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特許7422488ローラーデバイスとその利用、及びウェブの温度を制御するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-18
(45)【発行日】2024-01-26
(54)【発明の名称】ローラーデバイスとその利用、及びウェブの温度を制御するための方法
(51)【国際特許分類】
   B65H 20/14 20060101AFI20240119BHJP
   B65H 23/24 20060101ALI20240119BHJP
   B65H 23/32 20060101ALI20240119BHJP
   B65H 27/00 20060101ALI20240119BHJP
   C23C 14/56 20060101ALI20240119BHJP
【FI】
B65H20/14
B65H23/24
B65H23/32
B65H27/00 B
C23C14/56 D
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018562293
(86)(22)【出願日】2016-06-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-06-27
(86)【国際出願番号】 EP2016062539
(87)【国際公開番号】W WO2017207053
(87)【国際公開日】2017-12-07
【審査請求日】2019-02-07
【審判番号】
【審判請求日】2022-05-06
(73)【特許権者】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】3050 Bowers Avenue Santa Clara CA 95054 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】メット, ウァレリウス
(72)【発明者】
【氏名】デピッシュ, トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ホワイト, ジョン エム.
(72)【発明者】
【氏名】ハイン, シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】ブッシュベック, ヴォルフガング
【合議体】
【審判長】藤本 義仁
【審判官】門 良成
【審判官】殿川 雅也
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0006520(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102014113047(DE,A1)
【文献】特開2016-88663(JP,A)
【文献】特開2006-89782(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 20/00
B65H 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空条件下のウェブ被覆処理でローラーデバイスに接触した状態で、ウェブ(200)を誘導し、前記ウェブ(200)の温度を制御するためのローラーデバイス(100)であって、
- 前記ローラーデバイス(100)の温度を調整するための温度調整システム(130)と、
- 前記ウェブ(200)に面して接触するための前記ローラーデバイス(100)の湾曲面(101)であって、前記ローラーデバイスの軸(102)の周りに回転可能で、ウェブ誘導領域(103)を含む湾曲面(101)と、
- 前記湾曲面(101)に配設され、ガス流の放出に適合された一群のガス排出口(104)と、
- 前記ガス排出口(104)の第1のサブグループに前記ガス流を選択的に供給し、前記ガス排出口(104)の第2のサブグループに前記ガスが流れるのを選択的に防止するためのガス分配システム(105)であって、前記ガス排出口の前記第1のサブグループは、前記ウェブ誘導領域(103)内の少なくとも1つのガス排出口からなり、前記ガス排出口の前記第2のサブグループは、前記ウェブ誘導領域(103)外の少なくとも1つのガス排出口からなり、前記ガス分配システム(105)は、ガス源(108)と、前記ガス排出口(104)と流体連通している個々のガスチャネル(107)であって、前記ガス源(108)を前記ガス排出口(104)の前記第1のサブグループに選択的に接続し、前記ガス排出口(104)の前記第2のサブグループ前記ガス源(108)との接続を選択的に切るように適合された個々のガスチャネル(107)とを備える、ガス分配システム(105)と、
前記ウェブ(200)の移動を誘発するように、前記湾曲面(101)を回転するための駆動ユニット(110)と
- 前記一群のガス排出口(104)のうちの一又は複数の前記ガス排出口を介して選択的に吸引を行うために、前記ローラーデバイス(100)の回転によって前記ガスチャネル(107)に選択的に接続可能である、真空生成システム(111)と、
- 前記湾曲面(101)に提供された一又は複数のEチャックデバイスであって、静電力によって前記ウェブ(200)を前記ローラーデバイス(100)の前記湾曲面(101)に接触させて保持するための引力を提供するように動作させられる、一又は複数のEチャックデバイスと
を備えるローラーデバイス(100)。
【請求項2】
前記湾曲面(101)は、0.1Rzから1.5Rzの間の範囲の粗度を有する、請求項1に記載のローラーデバイス。
【請求項3】
前記ローラーデバイス(100)は更に、前記ウェブ被覆処理の真空環境の中へ前記ガス流のガスが広がるのを防止またはその量を限定するために、前記湾曲面(101)上に配設された一又は複数のシーリングデバイス(113、114)を備える、請求項1又は2に記載のローラーデバイス。
【請求項4】
前記ガス排出口(104)の各々が前記第1のサブグループ又は前記第2のサブグループのどちらに所属するかは、前記湾曲面(101)の回転に応じて変化する、請求項1から3のいずれか一項に記載のローラーデバイス。
【請求項5】
前記ガス源(108)は非回転式で、前記ガスチャネル(107)は前記湾曲面(101)と共に回転可能で、前記ガスチャネル(107)は、回転時の前記ガス源(108)に対するその相対位置に応じて、前記ガス源(108)に対して選択的に接続する又は接続を切る、請求項1から4のいずれか一項に記載のローラーデバイス。
【請求項6】
前記ガス排出口(104)は、前記湾曲面(101)の多孔質材料(123)の層によって提供される、請求項1から5のいずれか一項に記載のローラーデバイス。
【請求項7】
真空条件下においてウェブ(200)上に材料を堆積し被覆するための被覆装置であって、
請求項1から6のいずれか一項に記載のローラーデバイスと、
前記ローラーデバイスが内部に配置された真空チャンバと
を備える被覆装置。
【請求項8】
前記真空チャンバから排気するように構成された少なくとも1つの真空ポンプをさらに備える、請求項7に記載の被覆装置。
【請求項9】
真空条件下のウェブ被覆処理でウェブ(200)の温度を制御するための方法であって、
- 湾曲面(101)を有する温度制御されたローラーデバイス(100)のウェブ誘導領域(103)内で、前記ウェブ(200)が前記温度制御されたローラーデバイス(100)に接触した状態で、前記ウェブ(200)を牽引することおよび/または前記湾曲面(101)を回転させることにより、前記ウェブ(200)を動かす手順
- 前記温度制御されたローラーデバイス(100)から前記ウェブ(200)まで温度遷移をもたらすように、前記温度制御されたローラーデバイスと前記ウェブとの間にガスベアリングを形成するため、前記温度制御されたローラーデバイス(100)に配設されたガス排出口(104)からガスを放出する手順であって、個々のガスチャネル(107)が、前記ガス排出口(104)と流体連通しており、前記ガスを放出する手順は、前記ウェブ誘導領域(103)内の前記ガス排出口(104)の第1のサブグループに対応するガスチャネル(107)をガス源(108)に選択的に接続することにより、前記ガス排出口(104)の前記第1のサブグループを経由して、前記温度制御されたローラーデバイス(100)からガス流を放出する手順含む、ガスを放出する手順
- 前記ウェブ誘導領域(103)外の前記ガス排出口(104)の第2のサブグループに対応するガスチャネル(107)と、前記ガス源(108)との接続を選択的に切ることにより、前記ガス排出口(104)の前記第2のサブグループを経由して前記ガスが流れるのを防止する手順、
