つの、Mo/Si二重層の対を有するMLピラーまたはピンホールを含む。10未満の二重層またはML部の対を使用する結果は、多層リフレクタのバンド幅が著しく増加するということになる。加えて、二重層(例えば、Mo/Si)の厚みまたは周期は、更に関心がある角度範囲の反射率を平坦化するために、約7.0から7.5nmの間の範囲にわたって調節することができる。
【0037】
一般に、波面収差は、検査画像化システムを用いて、診断用試験構造にキャプチャされる、波頭が測定されることになっている画像に基づいて、位相回復方法で測定することができる。診断用構造の、理想とされる非収差画像は算出することができ、そして対応する測定画像と比較されて、検査システムの収差の特徴描写を取得することができる。位相回復技術、例えばP.ダークセン(P.Dirksen)らによる、「Characterization of a projection lens using the extended Nijboer-Zernike approach」 Proceedings of SPIE v4691,1392(2002)に記載されている技術を用いることができ、その論文は参照により本願に引用して援用する。
【0038】
算出レチクル画像を形成するためのモデルをもう一度参照すると、他のモデルのパラメータは、通常、検査ツールならびにこのようなツールのビュー設定の記述を含むことができ、その中には、レチクルからの反射光および/または透過光の検出、特定波長、焦点オフセット、照明の瞳分布、照明の偏光状態、収集光学部品の開口数、開口形状、瞳フィルタ設定、アナライザ設定、などを含むことができる。モデルレチクル画像は、実際の測定されたレチクル画像を取得するために用いたビューに対して生成することができる。
【0039】
一般に、計算モデルは、レチクルにエッチングされる特定のパターンまたは構造と、照明がどのように相互作用するかについて、算出する。この目的のために、厳密結合波解析(RCWA)法を用いることができる。有限差分時間領域(FDTD)、境界積分方程式、体積積分等式、有限要素法(FEM)、スペクトル要素法、キルヒホッフ近似などの他の方法も可能である。
【0040】
計算モデルは、正確にわかっていない調節可能パラメータを有する。最も重要な調節可能パラメータは、判定/計測されるべき量である限界寸法(CD)である。設計データベースは意図された寸法を有するパターン化された構造を含み、実際のレチクルはこのような意図された寸法から、例えばCDバイアスによって逸脱し得る、対応するパターン化された構造を有する。設計データベースパターン構造の寸法は、調節することができて、それから、このような調節されたパターンのための結果として得られる画像を算出するために用いることができる。
【0041】
CDに加えて、モデルは他の調節可能パラメータを有することができる。例えば、画像化システムの焦点および光強度などのいくつかのパラメータは、変動する可能性があり、したがって不確かな場合がある。他のモデルのパラメータは、「かなりよく」公知であり得るか、または一定の高い確度を有することができる。より多くのパラメータが調節されると、結果はより再現可能でなく、そしてより正確でないようになる。したがって、モデルのために選択される調節可能パラメータの数は、正確なCD結果を成し遂げる目的とバランスさせる。このように、モデルのパラメータは、可能な限り測定されて公知なものである。一実施形態においては、CDおよび焦点だけがモデルにおいて調節されて、モデル画像を生成する。
【0042】
画像上の不確実パラメータの効果がCDの効果とは十分に区別されるときは、不確かな画像化パラメータは算出および測定画像をすり合わせるためにCDと同時に調節される。ある実施形態において、調節可能パラメータは均一のバイアスΔCDであり、そのためレチクルデータベースパターンの全ての形状の全てのエッジがΔCDによってバイアスされる。
【0043】
図1のプロセスをもう一度参照すると、測定画像106およびモデルによってできる算出画像112は動作114において差分を求め、差のノルムが算出される。例えば、画像の差のノルムは、ピクセル単位画像の平方和である。画像の差の他のノルムは、ピクセル単位画像差の加重平方和、絶対値の和または絶対値の最大値を含む。
【0044】
