(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-18
(45)【発行日】2024-01-26
(54)【発明の名称】感圧センサの製造方法及び製造装置
(51)【国際特許分類】
G01L 1/20 20060101AFI20240119BHJP
【FI】
G01L1/20 C
(21)【出願番号】P 2019108118
(22)【出願日】2019-06-10
【審査請求日】2021-08-16
【審判番号】
【審判請求日】2022-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】株式会社プロテリアル
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】弁理士法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉田 敬祐
(72)【発明者】
【氏名】阿部 正浩
【合議体】
【審判長】濱野 隆
【審判官】中塚 直樹
【審判官】九鬼 一慶
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-105816(JP,A)
【文献】特開平10-109347(JP,A)
【文献】特開平1-286816(JP,A)
【文献】特開平2-038029(JP,A)
【文献】特開昭63-228116(JP,A)
【文献】特開平10-281906(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 1/20
B29C 48/00-48/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に沿って中空部を有し弾性絶縁体からなる筒状体と、
前記筒状体の内周面に沿って螺旋状に配置され、かつ相互に接触しないように配置された複数本の電極線と、を備え、様々な方向から外圧が加えられた場合であっても前記電極線同士が接触し易い感圧センサの製造方法であって、
押出機のヘッド内に前記複数本の電極線を走線させつつ、前記押出機
の前記ヘッドの口金と心金との間に形成された空間に前記弾性絶縁体を通すことで、前記複数本の電極線の周囲を覆うように前記筒状体を押出成形
すると共に、前記口金の吐出側の端部における内周面に形成された複数の溝により、前記筒状体の外周面に複数のリブを形成し、
前記押出機から吐出された前記筒状体及び前記電極線を周方向に回転させつつ引き取ることで、前記電極線を螺旋状に配置する、
感圧センサの製造方法。
【請求項2】
前記溝は、押出方向に対して平行に形成されている、
請求項
1に記載の感圧センサの製造方法。
【請求項3】
前記溝は、押出方向に対して傾斜するように形成されている、
請求項
1に記載の感圧センサの製造方法。
【請求項4】
前記心金の吐出側の端部における外周面に複数の溝を形成することで、前記筒状体の内周面に複数のリブを形成する、
請求項
1乃至
3の何れか1項に記載の感圧センサの製造方法。
【請求項5】
前記感圧センサを巻き付ける複数のキャプスタンを有し、前記複数のキャプスタンを回転させることで、前記感圧センサを引き取るキャプスタン式の引き取り機を用い、
前記引き取り機に導入される前記感圧センサの周方向に前記引き取り機を回転させつつ、前記引き取り機により引き取りを行う、
請求項1乃至
4の何れか1項に記載の感圧センサの製造方法。
【請求項6】
環状のベルトを回転駆動するベルト回転機構を一対有し、当該一対のベルト回転機構で上下から感圧センサを挟み込み、前記両ベルト回転機構の前記ベルトを回転させることで前記感圧センサを引き取るベルト式の引き取り機を用い、
前記両ベルト回転機構における前記ベルトの回転方向が互いに交差するように、前記両ベルト回転機構を配置することで、前記感圧センサを周方向に回転させつつ引き取る、
請求項1乃至
4の何れか1項に記載の感圧センサの製造方法。
【請求項7】
前記感圧センサを周方向における一方向に回転させつつ引き取る引き取り機と、前記感圧センサを巻き取る巻き取り機との間に、前記感圧センサを周方向における他方向に回転させつつ引き取る第2引き取り機を設けた、
請求項1乃至
6の何れか1項に記載の感圧センサの製造方法。
【請求項8】
長手方向に沿って中空部を有し弾性絶縁体からなる筒状体と、
前記筒状体の内周面に沿って螺旋状に配置され、かつ相互に接触しないように配置された複数本の電極線と、を備え、様々な方向から外圧が加えられた場合であっても前記電極線同士が接触し易い感圧センサの製造方法であって、