- 前記ローラーデバイス(100)の回転によって前記ガスチャネル(107)に選択的に接続可能である真空生成システム(111)によって、前記ガス排出口(104)のうちの一又は複数の前記ガス排出口を介して選択的に吸引を行う手順、および
- 前記湾曲面(101)に提供された一又は複数のEチャックデバイスを用いて、静電力によって、前記ウェブ(200)を前記ローラーデバイス(100)の前記湾曲面(101)に接触させて保持するための引力を提供する手順
を含む、方法。
【請求項10】
駆動ユニット(110)によって、前記温度制御されたローラーデバイス(100)を回転する手順を更に含み、前記湾曲面(101)の回転が前記ウェブ(200)の移動を誘発する、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001] 本開示の実施形態は、ウェブ被覆処理のローラーデバイスに関し、また、ウェブ被覆処理でウェブを誘導する方法に関する。具体的には、実施形態は、ウェブ被覆処理でウェブを誘導し冷却するためのデバイス及び方法に関する。幾つかの実施形態は、薄膜太陽電池製造などの2面被覆処理におけるウェブ誘導やウェブの冷却のためのデバイス及び方法に関し、他の実施形態は可撓性ディスプレイの製造時のウェブ誘導に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002] 薄膜太陽電池の製造などの場合、ウェブを被覆するための装置及び方法では、被覆されるウェブは被覆装置を通って誘導される。例えば、ウェブ上に堆積材料の一又は複数の層を堆積するため、ウェブは一又は複数の堆積源を通って誘導されうる。また、ウェブの誘導は、被覆装置内でウェブの移動方向を変える際に有用となりうる。誘導ローラーデバイスを用いて被覆装置のサイズを最適化することは、所有コスト及び被覆装置を購入する顧客の承諾の観点から有益である。
【0003】
[0003] ウェブの誘導で可能なもう1つの適用は、ウェブの2面被覆である。ウェブが両面から被覆される場合には、第2の面の被覆中に被覆済みのウェブの第1の面の損傷を避けるため、ローラーデバイスは慎重に設計され、操作される。
【0004】
[0004] 多くの適用では、特に薄膜太陽電池の適用では、既に被覆されたウェブの面上でローラーを用いて被覆済みのウェブを誘導すると、被覆を損傷することがある。そのため、被覆装置は、ローラーとウェブの接触がもっぱらウェブの(被覆されていない)裏面になるように設計されてきた。設計に制限があるため、被覆装置内に複雑な移動経路が設計される、及び/又は被覆装置の経路長全体が実質的に制限される。幾つかの適用では、ウェブを非接触で誘導し、ウェブ上での被覆の損傷を防止するため、ホバークッションが利用される。幾つかの適用では、被覆処理は真空条件下で行われる。ホバークッション用に放出されるガスは、真空条件に対して悪影響を及ぼしうる。
【0005】
[0005] 上記を踏まえて、技術上の問題点の少なくとも一部を克服する、誘導デバイス、ウェブの温度とウェブの接触を制御するための方法、並びに、ウェブを誘導してウェブの温度を制御するためのローラーデバイスの利用が提示される。
【発明の概要】
【0006】
[0006] 上記を踏まえて、独立請求項に従う、誘導デバイス、ウェブの温度制御とウェブへの接触のための方法、並びに、ウェブへの接触とウェブの温度制御のためのローラーデバイスの利用が提示される。更なる態様、利点及び特徴は、従属請求項、明細書、及び添付図面から明らかである。
【0007】
[0007] 本書に記載の実施形態により、真空条件下のウェブ被覆処理でローラーデバイスに接触した状態で、ウェブを誘導し、ウェブの温度を制御するためのローラーデバイスが提供される。ローラーデバイスは、ローラーデバイスの温度を調整するための温度調整システムウェブに面して接触するローラーデバイスの湾曲面を含む。湾曲面はローラーデバイスの軸の周りに回転可能で、ウェブ誘導領域を含む。ローラーデバイスは更に、湾曲面に配設され、ガス流の放出に適合された一群のガス排出口、並びに、ガス排出口の第1のサブグループにガス流を選択的に供給し、ガス排出口の第2のサブグループにガスが流れるのを選択的に防止するためのガス分配システムを含む。ガス排出口の第1のサブグループは、ウェブ誘導領域内の少なくとも1つのガス排出口からなり、ガス排出口の第2のサブグループは、ウェブ誘導領域外の少なくとも1つのガス排出口からなる。ローラーデバイスは更に、湾曲面を回転するための駆動ユニットを含み、湾曲面は、湾曲面が回転したときにウェブの運動を誘発するように適合されている。
【0008】
[0008] 本書に記載の一実施形態により、真空条件下のウェブ被覆処理でウェブの温度を制御する方法が提示される。方法は、温度制御されたローラーデバイスのウェブ誘導領域内で、温度制御されたローラーデバイスに接触した状態で、温度制御されたローラーデバイスの上でウェブを動かすことを含む。温度制御されたローラーデバイスからウェブまで熱遷移をもたらすように、温度制御されたローラーデバイスとウェブとの間にガスベアリングを形成するため、温度制御されたローラーデバイスに配設されたガス排出口からガスが放出される。ガスを放出することは、ウェブ誘導領域内のガス排出口の第1のサブグループを経由して、温度制御されたローラーデバイスからガス流を放出すること、並びに、ウェブ誘導領域外のガス排出口の第2のサブグループを経由してガスが流れるのを防止することを含む。
【0009】
[0009] 本書に記載の一実施形態により、真空条件下のウェブ被覆処理の適用で、ウェブへの接触とウェブの温度制御のためのローラーデバイスの利用が提示される。ローラーデバイスは、ローラーデバイスとウェブに面して接触するローラーデバイスの湾曲面の温度を調整するための温度調整システムを含む。湾曲面はローラーデバイスの軸の周りに回転可能で、ウェブ誘導領域を含む。ローラーデバイスは更に、湾曲面に配設され、ガス流の放出に適合された一群のガス排出口、並びに、ガス排出口の第1のサブグループにガス流を選択的に供給し、ガス排出口の第2のサブグループにガスが流れるのを選択的に防止するためのガス分配システムを含む。ガス排出口の第1のサブグループは、ウェブ誘導領域内の少なくとも1つのガス排出口からなり、ガス排出口の第2のサブグループは、ウェブ誘導領域外の少なくとも1つのガス排出口からなる。
【0010】
[0010] 実施形態はまた、開示された方法の各々を実行するための装置も対象とし、記載された各方法特の徴を実行するための装置部分を含む。方法の特徴は、ハードウェア構成要素を用いて、適切なソフトウェアによってプログラミングされたコンピュータを用いて、この2つの任意の組合せによって、又は、それ以外の任意の態様で実施されうる。更に、実施形態はまた、記載された装置が動作する方法、又は記載された装置が製造される方法も対象としている。方法は、この装置の機能を実行するための又は装置の部分を製造するための方法の特徴を含む。
【0011】
[0011] 上述の一部及び実施形態の他の詳細な態様は、以下の記述で説明され、図を参照して部分的に示されている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本書に記載の実施形態によるローラーデバイスの概略断面図である。
図2】本書に記載の実施形態によるローラーデバイスの概略断面図である。
図3】本書に記載の実施形態によるローラーデバイスの概略断面図である。
図4】本書に記載の実施形態によるローラーデバイスの概略側面図である。
図5】本書に記載の実施形態によるローラーデバイスの概略側面図である。
図6】本書に記載の実施形態によるローラーデバイスの概略側面図である。
図7】本書に記載の実施形態によるローラーデバイスの概略断面図である。
図8】本書に記載の実施形態による、ウェブへの接触とウェブの温度制御のための方法のフロー図を示す。
図9】本書に記載の実施形態による、ウェブへの接触とウェブの温度制御のための方法のフロー図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[0012] 図面についての以下の説明の中で、同じ参照番号は同じ構成要素を表わす。個々の実施形態に関しては、相違点のみが説明される。図面は概略図であって、必ずしもすべての実施形態で縮尺どおりに描かれているわけではなく、説明のためのものである。
【0014】