それから、繰り返しプロセスは、1つまたは複数の差量を最小化するように実行することができる。示すように、動作116において差のノルムが十分に小さいかどうかを判定することができる。その量が適切に小さくない場合、動作118において、差のこのようなノルムを減少させる方法で、CDおよび他の1つまたは複数の未知パラメータの推定値は変えることができる。差のノルムが十分に小さいときには、画像比較との差の最小化されたノルムに結果としてなったモデルCDは次に、動作120の出力とすることができる。次に、このモデルCDは(例えば、
図2に示すように)、対応するパターンの実際の、または測定されたCDとして定義することができる。
【0045】
一般に、算出および測定画像は、差のノルムを得るためにすり合わせる。このすり合わせプロセスは、算出および測定画像の差のノルムを最小化することによって実行することができる。うまく働く好適なノルムの例としては、以下のように、加重l1およびl2ノルムが含まれる。
【0046】
【0047】
【0048】
l2ノルム(2乗誤差の和)の使用は、l2ノルムを最小化するアルゴリズムをより速く実行することを可能にする。パターン構造ごとの合計は、vによって索引付けられる複数の画像ピクセルx,yおよびビューにわたって行うことができる。
【0049】
モデルが測定画像の実際のパラメータ、例えばCDと正確に一致する入力を有する場合、上記等式1および2の量はゼロである。モデルへの入力として選ばれるCDが画像化された構造の実際のCDと異なる場合、その量は等式1および2に対して正の数である。
【0050】
量w(x,y,v)は、異なるセットのピクセルおよびビューに対する相対値を配置する正の重みである。具体的な重みは、画像の精度に基づいて、ある場所およびビューに対して決定することができる。画像のよりノイズが多いビューまたは部分には、より少ない重みが与えられる。
【0051】
等式1および2に対して例示されるように、算出画像は単一のビューまたは複数のビューのための測定画像にすり合わせることができる。ビューとは、反射光または透過光によって形成される画像などの特定の画像化状態を指す。ビューは、レチクルからの反射光および/または透過光の検出、特定波長、焦点オフセット、照明の瞳分布、照明の偏光状態、収集光学部品の開口数、開口形状、瞳フィルタ設定、アナライザ設定、などのうち1つまたは複数によって異なったものとなり得る。
【0052】
2つ以上のビューを用いると、複数のビューの測定画像は単一の調節可能なCDパラメータを有する1つの物理モデルと同時にすり合わせることができる。複数のビューは、調節可能なCDをより良く抑制して、CD計測の不確実度を減らす。
【0053】
1つのアプローチでは、反射画像および透過画像は、同時にすり合わせる。1つの実施例においては、反射画像および透過画像に共通である、1つの調節可能なCDパラメータおよび1つの焦点パラメータだけしかない。別の方法では、周知の焦点オフセットを有する2つの透過画像は、同時にすり合わせる。この実施例では、ただ1つの調節可能なCDパラメータおよび調節されることを必要とするただ1つの焦点パラメータだけがある。
【0054】
CDを決定するために、モデルと測定画像の間の差のノルム式は、任意の好適な方法で特定のCDのために最小化することができる。等式2などの式を最小化する方法はよく知られている。具体的な実装において、最小化は、以下によって達成することができる。
【0055】
【0056】
等式3の最小化は、CDおよびpに関するものである。後者の量pは、画像化システムの不確実パラメータの配列である。不確実パラメータは、例として、焦点および照度を含むことができる。
【0057】
代替の実施形態において、最大事後確率(MAP)推定を用いることができる。算出および測定レチクル画像に対するMAPの適用は、等式4として表すことができる。
【0058】
【0059】
σ(x,y,v)はビューvのピクセル(x,y)の強度測定の不確実度であり、そして、piは画像化システムの第i番目の不確実パラメータである。例えば、p1は焦点であり、p2は光の強度である。E(pi)は、piの期待値である。σ(pi)は、piの不確実度である。各量は、その不確実度に反比例して重み付けされる。不確実パラメータごとの不確実度は、画像化ツールの設計許容度から、または、不確実パラメータのサンプルを測定すること、および、サンプルの分散を算出することによって決定することができる。この重み付け技術によって、上記の式、等式4の項の相対的重要度を、正しく設定することができる。