押出機のヘッド内に前記複数本の電極線を走線させつつ、前記押出機により前記複数本の電極線の周囲を覆うように前記筒状体を押出成形し、
前記押出機から吐出された前記筒状体及び前記電極線を周方向に回転させつつ引き取ることで、前記電極線を螺旋状に配置し、
前記感圧センサを周方向における一方向に回転させつつ引き取る引き取り機と、前記感圧センサを巻き取る巻き取り機との間に、前記感圧センサを周方向における他方向に回転させつつ引き取る第2引き取り機を設けた、
感圧センサの製造方法。
【請求項9】
長手方向に沿って中空部を有し弾性絶縁体からなる筒状体と、
前記筒状体の内周面に沿って螺旋状に配置され、かつ相互に接触しないように配置された複数本の電極線と、を備え、様々な方向から外圧が加えられた場合であっても前記電極線同士が接触し易い感圧センサの製造装置であって、
ヘッド内に前記複数本の電極線を走線させつつ、
前記ヘッドの口金と心金との間に形成された空間に前記弾性絶縁体を通すことで、前記複数本の電極線の周囲を覆うように前記筒状体を押出成形する
共に、前記口金の吐出側の端部における内周面に形成された複数の溝によって、前記筒状体の外周面に複数のリブを形成する押出機と、
前記押出機から吐出された前記筒状体及び前記電極線を周方向に回転させつつ引き取る引き取り機と、を備えた、
感圧センサの製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感圧センサの製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、外部からの圧力によって電極線同士が接触することによりスイッチ機能を果たす感圧センサが自動車のスライドドア等に用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
感圧センサでは、中空部を有する筒状の弾性絶縁体と、この弾性絶縁体の内周面に互いに離間して螺旋状に配置された複数の電極線とを備えている。電極線の螺旋ピッチを適宜調整することにより、どの方向から押圧力を加えても電極線同士を接触させることが可能となり、全方向検知が可能となる。
【0004】
従来の感圧センサの製造方法では、スペーサ(ダミー線)と複数の電極線とを撚り合わせ、その周囲に弾性絶縁体を被覆した後に、スペーサを引き抜いていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の感圧センサの製造方法では、スペーサを製造する工程やスペーサを引き抜く工程が必須となっており、製造に手間がかかるという課題があった。
【0007】
そこで、本発明は、製造の容易な感圧センサの製造方法及び製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決することを目的として、長手方向に沿って中空部を有し弾性絶縁体からなる筒状体と、前記筒状体の内周面に沿って螺旋状に配置され、かつ相互に接触しないように配置された複数本の電極線と、を備えた感圧センサの製造方法であって、押出機のヘッド内に前記複数本の電極線を走線させつつ、前記押出機により前記複数本の電極線の周囲を覆うように前記筒状体を押出成形し、前記押出機から吐出された前記筒状体及び前記電極線を周方向に回転させつつ引き取ることで、前記電極線を螺旋状に配置する、感圧センサの製造方法を提供する。
【0009】
また、本発明は、上記課題を解決することを目的として、長手方向に沿って中空部を有し弾性絶縁体からなる筒状体と、前記筒状体の内周面に沿って螺旋状に配置され、かつ相互に接触しないように配置された複数本の電極線と、を備えた感圧センサの製造装置であって、ヘッド内に前記複数本の電極線を走線させつつ、前記複数本の電極線の周囲を覆うように前記筒状体を押出成形する押出機と、前記押出機から吐出された前記筒状体及び前記電極線を周方向に回転させつつ引き取る引き取り機と、を備えた、感圧センサの製造装置を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、製造の容易な感圧センサの製造方法及び製造装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る感圧センサを示す図であり、(a)は長手方向に垂直な平面で切断した端面の一部を示す切断部端面図、(b)はその斜視図である。
【
図2】本発明の一実施の形態に係る感圧センサの製造装置の概略構成図である。