[0013] ローラーデバイスは本書で説明されているように、回転軸の周りに回転対称になりうるデバイスであってよい。ローラーデバイスは円筒形で、例えば、ドラム又は凸面円筒形になりうる。ローラーはまた、円錐又は円錐台であってもよい。典型的には、ローラーデバイスは回転軸の周りに回転可能である。幾つかの実施形態では、ローラーデバイスは固定部分と、例えば、固定部分の周りに回転可能な部分を含む。例えば、ローラーデバイスは、(幾つかの実施形態ではガス分配システム又はガス分配システムの構成要素を含みうる)内側固定部分、及び、内側固定部分の周りに回転する外側回転部分を含みうる。
【0015】
[0014] 幾つかの実施形態によれば、ローラーデバイスは湾曲面を含む。湾曲面はローラーデバイスの表面になりうる。ローラーデバイスの湾曲面は、ローラーデバイスの動作時のウェブに、例えば、ウェブ誘導領域に接触するように適合される。本書に記載の他の任意の実施形態と組み合わされうる実施形態により、湾曲面は回転対称な面になりうる。典型的には、湾曲面は軸の周りに回転対称である。具体的には、湾曲面は、円筒形の表面、凸面円筒形の表面、円錐の表面、及び円錐台の表面からなる群から選択されうる。
【0016】
[0015] 幾つかの実施形態によれば、ローラーデバイスの湾曲面は、ウェブ誘導領域内でのローラーデバイスの動作中に、接触位置で(領域接触又は点接触で)ウェブに接触しうる。例えば、ローラーデバイス及び/又はウェブの湾曲面の表面特性(粗度(roughness)など)によって、ウェブは接触位置で湾曲面に点接触している。粗度を有する湾曲面は、湾曲面の微視的な表示が「山と谷」を示すことを意味し、湾曲面とローラーデバイスとの間の点接触は、湾曲面の粗度が「山」を有する位置で起こる。他の実施形態と組み合わせうる幾つかの実施形態によると、ローラーデバイスの湾曲面の粗度は、典型的には約0.1Rzから約1.5Rzの間にあり、より典型的には約0.1Rzから約1.0Rzの間にあり、更に典型的には約0.2Rzから約0.8Rzの間にありうる。幾つかの実施形態では、ローラーデバイスの湾曲面の粗度は約0.2Rzである。
【0017】
[0016] 幾つかの実施形態によれば、ローラーデバイス(特に、ローラーデバイスの湾曲面)とウェブとの間の接触は、ローラーデバイスが駆動されるときに、ウェブが移動されることを可能にする。例えば、ローラーデバイスとウェブとの間の接触、及びローラーデバイスの回転運動は、所定の(低い張力)で引っ張られた状態でウェブを運びうる。
【0018】
[0017] 図1は、ローラーデバイス100の一実施形態を示す。ローラーデバイス100は、湾曲面101を含む。本書に記載の幾つかの実施形態によれば、湾曲面101はローラーデバイスの回転軸102の周りに回転可能になりうる。ローラーデバイス100の湾曲面101は、ウェブ誘導領域103を含む。ウェブ誘導領域103内では、ウェブ200は湾曲面101に接触している。
【0019】
[0018] 動作中、ウェブは湾曲面のウェブ誘導領域の上を誘導される。幾つかの実施形態では、ウェブ誘導領域は、ローラーデバイスの動作中にウェブが湾曲面に接触する湾曲面の領域として定義されうる。例えば、表面が電圧によって付勢されている、或いは、一又は複数のEチャックが湾曲面に提供されている場合には、ウェブ誘導領域のサイズは、ウェブの重量又はウェブの領域密度、動作中にウェブが引っ張られる際の張力、及び、静電力などの引力又は反発力などのパラメータに依存しうる。ウェブ誘導領域のサイズは、ラップ角(wrap angle)とも称される巻き付け角(enlacement angle)に依存し、これによってウェブはローラーデバイスの湾曲面に巻き付けられる。例えば、図1では、巻き付け角は約120°である。
【0020】
[0019] 図1に示したローラーデバイス100の実施形態は更に、湾曲面101内に配設された一群のガス排出口104を含む。ガス排出口104は、ローラーデバイス100のガス分配システム105からガスを放出するように、具体的には、各ガス排出口が配置されている位置で、湾曲面101に実質的に垂直な方向に放出するように適合されている。図1に示したローラーデバイス100の実施例では、ガス排出口はローラーデバイス100の全周に分散されている。具体的には、ガス排出口104は、ローラーデバイスの全周にわたって規則的に分散されている。
【0021】
[0020] 「規則的に配設された」特徴とは、第1のガス排出口から第1のガス排出口に隣接する少なくとも1つのガス排出口までの距離が、第2のガス排出口から第2のガス排出口に隣接する少なくとも1つのガス排出口までの距離と同じであることと理解されたい。幾つかの実施形態では、「規則的に配設された」特徴とは、特定のパターンが複数の排出口の一部に割り当てられ、同じパターンが複数の排出口の別の部分に割り当てられうることを意味する。幾つかの実施形態では、ガス排出口は、ローラーデバイスの周囲に不規則に配設されうる。
【0022】
[0021] 本書に記載の他の任意の実施形態と組み合わせうる実施形態によれば、個々のガス排出口、ガス排出口の任意のサブグループ又はすべてのガス排出口は、開口部、孔、スリット、ノズル、ブラストパイプ、ダクト開口部、オリフィス、ジェット、多孔質材料によって提供される排出口などからなる群から選択されうる。幾つかの実施形態によれば、排出口は典型的な漏斗型又はカップ型の表面にある凹部で、凹部には凹部の底部から、或いは横方向からガスが供給される。本書に記載のローラーデバイスのガス排出口は、多孔質層の開口部になりうる。幾つかの実施形態によれば、ガス排出口は、本書に記載されているように、実質的に丸い形、円形、楕円形、三角形、長方形、正方形、多角形などの任意の適切な形状や、不規則な丸い形状、不規則な角のある形状、ガス排出口ごとに異なる形状などの不規則形状を有しうる。幾つかの実施形態によれば、ガス排出口は表面から突出していない。
【0023】
[0022] 本書で使用されているように、「実質的に」という用語は、「実質的に」で表される特性から何らかの逸脱がありうることを意味しうる。例えば、「実質的に円形の」という用語は、一方向の全体的な長さの約1~10%の逸脱など、正確な円形の形状からの特定の逸脱を有しうる形状を意味する。更なる実施例によれば、「実質的に垂直な」という用語は、2つの構成要素の相互の配置が、正確な垂直配置から定義された大きさだけ逸脱していることを意味しうる。例えば、「実質的に垂直な」という用語は、正確な垂直配置から最大10°逸脱した配置を意味しうる。したがって、「実質的に」という用語の上記記載は、他の特徴にも適用されうる。
【0024】
[0023] 本書に記載の実施形態によるローラーデバイス100は更に、ガス分配システム105を含む。幾つかの実施形態によれば、ガス分配システム105はガス源108又はメインガス供給口を含む。ガス分配システム105により、ガス流をガス排出口の第1のサブグループに選択的に供給することができる。例えば、ガス排出口104とガス分配システム105を有するローラーデバイス100は、図1に例示的に示されているように、湾曲面のウェブ誘導領域103のガス排出口104にガス流を供給する。ウェブ誘導領域103内に(一時的に)配置されたガス排出口は、ガス排出口の第1のサブグループとして示されうる。本書に記載の幾つかの実施形態によれば、ローラーデバイス100のガス分配システム105は、ウェブ誘導領域103外のローラーデバイスのガス排出口にガスが流れるのを選択的に防止するように適合されている。ウェブ誘導領域103外に(一時的に)配置されたガス排出口は、ガス排出口の第2のサブグループとして示されうる。
【0025】
[0024] 動作中、任意の1つのガス排出口が第1のサブグループに所属するか、第2のサブグループに所属するかは変わることがある。言い換えるならば、開放されているガス排出口はその後のある時点で閉鎖されることがあり、また、その逆もありうる。幾つかの実施形態では、ガス排出口の第1サブグループ及び/又は第2のサブグループへの所属は、湾曲面の回転に応じて動作中に変化することがある。ウェブ誘導領域は空間内の固定された位置に留まってよく、ウェブ誘導領域に入るガス排出口は、湾曲面の回転によって開放され(或いは、ガス源に接続され)、すなわち、所属は第1のサブグループに変化する。湾曲面の回転によってウェブ誘導領域を離れるガス排出口は閉鎖され(或いは、ガス源から切断され)、すなわち、所属は第2のサブグループに変化する。
【0026】
[0025] 本書に記載の幾つかの実施形態によるローラーデバイス100のガス分配システム105は、ガス分配システムのサイズ、ガス分配システムの位置、ガス分配システムの形状と構造、ガス分配システムの力学的特性によって定義されるガス排出口へのガス流を選択的に供給、及び防止するように適合されうる。例えば、図1の実施例では、ローラーデバイスのガス分配システム105は、ローラーデバイスの固定部分106に配置された又は存在するガス源108(メインガス供給口とも称される)を含む。ガス源108は、ローラーデバイス100の固定部分の周囲の1セクションを包含するサイズを有する。ローラーデバイス100の湾曲面101は回転式で、ローラーデバイス100の回転軸102の周りに、具体的には、ローラーデバイスの固定部分(例えば、ガス源を含む)の周りに回転することができる。