【0060】
MAPの最も一般的な定式化は、観察を与えられる下での未知パラメータの確率分布関数、つまりpdf(未知パラメータ|観察)を最小化することを含む。この定式化は、全ての測定誤差および未知パラメータがガウス分布となっており、かつあらゆる量が統計的に独立している場合は、上述の等式4に減少する。
【0061】
本発明の一定の実施形態によって、全ての画像が最尤推定法に従ってCDを決定するために使われることができる。古い方法は、閾値に関して画像の一部を使用するだけである。上記の技術は、閾値を使用する必要はない。
図3は、本発明の一実施形態によって算出および測定されたレチクル画像の間に回帰分析を実行することから得られる結果のグラフである。
図3は、実際データに対応して、モデル出力が実際の画像と密接に一致することを示す。すなわち、線構造に対する測定された反射強度データ(302a)は、このような線構造に対する算出された(またはレンダリングされた)反射強度データ(302b)と正確に一致する。同様に、透過した測定された強度データ(304a)は、透過したレンダリングされた強度データ(304b)と密接に一致する。このように、反射ビューおよび透過ビューの両方に対して、1つの共通のCDが、モデルおよび実際の強度データにおいて一致する結果となる。したがって、同じCD結果が同じレチクル構造に対する異なるビューパラメータに対して取得されるので、本技術はCDバイアスを見つけるための精密な機構を提供すると思われる。
【0062】
CDバイアス結果は、結合して、レチクル全体に対するCD均一性(CDU)マップを形成することができる。次いで、CDUマップは、更に本明細書において記載されているように、レチクルが仕様の範囲内であるかどうか決定するために分析することができる。CDUマップの実施形態は、いかなる適切な形もとることができる。例えば、CDUマップは、レチクルの各領域の平均CD変動値のリストとしてテキスト形式で表すことができる。各平均CD変動値は、対応するレチクル領域座標と一緒にリストにすることができる。CDUマップは、グリッドポイント差の値の標準偏差または分散などの測定基準によって表すこともできる。あるいは、または、加えて、CDUマップは視覚的に表すことができ、その結果、異なるCD変動値または範囲が異なる見え方で、例えば異なって着色したレチクル領域、異なる棒グラフ高さ、異なるグラフ値または三次元表現などとして示される。CDUマップは、異なるグリッドポイントのサンプリングサイズによって、または、多項式の適合またはフーリエ変換などの異なる関数形式に対する適合によって表すことができる。
【0063】
これらのCDUマップは、半導体チップメーカがレチクルの使用の結果生じるプロセスウィンドウを理解するために重要である。CDUマップによって、レチクルを使用するべきであるか、リソグラフィプロセスにおける誤差のための補整を適用するべきであるか、または、改良された次のレチクルを形成するようにレチクルの製造を改善するべきかどうかを、チップメーカが決定することが可能となる。CDUマップは、製造に欠陥がある領域を検出するように、新しく製造されたレチクルのために生成して分析することができ、あるいは、特徴変化をモニタしおよび/または劣化を検出するように、フォトリソグラフィープロセスで1回以上使われたレチクルに実行することができる。
【0064】
図4は、本発明の一実施形態によるCDUマップ解析手順400を例示するフローチャートである。最初に、CDUマップは、動作402において取得することができる。例えば、CDUマップは、レチクル全体の複数パターン/構造に対して
図1のCDバイアス判定プロセスを実行することによって取得される。
【0065】
それから、動作404においてCDUマップが仕様から外れているかどうかを判定することができる。例えば、特定のレチクル領域に対するCDU変動が定義済み閾値を超えるかどうかを判定することができる。CDU変動が定義済み閾値を超えない場合、次にレチクルは動作405においてウェーハを作るために用いることができる。
【0066】