【
図3】(a)は押し出し機のヘッドに用いる口金及び心金の断面図であり、(b)はそのA-A線断面図、(c)は口金の一変形例を示す断面図である。
【
図4】キャプスタン式の引き取り機を示す図である。
【
図5】ベルト式の引き取り機を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は上面図、(c)は(b)のB-B線断面における感圧センサの挙動を説明する図である。
【
図6】感圧センサの製造装置の一変形例を示す図である。
【
図7】(a),(b)は、本発明の一変形例に係る感圧センサの長手方向に垂直な断面を示す断面図である。
【
図8】(a)は、本発明の一変形例に係る感圧センサの長手方向に垂直な断面を示す断面図であり、(b)は、(a)の感圧センサの製造に用いる口金及び心金を示す断面図である。
【
図9】本発明の一変形例に係る感圧センサの長手方向に垂直な断面を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[実施の形態]
以下、本発明の実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0013】
(感圧センサ)
まず、本実施の形態で製造する感圧センサについて説明する。
図1は、本実施の形態に係る感圧センサを示す図であり、(a)は長手方向に垂直な平面で切断した端面の一部を示す切断部端面図、(b)はその斜視図である。
【0014】
図1(a),(b)に示すように、感圧センサ1は、長手方向に沿って中空部2aを有し弾性絶縁体からなる筒状体2と、筒状体2の内周面2bに沿って螺旋状に配置され、かつ相互に接触しないように配置された複数の電極線3と、を備えている。
【0015】
筒状体2に用いる弾性絶縁体としては、圧縮永久歪が小さく、柔軟性、耐寒性、耐水性、耐薬品性、耐候性などの優れたものを用いることが望ましい。具体的には、弾性絶縁体としては、例えばエチレン‐プロピレン‐ジエン共重合体を架橋したゴム系組成物や、オレフィン系やスチレン系熱可塑性エラストマ組成物などを好適に用いることができる。オレフィン系やスチレン系熱可塑性エラストマは、成形の際に架橋の必要がないため、成形の際に架橋を必要とする材料を用いる場合よりも、製造工程を簡略化し、製造コストを低減することができる。筒状体2の外径は、例えば4mm以上6mm以下である。
【0016】
スチレン系熱可塑性エラストマとは、分子の両端にスチレンブロックを有する熱可塑性エラストマである。スチレン系熱可塑性エラストマとしては、例えば、EB(エチレン-ブチレン)の両端にスチレンブロックを有するSEBS(スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロックコポリマー)、EP(エチレン-プロピレン)の両端にスチレンブロックを有するSEPS(スチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロックコポリマー)、又はEEP(エチレン-エチレン-プロピレン)の両端にスチレンブロックを有するSEEPS(スチレン-エチレン――エチレン-プロピレン-スチレンブロックコポリマー)が挙げられる。
【0017】
筒状体2の外周面2cには、径方向外方に突出するように複数のリブ4が設けられている。本実施の形態では、リブ4は、長手方向に垂直な断面視において略半円形状となるように形成されている。また、リブ4は、周方向に等間隔に設けられており、外周面2cに沿って螺旋状に設けられている。詳細は後述するが、このリブ4は、筒状体2を周方向に回転し易く(ねじり易く)するために形成されるものである。なお、
図1(a),(b)では、リブ4の数が12個である場合を示しているが、リブ4の数はこれに限定されず、3個以上であるとよい。ただし、リブ4の数が多すぎると、リブ4間の溝が浅くなり筒状体2をねじりにくくなるおそれがあるため、筒状体2の外径にもよるが、例えば筒状体2の外径が6mm以下である場合には、リブ4の数を20個以下とすることが望ましい。リブ4は、筒状体2の一部であり、弾性絶縁体からなる。
【0018】
電極線3は、導体31の周囲に弾性導電体32を被覆して構成されている。本実施の形態では、4本の電極線3を用いる場合を説明するが、電極線3の数は2本以上であればよい。電極線3は、周方向に等間隔に設けられており、筒状体2の内周面2bに沿って螺旋状に配置されている。電極線3を螺旋状に配置することで、様々な方向から外圧が加えられた場合であっても、電極線3同士が接触し易くなり、検出感度が向上する。