【0027】
[0026] 本書に記載の幾つかの実施形態によれば、ガス分配システム105はガスチャネル107(個別のガス排出供給口とも称される)を含みうる。本書に記載のガスチャネルは個別のガスチャネルであってよい。各ガス排出口がウェブ誘導領域103内にあるとき、ガスチャネルは、ガス源108から湾曲面101のガス排出口104へ通じてもよい。ガスチャネルは、ガス源108から湾曲面101上のガス排出口104の第1のサブグループに通じてもよい。ガス源108とガスチャネル107を有するガス分配システム105は、部分回転式(例えば、ガスチャネル107)及び部分固定式(例えば、ガス源108)と記載されうる。ガス源108は非回転式であってよい。ガスチャネル107は湾曲面101と共に回転可能であってよい。ガス源108の周りに回転するガスチャネル107により、ガス分配システム105は、特に回転時のガス源108に対する相対位置に応じて、ガスチャネル107をガス源108に選択的に接続及び切断することができる。
【0028】
[0027] 幾つかの実施形態によれば、ガス分配システム105、及び、具体的には、ガス源108は、(図1に2つの矢印109で示したように)ガス排出口104にガス流を供給する。幾つかの実施形態では、ガス分配システム105によってガス排出口104に供給されるガス流は、ウェブ200が湾曲面101に(上記で詳細に説明したように、少なくとも点接触で)接触することを可能にするガス流である。例えば、ガス流は、典型的に約10sccmから約400sccmの間、より典型的には約20sccmから約300sccmの間、なお一層典型的には約30sccmから約300sccmの間になりうる。幾つかの実施形態では、本書に記載の実施形態によるローラーデバイスは、湾曲面の単位面積当たりのガスの流量が典型的には約10sccm/mから約200sccm/mの間、より典型的には約20sccm/mから約150sccm/mの間、また、更に典型的には30sccm/mから約120sccm/mの間になるように適合されている。一実施例では、ローラーデバイスは、湾曲面の単位面積当たりのガスの流量が約100sccm/mになるように適合されうる。本書に記載の他の実施形態と組み合わせうる幾つかの実施形態によれば、ローラーデバイスは、例えば、湾曲面上のガス排出口の数、ガス排出口のサイズ、ガス分配システムの流体コンダクタンス(fluid conductance)、ガス源のサイズ、ガス源の容量、ガスのポンピングシステムのサイズと出力、ガスチャネルのサイズと設計、湾曲面での多孔質材料の選択及び/又は種類、湾曲面での多孔質材料の被覆にある孔の数とサイズ(以下で詳細に説明される)、ガス分配システムの設計など、ローラーデバイスの一又は複数のパラメータによって定義されたガス流量に適合されうる。
【0029】
[0028] 本書に記載の他の実施形態と組み合わせうる幾つかの実施形態によれば、ガス排出口の数は、特に(図1に例示的に示したように)ガスチャネルを有するローラーデバイスに関しては、典型的には20~100個の間、より典型的には30~100個の間、更に典型的には40~100個の間である。幾つかの実施形態によれば、湾曲面はガスセクションに分割されうる。幾つかの実施形態では、各ガスセクションは幾つかのガス排出口を有する。幾つかの実施形態では、ウェブ誘導領域内のガス排出口の数は5~20個の間である。ローラーデバイスの多孔質層にあるガス排出口の数は(以下で詳細に説明されるように)、典型的には少なくとも5000個で、より典型的には少なくとも6000個で、更に典型的には少なくとも8000個である。幾つかの実施形態によれば、ガス排出口の数は20~100個の間であるか、ローラーデバイスはガス排出口を提供する多孔質層を含む。
【0030】
[0029] 本書に記載の他の実施形態と組み合わせうる幾つかの実施形態によれば、ガス排出口は本書で記述されているように、典型的には約0.1mm~約1mmの間の断面サイズを有しうる。断面サイズは、湾曲面でのガス排出口の最小断面として測定されうる。幾つかの実施形態では、ガス排出口の流体コンダクタンスは、典型的には約0.001リットル/秒~約0.1リットル/秒の間で、より典型的には約0.005リットル/秒~約0.08リットル/秒の間で、更に典型的には約0.009リットル/秒~約0.05リットル/秒の間になりうる。一実施形態では、ガス排出口の流体コンダクタンスは約0.01リットル/秒になりうる。
【0031】
[0030] 幾つかの実施形態によれば、ローラーデバイス100の動作中にウェブ200の方向に供給されるガス流は、ガスベアリング(特に、流体力学的な、又は熱的なガスベアリング)をウェブ200とローラーデバイスの湾曲面101との間にもたらしうる。幾つかの実施形態では、ガスベアリングはまた、ウェブと湾曲面との間の接触位置の外側に、一種の薄い又は小さなガスクッションとして示されうる。ローラーデバイスの湾曲面に接触し、ウェブと湾曲面との間にガスベアリングを有するウェブは、湾曲面のある接触位置(例えば、湾曲面の粗度によってもたらされる点位置)で接触してよく、また、接触位置の間にガスベアリングを有してもよい。ウェブの接触位置(湾曲面の領域又は点など)と湾曲面との間では、ガスベアリングはガス排出口から放出されたガス流によって形成されうる。本開示の他の実施形態と組み合わされうる典型的な実施形態によれば、ガスベアリングの圧力は、約0.1mbar~約10mbarの間、より典型的には約1mbar~約10mbarの間である。幾つかの実施形態では、ウェブと湾曲面との間のガスベアリングは、ローラーデバイスとウェブの湾曲面、特に、ウェブと湾曲面との間の接触位置での粗度により存在するボイドを充填しうる。ガスベアリングの厚みは、互いに接触するローラーデバイスの湾曲面とウェブの組み合わせの粗度に対応しうる。
【0032】
[0031] 幾つかの実施形態によれば、ガス排出口から放出されたガス流によって、複数のガスベアリングがウェブと湾曲面との間に形成される。幾つかの実施形態では、1つのガスベアリングは、ウェブと湾曲面との間の接触点又は接触領域によって遮断されるように提供される。
【0033】
[0032] ウェブと湾曲面との間のガスベアリングは、ローラーデバイスの動作中に、例えば、冷却又は加熱のため、ローラーデバイスとウェブとの間に熱遷移をもたらし、熱遷移を改善しうる。例えば、ローラーデバイスは、例えば、ローラーデバイスを冷却又は加熱するための、温度調整システム(図1にチャネルを含む温度調整システム130として例示的に示す)を含みうる。本書に記載の実施形態によるローラーデバイスによってもたらされるガスベアリングは、ウェブとローラーデバイスとの間の熱遷移を高めるのに役立つ。本書に記載の幾つかの実施形態によれば、ウェブの被覆中、有利には、温度は定められた上限(例えば、ガラス転移温度)を下回るように維持される。例えば、堆積した被覆層の層特性は堆積温度に依存しうる。
【0034】
[0033] 既知のシステムでは、ガスクッションは、ウェブを非接触の方法で誘導し移送するように形成されている(本書では非接触誘導システムと称される)。非接触誘導システムでは、被覆されるウェブを運ぶことができるガスクッションを形成するため、ガスは、本書に記載の実施形態によるローラーデバイスで使用される流量の約100倍の流量で供給される。例えば、ウェブを非接触誘導するためのガスクッションを形成するため、約30000sccmの流量が使用される。高いガス流量を有する非接触ガス誘導システム、及びローラーデバイスの上でウェブを非接触誘導するためのガスクッションは、ローラーデバイスの真空環境の観点から欠点を有する。真空環境は、ローラーデバイスの上でウェブを非接触誘導するために使用されるガスクッションの量によって阻害される。ローラーデバイスの上でウェブを非接触誘導するためのガスクッションの提供には、処理品質に関する欠点がある。
【0035】
[0034] 本書に記載の実施形態によるローラーデバイスには、非接触誘導システムの欠点がない。ウェブに接触しているローラーデバイスは動かされ、ウェブの運動を誘発することができる。例えば、湾曲面とウェブは、ローラーデバイスの湾曲面の回転と共にウェブを移動させることを可能にする表面特性をそれぞれ提供する。幾つかの実施形態によれば、湾曲面及び/又はウェブの表面特性は、粗度、摩擦係数、材料、温度、湿度などになりうる。本書に記載の実施形態によるローラーデバイスにより、ウェブとローラーデバイスとの間の熱遷移を高めることができる。