CDU変動が定義済み閾値を超える場合、根本原因として関連したプロセスまたはパターンに対応する仕様外CDUマップのための共通の符号を、動作408において取得することができる。CDUマップを用いて、例えば、レチクル製造/プロセス問題または時間経過に伴うレチクルの劣化、例えばクロム、MoSi、ペリクル、クリーニングタイプ劣化によって生じる、レチクル上の問題領域を追跡することができる。言い換えれば、特定の仕様外CDUマップは、以前特定の根本原因と関係していた特定の符号を有することができる。例えば、レチクルまたはレチクルプロセスの以前の検査および分析が、根本原因問題および関連するCDU符号を明らかにしている場合がある。
【0067】
図示の例をもう一度参照すると、レチクルパターンかプロセスが根本原因であるかどうかを、次に動作410で判定することができる。例えば、CDUマップが、汚れたペリクルなどの特定の根本原因と関係していた符号を有するかどうかを判定することができる。レチクルパターンが根本原因である場合、レチクルが修復可能かどうかを、次に動作414で判定することができる。レチクルが修復可能でない場合、動作418において、それは廃棄することができる(そして、新規なレチクルが製造される)。そうでない場合、レチクルは、動作416において修復される。例えば、一定の欠陥は、レチクルから取り去ることができる。例として、ペリクルは取り去るかもしくは置き換えることができ、または、余分のレチクル部はエッチングするかまたは除去することができる。修復の後、新規な検査は修復されたレチクルに実行することができ、そして、CDUマップを生成して分析するための手順は繰り返すことができる。修復されたレチクルが仕様の範囲内である場合、修復されたレチクルは次に動作405においてウェーハを作るために用いることができる。代替の実施例において、リソグラフィプロセスは、動作417において、例えば線量または焦点を修正することによって仕様外レチクルを補償するように調節することができ、動作405において、新規なプロセスをレチクルに使うことができる。一方で、レチクルを製造するプロセスが根本原因である場合、動作412において、レチクル製造プロセスは調節することができる(そしてレチクルは放棄され、新規なレチクルが製造される)。
【0068】
検査の間、レチクルの複数の画像は光学検査ツールを使用して取得することができる。画像獲得の間、複数の画像は、レチクル上の複数の目標構造に対して取得される。画像は、レチクルのセットのダイの各ダイの個々の領域から取得することができる。例えば、検査ツールは、入射光ビームがレチクル全体をスキャンする(つまりレチクルの各画像に対して移動する)につれて、反射光もしくは透過光または反射光と透過光の両方を、検出して集めるように動作可能とすることができる。入射光ビームは、各々が複数の画像を含むレチクルのスワス全体をスキャンすることができる。光は、この入射ビームに応答して各画像の複数のポイントまたはサブエリアから集められる。
【0069】
検査ツールは、通常、このような検出光を強度値に対応する検出信号に変換するように動作可能であってもよい。検出信号は、レチクルの異なる位置で異なる強度値に対応する振幅値を有する電磁波形という形をとることができる。検出信号は強度値の単純リストおよび関連するレチクルポイント座標という形をとることもできる。検出信号は、レチクルの異なる位置またはスキャンポイントに対応する異なる強度値を有する画像という形をとることもできる。レチクル画像はレチクルの全ての位置がスキャンされて光が検出された後に生成することができ、または、レチクル画像の一部は各レチクル部がスキャンされるにつれて生成することができる。
【0070】
強度データの各セットは、蛇行するまたはラスターパターンでレチクルから、画像を順次スキャンすることによって取得することができる。例えば、レチクル部の第1のスワスは、光学検査システムの光ビームによってxの正の方向に左から右にスキャンされ、例えば、強度データの第1のセットを取得する。次に、レチクルはy方向のビームに関して移動する。次に、第2のスワスは、強度データの第2のセットを取得するxの負の方向に右から左にスキャンされる。スワスは、ダイの最下行からダイの最上行まで、またはその逆に、順次スキャンされる。あるいは、レチクルの画像はレチクルの個々のターゲット領域へ移動することによって取得することができる。