【0019】
導体31としては、例えば、銅等の良導電性の金属からなる単線導体や、複数本の素線31aを互いに撚り合わせた撚線導体を用いることができる。ここでは、7本の素線31aを撚り合わせた撚線導体を導体31として用いた。導体31は、耐熱性を高める目的で、表面を錫、ニッケル、銀、亜鉛などのめっきが施されていてもよい。なお、導体31としては、ポリエステルなどからなる糸に銅箔を巻き付けた銅箔糸を用いることもできる。
【0020】
弾性導電体32としては、ゴム材料または弾性プラスチック材料に、カーボン等の導電性充填剤を配合したものを用いることができる。弾性導電体32に用いるゴム材料または弾性プラスチック材料としては、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体を架橋したゴム系組成物や、架橋工程が不要なオレフィン系やスチレン系熱可塑性エラストマ組成物などを好適に用いることができる。
【0021】
導電性充填剤として用いるカーボンは、カーボンブラック等の粒子状のカーボンであることが好ましい。粒子状以外の形状、例えば線状や面状のカーボンを用いた場合、弾性導電体32の電気抵抗の大きさが方向によって変化し、感圧センサ1の動作に悪影響を与えるおそれがある。ここで、カーボンブラックは、油やガスを不完全燃焼させること等により得られる直径3~500nm程度の炭素の微粒子である。特に、カーボン一次粒子が連結したストラクチャーと呼ばれる構造が発達した導電性カーボンブラックが好ましい。
【0022】
感圧センサ1では、外部から圧力を受けた際に筒状体2が弾性変形して、複数本の電極線3のうちいずれか2本の電極線3同士が接触(短絡)する。この電極線3同士の接触を、図示しない検知装置で検出することにより、感圧センサ1に外部から圧力が加わったことを検知できる。感圧センサ1は、例えば、自動車用のスライドドア、バックドア、パワーウィンドや、エレベータ、シャッター、自動ドア、ホームドア等の挟み込み防止用途に適用できる。
【0023】
(感圧センサの製造装置)
図2は、感圧センサの製造装置の概略構成図である。
図2に示すように、感圧センサの製造装置10は、押出機11と、水槽12と、引き取り機13と、巻き取り機14と、を備えて構成されている。
【0024】
押出機11は、複数本(ここでは4本)の電極線3の周囲を覆うように筒状体2を押出成形するものである。本実施の形態では、クロスヘッド式の押出機11を用いており、
図3(a)に示す押出機11のヘッド(クロスヘッド)111内に複数本(ここでは4本)の電極線3を走線させつつ、その周囲にチューブ状に樹脂(溶融された弾性絶縁体)を押し出すことで、筒状体2を押出成形する。電極線3は、筒状体2の内周面2bに融着され固定される。
【0025】
図3(a),(b)に示すように、押出機11では、ヘッド111の口金112と心金113との間に形成された空間114を樹脂(溶融した弾性絶縁体)が通ることで、筒状体2が押出成形される。なお、
図3(a)では、心金113を破線にて示している。本実施の形態では、この口金112の吐出側の端部における内周面に複数の溝112aを形成することで、筒状体2の外周面に複数のリブ4を形成するようにしている。この溝112aの形状を適宜変更することで、リブ4の形状を変更可能である。
【0026】
心金113の先端部は正面視(吐出側から見て)で円形状に形成されており、これにより、断面視で円形状の中空部2aを有する筒状体2が押出成形される。心金113には、電極線3を通す電極線挿通孔113aが形成されており、この電極線挿通孔113aに電極線3を走線させつつ押出成形を行うことで、電極線3の周囲を覆うように筒状体2が形成される。なお、筒状体2や電極線3の配置、形状が崩れてしまうことを抑制するため、中空部2a内に圧縮気体を導入するようにしてもよい。この場合、例えば、心金113の正面視における中央部に、心金113の樹脂の吐出側から当該吐出側の反対側まで貫通する1つまたは複数の穴を設け、樹脂の吐出側とは反対側に位置する当該穴から圧縮気体を供給することができる。この際に用いる圧縮気体としては、空気や窒素などの不活性ガスが好適である。
【0027】
本実施の形態では、口金112の溝112aは、押出方向(樹脂の吐出方向)に対して平行に形成されている。なお、これに限らず、