【0036】
[0035] 更に、非接触誘導システムは周知のとおり、ウェブが損傷しているときには、ローラーデバイスの被覆に欠点がある。特に、ガス排出口は被覆材料によって被覆されることがある。例えば、ローラーデバイス用に多孔質材料が使用されている場合には(以下で詳細に説明されるように)、ウェブがある点で破損していると、ローラーデバイスのポアは詰まることがある。
【0037】
[0036] 本書に記載の実施形態によるローラーデバイスにより、既知のシステムの問題点、特に、非接触誘導システムの問題点を解決することができる。例えば、基板損傷のリスクは、ウェブの牽引力が弱くなると減少するが、これは冷却効果などの熱遷移効果が高まることで利用可能となる。堆積速度(被覆速度)が高いため、ウェブ方向への熱負荷は高くなる。高い堆積速度を利用するためには(例えば、被覆処理を加速するため)、本書に記載の実施形態によるローラーデバイスによってもたらされるように、ウェブからローラーデバイスへ向かう適切な熱接触が有用である。本書に記載の実施形態によるローラーデバイスの高い熱遷移効果は、ローラーデバイスの低い牽引力と駆動ユニットに関連している。
【0038】
[0037] 本書に記載の実施形態によるローラーデバイスは、例えば、2面又は両面の被覆処理で有利に利用されうる。2面又は両面の被覆処理は、ウェブの2つの面を特に連続して被覆するための処理である。第1の面が既に被覆されたウェブは、ウェブの第2の面を被覆するため、本書に記載の実施形態に従って、ローラーデバイスによって誘導される。特に、2面又は両面の被覆処理では、ウェブの移動速度は可能な限り高速に選択しうるが、ウェブ上に既に堆積した膜の膜損傷は避けなければならない。被覆面の損傷は、例えば、1面が被覆済みのウェブがローラーデバイス又はガイドローラーの上で強すぎる張力で誘導されるとき、或いは、第2の面の被覆中にウェブが熱くなりすぎるときに発生する。幾つかの実施形態によれば、ウェブの第1の面上に被覆された膜は、第2の面の被覆前に脱気されている。
脱気されたウェブは、低い熱伝導をもたらす。本書に記載の実施形態に従うローラーデバイスにより、ウェブと湾曲面との間の熱遷移を高め、(2面被覆処理で)脱気されたウェブの熱伝導の低下を補償することができる。
【0039】
[0038] 特に、基板がかなり遅い移動速度(例えば、約0.1m/分~15m/分の間の移動速度、典型的には、20cm/分から10m/分までの移動速度、約1m/分の移動速度など)を有し、(例えば、図1の例で矢印201の方向で示される)牽引力がそれぞれ小さな値である適用では、ウェブは被覆処理によって過度な程度まで加熱されうる。ウェブが被覆される間にゆっくり移動するときには、堆積処理による熱伝導は、ウェブの移動速度が速いときよりも大きくなる。ウェブの熱遷移効果が高まると、ウェブ及び/又は被覆の損傷に対するリスクは小さくなる。
【0040】
[0039] ウェブの牽引力が限られていて、本書に記載の実施形態によるローラーデバイスは、動作中にローラーデバイスを回転するための、並びに、ローラーデバイス、特にローラーデバイスの湾曲面に接触しているウェブを移動するための駆動ユニット(図1に示した駆動ユニット110など)を含む。例えば、例として図1を参照すると、ウェブは矢印201の方向に、ウェブ及び/又はウェブの1つの面上の被覆への損傷を避けるため、特に弱い張力で牽引されうる。ウェブを遅い速度で牽引するための牽引力は、ローラーデバイスの回転によって支持されうる。例えば、駆動ユニットは傾向駆動(tendency drive)であってよい。
【0041】
[0040] 幾つかの実施形態によれば、本書に記載の実施形態によるローラーデバイスが使用される被覆装置に、追加の誘導ローラーデバイスが提供されてもよい。追加の誘導ローラーデバイスは、本書に記載の実施形態によるローラーデバイスの前後に配置されうる。幾つかの実施形態では、追加のローラーデバイスは、特に、本書に記載の実施形態によるローラーデバイスの前後に所定の張力を維持するために、一又は複数の駆動ユニットによって駆動されうる。
【0042】
[0041] 幾つかの実施形態では、本書に記載の実施形態によるローラーデバイスは、ウェブを牽引するための動力ユニット又は第2の駆動ユニットを含みうる。
【0043】
[0042] 本書に記載の他の実施形態と組み合わせうる幾つかの実施形態によれば、追加の駆動ユニット、第2の駆動ユニット、及び、本書に記載の実施形態によるローラーデバイスの湾曲面を動かすための駆動ユニットは、ウェブの張力又は牽引力に基づいて制御されうる。例えば、ウェブの張力は(例えば、被覆装置の幾つかの場所で)測定されてよく、追加の駆動ユニット、第2の駆動ユニット、及び、本書に記載の実施形態によるローラーデバイスの駆動ユニットは、特に、所定の張力を維持するため、或いは所定の張力に到達するため制御されうる。幾つかの実施形態では、追加のローラーデバイス、及び、本書に記載の実施形態によるローラーデバイスは、ウェブの滑りを防止するように駆動されうる。
【0044】
[0043] 本書に記載の実施形態で用いられるウェブは、典型的に、ウェブが屈曲可能である又は可撓性があるという点が特徴となりうる。「ウェブ」という用語は、「ストリップ」という用語と同義的に使用されうる。例えば、本書に記載の実施形態で説明されているウェブは、ホイル又は別の合成基板でありうる。例えば、ウェブは、鋼基板、ステンレス鋼基板、ポリマ基板、PET基板、COP又はCOC基板、PEN基板、及びポリアミド基板からなる基板群から選択されうる。本書に記載の他の実施形態と組み合わせうる幾つかの実施形態によれば、ウェブは、10μm~600μm、より典型的には15μm~500μm、例えば、20μm又は100μmの厚みを有する。幾つかの実施形態によれば、第2の駆動ユニットは、可撓性のあるウェブ、特に約10μm~600μmの間の厚みを有する可撓性のあるウェブを牽引するように適合されうる。
【0045】
[0044] 本書に記載の他の実施形態と組み合わせうる幾つかの実施形態によれば、ガス分配システム105のガス流のためのガスは、不活性ガス、アルゴン、ヘリウム、窒素、水素、シラン、及びこれらの任意の混合物からなる群から選択されうる。幾つかの実施形態では、ガス排出口から放出されるガスは、少なくとも0.01W/mK、より典型的には少なくとも0.05W/mK、更に典型的には少なくとも0.1W/mK、更により典型的には少なくとも0.15W/mKの熱伝導率を有するガスである。
【0046】
[0045] 本書に記載の実施形態によるローラーデバイスの低いガス流は、本書に記載の実施形態によるローラーデバイスが使用される被覆処理の真空環境を保護するため、シーリング(sealing)などを除外する可能性をもたらす。ウェブがローラーデバイスに接触している間に形成されるガスベアリングは、真空環境に実質的に影響を及ぼさない程度に十分に少ない(すなわち、十分の少ない量のガスを含有する)か、被覆処理に使用される真空環境を少なくとも阻害しない程度に十分に少ない。特に繊細な処理に関しては、或いは、真空環境の汚染のリスクをもっと下げなければならない場合には、幾つかの実施形態は更に、ローラーデバイスに接触しているウェブの熱遷移効果を提供し、真空環境が汚染されるのを積極的に防止するための機能を有しうる。
【0047】
[0046] 図2は、ローラーデバイスの実施形態を示す。ローラーデバイス100は、被覆されるウェブ200と接触する湾曲面101を有する。ウェブ200は矢印201の方向に牽引されてもよく、湾曲面の回転によって更に動かされる。駆動ユニット110は、ローラーデバイス100を回転するために提供される。
【0048】
[0047] 図2に例示したローラーデバイス100の実施形態は、ガス源108とガスチャネル107を含むガス分配システム105を有する。本書に記載の幾つかの実施形態によれば、ガスチャネル107は、ローラーデバイスの湾曲面101に設けられたガス排出口104に、ガス源108を流体連結する。軸102の周りの湾曲面101の回転によって、ガス分配システム105の固定部分(すなわち、ガス源108)は、種々のガス排出口、例えば、ローラーデバイスのウェブ誘導領域のガス排出口に接続可能である。図1に関する上述の特徴は、図2の実施形態にも適用されうる。
【0049】