【0071】
一実施形態において、各画像に対する統合強度値は、レチクルの検査の間に検出される、反射光、透過光または両方ともに基づいて生成することができる。1つの例示的実装において、反射(R)値および透過(T)値は(T-R)/2によって結合することができる。反射信号は、概して透過信号と反対符号である。したがって、TおよびR信号を減算することは、信号を合計することになる。雑音源がTおよびRに対して異なるので、ノイズは結合信号から平均値になる傾向があり得る。Rおよび/またはT値に対する他の重み付けを用いて、関連する利点を有する画像のための統合強度値を生成することができる。いくつかの場合では、特定領域のためのRおよびT信号は反対符号の代わりに同一符号を有することがあり得て、それは、結果が関連する領域において矛盾していて信頼できない可能性がある、ということを示すことができる。このように、RおよびTの組合せは、十分に信頼できない場合は、このような領域において重みを減ずるか、または計算から除外することができる。
【0072】
本発明の技術は、ハードウェアおよび/またはソフトウェアのいかなる好適な組合せにおいても実施することができる。
図5は、本発明の技術を実施することができる例示検査システム500の図である。検査システム500は、検査ツールまたはスキャナ(図示せず)から入力502を受信することができる。検査システム500は、設計データベースに基づいてレチクルの画像をモデル化するモデルから、入力502を受信することもできる(または、システム500は設計データベースを受信し、次にこのようなモデル化された画像を生成することができる)。検査システムは、受信入力502を分配するためのデータ分配システム(例えば、504aおよび504b)、受信入力502の特有の画像または画像部分の処理のための強度信号(または画像)処理システム(例えば、画像プロセッサならびにメモリ506aおよび506b)、ΔCDマップを生成するためのマップジェネレータシステム(例えば、マップジェネレータプロセッサおよびメモリ512)、検査システムコンポーネント間の通信を可能とするためのネットワーク(例えば、切替えネットワーク508)、任意選択の大容量記憶装置516、そしてマップをレビューするための1つまたは複数の検査コントロールおよび/またはレビューステーション(例えば、510)を含むことができる。検査システム500の各プロセッサは、概して1つまたは複数のマイクロプロセッサ集積回路を含むことができ、インタフェースおよび/またはメモリ集積回路を含むこともでき、加えて、1つまたは複数の共用および/またはグローバルなメモリ装置に連結することができる。
【0073】
入力データ502を生成するためのスキャナまたはデータ収集システム(図示せず)は、レチクルの強度信号または画像を取得するために、(例えば、本明細書において更に記載されているように)任意の適切な機器の形をとることができる。例えば、スキャナは、反射されるか、透過されるか、または別の方法で、1つまたは複数の光センサに方向を定められる一部の検出光に基づいて、光学画像を作ることができるかまたはレチクルの一部の強度値を生成することができる。それから、スキャナは強度値を出力することができ、または、画像がスキャナから出力されてもよい。
【0074】
レチクルは通常、複数のポイントからの複数の強度値が取得される複数の画像部分に分割される。レチクルの画像部分は、この強度データを取得するためにスキャンすることができる。画像部分は、特定のシステムおよびアプリケーション要件に応じて、任意のサイズおよび形状であってよい。一般に、画像部分ごとの複数の強度値は、任意の好適な方法でレチクルをスキャンすることによって取得することができる。例えば、画像部分ごとの複数の強度値は、レチクルをラスタースキャンすることによって取得することができる。あるいは、画像は、円形または螺旋状パターンなどの任意の適切なパターンで、レチクルをスキャンすることによって取得することができる。もちろん、円形または螺旋の形状をレチクルからスキャンするために、センサは異なって(例えば、円形パターンに)配置されなければならない場合があり、および/または、レチクルはスキャンの間、異なって移動される(例えば、回転される)可能性がある。
【0075】