図3(c)に示すように、溝112aは、押出方向(樹脂の吐出方向)に対して傾斜するように形成されていてもよい。これにより、溝112aに導入された樹脂が溝112aに沿って螺旋状に流れようとするため、この溝112aを流れる樹脂の影響を受けて樹脂が周方向に回転されながら吐出される。なお、ここでいう周方向とは、吐出される筒状体2(あるいは感圧センサ1)の周方向である。詳細は後述するが、本実施の形態では、引き取り機13にて感圧センサ1を周方向に回転させつつ引き取ることで、電極線3を螺旋状に配置するが、溝112aを押出方向に対して傾斜するように形成することで、引き取り機13による回転を補助し、ヘッド111の出口において筒状体2にかかる回転による負荷を抑制可能になる。ただし、押出方向に対して傾斜するように溝112aを形成した場合、溝112aの傾斜の向きによって感圧センサ1を回転させる向き、すなわち電極線3を螺旋状に配置する際の回転方向が決まってしまう。口金112の溝112aを押出方向に対して平行に形成することで、引き取り機13における回転方向を適宜に変更し、電極線3を螺旋状に配置する際の回転方向を適宜変更することが可能になる。
【0028】
水槽12は、筒状体2を冷却するためのものである。押出機11のヘッド111から吐出された筒状体2及び電極線3は、自重によるたわみは若干あるものの、引き取り機13まで略直線状に延びている。水槽12は、上方が開口した略直方体形状に形成されており、その長手方向に対向する側壁に、上方に開口する切欠き状の挿通口121を有する。この挿通口121に筒状体2及び電極線3を挿通させつつ、水槽12の上方から水槽12内に冷却水を供給することで、筒状体2が冷却されて固化し感圧センサ1が得られる。なお、水槽12内、あるいは水槽12の近傍に、自重によるたわみを抑制するため感圧センサ1を下方から支持するローラ等を設けてもよい。
【0029】
引き取り機13は、感圧センサ1を一定の速度で引き取るものである。引き取り機13の詳細については後述する。巻き取り機14は、引き取り機13で引き取られた感圧センサ1を、ボビン141に巻き取るものである。
【0030】
(引き取り機13)
本実施の形態に係る感圧センサの製造装置10では、引き取り機13は、押出機11から吐出された筒状体2及び電極線3(水槽12を通過した感圧センサ1)を周方向に回転させつつ引き取ることで、電極線3を螺旋状に配置するように構成されている。引き取り機13で筒状体2及び電極線3を周方向に回転させることで、押出機11のヘッド111から吐出された直後の(水槽12で冷却される前の)筒状体2がねじられ、電極線3が螺旋状に配置される。筒状体2は、ねじられた状態で水槽12に導入され、ねじられた状態のまま冷却固化される。これにより、電極線3は螺旋状に配置された状態で維持されることとなり、感圧センサ1が得られる。
【0031】
引き取り機13としては、例えば、
図4に示すキャプスタン式の引き取り機131を用いることができる。キャプスタン式の引き取り機131は、複数(ここでは2つ)のキャプスタン131aを有し、これらキャプスタン131aに感圧センサ1を巻き付け、キャプスタン131aを回転させることで、感圧センサ1の引き取りを行うように構成されている。キャプスタン式の引き取り機131を用いる場合、このキャプスタン式の引き取り機131の全体を、引き取り機131に導入される感圧センサ1の周方向に回転させつつ引き取りを行わせることで、感圧センサ1を周方向に回転させつつ引き取ることができる。この場合、電極線3の螺旋ピッチは、引き取り速度(キャプスタン131aの回転速度)と、引き取り機131全体を回転させる際の回転速度を調節することで、調整可能である。
【0032】
また、引き取り機13として、
図5(a)~(c)に示すベルト式(あるいはキャタピラ式)の引き取り機132を用いることもできる。ベルト式の引き取り機132は、環状のベルト132aを回転駆動するベルト回転機構132bを一対有しており、それら一対のベルト回転機構132bで上下から感圧センサ1を挟み込み、両ベルト回転機構のベルト132aを回転させることで、感圧センサ1の引き取りを行うように構成されている。本実施の形態では、両ベルト回転機構132bにおけるベルト132aの回転方向が互いに交差するように、両ベルト回転機構132bを配置することで、感圧センサ1を周方向に回転させつつ引き取るように構成している。
【0033】
より具体的には、