[0048] 図2に示したように、本書に記載の実施形態によるローラーデバイス100は更に、ガス排出口群の中の一又は複数のガス排出口に選択的に真空を供給するための真空生成システムを提供する。ガス源と同様に、真空生成システム111は、具体的には、ローラーデバイス100の回転によって、ガスチャネル107に選択的に接続可能である。幾つかの実施形態では、真空生成システムは、ローラーデバイスの固定部分に配置されうる。具体的には、ガス排出口104を有するローラーデバイス100の湾曲面101は、ローラーデバイス100の動作中に真空生成システム111の周りを回転する。
【0050】
[0049] 真空生成システムは、真空生成システムに現在接続されているガスチャネル107を経由して、吸引を行うポンプ(真空ポンプなど)を含みうる。例えば、図2の矢印112は真空生成システムの吸引を示す。幾つかの実施形態によれば、真空生成システムは、ウェブを離れて真空生成システム111に向かう方向の吸引を行う。真空生成システムにより、ウェブとウェブに接触しているローラーデバイスとの間に流体力学的なサーマルベアリング(hydrodynamic thermal bearing)を形成するようにガス源から放出されたガスは、具体的には、ウェブがウェブ誘導領域を離れる前に、或いは、ウェブがローラーデバイスの湾曲面にこれ以上接触する前に除去されてもよい。ローラーデバイスの真空環境は、真空生成システムによって保護される。
【0051】
[0050] 図3は、本書に記載の実施形態によるローラーデバイス100を示す。ローラーデバイス100は、図1に例示的に示したローラーデバイスと同様である。図1に関して説明される(詳細な)特徴はまた、図3の実施形態にも適用されうる。図3のローラーデバイス100の実施形態は更に、シーリングを含む。幾つかの実施形態では、シーリングは、例えば(少なくとも部分的に伸縮性のある)材料から作られたシーリングデバイスなど、複数個の単一シーリングデバイス113から作られうる。幾つかの実施形態によれば、シーリングデバイスは、例えば、リップシーリングデバイスであってもよい。シーリングは、ローラーデバイス100の真空環境の中へガスベアリングのガスが広がるのを防止又はその量を限定しうる。幾つかの実施形態では、シーリングデバイスは、被覆される予定のウェブ及び被覆処理の真空条件に関して、ガス流を密閉する。例えば、シーリングデバイスは、具体的には少なくとも1つの面で、ローラーデバイスの真空環境からガスベアリングを密閉する。
【0052】
[0051] シーリングデバイス113は、ローラーデバイス100の円周方向に対して実質的に垂直な方向に配置されうる。幾つかの実施形態によれば、シーリングデバイス113は、ローラーデバイス100の半径方向に対して実質的に垂直に配置されうる。幾つかの実施形態では、シーリングデバイス113は、ローラーデバイス100の幅方向に配置されるように説明されうる。
【0053】
[0052] 図4図6は、ローラーデバイス100の概略的な上面図を、具体的には図3に示された矢印115の方向に示す。上面図は、ローラーデバイスの湾曲面101、ガス排出口104、及びシーリングを示す。図4は、ローラーデバイス100の幅方向に延在するシーリングデバイス113を含むローラーデバイス100のシーリングを示す。シーリングデバイス113は、ローラーデバイス100の湾曲面101をセグメントに分割する。幾つかの実施形態では、セグメントは、被覆装置の1つのコンパートメントから別のコンパートメントまでの空間よりも小さい。
【0054】
[0053] 図5では、シーリングは、ローラーデバイスの幅方向に延在するシーリングデバイス113、及び、ローラーデバイス100の湾曲面101上のほぼ円周方向に延在する円周方向シーリングデバイス114を含む。図5に示した2つの円周方向シーリングデバイス114は、互いに一定の距離を有しうる。例えば、2つの円周方向シーリングデバイス114の間の距離は被覆されるウェブに応じて選択されうる。幾つかの実施形態では、円周方向シーリングデバイス114は、個々の被覆及びそれぞれのウェブ幅に合わせて調整可能である。
【0055】
[0054] 幾つかの実施形態によれば、シーリングは、ウェブの背面に加圧ポケットを個別に提供しうる(すなわち、ウェブの側面は現時点では、ローラーデバイスの動作中に被覆されない)。具体的には、図2に関連して説明されている真空生成システムが本書に記載のようにシーリングと結合されると、シーリングによって形成された各ポケットは(例えば、シーリングデバイス113は円周方向シーリングデバイス114と共に)個別の圧力をもたらす。個々のポケットの圧力は、ポケットの回転位置に依存しうる。
【0056】
[0055] 本書に記載の他の実施形態と組み合わせうる幾つかの実施形態によれば、ローラーデバイスの湾曲面のガス排出口は、(例えば、図4及び図5に示したように)ローラーデバイスの幅方向のほぼ中心の位置に配置されうる。幾つかの実施形態では、ガス排出口は湾曲面の任意の適切な位置に配置されうる。例えば、ガス排出口は、ローラーデバイスの幅方向の片側に一列で配置されうる。幾つかの実施形態によれば、ガス排出口は個別に配置されうる。
【0057】
[0056] 図6はローラーデバイス100の概略平面図を示しており、湾曲面101は湾曲面の側面の位置にガス排出口104を有し、幅方向の中心位置からは少し離れている。図6では、シーリングは円周方向シーリングデバイス114のみによって提供される。
【0058】
[0057] 本書に記載の幾つかの実施形態によれば、例えば、ローラーデバイスを様々なウェブ幅に適合させるため、湾曲面はローラーデバイスの幅方向に分割されうる。例えば、ローラーデバイスは、典型的には約0.5~約2mの間の、より典型的には約1m~約2mの間の、また、更により典型的には約1.2m~約1.8mの間のウェブ幅に適合されうる。幾つかの実施形態では、ローラーデバイスは約1m~1.4mの間のウェブ幅に適合可能になりうる。セグメントへの分割は、異なる数のガス排出口、湾曲面上の異なる密度のガス排出口、異なるサイズのガス排出口など、ガス排出口に適合した分配をもたらしうる。幾つかの実施形態では、ガス源は、ローラーデバイスの(特に幅方向の)異なるセグメントにガスを供給する種々のセクションに分割可能になりうる。
【0059】
[0058] 本書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる幾つかの実施形態によれば、ローラーデバイスは、一又は複数のEチャックデバイスを有しうる。具体的には、一又は複数のEチャックデバイスはウェブを保持してもよく、及び/又は、ローラーデバイスの湾曲面に接触するウェブを保持するための引力を提供してもよい。幾つかの実施形態によれば、(例えば、湾曲面の構造、シーリングによって提供される、幾つかの実施形態では仮想的になりうる別のパーティションによって提供される)湾曲面の各セグメントは、個々のEチャックタイルを含みうる。個々のEチャックタイルは、例えば、ローラーデバイスの回転位置に応じて、ウェブに適切な引力を提供しうる。幾つかの実施形態では、個々のEチャックタイルは、ウェブ誘導領域内外のセグメントの位置に応じて動作されるように制御される。幾つかの実施形態によれば、Eチャックタイルは、ガス分配システム105のガス源108に関して、及び/又は真空生成システム111に関して、各セグメントの位置に応じて動作されるように制御されうる。幾つかの実施形態では、ローラーデバイスは、ローラーデバイスの回転位置、特に各セグメントの回転位置を検知するためのセンサ及び制御ユニットを含みうる。制御ユニットは、検知したデータに応じてEチャックの動作を制御しうる。
【0060】
[0059] 図7は、ローラーデバイス100の一実施形態を示す。図7に例示的に示したローラーデバイス100は、ガス源108を含むガス分配システムを含む。ガス源108は、ローラーデバイス100の固定部分に配置されうる。ローラーデバイス100の湾曲面101は、ローラーデバイス100の回転軸102の周りに回転可能である。ローラーデバイス100の湾曲面101は、ウェブ誘導領域103を含む。ウェブ200は、矢印201の方向に牽引されうる。駆動ユニット110は、湾曲面101を回転するために、具体的には、湾曲面に接触しているウェブを動かすために提供される。
【0061】
[0060] 本書に記載の他の実施形態と組み合わせうる幾つかの実施形態によれば、図7に示したローラーデバイス100は、多孔質層123を支持するためのバッキング構造120を含む。多孔質層123は、ローラーデバイス100によって誘導されるウェブ200に接触している湾曲面101を提供する。多孔質層123は更に、ローラーデバイスの動作中に、ウェブ誘導領域103内のウェブ200の方向にガスを放出するためのガス排出口104を提供する。幾つかの実施形態では、バッキング構造は、ガス放出のための支持バー121及び領域122を含みうる。具体的には、支持バー121と領域122は、ローラーデバイスの円周上に交互に配置される。