以下で例示される実施例において、レチクルがセンサを通過して移動するにつれて、光はレチクルの矩形状領域(本明細書において「スワス」と呼ぶ)から検出され、このような検出光は各画像の複数のポイントで複数の強度値に変換される。この実施形態において、スキャナのセンサは矩形パターンに配置されて、レチクルから反射光および/または透過光を受信し、そこから、レチクルの画像のスワスに対応する強度データのセットを生成する。
【0076】
各画像に対する強度値は、任意の好適な方法で設定される光学検査ツールを使用して取得することができる。光学ツールは通常、動作用パラメータのセットまたは「レシピ」で設定され、それは、強度値を取得するための異なる検査実行に対して実質的に同一である。レシピ設定は、以下のうちの1つまたは複数を含むことができ、それらは、特定のパターンのレチクルをスキャンするための設定、ピクセルサイズ、単一信号からの隣接信号をグループ化するための設定、焦点設定、照明または検出開口設定、入射ビーム角および波長設定、検出器設定、反射光か透過光の量のための設定、空中モデリングパラメータ、などである。
【0077】
強度または画像データ502は、ネットワーク508を介してデータ分配システムによって受信できる。データ分配システムは、受信データ502の少なくとも一部を保持するための1つまたは複数のメモリ素子、例えばRAMバッファと関連付けることができる。全メモリは、データの全てのスワスを保持するために十分大きいことが好ましい。例えば、1ギガバイトのメモリは、100万×1000ピクセルまたはポイントであるスワスに対してうまく機能する。
【0078】
データ分配システム(例えば、504aおよび504b)は、プロセッサ(例えば506aおよび506b)への受信入力データ502の部分の分配を制御することもできる。例えば、データ分配システムは、第1の画像プロセッサ506aに第1の画像のためのデータを送ることができ、画像プロセッサ506bに第2の画像のためのデータを送ることができる。複数の画像のためのデータの複数のセットは、各画像プロセッサに送ることもできる。
【0079】
画像プロセッサは、少なくともレチクルの画像部分に対応する強度値または画像を受信することができる。画像プロセッサは、各々例えば、1つまたは複数のメモリ素子(図示せず)、例えば、受信データ部を保持するなどのローカルメモリ機能を提供するDRAMデバイスに、連結するかまたはそれと統合することもできる。メモリは、レチクルの画像に対応するデータを保持するために十分大きいことが好ましい。例えば、8メガバイトのメモリは、512×1024ピクセルである画像に対応する強度値または画像に対してうまく機能する。画像プロセッサは、メモリを共有することもできる。
【0080】
入力データ502の各セットは、レチクルのスワスに対応することができる。データの1つまたは複数のセットは、データ分配システムのメモリに格納することができる。このメモリはデータ分配システム内の1つまたは複数のプロセッサによって制御することができ、メモリは複数のパーティションに分割することができる。例えば、データ分配システムは第1のメモリパーティション(図示せず)にスワスの一部に対応するデータを受信することができ、データ分配システムは第2のメモリパーティション(図示せず)に別のスワスに対応する別のデータを受信することができる。データ分配システムの各メモリパーティションは、このようなメモリパーティションと関連したプロセッサに送られることになっているデータのある部分を保持するだけであることが好ましい。例えば、データ分配システムの第1のメモリパーティションは画像プロセッサ506aへの第1のデータを保持して送ることができ、第2のメモリパーティションは画像プロセッサ506bへの第2のデータを保持して送ることができる。
【0081】
検出信号は、空中画像という形をとることもできる。すなわち、空中画像技術を用いて、ウェーハに露光するフォトレジストパターンの空中画像を作成するようにフォトリソグラフィシステムの光学効果をシミュレーションすることができる。一般に、フォトリソグラフィツールの光学部品は、レチクルからの検出信号に基づいて空中画像を作成するようにエミュレートされる。空中画像は、ウェーハのフォトレジスト層上へフォトリソグラフィ光学部品およびレチクルを通過する光から作り出されるパターンに対応する。加えて、特定のタイプのフォトレジスト材料のためのフォトレジスト露光プロセスもエミュレートすることができる。