図5(b)に示されるように、感圧センサ1の長手方向に対して、ベルト132aの回転方向が所定角度傾くように一方のベルト回転機構132bを配置すると共に、感圧センサ1の長手方向に対して、ベルト132aの回転方向が一方のベルト回転機構132bと反対側に所定角度傾くように他方のベルト回転機構132bを配置する。両ベルト回転機構132bは、感圧センサ1の中心軸に対して180度回転対称となるように配置される。ベルト132aを回転させた際にベルト132aに対して感圧センサ1が滑ってしまうことを抑制するため、両ベルト回転機構132b間の距離は、感圧センサ1の外径よりも小さく(例えば感圧センサ1の外径の90%程度に)するとよい。
【0034】
この状態で両ベルト回転機構132bのベルト132aを同じ速度で回転させると、
図5(c)に示されるように、上下のベルト132aにより、感圧センサ1を周方向に回転させる力と、感圧センサ1を長手方向に引っ張る力(不図示)とが感圧センサ1に付与され、感圧センサ1を周方向に回転させつつ引き取ることができる。ベルト式の引き取り機132では、感圧センサ1の長手方向に対するベルト132aの回転方向の角度や、ベルト132aの回転速度を適宜変更することによって、電極線3の螺旋ピッチを調整することができる。
図4のキャプスタン式の引き取り機131では、引き取り機131全体を回転させる必要があるため大がかりな装置となってしまうが、ベルト式の引き取り機132は、引き取り機132全体を回転させる必要がないため、より容易に実現可能である。
【0035】
押出機11と引き取り機13との距離は、できるだけ短いことが望ましい。これは、押出機11と引き取り機13との距離が長いと、引き取り機13で感圧センサ1を回転させる力(ねじる力)が押出機11の近傍まで伝わりにくくなるためである。
【0036】
なお、本実施の形態では、引き取り機13にて感圧センサ1を周方向に回転させつつ引き取るため、引き取り機13から導出される感圧センサ1も周方向に回転している。そのため、巻き取り機14においては、感圧センサ1の回転に同期させてボビン141を回転させつつ感圧センサ1の巻き取りを行うよう構成すればよい。つまり、ボビン141を、感圧センサ1の回転方向と同じ回転方向に、感圧センサ1の回転速度と同じ回転速度で回転させつつ、センサ1の巻き取りを行うとよい。
【0037】
また、
図6に示すように、引き取り機13と巻き取り機14との間に、引き取り機13と反対方向に感圧センサ1を回転させつつ引き取る第2引き取り機15を設けてもよい。これにより、巻き取り機14においてボビン141を回転させる必要がなくなり、ボビン141を回転させる設備を導入する必要がなくなる。また、引き取り機13や第2引き取り機15としてベルト式の引き取り機132を用いることで、大がかりな回転設備を省略でき、感圧センサ1を周方向に回転させる速度と巻き取り速度の両者を向上させることが可能となり、感圧センサ1の製造速度を向上させて量産性を向上させることが可能になる。
【0038】
(リブ4の説明)
ここで、リブ4を形成する理由について説明する。例えば、筒状体2がリブ4を有さず円筒状に形成されている場合、引き取り機13により筒状体2を周方向に回転させた際(筒状体2をねじった際)の応力が均等に伝わらず、中空部2aが潰れる等していびつな形状に変形してしまうおそれがある。これは、押出機11のヘッド111から吐出された直後の筒状体2は剛性が低く、変形しやすい状態となっているためである。
【0039】
そこで、本実施の形態では、中空部2aが潰されることなく筒状体2をねじることができるように、筒状体2の外周面2cに複数のリブ4を形成した。これにより、筒状体2をねじった際の応力が肉厚の薄い箇所(周方向に隣り合うリブ4の間の部分)に集中し、中空部2aの形状を維持したまま筒状体2をねじることが可能になる。
【0040】
リブ4の形状は特に限定するものではなく、筒状体2をねじった際に変形しやすい形状であればよい。例えば、
図7(a)に示す感圧センサ1aのように、断面視で三角形状のリブ4としてもよいし、
図7(b)に示す感圧センサ1bのように、断面視で扇形状のリブ4としてもよい。リブ4の形状は、押出機11のヘッド111に用いる口金112の溝112aの形状を変更することで、変更可能である。このように、リブ4の形状は適宜設定可能であるが、筒状体2を成形する際に溝112a内を樹脂が流動し易くするために、リブ4の形状は半円形状とすることがより好ましいといえる。
【0041】
また、
図8(a)に示す感圧センサ1cのように、筒状体2の外周面2cに形成されたリブ4に加えて、筒状体2の内周面2bにもリブ5を形成してもよい。これにより、筒状体2がよりねじり易くなり、引き取り機13によりねじりが加えられた際に中空部2aが潰れる等の不具合をより抑制することが可能になる。この場合、