【0062】
[0061] 幾つかの実施形態によれば、多孔質層123は、材料の多孔性によって、複数のガス排出口を提供する多孔質材料から作られうる。多孔質材料は、特に、He、Ar、及び/又はHをウェブの方向に放出するのに適しうる。例えば、多孔質材料は、典型的には、約60%~約85%の間の、より典型的には、約65%~約80%の間の、更により典型的には、約65%~約75%の間の密度を有しうる。一実施例では、多孔質材料は約70%の密度を有する。幾つかの実施形態では、多孔質材料は焼結材料であってもよい。例えば、多孔質材料は、ステンレス鋼、焼結ステンレス鋼、アルミニウム、クロム、又は金属合金であってよい。
【0063】
[0062] 幾つかの実施形態によれば、多孔質材料は、多孔質材料、及び動作中にウェブに接触する湾曲面の粗度に影響するため、例えば、研磨されるなど、処理が施されうる。本書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる幾つかの実施形態によれば、多孔質材料は、多孔質材料よりも低い粗度を有する材料層によって被覆されうる。例えば、多孔質材料はCr層などの金属層で被覆されうる。幾つかの実施形態によれば、多孔質層の上の被覆層、又は多孔質層自体は、穿孔、レーザー切断などによって層の中へ処理される追加のガス排出口を有しうる。
【0064】
[0063] 本書に記載の幾つかの実施形態によれば、本書に記載の実施形態によるローラーデバイスは温度制御されたローラーデバイスであってよい。温度制御されたローラーデバイスは、湾曲面とウェブとの間の熱遷移によって、特にガスベアリングを介した高い熱遷移によって、ウェブが冷却されることを可能にする。
【0065】
[0064] 例えば、本書に記載の実施形態によるローラーデバイスは、図1に例示的に示した温度調整システム130などのような、温度調整システムを含みうる。本書に記載の実施形態によるローラーデバイスの温度調整システムは、ローラーデバイスの冷却又は加熱のために、ローラーデバイスに配設されたチャネルのシステムを含みうる。ローラーデバイスの温度調整システムのチャネルは表面に近接して配設されうる。「近接して」という用語は、チャネルの表面に向けられた面と表面との間の距離が、典型的には5cm未満、より典型的には2.5cm未満、更により典型的には1cm未満であることに関係している。チャネルは典型的には、流体を受容するように適合される。流体は、冷却及び/又は加熱に適した流体で、冷却流体と称される。
【0066】
[0065] 本書に記載の他の実施形態と組み合わせうる幾つかの実施形態によれば、ローラーデバイスは、典型的には約-30°C~約+170°Cの間、より典型的には約-20°C~約+150°Cの間、また、更により典型的には約-20°C~約+80°Cの間の温度に制御されうる。具体的には、最大100°Cまでの温度では、更により具体的には室温以下の温度では、冷却流体は典型的には水グリコール混合液である。他の適用では、特に表面が加熱される適用では、冷却流体は典型的には熱伝導オイルである。使用された冷却流体は、典型的には最大400°Cまで、より典型的には最大300°Cまでの温度に適している。本書に記載の実施形態で典型的に使用される熱伝導オイルは、ナフテン又はパラフィンなど、石油に基づいて作られる。代替的に、熱伝導オイルは異性体混合物などの合成物質になりうる。
【0067】
[0066] 本書に記載の他の実施形態と組み合わせうる幾つかの実施形態によれば、ローラーデバイスは典型的には0.1~4mの範囲の、より典型的には0.5~2mの範囲の、例えば、0.6m、1.0m、又は1.4mの幅を有しうる。幾つかの実施形態によれば、ローラーデバイスは、最大2mの幅を有するウェブを誘導するように適合されうる。ローラーデバイスの高さは、5cmから2mまで変化しうる。
【0068】
[0067] ローラーデバイスは、ウェブ被覆処理の適用、例えば、真空堆積処理、化学気相堆積(CVD)、物理的気相堆積(PVD)、例えば、蒸発又はスパッタリング又はプラズマ化学気相堆積(PECVD)で使用されるように適合可能である。ローラーデバイスは、可撓性光起電ウェブ、可撓性電子部品、可撓性ディスプレイ、ハイバリア被覆の工業生産、及びパッケージ材料処理で使用可能である。例えば、被覆は材料の蒸発又はスパッタリングによって実行されうる。幾つかの実施形態では、被覆材料は、アモルファスシリコン、プロト結晶シリコン、酸化ケイ素(SiO)、ナノ結晶シリコン、透明導電性酸化物(TCO)層材料、インジウムスズ酸化物(ITO)、亜鉛酸化物(ZnO)、アルミニウムドープした亜鉛酸化物(AZO)、銅(Cu)、CuNi、銀(Ag)、アルミニウム(Al)及びモリブデン(Mo)などの接触層材料からなる群から選択される。
【0069】
[0068] 幾つかの実施形態によれば、被覆装置が提供される。被覆装置は、本書に記載の任意の実施形態による少なくとも1つのローラーデバイスが内部に配置された真空チャンバを含む。被覆装置は、真空チャンバを排気するための少なくとも1つの真空ポンプを含む真空システムを含みうる。更に、本書に記載の他の任意の実施形態と組み合わせうる実施形態によれば、被覆装置は、被覆材料源など、ウェブを被覆するための少なくとも1つの被覆ツールを含みうる。被覆ツールは、例えば、CVD、PVD、プラズマ化学気相堆積(PECVD)及びスパッタリングを含む群から選択されうる。更に、被覆装置は、本書に記載の実施形態によるローラーデバイスを含む。
【0070】
[0069] 本書に記載の他の任意の実施形態と組み合わせうる幾つかの実施形態では、ウェブ温度制御と誘導が真空条件下で行われる。例えば、真空チャンバ内の圧力は、10-5mbarから20mbarまで、具体的には10-4mbarから10-2mbarまで変化しうる。幾つかの実施形態によれば、真空チャンバ内の真空圧は局所的に変化しうる。具体的には、処理ガスが存在する被覆領域内で、スパッタの適用では、例えば、窒素又はアルゴンを処理ガスとして、真空圧は典型的に10-4mbarから10-2mbarまで変化しうる。また、CVD又はPECVDの適用では、例えば、処理ガスとして水素及び/又はシランを使用して、1mbarから10mbarまで変化しうる。被覆領域外では、真空圧は被覆領域内の圧力を下回りうる。勾配は典型的には、真空ポンプシステムによって維持される。スパッタリングは典型的には、10-2mbar~10-4mbarの圧力下で実行される。
【0071】
[0070] 本書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる幾つかの実施形態によれば、ローラーデバイスは非回転式湾曲面を有しうる。例えば、ローラーデバイス表面の湾曲面は、楕円形又は部分的に楕円形の断面など、長円形又は部分的な長円形を含みうる。
【0072】
[0071] 本書に記載の実施形態によれば、真空条件下のウェブ被覆処理でウェブの温度を制御する方法が提供される。図8は、本書に記載の実施形態による、温度を制御するための方法800のフロー図を示す。ブロック801では、方法は、被覆されるウェブを温度制御されたローラーデバイスの上に移動することを含む。具体的には、温度を制御する方法は、2面被覆処理でウェブの温度を制御する方法になりうる。被覆されるウェブは、1つの面に被覆を既に有しうる。幾つかの実施形態では、被覆されるウェブ、或いは1つの面に既に被覆を有するウェブは、可撓性のあるウェブなど、上記で詳細に説明したウェブになりうる。本書に記載の実施形態によれば、ローラーデバイスの上を移動するウェブは、ローラーデバイスの湾曲面に接触して止まる。例えば、ウェブとローラーデバイスとの間の接触は、上記で詳細に説明したように点接触になりうる。ローラーデバイスに関連して説明した上記の特徴は、そのようなものとして同様に本方法に適用されうる。
【0073】
[0072] 幾つかの実施形態によれば、温度制御されたローラーデバイスは、例えば、ローラーデバイスを冷却又は加熱するための冷却チャネル又は加熱チャネルを含む、温度調整システムを含みうる。ウェブは、図1のウェブ誘導領域103に例示的に示したように、ウェブは温度制御されたローラーデバイスのウェブ誘導領域でローラーデバイスに接触している。
【0074】