【0082】
入射光または検出光は任意の適切な空間開口を通過して、任意の適切な入射角で任意の入射光または検出光輪郭を作成することができる。例として、プログラム可能な照明または検出開口を利用して、例えば二重極、四重極、クエーサ、円環などの、特定のビーム輪郭を作ることができる。具体的な実施例としては、光源マスク同時最適化(SMO)または任意のピクセル化された照明技術を実装することができる。
【0083】
データ分配システムは、データの任意の適切なパラメータに基づくデータの、各データのセットを定めて分配することができる。例えば、データは、レチクル上の画像の対応する位置に基づいて定めて、分配することができる。一実施形態において、各スワスは、スワス内のピクセルの水平位置に対応するカラム位置の範囲と関連付けられる。例えば、スワスのカラム0~256は第1の画像に対応することができ、そして、これらのカラム内のピクセルは第1の画像または強度値のセットを含むことになり、それは1つまたは複数の画像プロセッサに送られる。同様に、スワスのカラム257~512は第2の画像に対応することができ、そして、これらのカラムのピクセルは強度値の第2の画像またはセットを含むことになり、それは異なる画像プロセッサ(複数可)に送られる。
【0084】
図6Aは、一定の実施形態に従ってフォトマスクMからマスクパターンをウェーハWに転写するために用いることができる典型的リソグラフィシステム600の簡略図である。このようなシステムの実施例は、スキャナおよびステッパ、より具体的には、オランダのVeldhovenのASMLから入手可能なTWINSCANシステムを含む。一般に、照明光源603は、照明光学部品607(例えば、レンズ605)を通してマスク平面602にあるフォトマスクM上へ光ビームの方向を定める。照明レンズ605は、その平面602で開口数601を有する。開口数601の値は、フォトマスク上のどの欠陥がリソグラフィの重大な欠陥であるか、そして、どの欠陥がそうでないか、に影響を与える。フォトマスクMを通過するビームの一部は、画像化光学部品613を通ってウェーハW上へ方向を定められてパターン転送を開始する、パターン化された光学信号を形成する。
【0085】
図6Bは、一定の実施形態による、照明光学部品651aを有する例示検査システム650の概略図であり、これはレチクル平面652で相対的に大きい開口数651bを備える画像化レンズを含む。示した検査システム650は、例えば、60~300X倍またはそれを上回る倍率を強化検査のために提供するように設計された顕微鏡的拡大倍率光学部品を含む、検出光学部品653aおよび653bを含む。例えば、検査システムのレチクル平面652での開口数651bは、リソグラフィシステム600のレチクル平面602での開口数601よりかなり大きくすることができ、それによって試験検査画像と実際の印字画像の差が生じる結果となる。
【0086】
本明細書において記載する検査技術は、各種の特別に設定された検査システム、例えば
図6Bにおいて略図で例示するものに実装することができる。図示するシステム650は、照明光学部品651aを通ってレチクル平面652のフォトマスクM上へ方向を定められる光ビームを生成する照明光源660を含む。光源の例としては、レーザまたはフィルタ処理ランプが挙げられる。1つの実施例において、光源は、193nmのレーザである。前述したように、検査システム650は、レチクル平面652で、対応するリソグラフィシステムのレチクル平面開口数(例えば、
図6Aの要素601)より大きくてもよい開口数651bを有することができる。検査されるフォトマスクMは、レチクル平面652のマスクステージに配置されて、光源に露光される。
【0087】
マスクMからのパターン化された画像は一まとまりの光学素子653aによって方向を定められ、それがパターン化された画像をセンサ654aに投影する。反射型システムにおいて、光学要素(例えば、ビームスプリッタ676および検出レンズ678)は、センサ654b上へ反射光を導いて、キャプチャする。適切なセンサは、電荷結合素子(CCD)、CCDアレイ、時間遅延集積化(TDI)センサ、TDIセンサアレイ、光電子増倍管(PMT)および他のセンサを含む。