図8(b)に示すように、心金113の吐出側の端部における外周面に複数の溝113bを形成することで、筒状体2の内周面2bに複数のリブ5を形成することが可能になる。
【0042】
(感圧センサの製造方法)
本実施の形態に係る感圧センサの製造方法は、上述の感圧センサの製造装置10を用いて、感圧センサ1を製造する方法である。感圧センサ1を製造する際には、まず、導体31の周囲に弾性導電体32を被覆して電極線3を形成する。その後、形成した4本の電極線3を押出機11のヘッド111へと送り出し、ヘッド111内に4本の電極線3を走線させつつ、押出機11により4本の電極線3の周囲を覆うように筒状体2を押出成形する。
【0043】
このとき、引き取り機13により、押出機11から吐出された筒状体2及び電極線3を周方向に回転させつつ引き取る。例えば、キャプスタン式の引き取り機131を用いる場合、引き取り機131に導入される感圧センサ1の周方向に引き取り機131を回転させつつ、引き取り機131により引き取りを行う。あるいは、ベルト式の引き取り機132を用いる場合、一対のベルト回転機構132bにおけるベルト132aの回転方向が互いに交差するように、両ベルト回転機構132bを配置することで、感圧センサ1を周方向に回転させつつ引き取る。これにより、押出機11から吐出された直後の筒状体2がねじられ、電極線3が螺旋状に配置される。
【0044】
筒状体2は、ねじられた状態のまま水槽12へと導入され、水槽12にて冷却固化される。これにより、電極線3が螺旋状に配置された感圧センサ1が得られる。水槽12から導出された感圧センサ1は、引き取り機13により引き取られた後、巻き取り機14でボビン141に巻き取られる。
【0045】
(変形例)
図9は、本発明の一変形例に係る感圧センサ1dの長手方向に垂直な断面を示す断面図である。感圧センサ1dは、
図1の感圧センサ1における筒状体2の外周に、さらに弾性体からなる保護層6を設けてもよい。保護層6は、長手方向に垂直な断面視において、その外周面が円形状となるように形成されている。保護層6は、感圧センサ1dの強度を高める役割と、感圧センサ1dの外形を円形状とする役割と、感圧センサ1dの端末を封止する封止部材や、感圧センサ1dを取り付けるための取付部等の他部材への接着性を高める役割とを兼ねた部材である。保護層6としては、例えば、強度、耐摩耗性に優れ、封止部材等の他部材に使用されることが多いポリアミドとの接着性が良好な熱可塑性ポリウレタン等からなるものを用いることができる。保護層6は、例えば、
図1の感圧センサ1の外周に押出成形を行うことで形成することができる。
【0046】
(実施の形態の作用及び効果)
以上説明したように、本実施の形態に係る感圧センサの製造方法では、押出機11から吐出された筒状体2及び電極線3を周方向に回転させつつ引き取ることで、電極線3を螺旋状に配置している。
【0047】
スペーサ(ダミー線)を用いる従来方法では、スペーサを製造する工程や、押出成形後にスペーサを抜く工程が必須であり、製造に非常に手間がかかっていた。また、従来方法では、スペーサを引き抜く途中でスペーサが破断してしまったり、電極線に損傷が加わったりするおそれがあるため、短尺に切断してからスペーサを引き抜く必要があり、長尺な感圧センサを製造することは困難であった。さらに、スペーサを抜きやすくするために、スペーサに滑り性の良好な高価なフッ素系の樹脂等を用いる必要があるが、短尺に切断するためにスペーサを再利用することができず、コスト増大の要因となっていた。
【0048】
本実施の形態によれば、スペーサを用いずに感圧センサ1を製造することが可能になるため、感圧センサ1の製造が容易になり、製造コストを大幅に削減することが可能になる。また、本発明ではスペーサを用いないため、長さの制限がなく、例えば数10mといった長尺な感圧センサ1を容易に製造できる。
【0049】
(実施の形態のまとめ)
次に、以上説明した実施の形態から把握される技術思想について、実施の形態における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号等は、特許請求の範囲における構成要素を実施の形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
【0050】