[0073] 図8のフロー図のブロック802は、温度制御されたローラーデバイスに、具体的には、温度制御されたローラーデバイスの湾曲面に配設されたガス排出口からガスを放出することを含む。例えば、ガスは、温度制御されたローラーデバイスのガスチャネルによって、湾曲面のガス排出口に流体接続されているガス源によって供給されうる。幾つかの実施形態によれば、ガス源は、温度制御されたローラーデバイスの固定部分に配置されてよく、ガスチャネル並びにガス排出口は温度制御されたローラーデバイスの回転可能部分に配置されてよい。ガス排出口から放出されるガスは、温度制御されたローラーデバイスからウェブまで熱遷移を提供するため、温度制御されたローラーデバイスとウェブとの間にガスベアリングを形成する。上記で詳細に説明したように、ウェブと湾曲面は互いに点接触して停止しうる。ガスベアリングは、ウェブとローラーデバイスの湾曲面とが点接触するときの点間に形成されうる。
【0075】
[0074] 幾つかの実施形態によれば、ガス流は、ウェブ誘導領域内のガス排出口の第1のサブグループを経由して、温度制御されたローラーデバイスから放出される。例えば、ガス源は、ガス排出口(すなわち、ウェブ誘導領域内のガス排出口)の一部分だけに、或いはガス排出口の第1のサブグループに、ガス源からのガス流が供給されるように、配置される。
【0076】
[0075] ブロック803では、ガスは、ガス排出口の第2のサブグループを経由して、ウェブ誘導領域外へ流れないよう防止されている。ガス排出口の第1又は第2のサブグループを開閉することで、ガス流の放出又は防止は有効になりうる。具体的には、ガス排出口の第1のサブグループを開放することは、第1のサブグループをガス源に接続することを含みうる。「接続すること」という用語は、特に、「流体連通すること」を含む。同様に、第2のサブグループを閉鎖することは、第2のサブグループをガス源から切断することを含みうる。
【0077】
[0076] 例えば、ガス源は、ガス排出口の第1のサブグループがガス源に流体連通され、一方でガス排出口の第2のサブグループがガス源から切断されるように、設計され配置されている。一実施例では、ガス源は、ローラーデバイスの円周の一部(扇形など)の上に延在するように設計されうる。他の実施形態と組み合わせうる幾つかの実施形態によれば、ガス排出口を含むローラーデバイスの湾曲面は、第1のサブグループがウェブ誘導領域のガス源を通過し(接続され)、第2のサブグループはウェブ誘導領域外にあって、ガス源から切断されるように、回転される。幾つかの実施形態では、ローラーデバイス、具体的にはローラーデバイスのガス分配システムは、ウェブ誘導領域内のガス排出口の第1のサブグループにガス源を接続することができるガスチャネルを含む。幾つかの実施形態では、ローラーデバイス、特にローラーデバイスの湾曲面は、図7に例示的に示したように、ガス排出口を提供するための多孔質材料層を含む。
【0078】
[0077] 図9は、ウェブを誘導するための、また、温度制御されたローラーデバイスによってウェブの温度を制御するための方法800の一実施形態のフロー図を示す。ブロック801~803は、図8の実施形態に関しては、上述と同じになりうる。ブロック804では、方法は更に、駆動ユニットによって温度制御されたローラーデバイスを駆動することを含む。図1は、ウェブ200が矢印201の方向に牽引される実施例を示す。牽引されるウェブから得られるウェブの運動は、ローラーデバイスを駆動しうるか、少なくともローラーデバイスの回転運動を開始しうる。駆動ユニットは、ローラーデバイスの湾曲面を回転しうる。
【0079】
[0078] 幾つかの実施形態によれば、ガスは、30sccm~300sccmの流量でガス排出口から放出される。例えば、ガス流は、被覆ドラムのサイズと被覆幅に依存する。幾つかの実施形態では、湾曲面の単位面積当たりの流量は、典型的には約10sccm/m~約200sccm/mで、より具体的には約20sccm/m~約150sccm/mで、更により具体的には約30sccm/m~約120sccm/mになりうる。一実施例では、湾曲面の単位面積当たりの流量は、典型的には約100sccm/mになりうる。本書に記載の他の実施形態と組み合わせうる幾つかの実施形態によれば、湾曲面上のガス排出口の数は、ローラーデバイスの湾曲面の1mあたりの数は典型的には2000~20000個、より典型的には4000~15000個、更により典型的には5000~10000個になりうる。幾つかの実施形態によれば、ローラーデバイスの湾曲面は、セクションに分割されうる。例えば、典型的には10~50セグメント、より典型的には15~40セグメント、更により典型的には20~30セグメントになりうる。幾つかの実施形態では、1セクション当たりのガス排出口の数は、20~100個になりうる。幾つかの実施形態では、ローラーデバイスはガス排出口を提供する多孔質層を含む。幾つかの実施形態では、ウェブ誘導領域内のガス排出口の数は100~10000個である。
【0080】
[0079] 幾つかの実施形態では、真空被覆処理でウェブを被覆するための方法は、本書に記載の実施形態によるウェブの温度を制御するための方法を含んで提供される。
【0081】
[0080] 幾つかの実施形態によれば、ウェブの温度を制御するための方法は、2面又は両面の被覆処理で使用されうる。例えば、基板の第1の面が既に被覆されている場合、ウェブの第2の面の誘導及び被覆処理では、ウェブに対する牽引力は被覆層の損傷を防ぐため制限される。更に、高い堆積速度は、被覆処理により被覆処理中のウェブの加熱を高める。ウェブ上での熱負荷は高くなる。熱負荷が高くなると、基板損傷のリスクが高まりうる。本書に記載の実施形態による方法でのウェブの温度制御は、適切な堆積速度でのウェブの被覆を可能にし、同時に、不適切な高温からウェブを保護し、結果的に、例えばウェブ損傷のリスクを低下させる。
【0082】
[0081] 本書に記載の実施形態により、真空条件下でのウェブ被覆処理の適用で、ウェブに接触し、ウェブの温度を制御するためのローラーデバイスの利用が記述される。ローラーデバイスは、ローラーデバイスを冷却するための冷却システムなど、図1に例示的に示した温度調整システム13を含む。ウェブに接触し、ウェブの温度を制御するために使用されるローラーデバイスは、ウェブに面して、ウェブに接触するための湾曲面を更に含む。湾曲面はローラーデバイスの軸の周りに回転可能で、ウェブ誘導領域を含む。図1及び図7では、ウェブ誘導領域が参照符号103で例示的に示されている。ローラーデバイスは、湾曲面内に配設され、特に、温度制御され、ローラーデバイスが接触するウェブの方向に、ガス流を放出するように適合されたガス排出口の群を含む。
【0083】
[0082] 本書に記載の実施形態によれば、ローラーデバイスは、ガス排出口の第1のサブグループにガス流を選択的に供給し、ガス排出口の第2のサブグループにガスが流れるのを選択的に防止するためのガス分配システムを含む。ガス排出口の第1のサブグループは、ウェブ誘導領域内の少なくとも1つのガス排出口からなり、ガス排出口の第2のサブグループは、ウェブ誘導領域外の少なくとも1つのガス排出口からなる。
【0084】
[0083] 幾つかの実施形態では、真空被覆処理中にウェブを温度制御し、ウェブに接触するためのローラーデバイスの利用は、上記に例示的に説明した特徴を利用しうる。
【0085】
[0084] 幾つかの実施形態によれば、本書に記載の実施形態によるローラーデバイスの利用は、上記で詳細に説明したように、ウェブの2面又は両面の被覆処理で行われる。幾つかの実施形態では、ウェブの温度制御及びウェブの接触に使用されるローラーデバイスは、ローラーデバイスの湾曲面を回転するための駆動ユニットを含みうる。幾つかの実施形態によれば、ウェブの温度制御及びウェブの接触に使用されるローラーデバイスは、図1図7に示されているローラーデバイスであってよく、上記で詳細に説明されている。
【0086】
[0085] 幾つかの実施形態によれば、ウェブをローラーデバイスの湾曲面に接触させることは、ウェブの温度を制御するため特に有用である。上記で詳細に説明したように、ウェブとローラーデバイスとの接触位置の間にもたらされる点接触とガスベアリングは、(冷却された)ローラーデバイスとウェブとの間の熱遷移を高める。ウェブと湾曲面との間の有効な熱遷移が提供可能であり、被覆処理の質を高めることができる。
【0087】
[0086] ローラーデバイス自体、或いは本書に記載の実施形態によるローラーデバイスを含む被覆装置に関して上述されたすべての特徴は、本書に記載の方法の実施形態及び使用の実施形態に適用されうることを理解されたい。
【0088】
[0087] 以上の説明は実施形態を対象としているが、本開示の基本的な範囲を逸脱せずに他の実施形態及び更なる実施形態を考案してもよく、本開示の範囲は、添付の特許請求の範囲によって定められる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9