【0088】
レチクルの画像をスキャンするように任意の適切な機構によって、照明光学部品カラムをマスクステージに対して移動してもよく、および/または、ステージを検出器またはカメラに対して移動してもよい。例えば、モータ機構は、ステージを移動するために利用することができる。モータ機構は、例として、ネジドライブおよびステッパーモータ、フィードバック位置を有するリニアドライブ、またはバンドアクチュエータおよびステッパーモータから形成することができる。
【0089】
各センサ(例えば、654aおよび/または654b)によってキャプチャされる信号は、コンピュータシステム673によって、または、更に一般的にいえば、1つまたは複数の信号処理装置によって処理することができ、それはそれぞれ、各センサからのアナログ信号を処理のためにデジタル信号に変えるように構成されるアナログデジタル変換器を含む。コンピュータシステム673は通常、入出力ポートに連結する1つまたは複数のプロセッサおよび、適切なバスを介した1つまたは複数のメモリまたは他の通信機構を有する。
【0090】
コンピュータシステム673は、変化している焦点および他の検査のレシピパラメータなどのユーザ入力を提供するための1つまたは複数の入力装置(例えば、キーボード、マウス、ジョイスティック)を含むこともできる。コンピュータシステム673はまた、例えばサンプル位置を制御(例えば、フォーカシングおよびスキャン)するためのステージに接続することができ、そして他の検査パラメータおよびこのような検査システムコンポーネントの構成を制御するための他の検査システムコンポーネントに接続することもできる。
【0091】
コンピュータシステム673は、結果として生じる強度値、画像ならびにCDバイアス値およびマップなどの他の検査結果を示すために、ユーザインターフェース(例えば、コンピュータ画面)を提供するように(例えば、プログラミング命令によって)構成することができる。コンピュータシステム673は、反射されたおよび/または透過された検知光ビームの輝度変化、位相、CDUマップおよび/または他の特性を分析するように構成することができる。コンピュータシステム673は、結果として生じる強度値、画像および他の検査特性を示すために、ユーザインターフェース(例えば、コンピュータ画面上)を提供するように(例えば、プログラミング命令によって)構成することができる。一定の実施形態では、コンピュータシステム673は上に詳述される検査技術を実施するように構成される。
【0092】
このような情報およびプログラム命令は特別に構成されたコンピュータシステム上に実装されるので、このようなシステムは、本明細書において記載されている各種の動作を実行するための、コンピュータ可読媒体に保存することができるプログラム命令/コンピュータコードを含む。マシン可読媒体の例は、ハードディスク、フロッピー(登録商標)ディスクおよび磁気テープなどの磁気媒体、CD-ROMディスクなどの光学媒体、光ディスクなどの光磁気媒体、プログラム命令を保存して実行するように特別に構成される読取り専用メモリデバイス(ROM)およびランダムアクセスメモリ(RAM)などのハードウェアデバイスを含むが、これに限定されるものではない。プログラム命令の例は、コンパイラで生成されるようなマシンコードと、インタプリタを用いてコンピュータによって実行される高レベルコードが入っているファイルとを、両方とも含んでいる。
【0093】
一定の実施形態では、フォトマスクを検査するシステムは、本明細書において記載されている技術を実行するように構成される少なくとも1つのメモリおよび少なくとも1つのプロセッサを含む。検査システムの1つの実施例は、米国カリフォルニア州ミルピタスのKLA-Tencorから入手可能な、特別に構成されたTeraScan(商標)DUV検査システムを含む。
【0094】
前述の本発明を、明快に理解できるようにある程度詳細に説明したが、一定の変更および修正が添付の特許請求の範囲の範囲内で実施できることは明らかである。プロセス、システムおよび本発明の装置を実施する多くの代替的な方法があることに留意すべきである。したがって、本実施形態は例示的であり限定的でないと考えるべきであり、本発明は本明細書において与えられる詳細に限定されるべきではない。