[1]長手方向に沿って中空部(2a)を有し弾性絶縁体からなる筒状体(2)と、前記筒状体(2)の内周面に沿って螺旋状に配置され、かつ相互に接触しないように配置された複数本の電極線(3)と、を備えた感圧センサ(1)の製造方法であって、押出機(11)のヘッド(111)内に前記複数本の電極線(3)を走線させつつ、前記押出機(11)により前記複数本の電極線(3)の周囲を覆うように前記筒状体(2)を押出成形し、前記押出機(11)から吐出された前記筒状体(2)及び前記電極線(3)を周方向に回転させつつ引き取ることで、前記電極線(3)を螺旋状に配置する、感圧センサの製造方法。
【0051】
[2]前記ヘッド(111)の口金(112)と心金(113)との間に形成された空間(114)を前記弾性絶縁体が通ることで前記筒状体(2)が押出成形され、前記口金(112)の吐出側の端部における内周面に複数の溝(112a)を形成することで、前記筒状体(2)の外周面(2c)に複数のリブ(4)を形成する、[1]に記載の感圧センサの製造方法。
【0052】
[3]前記溝(112a)は、押出方向に対して平行に形成されている、[2]に記載の感圧センサの製造方法。
【0053】
[4]前記溝(112a)は、押出方向に対して傾斜するように形成されている、[2]に記載の感圧センサの製造方法。
【0054】
[5]前記心金(113)の吐出側の端部における外周面に複数の溝(113b)を形成することで、前記筒状体(2)の内周面に複数のリブ(5)を形成する、[2]乃至[4]の何れか1項に記載の感圧センサの製造方法。
【0055】
[6]前記感圧センサ(1)を巻き付ける複数のキャプスタン(131a)を有し、前記複数のキャプスタン(131a)を回転させることで、前記感圧センサ(1)を引き取るキャプスタン式の引き取り機(131)を用い、前記引き取り機(131)に導入される前記感圧センサ(1)の周方向に前記引き取り機(131)を回転させつつ、前記引き取り機(131)により引き取りを行う、[1]乃至[5]の何れか1項に記載の感圧センサの製造方法。
【0056】
[7]環状のベルト(132a)を回転駆動するベルト回転機構(132b)を一対有し、当該一対のベルト回転機構(132b)で上下から感圧センサ(1)を挟み込み、前記両ベルト回転機構(132b)の前記ベルト(132a)を回転させることで前記感圧センサ(1)を引き取るベルト式の引き取り機(132)を用い、前記両ベルト回転機構(132b)における前記ベルト(132a)の回転方向が互いに交差するように、前記両ベルト回転機構(132b)を配置することで、前記感圧センサ(1)を周方向に回転させつつ引き取る、[1]乃至[5]の何れか1項に記載の感圧センサの製造方法。
【0057】
[8]前記感圧センサ(1)を周方向における一方向に回転させつつ引き取る引き取り機(13)と、前記感圧センサ(1)を巻き取る巻き取り機(14)との間に、前記感圧センサを周方向における他方向に回転させつつ引き取る第2引き取り機(15)を設けた、[1]乃至[7]の何れか1項に記載の感圧センサの製造方法。
【0058】
[9]長手方向に沿って中空部(2a)を有し弾性絶縁体からなる筒状体(2)と、前記筒状体(2)の内周面(2b)に沿って螺旋状に配置され、かつ相互に接触しないように配置された複数本の電極線(3)と、を備えた感圧センサの製造装置(10)であって、ヘッド(111)内に前記複数本の電極線(3)を走線させつつ、前記複数本の電極線(3)の周囲を覆うように前記筒状体(2)を押出成形する押出機(11)と、前記押出機(11)から吐出された前記筒状体(2)及び前記電極線(3)を周方向に回転させつつ引き取る引き取り機(13)と、を備えた、感圧センサの製造装置(10)。
【0059】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【0060】
また、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。例えば、上記実施の形態では、水槽12により筒状体2を冷却する場合を説明したが、これに限らず、例えば、水槽12を省略し、空冷あるいは自然冷却で筒状体2を冷却するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0061】
1…感圧センサ
2…筒状体
2a…中空部
2b…内周面
2c…外周面
3…電極線
4,5…リブ
10…感圧センサの製造装置
11…押出機
13…引き取り機
14…巻き取り機
15…第2引き取り機
111…ヘッド
112…口金
112a…溝
113…心金
113b…溝